JP4039041B2 - 死菌化方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、形質転換微生物の死菌化方法、より詳しくは、形質転換微生物が産生した有用酵素の活性を失活させることなく、形質転換微生物を死菌化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の遺伝子組換え技術の進歩により、酵素を用いた有機合成反応に形質転換微生物の産生する酵素が用いられるようになってきている。一方、形質転換微生物は自然界に存在しない微生物であるため、安全を確保する観点から、環境への伝播、拡散を防止することが求められており、この方法として、形質転換微生物を物理的に封じ込める方法及び形質転換微生物を殺菌する方法が行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、形質転換微生物の産生する酵素を有機合成反応に利用する場合、形質転換微生物を物理的に封じ込める方法は、大規模な設備が必要となるため、製造設備の点からは必ずしも有利な方法とは言えず、また、形質転換微生物を死菌化する方法は、一般に形質転換微生物を死菌化する条件下で有用物質生産に利用される酵素が失活する場合が多かった。
そこで、本発明はある種の形質転換微生物を用いた有機合成反応を特殊な設備を用いることなく行うために、形質転換微生物が産生した酵素の活性を失活させることなく、形質転換微生物を死菌化させる方法を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記のような状況に鑑み、有用物質生産に用いられる酵素をコードする遺伝子を組み込んだ形質転換微生物を、その形質転換微生物が産生した有用物質生産に用いられる酵素の活性を失活させることなく、死菌化する条件を種々検討した結果、熱変性温度値が50℃以上である酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAをエシェリヒア(Escherichia)属の微生物に導入した形質転換微生物を含む液と、該微生物含有液に対し10重量%以上35重量%以下の量の炭素数1〜3の1価のアルコール及び/またはアセトンとを25℃以上35℃未満で混合することにより、該形質転換微生物が産生する熱変性温度値が50℃以上である酵素を失活させることなく、形質転換微生物が死菌化できることを見出し、本発明に至った。
【0005】
すなわち、本発明は、熱変性温度値が50℃以上である酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAをエシェリヒア(Escherichia)属の微生物に導入した形質転換微生物を含む液と、該微生物含有液に対し10重量%以上35重量%以下の量の炭素数1〜3の1価のアルコール及び/またはアセトンとを25℃以上35℃未満で混合することを特徴とする形質転換微生物の死菌化方法(以下、本発明死菌化方法と記すこともある。)等を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明死菌化方法に用いられる、形質転換微生物の宿主微生物にはエシェリヒア(Escherichia)属の微生物が用いられる。この中でも、形質転換微生物の作製の容易さ等の点から好ましくはエシェリヒア コリ(Escherichia coli)種の微生物が用いられ、より好ましくは、エシェリヒアコリ JM105(Escherichia coli JM105)株の微生物が用いられる。
【0007】
本発明死菌化方法に用いられる形質転換微生物に導入されるDNAは、熱変性温度が50℃以上である酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAである。ここで、酵素の熱変性温度とは、10mMリン酸ナトリウムバッファー(pH6.5〜pH7.5)中に約1μg/ml〜約50μg/ml程度の割合で精製酵素を含む溶液を試料として、かつ測定波長222nmで温度(例えば、40℃以上70℃以下の温度範囲を含む温度)を変化(例えば、約1℃/1min以下の昇温勾配)させながら円二色性スペクトルを円二色性分散計を用いて測定する場合において、測定値の変化率が最も大きい温度をいう。
【0008】
熱変性温度が50℃以上である酵素とは、通常、50℃以上80℃以下の熱変性温度を有する酵素であって、例えば、熱変性温度が50℃以上である酸化還元酵素、熱変性温度が50℃以上である転移酵素、熱変性温度が50℃以上である加水分解酵素、熱変性温度が50℃以上である脱離酵素、熱変性温度が50℃以上である異性化酵素、熱変性温度が50℃以上である合成酵素等が挙げられ、好ましくはアスペルギルス属由来のエステラーゼ、アルスロバクター属由来のエステラーゼ、クロモバクテリウム属由来のエステラーゼ等が挙げられる。これら熱変性温度が50℃以上である酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列は、例えば、当該酵素に耐熱性を付与する等のために特異的変異を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列でも特異的変異を持たないアミノ酸配列をコードする塩基配列でもどちらでも構わない。
【0009】
熱変性温度が50℃以上である酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列の具体例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
(a)配列番号1で示される塩基配列。
(b)配列番号1で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列であって、かつラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(c)配列番号2で示される塩基配列。
(d)配列番号2で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列であって、かつ菊酸または菊酸誘導体のエステルを不斉加水分解する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(e)配列番号3で示される塩基配列。
(f)配列番号3で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目のアミノ酸が下記のA群から選ばれるアミノ酸に置換され、かつ189番目のアミノ酸が下記のアミノ酸からなるB群から選ばれるアミノ酸に置換されてなるアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(g)前記(f)からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列であって、かつ前記(f)によりコードされるアミノ酸配列からなる酵素と同等な触媒機能を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(A群)
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン
(B群)
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、チロシン、アルギニン
【0010】
配列番号1で示される塩基配列を有するDNAは、例えば、アスペルギルス・フラバス(Aapergillus flavus)ATCC11492株等の微生物から通常の方法でcDNAライブラリーを作製し、このcDNAライブラリーを鋳型に用いてPCRを行うことによって得ることができる。
【0011】
配列番号2で示される塩基配列を有するDNAは、例えば、アルスロバクターSC−6−98−28(工業技術院 生命工学技術研究所 寄託番号 FERMBP−3658)等の微生物から通常の方法でcDNAライブラリーを作製し、このcDNAライブラリーを鋳型に用いてPCRを行うことによって得ることができる。
【0012】
配列番号3で示される塩基配列を有するDNAは、例えば、クロモバクテリウム(Chromobacterium)SC-YM-1株(工業技術院 生命工学技術研究所 寄託番号FERM P−14009)等の微生物から通常の方法でcDNAライブラリーを作製し、このcDNAライブラリーを鋳型に用いてPCRを行うことによって得ることができる。
【0013】
このようにして得られたDNAに下記の部位特異的変異を導入するには、原型のDNA(ここでは野生型の遺伝子である)が組み込まれたプラスミドの1本鎖DNAを鋳型にして、変異を導入する塩基配列を含む合成オリゴヌクレオシドをプライマーとして変異型の遺伝子を合成すればよい。例えば、Smithら(Genetic Engineering 31 Setlow,J. and Hollaender,A Plenum: New York)、Vlasukら(Experimental Manipulation of Gene Expression, Inouye,M :Academic Press, New York)、Hos.N.Hunt ら(Gene, 77,51,1989)の方法等をあげることができる。
本発明では、配列番号3で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目および/189番目のアミノ酸がグリシン以外のアミノ酸の置換されるように変異プライマーを調製し、PCR法による増幅を行えばよい。好ましくは、160番目のアミノ酸が下記のA群から選ばれるアミノ酸に置換され、かつ189番目のアミノ酸が下記のB群から選ばれるアミノ酸に置換されるような特異的変異を導入することが好ましい。
(A群)
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン
(B群)
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、チロシン、アルギニン
尚、配列番号3で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目および189番目のアミノ酸に同時に部位特異的変異を導入してもよい。
【0014】
本発明において、あるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、例えば、「クローニングとシークエンス」(渡辺格監修、杉浦昌弘編集、1989、農村文化社発行)等に記載されるサザンハイブリダイゼーション方法において、(1)高イオン条件下[例えば、6XSSC(900mMの塩化ナトリウム、90mMのクエン酸ナトリウム)等が挙げられる。]に65℃の温度条件でハイブリダイズさせることによりあるDNAとDNA−DNAハイブリッドを形成し、(2)低イオン濃度下[例えば、0.1X SSC(15mMの塩化ナトリウム、1.5mMのクエン酸ナトリウム)等が用いられる。]に65℃の温度条件で30分保温した後でも該ハイブリッドが維持されるようなDNAをいう。
【0015】
本発明死菌化方法に用いられる形質転換微生物は、例えば、熱変性温度が50℃以上である酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと宿主微生物とから「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO-471-50338-X等に記載されている通常の方法に準じて作製することができる。
【0016】
上記の方法で作製した形質転換微生物は、例えば、発酵工学の基礎(1989)学会出版センター,P.F.Stanbury,A.Whitaker著、石崎文彬訳に記載されている通常の方法で培養することにより、導入したDNAを発現させ、有用物質生産に有用な酵素を産生させることができる。
【0017】
本発明死菌化方法は、このようにして得られる形質転換微生物を含む液と、該微生物含有液に対し10重量%以上35重量%以下の量の炭素数1〜3の1価のアルコール及び/またはアセトンとを25℃以上35℃未満で混合することにより達成される。
【0018】
本発明死菌化方法に用いられる炭素数1〜3の1価のアルコールとは、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールである。
【0019】
形質転換されたエシェリヒア(Escherichia)属の微生物を含む液と、該微生物含有液に対し10重量%以上35重量%以下の量の炭素数1〜3の1価のアルコール及び/またはアセトンとを混合する方法としては、例えば、前記微生物の培養液、懸濁液等の微生物含有液に炭素数1〜3の1価のアルコール及び/又はアセトンを加えた後、攪拌又は振盪する方法、同じ反応容器に前記微生物の培養液、懸濁液等の微生物含有液と炭素数1〜3の1価のアルコール及び/又はアセトンとを攪拌又は振盪しながら並行して加える方法等があげられる。
【0020】
本発明死菌化方法を完結するために必要な時間は、培養終了時における微生物含有液中の形質転換微生物の密度、使用される酵素の熱変性温度、微生物含有液に添加されるアルコールまたはアセトンの量等に応じて変化し得るが、例えば、5分間〜4日間であり、好ましくは15分間〜2日間、より好ましくは30分間〜2日間、特に好ましくは6時間〜2日間である。
【0021】
本発明死菌化方法の終了、すなわち形質転換微生物が死滅したことは、微生物含有液と炭素数1〜3の1価のアルコール及び/またはアセトンとを混合した液の一部を、形質転換微生物が生育可能な寒天培地に塗布し、コロニーを形成しなくなることによって判断できる。
本発明では、酵素の熱変性温度が高いほど、添加されるアルコール及び/またはアセトンの量を多くすることが可能となり、また添加されるアルコール及び/またはアセトンの量が多いほど、死菌化完結時間を短くすることが可能である。
【0022】
本発明死菌化方法により得られる死菌化液は、そのままの状態または当該死菌化液を処理した後、有機合成反応に用いることができる。
死菌化液を処理する方法としては、例えば、(1)死菌化液をダイノミル等により菌体を破砕し、膜濾過、遠心分離等により菌体破砕物を取り除く方法、(2)膜濾過、遠心分離等により菌体を取り除いた後、限外濾過により低分子成分等を取り除く方法、(3)死菌化液から目的とする酵素を粗精製酵素、精製酵素の形態で単離する方法、(4)死菌化液から単離した粗精製酵素、精製酵素を通常の方法で固定化する方法等があげられる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例等により、さらに詳しく説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0024】
実施例1
後述参考例1記載の方法により、エシェリヒア コリ(E.coli) JM105/pYHNK2株を培養した培養液(1)40mlとエタノール10mlとを100ml容ガラス製ネジ口瓶に入れ、30℃で24時間攪拌した。
その後のこの混合液のエステラーゼ活性は培養液(1)の95%以上であり、生菌数は0cfu/mlであった。
実施例2
後述参考例1記載の方法により、E.coli JM105/pYHNK2株を培養した培養液(1)40mlとエタノール10mlとを100ml容ガラス製ネジ口瓶に入れ、30℃で6時間攪拌した。
その後のこの混合液のエステラーゼ活性は培養液(1)の95%以上であり、生菌数は0cfu/mlであった。
【0025】
実施例3
後述参考例1記載の方法により、E.coli JM105/pYHNK2株を培養した培養液(1)40mlとエタノール10mlとを100ml容ガラス製ネジ口瓶に入れ、30℃で48時間攪拌した。
その後のこの混合液のエステラーゼ活性は培養液(1)の95%以上であり、生菌数は0cfu/mlであった。
【0026】
実施例4
後述参考例1記載の方法により、E.coli JM105/pYHNK2株を培養した培養液(1)42.5mlとエタノール7.5mlとを100ml容ガラス製ネジ口瓶に入れ、30℃で24時間攪拌した。
その後のこの混合液のエステラーゼ活性は培養液(1)の95%以上であり、生菌数は0cfu/mlであった。
【0027】
実施例5
後述参考例1記載の方法により、E.coli JM105/pYHNK2株を培養した培養液(1)40mlとメタノール10mlとを100ml容ガラス製ネジ口瓶に入れ、30℃で24時間攪拌した。
その後のこの混合液のエステラーゼ活性は培養液(1)の95%以上であり、生菌数は0cfu/mlであった。
【0028】
実施例6
後述参考例1記載の方法により、E.coli JM105/pYHNK2株を培養した培養液(1)40mlとメタノール10mlとを100ml容ガラス製ネジ口瓶に入れ、30℃で6時間攪拌した。
その後のこの混合液のエステラーゼ活性は培養液(1)の95%以上であり、生菌数は0cfu/mlであった。
【0029】
実施例7
後述参考例1記載の方法により、E.coli JM105/pYHNK2株を培養した培養液(1)40mlとメタノール10mlとを100ml容ガラス製ネジ口瓶に入れ、30℃で48時間攪拌した。
その後のこの混合液のエステラーゼ活性は培養液(1)の95%以上であり、生菌数は0cfu/mlであった。
実施例8
後述参考例1記載の方法により、E.coli JM105/pYHNK2株を培養した培養液(1)40gとメタノール12gとを100ml容ガラス製ネジ口瓶に入れ、25℃で5時間攪拌した。
その後のこの混合液のエステラーゼ活性は培養液(1)の92%以上であり、生菌数は0cfu/mlであった。
【0030】
実施例9
後述参考例1記載の方法により、E.coli JM105/pYHNK2株を培養した培養液(1)40mlとアセトン10mlとを100ml容ガラス製ネジ口瓶に入れ、30℃で24時間攪拌した。
その後のこの混合液のエステラーゼ活性は培養液(1)の95%以上であり、生菌数は0cfu/mlであった。
【0031】
実施例10
後述参考例1記載の方法により、E.coli JM105/pYHNK2株を培養した培養液(1)40mlとアセトン10mlとを100ml容ガラス製ネジ口瓶に入れ、30℃で6時間攪拌した。
その後のこの混合液のエステラーゼ活性は培養液(1)の95%以上であり、生菌数は0cfu/mlであった。
【0032】
実施例11
後述参考例1記載の方法により、E.coli JM105/pYHNK2株を培養した培養液(1)40mlとアセトン10mlとを100ml容ガラス製ネジ口瓶に入れ、30℃で48時間攪拌した。
その後のこの混合液のエステラーゼ活性は培養液(1)の95%以上であり、生菌数は0cfu/mlであった。
【0033】
実施例12
後述参考例1記載の方法により、E.coli JM105/pYHNK2株を培養した培養液(1)45mlとアセトン6.5mlとを100ml容ガラス製ネジ口瓶に入れ、30℃で24時間攪拌した。
その後のこの混合液のエステラーゼ活性は培養液(1)の95%以上であり、生菌数は0cfu/mlであった。
【0034】
上記実施例1〜12におけるエステラーゼ活性測定は、以下の方法で行なった。
N−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチル0.02g、t−ブチルメチルエーテル1.0mlおよび100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)3.5mlを10ml容ねじ口試験管に入れ、これを35℃で15分間保温した。この試験管にエステラーゼ活性を測定する試料液200μlを加え、35℃で16分間往復振盪(120str/min)した。
ついで、この混合液400μlにt−ブチルメチルエーテル1mlを加えて攪拌した後、遠心分離(12000rpm、5分間)した。得られた水層のうち200μlを20mMリン酸一カリウム水/アセトニトリル=90/10に溶解し、0.2μmフィルターで濾過した後、高速液体クロマトグラフィーでN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を定量分析した(絶対検量線法による)。
【0035】
上記実施例1〜12における生菌数測定は、以下の方法で行なった。
生菌数を測定する試料液を約1mlを4℃に冷却した生理食塩水で希釈した。この希釈液100μlをアンピシリン100μg/ml含有したLB培地プレート(L-Broth Ager(BIO 101社製))に塗布し37℃で1〜2日静置した。その後、生育したコロニー数から試料液の生菌数を計算した。
【0036】
次に、実施例で使用した形質転換体及びその培養液の製造について、参考例を示す。
参考例1
アスペルギルス・フラバス(Aapergillus flavus)ATCC11492株から「バイオ総合カタログ1997/98 Vol.1遺伝子工学E−24〜27」記載の方法に基づいてcDNAライブラリーを作製した。 配列番号5で示されるオリゴヌクレオチドと、SP Promoter primer(宝酒造社製)とをプライマーに用い、前記のcDNAライブラリーを鋳型に用いて、PCRを行った(パーキンエルマー・キコーテック社製のTaqポリメラーゼGold PCRキットを使用)。PCR条件を以下に示す。
【0037】
[反応液組成]
cDNAライブラリー原液 1μl
dNTP(各2mM−mix) 10μl
プライマー(5pmol/μl) 各1μl×2種
10xbuffer(with MgCl) 10μl
TaqポリメラーゼGold(2.5U/μl) 1μl
超純水 76μl
[PCR条件]
反応混合液の入った容器をGeneAmp PCR System2400(PERKIN ELMER社製)にセットし、98℃(7分間)加熱処理した後、97℃(0.3分間)−45℃(1分間)−72℃(2分間)を20サイクル繰り返し、次いで94℃(1分間)−50℃(0.3分間)−75℃(2.5分間)を20サイクル繰り返し、さらに70℃(7分間)の処理を行った。
【0038】
こうして得られた配列番号1で示される塩基配列を有するDNAをTOPOT MTA cloningキットVer.Eキット(Invitrogen社製)付属のpCR2.1−TOPOベクターのPCR Product挿入サイトにライゲーションしてベクターpYHNK1を得た。
このライゲーション反応液をE.coli JM105コンピテントセル(ファルマシア バイオテック社製)に添加して、ライゲーション反応により作製されたベクターpYHNK1が導入された形質転換体を得た。この形質転換体を培養し、QIAGEN plasmidキット(QIAGEN社製)を用いて、該キット添付のプロトコールに従い、多量のベクターpYHNK1を調製した。
【0039】
一方、表1に示すオリゴヌクレオチドAF1とオリゴヌクレオチドAR2とを、また、オリゴヌクレオチドAF2とオリゴヌクレオチドAR3とを、それぞれ90℃で5分間保温してアニーリングさせ二本鎖DNAを得た。得られた2種の2本鎖オリゴヌクレオチドと予めNcoI及びEcoRIによって切断し開環されたpTV118N(宝酒造製)とをライゲーションキット(宝酒造製)を用いて連結し、分泌用ベクターを作製した(以下、分泌用ベクターAと記す。)。該分泌用ベクターに挿入されたリンカー領域にコードされているアミノ酸配列を配列番号4に示す。
【0040】
【表1】
Figure 0004039041
【0041】
さらに、ベクターpYHNK1からEcoRIによって切り出されたDNA断片(約800bp)を上記分泌用ベクターAのEcoRIサイトに挿入することによりプラスミドpYHNK2を得た。
このようにして得られたプラスミドpYHNK2を含む反応液をE.coliJM105コンピテントセル(ファルマシアバイオテック社製)に添加し、100μl/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地(L−broth powder(宝酒造社製))を用いて選抜することにより、プラスミドpYHNK2が導入された形質転換体E.coli JM105/pYHNK2株を得た。
【0042】
試験管に、液体培地(水1lにグリセロール5g、酵母エキス6g、リン酸1カリウム4g、リン酸2カリウム9.3gを溶解したもの)10mlを入れて、滅菌した。ここにアンピシリンを50μg/mlとなるように加え、さらにE.coli JM105/pYHNK2株のグリセロールストック0.1mlを加え、30℃で9時間振盪培養した。
3l容の培養槽に液体培地(水1500mlにグリセロール22.5g、酵母エキス15g、総合アミノ酸F22.5g、リン酸1カリウム6g、硫酸マグネシウム3.6g、硫酸第1鉄7水和物0.06g、塩化カルシウム2水和物0.06gを溶解し、4Mリン酸水溶液と14%(w/w)アンモニア水でpH7.0としたもの)1500mlを入れて滅菌した。ここにアンピシリンを50μl/mlとなるように加え、さらにここに、上記の試験管で培養した培養液を0.75ml加え、30℃で通気攪拌培養した。培養開始から、18時間後に、isopropyl thio β-D-galactoside(IPTG)を50μMとなるように加えた。また、培養開始から14時間後滅菌した培地(水110gにグリセロール150g、酵母エキス28g及び総合アミノ酸F42gを溶解したもの)を徐々に加えて培養した。
培養開始から、40時間培養することにより、培養液(1)を得た。
【0043】
さらに実施例で使用したアスペルギルス・フラバス(Aapergillusflavus)ATCC11492株由来のエステラーゼの熱変性温度の測定の例を参考例2に記す。
参考例2
上記の参考例1記載の培養液(1)500mlを遠心して得た菌体に300mlの100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)を加え攪拌した後、当該菌懸濁液を遠心しその上清を得た。この上清を粗酵素液とした。この粗酵素液50mlを用いて弱イオン交換クロマト(カラム:DEAESepharoseFF、カラム(30ml)、(緩衝液A;10mMトリス−塩酸緩衝液 pH7.0(300ml)、緩衝液B;10mMトリス−塩酸緩衝液 pH7.0、1M NaCl(300ml)、流速;4ml/min)を行い、エステラーゼ活性を有する画分を得た。次に得られた画分を濃縮して、これをゲル濾過クロマト(カラム;HiLoad 16/60 Superdexg200(120ml)、緩衝液A;10mMトリス−塩酸緩衝液 pH7.0 0、2M NaCl、流速;1ml/min)に供試し、エステラーゼ活性を有する画分を得た。得られた画分を次に強陰イオン交換クロマト(カラム;Hitrap Q(1ml)、緩衝液A;10mMトリス−塩酸緩衝液 pH7.0(30ml)、緩衝液B;10mMトリス−塩酸緩衝液 pH7.0、1M NaCl(30ml)、流速;1ml/min)に供試し、エステラーゼ活性を有する画分を得た。この画分は、SDS−PAGE分析の結果、単一バンドであった。このエステラーゼ活性を有する画分を精製酵素とした。
つぎにこの精製酵素を用いて円二色性スペクトルを測定することにより熱変性温度を調べた。円二色性分散計J−720(日本分光社製)を用い、5μg/ml精製酵素(10mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)を、30℃から70℃の範囲(温度スロープ;50℃/時間)、波長222nmの条件で円二色性スペクトルを測定した。得られた円二色性スペクトルから熱変性曲線を求めた結果、本精製酵素の熱変性温度は53.1℃であった。
【0044】
さらに上記の実施例で調製した死菌化液を用いた反応の例を参考例3に記す。
参考例3
N−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチル1.01g、ヘプタン0.56gおよび蒸留水1.2gを5mlのサンプル瓶に入れ、実施例4で得られた混合液0.06gを加え、10℃で24時間攪拌した。
その後、反応液を遠心分離(10000rpm、10分)し、得られた水層を分析したところ、N−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸が反応に使用したN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルに対して49%の収率で生成していた。
【0045】
実施例13
後述参考例5記載の方法により、E.coli JM105/pEAR5株を培養した培養液(2)45gとエタノール5gとを100ml容ガラス製ネジ口瓶に入れ、30℃で24時間攪拌した。
その後のこの混合液のエステラーゼ活性は培養液(2)の95%以上であり、生菌数は0cfu/mlであった。
【0046】
実施例14
後述参考例5記載の方法により、E.coli JM105/pEAR5株を培養した培養液(2)37.5gとエタノール12.5gを100ml容ガラス製ネジ口瓶に入れ、30℃で24時間攪拌した。
その後のこの混合液のエステラーゼ活性は培養液(2)の95%以上であり、生菌数は0cfu/mlであった。
【0047】
上記実施例13〜14におけるエステラーゼ活性測定は、以下の方法で行なった。
培養液もしくは死菌化液の希釈液(生理食塩水)5mlに2,2−ジクロロ−3−(1−プロペニル)シクロプロパン−1−カルボン酸メチルエステル(1R体/1S体=50/50、トランス体/シス体=98/2)1gを加えてpH10.0となるように調整しながら45℃で30分間攪拌した。ここで反応液の一部を取り、これに塩酸を加え酸性とした後、酢酸エチルで抽出した。抽出物に内部標準物質(けい皮酸メチル)を加えた後、ガスクロマトグラフィ−(カラム:HR20−M 0.53φ 30m 1ミクロン ULBON製)により分析することにより、加水分解率を求めた。この加水分解率よりエステラーゼ活性を算出した。
【0048】
実施例15
後述参考例6記載の方法により、E.coli JM105/pCC160S189Y363term株(特開平7−213280)を培養した培養液(3)45gとエタノール5gとを100ml容ガラス製ネジ口瓶に入れ、30℃で24時間攪拌した。
その後のこの混合液のエステラーゼ活性は培養液(3)の95%以上であり、生菌数は0cfu/mlであった。
【0049】
実施例16
後述参考例6記載の方法により、E.coli JM105/pCC160S189Y363term株を培養した培養液(3)37.5gとエタノール12.5gを100ml容ガラス製ネジ口瓶に入れ、30℃で24時間攪拌した。
その後のこの混合液のエステラーゼ活性は培養液(3)の95%以上であり、生菌数は0cfu/mlであった。
【0050】
上記実施例15〜16記載のエステラーゼ活性測定は、以下の方法で行なった。
2%(W/V)アセトンに溶解したp−ニトロフェニルアセテート40μMを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.2)に培養液もしくは死菌化液を加え、37℃でインキュベートした後、遊離するp−ニトロフェノール量を405nmの吸光度の増加に基づき定量分析した。
【0051】
上記実施例13〜16における生菌数測定は、以下の方法で行なった。
生菌数を測定する試料液を約1mlを4℃に冷却した生理食塩水で希釈した。この希釈液100μlをアンピシリン100μg/ml含有したLB培地プレート(L-Broth Ager(BIO 101社製))に塗布し37℃で1〜2日静置した。その後、生育したコロニー数から試料液の生菌数を計算した。
【0052】
次に、実施例で使用した形質転換体及びその培養液の製造について、参考例を示す。
参考例4
上記実施例で使用したアルスロバクタ−SC−6−98−28株由来のエステラ−ゼ遺伝子導入大腸菌E.coli JM105/pEAR5株は特開平5−56787号公報記載の方法に準じて調製した。即ち、特開平5−56787号公報記載のアルスロバクターSC−6−98−28株由来のエステラーゼ遺伝子を含むプラスミドpAGE−1を、制限酵素Nsp(7524)VおよびHindIIIで消化することによりエステラーゼ遺伝子の翻訳領域を含むDNA断片を切り出し、これを特開平5−56787号公報に記載のようにエステラーゼ遺伝子の開始コドンとその近傍のDNA配列を変換するために合成したDNA断片、およびlacプロモーターを有する発現ベクターpUC118(宝酒造株式会社)の制限酵素BamHI、HindIII消化物とライゲーションした。このようにして、lacプロモーターの下流にアルスロバクターSC−6−98−28株由来のエステラーゼ遺伝子を有する大腸菌用発現プラスミドを調製し、これをE.coliJM105株に導入した。
【0053】
参考例5
試験管に、L-Broth培地(SIGMA社製)10mlを入れて、滅菌した。ここにアンピシリンを50μg/mlとなるように加え、さらにE.coli JM105/pEAR5株のグリセロールストック0.1mlを加え、30℃で16時間振盪培養した。
500ml容のバッフル付三角フラスコにL-Broth培地(SIGMA社製)100mlを入れて滅菌した。ここにアンピシリンを50μl/mlとなるように加え、さらにここに、上記の試験管で培養した培養液を1ml加え、30℃で攪拌培養した。培養開始から、4時間後にIPTGを1mMとなるように加えた。培養開始から24時間培養することにより、培養液(2)を得た。
【0054】
参考例6
上記実施例で使用したクロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼ遺伝子導入大腸菌E.coli JM105/pCC160S189Y363term株は特開平7−213280号公報記載の方法に準して調製した。ここで、E.coli JM105/pCC160S189Y363term株が産生するエステラーゼとは、前述にある、配列番号3で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目のアミノ酸がセリンに置換され、かつ189番目のアミノ酸がチロシンに置換される特異的変異が導入された耐熱性酵素である。
【0055】
参考例7
試験管に、L-Broth培地(SIGMA社製)10mlを入れて、滅菌した。ここにアンピシリンを50μg/mlとなるように加え、さらにE.coli JM105/pCC160S189Y363term株のグリセロールストック0.1mlを加え、30℃で16時間振盪培養した。
500ml容のバッフル付三角フラスコにL-Broth培地(SIGMA社製)100mlを入れて滅菌した。ここにアンピシリンを50μl/mlとなるように加え、さらにここに、上記の試験管で培養した培養液を1ml加え、30℃で攪拌培養した。培養開始から、4時間後にIPTGを1mMとなるように加えた。培養開始から12時間培養することにより、培養液(3)を得た。
【0056】
実施例で使用したアルスロバクタ−SC−6−98−28株由来のエステラ−ゼの熱変性温度の測定の例を参考例8に記す。
参考例8
500ml三角フラスコに液体培地(水1Lにグリセロ−ル5g、酵母エキス6g、リン酸1カリウム9gおよびリン酸2カリウム4gを溶解し、pH7.0とする。)100mlを入れて滅菌した後、アンピシリンを50μg/mlになるように加え、E.coli JM105/pEAR5株を斜面培養から1白金耳接種し、30℃で24時間回転振とう培養した。次に3L容の小型培養槽(丸菱バイオエンジ社製、MDL型)に滅菌した液体培地(水1Lにグリセロ−ル15g、酵母エキス25g、リン酸1カリウム0.4g、硫酸マグネシウム2gおよび硫酸第一鉄0.1gを溶解し、pH7.0とする。)1500mlを入れ、これに上記の培養液15mlを接種した。30℃で通気攪拌培養し、対数増殖期中期(培養開始10〜15時間後)にIPTGを終濃度1mMとなるように培養液に添加した後、滅菌した培地を流加し、さらに培養を続け40時間培養し、培養液を得た。
得られた培養液2000mlを遠心することにより得た菌体を純水で洗浄後、50mMトリス塩酸バッファー(pH8.0)に全量が1000mlになるように懸濁した。この懸濁液を氷水中で超音波破砕した後、10000rpm、30分間遠心することにより上清を得た。この上清に1MになるようにNaClを添加した後、60℃、30分間熱処理を行なった。熱処理を行なった後、10000rpm、30分間遠心することにより上清を得た。この熱処理後の上清に35%飽和濃度の硫安を添加し、再度遠心することにより沈殿を得た。得られた沈殿を20mMトリス塩酸バッファー(pH8.0)約50mlに溶解し、200倍の体積の0.1M NaClを含む20mMトリス塩酸バッファー(pH8.0)に対して透析を行なった。透析した液を遠心することにより上清を得た。この上清を用いて陰イオン交換クロマト(カラム;DEAE Sepharose fast flow(直径26mm、長さ400mm)、緩衝液A;0、1M NaClを含む20mMトリス−塩酸緩衝液 pH8.0(200ml)、緩衝液B;0、6M NaClを含む20mMトリス−塩酸緩衝液 pH8.0(200ml)、流速;12ml/min)を行い、エステラーゼ活性を有する画分を得た。このエステラーゼ画分はSDS−PAGE分析の結果、単一バンドであったが、銀染色法ではマイナーバンドがあった。そこで、この画分をフラクトゲル−EMAE(カラム;スパーフォーマンスカラム(直径10mm、長さ150mm)、ベッド;フラクトゲル−TMAE EMD 650(S)(MERCK社製)、緩衝液A;20mMトリス−塩酸緩衝液 pH8.0 緩衝液B;1.0M NaClを含む20mMトリス−塩酸緩衝液 pH8.0、流速;1.5ml/min)に供試し、エステラーゼ活性を有する画分を得た。このエステラーゼ活性を有する画分を精製酵素とした。
つぎにこの精製酵素を用いて円二色性スペクトルを測定し熱変性温度を測定した。円二色性分散計J−720(日本分光社製)を用い、40μg/mlの上記精製酵素(10mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)を40から80℃の範囲(温度スロープ;20℃/時間)、波長222nmの条件で円二色性スペクトルを測定した。得られた円二色性スペクトルから熱変性曲線を求めた結果、本精製酵素の熱変性温度は67.0℃であった。
【0057】
実施例で使用したクロモバクテリウム(Chromobacterium)SC-YM-1株由来のエステラ−ゼ(即ち、E.coli JM105/pCC160S189Y363term株が産生するエステラーゼ)の熱変性温度の測定の例を参考例9に記す。
参考例9
200mlの三角フラスコに50mlのM9培地(硫酸マグネシウム2mM、塩化カルシウム0.1mM、グルコース5g/L、リン酸水素ナトリウム3.4g/L、リン酸1カリウム0.67g/L、塩化アンモニウム0.22g/L、塩化ナトリウム0.11g/L、pH7.0)にチアミンを2.0mg/L、アンピシリンを50μg/mlになるように添加した培地を入れ、同じ組成の培地のプレートで静置培養したE.coli JM105/pCC160S189Y363term株を1白金耳植菌し、37℃で12時間攪拌培養した。2000ml三角フラスコに液体培地(水1Lにグリセロ−ル4g、酵母エキス24g、トリプトン12g、リン酸1カリウム2.3gおよびリン酸2カリウム12.5gを溶解し、pH7.0とする。)300mlを入れて滅菌した後、アンピシリンを50μg/mlになるように加えた培地に上記培養液3mlを植菌し、37℃で振とう培養した。OD660が2に到達した時に、IPTGを終濃度0.1mMとなるように培養液に添加した後、さらに6時間培養を続け、培養液を得た。得られた培養液全量を遠心することにより湿菌体約43gを得た。この湿菌体をTE緩衝液(pH7.5)で洗浄した後、同じ緩衝液にOD660が60になるように懸濁した。この懸濁液を氷水中で超音波破砕した後、32000g、10分間遠心した後、110000g、60分間遠心することにより上清を得た。この上清液を限外濾過膜を用いて濃縮し50mlの濃縮液を得た。この濃縮液を用いて陰イオン交換クロマト(カラム;DEAE Sepharose fastflow(直径26mm、長さ320mm)、緩衝液A;0、15M NaClを含む10mMトリス−塩酸緩衝液 pH7.5(500ml)、緩衝液B;0、35M NaClを含む10mMトリス−塩酸緩衝液 pH7.5(500ml)、流速;3ml/min)を行い、エステラーゼ活性を有する各分を得た。この画分を疎水クロマト(カラム;ブチルトヨパール 650S(直径16mm、長さ300mm)、緩衝液A;10%硫酸アンモニウムを含む10mMトリス−塩酸緩衝液 pH7.5(200ml),緩衝液B;10mMトリス−塩酸緩衝液 pH7.5(200ml)、流速;2ml/min)に供試し、エステラーゼ活性を有する画分を得た。このエステラーゼ活性を有する画分を精製酵素とした。
つぎにこの精製酵素を用いて円二色性スペクトルを測定し熱変性温度を測定した。円二色性分散計J−720(日本分光社製)を用い、4μg/mlの上記精製酵素(10mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)を30℃から70℃の範囲(温度スロープ;20℃/時間)、波長222nmの条件で円二色性スペクトルを測定した。得られた円二色性スペクトルから熱変性曲線を求めた結果、本精製酵素の熱変性温度は62.6℃であった。因みに、クロモバクテリウム(Chromobacterium)SC-YM-1株が本来有する野生型のエステラーゼの熱変性温度は50.5℃であった。
【0058】
【発明の効果】
本発明により、有用物質生産に用いられる酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAを導入した形質転換微生物を、前記酵素の活性を失活させることなく、死菌化させることができる。
【0059】
[配列表フリーテキスト]
配列番号5
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
【0060】
【配列表】
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Claims (7)

  1. 熱変性温度が50℃以上である酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列であって下記(1)から(4)のいずれかの塩基配列を有するDNAをエシェリヒア(Escherichia)属の微生物に導入した形質転換微生物を含む液と、該微生物含有液に対し、10重量%以上35重量%以下の量の炭素数1〜3の1価のアルコール及び/又はアセトンとを25℃以上35℃未満で混合することを特徴とする形質転換微生物の死菌化方法。
    (1)配列番号1で示される塩基配列。
    (2)配列番号1で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列であって、かつラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列。
    (3)配列番号2で示される塩基配列。
    (4)配列番号2で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列であって、かつ2,2−ジクロロ−3−(1−プロペニル)シクロプロパン−1−カルボン酸メチルエステルを加水分解する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列。
  2. 熱変性温度が50℃以上である酵素のアミノ酸配列をコードする(1)配列番号3で示される塩基配列、(2)配列番号3で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目のアミノ酸がセリンに置換され、かつ189番目のアミノ酸がチロシンに置換されてなるアミノ酸配列をコードする塩基配列、または(3)前記(2)の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列であって、かつp−ニトロフェノールアセテートを加水分解する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAをエシェリヒア(Escherichia)属の微生物に導入した形質転換微生物を含む液と、該微生物含有液に対し、10重量%以上35重量%以下の量の炭素数1〜3の1価のアルコール及び/又はアセトンとを25℃以上35℃未満で混合することを特徴とする形質転換微生物の死菌化方法。
  3. 前記酵素が加水分解酵素であることを特徴とする請求項1または2記載の死菌化方法。
  4. 前記酵素が60℃以上の熱変性温度を有し、かつ前記アルコール及び/又はアセトンの量が10重量%以上35重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の死菌化方法。
  5. 前記酵素が53℃以上の熱変性温度を有し、かつ前記アルコール及び/又はアセトンの量が10重量%以上30重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の死菌化方法。
  6. 前記酵素が50℃以上の熱変性温度を有し、かつ前記アルコール及び/又はアセトンの量が10重量%以上25重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の死菌化方法。
  7. エシェリヒア(Escherichia)属の微生物が、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)種であることを特徴とする請求項1または2記載の死菌化方法。
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