JP4745762B2 - 還元酵素及びその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、還元反応に利用可能な改変型還元酵素及びその利用に関するものである。
還元酵素は、医農薬の有効成分となる化合物やその中間体、特に光学活性化合物等を製造する為の有機合成反応に利用されている(特許文献1:特開2000-184881号公報)。
光学活性化合物の工業的製造に適した還元酵素を提供する。
特開2000-184881号公報
即ち、本発明は、
1. 配列番号1で示される野生型還元酵素のアミノ酸配列において、少なくとも下記a)からf)の6箇所のアミノ酸置換を有することを特徴とする改変型還元酵素(以下、本発明還元酵素と記すこともある)。
a)12番目のアミノ酸がグリシンに置換、
b)42番目のアミノ酸がロイシンもしくはイソロイシンに置換、
c)67番目のアミノ酸がアルギニンに置換、
d)125番目のアミノ酸がメチオニンに置換、
e)173番目のアミノ酸がプロリンに置換、
f)327番目のアミノ酸がバリンに置換、
2. さらにg)3番目のアミノ酸がセリンに置換され、かつh)4番目のアミノ酸がロイシンに置換されている請求項1に記載の改変型還元酵素、
3. C末端にさらにオリゴペプチドSer−Gly−His−His−His−His−His−Hisが付加されている前記第1または2項に記載の改変型還元酵素、
4. 前記1項乃至3項のいずれかに記載の改変型還元酵素が有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド(以下、本発明ポリヌクレオチドと記すこともある)、
5. 配列番号24で示される前記第4項に記載のポリヌクレオチド、
6. 配列番号25で示される前記第4項に記載のポリヌクレオチド、
7. 宿主細胞内において機能可能なプロモーターと前記4項乃至6項のいずれかに記載のポリヌクレオチドとが機能可能な形で接続されてなることを特徴とするポリヌクレオチド、
8. 前記4項乃至6項のいずれかに記載のポリヌクレオチドを有することを特徴とするベクター、
9. 配列番号26のヌクレオチド配列を有することを特徴とするpHAR1ベクター、
10. 配列番号27のヌクレオチド配列を有することを特徴とするpHAR2ベクター、
11. 前記4項乃至7項のいずれかに記載のポリヌクレオチド又は前記8項乃至10項のいずれかに記載のベクターが宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体、
12. 宿主細胞が微生物であることを特徴とする前記11項に記載の形質転換体、
13. 宿主細胞が大腸菌であることを特徴とする前記12項に記載の形質転換体、
14. 前記4項乃至7項のいずれかに記載のポリヌクレオチド又は前記8項乃至10項のいずれかに記載のベクターを宿主細胞に導入する工程を含むことを特徴とする形質転換体の製造方法、
15. ケトン化合物又はアルデヒド化合物に、前記1項乃至3項のいずれかに記載の改変型還元酵素もしくはそれを産生する微生物、または前記9項乃至11項のいずれかに記載の形質転換体もしくはそれらの処理物を作用させることを特徴とするアルコール化合物の製造方法、
16. ケトン化合物がm−クロロフェナシルクロライドであり、アルコール化合物が1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールであることを特徴とする前記15項に記載のアルコールの製造方法、
17. ケトン化合物が4−クロロ−3−オキソ酪酸エステルであり、アルコール化合物が4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルであることを特徴とする前記15項に記載のアルコール化合物の製造方法、
18. ケトン化合物がN−Boc−ピロリジノンであり、アルコールがN−Boc−ピロリジノールであることを特徴とする前記15項に記載のアルコール化合物の製造方法、等を提供するものである。
本発明によれば、ケトン化合物又はアルデヒド化合物からアルコール化合物を製造するために優れた改変型還元酵素等が得られる。
まず、本発明における改変型還元酵素について説明する。
配列番号1で示される野生型還元酵素のアミノ酸配列とは、348個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、ロドコッカス(Rhodococcus)属(好ましくは、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis))に属する微生物由来の還元酵素である。当該還元酵素及び本発明還元酵素の還元酵素活性(即ち、基質を還元する能力)は、これらのタンパク質を、例えば、m−クロロフェナシルクロライド、NADHと混合して30℃で保温し、遊離するNAD量を反応液の340nmにおける吸光度を指標に定量することにより測定することができる。
尚、ロドコッカス(Rhodococcus)属(好ましくは、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis))に属する微生物は、天然から分離してもよいし、菌株保存機関等から購入してもよい。
天然から分離する場合、まず、土壌を野外から採取する。採取された土壌を滅菌水で懸濁させた後、当該懸濁液を、例えば、PY培地(Bacto Peptoneを5g/L、Yeast Extractを5g/Lの割合で水に溶解した後、pHを7.0に調整)等の微生物分離用固体培地上に塗布し、これを25℃で培養し、数日後に生えてきた菌の独立したコロニーを切り取り、新しい、例えば、PY培地等の微生物分離用固体培地に移植し、これをさらに25℃で培養する。生育してきた菌について、SNEATH, (P.H.A.), MAIR, (N.S.) SHARPE, (M.E.) and HOLT, (J.G.):Bergey's manual of Systematic Bacteriorogy. Vol.2. 1984, Williams and Wilkins, Baltimore.等に記載される方法等に従って、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する微生物であるかを同定することにより、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する微生物を選抜すればよい。
つぎに、選抜されたロドコッカス(Rhodococcus)属に属する微生物から、当該微生物のm−クロロフェナシルクロライドを還元して1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールを生産する能力の有無を、例えば、後述の実施例に記載されるような方法に従って確認することにより、本発明に用いられるロドコッカス(Rhodococcus)属に属する微生物を選抜すればよい。
このように選抜されたロドコッカス(Rhodococcus)に属する微生物のうち、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)ST-10株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託され、FERM BP−8291の寄託番号が付与されている(原寄託日:平成15年2月12日)。菌学的性状は次のとおり。
1.コロニー形態(30℃、48時間)
(1)細胞形態:かん菌、0.6×1.0〜2.0μm
(2)グラム染色性:陽性
(3)胞子の有無:無
(4)運動性の有無:有
2.Nutrient Agar上でのコロニー形態
コロニーの色:黄色
コロニーの形状:円形
コロニーの周縁:全縁滑らか
コロニーの隆起:低凸状
3.生理学的性質
カタラーゼ:陽性
オキシダーゼ:陰性
OFテスト:陽性/陰性
4.16SリボゾームRNAをコードするDNAの塩基配列
ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)ST-10株からPCRにより16SリボゾームDNAの塩基配列約500bpを増幅し、塩基配列を解析した。得られた16SリボゾームDNAの塩基配列を使って、BLASTによる相同性検索を行った結果、相同率99.6%で、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)基準株の16SリボゾームDNAに対し、最も高い相同性を示した。
以上の菌学的性質により、本菌はロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)と同定された。
本発明還元酵素としては、具体的には例えば、(i)配列表の配列番号24のヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列からなる発明還元酵素、(ii)配列表の配列番号25のヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列からなる本発明還元酵素等を挙げることができる。その他に、配列番号1の野生型還元酵素遺伝子のアミノ酸配列において、前記a)からf)のアミノ酸置換に加えて、さらにg)3番目のアミノ酸がセリンに置換され、かつh)4番目のアミノ酸がロイシンに置換されている改変型還元酵素が例示される。さらには、前記のアミノ酸配列のC末端にさらにオリゴペプチドSer−Gly−His−His−His−His−His−Hisが付加されている改変型還元酵素も例示される。
本発明還元酵素は、例えば、後述の本発明ポリヌクレオチド又は後述の本発明ベクター等が宿主細胞に導入されてなる形質転換体(即ち、本発明形質転換体)を培養することにより製造することができる。
当該形質転換体を培養するための培地としては、例えば、微生物等の宿主細胞の培養に通常使用される炭素源や窒素源、有機塩や無機塩等を適宜含む各種の培地を用いることができる。
炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、シュークロース等の糖類、グリセロール等の糖アルコール、フマル酸、クエン酸、ピルビン酸等の有機酸、動物油、植物油及び糖蜜が挙げられる。これらの炭素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1〜30%(w/v)程度である。
窒素源としては、例えば、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーン・スティープ・リカー(Corn Steep Liquor)、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸等の天然有機窒素源、アミノ酸類、硝酸ナトリウム等の無機酸のアンモニウム塩、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸のアンモニウム塩及び尿素が挙げられる。これらのうち有機酸のアンモニウム塩、天然有機窒素源、アミノ酸類等は多くの場合には炭素源としても使用することができる。これらの窒素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1〜30%(w/v)程度である。
有機塩や無機塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩及びリン酸塩を挙げることができる。具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素一カリウム及びリン酸水素二カリウムが挙げられる。これらの有機塩及び/又は無機塩の培地への添加量は培養液に対して通常0.0001〜5%(w/v)程度である。
尚、あらかじめ培地中に原料となる基質を少量添加しておくと、本発明に関する形質転換体の能力を高めることができる。添加する基質の量は、通常0.001%程度以上、好ましくは0.1〜1%程度がよい。
さらに、tacプロモーター、trcプロモーター及びlacプロモーター等のアロラクトースで誘導されるタイプのプロモーターと本発明ポリヌクレオチドとが機能可能な形で接続されてなる遺伝子が導入されてなる形質転換体の場合には、本発明還元酵素の生産を誘導するための誘導剤として、例えば、isopropyl thio-β-D-galactoside(IPTG)を培地中に少量加えることもできる。
後述の本発明ポリヌクレオチド又は後述の本発明ベクター等が宿主細胞に導入されてなる形質転換体(即ち、本発明形質転換体)の培養は、一般微生物における通常の方法に準じて行い、固体培養、液体培養(旋回式振とう培養、往復式振とう培養、ジャーファーメンター(JarFermenter)培養、タンク培養等)等が可能である。特に、ジャーファーメンターを用いる場合、無菌空気を導入する必要があり、通常、培養液量の約0.1〜約2倍/分の通気条件を用いる。培養温度及び培地のpHは、微生物が生育する範囲から適宜選ぶことができ、例えば、約15℃〜約40℃の培養温度にて、pHが約6〜約8の培地で培養することが好ましい。培養時間は、種々の培養条件によって異なるが、通常約1日間〜約5日間が望ましい。温度シフト型やIPTG誘導型等の誘導型のプロモーターを有する発現ベクターを用いた場合には、誘導時間は1日間以内が好ましく、通常数時間である。
後述の本発明ポリヌクレオチド又は後述の本発明ベクター等が宿主細胞に導入されてなる形質転換体(即ち、本発明形質転換体)の培養物から本発明還元酵素を精製する方法としては、通常のタンパク質の精製において使用される方法を適用することができ、例えば、次のような方法を挙げることができる。
まず、当該形質転換体の培養物から遠心分離等により細胞を集めた後、これを超音波処理、ダイノミル処理、フレンチプレス処理等の物理的破砕法又は界面活性剤若しくはリゾチーム等の溶菌酵素を用いる化学的破砕法等によって破砕する。得られた破砕液から遠心分離、メンブレンフィルター濾過等により不純物を除去することにより無細胞抽出液を調製し、これを陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、金属キレートクロマトグラフィー等の分離精製方法を適宜用いて分画することによって、本発明還元酵素を精製することができる。
クロマトグラフィーに使用する担体としては、例えば、カルボキシメチル(CM)基、ジエチルアミノエチル(DEAE)基、フェニル基若しくはブチル基を導入したセルロース、デキストリン又はアガロース等の不溶性高分子担体が挙げられる。市販の担体充填済カラムを用いることもでき、かかる市販の担体充填済カラムとしては、例えば、Q-Sepharose FF、Phenyl-Sepharose HP(商品名、いずれもアマシャム ファルマシア バイオテク社製)、TSK−gel G3000SW(商品名、東ソー社製)等が挙げられる。
尚、本発明還元酵素を含む画分を選抜するには、例えば、m−クロロフェナシルクロライドを還元して1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールを生産する能力を指標にして選抜すればよい。
次いで、本発明ポリヌクレオチドについて説明する。
本発明ポリヌクレオチドは、天然に存在する改変型遺伝子であってもよく、又は天然の野生型遺伝子に変異を導入(部位特異的変異導入法、突然変異処理等)することにより作出された改変型遺伝子であってもよい。上記のような改変型遺伝子及び野生型遺伝子を検索する場合には、例えば、m−クロロフェナシルクロライドを還元して1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールを生産する能力を有する微生物を対象にすればよく、例えば、ロドコッカス(Rhodococcus)属(好ましくは、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis))に属する微生物をその対象として挙げることができる。
本発明還元酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子(即ち、本発明ポリヌクレオチド)を取得するには、まず、野生型還元酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子(即ち、野生型遺伝子)を取得するとよい。ここで、野生型遺伝子とは、配列番号2に示される塩基配列を有する遺伝子であり、例えば、J.Sambrook、E.F.Fritsch、T.Maniatis著;モレキュラー クローニング 第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年、等に記載される通常の遺伝子工学的手法に準じてロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis))に属する微生物から取得することができる。即ち、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis))に属する微生物から「新 細胞工学実験プロトコール」(東京大学医科学研究所制癌研究部編、秀潤社、1993年)に記載された方法に準じてcDNAライブラリーを調製し、調製されたcDNAライブラリーを鋳型として、かつ適切なプライマーを用いてPCRを行うことにより、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA又は配列番号2で示される塩基配列を有するDNA等を増幅して本還元酵素遺伝子を調製する。
野生型遺伝子に部位特異的変異を導入することによって、本発明ポリヌクレオチドを調製することができる。部位特異的変異導入法としては、例えば、 Olfert Landt ら(Gene 96 125-128 1990)、Smithら(Genetic Engineering 3 1 Setlow,J.and Hollaender,A Plenum:New York)、Vlasukら(Experimental Manipulation of Gene Expression,Inouye,M.:Academic Press,New York)、Hos.N.Huntら(Gene 77 51 1989)の方法やMutan-Express Km(宝酒造社製)やTaKaRa La PCR in vitro Mutagenesis Kit(宝酒造社製)の市販キットの利用等があげられる。このようにして、例えば、配列番号1の野生型酵素のアミノ酸配列において6つのアミノ酸変異(12 Gly, 42 Val,67 Arg,125 Met, 173 Pro, 327 Val)が導入されている配列番号23で示されるアミノ酸配列を有する変異型酵素を得ることができる。
例えば、Olfert Landtら(Gene 96 125-128 1990)の方法を用いて、配列番号23で示されるアミノ酸配列においてその42番目のアミノ酸がロイシンで置換されているアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる本発明ポリヌクレオチドを調製するには、まず、配列番号23で示されるアミノ酸配列からなる改変型還元酵素の遺伝子が組み込まれたベクターDNAを、例えばJ.Sambrook、E.F.Fritsch、T.Maniatis著;モレキュラー クローニング 第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年、等に記載される方法に準じて調製する。次いで、得られたベクターDNAを鋳型にして、例えば、配列番号23で示されるアミノ酸配列における42番目のアミノ酸がロイシンに置換されているアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを片側のプライマーとして用い、適切な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをもう一方の側のプライマーとして用いて、PCR法によるDNA断片の増幅を行うとよい。ここで、PCR反応の条件としては、例えば、94℃にて5分間保温した後、94℃にて1分間、次いで50℃にて2分間、さらに75℃にて3分間保温する処理を20サイクル行い、最後に75℃で8分間保温する。このようにして増幅されたDNA断片を、精製した後、改変型還元酵素の遺伝子が組み込まれたベクターDNAと適切な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーを加え、PCR法により、DNA断片の増幅を行うとよい。このようにして得られたDNA断片を、適切な制限酵素、例えば制限酵素EcoRIおよびPstIで消化し、同様の制限酵素消化を行った改変型還元酵素の遺伝子を含むベクターDNAとライゲーション反応を行うことにより、目的とする本発明ポリヌクレオチドを得ることができる。
尚、他のポジションが他のアミノ酸で置換されている場合も上記方法に準じた方法により、目的とする本発明ポリヌクレオチドを得ることができる。
また、本発明ポリヌクレオチドは、例えば、微生物又はファージ由来のベクターに挿入されたDNAライブラリーに本発明ポリヌクレオチドが有する塩基配列から選ばれる部分塩基配列を有する約15塩基程度以上の塩基配列からなるDNAをプローブとして後述する条件にてハイブリダイズさせ、当該プローブが特異的に結合するDNAを検出することによっても取得することができる。
染色体DNA又はDNAライブラリーにプローブをハイブリダイズさせる方法としては、例えば、コロニーハイブリダイゼーションやプラークハイブリダイゼーションを挙げることができ、ライブラリーの作製に用いられたベクターの種類に応じて方法を選択することができる。
使用されるライブラリーがプラスミドベクターを用いて作製されている場合にはコロニーハイブリダイゼーションを利用するとよい。具体的には、ライブラリーのDNAを宿主微生物に導入することにより形質転換体を取得し、得られた形質転換体を希釈した後、当該希釈物を寒天培地上にまき、コロニーが現われるまで培養する。
使用されるライブラリーがファージベクターを用いて作製されている場合にはプラークハイブリダイゼーションを利用するとよい。具体的には、宿主微生物とライブラリーのファージとを感染可能な条件下で混合し、さらに軟寒天培地と混合した後、当該混合物を寒天培地上にまき、プラークが現われるまで培養する。
次いで、いずれのハイブリダイゼーションの場合にも、前記の培養を行った寒天培地上にメンブレンを置き、形質転換体又はファージを当該メンブレンに吸着・転写させる。このメンブレンをアルカリ処理した後、中和処理し、次いでDNAを当該メンブレンに固定する処理を行う。より具体的には、例えば、プラークハイブリダイゼーションの場合には、前記寒天培地上にニトロセルロースメンブレン又はナイロンメンブレン(例えば、Hybond-N+(アマシャム社登録商標))を置き、約1分間静置してファージ粒子をメンブレンに吸着・転写させる。次に、当該メンブレンをアルカリ溶液(例えば1.5M塩化ナトリウム、0.5M水酸化ナトリウム)に約3分間浸してファージ粒子を溶解させることによりファージDNAをメンブレン上に溶出させた後、中和溶液(例えば、1.5M塩化ナトリウム、0.5Mトリス−塩酸緩衝溶液pH7.5)に約5分間浸す。次いで当該メンブレンを洗浄液(例えば、0.3M塩化ナトリウム、30mMクエン酸、0.2Mトリス−塩酸緩衝液pH7.5)で約5分間洗った後、例えば、約80℃で約90分間加熱することによりファージDNAをメンブレンに固定する。
このように調製されたメンブレンを用いて、上記DNAをプローブとしてハイブリダイゼーションを行う。ハイブリダイゼーションは、例えば、J.Sambrook, E.F.Frisch, T.Maniatis著「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition(1989)」 Cold Spring Harbor Laboratory Press等の記載に準じて行うことができる。
プローブに用いられるDNAは、放射性同位元素により標識されたものや、蛍光色素で標識されたものであってもよい。
プローブに用いられるDNAを放射性同位元素により標識する方法としては、例えば、Random Primer Labeling Kit(宝酒造社製)等を利用することにより、PCR反応液中のdCTPを(α−32P)dCTPに替えて、プローブに用いられるDNAを鋳型にしてPCRを行う方法が挙げられる。
また、プローブに用いられるDNAを蛍光色素で標識する場合には、例えば、アマシャム製のECL Direct Nucleic Acid Labeling and Detection System等を用いることができる。
ハイブリダイゼーションは、例えば、以下の通りに行うことができる。
450〜900mMの塩化ナトリウム及び45〜90mMのクエン酸ナトリウムを含みドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を0.1〜1.0重量%の濃度で含み、変性した非特異的DNAを0〜200μl/mlの濃度で含み、場合によってはアルブミン、フィコール、ポリビニルピロリドン等をそれぞれ0〜0.2重量%の濃度で含んでいてもよいプレハイブリダイゼーション液(好ましくは900mMの塩化ナトリウム、90mMのクエン酸ナトリウム、1.0重量%のSDS及び100μl/mlの変性Calf-thymusDNAを含むプレハイブリダイゼーション液)を上記のようにして作製したメンブレン1cm2当たり50〜200μlの割合で準備し、当該プレハイブリダイゼーション液に前記メンブレンを浸して42〜65℃で1〜4時間保温する。
次いで、例えば、450〜900mMの塩化ナトリウム及び45〜90mMのクエン酸ナトリウムを含み、SDSを0.1〜1.0重量%の濃度で含み、変性した非特異的DNAを0〜200μg/mlの濃度で含み、場合によってはアルブミン、フィコール、ポロビニルピロリドン等をそれぞれ0〜0.2重量%の濃度で含んでいてもよいハイブリダイゼーション溶液(好ましくは、900mMの塩化ナトリウム、90mMのクエン酸ナトリウム、1.0重量%のSDS及び100μg/mlの変性Calf-thymusDNAを含むハイブリダイゼーション溶液)と前述の方法で調製して得られたプローブ(メンブレン1cm2当たり1.0×104〜2.0×106cpm相当量)とを混合した溶液をメンブレン1cm2当たり50〜200μlの割合で準備し、当該ハイブリダイゼーション溶液に浸し42〜65℃で12〜20時間保温する。
当該ハイブリダイゼーション後、メンブレンを取り出し、15〜300mMの塩化ナトリウム1.5〜30mMクエン酸ナトリウム及び0.1〜1.0重量%のSDS等を含む42〜65℃の洗浄液(好ましくは15mMの塩化ナトリウム、1.5mMのクエン酸ナトリウム及び1.0重量%のSDSを含む65℃の洗浄液)等を用いて洗浄する。洗浄したメンブレンを2xSSC(300mM塩化ナトリウム、30mMクエン酸ナトリウム)で軽くすすいだ後、乾燥する。このメンブレンを例えばオートラジオグラフィー等に供してメンブレン上のプローブの位置を検出することにより、用いたプローブとハイブリダイズするDNAのメンブレン上の位置に相当するクローンを元の寒天培地上で特定し、これを釣菌することにより、当該DNAを有するクローンを単離する。
このようにして得られるクローンを培養して得られる培養菌体から本発明ポリヌクレオチドを調製することができる。
上記のようにして調製された本発明ポリヌクレオチドを「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO-471-50338-X等に記載されている方法に準じてベクターにクローニングして本発明ベクターを得ることができる。用いられるベクターとしては、具体的には、例えば、pUC119(宝酒造社製)、pTV118N(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)、pCR2.1-TOPO(Invitrogen社製)、pTrc99A(Pharmacia社製)、pKK223-3(Pharmacia社製)等が挙げられる。
また、前述のDNAの塩基配列は、F.Sanger, S.Nicklen, A.R.Coulson著、Proceeding of Natural Academy of Science U.S.A.(1977) 74: 5463-5467頁等に記載されているダイデオキシターミネーター法等により解析することができる。塩基配列分析用の試料調製には、例えば、パーキンエルマー社のABI PRISM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit等の市販の試薬を用いてもよい。
上述のようにして得られるDNAが、m−クロロフェナシルクロライドを還元して1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールを優先して生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードしていることの確認は、例えば、以下のようにして行うことができる。
まず上述のようにして得られるDNAを後述のように、宿主細胞において機能可能なプロモーターの下流に接続されるようにベクターに挿入し、このベクターを宿主細胞に導入して形質転換体を取得する。次いで当該形質転換体の培養物をm−クロロフェナシルクロライドに作用させる。反応生成物中の1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールの量を分析することにより、得られたDNAがかかる能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードすることが確認できる。
本発明ポリヌクレオチドを宿主細胞で発現させるには、例えば、宿主細胞で機能可能なプロモーターと本発明ポリヌクレオチドとが機能可能な形で接続されてなるポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する。
ここで、「機能可能な形で」とは、当該ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入することにより宿主細胞を形質転換させた際に、本発明ポリヌクレオチドが、プロモーターの制御下に発現するようにプロモーターと結合された状態にあることを意味する。プロモーターとしては、大腸菌のラクトースオペロンのプロモーター、大腸菌のトリプトファンオペロンのプロモーター、または、tacプロモーターもしくはtrcプロモーター等の大腸菌内で機能可能な合成プロモーター等をあげることができる。
一般的には、宿主細胞において機能可能なプロモーターと機能可能な形で接続されてなる遺伝子を下記のような基本ベクターに組み込んでなるベクターを宿主細胞に導入する。ここで「基本ベクター」としては、具体的には大腸菌を宿主細胞とする場合には、例えば、ベクターpUC119(宝酒造社製)やファージミドpBluescriptII(Stratagene社製)等をあげることができる。出芽酵母を宿主細胞とする場合には、ベクターpGBT9、pGAD424、pACT2(Clontech社製)等をあげることができる。また、哺乳類動物細胞を宿主細胞とする場合には、pRc/RSV、pRc/CMV(Invitrogen社製)等のベクター、ウシパピローマウイルスベクターpBPV(アマシャムファルマシアバイオテク社製)もしくはEBウイルスベクターpCEP4(Invitrogen社製)等のウイルス由来の自律複製起点を含むベクター、ワクシニアウイルス等のウイルス等をあげることができる。さらに、昆虫類動物細胞を宿主細胞とする場合には、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスをあげることができる。
自律複製起点を含むベクター、例えば、上記の酵母用ベクターpACT2や、ウシパピローマウイルスベクターpBPV、EBウイルスベクターpCEP4等を用いて本発明ベクターを構築すると、当該ベクターは宿主細胞に導入された際にエピソームとして細胞内に保持される。 尚、基本ベクターとして選択マーカー遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等の抗生物質耐性付与遺伝子等)を含むベクターを用いると、当該ベクターが導入された形質転換体を当該選択マーカー遺伝子の表現型等を指標にして選択することができる。
また本発明ベクターは、酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸又は酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを還元型に変換する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドをさらに含有してもよい。このような本発明ベクターを用いることにより、酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸又は酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを還元型に変換する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドをさらに保有する本発明形質転換体を作製することもできる。
宿主細胞において機能可能なプロモーターと機能可能な形で接続されてなる本発明ポリヌクレオチド又は本発明ベクター等を導入する宿主細胞としては、例えば、Escherichia属、Bacillus属、Corynebacterium属、Staphylococcus属、Streptomyces属、Saccharomyces属、Kluyveromyces属及びAspergillus属に属する微生物等があげられる。
宿主細胞において機能可能なプロモーターと機能可能な形で接続されてなる本発明ポリヌクレオチド又は本発明ベクター等を宿主細胞へ導入する方法は、用いられる宿主細胞に応じて通常使われる導入方法であればよく、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO-471-50338-X等に記載される塩化カルシウム法や、「Methods in Electroporation:Gene Pulser /E.coli Pulser System」 Bio-Rad Laboratories, (1993)等に記載されるエレクトロポレーション法等をあげることができる。
宿主細胞において機能可能なプロモーターと機能可能な形で接続されてなる本発明ポリヌクレオチド又は本発明ベクター等が導入された形質転換体を選抜するには、例えば、前述のようなベクターに含まれる選択マーカー遺伝子の表現型を指標にして選抜すればよい。
当該形質転換体が本発明ポリヌクレオチドを保有していることは、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press等に記載される通常の方法に準じて、制限酵素部位の確認、塩基配列の解析、サザンハイブリダイゼーション、ウエスタンハイブリダイゼーション等を行うことにより、確認することができる。
このようにして調製された本発明ポリヌクレオチドを用いて、前述の如く、通常の遺伝子工学的方法及び微生物培養方法等に準じ、本発明還元酵素を大量に製造し、取得することができる。
このようにして調製された本発明還元酵素を産生する本発明形質転換体又はその処理物は、基質を還元するバイオリアクターとして、例えば医農薬の有効生物となる化合物やその中間体、特に光学活性である化合物やその中間体等を製造する為の有機合成反応に利用することが可能である。
次に、本発明におけるアルコール化合物の製造方法について説明する。
ケトン化合物又はアルデヒド化合物としては、例えば、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−ペプチルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、2−オキソプロピオンアルデヒド、トランス−シンナムアルデヒド、4−ブロモベンズアルデヒド、2−ニトロベンズアルデヒド、3−ニトロベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、4−クロロベンズアルデヒド、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、3−ペンタノン、3−クロロ−2−ブタノン、tert−ブチルアセトアセテート、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、ヒドロキシアセトン、1,1−ジクロロアセトン、クロロアセトン、ジヒドロキシアセトン、1,1−ジクロロアセトン、メチル 3−オキソブタノエート、エチル 3−オキサブタノネート、エチル 4−クロロアセトアセテート、メチル 4−ブロモー3−オキサブタノエート、エチル 4−ブロモ−3−オキサブタノエート、N−tert−ブトキシカルボニル−3−ピロリジノン、イソプロピル 4−シアノ−3−オキソブタノエート、エチル 4−シアノ−3−オキソブタノエート、メチル 4−シアノ−3−オキソブタノエート、メチル 3−オキソペンタノエート、m−クロロフェナシルクロライド、アセトフェノン、2’−ブロモアセトフェノン、3’−ブロモアセトフェノン、4’−ブロモアセトフェノン、2−クロロアセトフェノン、3’−クロロアセトフェノン、4’−クロロアセトフェノン、ベンジルアセトン、1−フェニル−2−ブタノン、m−メトキシアセトフェノン、3,4−ジメトキシアセトフェノン、4’−メトキシアセトフェノン、2,3’−ジクロロアセトフェノン、3,4−ジメトキシフェニルアセトン、シクロペンタノン、N−ベンジルピロリジノン、N−Boc−ピロリジノン、4−アセチル安息香酸、D-(+)-グルコース等が挙げられる。
上記方法は、通常、水及び還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NADHと記す。)の存在下に行うとよい。この際に用いられる水は、緩衝水溶液であってもよい。当該緩衝水溶液に用いられる緩衝剤としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム水溶液、酢酸カリウム等の酢酸アルカリ金属塩及びこれらの混合物が挙げられる。
上記方法においては、水に加えて有機溶媒を共存させることもできる。共存させることができる有機溶媒としては、例えば、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロプルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル類、トルエン、ヘキサン、シクロへヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、ジメチルスルホキシド等の有機硫黄化合物、アセトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類及びこれらの混合物が挙げられる。
本発明還元酵素は、有機溶媒、特に2−プロパノール存在下(例えば、20%(v/v)、30℃、22時間反応)での活性が向上した改変型還元酵素である。当該還元酵素は、基質であるケトン化合物又はアルデヒド化合物の存在下であっても活性を高く保持でき、及び/または、高い基質濃度下で変換反応が可能であることから、工業的なアルコール化合物の製造において有利である。補酵素をリサイクルするための基質となりうる2−プロパノール等の有機溶媒から、当該還元酵素の失活を軽減することが可能となるために、2−プロパノール等の有機溶媒の存在下で優れた活性を示す。
本発明の改変還元酵素は、例えば、20%(v/v)の2−プロパノールの存在下において30℃で22時間での還元反応を行った場合の還元酵素活性が、同様に還元反応を行った場合の野生型還元酵素の還元酵素活性よりも高く、有機溶媒耐性に優れる。
上記方法における反応は、例えば、水、NADH、及びケトン化合物又はアルデヒド化合物を、本発明還元酵素あるいはそれを産生する形質転換体又はその処理物とともに、必要によりさらに有機溶媒等を含有した状態で、攪拌、振盪等により混合することにより行われる。
上記方法における反応時のpHは適宜選択することができるが、通常pH3〜10の範囲である。また反応温度は適宜選択することができるが、原料及び生成物の安定性、反応速度の点から通常0〜60℃の範囲である。
反応の終点は、例えば、反応液中のケトン化合物又はアルデヒド化合物の量を液体クロマトグラフィー等により追跡することにより決めることができる。
反応時間は適宜選択することができるが、通常、0.5時間から10日間の範囲である。
反応液からのアルコールの回収は、一般に知られている方法を適宜選んで行えばよい。
例えば、反応液の有機溶媒抽出操作、濃縮操作等の後処理を、必要によりカラムクロマトグラフィー、蒸留等を組み合わせて、行うことにより精製する方法が挙げられる。
本発明還元酵素、それを産生する形質転換体又はその処理物は種々の形態で上記方法に用いることができる。
具体的な形態としては、例えば、本発明ポリヌクレオチドを保有する形質転換体の培養物、かかる形質転換体の処理物、無細胞抽出液、粗精製タンパク質、精製タンパク質等及びこれらの固定化物が挙げられる。ここで、形質転換体の処理物としては、例えば、凍結乾燥形質転換体、有機溶媒処理形質転換体、乾燥形質転換体、形質転換体摩砕物、形質転換体の自己消化物、形質転換体の超音波処理物、形質転換体抽出物、形質転換体のアルカリ処理物が挙げられる。また、固定化物を得る方法としては、例えば、担体結合法(シリカゲルやセラミック等の無機担体、セルロース、イオン交換樹脂等に本発明還元酵素等を吸着させる方法)及び包括法(ポリアクリルアミド、含硫多糖ゲル(例えばカラギーナンゲル)、アルギン酸ゲル、寒天ゲル等の高分子の網目構造の中に本発明還元酵素等を閉じ込める方法)が挙げられる。
尚、本発明ポリヌクレオチドを保有する形質転換体を用いた工業的な生産を考慮すれば、生形質転換体を用いるよりも当該形質転換体を死滅化させた処理物を用いる方法が製造設備の制限が少ないという点では好ましい。そのための死菌化処理方法としては、例えば、物理的殺菌法(加熱、乾燥、冷凍、光線、超音波、濾過、通電)や、化学薬品を用いる殺菌法(アルカリ、酸、ハロゲン、酸化剤、硫黄、ホウ素、砒素、金属、アルコール、フェノール、アミン、サルファイド、エーテル、アルデヒド、ケトン、シアン及び抗生物質)が挙げられる。一般的には、これらの殺菌法のうちできるだけ本発明還元酵素の酵素活性を失活させず、かつ反応系への残留、汚染などの影響が少ない処理方法を選択することが望ましい。
また、本発明のアルコール化合物の製造方法はNADHの存在下に行われ、ケトン化合物又はアルデヒド化合物の還元反応の進行に伴い、当該NADHは酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NAD+と記す)に変換される。変換により生じたNAD+は、NAD+を還元型(NADH)に変換する能力を有するタンパク質により元のNADHに戻すことができるので、上記方法の反応系内には、NAD+をNADHに変換する能力を有するタンパク質を共存させることもできる。
NAD+をNADHに変換する能力を有するタンパク質としては、例えば、グルコース脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素及び有機脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素等)等が挙げられる。
また、NAD+をNADHに変換する能力を有するタンパク質がグルコース脱水素酵素である場合には、反応系内にグルコース等を共存させることにより当該タンパク質の活性が増強される場合もあり、例えば、反応液にこれらを加えてもよい。
また、当該タンパク質は、酵素そのものであってもよいし、また当該酵素をもつ微生物又は当該微生物の処理物の形態で反応系内に共存していてもよい。さらにまた、NAD+をNADHに変換する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子を含む形質転換体又はその処理物であってもよい。ここで処理物とは、前述にある「形質転換体の処理物」と同等なものを意味する。
さらに、本発明のアルコール化合物の製造方法では、グルコース脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素及び有機脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素等)等のようなNAD+をNADHに変換する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子を同時に保有する形質転換体を用いて行うこともできる。
この形質転換体において、両者遺伝子を宿主細胞へ導入する方法としては、例えば、単一である、両者遺伝子を含むベクターを宿主細胞に導入する方法、複製起源の異なる複数のベクターに両者遺伝子を別々に導入した組換ベクターにより宿主細胞を形質転換する方法等があげられる。さらに、一方の遺伝子または両者遺伝子を宿主細胞の染色体中に導入してもよい。
尚、単一である、両者遺伝子を含むベクターを宿主細胞に導入する方法としては、例えば、プロモーター、ターミネーター等の発現制御に関わる領域をそれぞれの両者遺伝子に連結して組換ベクターを構築したり、ラクトースオペロンのような複数のシストロンを含むオペロンとして発現させるような組換ベクターを構築してもよい。
以下、実施例等により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はそれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1 (野生型還元酵素の遺伝子の調製)
(1−1)プラスミドpEAR1の調製
配列番号3(PAR207F:(5’−AAGAATTCAAGGAGATAAGGCCATGAAGGCCATCCAGTAC −3’)で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号4(PAR207R:5’−TTTCTGCAGGCCTCACAGGCCAGGGACCACAACCGC −3’)で示されるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、例えば、Appl.Microbiol.Biotechnol.(1999)52:386−392等に記載される公知のプラスミドであるpUAR(野生型還元酵素の遺伝子を保有するプラスミド、受託番号FERM P−18127)を鋳型にして下記の反応液組成及び反応条件でPCRを行った。
[反応液組成]
pUAR:5ng
dNTP:各0.2mM-mix
プライマー:各300nM
KOD−Plus−buffer:5μl
MgSO:1mM
KOD−Plus−DNAポリメラーゼ:1U
計50μl
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPTC-200 Thermal Cycler (MJリサーチ)にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(0.25分間)-55℃(0.5分間)-68℃(2分間)のサイクルを30回行なった。
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片に2種類の制限酵素(EcoRI及びPstI)を加えることにより、当該DNA断片を2重消化させた。次いで得られたDNA断片を精製した。
一方、ベクターpUC118(Pharmacia製)を2種類の制限酵素(EcoRI及びPstI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼ(宝酒造社製)でライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli JM109株を形質転換した。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて野生型還元酵素の遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpEAR1と記すこともある。)を取り出した。
(1−2)プラスミドpEAR2の調製
配列番号3(PAR207F:5’−AAGAATTCAAGGAGATAAGGCCATGAAGGCCATCCAGTAC −3’)で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号5(PAR207RH:3’−TTTCTGCAGTCAGTGGTGGTGGTGGTGGTGGCCGGACAGGCCAGGGACCACAACCGC−5’)で示されるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、pUAR(受託番号FERM P−18127)を鋳型にして下記の反応液組成及び反応条件でPCRを行った。
[反応液組成]
pEAR1:1ng
dNTP:各0.2mM−mix
プライマー:各500nM
ExTaq−buffer:5μl
ExTaq−DNAポリメラーゼ(宝酒造社製):5U
計100μl
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPTC-200 Thermal Cycler (MJリサーチ)にセットし、94℃(5分間)に加熱した後、94℃(0.5分間)−55℃(0.5分間)−72℃(1分間)のサイクルを30回行った。
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片に2種類の制限酵素(KpnI及びPstI)を加えることにより、当該DNA断片を2重消化させた。次いで得られたDNA断片を精製した。
一方、プラスミドpEAR1を2種類の制限酵素(KpnI及びPstI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli JM109株を形質転換した。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて野生型還元酵素の遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpEAR2と記すこともある。)を取り出した。
(1−3)プラスミドpEAR2sの調製
プラスミドpEAR2に制限酵素(EcoT14I)を加えることにより、当該DNA断片を消化させた。次いで得られたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られたDNA断片を、T4 DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社製)で平滑化した後、T4 DNAリガーゼでセルフライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli JM109株を形質転換した。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用い、野生型還元酵素の遺伝子の一部欠如した遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpEAR2sと記すこともある。)を取り出した。
実施例2 (プラスミドpEAR2のランダム変異導入ライブラリーの調製)
配列番号6(RV-M:5’−GAGCGGATAACAATTTCACACAGG −3’)(宝酒造社製)で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号7(M13-47:5’−CGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGAC −3’)(宝酒造社製)で示されるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、pEAR2を鋳型にして下記の反応液組成及び反応条件でPCRを行った。
[反応液組成]
pEAR1:1ng
dATP:0.2mM
dTTP:1mM
dGTP:0.2mM
dCTP:1mM
プライマー:各30pmol
MgCl:7mM
MnCl2 :0.5mM
KCl:50mM
Tris−HCl buffer (pH8.3):10mM
Gelatin:0.01%(w/v)
Taq−DNAポリメラーゼ(ロシュ・ダイアグノスティックス):5U
計100μl
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPTC-200 Thermal Cycler (MJリサーチ)にセットし、94℃(1分間)-45℃(1分間)-72℃(1分間)のサイクルを30回行なった。
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片に制限酵素(SfiI)を加えることにより、当該DNA断片を消化させた。次いで得られたDNA断片を精製した。
一方、プラスミドpEAR2sを制限酵素(SfiI)を加えることにより、当該ベクターを消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli JM109株を形質転換した。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてランダム変異の導入された野生型還元酵素の遺伝子を含有するランダム変異導入ライブラリーを取り出した。
実施例3 (有機溶媒耐性を有する形質転換大腸菌の選抜)
(3−1) 有機溶媒耐性(20%イソプロパノール中で活性を示す)を有する形質転換大腸菌の一次選抜
実施例2で得られた形質転換体を0.4mMのisopropyl−β−D−thiogalactopyranoside(IPTG)、100μg/mlのアンピシリン、0.01%(w/v)のZnCl、10g/LのBacto-tryptone(Difco)、5g/LのBacto−yeast extract(Difco)、10g/LのNaCl及び15g/Lのアガロースを含有する滅菌寒天培地に接種し、これを30℃で24時間培養した。培養後、得られたコロニーをナイロン膜(BiodyneA, 日本ポール社製)に転写した後、そのナイロン膜を1mMのNAD、200μMのnitroblue tetrazolium、10μMの1−methoxy−5−methylphenazinium methylsulfate(同仁化学研究所社製)及び20%(v/v)の2-プロパノールを含む50mMの3−(N−morpholino)propanesulfonic acid(MOPS)バッファー中に室温で30分間浸した。その後、ナイロン膜を蒸留水で洗浄し、染色されたコロニー320種を選抜した。選抜された320のコロニー、プラスミドpEAR2にて形質転換されたJM109形質転換大腸菌(JM109(pEAR2))、そして、プラスミドpEAR2sにて形質転換されたJM109形質転換大腸菌(JM109(pEAR2s))を、100μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%塩化ナトリウム)(100μl)に接種し、これを37℃で18時間振盪培養した。
(3−2) 有機溶媒耐性(20%イソプロパノール中で活性を示す)を有する形質転換大腸菌の二次選抜
(3−1)で一次選抜された320種の選抜コロニーのうち、40コロニーを0.4mMのIPTG)、100μg/mlのアンピシリン、0.01%(w/v)のZnCl、10g/LのBacto‐tryptone(Difco)、5g/LのBacto−yeast extract(Difco)、10g/LのNaClを含有する滅菌培地(1ml)に接種し、これを37℃で22時間培養した。培養後、得られた培養液を遠心分離(20000×g、5分、4℃)することにより、沈殿として湿菌体を回収した。回収された湿菌体に、最終濃度1mMとなるNADを含む最終濃度50mMとなるMOPSバッファー0.4mlを加えた。次に、5%(w/v)のm−クロロフェナシルクロライドを含む2−プロパノール0.1mlを加えた。これを30℃で22時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを1ml添加し、有機層を分取した。有機層はNaSO4にて脱水処理を行った。当該有機層を下記条件で液体クロマトグラフィーによる含量分析に供試した。このような分析を160種の一次選抜された全てのコロニーについて行った結果、クローンC38、C12、H23、E9を見出した。
(含量分析条件)
カラム:Chiralcel OB−H(ダイセル化学工業社製)
キャリアー溶媒:n−ヘキサン/2−プロパノール=9:1(v/v)
流速:0.8ml/分
検出器:UV268nm
実施例4 (多重改変型ポリヌクレオチドの作製)
(4−1) ライゲーションによる改変型遺伝子の作製
実施例3(3−2)で二次選抜されたクローンC38、C12、H23、E9をそれぞれ100μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(4ml)に接種し、これを37℃で22時間振盪培養した。培養後、得られたクローンC38、C12、H23、E9からそれぞれQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてプラスミドを取り出した。クローンH23のプラスミドを精製した後、2種類の制限酵素(AccIとHindIII)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製し3384bpのDNA断片を得た。クローンC38のプラスミドを精製した後、2種類の制限酵素(AccIとKpnI)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製し280bpのDNA断片を得た。クローンE9のプラスミドを精製した後、2種類の制限酵素(KpnIとHindIII)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製し550bpのDNA断片を得た。このようにして精製して得られた3種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coliJM109株を形質転換した。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用い、野生型還元酵素の遺伝子に変異が導入されたプラスミド(以下、プラスミドpSarPと記すこともある。)を取り出した。
(4−2) 部位特異的変異導入操作
配列番号8(PARSQ-R1:5’−CATTAGGCACCCCAGGCTTTACAC−3’)で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号13(PAR-A125T-comp:5’−CTCATGATGAAGACGTCCGAGTGGC −3’)で示されるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、pSarPを鋳型にして下記の反応液組成及び反応条件でPCRを行った。また、配列番号14(PAR-T373A-sens:5’−GCACCCGGCGCGATGGCCGAGTTCA−3’)で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号15(PAR-T517C-comp:5’−CAACCGCGTACGGGCCTCCGCGAAG−3’)で示されるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、pSarPを鋳型にして下記の反応液組成及び反応条件でPCRを行った。
[反応液組成]
pSarP:5ng
dNTP:各0.2mM−mix
プライマー:各300nM
KOD−Plus−buffer:5μl
MgSO:1mM
KOD−Plus−DNAポリメラーゼ:1U
計50μl
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPTC−200 Thermal Cycler (MJリサーチ)にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−68℃(2分間)のサイクルを30回行なった。
配列番号8(PARSQ-R1:5’−CATTAGGCACCCCAGGCTTTACAC−3’)で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号13(PAR−A125T−comp:5’−CTCATGATGAAGACGTCCGAGTGGC−3’)で示されるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、pSarPを鋳型にして下記の反応液組成及び反応条件でPCRを行った結果、262bpのDNA断片が得られた。また、配列番号14(PAR−T373A−sens:5’−GCACCCGGCGCGATGGCCGAGTTCA−3’)で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号15(PAR−T517C−comp:5’−CAACCGCGTACGGGCCTCCGCGAAG−3’)で示されるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、pSarPを鋳型にして下記の反応液組成及び反応条件でPCRを行った結果、169bpのDNA断片が得られた。このようにして精製して得られた2種類のDNA断片をプライマーに用いて、pSarPを鋳型にして下記の反応液組成及び反応条件でPCRを行った。
[反応液組成]
pSarP:5ng
dNTP:各0.2mM−mix
プライマー:各300nM
KOD−Plus−buffer:5μl
MgSO:1mM
KOD−Plus−DNAポリメラーゼ:1U
計50μl
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPTC−200 Thermal Cycler (MJリサーチ)にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−68℃(2分間)のサイクルを30回行なった。
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片に2種類の制限酵素(EcoRI及びBsiWI)を加えることにより、当該DNA断片を2重消化させた。次いで得られた537bpのDNA断片を精製した。
一方、プラスミドpSarPを2種類の制限酵素(EcoRI及びBsiWI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼ(宝酒造社製)でライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli JM109株を形質転換した。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて改変型還元酵素の遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpSarAと記すこともある。)を取り出した。
(4−2)で得られたプラスミドpSarAをダイデオキシ法により変異箇所の塩基配列を決定し、9つのアミノ酸変異(12 Gly,20 Arg,42 Val,67 Arg,125 Met,163 Arg,173 Pro,275 Leu,327 Val)が導入されていることを確認した。
実施例5 (変異型ポリヌクレオチドの作製:プラスミドpSar2、pSar6、pSar8の構築)
表1で示される塩基配列を有する組合わせのオリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、プラスミドpSarAを鋳型にして以下の反応液組成及び反応条件で第1PCRを行った。
Figure 0004745762
[反応液組成]
pSarA:5ng
dNTP:各0.2mM−mix
プライマー:各300nM
KOD−Plus−buffer:5μl
MgSO:1mM
KOD−Plus−DNAポリメラーゼ:1U
計50μl
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPTC−200 Thermal Cycler (MJリサーチ)にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−68℃(2分間)のサイクルを30回行った。
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片と表2に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、プラスミドpSarAを鋳型にして以下の反応液組成及び反応条件で第2PCRを行った。
Figure 0004745762
[反応液組成]
pSarA:5ng
dNTP:各0.2mM−mix
プライマー:各300nM
KOD−Plus−buffer:5μl
MgSO:1mM
KOD−Plus−DNAポリメラーゼ:1U
計50μl
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPTC−200 Thermal Cycler (MJリサーチ)にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−68℃(2分間)のサイクルを30回行なった。
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片に表3に示す2種類の制限酵素を加えることにより、当該DNA断片を2重消化させた。次いで得られたDNA断片を精製した。
一方、プラスミドpSarAを表3に示す2種類の制限酵素を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
Figure 0004745762
このようにして精製して得られたそれぞれのプラスミドに対応する2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli JM109株を形質転換した。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて改変型還元酵素の遺伝子を含有するそれぞれのプラスミドを取り出した。
実施例7 (プラスミドpSar268の構築、および、当該プラスミドを保有する形質転換体の調製)
プラスミドpSar2を2種類の制限酵素(XhoI及びHindIII)を加えることにより、プラスミドpSarAを2重消化させた。次いで得られたベクター部分のDNA断片を精製した。
また、プラスミドpSar6を2種類の制限酵素(XhoI及びKpnI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたインサート部分のDNA断片を精製した。
一方、プラスミドpSar8を2種類の制限酵素(KpnI及びHindIII)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたインサート部分のDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた3種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli JM109株を形質転換した。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて改変型還元酵素の遺伝子を含有するプラスミドを取り出した(以下、プラスミドpSar268と記すこともある。)。
実施例8 (本発明ポリヌクレオチドを保有する形質転換体の調製)(プラスミドpSar268の42番目のアミノ酸(Val)を別のアミノ酸に置換したプラスミドの構築)
配列番号19(SatSar3: 5'-CTGCCACTCGGACNNKTTCATCATGAGC-3')もしくは配列番号20(SatSar3-2: 5'-CTGCCACTCGGACMHYTTCATCATGAGC-3')で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと、配列番号12(PARSQ-F3: 5'-GCACCGAGACCGGGAGGATTG-3')で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、プラスミドpSar268を鋳型にして以下の反応液組成及び反応条件で第1PCRを行った。
[反応液組成]
pSar268:5ng
dNTP:各0.2mM−mix
プライマー:各300nM
KOD−Plus−buffer:5μl
MgSO:1mM
KOD−Plus−DNAポリメラーゼ:1U
計50μl
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPTC−200 Thermal Cycler (MJリサーチ)にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(0.25分間)−58℃(0.5分間)−68℃(0.5分間)のサイクルを30回繰り返し、65℃(5分間)ののち、4℃で保温した。
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片と配列番号8(PARSQ-R1: 5'-CATTAGGCACCCCAGGCTTTACAC-3')に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、プラスミドpSar268を鋳型にして以下の反応液組成及び反応条件で第2PCRを行った。
[反応液組成]
pSar268:5ng
dNTP:各0.2mM−mix
プライマー:各300nM
KOD−Plus−buffer:5μl
MgSO:1mM
KOD−Plus−DNAポリメラーゼ:1U
計50μl
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPTC−200 Thermal Cycler (MJリサーチ)にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(0.25分間)−58℃(0.5分間)−68℃(0.5分間)のサイクルを30回繰り返し、65℃(5分間)ののち、4℃で保温した。
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片に2種類の制限酵素(EcoRI及びXhoI)を加えることにより、当該DNA断片を2重消化させた。次いで得られたDNA断片を精製した。
一方、プラスミドpSar268を2種類の制限酵素(EcoRI及びXhoI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた後、carf intestineアルカリフォスファターゼ処理した。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、Ligation Convenience Kit(ニッポンジーン社製)でライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli JM109株を形質転換した。出現したシングルコロニーから、配列番号19(SatSar3)を使用した反応については80個、配列番号20(SatSar3-2)を使用した反応については24個それぞれランダムに選び、培養の後プラスミドを調製した。
得られたプラスミドに挿入されたDNA断片の塩基配列を確認し、42番目のアミノ酸置換を調べたところ、42番目のValがLeu、Ile、Trp、Ala、Met、His、Cys、Thr、Asn、Gln、Tyr、Lys、Gly、Glu、Asp、Ser、Arg、Phe、Proに置換された置換体が得られたことを確認した。
なお、プラスミドに挿入されたDNA断片の塩基配列の解析は、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を用いて各プラスミドを鋳型としてシークエンス反応を行い、得られたDNAの塩基配列をABI PRISM 310 Genetic Analyserで解析することにより行った。
実施例9 (本発明還元酵素を用いた反応(その1))
実施例8で得られた形質転換体の中から50クローンを選抜し、さらに、プラスミドpSar268またはpRAE2sでE.coli JM109株を形質転換したおのおの8クローンずつの形質転換体、合計66クローンを0.4mMのIPTG、100μg/mlのアンピシリン、0.01%(w/v)のZnCl、10g/LのBacto-tryptone(Difco)、5g/LのBacto−yeast extract(Difco)、10g/LのNaClを含有する滅菌培地(1ml)に接種し、これを37℃で22時間培養した。培養後、得られた培養液を遠心分離(20000×g、5分、4℃)することにより、沈澱として湿菌体を回収した。回収された湿菌体約10mgに、17.4%(v/v)の2−プロパノール、4%(w/v)のm−クロロフェナシルクロライド、1mMのNAD含む50mM MOPS緩衝液(pH7.0)0.5mlを添加した。これを30℃で22時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを1ml添加し、有機層を分取した。有機層はNaSOにて脱水処理を行なった。当該有機層を下記条件でガスクロマトグラフィーによる含量分析に供試した。(R)- 1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールとm−クロロフェナシルクロライドの合計ピーク面積に対する(R)- 1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールのピーク面積の割合を変換率として算出した。結果を表4に示す。このような分析を66種のクローンについて行った結果、42番目のアミノ酸がロイシンまたはイソロイシンに置換された変異体が有意に高い変換能を持つことを見出した。得られた42番目のアミノ酸がロイシンまたはイソロイシンに置換された変異型Sar268を有する形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて改変型還元酵素の遺伝子を含有するプラスミドをそれぞれ取り出した(以下、プラスミドpSar268V42L、またはプラスミドpSar268V42Iと記すこともある。)。
(含量分析条件)
カラム:CP-cyclodextrine-β-236 M-19, 0.25mm by 25m
カラム温度:160℃
インジェクション温度:240℃
ディテクション温度:250℃
キャリアーガス:ヘリウム(流量:0.4ml/min)
検出器:FID
Figure 0004745762
Figure 0004745762
Figure 0004745762
実施例10 (改変型還元酵素をコードする遺伝子の5’末端配列と開始コドン前の16残基を特定の遺伝子配列に置換したベクターの構築、および、当該ベクターを保有する形質転換体の調製(その2))(pHARn、pHAR1、またはpHAR2の構築)
改変型還元酵素をコードする遺伝子の5’末端配列と開始コドン前の16残基を特定の遺伝子配列に置換したベクターを構築するため、配列番号21(PARHE-S:5'-ATGAAATCATTACAATATACGAGAATCGGCGCG-3')で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと、配列番号22(PARHE-A:5'-ATGAGACTCTCCAGTCAAATTGTTATCCGCTCAC-3')で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをT4 polynucleotide kinase(New England Biolabs)にてリン酸化した後、これらのオリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、プラスミドpSar268、pSar268V42L、またはpSar268V42Iを鋳型にして以下の反応液組成及び反応条件でPCRを行った。
[反応液組成]
テンプレートDNA:5ng
dNTP:各0.2mM−mix
プライマー:各300nM
KOD−Plus−buffer:5μl
MgSO:1mM
KOD−Plus−DNAポリメラーゼ:1U
計50μl
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPTC−200 Thermal Cycler (MJリサーチ)にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(0.25分間)−58℃(0.5分間)−68℃(4分間)のサイクルを30回繰り返し、65℃(5分間)ののち、4℃で保温した。
3種類のPCR反応液を用いて、Ligation Convenience Kit(ニッポンジーン社製)でそれぞれライゲーションした後、制限酵素DpnI(Fermentas社製)にて制限酵素処理した。得られた処理液でE.coli JM109株を形質転換した。プレート上に出現したシングルコロニーをかき取り、このコロニーを100μg/mlのアンピシリン、0.01%(w/v)のZnCl、10g/LのBacto-tryptone(Difco)、5g/LのBacto−yeast extract(Difco)、10g/LのNaClを含有する滅菌培地(2ml)に接種し、これを37℃で22時間培養した。培養菌体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてプラスミドを取り出した。
得られた3種類のプラスミドの塩基配列を確認し、-16番目から-1番目の塩基配列がGACTGGAGAGTCTCATであり、また、1番目から18番目の塩基配列がATGAAATCATTACAATATであることを確認した。また、42番目のアミノ酸置換を調べたところ、プラスミドpSar268を鋳型にしたものには置換は認められず、pSar268V42Lを鋳型にしたものにでは42番目のValがLeuに、pSar268V42Iを鋳型にしたものでは42番目のValがIleに置換される変異が導入されたプラスミドが得られたことを確認した(以下、それぞれプラスミドpHARn、プラスミドpHAR1、または、pHAR2と記すこともある。)。
なお、プラスミドに挿入されたDNA断片の塩基配列の解析は、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を用いて各プラスミドを鋳型としてシークエンス反応を行い、得られたDNAの塩基配列をABI PRISM 310 Genetic Analyserで解析することにより行った。
実施例11 (本発明還元酵素を用いた反応(その2))
実施例7、10で得られた4種類の形質転換体を0.4mMのIPTG、100μg/mlのアンピシリン、0.01%(w/v)のZnCl、10g/LのBacto-tryptone(Difco)、5g/LのBacto−yeast extract(Difco)、10g/LのNaClを含有する滅菌培地(1ml)に接種し、これを37℃で22時間培養した。培養後、得られた培養液を遠心分離(20000×g、5分、4℃)することにより、沈澱として湿菌体を回収した。回収された湿菌体約10mgに、21.8%(v/v)の2−プロパノール、5%(w/v)のm−クロロフェナシルクロライド、1mMのNAD含む50mM MOPS緩衝液(pH7.0)0.5mlを添加した。これを30℃で22時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを1ml添加し、有機層を分取した。有機層はNaSOにて脱水処理を行なった。当該有機層を下記条件でガスクロマトグラフィーによる含量分析に供試した。(R)- 1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールとm−クロロフェナシルクロライドの合計ピーク面積に対する(R)- 1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールのピーク面積の割合を変換率として算出した。結果を表5に示す。
(含量分析条件)
カラム:CP-cyclodextrine-β-236 M-19, 0.25mm by 25m
カラム温度:160℃
インジェクション温度:240℃
ディテクション温度:250℃
キャリアーガス:ヘリウム(流量:0.4ml/min)
検出器:FID
Figure 0004745762
実施例12 (本発明還元酵素を用いた反応(その3))(m−クロロフェナシルクロライドを用いた反応)
2種類の形質転換体(JM109(pHAR1) 、JM109(pSar268))を0.4mMのIPTG、100μg/mlのアンピシリン、0.01%(w/v)のZnCl、10g/LのBacto−tryptone(Difco)、5g/LのBacto−yeast extract(Difco)、10g/LのNaClを含有する滅菌培地(100ml)に接種し、これを37℃で22時間培養した。培養後、得られた培養液を遠心分離(5000×g、15分、4℃)することにより、沈澱として湿菌体を回収した。回収された湿菌体30mgに、20%(v/v)の2−プロパノール、1mMのNADを含む50mM MOPS緩衝液(pH7.0)0.5mlを添加したものに、m−クロロフェナシルクロライドを100、125、150、175、または、200mg添加した。これを30℃で22時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを1ml添加し、有機層を分取した。有機層はNaSOにて脱水処理を行なった。当該有機層を下記条件でガスクロマトグラフィーによる含量分析に供試した。(R)- 1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールとm−クロロフェナシルクロライドの合計ピーク面積に対する(R)- 1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールのピーク面積の割合を変換率として算出した。結果を表6に示す。また、いずれの反応条件でも1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールの光学純度は99%e.e.(R)以上であった。
(含量分析条件)
カラム:CP-cyclodextrine-β-236 M-19, 0.25mm by 25m
カラム温度:160℃
インジェクション温度:240℃
ディテクション温度:250℃
キャリアーガス:ヘリウム(流量:0.4ml/min)
検出器:FID
保持時間:m−クロロフェナシルクロライド; 8.5分
(S)- 1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノール;12.7分
(R)- 1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノール;13.1分
Figure 0004745762
実施例13 (本発明還元酵素を用いた反応(その4))(4−クロロ−3−オキソ酪酸エチルを用いた反応)
2種類の形質転換体(JM109(pHAR1) 、JM109(pSar268))を0.4mMのIPTG、100μg/mlのアンピシリン、1%(w/v)のZnCl、10g/LのBacto−tryptone(Difco)、5g/LのBacto−yeast extract(Difco)、10g/LのNaClを含有する滅菌培地(100ml)に接種し、これを37℃で22時間培養した。培養後、得られた培養液を遠心分離(5000×g、15分、4℃)することにより、沈澱として湿菌体を回収した。回収された湿菌体30mgに、20%(v/v)の2−プロパノール、1mMのNADを含む50mM MOPS緩衝液(pH7.0)0.25mlを添加したものに、さらに50、75、87.5、または、100μlの4−クロロ−3−オキソ酪酸エチルとn−オクタンを合計0.25mlとなるよう添加した。これを30℃で22時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを1ml添加し、有機層を分取した。有機層はNaSOにて脱水処理を行なった。当該有機層を下記条件でガスクロマトグラフィーによる含量分析に、液体クロマトグラフィーによる光学異性体分析に供試した。各形質転換体を用いて反応を行なった時のガスクロマトグラフィーによる結果から4−クロロ−3−オキソ酪酸エチルのモル変換率を算出した。結果を表7に示す。また、いずれの反応条件でも4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチルの光学純度は99%e.e.(R)以上であった。
(含量分析条件)
カラム:CP-cyclodextrine-β-236 M-19, 0.25mm by 25m
カラム温度:120℃
インジェクション温度:240℃
ディテクション温度:250℃
キャリアーガス:ヘリウム(流量:0.4ml/min)
検出器:FID
保持時間:4−クロロ−3−オキソ酪酸エチル; 6.0分
4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチル;8.4分
(光学異性体分析条件)
カラム:Chiralcel OB−H(ダイセル化学工業社製)
キャリアー溶媒:n−ヘキサン/2−プロパノール=9:1(v/v)
流速:1.0ml/分
カラム温度:30℃
検出器:UV220nm
保持時間:4−クロロ−3−オキソ酪酸エチル;11.6分
(R)- 4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチル;7.7分
(S)- 4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチル;8.3分
Figure 0004745762
実施例14 (本発明還元酵素を用いた反応(その5))(N-Boc-ピロリジノンを用いた反応)
2種類の形質転換体(JM109(pHAR1) 、JM109(pSar268))を0.4mMのIPTG、100μg/mlのアンピシリン、1%(w/v)のZnCl、10g/LのBacto−tryptone(Difco)、5g/LのBacto−yeast extract(Difco)、10g/LのNaClを含有する滅菌培地(100ml)に接種し、これを37℃で22時間培養した。培養後、得られた培養液を遠心分離(5000×g、15分、4℃)することにより、沈澱として湿菌体を回収した。回収された湿菌体30mgに、20%(v/v)の2−プロパノール、1mMのNADを含む50mM MOPS緩衝液(pH7.0)0.5mlを添加したものに、さらに50、75、100、または125mgのN-Boc-ピロリジノンを添加した。これを30℃で22時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを1ml添加し、有機層を分取した。有機層はNaSOにて脱水処理を行なった。当該有機層を下記条件で、液体クロマトグラフィーによる含量分析に供試した。各形質転換体を用いて反応を行なった時の液体クロマトグラフィーによる結果からN-Boc-ピロリジノンのモル変換率を算出した。結果を表8に示す。また、いずれの反応条件でもN-Boc-ピロリジノールの光学純度は99%e.e.(S)以上であった。
(含量分析および光学異性体分析条件)
カラム:Chiralcel OB−H(ダイセル化学工業社製)
キャリアー溶媒:n−ヘキサン/2−プロパノール=4:1(v/v)
流速:0.5ml/分
カラム温度:40℃
検出器:UV220nm
保持時間:N-Boc-ピロリジノン;20.1分
(R)- N-Boc-ピロリジノール;13.4分
(S)- N-Boc-ピロリジノール;11.9分
Figure 0004745762
実施例15 (本発明還元酵素の精製)
実施例8、10に記載された方法で培養を行った形質転換体5種類を各々超音波破砕(20KHz、15分、4℃)した後、遠心分離(100000xg、60分、4℃)を行い、その上清を得る。得られた超遠心上清をイオン交換クロマトグラフィーカラム[DEAE-Sepharose CL-6B(アマシャムファルマシアバイオテク社製)][カリウム−リン酸バッファー(20mM、pH7.5)で平衡化したもの]に展着し、NaClを溶解したカリウム−リン酸バッファー(NaCl濃度0M→0.8Mの濃度勾配)を移動層として目的酵素を溶出する。溶出画分の酵素活性の測定はアセトフェノンを用いて行う。
具体的には、溶出画分を含む0.01mlの溶出液に、アセトフェノン(0.365mg/ml)及びNADH(0.543mg/ml)を溶解したリン酸緩衝液(50mM,pH7.0)0.99mlを加え、25℃で保温し、340nmの吸光度の減少を測定する。還元酵素活性のある画分を集め、当該画分に硫酸アンモニウムをその濃度が1.8Mになるまで徐々に加える。これを疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム[Butyl-Toyopearl 650(東ソー社製)][1.8M硫酸アンモニウムを含むカリウム−リン酸バッファー(20mM、pH7.0)で平衡化したもの]に展着し、硫酸アンモニウムを溶解したカリウム−リン酸バッファー(硫酸アンモニウム濃度1.8M→0Mの濃度勾配)を移動層として目的酵素を溶出する。還元酵素活性のある画分を集め、当該画分に硫酸アンモニウムをその濃度が1.8Mになるまで徐々に加える。これを疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム[Phenyl-Toyopearl 650(東ソー社製)][1.8M硫酸アンモニウムを含むカリウム−リン酸バッファー(20mM、pH7.0)で平衡化したもの]に展着し、硫酸アンモニウムを溶解したカリウム−リン酸バッファー(硫酸アンモニウム濃度1.8M→0Mの濃度勾配)を移動層として目的酵素を溶出する。還元酵素活性のある画分を集め、当該画分をCellulofine GC-700mカラム(生化学工業社製)[0.1MNaClを含むカリウム−リン酸バッファー(20mM、pH7.0)で平衡化したもの]に展着し、0.1MNaClを含むカリウム−リン酸バッファーを移動層として目的酵素を溶出する。還元酵素活性のある画分を集め、当該画分をCellulofine GC-2000sfカラム(生化学工業社製)[0.1MNaClを含むカリウム−リン酸バッファー(20mM、pH7.0)で平衡化したもの]に展着し、0.1MNaClを含むカリウム−リン酸バッファーを移動層として目的酵素を溶出させる。還元酵素活性のある画分を集め、精製還元酵素を得る。
「配列表フリーテキスト」
配列番号1
野生型還元酵素のアミノ酸配列
配列番号2
野生型還元酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA
配列番号3
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号4
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号5
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号6
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号7
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号8
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号9
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号10
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号11
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号12
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号13
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号14
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号15
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号16
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号17
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号18
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号19
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号20
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号21
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号22
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号23
変異型還元酵素のアミノ酸配列
配列番号24
変異型還元酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA
配列番号25
変異型還元酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA
配列番号26
変異型還元酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA
配列番号27
変異型還元酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA

Claims (17)

  1. 配列番号1で示される野生型還元酵素のアミノ酸配列において、少なくとも下記a)からf)の6箇所のアミノ酸置換を有することを特徴とする改変型還元酵素。
    a)12番目のアミノ酸がグリシンに置換、
    b)42番目のアミノ酸がロイシンもしくはイソロイシンに置換、
    c)67番目のアミノ酸がアルギニンに置換、
    d)125番目のアミノ酸がメチオニンに置換、
    e)173番目のアミノ酸がプロリンに置換、
    f)327番目のアミノ酸がバリンに置換。
  2. さらにg)3番目のアミノ酸がセリンに置換され、かつh)4番目のアミノ酸がロイシンに置換されている請求項1に記載の改変型還元酵素。
  3. C末端にさらにオリゴペプチドSer−Gly−His−His−His−His−His−Hisが付加されている請求項1または2に記載の改変型還元酵素。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の改変型還元酵素が有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド。
  5. 配列番号24のポリヌクレオチドを有する請求項4に記載のポリヌクレオチド。
  6. 配列番号25のポリヌクレオチドを有する請求項4に記載のポリヌクレオチド。
  7. 宿主細胞内において機能可能なプロモーターと請求項4乃至6のいずれかに記載のポリヌクレオチドとが機能可能な形で接続されてなることを特徴とするポリヌクレオチド。
  8. 請求項4乃至6のいずれかに記載のポリヌクレオチドを有することを特徴とするベクター。
  9. 配列番号26のヌクレオチド配列を有することを特徴とするpHAR1ベクター。
  10. 配列番号27のヌクレオチド配列を有することを特徴とするpHAR2ベクター。
  11. 請求項4乃至7のいずれかに記載のポリヌクレオチド又は請求項8乃至10のいずれかに記載のベクターが宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体。
  12. 宿主細胞が微生物であることを特徴とする請求項11に記載の形質転換体。
  13. 宿主細胞が大腸菌であることを特徴とする請求項12に記載の形質転換体。
  14. 請求項4乃至7のいずれかに記載のポリヌクレオチド又は請求項8乃至10のいずれかに記載のベクターを宿主細胞に導入する工程を含むことを特徴とする形質転換体の製造方法。
  15. m−クロロフェナシルクロライドに、請求項1乃至3のいずれかに記載の改変型還元酵素もしくはそれを産生する微生物、または請求項11乃至13のいずれかに記載の形質転換体もしくはそれらの処理物を作用させることを特徴とする1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールの製造方法。
  16. 4−クロロ−3−オキソ酪酸エステルに、請求項1乃至3のいずれかに記載の改変型還元酵素もしくはそれを産生する微生物、または請求項11乃至13のいずれかに記載の形質転換体もしくはそれらの処理物を作用させることを特徴とする4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルの製造方法。
  17. N−Boc−ピロリジノンに、請求項1乃至3のいずれかに記載の改変型還元酵素もしくはそれを産生する微生物、または請求項11乃至13のいずれかに記載の形質転換体もしくはそれらの処理物を作用させることを特徴とするN−Boc−ピロリジノールの製造方法。
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