JP4558414B2 - 還元酵素及びその利用 - Google Patents
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Description
中でも有機溶媒に対する還元酵素の安定性、即ち有機溶媒耐性が高いと、基質又は生成物からの阻害を回避するために添加される有機溶媒による当該還元酵素の失活を軽減することが可能となる。そこで、反応時間の短縮及び反応効率の向上を図るうえで有機溶媒耐性に優れた還元酵素が切望されている。
1.野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列において、(1)12番目のアミノ酸がグリシンに、(2)20番目のアミノ酸がアルギニンに、(3)42番目のアミノ酸がバリンに、(4)67番目のアミノ酸がアルギニンに、(5)125番目のアミノ酸がメチオニンに、(6)163番目のアミノ酸がアルギニンに、(7)173番目のアミノ酸がプロリンに、(8)275番目のアミノ酸がロイシンに、及び、(9)327番目のアミノ酸がバリンにそれぞれ置換されていること以外には配列番号1で示されるアミノ酸配列と同等なアミノ酸配列を有し、かつ、m−クロロフェナシルクロライドを還元して1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールを生産する能力を少なくとも有することを特徴とする改変型還元酵素;
2.前項1記載の改変型還元酵素における12番目、20番目、42番目、67番目、125番目、163番目、173番目、275番目及び327番目のアミノ酸のうち、いずれか一つ以上の改変型アミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなり、かつ、前記アミノ酸のうち、いずれか一つ以上の改変型アミノ酸を保存してなることを特徴とする改変型還元酵素;
3.20番目及び163番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする前項2記載の改変型還元酵素;
4.163番目及び275番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする前項2記載の改変型還元酵素;
5.20番目、163番目及び275番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする前項2記載の改変型還元酵素;
6.12番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする前項2記載の改変型還元酵素;
7.20番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする前項2記載の改変型還元酵素;
8.42番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする前項2記載の改変型還元酵素;
9.67番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする前項2記載の改変型還元酵素;
10.125番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする前項2記載の改変型還元酵素;
11.163番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする前項2記載の改変型還元酵素;
12.173番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする前項2記載の改変型還元酵素;
13.275番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする前項2記載の改変型還元酵素;
14.327番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする前項2記載の改変型還元酵素;
15.前項1乃至14記載のいずれかの改変型還元酵素が有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド(以下、本発明ポリヌクレオチドと記すこともある。);
16.宿主細胞内において機能可能なプロモーターと前項15記載のポリヌクレオチドとが機能可能な形で接続されてなることを特徴とするポリヌクレオチド;
17.前項15記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とするベクター(以下、本発明ベクターと記すこともある。);
18.前項15若しくは16記載のポリヌクレオチド又は前項17記載のベクターが宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体(以下、本発明形質転換体と記すこともある。);
19.宿主細胞が微生物であることを特徴とする前項18記載の形質転換体;
20.宿主細胞が大腸菌であることを特徴とする前項18記載の形質転換体;
21.前項15記載のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する工程を含むことを特徴とする形質転換体の製造方法;
22.前項17記載のベクターが、酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを還元型に変換する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドをさらに含むことを特徴とするベクター;
23.酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを還元型に変換する能力を有するタンパク質がグルコース脱水素酵素であることを特徴とする前項22記載のベクター;
24.前項18乃至20記載のいずれかの形質転換体が、酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを還元型に変換する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドをさらに保有することを特徴とする形質転換体;
25.前項22又は23記載のベクターが宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体;
26.宿主細胞が微生物であることを特徴とする前項25記載の形質転換体;
27.宿主細胞が大腸菌であることを特徴とする前項25記載の形質転換体;
28.ケトン化合物又はアルデヒド化合物に、前項1乃至14記載のいずれかの改変型還元酵素、それを産生する微生物、前項18乃至20記載のいずれかの形質転換体、前項24乃至27記載のいずれかの形質転換体、又は、それらの処理物を作用させることを特徴とするアルコールの製造方法(以下、本発明製造方法と記すこともある。);
29.ケトン化合物又はアルデヒド化合物がm−クロロフェナシルクロライドであり、アルコールが1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールであることを特徴とするアルコールの製造方法;
30.酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを還元型に変換する能力を有するタンパク質を反応系内に共存させること特徴とする前項28又は29記載のアルコールの製造方法;
31.酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを還元型に変換する能力を有するタンパク質がグルコース脱水素酵素であることを特徴とする前項30記載のアルコールの製造方法;
等を提供するものである。
本発明における改変型還元酵素は、(A)野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列において、(1)12番目のアミノ酸がグリシンに、(2)20番目のアミノ酸がアルギニンに、(3)42番目のアミノ酸がバリンに、(4)67番目のアミノ酸がアルギニンに、(5)125番目のアミノ酸がメチオニンに、(6)163番目のアミノ酸がアルギニンに、(7)173番目のアミノ酸がプロリンに、(8)275番目のアミノ酸がロイシンに、及び、(9)327番目のアミノ酸がバリンにそれぞれ置換されていること以外には配列番号1で示されるアミノ酸配列と同等なアミノ酸配列(配列番号23)を有し、かつ、m−クロロフェナシルクロライドを還元して1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールを生産する能力を少なくとも有することを特徴とする改変型還元酵素(以下、全改変型還元酵素と記すこともある。)、又は、(B)前項A記載の改変型還元酵素における12番目、20番目、42番目、67番目、125番目、163番目、173番目、275番目及び327番目のアミノ酸のうち、いずれか一つ以上の改変型アミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなり、かつ、前記アミノ酸のうち、いずれか一つ以上の改変型アミノ酸を保存してなることを特徴とする改変型還元酵素である(以下、復帰改変型還元酵素と記すこともある。)(尚、以下、両者(A)及び(B)を総じて本発明還元酵素と記すこともある。)。
天然から分離する場合、まず、土壌を野外から採取する。採取された土壌を滅菌水で懸濁させた後、当該懸濁液を、例えば、PY培地(Bacto Peptoneを5g/L、Yeast Extractを5g/Lの割合で水に溶解した後、pHを7.0に調整)等の微生物分離用固体培地上に塗布し、これを25℃で培養し、数日後に生えてきた菌の独立したコロニーを切り取り、新しい、例えば、PY培地等の微生物分離用固体培地に移植し、これをさらに25℃で培養する。生育してきた菌について、SNEATH, (P.H.A.), MAIR, (N.S.) SHARPE, (M.E.) and HOLT, (J.G.):Bergey's manual of Systematic Bacteriorogy. Vol.2. 1984, Williams and Wilkins, Baltimore.等に記載される方法等に従って、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する微生物であるかを同定することにより、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する微生物を選抜すればよい。
つぎに、選抜されたロドコッカス(Rhodococcus)属に属する微生物から、当該微生物のm−クロロフェナシルクロライドを還元して1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールを生産する能力の有無を、例えば、後述の実施例に記載されるような方法に従って確認することにより、本発明に用いられるロドコッカス(Rhodococcus)属に属する微生物を選抜すればよい。
1.コロニー形態(30℃、48時間)
(1)細胞形態:異形成かん菌、1〜1.5μm×5〜15μm
(2)グラム染色性:陽性
(3)胞子の有無:無
(4)運動性の有無:無
2.培地における生育状態
(1)標準寒天平板培地
コロニーは点状、表面は凸円状、全縁状で象牙色。
(2)標準液体培地
粉状沈殿を有する。皮膜形成無し。
3.生理学的性質
カタラーゼ:陽性
オキシダーゼ:陽性
OFテスト:利用しない。
当該形質転換体を培養するための培地としては、例えば、微生物等の宿主細胞の培養に通常使用される炭素源や窒素源、有機塩や無機塩等を適宜含む各種の培地を用いることができる。
尚、あらかじめ培地中に原料となる基質を少量添加しておくと、本発明に関する形質転換体の能力を高めることができる。添加する基質の量は、通常0.001%程度以上、好ましくは0.1〜1%程度がよい。
クロマトグラフィーに使用する担体としては、例えば、カルボキシメチル(CM)基、ジエチルアミノエチル(DEAE)基、フェニル基若しくはブチル基を導入したセルロース、デキストリン又はアガロース等の不溶性高分子担体が挙げられる。市販の担体充填済カラムを用いることもでき、かかる市販の担体充填済カラムとしては、例えば、Q-Sepharose FF、Phenyl-Sepharose HP(商品名、いずれもアマシャム ファルマシア バイオテク社製)、TSK−gel G3000SW(商品名、東ソー社製)等が挙げられる。
尚、本発明還元酵素を含む画分を選抜するには、例えば、m−クロロフェナシルクロライドを還元して1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールを生産する能力を指標にして選抜すればよい。
本発明ポリヌクレオチドは、天然に存在する改変型遺伝子であってもよく、又は天然の野生型遺伝子に変異を導入(部位特異的変異導入法、突然変異処理等)することにより作出された改変型遺伝子であってもよい。上記のような改変型遺伝子及び野生型遺伝子を検索する場合には、m−クロロフェナシルクロライドを還元して1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールを生産する能力を少なくとも有する微生物を対象にすればよく、例えば、ロドコッカス(Rhodococcus)属(好ましくは、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis))に属する微生物をその対象として挙げることができる。
尚、他のポジションが他のアミノ酸で置換されている場合も上記方法に準じた方法により、目的とする本発明ポリヌクレオチドを得ることができる。
<変異群>
(1)配列番号1で示されるアミノ酸配列における12番目のアミノ酸がグリシンに置換される変異、(2)配列番号1で示されるアミノ酸配列における20番目のアミノ酸がアルギニンに置換される変異、(3)配列番号1で示されるアミノ酸配列における42番目のアミノ酸がバリンに置換される変異、(4)配列番号1で示されるアミノ酸配列における67番目のアミノ酸がアルギニンに置換される変異、(5)配列番号1で示されるアミノ酸配列における125番目のアミノ酸がメチオニンに置換される変異、(6)配列番号1で示されるアミノ酸配列における163番目のアミノ酸がアルギニンに置換される変異、(7)配列番号1で示されるアミノ酸配列における173番目のアミノ酸がプロリンに置換される変異、(8)配列番号1で示されるアミノ酸配列における275番目のアミノ酸がロイシンに置換される変異、(9)配列番号1で示されるアミノ酸配列における327番目のアミノ酸がバリンに置換される変異
プローブに用いられるDNAを放射性同位元素により標識する方法としては、例えば、Random Primer Labeling Kit(宝酒造社製)等を利用することにより、PCR反応液中のdCTPを(α−32P)dCTPに替えて、プローブに用いられるDNAを鋳型にしてPCRを行う方法が挙げられる。
また、プローブに用いられるDNAを蛍光色素で標識する場合には、例えば、アマシャム製のECL Direct Nucleic Acid Labeling and Detection System等を用いることができる。
450〜900mMの塩化ナトリウム及び45〜90mMのクエン酸ナトリウムを含みドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を0.1〜1.0重量%の濃度で含み、変性した非特異的DNAを0〜200μl/mlの濃度で含み、場合によってはアルブミン、フィコール、ポリビニルピロリドン等をそれぞれ0〜0.2重量%の濃度で含んでいてもよいプレハイブリダイゼーション液(好ましくは900mMの塩化ナトリウム、90mMのクエン酸ナトリウム、1.0重量%のSDS及び100μl/mlの変性Calf-thymusDNAを含むプレハイブリダイゼーション液)を上記のようにして作製したメンブレン1cm2当たり50〜200μlの割合で準備し、当該プレハイブリダイゼーション液に前記メンブレンを浸して42〜65℃で1〜4時間保温する。
次いで、例えば、450〜900mMの塩化ナトリウム及び45〜90mMのクエン酸ナトリウムを含み、SDSを0.1〜1.0重量%の濃度で含み、変性した非特異的DNAを0〜200μg/mlの濃度で含み、場合によってはアルブミン、フィコール、ポロビニルピロリドン等をそれぞれ0〜0.2重量%の濃度で含んでいてもよいハイブリダイゼーション溶液(好ましくは、900mMの塩化ナトリウム、90mMのクエン酸ナトリウム、1.0重量%のSDS及び100μg/mlの変性Calf-thymusDNAを含むハイブリダイゼーション溶液)と前述の方法で調製して得られたプローブ(メンブレン1cm2当たり1.0×104〜2.0×106cpm相当量)とを混合した溶液をメンブレン1cm2当たり50〜200μlの割合で準備し、当該ハイブリダイゼーション溶液に浸し42〜65℃で12〜20時間保温する。
自律複製起点を含むベクター、例えば、上記の酵母用ベクターpACT2や、ウシパピローマウイルスベクターpBPV、EBウイルスベクターpCEP4等を用いて本発明ベクターを構築すると、当該ベクターは宿主細胞に導入された際にエピソームとして細胞内に保持される。 尚、基本ベクターとして選択マーカー遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等の抗生物質耐性付与遺伝子等)を含むベクターを用いると、当該ベクターが導入された形質転換体を当該選択マーカー遺伝子の表現型等を指標にして選択することができる。
また本発明ベクターは、酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸又は酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを還元型に変換する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドをさらに含有してもよい。このような本発明ベクターを用いることにより、酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸又は酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを還元型に変換する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドをさらに保有する本発明形質転換体を作製することもできる。
当該形質転換体が本発明ポリヌクレオチドを保有していることは、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press等に記載される通常の方法に準じて、制限酵素部位の確認、塩基配列の解析、サザンハイブリダイゼーション、ウエスタンハイブリダイゼーション等を行うことにより、確認することができる。
このようにして調製された本発明還元酵素を産生する本発明形質転換体又はその処理物は、基質を還元するバイオリアクターとして、例えば医農薬の有効生物となる化合物やその中間体、特に光学活性である化合物やその中間体等を製造する為の有機合成反応に利用することが可能である。
当該製造方法はケトン化合物又はアルデヒド化合物に、本発明還元酵素、それを産生する形質転換体又はその処理物を作用させることを特徴とする。
反応時間は適宜選択することができるが、通常0.5時間から10日間の範囲である。
例えば、反応液の有機溶媒抽出操作、濃縮操作等の後処理を、必要によりカラムクロマトグラフィー、蒸留等を組み合わせて、行うことにより精製する方法が挙げられる。
NAD+をNADHに変換する能力を有するタンパク質としては、例えば、グルコース脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素及び有機脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素等)等が挙げられる。
NAD+をNADHに変換する能力を有するタンパク質としてのグルコース脱水素酵素はNAD+をNADHに変換する際、基質としてグルコースを要するものであり、グルコースを酸化し、グルコノラクトンに変換する能力を有するタンパク質、もしくはそのタンパク質を発現する微生物またはその処理物であってもよい。
また、NAD+をNADHに変換する能力を有するタンパク質がグルコース脱水素酵素である場合には、反応系内にグルコース等を共存させることにより当該タンパク質の活性が増強される場合もあり、例えば、反応液にこれらを加えてもよい。
また、当該タンパク質は、酵素そのものであってもよいし、また当該酵素をもつ微生物又は当該微生物の処理物の形態で反応系内に共存していてもよい。さらにまた、NAD+をNADHに変換する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子を含む形質転換体又はその処理物であってもよい。ここで処理物とは、前述にある「形質転換体の処理物」と同等なものを意味する。
この形質転換体において、両者遺伝子を宿主細胞へ導入する方法としては、例えば、単一である、両者遺伝子を含むベクターを宿主細胞に導入する方法、複製起源の異なる複数のベクターに両者遺伝子を別々に導入した組換ベクターにより宿主細胞を形質転換する方法等があげられる。さらに、一方の遺伝子または両者遺伝子を宿主細胞の染色体中に導入してもよい。
尚、単一である、両者遺伝子を含むベクターを宿主細胞に導入する方法としては、例えば、プロモーター、ターミネーター等の発現制御に関わる領域をそれぞれの両者遺伝子に連結して組換ベクターを構築したり、ラクトースオペロンのような複数のシストロンを含むオペロンとして発現させるような組換ベクターを構築してもよい。
(1−1)プラスミドpEAR1の調製
配列番号3(PAR207F:(5’−AAGAATTCAAGGAGATAAGGCCATGAAGGCCATCCAGTAC −3’)で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号4(PAR207R:5’−TTTCTGCAGGCCTCACAGGCCAGGGACCACAACCGC −3’)で示されるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、例えば、Appl. Microbiol. Biotechnol. (1999) 52: 386-392等に記載される公知のプラスミドであるpUAR(野生型還元酵素の遺伝子を保有するプラスミド、受託番号FERM P−18127)を鋳型にして下記の反応液組成及び反応条件でPCRを行った。
pUAR:5ng
dNTP:各0.2mM-mix
プライマー:各300nM
KOD−Plus−buffer:5μl
MgSO4:1mM
KOD−Plus−DNAポリメラーゼ:1U
計50μl
上記組成の反応液が入った容器をPTC-200 Thermal Cycler (MJリサーチ)にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(0.25分間)-55℃(0.5分間)-68℃(2分間)のサイクルを30回行なった。
一方、ベクターpUC118(Pharmacia製)を2種類の制限酵素(EcoRI及びPstI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼ(宝酒造社製)でライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli JM109株を形質転換した。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて野生型還元酵素の遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpEAR1と記すこともある。)を取り出した。
配列番号3(PAR207F:5’−AAGAATTCAAGGAGATAAGGCCATGAAGGCCATCCAGTAC −3’)で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号5(PAR207RH:3’−TTTCTGCAGTCAGTGGTGGTGGTGGTGGTGGCCGGACAGGCCAGGGACCACAACCGC−5’)で示されるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、プラスミドpEAR1を鋳型にして下記の反応液組成及び反応条件でPCRを行った。
pEAR1:1ng
dNTP:各0.2mM−mix
プライマー:各500nM
ExTaq−buffer:5μl
ExTaq−DNAポリメラーゼ(宝酒造社製):5U
計100μl
上記組成の反応液が入った容器をPTC-200 Thermal Cycler (MJリサーチ)にセットし、94℃(5分間)に加熱した後、94℃(0.5分間)−55℃(0.5分間)−72℃(1分間)のサイクルを30回行なった。
一方、プラスミドpEAR1を2種類の制限酵素(KpnI及びPstI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli JM109株を形質転換した。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて野生型還元酵素の遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpEAR2と記すこともある。)を取り出した。
プラスミドpEAR2に制限酵素(SfiI, EcoT14I)を加えることにより、当該DNA断片を消化させた。次いで得られたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られたDNA断片を、T4 DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社製)で平滑化した後、T4 DNAリガーゼでセルフライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli JM109株を形質転換した。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用い、野生型還元酵素の遺伝子の一部欠如した遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpEAR2sと記すこともある。)を取り出した。
配列番号6(RV-M:5’−GAGCGGATAACAATTTCACACAGG −3’)(宝酒造社製)で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号7(M13-47:5’−CGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGAC −3’)(宝酒造社製)で示されるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、pEAR2を鋳型にして下記の反応液組成及び反応条件でPCRを行った。
pEAR2:1ng
dATP:0.2mM
dTTP:1mM
dGTP:0.2mM
dCTP:1mM
プライマー:各30pmol
MgCl2:7mM
KCl:50mM
Tris−HCl buffer (pH8.3):10mM
Gelatin:0.01%(w/v)
Taq−DNAポリメラーゼ(ロシュ・ダイアグノスティックス):5U
計100μl
上記組成の反応液が入った容器をPTC-200 Thermal Cycler (MJリサーチ)にセットし、94℃(1分間)-45℃(1分間)-72℃(1分間)のサイクルを30回行なった。
一方、プラスミドpEAR2sを制限酵素(SfiI)を加えることにより、当該ベクターを消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli JM109株を形質転換した。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてランダム変異の導入された野生型還元酵素の遺伝子を含有するランダム変異導入ライブラリーを取り出した。
(3−1) 有機溶媒耐性(20%イソプロパノール中で活性を示す)を有する形質転換大腸菌の一次選抜
実施例2で得られた形質転換体を0.4mMのisopropyl−β−D−thiogalactopyranoside(IPTG)、100μg/mlのアンピシリン、1%(w/v)のZnCl2、10g/LのBacto-tryptone(Difco)、5g/LのBacto−yeast extract(Difco)、10g/LのNaCl及び15g/Lのアガロースを含有する滅菌寒天培地に接種し、これを30℃で24時間培養した。培養後、得られたコロニーをナイロン膜(BiodyneA, 日本ポール社製)に転写した後、そのナイロン膜を1mMのNAD+、200μMのnitroblue tetrazolium、10μMの1−methoxy−5−methylphenazinium methylsulfate(同仁化学研究所社製)及び20%(v/v)の2-プロパノールを含む50mMの3−(N−morpholino)propanesulfonic acid(MOPS)バッファー中に室温で30分間浸した。その後、ナイロン膜を蒸留水で洗浄し、染色されたコロニー160種を選抜した。選抜された160のコロニー、プラスミドpEAR2にて形質転換されたJM109形質転換大腸菌(JM109(pEAR2))、そして、pEAR2sにて形質転換されたJM109形質転換大腸菌(JM109(pEAR2s))を、100μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%塩化ナトリウム)(100μl)に接種し、これを37℃で18時間振盪培養した。
(3−1)で一次選抜された160種の選抜コロニーのうち、40コロニーを0.4mMのIPTG)、100μg/mlのアンピシリン、1%(w/v)のZnCl2、10g/LのBacto‐tryptone(Difco)、5g/LのBacto−yeast extract(Difco)、10g/LのNaClを含有する滅菌培地(1ml)に接種し、これを37℃で22時間培養した。培養後、得られた培養液を遠心分離(20000×g、5分、4℃)することにより、沈殿として湿菌体を回収した。回収された湿菌体に、最終濃度1mMとなるNAD+を含む最終濃度50mMとなるMOPSバッファー0.4mlを加えた。次に、5%(w/v)のm−クロロフェナシルクロライドを含む2−プロパノール0.1mlを加えた。これを30℃で22時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを1ml添加し、有機層を分取した。有機層はNa2CO3にて脱水処理を行った。当該有機層を下記条件で液体クロマトグラフィーによる含量分析に供試した。このような分析を160種の一次選抜された全てのコロニーについて行った結果、クローンC38、C12、H23、E9を見出した。
カラム:Chiralcel OB−H(ダイセル化学工業社製)
キャリアー溶媒:n−ヘキサン/2−プロパノール=9:1(v/v)
流速:0.8ml/分
検出器:UV268nm
(4−1) ライゲーションによる改変型遺伝子の作製
実施例3(3−2)で二次選抜されたクローンC38、C12、H23、E9をそれぞれ100μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(4ml)に接種し、これを37℃で22時間振盪培養した。培養後、得られたクローンC38、C12、H23、E9からそれぞれQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてプラスミドを取り出した。クローンH23のプラスミドを精製した後、2種類の制限酵素(AccIとHindIII)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製し3384bpのDNA断片を得た。クローンC38のプラスミドを精製した後、2種類の制限酵素(AccIとKpnI)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製し280bpのDNA断片を得た。クローンE9のプラスミドを精製した後、2種類の制限酵素(KpnIとHindIII)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製し550bpのDNA断片を得た。このようにして精製して得られた3種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coliJM109株を形質転換した。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用い、野生型還元酵素の遺伝子に変異が導入されたプラスミド(以下、プラスミドpSarPと記すこともある。)を取り出した。
配列番号8(PARSQ-R1:5’−CATTAGGCACCCCAGGCTTTACAC−3’)で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号14(PAR-A125T-comp:5’−CTCATGATGAAGACGTCCGAGTGGC −3’)で示されるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、pSarPを鋳型にして下記の反応液組成及び反応条件でPCRを行った。また、配列番号15(PAR-T373A-sens:5’−GCACCCGGCGCGATGGCCGAGTTCA−3’)で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号16(PAR-T517C-comp:5’−CAACCGCGTACGGGCCTCCGCGAAG−3’)で示されるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、pSarPを鋳型にして下記の反応液組成及び反応条件でPCRを行った。
pSarP:5ng
dNTP:各0.2mM−mix
プライマー:各300nM
KOD−Plus−buffer:5μl
MgSO4:1mM
KOD−Plus−DNAポリメラーゼ:1U
計50μl
上記組成の反応液が入った容器をPTC−200 Thermal Cycler (MJリサーチ)にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−68℃(2分間)のサイクルを30回行なった。
pSarP:5ng
dNTP:各0.2mM−mix
プライマー:各300nM
KOD−Plus−buffer:5μl
MgSO4:1mM
KOD−Plus−DNAポリメラーゼ:1U
計50μl
上記組成の反応液が入った容器をPTC−200 Thermal Cycler (MJリサーチ)にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−68℃(2分間)のサイクルを30回行なった。
一方、プラスミドpSarPを2種類の制限酵素(EcoRI及びBsiWI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼ(宝酒造社製)でライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli JM109株を形質転換した。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて改変型還元酵素の遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpSarAと記すこともある。)を取り出した。
表1で示される塩基配列を有する組合わせのオリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、プラスミドpSarAを鋳型にして以下の反応液組成及び反応条件で第1PCRを行った。
pSarA:5ng
dNTP:各0.2mM−mix
プライマー:各300nM
KOD−Plus−buffer:5μl
MgSO4:1mM
KOD−Plus−DNAポリメラーゼ:1U
計50μl
上記組成の反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−68℃(2分間)のサイクルを30回行なった。
pSarA:5ng
dNTP:各0.2mM−mix
プライマー:各300nM
KOD−Plus−buffer:5μl
MgSO4:1mM
KOD−Plus−DNAポリメラーゼ:1U
計50μl
上記組成の反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−68℃(2分間)のサイクルを30回行なった。
一方、プラスミドpSarAを表3に示す2種類の制限酵素を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
プラスミドpSarAを表3に示す2種類の制限酵素を加えることにより、プラスミドpSarAを2重消化させた。次いで得られたインサート部分のDNA断片を精製した。
一方、プラスミドpSarPを表4に示す2種類の制限酵素を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたベクター部分のDNA断片を精製した。
(7−1)pSar26の構築
プラスミドpSar2を2種類の制限酵素(XhoI及びKpnI)を加えることにより、プラスミドpSarAを2重消化させた。次いで得られたベクター部分のDNA断片を精製した。
一方、プラスミドpSar6を2種類の制限酵素(XhoI及びKpnI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたインサート部分のDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli JM109株を形質転換した。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて改変型還元酵素の遺伝子を含有するプラスミドを取り出した(以下、プラスミドpSar26と記すこともある。)。
プラスミドpSar8を2種類の制限酵素(XhoI及びKpnI)を加えることにより、プラスミドpSarAを2重消化させた。次いで得られたベクター部分のDNA断片を精製した。
一方、プラスミドpSar6を2種類の制限酵素(XhoI及びKpnI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたインサート部分のDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli JM109株を形質転換した。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて改変型還元酵素の遺伝子を含有するプラスミドを取り出した(以下、プラスミドpSar68と記すこともある。)。
プラスミドpSar2を2種類の制限酵素(XhoI及びHindIII)を加えることにより、プラスミドpSarAを2重消化させた。次いで得られたベクター部分のDNA断片を精製した。
また、プラスミドpSar6を2種類の制限酵素(XhoI及びKpnI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたインサート部分のDNA断片を精製した。
一方、プラスミドpSar8を2種類の制限酵素(KpnI及びHindIII)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたインサート部分のDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた3種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli JM109株を形質転換した。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて改変型還元酵素の遺伝子を含有するプラスミドを取り出した(以下、プラスミドpSar268と記すこともある。)。
実施例1及び実施例3から6で得られた16種類の形質転換体を0.4mMのIPTG、100μg/mlのアンピシリン、1%(w/v)のZnCl2、10g/LのBacto-tryptone(Difco)、5g/LのBacto−yeast extract(Difco)、10g/LのNaClを含有する滅菌培地(1ml)に接種し、これを37℃で22時間培養した。培養後、得られた培養液を遠心分離(20000×g、5分、4℃)することにより、沈澱として湿菌体を回収した。回収された湿菌体約10mgに、m−クロロフェナシルクロライド5mg、NAD+0.332mg及び500mM MOPS緩衝液(pH7.0)0.05mlと、2−プロパノール0.0975ml及び水を含む反応液の0.5mlとを混合した。これを30℃で22時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを1ml添加し、有機層を分取した。有機層はNa2CO3にて脱水処理を行なった。当該有機層を下記条件で液体クロマトグラフィーによる含量分析に供試した。プラスミドpEAR2(野生型)にて形質転換した形質転換大腸菌(JM109(pEAR2))を用いて反応を行なった時のm−クロロフェナシルクロライド転化率を1として、各形質転換体の比活性を算出した。結果を表5に示す。
カラム:Chiralcel OB−H(ダイセル化学工業社製)
キャリアー溶媒:n−ヘキサン/2−プロパノール=9:1(v/v)
流速:0.8ml/分
検出器:UV268nm
実施例1及び実施例4から7で得られた9種類の形質転換体を0.4mMのIPTG、100μg/mlのアンピシリン、1%(w/v)のZnCl2、10g/LのBacto-tryptone(Difco)、5g/LのBacto−yeast extract(Difco)、10g/LのNaClを含有する滅菌培地(1ml)に接種し、これを37℃で22時間培養した。培養後、得られた培養液を遠心分離(20000×g、5分、4℃)することにより、沈澱として湿菌体を回収した。回収された湿菌体約10mgに、m−クロロフェナシルクロライド5mg、NAD+0.332mg及び500mM MOPS緩衝液(pH7.0)0.05mlと、2−プロパノール0.0975ml及び水を含む反応液の0.5mlとを混合した。これを30℃で22時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを1ml添加し、有機層を分取した。有機層はNa2CO3にて脱水処理を行なった。当該有機層を下記条件で液体クロマトグラフィーによる含量分析に供試した。プラスミドpEAR2(野生型)にて形質転換した形質転換大腸菌(JM109(pEAR2))を用いて反応を行なった時のm−クロロフェナシルクロライド転化率を1として、各形質転換体の比活性を算出した。結果を表6に示す。
カラム:Chiralcel OB−H(ダイセル化学工業社製)
キャリアー溶媒:n−ヘキサン/2−プロパノール=9:1(v/v)
流速:0.8ml/分
検出器:UV268nm
6種類の形質転換体(JM109(pUAR) 、JM109(pEAR1)、JM109(pEAR2)、JM109(pEAR2s)、JM109(pSarA)、JM109(pSar268))を0.4mMのIPTG)、100μg/mlのアンピシリン、1%(w/v)のZnCl2、10g/LのBacto−tryptone(Difco)、5g/LのBacto−yeast extract(Difco)、10g/LのNaClを含有する滅菌培地(100ml)に接種し、これを37℃で22時間培養した。培養後、得られた培養液を遠心分離(5000×g、15分、4℃)することにより、沈澱として湿菌体を回収した。回収された湿菌体60mgに、m−クロロフェナシルクロライド100mg、NAD+0.664mg及び500mM MOPS緩衝液(pH7.0)0.1mlと、0.2mlの2−プロパノール及び水を混合した溶液の0.9mlとを混合した。これを30℃で22時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを一回につき0.5ml添加し、3回に分けて有機層を分取した。集めた有機層はNa2CO3にて脱水処理を行なった。当該有機層を下記条件で液体クロマトグラフィーによる含量分析に供試した。当該有機層を下記条件で液体クロマトグラフィーによる含量分析に供試した。各形質転換体を用いて反応を行なった時の液体クロマトグラフィーによる結果から1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールのエリア値/(m−クロロフェナシルクロライドのエリア値+1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールのエリア値)を算出した。結果を表7に示す。
カラム:Chiralcel OB−H(ダイセル化学工業社製)
キャリアー溶媒:n−ヘキサン/2−プロパノール=9:1(v/v)
流速:0.8ml/分
検出器:UV268nm
実施例8〜10に記載された方法で培養を行った形質転換体19種類を各々超音波破砕(20KHz、15分、4℃)した後、遠心分離(100000xg、60分、4℃)を行い、その上清を得る。得られた超遠心上清をイオン交換クロマトグラフィーカラム[DEAE-Sepharose CL-6B(アマシャムファルマシアバイオテク社製)][カリウム−リン酸バッファー(20mM、pH7.5)で平衡化したもの]に展着し、NaClを溶解したカリウム−リン酸バッファー(NaCl濃度0M→0.8Mの濃度勾配)を移動層として目的酵素を溶出する。溶出画分の酵素活性の測定はアセトフェノンを用いて行う。
具体的には、溶出画分を含む0.01mlの溶出液に、アセトフェノン(0.365mg/ml)及びNADH(0.543mg/ml)を溶解したリン酸緩衝液(50mM,pH7.0)0.99mlを加え、25℃で保温し、340nmの吸光度の減少を測定する。還元酵素活性のある画分を集め、当該画分に硫酸アンモニウムをその濃度が1.8Mになるまで徐々に加える。これを疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム[Butyl-Toyopearl 650(東ソー社製)][1.8M硫酸アンモニウムを含むカリウム−リン酸バッファー(20mM、pH7.0)で平衡化したもの]に展着し、硫酸アンモニウムを溶解したカリウム−リン酸バッファー(硫酸アンモニウム濃度1.8M→0Mの濃度勾配)を移動層として目的酵素を溶出する。還元酵素活性のある画分を集め、当該画分に硫酸アンモニウムをその濃度が1.8Mになるまで徐々に加える。これを疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム[Phenyl-Toyopearl 650(東ソー社製)][1.8M硫酸アンモニウムを含むカリウム−リン酸バッファー(20mM、pH7.0)で平衡化したもの]に展着し、硫酸アンモニウムを溶解したカリウム−リン酸バッファー(硫酸アンモニウム濃度1.8M→0Mの濃度勾配)を移動層として目的酵素を溶出する。還元酵素活性のある画分を集め、当該画分をCellulofine GC-700mカラム(生化学工業社製)[0.1MNaClを含むカリウム−リン酸バッファー(20mM、pH7.0)で平衡化したもの]に展着し、0.1MNaClを含むカリウム−リン酸バッファーを移動層として目的酵素を溶出する。還元酵素活性のある画分を集め、当該画分をCellulofine GC-2000sfカラム(生化学工業社製)[0.1MNaClを含むカリウム−リン酸バッファー(20mM、pH7.0)で平衡化したもの]に展着し、0.1MNaClを含むカリウム−リン酸バッファーを移動層として目的酵素を溶出させる。還元酵素活性のある画分を集め、精製還元酵素を得る。
(12−1)酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド等を還元型に変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子を調製するための準備
フラスコにLB培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%塩化ナトリウム)100mlを入れ、滅菌した。このようにして調製された培地に、Bacillus megaterium IFO12108株が前記組成の液体培地で予め培養された培養液0.3mlを接種し、これを30℃で10時間振盪培養した。
培養後、得られた培養液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、菌体を回収した。回収された菌体を、50mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)30mlに懸濁し、この懸濁液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、洗浄菌体を得た。
このようにして得られた洗浄菌体からQiagen Genomic Tip (Qiagen社製)を用い、それに付属するマニュアルに記載される方法に従って染色体DNAを精製した。
The Journal of Biological Chemistry Vol.264, No.11, 6381-6385(1989)に記載された公知のBacillus megaterium IWG3由来のグルコース脱水素酵素のアミノ酸配列に基づいて、配列番号24(5’−gatcatcata gcaggagtca t−3’)で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号25(5’−gaattcaaca ccagtcagct c−3’)で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとを合成する。
配列番号24(5’−gatcatcata gcaggagtca t−3’)で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号25(5’−gaattcaaca ccagtcagct c−3’)で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、前記(12−1)で精製された染色体DNAを鋳型にして実施例1(1−2)に記載される反応液組成、反応条件でPCRを行う。
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片を、Invitrogen社製TOPOTMTA cloningキットを用いてpCR2.1−TOPOベクターの既存「PCR Product挿入サイト」にライゲーションする。得られるライゲーション液でE.coli DH5αを形質転換する。
得られる形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてグルコース脱水素酵素を含有するプラスミド(以下、プラスミドpSDGDH12と記すこともある。)を取り出す。
次に、取り出されるプラスミドpSDGDH12を鋳型として、Dye Terminator Cycle sequencing FS ready Reaction Kit(パーキンエルマー製)を用いたシークエンス反応を行った後、得られるDNAの塩基配列をDNAシーケンサー373A(パーキンエルマー製)で解析することにより、所望の補酵素再生酵素遺伝子であることを確認する。
(12-2)で調製されたプラスミドpSDGDH12に2種類の制限酵素(BamHIとXbaI)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させる。次いで消化されたDNA断片を精製する。
一方、例えば実施例4で調製されるプラスミドpSarAに2種類の制限酵素(BamHIとXbaI)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させる。次いで得られるDNA断片を精製する。
このようにして精製して得られる2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションする。得られるライゲーション液でE.coli DH5αを形質転換する。
得られる形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて本還元酵素遺伝子及び補酵素再生遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpSarSbGと記すこともある。)を取り出す。
配列番号3
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号4
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号5
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号6
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号7
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号8
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号9
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号10
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号11
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号12
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号13
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号14
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号15
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号16
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号17
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号18
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号19
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号20
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号21
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号22
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号24
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号25
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
Claims (30)
- 野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列において、(1)12番目のアミノ酸がグリシンに、(2)20番目のアミノ酸がアルギニンに、(3)42番目のアミノ酸がバリンに、(4)67番目のアミノ酸がアルギニンに、(5)125番目のアミノ酸がメチオニンに、(6)163番目のアミノ酸がアルギニンに、(7)173番目のアミノ酸がプロリンに、(8)275番目のアミノ酸がロイシンに、及び、(9)327番目のアミノ酸がバリンにそれぞれ置換されていること以外には配列番号1で示されるアミノ酸配列を有し、かつ、m−クロロフェナシルクロライドを還元して1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールを生産する能力を少なくとも有することを特徴とする改変型還元酵素。
- 20番目及び163番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする請求項1記載の改変型還元酵素。
- 163番目及び275番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする請求項1記載の改変型還元酵素。
- 20番目、163番目及び275番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする請求項1記載の改変型還元酵素。
- 12番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする請求項1記載の改変型還元酵素。
- 20番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする請求項1記載の改変型還元酵素。
- 42番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする請求項1記載の改変型還元酵素。
- 67番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする請求項1記載の改変型還元酵素。
- 125番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする請求項1記載の改変型還元酵素。
- 163番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする請求項1記載の改変型還元酵素。
- 173番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする請求項1記載の改変型還元酵素。
- 275番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする請求項1記載の改変型還元酵素。
- 327番目のアミノ酸が、野生型還元酵素が有する配列番号1で示されるアミノ酸配列における野生型アミノ酸に復帰してなることを特徴とする請求項1記載の改変型還元酵素。
- 請求項1乃至13記載のいずれかの改変型還元酵素が有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド。
- 宿主細胞内において機能可能なプロモーターと請求項14記載のポリヌクレオチドとが機能可能な形で接続されてなることを特徴とするポリヌクレオチド。
- 請求項14記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とするベクター。
- 請求項14若しくは15記載のポリヌクレオチド又は請求項16記載のベクターが宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体。
- 宿主細胞が微生物であることを特徴とする請求項17記載の形質転換体。
- 宿主細胞が大腸菌であることを特徴とする請求項17記載の形質転換体。
- 請求項14記載のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する工程を含むことを特徴とする形質転換体の製造方法。
- 請求項16記載のベクターが、酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを還元型に変換する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドをさらに含むことを特徴とするベクター。
- 酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを還元型に変換する能力を有するタンパク質がグルコース脱水素酵素であることを特徴とする請求項21記載のベクター。
- 請求項18乃至20記載のいずれかの形質転換体が、酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを還元型に変換する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドをさらに保有することを特徴とする形質転換体。
- 請求項21又は22記載のベクターが宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体。
- 宿主細胞が微生物であることを特徴とする請求項24記載の形質転換体。
- 宿主細胞が大腸菌であることを特徴とする請求項25記載の形質転換体。
- ケトン化合物又はアルデヒド化合物に、請求項1乃至13記載のいずれかの改変型還元酵素、それを産生する微生物、請求項17乃至19記載のいずれかの形質転換体、請求項23乃至26記載のいずれかの形質転換体、又は、それらの処理物を作用させることを特徴とするアルコールの製造方法。
- ケトン化合物又はアルデヒド化合物がm−クロロフェナシルクロライドであり、アルコールが1−(3−クロロフェニル)−2−クロロエタノールであることを特徴とする請求項27記載のアルコールの製造方法。
- 酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを還元型に変換する能力を有するタンパク質を反応系内に共存させること特徴とする請求項27又は28記載のアルコールの製造方法。
- 酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを還元型に変換する能力を有するタンパク質がグルコース脱水素酵素であることを特徴とする請求項29記載のアルコールの製造方法。
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