JP4316283B2 - 緊張材の定着部構造及び緊張材の応力測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、グランドアンカーやPC(プレストレストコンクリート:prestressed concrete)構造などの緊張材における定着部に対して利用できる緊張材の定着部構造及び緊張材の応力測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
グランドアンカーやPC構造、或いは吊橋や斜張橋などの緊張材については、過大な張力がかかると破断する、或いは経過年変遷により緩みが生ずるなどといった問題があるため、その緊張材にどの程度の張力が作用しているかを定量的に測定することが、その構造物の安全性を評価するうえで必要なことである。
【0003】
【特許文献1】
緊張材の応力測定方法に特開平2002−173935号に示されたような磁歪法を利用したものである。磁歪法による応力測定方法とは、強磁性材料に荷重が作用すると透磁率に異方性が生じ、荷重方向の透磁率が大きくなり、反対に荷重方向と直角方向の透磁率が小さくなるので、両透磁率の差を磁歪センサによって検出することによって、主応力の方向および大きさを測定する手法である。
【0004】
特開平2002−173935号の公報に記載された緊張材の応力測定方法は、緊張材に定着されるアンカーナット又はアンカーナットとアンカープレートとの間に介装される介装部材に磁歪センサを用い、各測定点において得られた応力の差分を求め、該差分をもとに緊張材にかかっている応力(張力)を評価するものである。
【0005】
かかる評価は例えば、緊張材と同材質の試験片に応力(張力)をかけると共に、該試験片にかけた応力値と磁歪センサによる出力値との対応関係を予め求めておく。次に、実際の緊張材の応力測定は磁歪センサを緊張材に当て、磁歪センサの出力値を上記対応関係から実際の応力を推定するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際の緊張材と試験片とは必ずしも上記対応関係が同一になるとは限らず、緊張材の磁歪センサによる出力値から応力を推定することは精度に欠けるという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、磁歪法による応力測定のみでも充分に精度良い測定が可能となり、応力の経過年変遷を容易に測定することができる緊張材の定着部構造及び緊張材の応力測定方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の緊張材の定着部構造は、緊張材(1)と、該緊張材(1)の先端部に定着され、締め付けることにより緊張材(1)に張力を付与する定着部材(4)と、該定着部材(4)よりも緊張材(1)の先端部と反対側に寄った位置に配置され、定着部材(4)の定着力を受け止めるアンカープレート(3)と、を有する緊張材(1)の定着部構造であって、アンカープレート(3)と定着部材(4)との間に環状をした被測定部材(5)を介装し、シールピース(8)で覆った該被測定部材(5)の外側面を、磁歪法による測定面(以下、「磁歪法測定面」という。)(5A)と歪みゲージ法による測定面(以下、「歪みゲージ法測定面」という。)(5B)とし、歪みゲージ法測定面(5B)に歪みゲージを貼付した、ことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、磁歪法による応力測定のみでも充分に精度良い測定が可能となるため、応力の経過年変遷を容易に測定することができる。そして、歪みゲージが健全に作動している場合には、歪みゲージ法により連続してモニタリングを行い、異常を検出した場合にのみ現地に赴き磁歪法で応力測定を行い、そこで歪みゲージの異常か又は被測定部材(5)の異常かを判断するようにすることができる。すなわち、現地に出向くのを異常が発生したときのみにすることができ、その分、コストダウンが可能となる。
なお、被測定部材(5)の外側をシールピース(8)で覆うと、被測定部材(5)を保護することができ、被測定部材(5)の安定した測定をすることができる。
【0010】
被測定部材(5)の横断面形状を多角形にすると、複数の測定面(5A、5B)を構成することができ、緊張材(1)の応力測定をさらに精度良く行うことが期待できる。
【0011】
被測定部材(5)の横断面形状が偶数の多角形にすると、磁歪法測定面(5A)と歪みゲージ法測定面(5B)とを複数でかつ同数とすることができ、緊張材(1)の応力測定をさらに精度良く行うことが期待できる。
【0012】
磁歪法測定面(5A)と歪みゲージ法測定面(5B)とを被測定部材(5)の周方向に交互に設けると、偏りの少ない測定結果を得ることができ、緊張材(1)の応力測定をさらに精度良く行うことが期待できる。
【0013】
定着部材(4)と被測定部材(5)との間に平座金(6)を介装すると、被測定部材(5)にかかる横断面方向の応力分布を均一化することができ、測定精度を高めることができる。
【0015】
定着部材(4)及び緊張材(1)の先端部をアンカーキャップ(10)で覆うと、定着部材(4)及び緊張材(1)の先端部を保護することができ、被測定部材(5)の安定した測定をすることができる。
【0016】
上記シールピース(8)とアンカーキャップ(10)とを一体に形成すると、部品点数を削減することができ、製造コストの削減も然ることながら、測定時においても1つだけを取り外せば良く、測定を簡単に行うことが出来る。
【0017】
シールピース(8)及び/又はアンカーキャップ(10)の内部にグリース(9)を充填すると、定着部材(4)及び緊張材(1)の先端部及び/又は被測定部材(5)を保護することができ、被測定部材(5)の安定した測定をすることができる。
【0018】
本発明の緊張材の応力測定方法は、緊張材(1)と、該緊張材(1)の先端部に定着され、締め付けることにより緊張材(1)に張力を付与する定着部材(4)と、該定着部材(4)よりも緊張材(1)の先端部と反対側に寄った位置に配置され、定着部材(4)の定着力を受け止めるアンカープレート(3)と、を有する緊張材(1)の定着部構造を備えた緊張材(1)の応力測定方法であって、アンカープレート(3)と定着部材(4)との間に環状をした被測定部材(5)を介装し、該被測定部材(5)の外側面を、磁歪法測定面(5A)と歪みゲージ法測定面(5B)とし、歪みゲージによる測定面(5B)に歪みゲージを貼付すると共に、磁歪法測定面(5A)に磁歪測定器の検出プローブを当て、上記緊張材(1)の設置時に緊張荷重をかけて、上記歪みゲージ法による歪みゲージの応力値と、磁歪測定器の出力値とを採取し、磁歪測定器の応力感度を求め、緊張材(1)の設置後の応力測定を、磁歪法により行うようにした、ことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、磁歪法による応力測定のみでも充分に精度良い測定が可能となるため、応力の経過年変遷を容易に測定することができる。そして、歪みゲージが健全に作動している場合には、歪みゲージ法により連続してモニタリングを行い、異常を検出した場合にのみ現地に赴き磁歪法で応力測定を行い、そこで歪みゲージの異常か又は被測定部材(5)の異常かを判断するようにすることができる。すなわち、現地に出向くのを異常が発生したときのみにすることができ、その分、コストダウンが可能となる。
【0020】
また、歪みゲージが健全に作動している場合には、歪みゲージ法により連続したモニタリングを行い、異常を検出した場合にのみ現地に赴き、磁歪法で応力測定を行うということができ、そこで歪みゲージの異常か又は被測定部材(5)の異常かを判断することができる。すなわち、現地に出向くのを異常が発生したときのみにすることができ、その分、コストダウンが可能となる。
【0021】
さらに、緊張材(1)の設置時に緊張荷重(プリロード)をかけたときに、上記磁歪測定器の応力感度を求めるようにしたので、あらかじめ、例えば、実験室などにより緊張材(1)と同質材料を用いて応力感度を採取しておく必要がなく、測定作業の簡略化を図ることができる。すなわち、緊張材(1)の設置時に必須とされる緊張荷重(プリロード)により応力感度を採取することができ、余分な工程(実験室における応力感度の採取)を省略することができる。
【0022】
被測定部材(5)の横断面形状が多角形をし、磁歪法による応力測定及び歪みゲージ法による応力測定をそれぞれ複数箇所で行うようにすると、磁歪法測定面(5A)と歪みゲージ法測定面(5B)とを複数でかつ同数とすることができ、緊張材(1)の応力測定をさらに精度良く行うことが期待できる。
【0023】
被測定部材(5)の横断面形状が偶数の多角形であり、磁歪法による応力測定及び歪みゲージ法による応力測定をそれぞれ同数複数箇所で行うようにすると、磁歪法測定面(5A)と歪みゲージ法測定面(5B)とを複数でかつ同数とすることができ、緊張材(1)の応力測定をさらに精度良く行うことが期待できる。
【0024】
磁歪法測定面(5A)と歪みゲージ法測定面(5B)とを被測定部材(5)の周方向に交互に設けて、磁歪法による応力測定及び歪みゲージ法による応力測定をそれぞれ行うようにすると、偏りの少ない測定結果を得ることができ、緊張材(1)の応力測定をさらに精度良く行うことが期待できる。
【0025】
複数箇所測定した磁歪法による応力測定値及び歪みゲージ法による応力測定値をそれぞれ平均値化すると、偏りの少ない測定結果を得ることができ、緊張材(1)の応力測定をさらに精度良く行うことが期待できる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照にして説明する。なお、この実施の形態は本発明をPCアンカーに適用したものである。
【0027】
図1乃至図5は、第1の実施の形態にかかるもので、図1は、PCアンカー及びその各部の縦断面図を示す。PCアンカーはPC鋼棒1(特許請求の範囲における「緊張材」に相当する。)の先端部1A以外の部分(以下、「埋設部」という。)1Bをコンクリート2内に埋設し、コンクリート2の表面から突出した部分(以下、「ボルト部」という。)1Aにアンカープレート3を介してナット4を締着し、これによりPC鋼棒1に緊張を導入してコンクリート2内部にストレスを発生させるものである。具体的には、PC鋼棒1はその先端部1Aを除く部分1Bがコンクリート2内に埋設され、コンクリート2内においてはセメントミルクなどによりコンクリート2に固定されている。
【0028】
PC鋼棒1の先端部には螺条を形成することによりボルト部1Aが形成され、該ボルト部1Aが上記コンクリート2の表面から突出するように配置される。
【0029】
コンクリート2の表面から突出されたPC鋼棒1のボルト部1Aには、アンカープレート3が外嵌され、次に被測定部材5が外嵌され、さらに平座金6が外嵌される。そして、平座金6側からナット4がPC鋼棒1のボルト部1Aに螺合され、アンカー鋼棒1はコンクリート2に定着され、さらにナット4の締め付け力を増加させることにより、PC鋼棒1に緊張を導入し、これが、コンクリート2にストレスを加えることになる。
【0030】
尚、当然であるが、PC鋼棒1にかかる緊張力(張力)と被測定部材5にかかる応力(圧縮力)とは「作用、反作用」の関係にあり同一であり、よって、被測定部材5の応力を測定することが、すなわち、PC鋼棒1の緊張力(張力)を測定することと同義になる。
【0031】
図2は被測定部材5を軸方向から見た平面図であり、図3は被測定部材5の縦断面図である。被測定部材5は筒形形状をしその縦断面形状が六角形をし、中心部にPC鋼棒1が貫通する中心孔が形成されている。そして、被測定部材5の6つの外側面は周方向に交互に磁歪法測定面5Aと歪みゲージ法測定面5Bとされ、歪みゲージ法測定面5Bには歪みゲージが貼付されている。なお、図2において、被測定部材5の外形線を太線にて表したものが歪みゲージ法測定面5Bであり、歪みゲージが貼付されている。
【0032】
被測定部材5の横断面形状は上記ナット4の横断面形状とほぼ同じに形成されている。これは、後述するようにナット4の締め付けにより被測定部材5に軸方向の応力をかけることになるが、横断面方向においてほぼ均一な応力がかかるようにするためである。また、被測定部材5は初期残留応力が少ないものが好ましく、例えば、この形状に形成した後、熱処理を施したり、機械加工により形成することが望ましい。
【0033】
平座金6はその横断面形状の大きさが上記被測定部材5の横断面形状の大きさとほぼ同じかそれよりも大きく形成されている。これも、ナット4を締め付けたときに被測定部材5の横断面方向における応力が均一になるようにするためである。
【0034】
ナット4は前述したように平座金6、被測定部材5及びアンカープレート3を介装した状態でPC鋼棒1のボルト部1Aに螺合され、これを締め付けることにより平座金6、被測定部材5及びアンカープレート3に圧縮力を加え、PC鋼棒1には緊張力(張力)を導入すると共に、コンクリート2にストレス(圧縮力)を加えることになる。
上記ナット4よりもPC鋼棒1の先端部側にはキャップナット7がボルト部1Aに螺合されており、該キャップナット7はボルト部1Aに締め付けられており、上記ナット4に接するように位置されている。該キャップナット7は後述するアンカーキャップを支持するためのものである。
【0035】
上記被測定部材5及び平座金6は筒形形状をしたシールピース8により覆われ、該シールピース8内部にはグリース9が充填される。これにより、被測定部材5を保護すると共に腐食から防除することができる。
【0036】
上記ナット4及びナット4から突出したPC鋼棒1の先端部は、先端部が閉塞されたアンカーキャップ10により覆われており、アンカーキャップ10の開口端縁は上記シールピース8の先端側の端縁に接するようになっている。
アンカーキャップ10の開口端より先端側に寄った位置に他の部分よりも縮径された縮径部10Aが形成され、該縮径部10Aが上記キャップナット7の周面にほぼぴったりと嵌合するようになっている。これにより、アンカーキャップ10はPC鋼棒1の先端部及びナット4を覆い、これらを保護する。
【0037】
図4はシールピース8の拡大縦断面図である。シールピース8の軸方向の両端縁にはそれぞれOリング11が位置され、先端側のものはアンカーキャップ10との間に、後端側のものはシールピース8との間に、それぞれ介在される。これにより、シールピース8内に充填したグリース9が漏れないようになっている。
【0038】
次に、被測定部材5の応力の測定について説明する。
被測定部材5の応力を測定するに当たって、PCアンカーの設置時にジャッキによる緊張荷重をかける。このとき、被測定部材5の磁歪法測定面5Aに磁歪測定器の検出プローブを当て、その出力値を検出すると共に、被測定部材5の歪みゲージ法測定面5Bに貼付した歪みゲージにより被測定部材5にかかった応力値を測定する。これにより、上記磁歪法による出力値との対応関係、すなわち、磁歪測定器の応力感度が求まる。図5は応力値と磁歪測定器の出力値との関係、すなわち、磁歪測定器の応力感度を表すグラフ図である。
【0039】
このように、緊張材の設置時に緊張荷重(プリロード)をかけたときに、上記磁歪測定器の応力感度を求めるようにしたので、あらかじめ、例えば、実験室などにより緊張材と同質材料を用いて応力感度を採取しておく必要がなく、測定作業の簡略化を図ることができる。すなわち、緊張材の設置時に必須とされる緊張荷重(プリロード)により応力感度を採取することができ、余分な工程(実験室における応力感度の採取)を省略することができる。
【0040】
そして、PCアンカー設置後の被測定部材5の応力の測定は、磁歪法により行う。このとき、上記アンカーキャップ10及びシールピース8を外して、それぞれの測定方法を実施することになる。
もちろん、PCアンカー設置後、歪みゲージが健全に作動している場合には、磁歪法及び歪みゲージ法の双方の測定方法により行うことができ、この場合、磁歪法による応力測定の測定結果を歪みゲージ法による測定結果により検証することが可能である。
【0041】
そして、歪みゲージが健全に作動している場合には、歪みゲージ法により連続してモニタリングを行い、異常を検出した場合にのみ現地に赴き磁歪法で応力測定を行って、歪みゲージの異常か又は被測定部材5の異常かを判断するようにすることができる。すなわち、現地に出向くのを異常が発生したときのみにすることができ、その分、コストダウンが可能となる。
【0042】
また、磁歪法による応力測定及び歪みゲージ法による応力測定をそれぞれ3つの測定面により行いそれらの平均値を求めて、応力測定を行うことにより、測定結果の精度を上げることができる。
【0043】
図6は、第2の実施の形態にかかるもので、PCアンカー及びその各部の縦断面図を示す。この第2の実施の形態が上記第1の実施の形態と異なる点は、シールピースとアンカーキャップとを一体に形成した点である。従って、第2の実施の形態の説明については、上記第1の実施の形態を同様の部分については、図面に同一符号を付すことにより説明を省略し、異なる部分について主に説明する。
【0044】
図6に示すように、アンカーキャップ20は、上記第1の実施の形態におけるシールピース8とアンカーキャップ20とを一体にした如き形状に形成され、その開口端縁にフランジ部20Aが一体に形成され、また、長さ方向のほぼ中央部に他の部分よりも縮径された縮径部20Bが形成されている。
【0045】
そして、アンカーキャップ20をPC鋼棒1の先端部に覆い被せると、アンカーキャップ20の開口端縁のフランジ部20Aがアンカープレート3に面接触すると共に、また、上記縮径部20Bが上記キャップナット7の周面にほぼぴったりと嵌合するようになっている。これにより、アンカーキャップ20はPC鋼棒1の先端部、ナット4、平座金6及び被測定部材5を覆い、これらを保護する。
【0046】
このように、1つのアンカーキャップ20でPC鋼棒1の先端部、ナット4、平座金6及び被測定部材5を覆うようにすれば、分品点数を削減することができ、製造コストの削減を図ることができると共に、測定時においても1つのアンカーキャップ20を取り外すだけで、測定を行うことが出来る。
【0047】
なお、上記各実施の形態において、被測定部材5をその横断面形状が六角形のもので、かつ、磁歪法測定面5Aと歪みゲージ法測定面5Bとを被測定部材5の周方向に交互に配置したものについて説明したが、本発明はこれに限らず、四角形、八角形などでも良く、さらには、側面の数が偶数に限らず、奇数であっても良い。さらには、曲率が大きく測定が可能であれば、円筒形であっても良く、或いは、図7に示すように、歪みゲージ法測定面5Bが曲面で磁歪法測定面5Aが平面で構成されるものであっても良い。
また、上記実施の形態において、本発明をPCアンカーに適用したものについて説明したが、本発明はこれに限らず、グランドアンカーやアンカーボルトなどにも適用することができ、さらには、PC鋼棒に限らず、PC線や鋼棒、或いは吊橋や斜張橋などのケーブル(緊張材)になどの緊張材であっても良い。
【0048】
【発明の効果】
上述したように、本発明の緊張材の定着部構造は、アンカープレートと定着部材との間に環状をした被測定部材を介装し、該被測定部材の外側面を、磁歪法による測定面と歪みゲージ法による測定面とし、歪みゲージ法による測定面に歪みゲージを貼付したので、磁歪法による応力測定のみでも充分に精度良い測定が可能となるため、応力の経過年変遷を容易に測定することができる。そして、歪みゲージが健全に作動している場合には、歪みゲージ法により連続してモニタリングを行い、異常を検出した場合にのみ現地に赴き磁歪法で応力測定を行い、そこで歪みゲージの異常か又は被測定部材の異常かを判断するようにすることができる。すなわち、現地に出向くのを異常が発生したときのみにすることができ、その分、コストダウンが可能となる。
【0049】
被測定部材の横断面形状を多角形にすると、複数の測定面を構成することができ、緊張材の応力測定をさらに精度良く行うことが期待できる。
【0050】
被測定部材の横断面形状が偶数の多角形にすると、磁歪法測定面と歪みゲージ法測定面とを複数でかつ同数とすることができ、緊張材の応力測定をさらに精度良く行うことが期待できる。
【0051】
磁歪法測定面と歪みゲージ法測定面とを被測定部材の周方向に交互に設けると、偏りの少ない測定結果を得ることができ、緊張材の応力測定をさらに精度良く行うことが期待できる。
【0052】
定着部材と被測定部材との間に平座金を介装すると、被測定部材にかかる横断面方向の応力分布を均一化することができ、測定精度を高めることができる。
【0053】
被測定部材の外側をシールピースで覆うと、被測定部材を保護することができ、被測定部材の安定した測定をすることができる。
【0054】
定着部材及び緊張材の先端部をアンカーキャップで覆うと、定着部材及び緊張材の先端部を保護することができ、被測定部材の安定した測定をすることができる。
【0055】
上記シールピースとアンカーキャップとを一体に形成すると、部品点数を削減することができ、製造コストの削減も然ることながら、測定時においても1つだけを取り外せば良く、測定を簡単に行うことが出来る。
【0056】
シールピース及び/又はアンカーキャップの内部にグリースを充填すると、定着部材及び緊張材の先端部及び/又は被測定部材を保護することができ、被測定部材の安定した測定をすることができる。
【0057】
本発明の緊張材の応力測定方法は、該被測定部材の外側面を、磁歪法測定面と歪みゲージ法測定面とし、歪みゲージによる測定面に歪みゲージを貼付すると共に、磁歪法測定面に磁歪測定器の検出プローブを当て、上記緊張材の設置時に緊張荷重をかけて、上記歪みゲージ法による歪みゲージの応力値と磁歪測定器の出力値とを採取し、磁歪測定器の応力感度を求め、緊張材の設置後の応力測定を、磁歪法により行うようにしたので、磁歪法による応力測定のみでも充分に精度良い測定が可能となるため、応力の経過年変遷を容易に測定することができる。
【0058】
また、歪みゲージが健全に作動している場合には、歪みゲージ法により連続したモニタリングを行い、異常を検出した場合にのみ現地に赴き、磁歪法で応力測定を行うということができ、そこで歪みゲージの異常か又は被測定部材の異常かを判断することができる。すなわち、現地に出向くのを異常が発生したときのみにすることができ、その分、コストダウンが可能となる。
【0059】
さらに、緊張材の設置時に緊張荷重(プリロード)をかけたときに、上記磁歪測定器の応力感度を求めるようにしたので、あらかじめ、例えば、実験室などにより緊張材と同質材料を用いて応力感度を採取しておく必要がなく、測定作業の簡略化を図ることができる。すなわち、緊張材の設置時に必須とされる緊張荷重(プリロード)により応力感度を採取することができ、余分な工程(実験室における応力感度の採取)を省略することができる。
【0060】
被測定部材の横断面形状が多角形をし、磁歪法による応力測定及び歪みゲージ法による応力測定をそれぞれ複数箇所で行うようにすると、磁歪法測定面と歪みゲージ法測定面とを複数でかつ同数とすることができ、緊張材の応力測定をさらに精度良く行うことが期待できる。
【0061】
被測定部材の横断面形状が偶数の多角形であり、磁歪法による応力測定及び歪みゲージ法による応力測定をそれぞれ同数複数箇所で行うようにすると、磁歪法測定面と歪みゲージ法測定面とを複数でかつ同数とすることができ、緊張材の応力測定をさらに精度良く行うことが期待できる。
【0062】
磁歪法測定面と歪みゲージ法測定面とを被測定部材の周方向に交互に設けて、磁歪法による応力測定及び歪みゲージ法による応力測定をそれぞれ行うようにすると、偏りの少ない測定結果を得ることができ、緊張材の応力測定をさらに精度良く行うことが期待できる。
【0063】
複数箇所測定した磁歪法による応力測定値及び歪みゲージ法による応力測定値をそれぞれ平均値化すると、偏りの少ない測定結果を得ることができ、緊張材の応力測定をさらに精度良く行うことが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図2乃至図5とともに本発明の第1の実施の形態を示すもので、本図はPCアンカー及びその各部の縦断面図である。
【図2】被測定部材を拡大して示す平面図である。
【図3】被測定部材を拡大して示す縦断面図である。
【図4】シールピースを拡大して示す縦断面図である。
【図5】応力値と磁歪測定器の出力値との関係(応力感度)を表すグラフ図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示すもので、PCアンカーの先端部及びアンカーキャップを拡大して示す縦断面図である。
【図7】被測定部材の変形を示す平面図である。
【符号の説明】
1 PC鋼棒(緊張材)
1A ボルト部
1B 埋設部
2 コンクリート
3 アンカープレート
4 ナット(定着部材)
5 被測定部材
5A 磁歪法測定面
5B 歪みゲージ法測定面
6 平座金
7 キャップナット
8 シールピース
9 グリース
10 アンカーキャップ
10A 縮径部
11 Oリング
20 アンカーキャップ
20A フランジ部
20B 縮径部
Claims (13)
- 緊張材(1)と、該緊張材(1)の先端部に定着され、締め付けることにより緊張材(1)に張力を付与する定着部材(4)と、該定着部材(4)よりも緊張材(1)の先端部と反対側に寄った位置に配置され、定着部材(4)の定着力を受け止めるアンカープレート(3)と、を有する緊張材(1)の定着部構造であって、
アンカープレート(3)と定着部材(4)との間に環状をした被測定部材(5)を介装し、
シールピース(8)で覆った該被測定部材(5)の外側面を、磁歪法による測定面(5A)と歪みゲージ法による測定面(5B)とし、歪みゲージ法による測定面(5B)に歪みゲージを貼付した、ことを特徴とする緊張材の定着部構造。 - 被測定部材(5)の横断面形状を多角形にした、ことを特徴とする請求項1に記載した緊張材の定着部構造。
- 被測定部材(5)の横断面形状を偶数の多角形にした、ことを特徴とする請求項2に記載した緊張材の定着部構造。
- 磁歪法による測定面(5A)と歪みゲージ法による測定面(5B)とを被測定部材(5)の周方向に交互に設けた、ことを特徴とする請求項3に記載した緊張材の定着部構造。
- 定着部材(4)と被測定部材(5)との間に平座金(6)を介装した、ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載した緊張材の定着部構造。
- 定着部材(4)及び緊張材(1)の先端部をアンカーキャップ(10)で覆った、ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5に記載した緊張材の定着部構造。
- 上記シールピース(8)とアンカーキャップ(10)とを一体に形成した、ことを特徴とする請求項6に記載した緊張材の定着部構造。
- シールピース(8)及び/又はアンカーキャップ(10)の内部にグリース(9)を充填した、ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載した緊張材の定着部構造。
- 緊張材(1)と、該緊張材(1)の先端部に定着され、締め付けることにより緊張材(1)に張力を付与する定着部材(4)と、該定着部材(4)よりも緊張材(1)の先端部と反対側に寄った位置に配置され、定着部材(4)の定着力を受け止めるアンカープレート(3)と、を有する緊張材(1)の定着部構造を備えた緊張材の応力測定方法であって、
アンカープレート(3)と定着部材(4)との間に環状をした被測定部材(5)を介装し、該被測定部材(5)の外側面を、磁歪法による測定面(5A)と歪みゲージ法による測定面(5B)とし、
歪みゲージによる測定面(5B)に歪みゲージを貼付すると共に、磁歪法による測定面(5A)に磁歪測定器の検出プローブを当て、
上記緊張材(1)の設置時に緊張荷重をかけて、上記歪みゲージ法による歪みゲージの応力値と、磁歪測定器の出力値とを採取し、磁歪測定器の応力感度を求め、
緊張材(1)の設置後の応力測定を、磁歪法により行うようにした、ことを特徴とする緊張材の応力測定方法。 - 被測定部材(5)の横断面形状が多角形をし、磁歪法による応力測定及び歪みゲージ法による応力測定をそれぞれ複数箇所で行うようにした、ことを特徴とする請求項9に記載した緊張材の応力測定方法。
- 被測定部材(5)の横断面形状が偶数の多角形であり、磁歪法による応力測定及び歪みゲージ法による応力測定をそれぞれ同数複数箇所で行うようにした、ことを特徴とする請求項10に記載した緊張材の応力測定方法。
- 磁歪法による測定面(5A)と歪みゲージ法による測定面(5B)とを被測定部材(5)の周方向に交互に設けて、磁歪法による応力測定及び歪みゲージ法による応力測定をそれぞれ行うようにした、ことを特徴とする請求項11に記載した緊張材の応力測定方法。
- 複数箇所測定した磁歪法による応力測定値及び歪みゲージ法による応力測定値をそれぞれ平均値化した、ことを特徴とする請求項9、請求項10、請求項11又は請求項12に記載した緊張材の応力測定方法。
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