JP4315426B2 - ワイヤソー装置 - Google Patents

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Description

本発明は単結晶シリコンインゴット、磁性材料、セラミック、ガラス等のワークをピアノ線、鋼線等のワイヤによって薄板状に切断するワイヤソー装置に関するものである。
図12はワイヤソー装置の構成を示している。図12は切断すべきワークである単結晶シリコンインゴット(以下インゴットという)1を切断面方向からみた図である。
同図12に示すように、各ローラ7、8、9、10の長手軸方向がインゴット1の長手軸方向に一致するように4つのローラ7、8、9、10が所定距離離間されて配置されている。各ローラ7、8、9、10にはワイヤ6が巻着されている。なおワイヤ6は送り側ボビンによってローラ7、8、9、10に送られ、巻き取り側ボビンによって巻き取られる。各ローラ7、8、9、10にはローラ長手方向に沿って一定のピッチでワイヤ6が巻かれており、図示しない張力調整機構により一定の張力がワイヤ6に付与されている。
本明細書では、インゴット1が押し当てられるワイヤ6が架け渡された一対のローラ7、8のことを「加工用ローラ」と称するものとする。一対の加工用ローラ7、8間に架け渡されたワイヤ6によってインゴット1が切断される。加工用ローラ7、8以外のローラ9、10のことを「調整用ローラ」と称するものとする。
各ローラ7、8、9、10のいずれかのローラには図示しないワイヤ駆動用モータの回転軸が連結されている。ワイヤ駆動用モータが回転駆動することによりたとえば加工用ローラ7が回転駆動しこれに伴い他のローラ8、9、10が従動回転しワイヤ6が走行する。図中でローラ7、8、9、10が左方向に回転することによってワイヤ6は図中で左回りに走行する。ワイヤ6が一方向に走行するに応じて巻き取り側ボビンでワイヤ6が巻き取られていく。巻き取り側ボビンに巻かれているワイヤ6が所定量送られると、ワイヤ駆動用モータは逆方向に回転駆動し、巻き取り側ボビンが送り側ボビンとして機能してワイヤ6は逆方向に走行する。
インゴット1は黒鉛からなるワークプレート2に接着されている。ワークプレート2はセットプレート3に接着されている。インゴット1をワークプレート2に接着し、ワークプレート2をセットプレート3に接着するに際して、インゴット1の切断方向が結晶面に一致するようにインゴット1の姿勢が調整される。すなわちインゴット1の結晶方位がワイヤ6による切断方向と垂直になるようにインゴット1の中心軸の方向が調整される。セットプレート3は昇降ベース4に取り付けられている。昇降ベース4は図示しない昇降用モータによって図中の上下方向に昇降する。
加工用ローラ7、8の上方にはパイプ状のスラリノズル5が加工用ローラ7、8の長手軸方向に沿って配置されている。スラリノズル5には供給口5aが開口しており供給口5aからは砥粒を含むスラリが吐出される。スラリノズル5は移動機構によりインゴット1の切断部位近傍に接近自在になっている。
したがってワイヤ6を走行させるとともに昇降ベース4を矢印Hで示す方向に下降させるとインゴット1が走行するワイヤ6に押し当てられる。このときスラリノズル5はインゴット1の切断部位近傍に接近されている。ワイヤ6が押し当てられているインゴット1の切断部位には供給口5aからスラリが供給される。このためラッピング作用によりインゴット1が徐々に切断される。加工用ローラ7、8の長手軸方向には所定ピッチでワイヤ6が巻回されているため所定ピッチでの切断が同時に行われる。こうしてインゴット1から複数のウェーハが生成される。
図11(a)はワイヤ6によってインゴット1がウェーハ1aに切断される様子を概念的に示している。ワイヤ6と切断面との間にスラリ中の砥粒30が介在されることにより切断されるため、切断代(カーフロス)は、ワイヤ6の線径に砥粒30の径の2倍を足し合わせた長さとなる。
切断して生成されるウェーハ1aは切断面が完全に平坦であることが理想的である。しかしながらウェーハ1aの切断面には図11(b)に示すように「うねり;waviness」と呼ばれる周期状の凹凸が発生することがある。「うねり」が発生すると後工程のラップ、エッチング、研磨を経由してもその影響が完全には除去できない。このためウェーハ1aによって製造される半導体デバイスの歩留まりが悪化するおそれがある。したがって「うねり」の発生はこれを抑制する必要がある。
従来より「うねり」の発生を抑制することを目的とする発明が種々特許出願等され公知になっている。以下に従来技術の内容を列挙して説明する。
(従来技術1)ワイヤ張力増大、一対の加工用ローラ間の距離減少
下記に別掲する非特許文献1の184頁((1)式)には、ワイヤの張力を増大させることによって、あるいは一対の加工用ローラ間の距離を減少させることによって切断面のうねりの振幅を抑制できることが記載されている。
(従来技術2)インゴットの同時加工
下記に別掲する特許文献1には、ローラ間のワイヤに複数のインゴットを押し当てることによりワイヤの剛性を向上させてうねりの発生を抑制するという発明が記載されている。同様な技術は特許文献2、非特許文献1の185頁に記載されている。
(従来技術3)砥粒微細化
非特許文献1の185頁には、スラリ中の砥粒の沈殿が切断面のうねりの振幅を増大させることが記載されている。#1000以下の粗い砥粒は沈殿による砥粒濃度の減少が著しいことが記載されている。
(従来技術4)インゴットの送り速度パターンとワイヤ走行加減速パターンの同期
下記に別掲する特許文献3には、インゴットの送り速度パターンとワイヤの走行速度の加減速パターンとを同期させることにより、うねりを抑制するという発明が記載されている。
特開2000−271850号公報 特開2001−1248号公報(USP6283111) 特開平9−66522号公報 精密工学会誌vol.60,No.2,1994(特に184頁〜185頁)
上記従来技術1に示すように、加工用ローラ間の距離を減少させることによってうねりを抑制することができるものの、従来のワイヤソー装置における加工用ローラ間の距離は固定的である。このためインゴットの径が小さくなると加工用ローラ間のワイヤの遊びが大きくなり、このワイヤの遊びがうねりの発生を引き起こす。
上記従来技術1に示すように、ワイヤの張力を増大させることによってうねりを抑制することができるものの、ワイヤ張力の増大には限度がありうねりを抑制する程度までワイヤの張力を増大させると、ワイヤが断線し、大きな歩留まりロスを引き起こすおそれがある。
上記従来技術2にしたがい一対の加工用ローラ間のワイヤによって複数のインゴットを同時に切断しようとすると、各インゴットの切断部位にスラリを供給することが困難になる。また1本のワイヤで同時に複数のインゴットを切断するため切断抵抗が上昇しワイヤが断線するリスクが高まる。
上記従来技術3は砥粒を#1000よりも番手の大きい微細なものにすればうねりを抑制できることを示唆している。しかしながら砥粒が#1000を超えるとランニングコストが上昇する。また砥粒の微細化は、他の品質に影響を及ぼし、特に切断速度の低下と「そり」の発生を招く。
上記従来技術4で同期を実現するにはワイヤの加減速の制御を高精度に行う必要がある。しかしワイヤーホイールイナーシャ、駆動モータの動特性から加減速制御の精度には限界がある。
以上のように、単純にワイヤ張力を増大させたり、一対の加工用ローラ間の距離を減少させたりする従来技術1、インゴットを同時加工する従来技術2、砥粒を微細化する従来技術3、インゴットの送り速度パターンとワイヤ走行加減速パターンを同期させる従来技術4は、新たな問題を招来することから、これらを採用することは望ましくない。
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、ワークの大きさ(インゴットの径の大きさ)いかんにかかわらず、うねりを抑制できるようにすることを第1の解決課題とするものである。
また本発明は、第1の解決課題を達成しつつ、新規開発工数の増大を招くことがなく、制御安定性を一層向上させ、ワイヤの断線を防止し、スラリをインゴットの各切断部位に精度よく供給することを第2の解決課題とするものである。
第1発明は、
所定ピッチでワイヤが巻着された一対の加工用ローラと、
前記ワイヤを走行させるワイヤ駆動手段と、
前記一対の加工用ローラ間のワイヤに対してワークを押し当てる方向にワークを相対移動させてワークを切断するワーク相対移動手段と、
前記ワイヤのピッチに応じた間隔で溝が形成され、当該溝内に前記加工用ローラと前記ワーク間のワイヤが位置されるように位置決めされる一対のガイドバーと
を備えたことを特徴とする。
第1発明によれば、インゴット1の切断加工中は、図13(c)に示すようにガイドバー41、42の溝43はワイヤ6の横方向の振れを規制するのみで、ワイヤ6に対して溝43の深さ方向の力を付与することがない。このためワイヤ6には、既存の張力調整機構によって付与される一定の張力以外の不要な張力が付与されないためワイヤソー装置を長期にわたって使用したとしてもワイヤ6が断線することがなくワイヤソー装置の耐久性が向上する。
また切断加工中、スラリノズル5の供給口5aから吐出されたスラリは、一対のガイドバー41、42の溝43のうちワイヤ6と溝43のスラリゲート43aを介してインゴット1の切断部位に供給される。各溝43、各スラリゲート43aの開口面積は一定であるため、インゴット1の各切断部位には、ほぼ同一の流量のスラリが精度よく供給される。このようにインゴット1の各切断部位に安定した一定流量のスラリが精度よく供給されるため、各切断部位で切断されるウェーハ1aの切断面のTTV、面粗さを飛躍的に向上させることができる。
また一対のガイドバー41、42は、一対のサブガイドローラ11、12でワイヤ6を規制する場合と異なり切断加工中にワイヤ6の走行速度に応じた高回転で回転することはないので、動バランスに優れ制御安定性が向上する。また加工用ローラ7、8間の距離は固定であり従来の加工用ローラ7、8間の距離が固定のワイヤソー装置に僅かな変更を加えるだけでワイヤソー装置を構成することができ、新規開発工数を抑えることができる。
第2発明は、第1発明において、
前記一対のガイドバーに形成された溝を介して前記ワークの切断部位にスラリを供給するスラリ供給手段が更に備えられていることを特徴とする。
第2発明によれば、図13に示すように、切断加工中、スラリノズル5の供給口5aから吐出されたスラリは、一対のガイドバー41、42の溝43のうちワイヤ6と溝43のスラリゲート43aを介してインゴット1の切断部位に供給される。各溝43、各スラリゲート43aの開口面積は一定であるため、インゴット1の各切断部位には、ほぼ同一の流量のスラリが精度よく供給される。このようにインゴット1の各切断部位に安定した一定流量のスラリが精度よく供給されるため、各切断部位で切断されるウェーハ1aの切断面のTTV、面粗さを飛躍的に向上させることができる。
第3発明は、第1発明において、
前記溝の深さ方向に、前記一対のガイドバーを移動させるガイドバー移動手段が更に備えられていることを特徴とする。
第4発明は、第1発明において、
前記一対のガイドバーが前記ワイヤに与える負荷を検出する負荷検出手段と、
前記負荷検出手段によって検出されるワイヤ負荷が所定値以下となるように、前記溝の深さ方向に、前記一対のガイドバーを移動させるガイドバー制御手段と
が更に備えられていることを特徴とする。
図13(c)に示すようにガイドバー41、42の溝43はワイヤ6の横方向の振れを規制するのみで、ワイヤ6に不要な負荷を与えないようにすることがワイヤ6の断線等を防止する上で必要となる。ワイヤ6の負荷は、溝43の深さ方向のワイヤ6の相対位置、溝43に入り込んだスラリの粘性抵抗等によって影響を受ける。
第4発明によれば、切断加工中は、上記負荷検出器によってガイドバー41、42がワイヤ6に与える負荷が検出され、この負荷検出器で検出されるワイヤ負荷が所定値を超えると、上記コントローラによって、ガイドバー上下駆動用サーボモータ53、54が駆動制御され、ワイヤ負荷が所定値以下になるように一対のガイドバー41、42の上下位置が調整される。これによりワイヤ6に加わる負荷が所定値以下に抑えられるためワイヤ6の耐久性が一層向上する。
第5発明は、第1発明において、
前記一対のガイドバー間の距離が、ワークの大きさに応じた距離となるように、一対のガイドバーを移動させるガイドバー移動手段が更に備えられていることを特徴とする。
第5発明によれば、図14(a)、(b)に示すように、一対のガイドバー41、42間の距離が、インゴット1の径の大きさに応じた距離となるように、一対のガイドバー41、42が移動され、位置決めされる。一対のガイドバー41、42間の距離の調整は、ガイドバー水平駆動用モータを駆動制御することによって行われる。インゴット1の径が大きくなるほど一対のガイドバー41、42間の距離が大きくなり、インゴット1の径にかかわらずワイヤ6の遊びLsが一定に保持される。図14(a)のインゴット1よりも図14(b)のインゴット1′の方が径が大きいため図14(a)に比べて図14(b)の場合の方が一対のガイドバー41、42間の距離が大きくなる。これによりインゴット1の大きさ如何にかかわらず、うねりを抑制することができる。
第6発明は、第1発明において、
ワークの切断深さに応じて、前記一対のガイドバー間の距離を変化させるガイドバー移動手段が更に備えられていることを特徴とする。
第6発明によれば、図15(a)、(b)に示すように、インゴット1の切断が進行しインゴット1が矢印Hで示す方向に下降するに伴い一対のガイドバー41、42がインゴット1から離れる外側方向S1に移動して一対のガイドバー41、42間の距離が大きくなり、インゴット1の切断深さにかかわらずワイヤ6の遊びが一定に保持される。一対のガイドバー41、42間の距離の調整は、上述したガイドバー水平駆動用サーボモータを駆動制御することによって行われる。この結果、ウェーハ1aの切断面のうねりを抑制することができる。
第7発明は、第1発明において、
前記一対のガイドバーの溝は、前記ワークの切断前に前記ワイヤによって予め所定の深さに切断されていることを特徴とする。
第7発明によれば、図16(a)に示すように、インゴット1をワイヤ6の上方に待機させた状態で、ガイドバー上下駆動用サーボモータ53、54が駆動制御されて、溝43が形成されていない一対のガイドバー41、42が下降されてワイヤ6に当接される。つぎにワイヤ駆動用モータが駆動制御されてワイヤ6が図中左右方向に走行される。つぎにガイドバー上下駆動用サーボモータ53、54が駆動制御されて一対のガイドバー41、42が下方に移動される。これによりワイヤ6によって一対のガイドバー41、42が切断され所定深さの溝43が形成される。
つぎに図16(b)に示すように、インゴット駆動用サーボモータ44が駆動制御されてインゴット1が矢印Hで示す方向に下降されワイヤ6に当接する。また、このときガイドバー上下駆動用サーボモータ53、54が駆動制御されて、ガイドバー41、42の上下方向位置が調整され、ガイドバー41、42の溝43内にワイヤ6が位置決めされる(図13(c))。
インゴット1の切断加工中は、図13(c)に示す溝43にワイヤ6が位置決めされている状態が維持されるように、ガイドバー上下駆動用サーボモータ53、54が駆動制御される。
第7発明によれば、ガイドバー41、42の溝43を、インゴット1の切断前に同じワイヤソー装置のワイヤ6を用いて予め所定の深さに切断、形成しておくようにしたので、ワイヤソー装置の号機差をキャンセルすることができ、加工の精度が向上する。
第8発明は、第1発明において、
前記一対のガイドバーは、加工性および熱膨張係数において前記ワークと同一となる材質が用いられることを特徴とする。
第8発明によれば、ガイドバー41、42の材質をインゴット1と同じ材質(シリコン)とすることで、ワイヤ6によって加工性よく溝43を形成することができる。
またガイドバー41、42の材質をインゴット1と同じ材質(シリコン)とすることで、切断加工中、ワイヤ6によるインゴット1の切断部位がガイドバー41、42の溝と同じ熱膨脹係数で熱膨脹するので、切断品質の劣化が少なく加工の精度が向上する。
第1発明〜第8発明によれば、ワークの大きさ(インゴットの径の大きさ)いかんにかかわらず、うねりを抑制することができる。
さらに新規開発工数の増大を招くことがなく、制御安定性が一層向上し、ワイヤの断線を防止することができ、スラリをインゴットの各切断部位に精度よく供給することができ切断品質を向上させることができる。
以下図面を参照して本発明に係るワイヤソー装置の実施の形態について説明する。
(第1実施例)
図1は第1実施例のワイヤソー装置の構成を示している。図1は切断すべきワークである単結晶シリコンインゴット1を切断面方向からみた図である。
同図1に示すように、各加工用ローラ7、8、調整用ローラ9、10の長手軸方向がインゴット1の長手軸方向に一致するように4つのローラ7、8、9、10が所定距離離間されて配置されている。各ローラ7、8、9、10にはワイヤ6が巻着されている。なおワイヤ6は送り側ボビンによってローラ7、8、9、10に送られ、巻き取り側ボビンによって巻き取られる。各ローラ7、8、9、10にはローラ長手方向に沿って一定のピッチでワイヤ6が巻かれており、図示しない張力調整機構により一定の張力がワイヤ6に付与されている。
各ローラ7、8、9、10のいずれかのローラには図示しないワイヤ駆動用モータの回転軸が連結されている。ワイヤ駆動用モータが回転駆動することによりたとえば加工用ローラ7が回転駆動しこれに伴い他のローラ8、9、10が従動回転しワイヤ6が走行する。図中でローラ7、8、9、10が左方向に回転することによってワイヤ6は図中で左回りに走行する。ワイヤ6が一方向に走行するに応じて巻き取り側ボビンでワイヤ6が巻き取られていく。巻き取り側ボビンに巻かれているワイヤ6が所定量送られると、ワイヤ駆動用モータは逆方向に回転駆動し、巻き取り側ボビンが送り側ボビンとして機能してワイヤ6は逆方向に走行する。
インゴット1は黒鉛からなるワークプレート2に接着されている。ワークプレート2はセットプレート3に接着されている。インゴット1をワークプレート2に接着し、ワークプレート2をセットプレート3に接着するに際して、インゴット1の切断方向が結晶面に一致するようにインゴット1の姿勢が調整される。すなわちインゴット1の結晶方位がワイヤ6による切断方向と垂直になるようにインゴット1の中心軸の方向が調整される。セットプレート3は昇降ベース4に取り付けられている。昇降ベース4は図示しない昇降用モータによって図中の上下方向に昇降する。
加工用ローラ7、8の上方にはパイプ状のスラリノズル5が加工用ローラ7、8の長手軸方向に沿って配置されている。スラリノズル5には供給口5aが開口しており供給口5aからは砥粒を含むスラリが吐出される。スラリノズル5は移動機構によりインゴット1の切断部位近傍に接近自在になっている。
一対の加工用ローラ7、8の上方には、一対のサブガイドローラ11、12が長手軸方向が一致するように配置されている。一対のサブガイドローラ11、12は図2に示す移動機構により加工用ローラ7、8間のワイヤ6に当接自在になっている。
図2(a)は図1を図中上方から矢視Bにてみた図であり、図2(b)は図2(a)を図中右側方から矢視Eにてみた図である。
一対のサブガイドローラ11、12は移動テーブル21に取り付けられている。移動テーブル21は図1で図中上下方向Gに昇降可能に、ボールネジ15に螺合している。ボールネジ15は上下調整用モータ16の回転軸に連結している。このため上下調整用モータ16が駆動されると移動テーブル21は図1で図中上下方向Gに昇降し一対のサブガイドローラ11、12は同上下方向Gに昇降する。
一対のサブガイドローラ11、12は図1で図中左右方向Cに移動可能にそれぞれラック13、14に接続している。ラック13、14は図示しないピニオンギアに螺合しておりピニオンギアはローラピッチ調整用モータ17の回転軸17aに連結している。このためローラピッチ調整用モータ17が駆動されると回転軸17aは矢印K方向に回動しピニオンギアを介してラック13、14が図1で図中左右方向Cに移動する。これにより一対のサブガイドローラ11、12は同左右方向Cに移動する。したがって上下調整用モータ16、ローラピッチ調整用モータ17をそれぞれ駆動させることにより一対のサブガイドローラ11、12を初期位置(退避位置)から図1に矢印Aで示す方向に移動させて、一対のサブガイドローラ11、12を、一対の加工用ローラ7、8間のワイヤ6に押し当てるようにするとともに一対のサブガイドローラ11、12間の距離(ピッチ)を所望する距離L1に調整することができる。
図3は図1のワイヤソー装置で行われる切断作業の処理手順を示している。
まず切断しようとするインゴット1の寸法つまりインゴット1の直径Dcが読み込まれる(ステップ101)。
つぎに昇降用モータが駆動制御され昇降ベース4が図1で矢印Hで示す方向に下降される。インゴット1が切断開始位置よりも僅か上方の加工準備位置まで下降したとき昇降用モータの駆動が停止される(ステップ102)。
つぎに上下調整用モータ16、ローラピッチ調整用モータ17がそれぞれ駆動制御され、一対のサブガイドローラ11、12が初期位置(退避位置)から図1に矢印Aで示す方向に移動され、一対のサブガイドローラ11、12が、一対の加工用ローラ7、8間のワイヤ6に接触する位置まで移動するとともに、一対のサブガイドローラ11、12間の距離(ピッチ)が、次式(1)で示される距離L1に調整される。
L1=Dc+Dr+Ls …(1)
上記(1)式でDrはサブガイドローラ11、12の直径であり、Lsはインゴット1とサブガイドローラ11、12との間の隙間余裕である。なお一対の加工用ローラ7、8間の距離(ピッチ)はL0であり、L1<L0となる関係が成立しているものとする(ステップ103)。
一対のサブガイドローラ11、12が、一対の加工用ローラ7、8間のワイヤ6に接触し、一対のサブガイドローラ11、12間の距離が、上記(1)式で示される距離L1に調整されると、上下調整用モータ16、ローラピッチ調整用モータ17の駆動が停止される(ステップ104)。
つぎに昇降用モータが駆動制御され昇降ベース4が更に下降しインゴット1が一対の加工用ローラ7、8間のワイヤ6に押し当てられる。またワイヤ駆動用モータが駆動制御されワイヤ6が走行する。これによりインゴット1の切断加工が行われる。このときスラリノズル5はインゴット1の切断部位近傍に接近されている。ワイヤ6が押し当てられているインゴット1の切断部位には供給口5aからスラリが供給される。このためラッピング作用によりインゴット1が徐々に切断される。加工用ローラ7、8の長手軸方向には所定ピッチでワイヤ6が巻回されているため所定ピッチでの切断が同時に行われる。こうしてインゴット1から複数のウェーハが生成される。
インゴット1の切断加工中、一対のサブガイドローラ11、12間の上下方向位置の補正が次式(2)にしたがい行われる。一対のサブガイドローラ11、12間の上下方向位置の補正は、上下調整用モータ16を駆動制御することによって行われる。
Hc=H0+Hsi …(2)
上記(2)式においてH0はサブガイドローラ11、12がワイヤ6に接触したときの上下方向初期位置であり、Hsiはインゴット1の下降位置に応じたワイヤ
6の沈み量である。ワイヤ沈み量Hsiは次式(3)にて求められる。
Hsi=Z・k …(3)
上記(3)式においてZはインゴット1の切断加工開始位置からの移動距離であり、kは移動量別係数である。
これら(2)、(3)式から明らかなようにインゴット1の切断加工が進行するに伴いインゴット1が下降しワイヤ6が下方に沈み込むため、インゴット1の切断深さに応じてサブガイドローラ11、12を下方に移動させるように補正して、ワイヤ6に付与される張力を適正な値に保持している(ステップ105)。
インゴット1の切断加工が完了すると(ステップ106)、上下調整用モータ16、ローラピッチ調整用モータ17がそれぞれ駆動制御され、一対のサブガイドローラ11、12がワイヤ6に接触している位置から元の初期位置(退避位置)に移動される。なお昇降ベース4が上昇し、スライスされたインゴット1が元の退避位置に移動される(ステップ107)。これにより作業が終了する(ステップ108)。
以上説明したように本第1実施例によれば、一対のサブガイドローラ11、12がワイヤ6に押し当てられた際に、一対のサブガイドローラ11、12間の距離が、インゴット1の径Dcに応じた距離L1(=Dc+Dr+Ls)に調整される。このためインゴット径Dcいかんにかわらず、ワイヤ6の遊びLsを一定値に保持することができる。このためインゴットの大きさいかんにかかわらず常にうねりを抑制することができる。
なお第1の実施例では、インゴット1の切断加工中、一対のサブガイドローラ11、12の距離をL1一定にしているが、インゴット1の切断深さに応じて、一対のサブガイドローラ11、12間の距離を変化させてもよい。
すなわちサブガイドローラ11、12間の距離を固定した場合には、インゴット1の切断深さが大きくなるに伴い、インゴット1とサブガイドローラ11、12間の隙間余裕Lsは小さくなる。そこでインゴット1の切断加工中、隙間余裕Lsが一定に保持されるようにローラピッチ調整用モータ17を駆動制御して、インゴット1の切断深さが大きくなるに応じて一対のサブガイドローラ11、12間の距離を大きくしてもよい。この結果インゴット1の切断中に常にワイヤ6の遊びLsが一定値に保持され、うねりを一層抑制することができる。
なおこの第1実施例では、図1に示すように一対のサブガイドローラ11、12を一対の加工用ローラ7、8の上方に配置しているが、一対のサブガイドローラ11、12を一対の加工用ローラ7、8の下方に配置してもよく、この場合も図2と同様な構成にて一対のサブガイドローラ11、12をワイヤ6に接触自在に移動させることができる。
また第1実施例では図1に示すようにスラリノズル5を一対の加工用ローラ7、8の上方に配置しているが、スラリノズル5を一対の加工用ローラ7、8の下方に配置してもよく、この場合も同様にしてインゴット1の切断部位とワイヤ6との間にスラリを供給することができる。
(第2実施例)
つぎに図1とは異なる構成のワイヤソー装置を用いた実施例について説明する。
図1では2つの加工用ローラ7、8と2つの調整用ローラ9、10からなる4つのローラ7、8、9、10にワイヤ6が巻着されているが、図4では図1と異なり2つの加工用ローラ7、8と1つの調整用ローラ19にワイヤ6が巻着されている。
インゴット1を昇降させる構成、ワイヤ6を走行させる構成は図1と同様であるので説明は省略する。また図1では一対のサブガイドローラ11、12を設けているが図4では一対のサブガイドローラ11、12とこれを移動させる機構(図2)が設けられておらず代わりに、図5に示す一対の加工用ローラ7、8を移動させる移動機構、調整用ローラ19を移動させる機構が設けられている。
図5(a)は図4を図中上方から矢視Bにてみた図であり、図5(b)は図5(a)を図中右側方から矢視Eにてみた図である。
調整用ローラ19は移動テーブル21に取り付けられている。移動テーブル21は図4で図中上下方向Gに昇降可能に、ボールネジ15に螺合している。ボールネジ15は上下調整用モータ16の回転軸に連結している。このため上下調整用モータ16が駆動されると移動テーブル21は図4で図中上下方向Gに昇降し調整用ローラ19は同上下方向Gに昇降する。調整用ローラ19の軸にはワイヤ駆動用モータ20の回転軸が連結している。このためワイヤ駆動用モータ20が駆動されると調整用ローラ19が回転しワイヤ6が走行する。
一対の加工用ローラ7、8は図4で図中左右方向Cに移動可能にそれぞれラック13、14に接続している。ラック13、14は図示しないピニオンギアに螺合しておりピニオンギアはローラピッチ調整用モータ17の回転軸17aに連結している。このためローラピッチ調整用モータ17が駆動されると回転軸17aは矢印K方向に回動しピニオンギアを介してラック13、14が図4で図中左右方向Cに移動する。これにより一対の加工用ローラ7、8は同左右方向Cに移動する。したがってローラピッチ調整用モータ17を駆動させることにより一対の加工用ローラ7、8間の距離(ピッチ)を所望する距離に調整することができる。図4で一対の加工用ローラ7、8間の距離は初期設計ピッチL0から距離L1を介して最小ピッチL2の間で変化する。
距離L1は前述した(1)式、
L1=Dc+Dr+Ls …(1)
で表され、インゴット1の直径Dcに対応する距離のことである。Drは加工用ローラ7、8の直径であり、Lsはインゴット1と加工用ローラ7、8との間の隙間余裕である。
最小ピッチL2は次式(4)、
L2=Dr+Ls …(4)
で表され、L2<L1<L0となる関係が成立しているものとする。図4で破線で示す7′、8′は加工用ローラ7、8間の距離が最小ピッチL2になった状態を示している。
加工用ローラ7、8間の距離を変化させたとき調整用ローラ19の位置が固定されたままだと、ローラ7、8、19に巻着されているワイヤ6の巻着長さである周長Wが変化する。そこでワイヤ周長Wが一定に保持されるように、加工用ローラ7、8間の距離の変化に応じて調整用ローラ19の上下方向位置が調整される。
上下調整用モータ16が駆動されると調整用ローラ19が図4の図中で上下方向Gに移動する。これにより加工用ローラ7、8と調整用ローラ19との距離を所望する距離に調整することができる。図4で加工用ローラ7、8と調整用ローラ19との距離は初期設計距離Z0からL2ピッチ設定時調整距離Z1の間で変化する。図4で破線で示す19′は加工用ローラ7、8間の距離が最小ピッチL2になったときの調整用ローラ19の状態を示している。各ローラ7、8、19が破線で示す7′、8′、19′の状態に変化したとしてもワイヤ6′の周長Wは一定に保持される。
図6は図4のワイヤソー装置で行われる切断作業の処理手順を示している。
まず切断しようとするインゴット1の寸法つまりインゴット1の直径Dcのデータが入力されるとともに、ワイヤ送り条件つまりワイヤ周長Wのデータが入力される(ステップ201)。
つぎにローラピッチ調整用モータ17が駆動制御され一対の加工用ローラ7、8間の距離が初期設計ピッチL0から最小ピッチL2に変化する。また上下調整用モータ16が駆動制御され加工用ローラ7、8と調整用ローラ19との距離が初期設計距離Z0からL2ピッチ設定時調整距離Z1に変化する(ステップ202)。
一対の加工用ローラ7、8間の距離が最小ピッチL2になり、かつ加工用ローラ7、8と調整用ローラ19との距離がL2ピッチ設定時調整距離Z1になると、移動完了信号を発生する。移動完了信号を受信すると、昇降用モータが駆動制御され昇降ベース4が図4で矢印Hで示す方向に下降される。インゴット1は加工用ローラ7、8間のワイヤ6に接触する位置まで移動する(ステップ203)。
インゴット1がワイヤ6に接触する位置まで移動するとインゴット移動完了信号が発生する。インゴット移動完了信号を受信すると、所定プログラムにより切断加工が開始される。
すなわち昇降用モータが駆動制御され昇降ベース4が更に下降しインゴット1が一対の加工用ローラ7、8間のワイヤ6に押し当てられる。またワイヤ駆動用モータ20が駆動制御されワイヤ6が走行する。これによりインゴット1の切断加工が行われる。このときスラリノズル5はインゴット1の切断部位近傍に接近されている。ワイヤ6が押し当てられているインゴット1の切断部位には供給口5aからスラリが供給される。このためラッピング作用によりインゴット1が徐々に切断される。加工用ローラ7、8の長手軸方向には所定ピッチでワイヤ6が巻回されているため所定ピッチでの切断が同時に行われる。こうしてインゴット1から複数のウェーハが生成される(ステップ204)。
インゴット1の切断加工中、一対の加工用ローラ7、8間の距離の調整、調整用ローラ19の移動位置の調整が行われる。
すなわちインゴット1の送り量つまり切断深さがインゴット1の直径Dcの50%以下の場合には、インゴット1の切断部位と加工用ローラ7、8との間の隙間余裕Lsが一定に保持されるように、インゴット1の切断深さが大きくなるに応じて、一対の加工用ローラ7、8間の距離を最小ピッチL2からインゴット径Dcに応じた距離L1まで徐々に変化させる。インゴット1の切断開始時点では一対の加工用ローラ7、8間の距離は最小ピッチL2であるが切断深さが大きくなるに応じて一対の加工用ローラ7、8間の距離は徐々に大きくなり、インゴット1を半分まで切断したときインゴット1の直径Dcで定まる距離L1に達する。
また切断加工中、ワイヤ周長Wが一定に保持されるように加工用ローラ7、8間の距離の変化に応じて、加工用ローラ7、8と調整用ローラ19との距離が調整される。インゴット1の切断開始時点では、加工用ローラ7、8と調整用ローラ19との距離はL2ピッチ設定時調整距離Z1であるが切断深さが大きくなるに応じて、加工用ローラ7、8と調整用ローラ19との距離は徐々に小さくなり、インゴット1を半分まで切断したとき加工用ローラ間距離L1に応じた距離Zに達する。このようにして切断加工中、ワイヤ周長Wが一定に保持される(ステップ205)。
インゴット1の送り量がインゴット1の直径Dcの50%を超えると、一対の加工用ローラ7、8間の距離を、インゴット径Dcに応じた距離L1一定にしたまま切断を継続する。
インゴット1を半分まで切断した後は、加工用ローラ7、8と調整用ローラ19との距離は、加工用ローラ間距離L1に応じた距離Zに維持される。このようにして切断加工中、ワイヤ周長Wが一定に保持される(ステップ206)。
インゴット1の送り位置が最終位置に達したことが確認されると、ローラピッチ調整用モータ17が駆動制御され一対の加工用ローラ7、8間の距離が距離L1から初期設計ピッチL0に変化する。また上下調整用モータ16が駆動制御され加工用ローラ7、8と調整用ローラ19との距離が距離Zから初期設計距離Z0に変化する(ステップ207)。
つぎに昇降用モータが駆動制御されて昇降ベース4が上昇される。これによりスライスされたインゴット1がワイヤ6の上方の退避位置まで移動される(ステップ208)。
インゴット1が退避位置まで移動するとインゴット退避完了信号が発生する。インゴット退避完了信号が受信されると、切断加工を終了させる(ステップ209)。
以上説明したように本第2実施例によれば、一対の加工用ローラ7、8間の距離が、インゴット1の径Dcに応じた距離L1(=Dc+Dr+Ls)に調整される。このためインゴット径Dcいかんにかわらず、ワイヤ6の遊びLsを一定値に保持することができる。このためインゴットの大きさいかんにかかわらず常にうねりを抑制することができる。
また第2実施例では、インゴット1の切断深さに応じて、一対の加工用ローラ7、8間の距離を変化させて、インゴット1の切断中にワイヤ6の遊びLsを一定値に保持している(図6のステップ205)。このためうねりを一層抑制することができる。
(第3実施例)
第2実施例では、インゴット1の切断深さに応じて、一対の加工用ローラ7、8間の距離を変化させているが、インゴット1の切断加工中は、一対の加工用ローラ7、8間の距離を固定した値L1のままに保持する実施も可能である。
図7は第3実施例に用いられるワイヤソー装置を示している。図7のワイヤソー装置は図4のワイヤソー装置の構成と同様でありその装置構成についての説明は省略する。ただし図7で示すように第2実施例と異なり、インゴット1の切断加工中、一対の加工用ローラ7、8間の距離は、インゴット1の径Dcに応じた距離L1一定に保持される。
図8は図7のワイヤソー装置で行われる切断作業の処理手順を示している。
まず切断しようとするインゴット1の寸法つまりインゴット1の直径Dcのデータが入力されるとともに、ワイヤ送り条件つまりワイヤ周長Wのデータが入力される(ステップ301)。
つぎにローラピッチ調整用モータ17が駆動制御され一対の加工用ローラ7、8間の距離が初期設計ピッチL0からインゴット径Dcに応じた距離L1に変化する。また上下調整用モータ16が駆動制御され加工用ローラ7、8と調整用ローラ19との距離が初期設計距離Z0から距離L1に応じた距離Zに変化する(ステップ302)。
一対の加工用ローラ7、8間の距離が距離L1になり、かつ加工用ローラ7、8と調整用ローラ19との距離が距離L1に応じた距離Zになると、移動完了信号を発生する。移動完了信号を受信すると、昇降用モータが駆動制御され昇降ベース4が図7で矢印Hで示す方向に下降される。インゴット1は加工用ローラ7、8間のワイヤ6に接触する位置まで移動する(ステップ303)。
インゴット1がワイヤ6に接触する位置まで移動するとインゴット移動完了信号が発生する。インゴット移動完了信号を受信すると、所定プログラムにより切断加工が開始される。
すなわち昇降用モータが駆動制御され昇降ベース4が更に下降しインゴット1が一対の加工用ローラ7、8間のワイヤ6に押し当てられる。またワイヤ駆動用モータ20が駆動制御されワイヤ6が走行する。これによりインゴット1の切断加工が行われる。このときスラリノズル5はインゴット1の切断部位近傍に接近されている。ワイヤ6が押し当てられているインゴット1の切断部位には供給口5aからスラリが供給される。このためラッピング作用によりインゴット1が徐々に切断される。加工用ローラ7、8の長手軸方向には所定ピッチでワイヤ6が巻回されているため所定ピッチでの切断が同時に行われる。こうしてインゴット1から複数のウェーハが生成される(ステップ304)。
インゴット1の切断加工中、一対の加工用ローラ7、8間の距離はL1一定に保持される。また加工用ローラ7、8と調整用ローラ19との距離はL1に応じた距離Z一定に保持され、切断加工中、ワイヤ周長Wが一定に保持される(ステップ305)。
インゴット1の送り位置が最終位置に達したことが確認されると、ローラピッチ調整用モータ17が駆動制御され一対の加工用ローラ7、8間の距離が距離L1から初期設計ピッチL0に変化する。また上下調整用モータ16が駆動制御され加工用ローラ7、8と調整用ローラ19との距離が距離Zから初期設計距離Z0に変化する(ステップ306)。
つぎに昇降用モータが駆動制御されて昇降ベース4が上昇される。これによりスライスされたインゴット1がワイヤ6の上方の退避位置まで移動される(ステップ307)。
インゴット1が退避位置まで移動するとインゴット退避完了信号が発生する。インゴット退避完了信号が受信されると、切断加工を終了させる(ステップ308)。
以上説明したように本第3実施例によれば、一対の加工用ローラ7、8間の距離が、インゴット1の径Dcに応じた距離L1(=Dc+Dr+Ls)に調整される。このためインゴット径Dcいかんにかわらず、ワイヤ6の遊びLsを一定値に保持することができる。このためインゴットの大きさいかんにかかわらず常にうねりを抑制することができる。
(第4実施例)
第2実施例ではワイヤソー装置を、2つの加工用ローラ7、8と1つの調整用ローラ19からなる3つのローラ7、8、19にワイヤ6を巻着した構成としているが、図9に示すようにワイヤソー装置を、図1と同様に2つの加工用ローラ7、8と2つの調整用ローラ9、10にワイヤ6を巻着した構成として第2実施例と同様の制御を適用してもよい。
インゴット1を昇降させる構成は図1と同様であるので説明は省略する。
図10(a)は図9を図中上方から矢視Bにてみた図であり、図10(b)は図10(a)を図中右側方から矢視Eにてみた図である。
一対の加工用ローラ7、8は図9で図中左右方向Cに移動可能にそれぞれラック13、14に接続している。ラック13、14は図示しないピニオンギアに螺合しておりピニオンギアはローラピッチ調整用モータ17の回転軸17aに連結している。このためローラピッチ調整用モータ17が駆動されると回転軸17aは矢印K方向に回動しピニオンギアを介してラック13、14が図9で図中左右方向Cに移動する。これにより一対の加工用ローラ7、8は同左右方向Cに移動する。したがってローラピッチ調整用モータ17を駆動させることにより一対の加工用ローラ7、8間の距離(ピッチ)を所望する距離に調整することができる。加工用ローラ8の軸にはワイヤ駆動用モータ20の回転軸が連結している。このためワイヤ駆動用モータ20が駆動されると加工用ローラ8が回転しワイヤ6が走行する。
同様に一対の調整用ローラ9、10には、一対の加工用ローラ7、8に対応する上述したラックピニオン機構と同様なラックピニオン機構が設けられており、ローラピッチ調整用モータ17と同様なローラピッチ調整用モータ22にて駆動される。このためローラピッチ調整用モータ22が駆動されるとラックピニオン機構を介して一対の調整用ローラ9、10は図9で図中左右方向Jに移動する。したがってローラピッチ調整用モータ22を駆動させることにより一対の調整用ローラ9、10間の距離(ピッチ)を所望する距離に調整することができる。
図9で一対の加工用ローラ7、8間の距離は初期設計ピッチL0から距離L1を介して最小ピッチL2usの間で変化する。
距離L1は前述した(1)式、
L1=Dc+Dr+Ls …(1)
で表され、インゴット1の直径Dcに対応する距離のことである。Drは加工用ローラ7、8の直径であり、Lsはインゴット1と加工用ローラ7、8との間の隙間余裕である。
最小ピッチL2usは次式(5)、
L2us=Dr+Ls …(5)
で表され、L2us<L1<L0となる関係が成立しているものとする。図9で破線で示す7′、8′は加工用ローラ7、8間の距離が最小ピッチL2usになった状態を示している。
加工用ローラ7、8間の距離を変化させたとき調整用ローラ9、10間の位置が固定されたままだと、ワイヤ6の周長Wが変化する。そこでワイヤ周長Wが一定に保持されるように、加工用ローラ7、8間の距離の変化に応じて調整用ローラ9、10間の距離が調整される。
ローラピッチ調整用モータ22が駆動されると調整用ローラ9、10が図9の図中で左右方向Jに移動する。これにより調整用ローラ9、10間の距離を所望する距離に調整することができる。図9で調整用ローラ9、10間の距離は初期設計ピッチL0からL2usピッチ設定時調整距離L2Dの間で変化する。図9で破線で示す9′、10′は加工用ローラ7、8間の距離が最小ピッチL2usになったときの調整用ローラ9、10の状態を示している。各ローラ7、8、9、10が破線で示す7′、8′、9′、10′の状態に変化したとしてもワイヤ6′の周長Wは一定に保持される。また加工用ローラ7、8間の距離がL1になったときには調整用ローラ9、10間の距離はLに調整されて、同様にワイヤ周長Wが一定に保持される。
図9のワイヤソー装置では、図6で説明したのと同様の処理手順で各ローラを移動させる制御が実行される。すなわち図6における「L2」が「L2us」に、図6における「Z0」が「L0」に、図6における「Z1」が「L2D」に、図6における「Z」が「L」にそれぞれ置換されて、同様の処理が実行される。
また図9のワイヤソー装置で、図8に示す制御を行わせる実施も可能である。
なお上述した各実施例では、インゴット1側を移動させることによりインゴット1をワイヤ6に押し当てる構成としているが、ワイヤ6側を移動させることによりインゴット1をワイヤ6に押し当てる構成としてもよい。
(第5実施例)
上述した第1〜第4実施例では、サブガイドローラ11、12間の距離L1を調節することにより、あるいは加工用ローラ7、8間の距離L1を調整することにより、ワイヤ6の遊びLsをインゴット1の径いかんにかかわらず一定値に保持して。うねりを抑制するようにしている。
ここでサブガイドローラ11、12間の距離を小さくすればする程、ワイヤ6の遊びLsが小さくなり(ワイヤ6の自由長が小さくなり)、切断時のワイヤ6の振れを小さくでき、うねりの抑制効果が大きくなる。
このためにはサブガイドローラ11、12の径をインゴット1の径に対して小さくして、つまり加工用ローラ7、8の径に対して小さくして、よりインゴット1の切断部位に接近させればよい。
しかしサブガイドローラ11、12は、ワイヤ6の走行速度に応じた速度で回転するため、同じ速度で回転する加工用ローラ7、8に比して径が小さくなると、サブガイドローラ11、12は、加工用ローラ7、8の回転速度に比して高回転で回転しなければならくなる。このため動バランス的に制御が不安定になるおそれがある。
また上述した第1〜第4実施例では、回転体であるローラをワイヤ6に押し付けてワイヤ6の遊びLsを小さくしているため、ワイヤ6の張力の増大を招く。このため長期にわたり使用するとワイヤ6の断線を引き起こすおそれがある。
また加工用ローラ7、8間の距離を調整するワイヤソー装置を採用する場合には、加工用ローラ7、8間の距離が固定の従来のワイヤソー装置に対して大がかりな改造を施したりするなど新規開発の工数が膨大となるおそれがある。
また上述した第1〜第4実施例では、スラリノズル5の供給口5aからスラリが重力によってインゴット1の各切断部位に落下、供給されるため、インゴット1の各切断部位に供給されるスラリの流量は安定していない。このためウェーハ1aのTTV、面粗さの品質に影響を及ぼすおそれがある。
つぎに説明する第5実施例は、上述した第1〜第4実施例と比較して、新規開発工数の増大を招くことがなく、制御安定性を一層向上させ、ワイヤ6の切断を防止でき、インゴット1の各切断部位にスラリを精度よく供給してウェーハ1aの品質を一層向上させることができる。 図13は第5実施例のワイヤソー装置の構成を示している。
図13(a)は切断すべきワークである単結晶シリコンインゴット1を切断面方向からみた図である。また図13(b)は図13(a)を矢視T1方向からみた後述するガイドバー41、42の下面を示す図である。また図13(c)は図13(a)を矢視T2方向からみたガイドバー41の側面図である。
同図13に示すように、図1で説明したのと同様に各加工用ローラ7、8、図示しない調整用ローラ9、10の長手軸方向がインゴット1の長手軸方向に一致するように4つのローラ7、8、9、10が所定距離離間されて配置されている。各ローラ7、8、9、10にはワイヤ6が巻着されている。なおワイヤ6は送り側ボビンによってローラ7、8、9、10に送られ、巻き取り側ボビンによって巻き取られる。各ローラ7、8、9、10にはローラ長手方向に沿って一定のピッチでワイヤ6が巻かれており、図示しない張力調整機構により一定の張力がワイヤ6に付与されている。
各ローラ7、8、9、10のいずれかのローラには図示しないワイヤ駆動用モータの回転軸が連結されている。ワイヤ駆動用モータが回転駆動することによりたとえば加工用ローラ7が回転駆動しこれに伴い他のローラ8、9、10が従動回転しワイヤ6が走行する。図中でローラ7、8、9、10が左方向に回転することによってワイヤ6は図中で左回りに走行する。ワイヤ6が一方向に走行するに応じて巻き取り側ボビンでワイヤ6が巻き取られていく。巻き取り側ボビンに巻かれているワイヤ6が所定量送られると、ワイヤ駆動用モータは逆方向に回転駆動し、巻き取り側ボビンが送り側ボビンとして機能してワイヤ6は逆方向に走行する。
インゴット1はインゴット送り軸46に装着されている。インゴット送り軸46は、図中上下方向Pに昇降可能に、ボールネジ45に螺合している。インゴット送り軸46は、リニアガイド47によって同上下方向Pに案内移動される。
ボールネジ45はインゴット駆動用サーボモータ44に回転軸に接続している。インゴット駆動用サーボモータ44が駆動されるとボールネジ45が回転しインゴット送り軸46はリニアガイド47に案内移動されて図中上下方向Pに昇降し、これに伴いインゴット1が同上下方向Pに昇降する。インゴット1が下降するとインゴット1は一対の加工用ローラ7、8間のワイヤ6に当接して下降位置に応じた切断深さでインゴット1が切断される。
一対の加工用ローラ7、8の間には、一対のガイドバー41、42がその長手方向の軸(紙面に垂直な軸)が一致するように位置されている。一対のガイドバー41、42は、インゴット1を挟む位置に設けられている。
図13(b)に示すようにガイドバー41、42には、ワイヤ6のピッチに応じた間隔で溝43が形成されている。図13(c)に示すように、溝43の幅はワイヤ6の直径よりもやや大きい長さである。たとえばワイヤ6の直径が160μmであれば溝43の幅は200μm程度である。
ガイドバー41、42はそれぞれ、ガイドバー上下駆動軸57、58に接続している。ガイドバー上下駆動軸57、58はそれぞれ、図中上下方向Pに昇降可能に、ボールネジ55、56に螺合している。ボールネジ55、56はそれぞれ、ガイドバー上下駆動用サーボモータ53、54の回転軸に接続している。ガイドバー上下駆動用サーボモータ53が駆動されると、ボールネジ55が回転しガイドバー上下駆動軸57は図中上下方向Pに昇降し、これに伴いガイドバー41が同上下方向Pに昇降する。ガイドバー41が下降すると、当該ガイドバー41の溝43内に加工用ローラ7とインゴット1間のワイヤ6が位置される。
同様にしてガイドバー上下駆動用サーボモータ54が駆動されると、ボールネジ56が回転しガイドバー上下駆動軸58は図中上下方向Pに昇降し、これに伴いガイドバー42が同上下方向Pに昇降する。ガイドバー42が下降すると、当該ガイドバー42の溝43内に加工用ローラ8とインゴット1間のワイヤ6が位置される。以上のように一対のガイドバー41、42が溝43の深さ方向(図中下方)に移動して溝43内にワイヤ6が位置される。
図13(c)に示すように、一対のガイドバー41、42の溝43内にワイヤ6が位置された状態で上記ワイヤ駆動用モータが回転駆動すると、ワイヤ6は溝43に案内移動されて矢印Vで示す図中左右方向に走行する。このときワイヤ6はインゴット1の切断に応じて溝43の幅方向に振動するが、ワイヤ6の振れは溝43によって規制される。このためワイヤ6の振れに起因するインゴット1の切断面のうねりを大幅に抑制することができる。しかもガイドバー41、42の溝43はワイヤ6を溝43の幅方向に規制するのみで、ワイヤ6に図中上下方向(溝43の深さ方向)に対する大きな負荷を付与することがない。すなわちワイヤ6に対しては上述した張力調整機構によって付与される一定の張力以外の張力を付与することがない。
ここでガイドバー駆動用サーバモータ53、54にはそれぞれ、駆動電流を検出することでガイドバー41、42がワイヤ6に与える負荷を検出する図示しない負荷検出器が設けられている。また上記負荷検出器で検出されるワイヤ負荷が所定値を超えると、ガイドバー上下駆動用サーボモータ53、54を駆動制御して、ワイヤ負荷を所定値以下にするコントローラが設けられている。
加工用ローラ7とガイドバー41の間および加工用ローラ8とガイドバー42の間にあってワイヤ6の上方には、スラリノズル5が配置されている。スラリノズル5はパイプ状に形成されており加工用ローラ7、8、ガイドバー41、42の長手軸方向(紙面に垂直な方向)に沿って配置されている。スラリノズル5には供給口5aが開口しており供給口5aからは砥粒を含むスラリが吐出される。スラリノズル5の供給口5aは、ガイドバー41、42の溝43に向かってスラリが吐出されるように開口している。このため図13(c)に示すようにスラリノズル5の供給口5aから吐出されたスラリは、一対のガイドバー41、42の溝43のうちワイヤ6と溝43の隙間43a(これをスラリゲートという)を介してインゴット1の切断部位に供給される。ここで各溝43、各スラリゲート43aの開口面積は一定であるため、インゴット1の各切断部位には、ほぼ同一の流量のスラリが精度よく供給される。このようにインゴット1の各切断部位に安定した一定流量のスラリが精度よく供給されるため、各切断部位で切断されるウェーハ1aの切断面のTTV、面粗さを飛躍的に向上させることができる。
上記一対のガイドバー41、42は、ガイドバー水平駆動軸48を介して矢印S1、S2で示す図中外側方向(インゴット1から離れる方向)あるいは内側方向(インゴット1に向かう方向)に移動する。ガイドバー水平駆動軸48は上述したインゴット送り軸46と一体に設けられている。
図示しないガイドバー水平駆動用のサーボモータの駆動軸がピニオンギア49に接続している。ピニオンギア49は、ラック50、ラック51に歯合している。ラック50は、ガイドバー上下駆動用サーボモータ53を固定するベース部材52に接続している。またラック51は、ガイドバー駆動用サーバモータ54を固定するベース部材53に接続している。
このためガイドバー水平駆動用サーボモータが駆動されると、ピニオンギア49が紙面で時計回り方向あるいは反時計回り方向に回転しラック50、ラック51がS1方向(図中の外側方向)あるいはS2方向(図中の内側方向)に移動する。ラック50、51がS1方向に移動すると、ベース部材51、52が同S1方向に移動し、これに伴い一対のガイドバー41、42がインゴット1から離れる外側方向S1に移動する。またラック50、51がS2方向に移動すると、ベース部材51、52が同S2方向に移動し、これに伴い一対のガイドバー41、42がインゴット1に向かう内側方向S2に移動する。
以上のようにして一対のガイドバー41、42間の距離を変化させることができ、前述した一対のサブガイドローラ11、12を用いた場合と同様にしてワイヤ6の遊び(ガイドバー41、42とワイヤ6との距離)を調整することができる。
ガイドバー水平駆動軸48はインゴット送り軸46と一体に設けられているため、インゴット送り軸46が上下方向に移動すると、インゴット1と共に一対のガイドバー41、42を移動させることができる。ガイドバー上下駆動軸57、58を上下方向に移動させることで、ガイドバー41、42をインゴット1と独立させて移動させることができる。
一対のガイドバー41、42の材質は、加工性および熱膨張係数においてインゴット1と同一となる材質を用いることが望ましい。たとえばインゴット1がシリコンインゴットであればシリコンによってガイドバー41、42を構成することが望ましい。
またガイドバー41、42の溝43は、インゴット1の切断前に同じワイヤソー装置のワイヤ6を用いて予め所定の深さに切断することで形成しておくことが望ましい。インゴット1の切断に用いられるのと同じワイヤソー装置によって溝43を形成しておくようにすると、ワイヤソー装置の号機差をキャンセルすることができ、加工の精度が向上する。
ここでガイドバー41、42の材質がインゴット1と同じ材質(シリコン)であれば、ワイヤ6によって加工性よく溝43を形成することができる。
またガイドバー41、42の材質がインゴット1と同じ材質(シリコン)であれば、切断加工中、ワイヤ6によるインゴット1の切断部位がガイドバー41、42の溝と同じ熱膨脹係数で熱膨脹するので、切断品質の劣化が少なく加工の精度が向上する。
つぎに図14〜図18を参照して図13に示すワイヤソー装置の動作について説明する。
図14(a)は、たとえば150mmの直径のインゴット1を切断するときのインゴット1と一対のガイドバー41、42との位置関係を示している。
図14(b)は、図14(a)よりも径の大きいたとえば300mmの直径のインゴット1′を切断するときのインゴット1′と一対のガイドバー41、42との位置関係を示している。
同図14(a)、(b)に示すように、一対のガイドバー41、42間の距離が、インゴット1の径の大きさに応じた距離となるように、一対のガイドバー41、42が移動され、位置決めされる。一対のガイドバー41、42間の距離の調整は、ガイドバー水平駆動用モータを駆動制御することによって行われる。インゴット1の径が大きくなるほど一対のガイドバー41、42間の距離が大きくなり、インゴット1の径にかかわらずワイヤ6の遊びLsが一定に保持される。図14(a)のインゴット1よりも図14(b)のインゴット1′の方が径が大きいため図14(a)に比べて図14(b)の場合の方が一対のガイドバー41、42間の距離が大きくなる。これによりインゴット1の大きさ如何にかかわらず、うねりを抑制することができる。
しかもインゴット1の切断加工中は、図13(c)に示すようにガイドバー41、42の溝43はワイヤ6の横方向の振れを規制するのみで、ワイヤ6に対して溝43の深さ方向の力を付与することがない。このためワイヤ6には、上述した張力調整機構によって付与される一定の張力以外の不要な張力が付与されないためワイヤソー装置を長期にわたって使用したとしてもワイヤ6が断線することがなくワイヤソー装置の耐久性が向上する。
またガイドバー41、42は、繰り返し使用することができ消耗品のコストを抑制することができる。
また切断加工中、スラリノズル5の供給口5aから吐出されたスラリは、一対のガイドバー41、42の溝43のうちワイヤ6と溝43のスラリゲート43aを介してインゴット1の切断部位に供給される。各溝43、各スラリゲート43aの開口面積は一定であるため、インゴット1の各切断部位には、ほぼ同一の流量のスラリが精度よく供給される。このようにインゴット1の各切断部位に安定した一定流量のスラリが精度よく供給されるため、各切断部位で切断されるウェーハ1aの切断面のTTV、面粗さを飛躍的に向上させることができる。
また一対のガイドバー41、42は、前述した一対のサブガイドローラ11、12と異なり切断加工中にワイヤ6の走行速度に応じた高回転で回転することはないので、動バランスに優れ制御安定性が向上する。また加工用ローラ7、8間の距離は固定であり従来の加工用ローラ7、8間の距離が固定のワイヤソー装置に僅かな変更を加えるだけで本実施例装置を構成することができ、新規開発工数を抑えることができる。
(第6実施例)
図15(a)、(b)は、インゴット1の切断深さに応じて一対のガイドバー41、42間の距離を変化させる実施例を示している。図15(a)は切断初期におけるインゴット1と一対のガイドバー41、42との位置関係を示し、図15(b)は切断中期におけるインゴット1と一対のガイドバー41、42との位置関係を示している。
インゴット1の切断が進行しインゴット1が矢印Hで示す方向に下降するに伴い一対のガイドバー41、42間の距離が大きくなり、インゴット1の切断深さにかかわらずワイヤ6の遊びが一定に保持される。一対のガイドバー41、42間の距離の調整は、上述したガイドバー水平駆動用サーボモータを駆動制御することによって行われる。この結果、ウェーハ1aの切断面のうねりを抑制することができる。
この第6実施例によれば、第5実施例と同様に、新規開発工数の増大を招くことがなく、制御安定性が一層向上し、ワイヤ6の断線が防止され、スラリをインゴット1の各切断部位に精度よく供給することができる。またガイドバー41、42をインゴット1と同じ材質とした場合には、ガイドバー41、42を加工性よく製造することが可能となるとともにウェーハ1aの切断面の品質が飛躍的に向上する。
(第7実施例)
図16(a)、(b)は、ガイドバー41、42の溝をワイヤソー装置のワイヤ6によって予め形成した後に、同じワイヤソー装置のワイヤ6を用いてインゴット1を切断する実施例を示している。
図16(a)に示すように、インゴット1をワイヤ6の上方に待機させた状態で、ガイドバー上下駆動用サーボモータ53、54が駆動制御されて、溝43が形成されていない一対のガイドバー41、42が下降されてワイヤ6に当接される。つぎにワイヤ駆動用モータが駆動制御されてワイヤ6が図中左右方向に走行される。つぎにガイドバー上下駆動用サーボモータ53、54が駆動制御されて一対のガイドバー41、42が下方に移動される。これによりワイヤ6によって一対のガイドバー41、42が切断され所定深さの溝43が形成される。
つぎに図16(b)に示すように、インゴット駆動用サーボモータ44が駆動制御されてインゴット1が矢印Hで示す方向に下降されワイヤ6に当接する。また、このときガイドバー上下駆動用サーボモータ53、54が駆動制御されて、ガイドバー41、42の上下方向位置が調整され、ガイドバー41、42の溝43内にワイヤ6が位置決めされる(図13(c))。
インゴット1の切断加工中は、図13(c)に示す溝43にワイヤ6が位置決めされている状態が維持されるように、ガイドバー上下駆動用サーボモータ53、54が駆動制御される。
この第7実施例によれば、上述した第5、第6実施例と同様に、新規開発工数の増大を招くことがなく、制御安定性が一層向上し、ワイヤ6の断線が防止され、スラリをインゴット1の各切断部位に精度よく供給することができる。またガイドバー41、42をインゴット1と同じ材質とした場合には、ガイドバー41、42を加工性よく製造することが可能となるとともにウェーハ1aの切断面の品質が飛躍的に向上する。
更に第7実施例によれば、ガイドバー41、42の溝43を、インゴット1の切断前に同じワイヤソー装置のワイヤ6を用いて予め所定の深さに切断、形成しておくようにしたので、ワイヤソー装置の号機差をキャンセルすることができ、加工の精度が向上する。
(第8実施例)
図17(a)、(b)、(c)は、ガイドバー41、42の溝をワイヤソー装置のワイヤ6によって予め形成した後に、同じワイヤソー装置のワイヤ6を用いてインゴット1を切断し、切断深さに応じて一対のガイドバー41、42間の距離を変化させる実施例を示している。
図17(a)に示すように、インゴット1をワイヤ6の上方に待機させた状態で、ガイドバー上下駆動用サーボモータ53、54が駆動制御されて、溝43が形成されていない一対のガイドバー41、42が下降されてワイヤ6に当接される。つぎにワイヤ駆動用モータが駆動制御されてワイヤ6が図中左右方向に走行される。つぎにガイドバー上下駆動用サーボモータ53、54が駆動制御されて一対のガイドバー41、42が下方に移動される。これによりワイヤ6によって一対のガイドバー41、42が切断され所定深さの溝43が形成される。
つぎに図17(b)に示すように、インゴット駆動用サーボモータ44が駆動制御されてインゴット1が矢印Hで示す方向に下降されワイヤ6に当接する。また、このときガイドバー上下駆動用サーボモータ53、54が駆動制御されて、ガイドバー41、42の上下方向位置が調整され、ガイドバー41、42の溝43内にワイヤ6が位置決めされる(図13(c))。またガイドバー水平駆動用モータが駆動制御されて一対のガイドバー41、42がインゴット1に向かう内側方向S2に移動して、ワイヤ6の遊びLsが所望値に調整される。
つぎに図17(c)に示すように、インゴット1の切断が進行しインゴット1が矢印Hで示す方向に下降するに伴い一対のガイドバー41、42間の距離が大きくなり、インゴット1の切断深さにかかわらずワイヤ6の遊びLsが一定に保持される。一対のガイドバー41、42間の距離の調整は、上述したガイドバー水平駆動用サーボモータを駆動制御することによって行われる。インゴット1の切断加工中は、図13(c)に示す溝43にワイヤ6が位置決めされている状態が維持されるように、ガイドバー上下駆動用サーボモータ53、54が駆動制御される。
この第8実施例によれば、上述した第5、第6、第7実施例と同様に、新規開発工数の増大を招くことがなく、制御安定性が一層向上し、ワイヤ6の断線が防止され、スラリをインゴット1の各切断部位に精度よく供給することができる。またガイドバー41、42をインゴット1と同じ材質とした場合には、ガイドバー41、42を加工性よく製造することが可能となるとともにウェーハ1aの切断面の品質が飛躍的に向上する。
更に第8実施例によれば、第7実施例と同様に、ガイドバー41、42の溝43を、インゴット1の切断前に同じワイヤソー装置のワイヤ6を用いて予め所定の深さに切断、形成しておくようにしたので、ワイヤソー装置の号機差をキャンセルすることができ、加工の精度が向上する。
また第8実施例では、第5実施例、第6実施例と同様に、インゴット1の径に応じてワイヤ6の遊びLsを所望値に定め、インゴット1の切断深さ如何にかかわらずワイヤ6の遊びLsを一定値に保持するようにしたので、ウェーハ1aの切断面におけるうねりを抑制することができる。
ところで上述した第5、6、7、8実施例を実施する際には、図13(c)に示すようにガイドバー41、42の溝43はワイヤ6の横方向の振れを規制するのみで、ワイヤ6に不要な負荷を与えないようにすることがワイヤ6の断線等を防止する上で必要となる。ワイヤ6の負荷は、溝43の深さ方向のワイヤ6の相対位置、溝43に入り込んだスラリの粘性抵抗等によって影響を受ける。
そこで切断加工中は、上記負荷検出器によってガイドバー41、42がワイヤ6に与える負荷が検出され、この負荷検出器で検出されるワイヤ負荷が所定値を超えると、上記コントローラによって、ガイドバー上下駆動用サーボモータ53、54が駆動制御され、ワイヤ負荷が所定値以下になるように一対のガイドバー41、42の上下位置が調整される。これによりワイヤ6に加わる負荷が所定値以下に抑えられるためワイヤ6の耐久性が一層向上する。
ガイドバー41、42の断面形状は、ガイドバー41、42のワイヤ6に対する相対的な上下方向位置に応じて、溝43がワイヤ6を規制する長さlが変化する形状であることが望ましい。
ガイドバー41、42の断面形状は円形、楕円であってもよく、図18(a)に示すように、楔形状であってもよい。
図18(a)は、ガイドバーの断面の稜線のうちスラリ供給側の稜線が下方にいくほどインゴット1側に傾斜する形状に形成されたガイドバー41′、42′を示している。このような楔断面形状でガイドバー41′、42′を構成すると、スラリノゾル5の供給口5aから吐出されたスラリがガイドバー41、42の溝43に入りやすくなりスラリのインゴット切断部位への供給効率が向上する。また図18(b)、(c)に示すように、ガイドバー41′、42′の上下方向位置の調整によって、溝43がワイヤ6を規制する長さl1、l2が大きく変化するため、ワイヤ6に与える負荷を減らす上述した制御を制御性よく行うことができる。
また以上の説明では単結晶シリコンインゴット1を切断加工する場合を想定しているが、本発明としては磁性材料、セラミック等などの任意のワークをスライス状に切断加工する場合に適用することができる。
図1は第1実施例の構成を示す図である。 図2(a)、(b)は図1に示すサブガイドローラを移動させる機構を示す図である。 図3は第1実施例の処理手順を示すフローチャートである。 図4は第2実施例の構成を示す図である。 図5(a)、(b)は図4に示す加工用ローラ、調整用ローラを移動させる機構を示す図である。 図6は第2実施例の処理手順を示すフローチャートである。 図7は第3実施例の構成を示す図である。 図8は第3実施例の処理手順を示すフローチャートである。 図9は第4実施例の構成を示す図である。 図10(a)、(b)は図9に示す加工用ローラ、調整用ローラを移動させる機構を示す図である。 図11(a)、(b)は従来技術を説明する図であり、切断中あるいは切断されたウェーハをそれぞれ示す図である。 図12はワイヤソー装置の一般的な構成例を示す図である。 図13(a)、(b)、(c)はワイヤソー装置の別の構成例を示す図である。 図14(a)、(b)は第5実施例を説明するために用いた図である。 図15(a)、(b)は第6実施例を説明するために用いた図である。 図16(a)、(b)は第7実施例を説明するために用いた図である。 図17(a)、(b)、(c)は第8実施例を説明するために用いた図である。 図18(a)、(b)、(c)はガイドバーの別の構成例を示す図である。
符号の説明
1 インゴット(ワーク)
4 昇降ベース
6 ワイヤ
7、8 加工用ローラ
9、10、19 調整用ローラ
11、12 サブガイドローラ
13、14 ラック
15 ボールネジ
16 上下調整用モータ
17、22 ローラピッチ調整用モータ
20 ワイヤ駆動用モータ

Claims (1)

  1. 各ローラのうち、最上位に位置され、所定ピッチでワイヤが巻着された一対の加工用ローラと、
    前記ワイヤを走行させるワイヤ駆動手段と、
    前記一対の加工用ローラ間のワイヤに対してワークを押し当てる方向にワークを相対移動させてワークを切断するワーク相対移動手段と、
    前記一対の加工用ローラ間のワイヤの上側に配置された一対のガイドバーであって、前記ワイヤのピッチに応じた間隔で溝が形成され、当該溝内に前記加工用ローラと前記ワーク間のワイヤが位置されるように位置決めされる一対のガイドバーと、
    前記一対の加工用ローラ間のワイヤよりも上方に配置され、供給口から前記一対のガイドバーに形成された溝を介して前記ワークの切断部位にスラリを供給するスラリ供給手段と
    を備えたことを特徴とするワイヤソー装置。
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