JP4314797B2 - 非晶質シリコンの結晶化方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば薄膜トランジスタなどの半導体装置に使用される多結晶シリコン薄膜や単結晶シリコン薄膜を製造する際に適用して好適な非結晶シリコンの結晶化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;以下、TFTと称する。)などの半導体素子を、低温プロセスで多結晶シリコン(Poly crystal Silicon;以下、p−Siと称する。)薄膜を形成して、作製する技術が開発されている。
【0003】
低温プロセスでp−Si薄膜を形成するときには、LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法などにより、ガラスなどの基板上に非晶質シリコン薄膜(Amorphous Silicon;以下、a−Si薄膜と称する。)を形成した後に、当該a−Si薄膜に対してレーザ光を照射してアニールを施すことによってp−Si薄膜形成する。すなわち、低温プロセスでp−Si薄膜を形成するときには、レーザ光が使用される。
【0004】
当該レーザ光としては、例えばエキシマレーザからパルス発振された波長308nmのレーザ光などが使用される。当該レーザ光を使用してa−Si薄膜をアニールすることにより、結晶粒径が約300nmであるp−Si薄膜が形成される。
【0005】
p−Si薄膜は、電子やホールの移動度が、結晶粒径などによって変化する。p−Si薄膜は、結晶粒径が大きくなるほど電子やホールの移動度が高くなり低抵抗となる。
【0006】
すなわち、使用されているp−Si薄膜の結晶粒径が大きい程TFTの電界効果移動度は高くなる。電解効果移動度が高いTFTを使用して例えば画像表示装置を作製したときには、当該画像表示装置の小型化、低消費電力化、多機能化などを図ることが可能となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、結晶粒径が大きいp−Si薄膜を形成する方法として、a−Siに対して連続レーザ光を走査しながら照射することによって、a−Siをアニールする方法が報告されている(テクニカルダイジェストAM−LCD’01)。a−Siに対して連続レーザ光を走査しながら照射すると、走査を開始した点から走査方向にラテラル成長した結晶が得られる。
【0008】
しかしながら、以上説明した方法でa−Si薄膜をアニールしてp−Si薄膜を作製すると、以下に説明する問題が生じる。
【0009】
図10(A)に示すように、a−Si薄膜100に対してレーザ光の走査を開始するときに連続レーザ光を照射した領域101(以下、走査開始領域100と称する。)においては、周辺領域101aに与えられるエネルギーが、内部領域101bに与えられるエネルギーよりも小さい。
【0010】
a−Siは、融点が約1400℃であり、結晶成長が促進される温度が約1200℃前後であり、結晶核が発生する温度が約1000℃前後であることが知られており、a−Si薄膜100をアニールするときに使用されるレーザ光のエネルギーは、a−Si薄膜100が約1400℃まで昇温するエネルギーに設定されている。したがって、周辺領域101aには温度が約1000℃となる領域が生じるために、例えば図10(B)に示すように、結晶核101a〜101aが発生する。
【0011】
結晶核101a〜101aが発生した状態で、図中矢印S方向に連続レーザ光を走査すると、内部領域101bに対して連続レーザ光の進行方向に発生した結晶核101a〜101aは、与えられるエネルギーが高い内部領域101bが走査されることによってアニールされて消失するが、他の結晶核101a〜101aは残存する。
【0012】
したがって、連続レーザ光の走査を続けると、図10(C)及び図10(D)に示すように、結晶核101a〜101aから周囲のシリコンが溶融した領域へ向かって結晶が成長する。すなわち、以上説明した方法でa−Si薄膜をアニールすると、連続レーザ光の走査方向に沿って延びた複数の帯状の結晶が幅方向に並列したp−Si薄膜が作製される。
【0013】
当該p−Si薄膜を使用して半導体素子を作製すると、電気特性が不充分となる虞が生じる。
【0014】
例えば当該p−Si薄膜を使用してTFTを作製すると、各結晶の境界がTFTにおける配線と交差する虞が生じる。各結晶の境界と配線とが交差したTFTは、抵抗が大きく電気特性が不充分なものとなる。結晶核の発生位置を制御することが可能であれば、各結晶の境界をTFTにおける配線と交差しない位置に作製することが可能となり、以上説明した方法によって作成したp−Siを使用して抵抗が小さく電気特性が良好であるTFTを作製することが可能となる。
【0015】
すなわち、結晶核の発生位置を制御することが可能であれば、以上説明した方法によって作成したp−Siを使用して電気特性が良好である半導体素子を作製することが可能となる。
【0016】
しかしながら、結晶核の発生には、a−Si薄膜に不純物が混入していることや周囲と微細構造が異なる領域が存在することなども関与する。したがって、結晶核の発生位置を制御することは困難とななる。
【0017】
本発明は以上説明した従来の実情を鑑みて提案されたものであり、結晶粒径が大きいシリコン薄膜を得ることが可能である非晶質シリコン薄膜の結晶化方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
シリコンは、融点が約1400℃であり、結晶成長が促進される温度が1200℃前後であり、結晶核が発生する速度が1000℃前後であることが知られている。また、シリコンは、非晶質であるときには融解前に1000℃に達したときと融解後に1000℃に冷却されたときとの両方の場合に結晶核が発生するが、結晶であるときには融解後に1000℃に冷却されたときには結晶核が発生するものの融解前に1000℃に達したときには結晶核が発生しないことが知られている。
【0019】
本願発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、シリコンの結晶にレーザ光を照射したときには、照射領域の周囲のエネルギーが低い領域においても結晶核が発生しないことに着目した。
【0020】
すなわち、本発明に係る非晶質シリコンの結晶化方法は、連続してエネルギーを射出する連続レーザ光が基板上に形成された非晶質シリコンからなる薄膜の表面に照射されることによって、薄膜の表面に形成されるスポットの平面形状が薄膜の表面上で定義される第1の方向に平行な方向を長軸とする略楕円形状となるように連続レーザ光を照射することによって、連続レーザ光を照射した薄膜の表面の第1のレーザ照射領域の外縁部にシリコンからなる結晶核を形成する結晶核形成工程と、第1の方向と略垂直な、薄膜の表面上で定義される第2の方向に平行な方向に沿ってスポットを結晶核が存在する結晶核存在領域から移動させながら連続レーザ光を薄膜の表面に照射することによって、結晶核を結晶成長させた結果、得られる複数の帯状の平面形状を有するシリコンからなる結晶を、連続レーザ光が照射された薄膜の表面上の第2のレーザ照射領域に形成する第1の結晶形成工程と、スポットの平面形状が薄膜の表面の第2の方向に平行な方向を長軸とする略楕円形状となるように、連続レーザ光を第2のレーザ照射領域内に存在する結晶のうち任意の結晶に対して照射するレーザ照射工程と、レーザ照射工程で連続レーザ光を第2のレーザ照射領域内に存在する結晶のうち任意の結晶に対して照射した状態で、レーザ照射工程で連続レーザ光が照射された結晶から第1の方向に平行な方向に沿ってスポットを移動させながら連続レーザ光を薄膜の表面に照射することによって、シリコンからなる結晶を連続レーザ光が照射された薄膜の表面の第3のレーザ照射領域に形成する第2の結晶形成工程と、レーザ光が薄膜の表面に照射されることによって薄膜の表面に形成されるスポットの位置を、第2のレーザ照射領域内で、かつ、スポットの一部と、第2の結晶形成工程で第3のレーザ照射領域に形成された結晶の一部とが重なり合うように調整した状態で、第1の方向に平行な方向に沿ってスポットを移動させながら連続レーザ光を薄膜の表面に照射することによって、非晶質シリコンに対してアニール処理を行って多結晶シリコンからなる結晶を薄膜の表面に形成する第3の結晶形成工程とを少なくとも含む。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した非晶質シリコン(Amorphous Silicon;以下、a−Si薄膜と称する。)薄膜の結晶化方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
先ず、図1に示すように、例えばLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法によって、基板1上にa−Si薄膜2を形成する。
【0023】
そして、a−Si薄膜2に対してレーザ光を照射することによってアニールを施し、当該a−SI薄膜2を多結晶シリコン(Polycrystal Silicon;以下、p−Siと称する。)とする。
【0024】
ところで、シリコンは、融点が1400℃であり、結晶成長が促進される温度が1200℃前後であり、結晶核が発生し易い温度が1000℃前後であることが知られている。また、a−Siは、融解前に1000℃に達したときと融解後に1000℃まで冷却したときとの両方の場合に結晶核が発生するが、p−Siは、融解後に1000℃まで冷却したときには結晶核が発生するものの、融解前に1000℃に達したときには結晶核が発生しないことが知られている。
【0025】
本発明を適用したa−Si薄膜2の結晶化方法においては、以上説明した原理を利用してa−Siをアニールしている。
【0026】
以下では、a−Si薄膜2をアニールする方法について具体的に説明する。
【0027】
まず、a−Si薄膜2のアニールに使用するレーザアニール装置について説明する。
【0028】
図2に示すように、レーザアニール装置10は、レーザ光源11と、レーザ光成形光学系12と、XYステージ13とを備える。
【0029】
レーザ光源11は、レーザ光を連続発振する。レーザ光源11としては、例えば、高調波発生による固体レーザ、クリプトンなどの気体レーザ、半導体レーザなどが挙げられる。
【0030】
レーザ光成形光学系12は、コリメータ、反射鏡、対物レンズなどにより構成されている。レーザ光成形光学系12は、レーザ光源11から発振された連続レーザ光を、スポットの形状が所定の楕円形状となるように成形し、XYステージ13上のa−Si薄膜2に対して照射する。
【0031】
XYステージ13は、a−Si薄膜2が形成された基板1を載置するとともに、基板1を所定の方向へ移動させる。具体的に説明すると、XYステージ13は、Xステージ、Yステージ、吸着プレートなどを備えている。Xステージ及びYステージは水平方向に移動するステージであり、XYステージ13は、XステージとYステージとで基板1を互いに直交する方向へ移動させることによって、基板1を所定の方向へ移動させる。また、吸着プレートは、基板1を吸着して固定する。XYステージ13が基板1を所定の方向へ移動させることによって、レーザ光成形光学系12から射出されたレーザ光は、a−Si薄膜2の所定の位置に対して照射される。
【0032】
レーザアニール装置1を利用したa−Si薄膜2のアニールは、以下に説明する方法によって行われる。
【0033】
先ず、図3(A)に示すように、連続レーザ光をa−Si薄膜2の一隅に照射する。連続レーザ光は、楕円形状のスポットの長軸方向が図中矢印Xに沿った方向となるように照射される。当該連続レーザ光が照射された領域20においては、周辺領域20aのエネルギーが内部領域20bのエネルギーよりも低い。
【0034】
a−Si薄膜2に対して照射される連続レーザ光のエネルギーは、a−Si薄膜2が融点まで昇温するエネルギーに設定されている。すなわち、内部領域20bよりもエネルギーが低い周辺領域20aには、温度が約1000℃となり結晶核が発生し易い領域が生じるために、例えば図3(A)に示すように、結晶核20a〜20aが発生する。
【0035】
次に、レーザ光源11から射出された連続レーザ光を、図中矢印Y方向へ走査する。結晶核20a〜20aが発生している状態で、連続レーザ光を矢印Y方向へ走査すると、内部領域20bと比較して連続レーザ光の進行方向に発生した結晶核20a〜20aは、与えられるエネルギーが高い内部領域20bが通過することによって消失するが、他の結晶核20a〜20aは残存する。
【0036】
そして、連続レーザ光の走査を続けると、図3(B)に示すように、結晶核20a〜20aから周囲のシリコンが溶融している領域へ向かって結晶が成長する。すなわち、連続レーザ光の走査方向に沿って延びた複数の帯状の結晶21〜21が幅方向に並列して矢印X方向の一端に形成される。
【0037】
次に、レーザ光を矢印X方向にラスタ走査する。ラスタ走査は、以下に説明する方法により行う。
【0038】
先ず、結晶21〜21の中から1つを選択する。以下では、選択した結晶を走査開始結晶と称する。本実施の形態では、結晶21を走査開始結晶とする。
【0039】
次に、図4(A)に示すように、走査開始結晶21に対して連続レーザ光を楕円形状のスポットの長軸方向が図中矢印Yに沿った方向となるように照射する。なお、以下では、当該連続レーザ光の照射領域を第1の走査開始点31と称する。結晶化したシリコンに対して連続レーザ光を照射しているために、第1の走査開始点31においては、周辺領域31aに1000℃となる領域が生じたときにも、結晶核が発生しない。
【0040】
次に、連続レーザ光を、図4(B)に示すように、矢印X方向へ走査する。結晶核が発生していない状態で連続レーザ光を走査するので、結晶核から溶融している領域へ走査開始結晶21が成長することによって複数の結晶が発生することがなくなり、1つの結晶32が形成される。
【0041】
なお、連続レーザ光は、図5に示すように、第1の走査開始点31が走査開始結晶21の内部となるように照射されることが好ましい。
【0042】
次に、図6(A)に示すように、走査開始結晶21上に、第1の走査開始点31に対して矢印Y方向へ移動しており且つ第1の走査開始点31と重畳するように、連続レーザ光を照射する。なお、以下では、当該連続レーザ光の照射領域を第2の走査開始点33と称する。
【0043】
次に、図6(B)に示すように、矢印X方向へ連続レーザ光を再度走査する。連続レーザ光を再度走査することにより、結晶32における長軸方向の一方の境界32aは連続レーザ光が照射されるために融解し、結晶32はアニールされた方向に結晶成長する。すなわち、再度矢印X方向へ連続レーザ光を走査することによって、結晶32は成長して粒径が大きくなる。
【0044】
以上説明した矢印X方向への連続レーザ光の走査を繰り返すことによって、レーザアニール装置1は、a−Si薄膜2の全面に対して連続レーザ光を照射してアニールを行う。a−Si薄膜2は、以上説明した方法でアニールされることによって、結晶粒径が大きいp−Si薄膜又はs−Si薄膜となる。なお、X方向への走査を繰り返すときには、走査開始点が全て同一の走査開始結晶に設けられることが好ましい。
【0045】
なお、以上説明したa−Si薄膜2のアニール方法においては、結晶21〜21を、使用領域2aの外部に形成することが好ましい。結晶21〜21を使用領域2aの外部に形成することにより、使用領域2a内のシリコン薄膜は、結晶粒径が大きいために抵抗が低く、電子やホールの移動度が高いものとなる。
【0046】
また、連続レーザ光のスポット形状は楕円形状に限られるものではない。円状、正方形状でも良い。しかし好ましくは、連続レーザ光の走査方向に直交した方向に長軸を持つ長方形状、あるは楕円状であることが望ましい。レーザ光のスポット形状を、連続レーザ光の走査方向に直交した方向に対して広がった形状(長方形状、楕円形状)とすることにより、レーザ光のエネルギーをa−Si薄膜に効率良く、均一に与えアニールすることが可能となる。さらに、図5からも理解できるように、帯状に形成された走査開始結晶21の内部に走査開始点31を設定しようとするとき、連続レーザ光の走査方向に直交した方向に対してスポットが広がった形状とすることにより、設定が容易となる。
【0047】
また、連続レーザ光の走査は、以上説明したラスタ走査に限定されない。例えば、図7に示すように、連続レーザ光を矢印X方向に沿って往復走査しても良い。
【0048】
連続レーザ光を矢印X方向に沿って往復走査するときには、先ず、連続レーザ光をa−Si薄膜2におけるX方向の一方の端部に沿って走査して幅方向に並列した複数の帯状の結晶40〜40を形成し、結晶40〜40のうち1つを第1の走査開始結晶とする。本実施の形態では、結晶40を第1の走査開始結晶とする。
【0049】
次に、連続レーザ光をX方向の他方の端部に沿って走査することで、幅方向に並列した複数の帯状の結晶41〜41を形成し、結晶41〜41のうち1つを第2の走査開始結晶を選択する。本実施の形態では、結晶41を第2の走査開始結晶とする。
【0050】
そして、連続レーザ光の照射領域が第1の走査開始結晶40との第2の走査開始結晶41との間を矢印X方向に沿って往復移動するように連続レーザ光を複数回走査することによって、a−Si薄膜2をアニールする。
【0051】
以上説明した方法によってa−Si薄膜2をアニールすることにより、a−Si薄膜2のアニールを効率良く行うことが可能となる。
【0052】
なお、走査開始結晶を、a−Si薄膜2上に3つ以上形成しても良い。走査開始結晶を3つ以上形成したときには、連続レーザ光の走査を、3つ以上の走査開始結晶間に亘って行う。
【0053】
また、走査開始結晶は、a−Siの端部に形成されなくても良く、例えば、a−Siの略中央部に形成されても良い。
【0054】
また、例えば、最初にY方向に連続レーザ光を走査するスペースが不充分なことなどにより、充分な大きさの走査開始結晶を得ることが困難であるときには、以下に説明する方法によって走査開始結晶を形成しても良い。
【0055】
すなわち、図8(A)に示すように、最初にY方向の一端に沿って連続レーザ光を走査することによってY方向の一端に幅方向に並列した複数の帯状の結晶45〜45を形成した後に、図8(B)に示すように、45〜45のうち1つの結晶からY方向に連続レーザ光を走査して走査開始結晶46を形成しても良い。そして、図8(C)に示すように、走査開始結晶46から連続レーザ光の矢印X方向への走査を行い、結晶47を形成する。図8(B)では、結晶45から連続レーザ光を走査して走査開始結晶46を形成している。
【0056】
ところで、以上説明したa−Si薄膜2の結晶化方法では、結晶化したシリコンに対してレーザ光を照射し、アニールを施すことが必須となる。したがって、本発明を適用したa−Si薄膜2の結晶化方法においては、使用されるレーザ光が、結晶化したシリコンに吸収される波長である必要がある。レーザ光の波長と結晶化したシリコンの消衰係数との関係は図9に示す通りである。すなわち、消衰係数は、波長400nm付近まではレーザ光の波長が増大するに従って急激に減少し、波長400nmを越すと一旦はなだらかな減少に転ずるが、波長が500nmより長くなると消衰係数がほとんど0となってしまう。したがって、波長が500nmより長いレーザ光を結晶化したシリコンに対して照射したときには、レーザ光が当該シリコンに吸収されないため、結晶化したシリコンをアニールすることは不可能となる。
【0057】
以上説明した理由により、本発明を適用したa−Si薄膜2の結晶化方法においては、波長が500nm以下のレーザ光、好ましくは波長400nm以下のレーザ光を使用する必要が生じる。
【0058】
以上説明したように、本発明を適用したa−Si薄膜2の結晶化方法では、走査開始点31において、周辺領域31aに結晶核が発生しない。そして、結晶核が発生しない状態で、連続レーザ光を照射することにより、走査開始結晶21が連続レーザ光の走査方向にラテラル成長し、1つの結晶32が形成される。すなわち、本発明を適用したa−Si薄膜2の結晶化方法では、1回の走査で1つの結晶を形成することが可能となる。
【0059】
また、本発明を適用したa−Si薄膜2の結晶化方法では、前段の走査によって形成された結晶32の境界32a上に連続レーザ光を走査しながら照射することで、当該結晶が連続レーザ光の照射によって融解した領域へ成長する。すなわち、本発明を適用したa−Si薄膜2の結晶化方法によれば、連続レーザ光の走査を繰り返すことにより、先に形成されている結晶のサイズを大きくすることが可能となる。
【0060】
したがって、本発明を適用したa−Si薄膜2の結晶化方法によれば、a−Siを結晶化して結晶粒径が大きいp−Siを得ることが可能となる。すなわち、本発明を適用したa−Si薄膜2の結晶化方法によれば、電子やホールの移動度が高く、電気特性が良好なシリコン薄膜を得ることが可能となる。
【0061】
【発明の効果】
本発明に係る非晶質シリコンの結晶化方法では、レーザ光の走査の開始点において、周辺領域に結晶核が発生しない。そして、結晶核が発生しない状態で、連続してエネルギーを射出するレーザ光を照射することにより、結晶がレーザ光の走査方向にラテラル成長する。すなわち、本発明に係る非晶質シリコンの結晶化方法では、1回の走査で1つの結晶を形成することが可能となる。
【0062】
したがって、本発明に係る非晶質シリコンの結晶化方法によれば、非晶質シリコンを結晶化して結晶粒径が大きい多結晶シリコンを得ることが可能となる。すなわち、本発明に係る非晶質シリコンの結晶化方法によれば、電子やホールの移動度が高く、電気特性が良好なシリコンを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基板上に形成されたシリコン薄膜を示す斜視図である。
【図2】本発明を適用した非晶質シリコンの結晶化方法において使用されるアニール装置を示す模式図である。
【図3】最初にY方向にレーザ光を照射している状態を示す模式図である。
【図4】レーザ光をX方向に走査している状態を示す模式図である。
【図5】開始点のスポットが走査開始結晶の外部にはみ出している状態を示す模式図である。
【図6】レーザ光を再度X方向に走査している状態を示す模式図である。
【図7】レーザ光を往復走査してレーザアニールを行っている状態を示す模式図である。
【図8】走査開始結晶を大きくする方法を説明するための模式図である。
【図9】結晶シリコンに照射されるレーザ光の波長と消衰係数との関係を示す図である。
【図10】従来のレーザ光の走査方法を示す模式図である。
【符号の説明】
2 a−Si薄膜、21 走査開始結晶、31 第1の走査開始点、32 結晶

Claims (5)

  1. 連続してエネルギーを射出する連続レーザ光が基板上に形成された非晶質シリコンからなる薄膜の表面に照射されることによって、上記薄膜の表面に形成されるスポットの平面形状が上記薄膜の表面上で定義される第1の方向に平行な方向を長軸とする略楕円形状となるように上記連続レーザ光を照射することによって、上記連続レーザ光を照射した上記薄膜の表面の第1のレーザ照射領域の外縁部にシリコンからなる結晶核を形成する結晶核形成工程と、
    第1の方向と略垂直な、上記薄膜の表面上で定義される第2の方向に平行な方向に沿って上記スポットを上記結晶核が存在する結晶核存在領域から移動させながら上記連続レーザ光を上記薄膜の表面に照射することによって、上記結晶核を結晶成長させた結果、得られる複数の帯状の平面形状を有するシリコンからなる結晶を、上記連続レーザ光が照射された上記薄膜の表面上の第2のレーザ照射領域に形成する第1の結晶形成工程と、
    上記スポットの平面形状が上記薄膜の表面の上記第2の方向に平行な方向を長軸とする略楕円形状となるように、上記連続レーザ光を上記第2のレーザ照射領域内に存在する結晶のうち任意の結晶に対して照射するレーザ照射工程と、
    上記レーザ照射工程で上記連続レーザ光を上記第2のレーザ照射領域内に存在する結晶のうち任意の結晶に対して照射した状態で、上記レーザ照射工程で連続レーザ光が照射された結晶から上記第1の方向に平行な方向に沿って上記スポットを移動させながら上記連続レーザ光を上記薄膜の表面に照射することによって、シリコンからなる結晶を上記連続レーザ光が照射された上記薄膜の表面の第3のレーザ照射領域に形成する第2の結晶形成工程と、
    上記レーザ光が上記薄膜の表面に照射されることによって上記薄膜の表面に形成されるスポットの位置を、上記第2のレーザ照射領域内で、かつ、上記スポットの一部と、上記第2の結晶形成工程で第3のレーザ照射領域に形成された結晶の一部とが重なり合うように調整した状態で、上記第1の方向に平行な方向に沿って上記スポットを移動させながら上記連続レーザ光を上記薄膜の表面に照射することによって、非晶質シリコンに対してアニール処理を行って多結晶シリコンからなる結晶を上記薄膜の表面に形成する第3の結晶形成工程と
    を少なくとも含む非晶質シリコンの結晶化方法。
  2. 上記第2の結晶形成工程では、上記第2のレーザ照射領域内に存在する結晶の複数の異なる位置から上記スポットを上記第1の方向と平行な方向に沿って移動させながら上記連続レーザ光を上記薄膜の表面上に照射することによって、シリコンからなる結晶を上記連続レーザ光が照射された上記薄膜の表面上の複数の領域からなる第3のレーザ照射領域に形成し、
    上記第3の結晶形成工程では、上記レーザ光が上記薄膜の表面に照射されることによって上記薄膜の表面に形成されるスポットの一部と、上記第2の結晶形成工程で上記各第3のレーザ照射領域に形成された結晶の一部とが重なり合うようにスポットの位置を調整した状態で、上記第1の方向に平行な方向に沿って上記スポットを移動させながら上記連続レーザ光を上記薄膜の表面上に照射することによって、非晶質シリコンに対してアニール処理を行って多結晶シリコンからなる結晶を上記薄膜の表面上に形成する請求項1記載の非晶質シリコンの結晶化方法。
  3. 上記連続レーザ光は、レーザ光を連続発振するレーザ光源から発振されている請求項1記載の非晶質シリコンの結晶化方法。
  4. 上記連続レーザ光は、波長が500nm以下とされている請求項1記載の非晶質シリコンの結晶化方法。
  5. 上記連続レーザ光は、波長が400nm以下とされている請求項1記載の非晶質シリコンの結晶化方法。
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