JP4314789B2 - 積層セラミックコンデンサの製造方法 - Google Patents

積層セラミックコンデンサの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、積層セラミックコンデンサの製造方法に関するもので、特に、積層セラミックコンデンサにおける内部電極と外部電極との接合性を高めるための改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図1は、この発明にとって興味ある積層セラミックコンデンサ1を図解的に示す断面図である。
【0003】
図1に示すように、積層セラミックコンデンサ1は、積層体2を備えている。積層体2は、複数の積層された誘電体セラミック層3と、誘電体セラミック層3間の特定の複数の界面に沿ってそれぞれ形成された複数の内部電極4および5とを備えている。
【0004】
内部電極4および5は、積層体2の端面6および7のいずれか一方にまで引き出される。そして、その一方の端縁が積層体2の一方の端面6上に露出させた状態で形成された内部電極4とその一方の端縁を積層体2の他方の端面7上に露出させた状態で形成された内部電極5とが、積層体2の内部において、誘電体セラミック層3を介して静電容量が得られるように交互に配置されている。
【0005】
上述の静電容量を取り出すため、積層体2の端面6および7上には、内部電極4に電気的に接続されるように、外部電極8が形成され、内部電極5に電気的に接続されるように、外部電極9が形成されている。
【0006】
また、外部電極8および9上には、たとえば、ニッケルからなる第1のめっき層10および11がそれぞれ形成され、さらにその上には、錫または半田からなる第2のめっき層12および13がそれぞれ形成されている。
【0007】
このような積層セラミックコンデンサ1において、そのコストの低減等を目的として、内部電極4および5に含まれる導電材料として、たとえばニッケルまたは銅のような卑金属が用いられ、また、外部電極8および9に含まれる導電材料として、たとえば銅またはニッケルのような卑金属が用いられるようになってきている。
【0008】
上述のような積層セラミックコンデンサ1は、一般的に、次のようにして製造される。
【0009】
たとえばCaZrO3 を主成分とするセラミックのような非還元性セラミックのための原料粉末を含むスラリーが用意され、このスラリーをシート状に成形することによって、誘電体セラミック層3となるべきセラミックグリーンシートが用意される。
【0010】
次に、セラミックグリーンシート上に、ニッケル粉末のような卑金属粉末を含む導電性ペーストを用いて、所望のパターンを有する内部電極4および5のための導電性ペースト膜が印刷等によって形成される。
【0011】
次に、導電性ペースト膜がそれぞれ形成されたセラミックグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートが積層され、熱圧着されることによって、一体化され、所望の寸法にカットすることによって、積層体2の生の状態のものが得られる。
【0012】
次に、焼成工程が実施され、それによって、焼結後の積層体2が得られる。この焼成工程は、内部電極4および5に含まれる導電成分としてのニッケルのような卑金属の酸化を防止するため、還元性雰囲気中で実施される。焼結後の積層体2において、前述したセラミックグリーンシートは誘電体セラミック層3となり、導電性ペースト膜は内部電極4および5となる。
【0013】
次に、積層体2の端面6および7上に、それぞれ、外部電極8および9が、内部電極4および5のいずれか特定のものに電気的に接続されるように形成される。外部電極8および9は、導電成分として銅またはニッケルのような卑金属を含む導電性ペーストを付与しかつ焼き付けることによって形成される。
【0014】
次に、外部電極8および9上に、たとえばニッケルの湿式めっきが施され、それによって、第1のめっき層10および11が形成され、さらにその上に、たとえば錫または半田の湿式めっきが施され、それによって、第2のめっき層12および13が形成される。
【0015】
このようにして、図1に示した積層セラミックコンデンサ1が完成される。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上述の製造方法によって製造される積層セラミックコンデンサ1において、外部電極8および9の形成のための導電性ペーストの焼付け条件によっては、内部電極4および5と外部電極8および9との接合不良が生じ、それによって、積層セラミックコンデンサ1の取得静電容量が設計値より小さくなったり、あるいは、めっき層10〜13の形成のための湿式めっきを施した後に、積層体2において内部欠陥が生じたりすることがある。
【0017】
上述の問題は、外部電極8および9の形成のための導電性ペーストの焼付け工程において適用される雰囲気と大いに関連している。
【0018】
より具体的には、この焼付け工程での雰囲気が内部電極4および5に含まれる卑金属の平衡酸素分圧よりも酸化側になると、内部電極4および5と外部電極8および9との接合不良が生じやすく、それによる静電容量不足が生じやすい傾向がある。これは、外部電極8および9の形成のための焼付け工程で内部電極4および5内のニッケルのような卑金属が酸化することによるものである。
【0019】
他方、焼付け工程での雰囲気が内部電極4および5に含まれる卑金属の平衡酸素分圧よりも還元側になると、外部電極8および9の焼結度合いが不足し、めっき液が外部電極8および9を通して積層体2の内部に浸入しやすくなり、積層体2において内部欠陥が生じやすい傾向がある。
【0020】
このように、上述の静電容量不足および内部欠陥の各問題は、相反する雰囲気条件からもたらされるものであり、そのため、これら2つの問題を同時に解決することは困難である。
【0021】
そこで、この発明の目的は、上述の問題を解決し得る積層セラミックコンデンサの製造方法を提供しようとすることである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
この発明は、非還元性セラミックからなる複数の積層された誘電体セラミック層と、誘電体セラミック層間の特定の複数の界面に沿いかつ各一方の端縁をいずれか一方の端面上に露出させた状態で形成された卑金属を含む複数の内部電極とを備える、積層体を作製する工程と、内部電極の特定のものに電気的に接続されるように、積層体の各端面上に卑金属を含む導電性ペーストを付与しかつ焼き付けることによって、外部電極を形成する工程とを備える、積層セラミックコンデンサの製造方法に向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、次のような構成を備えることを特徴としている。
【0023】
すなわち、この発明では、内部電極に含まれる卑金属および外部電極に含まれる卑金属の少なくとも一方はニッケルを含み、外部電極を形成する工程の後、外部電極が形成された積層体を、ニッケルの酸化−還元平衡酸素分圧と同等または還元側の酸素分圧の雰囲気下において、導電性ペーストを焼き付ける温度の±100℃以内の温度で熱処理する工程をさらに実施することを特徴としている。
【0024】
この発明は、内部電極に含まれる卑金属が、ニッケルであるとき、特に有利に適用される。
【0025】
また、この発明は、誘電体セラミック層を構成する非還元性セラミックがCaZrO を主成分とするものであるとき、特に有利に適用される。
【0026】
また、熱処理する工程において適用される雰囲気は、主成分としてN2 ガスを含み、H2 、H2 O、CO2 およびCOのうちの少なくとも1種のガスによって酸素分圧がコントロールされることが好ましい。
【0027】
この発明は、外部電極に湿式めっきを施す工程をさらに備える、積層セラミックコンデンサの製造方法において特に有利に適用され、この場合、前述した熱処理する工程の後、湿式めっき工程が実施される。
【0028】
この発明において、外部電極に含まれる卑金属としては、たとえば銅が有利に用いられる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサの製造方法を、図1を参照して説明する。なお、前述した説明と重複する部分については、その説明を省略することもある。
【0030】
積層セラミックコンデンサ1を製造するため、たとえばCaZrO3 を主成分とするセラミックのような非還元性セラミックのための原料粉末を含むスラリーが用意され、このスラリーをシート状に成形することによって、誘電体セラミック層3となるべきセラミックグリーンシートが用意される。
【0031】
次に、セラミックグリーンシート上に、導電成分としてニッケルを含む導電性ペーストを用いて、所望のパターンを有する内部電極4および5のための導電性ペースト膜が印刷等によって形成される。
【0032】
次に、上述のように、導電性ペースト膜がそれぞれ形成されたセラミックグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートが積層され、熱圧着されることによって、一体化され、次いで、所望の寸法にカットされることによって、積層体2の生の状態のものが得られる。
【0033】
次に、還元性雰囲気中での焼成工程が実施され、焼結した積層体2が得られる。この積層体2において、前述したセラミックグリーンシートは誘電体セラミック層3となり、導電性ペースト膜は内部電極4および5となる。したがって、積層体2は、たとえばCaZrO3 を主成分とする非還元性セラミックからなる複数の積層された誘電体セラミック層3と、誘電体セラミック層3間の特定の複数の界面に沿いかつ各一方の端縁をいずれか一方の端面6または7上に露出させた状態で形成されたニッケルを含む複数の内部電極4および5とを備えている。
【0034】
次に、積層体2の端面6および7上に、それぞれ、外部電極8および9が、内部電極4および5のいずれか特定のものに電気的に接続されるように形成される。外部電極8および9は、導電成分としての銅またはニッケルのような卑金属粉末を含む導電性ペーストを付与し、これを焼き付けることによって形成される。なお、外部電極8および9に含まれる卑金属としては、ニッケルを用いた内部電極4および5との整合性の点で銅を用いる方がより好ましい。
【0035】
これら外部電極8および9を形成するための導電性ペーストの焼付け工程では、たとえば600〜1000℃の温度が適用され、また、銅等の酸化を防止するため、酸素濃度が制限された雰囲気下で実施されることが好ましいが、この発明では、特に、これら温度および雰囲気条件が限定されるものではない。
【0036】
次に、上述のように外部電極8および9が形成された積層体2は、熱処理される。この熱処理工程では、内部電極4および5に含まれるニッケルの酸化−還元平衡酸素分圧と同等またはニッケルの酸化−還元平衡酸素分圧よりも還元側の酸素分圧の雰囲気下で実施される。この熱処理工程では、熱処理装置として、たとえばバッチ式炉またはトンネル式炉が用いられる。
【0037】
上述したような熱処理工程において適用される雰囲気は、主成分としてN2 ガスを含み、H2 、H2 O、CO2 およびCOのうちの少なくとも1種のガスによって酸素分圧がコントロールされることが好ましい。
【0038】
すなわち、熱処理のための炉内において、N2 ガスを導入したとき、炉内に当初から存在していたO2 のため、および、N2 ガスは、純粋なものを作製することが困難で、N2 ガスに若干含まれているO2 のため、炉内の雰囲気には必ずO2 が含まれている。この場合において、酸素分圧をより下げたい場合には、H2 ガスが導入され、他方、酸素分圧を酸化側にしたい場合には、H2 O、CO2 およびCOの少なくとも1種が導入される。このようにすることにより、熱処理工程において適用される雰囲気の酸素分圧を、酸化側または還元側に任意に制御することが容易である。
【0039】
上述したように、外部電極8および9を形成した後、ニッケルの酸化−還元平衡酸素分圧と同等またはこの平衡酸素分圧よりも還元側の酸素分圧の雰囲気下で熱処理することによって、後述する実験例から明らかなように、静電容量不足および内部欠陥が生じることを防止することができる。
【0040】
ここで、静電容量不足の防止は、この熱処理によって、内部電極4および5の酸化部分が還元されて、内部電極4および5と外部電極8および9との再接合が促進され、そのため、内部電極4および5と外部電極8および9との接合不良による静電容量不足が解消したためであると考えられる。また、内部欠陥の防止は、熱処理によって、外部電極8および9の焼結性が向上し、そのため、外部電極8および9を通してのめっき液の浸入が抑制されたためであると考えられる。
【0041】
また、この熱処理において適用される熱処理温度は、後述する実験例から明らかなように、外部電極8および9の形成のための導電性ペーストを焼き付ける温度の±100℃以内の温度であることが好ましい。
【0042】
熱処理温度が、導電性ペーストの焼付け温度より100℃を超える差をもって低い場合には、前述した容量不足および内部欠陥の発生を抑制する効果が不十分となる。他方、熱処理温度が、導電性ペーストの焼付け温度より100℃を超える差をもって高い場合には、積層体2の耐曲げ性試験において不良が発生しやすくなる。これは、熱処理温度が高くなることによって、外部電極8および9の焼結性が向上するが、この焼結性の必要以上の向上によって、外部電極8および9の積層体2に対する締め付けによる応力が大きくなりすぎたためであると考えられる。
【0043】
次に、外部電極8および9上に、たとえばニッケルの湿式めっきが施され、それによって、第1のめっき層10および11が形成され、さらにその上に、錫または半田の湿式めっきが施され、それによって、第2のめっき層12および13が形成される。この湿式めっき工程、特に第1のめっき層10および11の形成のための湿式めっき工程において、外部電極8および9の焼結性が高められているので、めっき液が外部電極8および9を通して積層体2の内部に浸入することが抑制され、したがって、前述したような内部欠陥の発生を有利に防止することができる。
【0044】
以上のようにして、積層セラミックコンデンサ1が完成される。
【0045】
次に、この発明における特徴的構成である外部電極8および9の形成のための導電性ペーストの焼付け後の熱処理工程での好ましい条件を求めるため、およびこの発明による効果を確認するために実施した実験例について説明する。
【0046】
【実験例】
1.基本試料
CaZrO3 を主成分とする非還元性セラミック原料粉末を用いてセラミックスラリーを作製し、このスラリーを用いて、セラミックグリーンシートを成形した。
【0047】
次に、セラミックグリーンシートの特定のものに、ニッケル粉末を導電成分として含む導電性ペーストをスクリーン印刷法によって印刷し、内部電極のための導電性ペースト膜を形成した。
【0048】
次に、導電性ペースト膜が形成されたセラミックグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートを積層し、熱圧着し、その後、カットすることによって、積層セラミックコンデンサのための積層体の生の状態のものを得た。
【0049】
次に、生の積層体を、還元性雰囲気中において、焼成し、それによって、焼結後の積層体を得た。
【0050】
次に、積層体の端面上に、銅粉末を導電成分として含む導電性ペーストを塗布し、表1に示す「外部電極焼付け条件」にて焼き付け、外部電極を形成した。
【0051】
次に、外部電極上に、ニッケルの湿式めっきを施すことによって、第1のめっき層を形成し、さらに、錫の湿式めっきを施すことによって、第2のめっき層を形成し、表1に示した試料1および2の各々に係る積層セラミックコンデンサを作製した。なお、作製した積層セラミックコンデンサは、設計値で330pFの静電容量を有するものであった。
【0052】
次に、得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、表1の「試験結果」の欄にその結果が示されているように、「容量不足発生率」、「内部欠陥発生率」および「耐曲げ性不良率」をそれぞれ評価した。
【0053】
より詳細には、「容量不足発生率」は、全試料数10000個について、静電容量を測定し、その測定値が前述の設計値より10%以上低いものを容量不足と判定し、この容量不足が生じている試料数の比率を求めたものである。
【0054】
「内部欠陥発生率」は、全試料数10000個について、超音波探傷試験機等を用いた非破壊試験により内部欠陥を検出し、この内部欠陥が生じている試料数の比率を求めたものである。
【0055】
「耐曲げ性不良率」は、各条件より抜き取った100個の試料について、JIS C5102−1994にて規定されている耐基板曲げ性試験を行ない、たわみ量2mm、保持時間5秒間の条件下で、クラック等が発生したものを耐曲げ性不良とし、この耐曲げ性不良が生じている試料数の比率を求めたものである。
【0056】
【表1】
Figure 0004314789
【0057】
表1に示すように、試料1および2のいずれにおいても、容量不足および内部欠陥が発生しているが、試料1および2を比較すれば、外部電極の焼付け時の雰囲気がより酸化側である試料1では、試料2に比べて、内部電極と外部電極との接合不良による容量不足がより多く発生し、他方、外部電極の焼付け時の雰囲気がより還元側である試料2では、試料1に比べて、外部電極の焼結度合いが不足しているため、めっき液の浸入による内部欠陥がより多く発生している。
【0058】
なお、耐曲げ性については、試料1および2のいずれにおいても、不良が発生していない。
【0059】
2.酸素分圧条件を変えた熱処理を施した試料
次に、上述した試料1および2の各々を作製するための工程を同様に実施しながら、外部電極の形成のための導電性ペーストの焼付け後において、さらに、表2の「外部電極焼付け後の熱処理条件」の欄に示すように、800℃の温度を付与しかつ種々の酸素分圧条件で熱処理を施した試料を作製した。
【0060】
表2において、試料1−1ないし1−6のように、試料番号の前項に「1」が付されているものは、表1に示した試料1を基本とするものであり、試料2−1ないし2−6のように、試料番号の前項に「2」を付されているものは、表1に示した試料2を基本とするものである。
【0061】
また、表2には、参考として、温度800℃におけるニッケルの酸化−還元平衡酸素分圧が「Ni平衡酸素分圧」の欄に示されている。
【0062】
また、表2には、前掲の表1に示した「試験結果」と同様の方法によって評価した「容量不足発生率」、「内部欠陥発生率」および「耐曲げ性不良率」が示されている。
【0063】
【表2】
Figure 0004314789
【0064】
表2において、試料番号に*を付した試料1−1、1−2、2−1および2−2は、この発明の範囲外のものである。
【0065】
これら試料1−1、1−2、2−1および2−2では、少なくとも外部電極焼付け後の熱処理を行なっているので、試料1−1および1−2と前掲の表1に示した試料1とを比べたり、試料2−1および2−2と表1に示した試料2とを比べたりすると、容量不足発生率が低減されていることがわかる。しかしながら、これら試料1−1、1−2、2−1および2−2では、熱処理時の酸素分圧がNi平衡酸素分圧より酸化側にあるため、内部電極と外部電極との再接合がそれほど進まず、容量不足発生率を0%とするまでには至っていない。
【0066】
これに対して、この発明の範囲内にある試料1−3ないし1−6および2−3ないし2−6によれば、外部電極焼付け後の熱処理において、Ni平衡酸素分圧と同等かこれよりも還元側の酸素分圧の雰囲気が適用されているので、内部電極と外部電極との再接合が十分に促進され、その結果、容量不足発生率を0%とすることができる。
【0067】
また、内部欠陥発生率について評価すると、この発明の範囲外にある試料1−1、1−2、2−1および2−2についても言えることであるが、この発明の範囲内の試料1−3ないし1−6および2−3ないし2−6によれば、前掲の表1に示した試料1および2とそれぞれ比較すればわかるように、内部欠陥発生率を0%とすることができる。これは、外部電極焼付け後の熱処理によって、外部電極の焼結性が向上し、めっき液の浸入が抑制されたためであると考えられる。
【0068】
また、表2に示した試料1−1ないし1−6および2−1ないし2−6によれば、表1に示した試料1および2の場合と同様、耐曲げ性不良率を0%とすることができる。
【0069】
3.温度条件を変えた熱処理を施した試料
次に、前掲の表1に示した試料1および2の各々を作製するための工程を同様に実施しながら、外部電極の形成のための導電性ペーストの焼付け後において、さらに、表3の「外部電極焼付け後の熱処理条件」の欄に示すように、種々の温度および酸素分圧条件で熱処理を施した試料を作製した。
【0070】
表3において、試料1−11ないし1−19のように、試料番号の前項に「1」が付されているものは、表1に示した試料1を基本とするものであり、試料2−11ないし2−19のように、試料番号の前項に「2」が付されているものは、表1に示した試料2を基本とするものである。
【0071】
表3には、また、参考として、「外部電極焼付け後の熱処理条件」の「温度」の欄に示した各温度でのニッケルの酸化−還元平衡酸素分圧が「Ni平衡酸素分圧」の欄に示されている。この「Ni平衡酸素分圧」の欄に示した酸素分圧と「外部電極焼付け後の熱処理条件」の「酸素分圧」の欄に示した酸素分圧とを比較すればわかるように、表3に示したすべての試料について、「外部電極焼付け後の熱処理条件」の「酸素分圧」は、「Ni平衡酸素分圧」よりも還元側の酸素分圧となっている。
【0072】
また、表3には、前掲の表1に示した「試験結果」と同様の方法によって評価した「容量不足発生率」、「内部欠陥発生率」および「耐曲げ性不良率」が示されている。
【0073】
なお、表3において、試料1−16および2−14は、それぞれ、表2に示した試料1−4および2−4と同等である。
【0074】
【表3】
Figure 0004314789
【0075】
表3において、試料番号に*を付したものは、この発明の範囲から外れた試料である。
【0076】
表3において、試料1−11ないし1−19は、表1に示す試料1を基本とするものであり、外部電極の焼付け時においては850℃の温度が適用されたものである。
【0077】
これら試料1−11ないし1−19のうち、外部電極の焼付け温度850℃より200℃および150℃それぞれ高い温度である1050℃および1000℃の各温度で熱処理された試料1−11および1−12では、耐曲げ性不良が発生している。これは、外部電極の焼結性が必要以上に向上し、そのため、積層体の締め付けによる応力が大きくなったためであると考えられる。
【0078】
他方、外部電極の焼付け時の温度850℃より150℃および200℃それぞれ低い700℃および650℃の各温度で熱処理された試料1−18および1−19では、内部電極と外部電極との再接合がそれほど進まず、また、外部電極の焼結性がそれほど進まないため、容量不足および内部欠陥がともに発生している。
【0079】
これらに対して、外部電極の焼付け温度850℃の±100℃以内の温度である750℃ないし950℃の範囲の各温度で熱処理された試料1−13ないし1−17によれば、容量不足、内部欠陥および耐曲げ性不良のいずれもが発生していない。
【0080】
試料2−11ないし2−19は、表1に示すように、外部電極の焼付け時の温度が750℃である。これら試料2−11ないし2−19においても、上述した試料1−11ないし1−19の場合と同様の傾向が現れている。
【0081】
すなわち、焼付け温度750℃より100℃を超える差をもって高い温度で熱処理された2−11および2−12では、耐曲げ性不良が発生し、他方、焼付け温度750℃より100℃を超える差をもって低い温度で熱処理された試料2−18および2−19では、容量不足および内部欠陥が発生している。
【0082】
これらに対し、焼付け温度750℃の±100℃以内の温度、すなわち650℃ないし850℃の範囲にある各温度で熱処理された試料2−13ないし2−17によれば、容量不足、内部欠陥および耐曲げ性不良のいずれをも発生していない。
【0083】
なお、上記実施例においては、内部電極がニッケルの場合を例に挙げて説明したが、これに限るものではなく、たとえば銅等の卑金属を用いた場合にも、この発明を同様に適用することができる。
【0084】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、非還元性セラミックからなる誘電体セラミック層と卑金属を含む内部電極とを備える積層体をもって積層セラミックコンデンサを製造するにあたって、内部電極に含まれる卑金属および外部電極に含まれる卑金属の少なくとも一方がニッケルを含むようにし、卑金属を含む導電性ペーストを付与しかつ焼き付けることによって外部電極を形成した後、ニッケルの酸化−還元平衡酸素分圧と同等またはこの酸化−還元平衡酸素分圧よりも還元側の酸素分圧の雰囲気下で熱処理するようにしているので、内部電極と外部電極との再接合を促進させることができるとともに、外部電極の焼結性を向上させることができる。
【0085】
したがって、内部電極と外部電極との接合不良による取得静電容量不足を防止することができる。
【0086】
また、外部電極に湿式めっきを施す場合、外部電極を通してのめっき液の積層体への浸入を抑制することができ、積層体において内部欠陥が生じることを防止することができる。
【0087】
このようなことから、高い歩留まりをもって積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【0088】
また、この発明によれば、熱処理工程において適用される熱処理温度が、外部電極の形成のための導電性ペーストを焼き付ける温度の±100℃以内の温度に選ばれるので、前述した内部電極と外部電極との再接合の促進および外部電極の焼結性の向上といった効果を維持しながら、外部電極の焼結性が必要以上に向上することを防止でき、その結果、積層体の締め付けによる応力が大きくなりすぎることがなく、積層体の耐曲げ性が低下することを確実に防止することができる。
【0089】
また、熱処理工程において適用される雰囲気が、主成分としてN2 ガスを含み、H2 、H2 O、CO2 およびCOのうちの少なくとも1種のガスによって酸素分圧がコントロールされるようにすると、所望の酸素分圧のコントロールを容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明が適用される積層セラミックコンデンサ1を図解的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 積層セラミックコンデンサ
2 積層体
3 誘電体セラミック層
4,5 内部電極
6,7 端面
8,9 外部電極
10〜13 めっき層

Claims (6)

  1. 非還元性セラミックからなる複数の積層された誘電体セラミック層と、前記誘電体セラミック層間の特定の複数の界面に沿いかつ各一方の端縁をいずれか一方の端面上に露出させた状態で形成された卑金属を含む複数の内部電極とを備える、積層体を作製する工程と、
    前記内部電極の特定のものに電気的に接続されるように、前記積層体の各前記端面上に卑金属を含む導電性ペーストを付与しかつ焼き付けることによって、外部電極を形成する工程と
    を備える、積層セラミックコンデンサの製造方法であって、
    前記内部電極に含まれる卑金属および前記外部電極に含まれる卑金属の少なくとも一方はニッケルを含み、
    前記外部電極を形成する工程の後、前記外部電極が形成された前記積層体を、ニッケルの酸化−還元平衡酸素分圧と同等または還元側の酸素分圧の雰囲気下において、前記導電性ペーストを焼き付ける温度の±100℃以内の温度で熱処理する工程をさらに備えることを特徴とする、積層セラミックコンデンサの製造方法。
  2. 前記内部電極に含まれる卑金属は、ニッケルである、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
  3. 前記非還元性セラミックは、CaZrO を主成分とするものである、請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
  4. 前記熱処理する工程において適用される雰囲気は、主成分としてN2 ガスを含み、H2 、H2 O、CO2 およびCOのうちの少なくとも1種のガスによって酸素分圧がコントロールされる、請求項1ないし3のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
  5. 前記熱処理する工程の後、前記外部電極に湿式めっきを施す工程をさらに備える、請求項1ないし4のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
  6. 前記外部電極に含まれる前記卑金属は銅である、請求項1ないし5のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
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