JP4312923B2 - 天井用伸縮継手装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、隣接する2つの建物の各天井固定パネル間の空隙および一方の建物の躯体壁部と他方の建物の天井固定パネルとの間の空隙を塞ぎ、急激な地震などによる各建物の大きな変位を許容することができる天井用伸縮継手装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
典型的な従来の技術は、特公平7−116786号(特開平6−307001号)公報に開示されている。この従来の技術では、間隔をあけて隣接する2つの建物の各天井固定パネル間の空隙を塞ぐ目地板が天井可動パネルとして設けられ、この天井可動パネルの両端部寄りの部位を、天井下地材の目地部寄りの端部に取付けられる支持金具の目地板支持部によって下方から支持し、前記天井下地材の目地部寄りの端部に取付けられる押え板の前記目地板支持部に対向する部分によって上方から押さえて前記目地板を挟持し、各建物が地震などによって相互に近接および離反する方向、この近接および離反する方向に水平面上で直角な前後方向、ならびに上下方向の相対的な変位を許容し、かつ前記空隙を塞いだ状態に維持することができるように構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の技術では、急激な地震などによって各建物が近接および離反する方向に相対的変位を生じると、各天井固定パネルもまた、同一方向に追従して変位し、離反する方向の変位が予め定める許容変位量を超えると、天井可動パネルが前記支持金具の目地板支持部に干渉して損傷する。また、各建物の上下方向の変位が許容変位量を超えると、前記押え板に天井可動パネルから過大な押圧力または引張力が作用して、押え板が破壊してしまうおそれがある。このような近接および離反する方向ならびに上下方向の大きな変位を許容するためには、空隙の幅、したがって各天井固定パネル間の間隔を大きくするとともに、天井可動パネルの幅をも大きくする必要があるが、天井可動パネルの幅が大きくなると、その幅が増加するにつれて天井可動パネルの重量も増加する。そのため前記天井可動パネルを各天井固定パネルに保持するための前記支持金具および押え板などの構成が大形化しかつ複雑化し、さらに天井下地材の強度も高くする必要が生じ、コスト高になってしまうという問題がある。
【0004】
本発明の目的は、簡単な構成で、底コストで各建物の近接および離反する方向ならびに上下方向への大きな相対的変位を許容することができるようにした天井用伸縮継手装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、一方および他方の各建物の躯体天井部に設けられる2つの天井固定パネル間に、各天井固定パネル間の空隙を塞ぐ天井可動パネルが、各天井固定パネルの下方に臨む各天井面と略同一平面を成して設けられ、
前記天井可動パネルの幅方向両端部が、複数のヒンジによって水平軸線まわりに屈曲可能な吊下手段によって、各建物の躯体天井部に吊下されることを特徴とする天井用伸縮継手装置である。
【0006】
本発明に従えば、各建物のこのように設けられる2つの天井固定パネル間に天井可動パネルが設けられ、この天井可動パネルの幅方向両端部が吊下手段によって各建物の躯体天井部に吊下される。吊下手段は複数のヒンジを有し、水平軸線まわりに屈曲可能であるため、各建物が相互に近接する方向に変位すると、各吊下手段は相互に離反する方向に角変位して、この角変位量の鉛直成分に相当する距離だけ、上方へ移動させる。これによって天井可動パネルは、各天井固定パネルとの干渉を回避して各建物の近接する方向への大きな変位を許容することができる。
【0007】
また各建物が離反する方向に変位すると、各吊下手段は相互に近接する方向に角変位して、その角変位量の鉛直成分に相当する距離だけ天井固定パネルを上方へ移動させる。これによって各建物が離反する方向に変位しても、天井可動パネルが各天井固定パネルの一方または双方に干渉することが防がれる。
【0008】
各吊下手段は、複数のヒンジによって水平軸線まわりに屈曲可能な構成であればよいので、前記従来の技術に関連して述べたように、各躯体の近接および離反する方向への変位に対する許容変位量が大きくなっても、構成が大形化および複雑化するという不具合が、本発明では生じず、吊下手段の各ヒンジによって連結される部材の長さを大きくすればよい。したがって、簡単な構成で各建物の近接および離反する方向ならびに上下方向への大きな相対的変位を許容することが可能となる。
【0009】
また前記吊下手段は、複数のヒンジによって水平軸線まわりに屈曲可能に構成されるので、各建物の近接および離反する方向への相対的変位によって、吊下手段が相互に近接および離反する方向へ角変位しても、この吊下手段によって吊下される天井可動パネルは、吊下手段の角変位位置にかかわらず、自重によって各天井固定パネルとほぼ平行に保たれる。
【0010】
これによって、各建物が近接および離反する方向へ相対的変位を生じて、天井可動パネルが各天井固定パネルよりも上方へ移動しても、天井可動パネルがむやみに大きな角度で傾斜することが防がれ、これによって天井可動パネルが大きく傾斜して、周囲に近接して配置される部位に干渉するという不具合が防がれ、円滑に前記各建物間の相対的変位を許容することができる。
【0011】
請求項2記載の本発明は、一方の建物の躯体壁部と、他方の建物の躯体天井部に設けられる天井固定パネルとの間に、前記躯体壁部および天井固定パネル間の空隙を塞ぐ天井可動パネルが設けられ、
前記天井可動パネルの躯体壁部寄りの幅方向一端部は、前記一方の建物の躯体壁部にヒンジによって水平軸線まわりに角変位可能に連結され、前記天井可動パネルの天井固定パネル寄りの幅方向他端部は、複数のヒンジによって水平軸線まわりに屈曲可能な吊下手段によって、前記他方の建物の躯体天井部に吊下されることを特徴とする天井用伸縮継手装置である。
【0012】
本発明に従えば、天井可動パネルは、一方の建物の躯体壁部に幅方向一端部がヒンジによって水平軸線まわりに角変位可能に連結され、幅方向他端部が複数のヒンジによって水平軸線まわりに屈曲可能な吊下手段によって他方の建物の躯体天井部に吊下される。各建物が近接する方向に相対的変位を生じると、前記吊下手段は一方の建物の躯体壁部から離反する方向に角変位し、これによって天井可動パネルの幅方向他端部が天井固定パネルから上方に引上げられ、躯体壁部側の前記ヒンジによって水平軸線まわりに角変位して、前記各建物の近接する方向への変位を許容することができる。
【0013】
また各建物が離反する方向へ相対的変位を生じると、前記吊下手段は、一方の建物の躯体壁部から離反する方向に角変位して、天井可動パネルの幅方向他端部を天井固定パネルよりも上方へ引上げられ、前記近接する方向への相対的変位が生じた場合と同様に、天井可動パネルを躯体壁部側のヒンジによって水平軸線まわりに上方へ角変位させて、天井固定パネルとの干渉を回避することができる。
【0014】
このように吊下手段は、複数のヒンジによって水平軸線まわりに屈曲可能であるので、前記従来の技術に関連して述べたように、各建物が近接および離反する方向への大きな相対的変位を許容するために構成の複雑化および大形化するという不具合が生じるおそれがなく、各躯体間の大きな相対的変位を許容することが可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態の天井用伸縮継手装置1を示す鉛直断面図である。天井用伸縮継手装置1は、一方の建物2aおよび他方の建物2bの各躯体天井部3a,3bに吊下して設けられる2つの天井固定パネル4a,4bと、各天井固定パネル4a,4b間に設けられ、各天井固定パネル4a,4b間の空隙5を塞ぐ天井可動パネル6と、この天井可動パネル6の図1の左右方向である幅方向両端部を各躯体天井部3a,3bに吊下する吊下手段7a,7bとを含む。
【0016】
各天井固定パネル4a,4bは、天井板8a,8bと、天井板8a,8bの上面9a,9bに図示しないビスなどによって固定され、図1の紙面に垂直な延在方向に間隔をあけて設けられる各複数の野縁10a,10bとを有する。また、天井可動パネル6は、天井板11と、天井板11の上面12に前記延在方向に野縁10a,10bと同一の間隔をあけて固定される補強部材13と、天井板11および補強部材13の幅方向両端部に固定され、図1の紙面に垂直な長手方向に延びる一対の案内部材14a,14bと、各案内部材14a,14bを補強部材13にそれぞれ連結する連結片15a,15bとを有する。各天井固定パネル4a,4bの空隙5に臨む各側縁部には、天井可動パネル6の各案内部材14a,14bに対向して縁材16a,16bが設けられる。
【0017】
各躯体天井部3a,3bには、吊りボルト21a,21bの上端部が連結され、各吊りボルト21a,21bは鉛直下方に垂下して延びる。各吊りボルト21a,21bの下端部には、外ねじが刻設され、各下端部に螺着された各一対のナット22a,22bによってハンガー部材23a,23bが高さ方向に位置決めされて固定される。各ハンガー部材23a,23bには、各野縁10a,10bに水平面上で直角に交差する野縁受け24a,24bが挿通され、各野縁受け24a,24bは図示しないビスによって野縁10a,10bに固定され、こうして各天井固定パネル4a,4bが各躯体天井部3a,3bの下方にほぼ水平に吊下される。
【0018】
各躯体天井部3a,3bの下面25a,25bには、空隙5寄りで前記一対の吊下手段7a,7bが連結されるブラケット26a,26bがアンカーボルト27a,27bによって固定される。各ブラケット26a,26bは、図1の紙面に垂直な延在方向に間隔をあけて設けられ、前記アンカーボルト27a,27bによって下面25a,25bに固定される水平部28a,28bと、水平部28a,28bの空隙5寄りの長手方向一端部に下方に向かって直角に屈曲して連なる垂下部29a,29bとを有する。各垂下部29a,29bの下端部に、前記吊下手段7a,7bの上端部が連結される。
【0019】
図2は図1に示される一方の吊下手段7a付近の拡大断面図であり、図3は図2の右側から見た吊下手段7a付近の正面図である。前記一方の吊下手段7aは、第1のヒンジ31、この第1のヒンジ31によって前記ブラケット26aに図2の紙面に垂直な水平軸線まわりに角変位可能に連結される第1吊下部材32、第1吊下部材32の下端部に長手方向の取付位置を調整可能に連結される第2吊下部材33、および第2吊下部材33の下端部に前記案内部材14aを図2の紙面に垂直な水平軸線まわりに角変位可能に連結する第2のヒンジ34を含む。
【0020】
第1のヒンジ31は、ヒンジピン35と、このヒンジピン35に角変位可能に連結される一対のヒンジ片36,37とを有する。一方のヒンジ片36は、ボルト38およびナット39によってブラケット26aの垂下部29aの下端部に連結される。他方のヒンジ片37は、ボルト40およびナット41によって第1吊下部材32の上端部に連結される。
【0021】
第1吊下部材32の下端部には、第2吊下部材33がボルト42およびナット43によって連結される。第2吊下部材33には、前記ボルト42の軸部が挿通し、第2吊下部材33の長手方向に延びる案内長孔44が形成され、第2吊下部材33は第1吊下部材32に対して案内長孔44に沿って移動可能である。天井可動パネル6が各天井固定パネル4a,4b間に略同一平面を成して配置された状態で、図3の紙面に垂直な鉛直仮想平面に沿って第1および第2吊下部材32,33が一直線上に連結して配置され、案内長孔44によって第1および第2吊下部材32,33間の上下方向の高さ位置のばらつきを許容し、取付時の施工誤差を吸収して、上下方向に正確に位置決めすることができる。さらに各天井固定パネル4a,4bが天井面と平行(図1の左右方向)に近接する方向への微少変動による天井可動パネル6の上方への変位をも、前記案内長孔44によって吸収することができる。
【0022】
第2のヒンジ34は、ヒンジピン45と、このヒンジピン45に前記水平軸線まわりに角変位自在に連結される一対のヒンジ片46,47とを有する。一方のヒンジ片46は、第2吊下部材33の下端部にボルト48およびナット49によって固定される。また他方のヒンジ片47は、ボルト50およびナット51によって前記案内部材14aに固定される。
【0023】
案内部材14aは、前記連結片15aによって天井可動パネル6の幅方向(図1および図2の左右方向)一端部に固定され、上部に直円柱状の枢支部52を有する第1案内片53と、枢支部52に水平軸線まわりに角変位可能であり、かつ図2の紙面に垂直な延在方向に摺動可能に嵌まり込む案内溝54を有し、前記ボルト50およびナット51によって第2のヒンジ34の他方のヒンジ片47に連結される第2案内片55とを有する。
【0024】
第1案内片53は、前記枢支部52に一体的に連なる第1部分56aから第4部分56dを有する。第1部分56aは、前記枢支部52に空隙5から離反する方向、すなわち図2の左方に突出して一体的に連なり、下方に屈曲して再び空隙5側、すなわち図2の右方に延び、断面形状が大略的に前記右方に開放した凹状に形成され、この第1部分の前記右方に延びる最も空隙5寄りの部分から屈曲して第2部分56bが連なる。この第2部分56bは、水平面に対して下方になるにつれて天井可動パネル6の幅方向他端部に設けられる他方の案内部材14bに近接する方向に傾斜して設けられる。この第2部材56bは、水平面に対して角度θを成し、この角度θはたとえば65°である。
【0025】
第2部材56bの上端部近傍には、第3部分56cが水平に突出して設けられる。この第3部分56cには、ビス57によって連結片15aに固定される。連結片15aは、もう一方のビス58によって天井可動パネル6の補強部材13に固定される。第2部分56bの下端部には、水平に屈曲して第4部分56dが連なる。この第4部分56dは、天井可動パネル6の天井板11の幅方向一端部を下方から支持するとともに、天井板11および補強部材13の幅方向一端部の端面が、室内空間または通路空間などとして用いられる下部空間から見えないように下方から覆い、意匠上の美観を向上している。
【0026】
第2案内片55は、前記ナット51が図2の紙面に垂直な延在方向に移動可能に嵌まり込む嵌合溝61と、この嵌合溝61に図2の紙面に垂直な延在方向全長にわたって連通し、ボルト50の軸部が挿通する挿通口62とが形成される。前記案内溝54には、第1案内片53の枢支部52が嵌まり込み、第2案内片55が枢支部52の水平軸線まわりに角変位可能に保持される。
【0027】
第2のヒンジ34の他方のヒンジ片47は、上記のような第2案内片55に対して図2の紙面に垂直な延在方向の取付位置を調整可能であり、取付時にボルト50を緩めて前記延在方向に正確に位置決めした後、再びボルト50を固定し、図3の紙面に垂直な鉛直仮想平面上に中心軸線が配置されるように位置決めして取付けることが可能である。
【0028】
案内部材14aは、第1および第2案内片53,55が枢支部52と案内溝54とによって相対的に前記延在方向に変位可能であるので、吊下7aに対して天井可動パネル6の前記延在方向への相対的変位を許容することができ、したがって可動パネルの前記吊下手段7aが固定される一方の建物2aの前記延在方向への相対的変位を許容して、吊下手段7aまたは天井可動パネル6もしくはこれらの双方が損壊することが防がれる。
【0029】
前記縁材16aは、ビス63によって一方の天井固定パネル4aの野縁10aに固定される取付片64と取付片64にビス65によって固定される案内片66とを有する。案内片66は、さらに第1部分67aから第3部分67cを有する。第1部分67aは、前記案内部分14aの第2案内片55の第1部分56aを下方から支持し、上面には帯状のパッキン68が張着される。このパッキン68は可撓性および弾発性を有する合成樹脂またはゴムから成り、案内部材14aの第1部分56aを安定して支持することができる。
【0030】
第1部分67aの空隙5寄りの端部には、第2部分67bが下方に屈曲して連なる。この第2部分67bは、前記案内部材14aの第2部材56bと平行であり、相互に間隔をあけて対向して配置される。第2部分67bの下端部には、外側方、すなわち図2の右方に屈曲して第3部分67cが連なる。この第3部分67cは、一方の天井固定パネル4aの天井板8の空隙5寄りの側縁部を下方から支持するとともに、側縁部の断面を下方から覆い、意匠上の美観を向上している。
【0031】
前記取付片64には、その長手方向、すなわち図2の左右方向に延びる長孔69が形成され、各長孔69には前記ビス63の軸部が挿通して、長手方向へ最適な位置で野縁10aに固定し、天井可動パネル6の案内部材14aに対して縁材16aの近接/離反する方向の出入り量を最適に調整し、案内部材14aと縁材16aとの間の隙間が図2の紙面に垂直な延在方向にほぼ一定となるように位置決めすることができる。
【0032】
このように案内部材14aと縁材16aとの間の隙間をほぼ一定とすることによって、地震などによって天井可動パネル6が一方の天井固定パネル4aに近接する方向に変位したとき、案内部材14aはほぼ同時に縁材16aに当接して上方へ案内し、天井可動パネル6を前記延在方向に高さ位置をほぼ一定に維持した状態で、いわば平行移動するようにして同時に上昇させて、一方の天井固定パネル4aとの干渉を円滑に、しかも確実に回避することができる。
【0033】
上述したような一方の吊下手段7a、案内部材14aおよび縁材16aの構成は、他方の吊下手段7b、案内部材14bおよび縁材16bに関しても同様であり、対応する部分には同一の参照符を付し、重複を避けてその説明は省略する。
【0034】
図4は天井用伸縮継手装置1の動作を説明するための簡略化した鉛直断面図であり、図4(1)は天井可動パネル6が各天井固定パネル4a,4bと略同一平面上に配置されている状態を示し、図4(2)は各建物2a,2bが離反する方向に相対的変位を生じて各天井固定パネル4a,4bが離間した状態を示し、図4(3)は各建物2a,2bが近接する方向に相対的変位を生じて各天井固定パネル4a,4bが近接した状態を示す。
【0035】
地震などが生じることなく、各建物が天井用伸縮継手装置1が設置された当初の位置を維持している状態では、図4(1)に示されるように、天井可動パネル6は、各天井固定パネル4a,4b間で略同一平面を成して配置されている。この状態から図4(2)に示されるように、各建物2a,2bが離反する方向に相対的に変位すると、天井可動パネル6は各吊下手段7a,7bによって各天井固定パネル4a,4bの各縁材16a,16b間の中央部を通る一鉛直平面に関して左右対称に上昇して保持され、各天井固定パネル4a,4bへの干渉が防がれる。
【0036】
また、図4(3)に示されるように、各建物2a,2bが近接する方向に相対的変位を生じると、各吊下手段7a,7bは、前記図4(2)に示される離反する方向への変位時とは逆方向に角変位し、これによって天井可動パネル6は各縁材16a,16b間の中央部で前記鉛直一平面を中心に上昇し、各天井固定パネル4a,4bとの干渉が防がれる。
【0037】
各建物2a,2bが近接する方向および離反する方向に相対的変位を生じても、天井可動パネル6は、各吊下手段7a,7bによって天井固定パネル4a,4bに対して上方へいわば平行移動して退避するので、天井可動パネル6が各天井固定パネル4a,4bのいずれか一方または双方に接触して干渉することが防がれ、各建物2a,2b間の相対的変位を許容することができる。
【0038】
各吊下手段7a,7bの第1および第2のヒンジ31,34間の長さL1は一定であり、図4(2)に示される各建物2a,2bの離反方向への変位時においては、天井可動パネル6の幅方向両端部から各天井固定パネル4a,4bの側縁部までの水平方向の間隔L2a,L2bを許容し、図4(3)に示される各建物2a,2bの近接する方向への変位時における天井可動パネル6の幅方向両端部と各天井固定パネル4a,4bの側縁部との水平方向の間隔L3a,L3bを許容する。
【0039】
すなわち、各吊下手段7a,7bの第1および第2のヒンジ31,34間の長さL1が大きくなるほど離反方向への変位時において許容することができる間隔L2a,L2b、近接方向への変位時において許容することができる間隔L3a,L3bを大きくすることが可能である。離反方向への変位時における各間隔L2a,L2bの和(L2a+L2b)は、離反方向への変位時における水平方向の許容変位量に相当し、また近接方向への変位時における各間隔L3a,L3bの和(L3a+L3b)は、近接方向への変位時における水平方向の許容変位量に相当する。
【0040】
したがって、各吊下手段7a,7bの長さL1を長くすると、近接方向および離反方向への変位に対する許容変位量を大きくすることができ、このようにして簡単な構成で各建物2a,2bの近接する方向および離反する方向への大きな相対的変位を許容することができる。
【0041】
さらに図4(2)に示されるように、各建物2a,2bが離反する方向に相対的変位を生じて天井可動パネル6が上方へ変位して各天井固定パネル4a,4bが相互に離反した状態、および図4(3)に示されるように、各建物2a,2bが近接する方向に相対的変位を生じて天井可動パネル6が上方へ退避して各天井固定パネル4a,4bが近接した状態のいずれか一方の状態から、図4(1)に示されるように、各天井固定パネル4a,4b間に天井可動パネル6が略同一平面上に配置されるように復帰するとき、天井可動パネル6は各吊下手段7a,7bによって各天井固定パネル4a,4bと平行に移動するため、確実に各縁材16a,16b間に復帰させることができる。
【0042】
特に各天井固定パネル4a,4bの側縁部には縁材16a,16bがそれぞれ設けられ、天井可動パネル6の幅方向両端部には案内部材14a,14bが設けられるので、天井可動パネル6が各天井固定パネル4a,4bよりも上方から各縁材16a,16b間に嵌まり込むにあたって、各縁材16a,16bの第2部分67bに各案内部材14a,14bの第2部材56bが案内され、より確実に各天井固定パネル4a,4b間の各縁材16a,16b間に天井可動パネル6を復帰させることができる。
【0043】
さらに各案内部材14a,14bは、各天井固定パネル4a,4bに固定される第1案内片53に対して第2案内片55が図4(1)〜図4(3)の紙面に垂直な延在方向に平行な水平軸線まわりに移動可能であるので、各建物2a,2bの前記延在方向、すなわち水平面上で前記近接/離反する方向に対して垂直な方向への変位をも許容することができ、さらに上下方向の相対的変位をも許容することができる。
【0044】
図5は、本発明の実施の他の形態の天井用伸縮継手装置1aを示す鉛直断面図である。なお、本実施の形態は前述の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。この天井用伸縮継手装置1aは、一方の建物2aの躯体壁部71と、他方の建物2bの躯体天井部3bに吊下して設けられる天井固定パネル4bとの間に、前記躯体壁部71および天井固定パネル4b間の空隙5を塞ぐ天井可動パネル6aが設けられる。
【0045】
天井可動パネル6aの躯体壁部71寄りの方向一端部は、ヒンジ72によって図5の紙面に垂直な水平軸線まわりに角変位可能に連結され、幅方向他端部は前述の第1および第2のヒンジ31,34によって水平軸線まわりに屈曲可能な吊下手段7bによって、前記他方の建物2bの躯体天井部3bに吊下される。前記ヒンジ72は、ヒンジピン73と、このヒンジピン73に前記水平軸線まわりに角変位可能に連結される一対のヒンジ片74,75とを有する。
【0046】
一方のヒンジ片74は連結金具76を介して縁材77に連結される。縁材77は、アンカーボルト78によって躯体壁部71の略鉛直な壁面79に固定される。縁材77には、また下方の空間側から化粧カバー80が壁面79からヒンジ72にわたって下方から覆うように設けられ、この化粧カバー80の壁面79寄りの基端部は、バックアップ材81およびシール材82によって水密に封止される。
【0047】
このような構成によれば、各建物2a,2bが相対的近接する方向に変位すると、吊下手段7bは上方のヒンジ31の水平軸線に関して矢符B方向に角変位し、このような吊下手段7bの角変位によって、天井可動パネル6aはヒンジ72の水平軸線まわりに矢符C方向に角変位し、天井可動パネル6aの幅方向他端部は、天井固定パネル4bの上方に退避して、相互の干渉が防がれる。
【0048】
また各建物2a,2bが相対的に離反する方向の変位を生じると、天井可動パネル6aの幅方向他端部は、前記吊下手段7bによって吊下された状態で水平に維持され、天井可動パネル6aは角変位しない。したがって、天井可動パネル6aの幅方向他端部に設けられる案内部材に対して他方の天井固定パネル4bに設けられる縁材16bは離反するが、再び近接する方向の相対的変位が生じたときには縁材16bの上端部、すなわち第1部分67aと第2部分67bとが交差するコーナー部分が案内部材14bの第1部分56aによって下方へ案内され、図5に示される初期位置に円滑に復帰することができる。
【0049】
このように天井可動パネル6aの幅方向一端部をヒンジ72によって一方の建物2aの躯体壁部71に連結し、幅方向他端部を吊下手段7bによって他方の建物2bの躯体天井部3bに吊下するので、各建物2a,2bが近接する方向および離反する方向への大きな相対的変位を生じても、天井可動パネル6aと天井固定パネル4bとが干渉することが防がれ、簡単な構成によって各建物2a,2b間の大きな変位を許容することができる。
【0050】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明によれば、各天井固定パネル間に設けられる天井可動パネルを吊下手段によって各建物の躯体天井部から吊下して支持するので、各躯体間の近接する方向および離反する方向への大きな相対的変位を許容し、天井可動パネルの天井固定パネルへの干渉を防ぎ、簡単な構成で各躯体間の大きな変位を許容することができる。特に、各吊下手段は複数のヒンジによって水平軸線まわりに屈曲可能であればよいので、構成が簡単であり、取付時の施工性が良好であり、各躯体間の大きな変位を許容することができる天井用伸縮継手装置を安価に実現することができる。
【0051】
請求項2記載の本発明によれば、天井可動パネルの幅方向一端部をヒンジによって一方の建物の躯体壁部に連結し、幅方向他端部を吊下手段によって他方の建物の躯体天井部に吊下して支持するので、各建物が近接する方向および離反する方向に相対的変位を生じても、天井可動パネルと天井固定パネルとの干渉を防止し、各躯体間の大きな相対的変位を円滑に許容することができる。特に、天井可動パネルの幅方向一端部をヒンジによって一方の建物の躯体壁部に連結し、幅方向他端部にのみ吊下手段を用いて他方の建物の躯体天井部に吊下するようにしたので、構成が簡素化され、安価に本発明を実施することが可能であり、施工性も良好であって、簡単な構成で各躯体間の大きな変位を許容することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の天井用伸縮継手装置1を示す鉛直断面図である。
【図2】図1に示される一方の吊下手段7a付近の拡大断面図である。
【図3】図2の右側から見た吊下手段7a付近の正面図である。
【図4】天井用伸縮継手装置1の動作を説明するための簡略化した鉛直断面図であり、図4(1)は天井可動パネル6が各天井固定パネル4a,4bと略同一平面上に配置されている状態を示し、図4(2)は各建物2a,2bが離反する方向に相対的変位を生じて各天井固定パネル4a,4bが離間した状態を示し、図4(3)は各建物2a,2bが近接する方向に相対的変位を生じて各天井固定パネル4a,4bが近接した状態を示す。
【図5】本発明の実施の他の形態の天井用伸縮継手装置1aを示す鉛直断面図である。
【符号の説明】
1,1a 天井用伸縮継手装置
2a,2b 建物
3a,3b 躯体天井部
4a,4b 天井固定パネル
5 空隙
6,6a 天井可動パネル
7a,7b 吊下手段
8a,8b;11 天井板
14a,14b 案内部材
16a,16b 縁材
21a,21b 吊りボルト
26a,26b ブラケット
31,34,72 ヒンジ
44 案内長孔
52 枢支部
53 第1案内片
55 第2案内片
71 躯体壁部

Claims (2)

  1. 一方および他方の各建物の躯体天井部に設けられる2つの天井固定パネル間に、各天井固定パネル間の空隙を塞ぐ天井可動パネルが、各天井固定パネルの下方に臨む各天井面と略同一平面を成して設けられ、
    前記天井可動パネルの幅方向両端部が、複数のヒンジによって水平軸線まわりに屈曲可能な吊下手段によって、各建物の躯体天井部に吊下されることを特徴とする天井用伸縮継手装置。
  2. 一方の建物の躯体壁部と、他方の建物の躯体天井部に設けられる天井固定パネルとの間に、前記躯体壁部および天井固定パネル間の空隙を塞ぐ天井可動パネルが設けられ、
    前記天井可動パネルの躯体壁部寄りの幅方向一端部は、前記一方の建物の躯体壁部にヒンジによって水平軸線まわりに角変位可能に連結され、前記天井可動パネルの天井固定パネル寄りの幅方向他端部は、複数のヒンジによって水平軸線まわりに屈曲可能な吊下手段によって、前記他方の建物の躯体天井部に吊下されることを特徴とする天井用伸縮継手装置。
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