JP4312916B2 - 成膜用の基板支持装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、スパッタリング、真空蒸着、プラズマCVD等の成膜装置において薄膜が形成される基板を支持するための基板支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスや液晶ディスプレイ等の電子デバイスや、ハードディスクや光磁気ディスク等の情報記録ディスクを製造する場合に、スパッタリング、真空蒸着、プラズマCVD等の成膜方法を使った成膜処理が行われている。
【0003】
ハードディスクを製造する工程では、アルミニウム製またはガラス製の円板状の基板の両面に薄膜が形成される。この薄膜は、図2に示すように、基板10の側から順に、Cr等の金属下地膜12、CoCrTa等の磁性記録膜14、カーボン等の保護膜16で構成されている。その上に潤滑剤18が塗布される。膜の厚さの一例を挙げると、金属下地膜12が25nm、磁性記録膜14が20nm、保護膜16が10nm、潤滑剤18が2nmである。保護膜16は、ハードディスク駆動装置(HDD)においてディスクの回転起動・停止時にヘッドとディスク表面が接触したときに磁性記録膜14を保護する役割を果たし、また、磁性記録膜14が大気と接触して腐食するのを保護する役割を果たしている。
【0004】
これまで、磁気記録媒体の薄膜形成にはスパッタリング法が多く採用されてきたが、以下に述べるように、保護膜については、その成膜方法をスパッタリング法からプラズマCVD(PDVD)法に切り換えるようになってきている。
【0005】
近年、磁性媒体の高保持力化、超微粒子化等の要求が高まり、高記録密度化の実現に向けて様々な開発が行われている。高記録密度化のためには、HDDのヘッドと磁気記録膜との距離(ヘッドの浮上量と保護膜の厚さの合計)をできるだけ小さくすることが有効である。図2において、HDDのスライダ20の先端のヘッド22とディスク表面との距離d(ヘッドの浮上量)は25nm程度である。カーボン保護膜16の厚さは10nm程度である。その合計である35nmがHDDのヘッド22と磁気記録膜14との距離になる。この距離を短くするために、保護膜16をさらに薄くすることが求められている。
【0006】
スパッタリング法で成膜したカーボン保護膜は、10nm程度まで薄くなると耐久性・耐食性の低下を起こし、保護膜としての十分な機能を発揮することができなくなる。そこで、スパッタリング法の代わりに、緻密で、高硬度で、薄くしても高耐久性のある膜が得られるPCVD法を用いて、カーボン保護膜を成膜することが開発されてきた(例えば、特開平11−229150号や特開平11−246972号)。
【0007】
カーボン膜は、大きく分けると、アモルファス状のカーボン膜と、結晶化したカーボン膜とに分けることができる。そして、結晶化したカーボン膜は、通常はグラファイト構造であるが、ダイヤモンドに類似した構造のカーボンすなわちダイヤモンドライクカーボン(DLC)と呼ばれるものも存在する。PCVD法で成膜したカーボン膜は、このDLCの割合が高くなり、緻密で高硬度の膜となり、薄くしても耐久性が良好である。
【0008】
次に、基板支持装置の構造について説明する。ハードディスクの両面に影を作らずに成膜するには、基板の最外周の3個所を爪で支持するタイプの基板支持装置が用いられる(例えば、特開平11−193468号や特開平11−229150号)。図3はハードディスクの両面に成膜するのに使われる従来の基板支持装置の概略正面図である。この基板支持装置24の支持板26の中央付近には概略円形の基板装着孔28があいていて、この基板装着孔28の内周から3個の支持爪30が孔の中心に向かって突き出している。中央に孔11のあいたハードディスク基板10は、鉛直姿勢で、その最外周が3個の支持爪30で支持されることになる。この基板10の両面に成膜処理すると、基板10だけではなくて、支持板26の全面(すなわち両面と、外周縁32と、基板装着孔28の内周縁34)にも膜が付着する。以下の説明では、支持板26の基板装着孔28の内周縁34を、単に、支持板26の内周縁34と呼ぶこともある。
【0009】
支持板26の外周縁32と内周縁34には、回り込みによって膜が付着する。その回り込みの状況はスパッタリング法とPCVD法とでは大きく異なる。スパッタリング法では、ターゲットから余弦則に従ってスパッタ粒子が放出されるので、ターゲットから影になる位置には膜が堆積しにくい。一方、PCVD法は、反応性ガスの放電を利用して堆積する成膜方法なので、スパッタリング法に比べて支持板の外周縁や内周縁に回り込んで堆積しやすい。
【0010】
図4(a)は、図3の支持板26を4a−4a線で切断した断面図である。支持板26の厚さは6mmである。外周縁32と内周縁34は、支持板26の主面36、38に対して垂直になっている。ここで、主面とは、基板の成膜面に平行であって成膜面と同じ方向を向いている面をいうものとする。両面成膜用の支持板26では二つの主面36、38がある。
【0011】
図4(b)は主面36と外周縁32との角部の近くに膜が付着する状況を模式的に示したものである。図面の上方からスパッタ粒子が飛来すると、支持板の主面36には柱状で結晶粒界の緻密な膜37が堆積する。一方、外周縁32のうち、主面36の近くには、スパッタ粒子のわずかな回り込みによって、表面の起伏が多くて多孔質の膜33が堆積する。外周縁32のうち、主面36から離れた部分には、もはやスパッタ粒子は届かず、膜が付着しない。支持板が厚くなると、このように外周縁32において膜が付着しない領域が生じる。内周縁34についても同様に膜が付着しない領域が生じる。支持板26の厚さをかなり薄くすれば、外周縁32と内周縁34において膜が付着しない領域は存在しなくなるが、支持板26に支持爪をネジで固定するためにも、そして、支持板26の剛性を保つためにも、6mm程度の厚さが必要となる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
図4(c)は基板の両面に金属膜とカーボン膜を順番に成膜したときの支持板の外周縁32への膜付着状況を示している。金属膜15(金属下地膜と磁性記録膜からなる)はスパッタリング法で成膜しているが、この金属膜15は外周縁32への回り込みが少なく、金属膜15の堆積しない領域が生じている。カーボン膜16はPCVD法で成膜しており、外周縁32にも十分に回り込んで堆積している。その結果、支持板26の外周縁32の中央付近ではカーボン膜16が支持板26上に直接堆積することになる。このようにカーボン膜16が支持板26上に直接堆積すると、以下に述べるような問題が生じる。
【0013】
まず、膜の内部応力について説明する。膜の種類や膜厚によって異なるが、スパッタ膜の内部応力は、1平方センチメートル当たり10の9乗ダインのオーダーの圧縮応力となる。例えば、5mm×50mm×70μmのサイズのコーニング0211ガラス基板上に、スパッタリング法で300nmの厚さのカーボン膜を堆積すると、その膜の内部応力は、1平方センチメートル当たり6×10の9乗ダインの圧縮応力になる。これに対して、同じ基板上にPCVD法で同じ厚さのカーボン膜を堆積すると、その内部応力は、スパッタリング法の場合よりも大きくなって、1平方センチメートル当たり1×10の10乗ダインの圧縮応力となる。さらに、PCVD法では堆積速度を向上させるために基板(及びこれを支持する基板支持装置)に負バイアスを印加するのが不可欠であるが、この負バイアスを印加すると、PCVD法による堆積膜の内部応力(圧縮応力)はもっと増加する。
【0014】
このようにPCVD法によるカーボン膜は内部応力が大きくなるが、金属膜上に堆積すれば、その内部応力が金属膜で緩和される。一方、支持板上に直接堆積したカーボン膜は、その内部応力が緩和されにくく、その厚さが増えるにつれて内部応力が増加していく。そして、カーボン膜と支持板との間の付着力よりも内部応力に起因する剥離力が上回るようになると、支持板に直接堆積したカーボン膜は支持板から剥離することになる。支持板の材質はステンレス鋼またはアルミニウムであるが、このような支持板に対してPCVD法でカーボン膜が堆積すると、その付着力は、金属膜上への付着力よりも弱くなり、カーボン膜の厚さが約50nmになると支持板から剥離する。
【0015】
基板支持装置は、基板と共にハードディスク成膜装置の各成膜室を通過していくので、支持板には金属膜やカーボン膜が堆積していく。そして、ひとつの成膜サイクルが終了すると、基板支持装置は新しい基板を搭載して、また、成膜サイクルを繰り返すことになる。そうすると、基板支持装置の支持板の外周縁や内周縁のうちの金属膜が堆積しない領域では、PCVD法によるカーボン膜だけが支持板上に堆積していくことになり、これが比較的早期に剥離する。カーボン膜が剥離するとこれがパーティクルとなって成膜に悪影響があるので、カーボン膜が剥離する前に基板支持装置をクリーニングする必要がある。したがって、金属膜が堆積しない領域にPCVD法によるカーボン膜だけが堆積するような状況があると、基板支持装置のメンテナンスサイクルが著しく短くなり、生産効率が低下する。
【0016】
なお、支持板の表面を粗面化したり(例えば、アルミナビーズ等によるブラスト処理をする)、支持板上にアルミニウム溶射被膜を形成したりすることで、支持板に対する膜の付着力を高めることができる。この方法は、金属膜を支持板に堆積する場合には大変有効であるが、PCVD法によるカーボン膜を支持板に堆積する場合には、カーボン膜の内部応力が非常に大きいために、上述のような処理をしても、せいぜい基板支持装置のクリーニング寿命を2倍に高める程度の効果しか期待できない。
【0017】
この発明は上述の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、スパッタリング法による金属膜の上にPCVD法でカーボン膜を堆積する場合に、基板を支持する支持板の外周部と内周部の形状を工夫することによって、支持板の外周部と内周部にカーボン膜が直接堆積するのを防いで、カーボン膜が短期間に剥離するのを防ぐことにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
この発明の成膜用の基板支持装置は、基板装着孔を有する平板状の支持板を備えるものに適用される。そして、この発明は、この支持板の外周部と内周部の断面形状に特徴がある。支持板は、基板の成膜面に平行であって成膜面と同じ方向を向いている少なくともひとつの主面を備えている。支持板の外周部と内周部は、この主面に垂直な先端縁と、主面と先端縁とをつなぐ傾斜面とからなっている。前記先端縁の厚さ(支持板の厚さ方向における厚さ)は、両面成膜用の支持板の場合は2mm以下であり、片面成膜用の支持板の場合は1mm以下である。より好ましくは、先端縁の厚さは、両面成膜用の支持板の場合は1mm以下に、片面成膜用の支持板の場合は0.5mm以下にする。
【0019】
基板上にスパッタリング法で金属膜を成膜し、その上にプラズマCVD法でカーボン膜を成膜する場合に、基板を支持する支持板において、その主面に垂直な先端縁の厚さを小さくすることで、この先端縁のすべての領域にスパッタリング法による金属膜が堆積することになる。したがって、プラズマCVD法によるカーボン膜はすべて金属膜の上に堆積することになり、支持板上に直接堆積することがない。ゆえに、PCVD法によるカーボン膜が支持板に直接堆積する場合に比べて、支持板に堆積した膜が剥離するまでの期間が長くなり、基板支持装置のメンテナンス寿命が延びる。
【0020】
上述の傾斜面の傾斜角(主面となす角度)は60°以下にするのが好ましい。そうると、この傾斜面に確実にスパッタリング法で金属膜が堆積する。傾斜角を60°よりも大きくすると、この傾斜面が「主面に垂直な状態」に近づいていき、スパッタリング法で金属膜が傾斜面に堆積しにくくなるし、先端縁へのスパッタ粒子の回り込みも少なくなる。
【0021】
また、支持板の外周部と内周部の断面形状は滑らかな凸状の曲線にすることもできる。このようにすると、外周部と内周部において、主面に垂直な部分がなくなり、外周部と内周部のすべての領域でスパッタリング法で金属膜が堆積することになる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。図5は、この発明の基板支持装置のひとつの実施形態を示す正面図である。この基板支持装置40は、厚さが6mmの支持板42を備えている。支持板42の中央付近には概略円形の基板装着孔44があいていて、この基板装着孔44の内周から、2個の上部支持爪46、47と1個の下部支持爪48が孔の中心に向かって突き出している。中央に孔11のあいたハードディスク基板10は、鉛直姿勢で、その最外周が3個の支持爪46、47、48で支持されることになる。この基板支持装置40を用いてハードディスク基板10に成膜するには、特開平11−229150号公報に記載されているような成膜装置を利用することができる。すなわち、基板10を支持した基板支持装置40を、金属下地膜をスパッタリング法で成膜するチャンバーや、磁性膜をスパッタリング法で成膜するチャンバーや、カーボン保護膜をPCVD法で成膜するチャンバーに次々と通過させていって、所望の成膜作業を実行する。
【0023】
図6は上部支持爪46とその固定構造を示す斜視図である。弾性を有する上部支持爪46の自由端には、基板を支持するための切欠き49が形成されている。上部支持爪46の基端は板ナット50と2本のネジ52によって支持板に固定される。上部支持爪46と板ナット50の幅Fは、支持板の厚さと同程度である。そして、上部支持爪46を支持板にネジ52で固定するためには、これらの幅Fとして6mm程度が必要であり、支持板の厚さも6mm程度が必要になる。
【0024】
図1(a)は図5の支持板42の1a−1a線で切断した断面図である。図1(a)の右端が支持板42の外周部54であり、左端が基板装着孔の内周部56である。この断面形状においては外周部54と内周部56は対称形状であるから、外周部54だけを詳しく説明する。支持板42において、支持する基板10の成膜面に平行であってその成膜面と同じ方向を向いている面が存在するが、これを主面と呼ぶことにする。両面成膜用の支持板42は二つの主面58、59がある。支持板42の厚さtは6mmである。外周部54の先端縁55は主面58、59に垂直であり、この先端縁55の厚さWは2mm以下にするのが好ましい。すなわち、片方の主面側からの回り込み距離は1mm以下にするのが好ましい。この実施形態ではW=1mmである。すなわち、片方の主面側からの回り込み距離は0.5mmである。このように、先端縁55の厚さWは支持板42の厚さよりもかなり薄くなっている。そして、主面58、59と先端縁55は1対の傾斜面60、61でつながっている。この傾斜面60、61は主面58、59に対して角度θだけ傾斜している。傾斜角度θは60°以下にするのが好ましい。この実施形態ではθ=30°である。
【0025】
傾斜角度θは小さくする分にはどこまで小さくしても堆積膜の剥離上の問題は起こらない。しかし、支持板の厚さtと先端縁55の幅Wとを一定の値にして、傾斜角度θを小さくしていくと、傾斜面60、61の主面に平行な方向の距離Lはどんどん大きくなっていく。現実には、支持板の大きさは無限に大きくできないので、傾斜角θはそれほど小さくない適当な角度に設定することになる。この実施形態ではθ=30°に設定している。そして、t=6mm、W=1mm、θ=30°なので、距離Lは4.33mmになる。
【0026】
図1(b)は、支持板42で支持した基板にスパッタリング法で金属膜15を、その上にPCVD法でカーボン膜16を成膜したときの、支持板42の外周部付近の断面図である。金属膜15は、支持板42の主面58、59と傾斜面60、61と先端縁55とをすべて覆っている。先端縁55の幅Wは1mmと小さいので、この先端縁55にも、二つの傾斜面60、61の側からスパッタ粒子が回り込んで金属膜15が付着することになり、支持板42は露出していない。したがって、外周部54のすべての領域で、カーボン膜16は金属膜15の上に堆積することになる。カーボン膜16は支持板42に直接堆積することがない。ゆえに、この支持板42を使ってスパッタリング法で金属膜を、そしてPCVD法でカーボン膜を成膜して、その成膜サイクルを繰り返しても、カーボン膜は常に金属膜の上に堆積することになる。これにより、カーボン膜の内部応力は緩和され、堆積膜が剥離するまでの寿命が従来の支持板よりも格段に延びることになる。したがって、堆積膜が剥離するまでの金属膜とカーボン膜の積層回数を大幅に増加させることができる。発明者の実験によれば、ハードディスク成膜装置のメンテナンス日数である10日間(積層回数にして約5万回)が経過するまで、支持板からカーボン膜が剥離することがなく、基板支持装置のメンテナンス時期をハードディスク成膜装置のメンテナンス時期と同じ程度まで延長することができた。
【0027】
図7は両面成膜用の支持板のいくつかの変更例の断面図である。これらの断面図は図1(a)に示す断面図に相当するものである。図7(a)は図1(a)における角部を曲線で滑らかにつないだものである。すなわち、図1(a)において、主面58と傾斜面60が接する角部と、主面59と傾斜面61が接する角部のそれぞれを滑らかな曲線74、76でつなぎ、さらに二つの傾斜面60、61を円弧78で滑らかにつなぐと、図7(a)のようになる。
【0028】
図7(b)は図1(a)の先端縁55の幅を極限まで小さくしたものすなわちゼロにしたものである。この場合、二つの傾斜面60、61が鋭角状に接することになる。このようにしても、外周部と内周部のすべての領域にスパッタリング法による金属膜が付着するので、支持板に直接カーボン膜が付着することはない。その意味で、本件発明の効果は得られる。ただし、図1(a)と比べると、堆積膜が鋭角の先端部62のところから剥離しやすくなる。
【0029】
図7(c)は外周部と内周部の断面形状を半円64にしたものである。また、図7(d)は外周部と内周部の断面形状を楕円弧66にしたものである。このように、外周部と内周部の断面形状を滑らかな凸状の曲線にしても、外周部と内周部のすべての領域にスパッタリング法による金属膜が付着する。どちらの断面形状でも主面58、59に垂直な領域は存在しない。なお、図7(d)の断面形状の方が図7(c)よりも、「主面に垂直」に近い領域Eが狭くなるので、より好ましい。
【0030】
図8(a)は片面成膜用の支持板80についての図1(a)と同様の断面図である。片面成膜用の支持板80では、基板の成膜面に平行であってこの成膜面と同じ方向を向いている主面68はひとつだけである。主面68に垂直な先端縁70の厚さWは支持板80の厚さよりも小さくなっており、主面68と先端縁70は傾斜面69でつながっている。外周部と内周部において、主面68に垂直な先端縁70の厚さWは1mm以下にするのが好ましい。この実施形態ではW=0.5mmである。片面成膜用の支持板80では、先端縁70に回り込んでくるスパッタ粒子はひとつの主面68の側からだけであるから、先端縁の厚さWの最大許容値は、両面成膜用の支持板の場合の半分になる。
【0031】
図8(b)は片面成膜用の支持板80において、外周部と内周部における主面68側の断面形状を滑らかな凸状の曲線82にした例である。
【0032】
図8(a)のような断面形状にした場合、その外周部と内周部では、傾斜面69と先端縁70において、スパッタリング法による金属膜が堆積し、その上にPCVD法によるカーボン膜が堆積する。図8(b)でも、曲線82において、スパッタリング法による金属膜が堆積し、その上にPCVD法によるカーボン膜が堆積する。一方、図8(a)(b)において、裏面72、73には、スパッタリング法による金属膜は堆積しないが、PCVD法によるカーボン膜は回り込みによってわずかに堆積することが有り得る。この場合、カーボン膜は支持板80に直接堆積することになるが、その堆積速度は非常に小さいものであるから、成膜装置のメンテナンス時期が到来するまでに剥離することはなく、問題にしなくてもよい。
【0033】
図9(a)は図1(a)の断面形状を有する支持板42について、その内周部56と基板10との位置関係を示す平面図である。支持板42については断面を示している。支持板42の厚さ方向の中央位置に基板10が位置している。これにより、支持板42の内周部56に近い傾斜面60、61と基板10の表面との間では大きな段差ができないようになっている。大きな段差があると、基板10及び支持板42に大きなバイアス電圧を印加して成膜した場合に、基板10の外周部付近において記録出力波形の変調が発生するという問題が発生する。
【0034】
図9(b)は図8(a)の断面形状を有する支持板80について、その内周部56と基板10との位置関係を示す平面図である。支持板80の厚さ方向において、基板10は支持板80の厚さの中央付近に配置されている。
【0035】
【発明の効果】
この発明の基板支持装置は、支持板の外周部と内周部の断面形状を工夫したことにより、基板上にスパッタリング法で金属膜を成膜し、その上にPCVD法でカーボン膜を成膜する場合に、基板を支持する支持板の外周部と内周部のすべての領域にスパッタリング法による金属膜が堆積することになる。これにより、PCVD法によるカーボン膜は、すべて金属膜の上に堆積し、支持板上に直接堆積することがない。したがって、PCVD法によるカーボン膜が支持板に直接堆積する場合に比べて、支持板に堆積した膜が剥離するまでの期間が長くなり、基板支持装置のメンテナンス寿命が延びる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は図5の1a−1a線断面図、(b)は外周部へのスパッタリング膜及びPCVD膜の付着状況を示す断面図である。
【図2】ハードディスク基板の成膜構造を模式的に示す断面図である。
【図3】従来の基板支持装置の概略正面図である。
【図4】(a)は図3の4a−4a線断面図、(b)は主面と外周部の角部近傍へのスパッタリング膜の付着状況を示す断面図、(c)は外周部へのスパッタリング膜及びPCVD膜の付着状況を示す断面図である。
【図5】この発明のひとつの実施形態の正面図である。
【図6】上部支持爪とその固定構造を示す斜視図である。
【図7】両面成膜用の支持板のいくつかの変更例の断面図である。
【図8】両面成膜用の支持板のいくつかの変更例の断面図である。
【図9】支持板の内周部と基板との位置関係のいくつかを示す平面図である。
【符号の説明】
40 基板支持装置
42 支持板
44 基板装着孔
54 外周部
55 先端縁
56 内周部
58、59 主面
60、61 傾斜面

Claims (5)

  1. 次の特徴を備えた成膜用の基板支持装置。
    (a)この基板支持装置は、成膜用の基板を支持できる平板状の支持板を備えている。
    (b)前記支持板は、前記基板の成膜面に平行であって成膜面と同じ方向を向いている少なくともひとつの主面と、外周部とを備えている。
    (c)前記支持板は、この支持板を貫通する少なくとも1個の基板装着孔と、この基板装着孔の内周部から突き出していて前記基板の外縁を支持できる複数個の支持片とを備えている。
    (d)前記外周部と前記内周部は、前記主面に垂直な先端縁と、前記主面と前記先端縁とをつなぐ傾斜面とからなる。
    (e)前記先端縁の、前記支持板の厚さ方向における厚さは、両面成膜用の支持板の場合は2mm以下であり、片面成膜用の支持板の場合は1mm以下である。
  2. 請求項1に記載の基板支持装置において、前記傾斜面は前記主面に対して60°以下の角度をなすことを特徴とする基板支持装置。
  3. 請求項1または2に記載の基板支持装置において、前記先端縁の、前記支持板の厚さ方向における厚さは、両面成膜用の支持板の場合は1mm以下であり、片面成膜用の支持板の場合は0.5mm以下であることを特徴とする基板支持装置。
  4. 次の特徴を備えた成膜用の基板支持装置。
    (a)この基板支持装置は、成膜用の基板を支持できる平板状の支持板を備えている。
    (b)前記支持板は、前記基板の成膜面に平行であって成膜面と同じ方向を向いている少なくともひとつの主面と、外周部とを備えている。
    (c)前記支持板は、この支持板を貫通する少なくとも1個の基板装着孔と、この基板装着孔の内周部から突き出していて前記基板の外縁を支持できる複数個の支持片とを備えている。
    (d)前記外周部と前記内周部の断面形状は、滑らかな凸状の曲線である。
  5. 請求項1から4までのいずれか1項に記載の基板支持装置において、基板の上にスパッタリング法で金属膜を成膜し、その上にプラズマCVD法でカーボン膜を成膜する場合に使用するものであることを特徴とする基板支持装置。
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