JP4312446B2 - 皮膚用あぶらとりシート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は皮膚用あぶらとりシートに関する。より具体的には、化粧前又は化粧後に肌の表面に浮き出した皮脂分を吸い取り、化粧ののりを良くしたり、化粧直し等に使用できる皮膚用あぶらとりシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、化粧前又は化粧後に肌の表面に浮き出した皮脂分を吸い取るためのあぶらとりシートとして、「麻繊維中にポリオレフィン樹脂繊維体を10〜70重量パーセント配合し、12g/cm2〜50g/cm2の紙厚に抄造したことを特徴とする化粧用脂取り紙」(特公昭56−8606号公報)が提案されている。しかしながら、この化粧用脂取り紙は組織が粗いため皮脂の吸い取り性が不十分であり、また柔軟性に劣るため皮膚への触感が良くないものであった。更には、この化粧用脂取り紙を市販する場合、化粧用脂取り紙を何枚も積層した状態で市販することになるが、化粧用脂取り紙同士が密着してしまい、1枚の化粧用脂取り紙を取り出しにくいものであった。
【0003】
また、「平均繊維径0.5〜6μmのポリオレフィン極細繊維が部分的に接合された不織シートであり、該不織シートの目付量が10〜50g/m2である化粧用払拭布」(特開平3−286726号公報)が提案されている。この化粧用払拭布は部分的に接合された柔軟性に優れるものであるため、皮膚への触感は良好であるが、皮脂の吸い取り性が不十分であるばかりでなく、皮脂吸い取り効果を確認することが困難であった。つまり、皮脂を吸い取ることによって、化粧用払拭布の皮脂を吸い取った箇所が透明化して、使用者が皮脂の吸い取りを確認できるのが好ましいが、皮脂を吸い取っても透明化しないため、使用者が皮脂の吸い取り効果を確認することが困難であった。
【0004】
更に、「0.005〜0.3デニールの親油性繊維からなる0.5〜0.95g/cm3の繊維密度と、5〜75g/m2の目付を有する不織布で構成されていることを特徴とする化粧用油取りシート」(特開平11−290127号公報)、「少なくとも親油性の合成繊維を有する不織布であって、実質的に液体を含まない化粧用脂取りシート」(特開2001−286411号公報)が提案され、具体的にはメルトブロー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、フラッシュ紡糸不織布、或いは分割繊維を分割した不織布を加熱加圧プレスして化粧用脂取りシートを形成している。しかしながら、この化粧用脂取りシートを市販する場合、化粧用脂取りシートを何枚も積層した状態で市販することになるが、化粧用脂取りシート同士が密着してしまい、1枚の化粧用脂取りシートを取り出しにくいものであった。また、加熱加圧プレス条件が弱いと繊維間の接着強度が弱く、機械的強度が弱いため取り扱いにくく、また使用時に毛羽立ってしまい、皮膚に繊維が付着してしまう場合があり、逆に、加熱加圧プレス条件が強いとフィルム化してしまい、柔軟性が損なわれて皮膚への触感が良くないものであった。また、皮脂吸い取り効果(特に、皮脂量が少ない場合)を確認することが困難であるという問題もあった。
【0005】
【特許文献1】
特公昭56−8606号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平3−286726号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開平11−290127号公報(特許請求の範囲、段落番号0012〜0014)
【特許文献4】
特開2001−286411号公報(特許請求の範囲、段落番号0020、段落番号0024)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述のような問題点を解決するためになされたもので、皮脂の吸い取り性、及び皮脂量が少なくても皮脂の吸い取り効果の確認性に優れ、使用時の皮膚への触感が良好、かつ積層して市販した場合にも容易に取り出すことができる皮膚用あぶらとりシートを提供することを目的とする。また、前記性能に加えて、使用時に繊維が皮膚に付着することがないなど、取り扱い性に優れる皮膚用あぶらとりシートを提供することも目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1にかかる皮膚用あぶらとりシートは、「繊維径が5μm以下の親油性極細繊維を含む親油性極細繊維層と、前記親油性極細繊維層よりも平均繊維径の大きい太繊維層とで両表面層を構成しており、しかも平均孔径が15μm以下であることを特徴とする皮膚用あぶらとりシート」からなる。このように表面層として親油性極細繊維層を備えており、この親油性極細繊維層は親油性極細繊維を含む柔軟で肌触りに優れる層であるため、この親油性極細繊維層を皮膚に当接させると触感が優れている。また、親油性極細繊維層からなる表面層とは反対側の表面層は太繊維層から構成されているため、親油性極細繊維層と太繊維層とが当接するように積層することにより、親油性極細繊維層と太繊維層との密着性を低下させることができるため、このように皮膚用あぶらとりシートを積層して市販したとしても、1枚の皮膚用あぶらとりシートだけを取り出すことができる。また、平均孔径が15μm以下であることによって、皮脂の吸い取り性に優れており、瞬時に吸い取り面から他方の面まで皮脂を透過させることができるため、皮脂量が少なくても皮脂の吸い取り効果を確認できるものである。
【0008】
請求項2にかかる皮膚用あぶらとりシートは、「親油性繊維を75mass%以上含んでいることを特徴とする、請求項1記載の皮膚用あぶらとりシート」である。このように親油性繊維量が多く、皮脂との親和性に優れているため、皮脂の吸い取り性が優れている。
【0009】
請求項3にかかる皮膚用あぶらとりシートは、「親油性極細繊維層及び/又は太繊維層を構成する繊維として、親油性極細繊維を構成する樹脂よりも融点の低い低融点樹脂を表面に備えた低融点繊維を含み、前記低融点樹脂が融着していることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の皮膚用あぶらとりシート」である。このように皮膚用あぶらとりシートを構成する繊維(例えば、親油性極細繊維)が低融点樹脂の融着により固定されているため、繊維の脱落が生じにくく、機械的強度の優れる、取り扱い性に優れる皮膚用あぶらとりシートである。
【0010】
請求項4にかかる皮膚用あぶらとりシートは、「親油性極細繊維層及び/又は太繊維層を構成する繊維が、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂から構成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート」である。ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂は皮脂との親和性に優れているため、皮脂の吸い取り性に優れている。
【0011】
請求項5にかかる皮膚用あぶらとりシートは、「前記親油性極細繊維は延伸状態にあることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート」である。親油性極細繊維は延伸状態にあるため機械的強度が優れており、使用時に親油性極細繊維の破断や切断が生じて皮膚に付着することのない、取り扱い性の優れるものである。
【0012】
請求項6にかかる皮膚用あぶらとりシートは、「前記親油性極細繊維が親油性極細繊維層の20mass%以上を占めていることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート」である。親油性極細繊維の本数が多いため、よりソフトで肌触りが優れている。また、より微細な空隙を形成でき、しかも皮膚と密着できるため皮脂の吸い取り性に優れている。
【0013】
請求項7にかかる皮膚用あぶらとりシートは、「前記低融点繊維が低融点樹脂よりも融点の高い高融点樹脂も含んでいることを特徴とする、請求項3〜請求項6のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート」である。このように、低融点繊維が融着しても繊維形態を維持できるため、機械的強度の優れる取り扱い性の優れるあぶらとりシートである。
【0014】
請求項8にかかる皮膚用あぶらとりシートは、「前記低融点繊維の引張強さが5g/d以上であることを特徴とする、請求項3〜請求項7のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート」である。このように低融点繊維の引張強さが高いため、あぶらとりシートの機械的強度がより優れている。
【0015】
請求項9にかかる皮膚用あぶらとりシートは、「ポリ乳酸繊維を含んでいることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート」である。ポリ乳酸繊維は汗との親和性が高いばかりでなく、透明度が高いため皮脂の吸い取り効果の確認性が高い。
【0016】
請求項10にかかる皮膚用あぶらとりシートは、「着色した着色繊維を含んでいることを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート」である。着色繊維を含んでいることにより、皮脂を吸い取った際に着色繊維の色が浮き出るため、皮脂の吸い取り効果の確認性が高い。
【0017】
請求項11にかかる皮膚あぶらとりシートは、「太繊維層を構成する繊維として着色した着色繊維を含んでいることを特徴とする、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート」である。このように基本的に皮膚に接触しない表面層である太繊維層が着色繊維を含んでいることによって、あぶらとりシートが皮脂を吸い取り、吸い取った皮脂が太繊維層へ浸透した際に、太繊維層を構成する着色繊維の色が親油性極細繊維層側に浮き出るため、皮脂の吸い取り効果の確認性に優れている。
【0018】
請求項12にかかる皮膚あぶらとりシートは、「親油性繊維のみから構成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項11のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート」である。親油性繊維のみから構成されているため、皮脂の吸い取り性能が特に優れている。
【0019】
請求項13にかかる皮膚あぶらとりシートは、「前記低融点樹脂が熱及び圧力により、前記皮膚用あぶらとりシート全体で融着していることを特徴とする、請求項3〜請求項12のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート」である。低融点樹脂が熱及び圧力により皮膚用あぶらとりシート全体で融着しているため、より小さい平均孔径であることができ、孔径分布も狭い状態にあることができ、しかも機械的強度が優れている。
【0020】
請求項14にかかる皮膚あぶらとりシートは、「前記皮膚用あぶらとりシートが実質的に融着のみによって形態を維持していることを特徴とする、請求項1〜請求項13のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート」である。実質的に融着のみによって形態を維持しており、構成繊維が均一に分散した状態にあることができるため、より小さい平均孔径であることができ、孔径分布も狭い状態にあることができる。
【0021】
請求項15にかかる皮膚あぶらとりシートは、「前記親油性極細繊維層が湿式繊維ウエブに由来することを特徴とする、請求項1〜請求項14のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート」である。湿式繊維ウエブに由来し、親油性極細繊維が均一に分散した状態にあることができるため、より小さい平均孔径であることができ、孔径分布も狭い状態にあることができる。
【0022】
請求項16にかかる皮膚あぶらとりシートは、「前記皮膚用あぶらとりシートの見掛空隙容積が4〜16cm3/m2であることを特徴とする、請求項1〜請求項15のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート」である。見掛空隙容積がこの範囲にあると、皮脂量が少なくても皮脂の吸い取り効果の確認性に優れている。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の皮膚用あぶらとりシート(以下、単に「あぶらとりシート」という)は皮膚と密着して皮脂の吸い取り性に優れ、ソフトで肌触りが優れ、また平均孔径が15μm以下の微細な空隙を形成できるように、繊維径が5μm以下の親油性極細繊維を含む親油性極細繊維層を表面層として備えている。
【0024】
本発明における「親油性繊維」とは、液適法により測定した、水に対する接触角が60°以上、100°以下の樹脂を表面に備えている繊維(両端部を除く)を意味する。具体的には「親油性繊維」を構成する樹脂として、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂は皮脂との親和性に優れており、皮脂の吸い取り性に優れているため好適である。
【0025】
本発明の親油性極細繊維は繊維径が小さければ小さいほど、前記効果に優れているため、親油性極細繊維の繊維径は4μm以下であるのが好ましく、3μm以下であるのがより好ましく、2μm以下であるのが更に好ましい。なお、親油性極細繊維の繊維径の下限は特に限定するものではないが、あぶらとりシートの機械的強度を損なわないように、0.1μm程度が適当である。
【0026】
本発明における「繊維径」は、繊維の横断面形状が円形である場合には、その直径をいい、繊維の横断面形状が非円形である場合には、横断面積と面積の同じ円の直径をいう。なお、「繊維径」は電子顕微鏡写真などの拡大写真をもとに測定して得られる値をいう。
【0027】
本発明の親油性極細繊維層を構成する親油性極細繊維の繊維長は、親油性極細繊維の分散性に優れ、後述のように平均孔径が15μm以下であることが容易であるように、10mm以下であるのが好ましく、5mm以下であるのがより好ましい。なお、親油性極細繊維の繊維長の下限は特に限定するものではないが、0.2mm程度が適当である。また、親油性極細繊維の繊維長が均一であるように、切断された親油性極細繊維であるのが好ましい。
【0028】
本発明における「繊維長」は、JIS L 1015(化学繊維ステープル試験法)B法(補正ステープルダイヤグラム法)により得られる値をいう。
【0029】
このような親油性極細繊維は延伸状態にあるのが好ましい。このように親油性極細繊維が延伸状態にあると、機械的強度が優れているため、使用時に親油性極細繊維の破断や切断が生じて皮膚に付着することがなく、取り扱い性に優れているためである。また、あぶらとりシートの引張り強度の向上、破断伸度の向上に寄与して取り扱い性を向上させることができる。なお、「延伸状態」とは、紡糸工程とは別の延伸工程(例えば、延伸ねん糸機による延伸工程)により延伸されていることをいい、例えば、メルトブロー法のように溶融押し出した樹脂に対して熱風を吹き付けて繊維化した繊維は、紡糸工程と延伸工程とが同じであるため延伸状態にはない。なお、延伸工程は、常温で実施されていても良いし、加熱下で実施されていても良い。また、親油性極細繊維を海島型繊維の海成分を除去することによって製造する場合、海島型繊維が延伸工程を経ている場合には、得られる親油性極細繊維も延伸状態にある。
【0030】
本発明の親油性極細繊維は皮脂の吸い取り性に優れているように、ポリオレフィン系樹脂及び/又はポリエステル系樹脂から構成されているのが好ましい。特にポリオレフィン系樹脂はアレルギー反応が少ないため好適である。
【0031】
なお、本発明の親油性極細繊維は1種類の樹脂から構成されている必要はなく、融点の点で異なる2種類以上の樹脂から構成されていても良い。このような2種類以上の樹脂からなる親油性極細繊維は、融点のより低い樹脂が融着しているとともに融点のより高い樹脂によって繊維形態を維持することができ、微細な空隙を形成できるため皮脂の吸い取り性に優れており、また親油性極細繊維が毛羽立ったり脱落しにくく、しかも十分な機械的強度を有するあぶらとりシートとすることができる。そのため、親油性極細繊維表面の少なくとも一部を融点のより低い樹脂が占めているのが好ましい。なお、皮脂との親和性に優れ、アレルギー反応の少ないポリオレフィン系樹脂が親油性極細繊維表面の少なくとも一部を占めているのが好ましく、特には親油性極細繊維の表面全部をポリオレフィン系樹脂が占めているのが更に好ましい。例えば、親油性極細繊維として、表面の一部又は全部をポリエチレンが占め、更にポリプロピレンを含む親油性極細繊維を好適に使用できる。このような親油性極細繊維の横断面形状としては、例えば、芯鞘型(偏芯型を含む)、海島型、サイドバイサイド型、多重バイメタル型、オレンジ型などを挙げることができる。
【0032】
本発明の親油性極細繊維はあぶらとりシートの地合いが優れ、平均孔径が15μm以下であることが容易であるように、個々の親油性極細繊維の直径は、繊維軸方向において、実質的に同じであるのが好ましい。このような繊維軸方向において直径が実質的に同じである親油性極細繊維は、例えば、紡糸口金部で海成分中に口金規制して島成分を押し出して複合する複合紡糸法で得た海島型繊維の海成分を除去して得ることができる。
【0033】
なお、親油性極細繊維は繊維径、繊維長、及び/又は成分の点で相違する親油性極細繊維を2種類以上含んでいても良い。また、本発明のあぶらとりシートにおいては、平均孔径が小さく、地合いが優れ、しかも風合が柔らかく、均質な触感を有するように、個々の親油性極細繊維が分散した状態にあるのが好ましい。例えば、親油性極細繊維が束状となっていると、太い繊維が分散している状態と大差なく、前記特性が劣るためである。
【0034】
このような親油性極細繊維は皮膚と密着して皮脂の吸い取り性に優れ、ソフトで肌触りが優れ、また平均孔径が15μm以下の微細な空隙を形成できるように、親油性極細繊維は親油性極細繊維層の20mass%以上を占めているのが好ましく、30masss%以上を占めているのがより好ましく、40masss%以上を占めているのが更に好ましく、50masss%以上を占めているのが更に好ましい。
【0035】
本発明の親油性極細繊維層を構成する別の繊維として、前記親油性極細繊維を構成する樹脂よりも融点の低い低融点樹脂を表面に備えた低融点繊維を挙げることができる。このような低融点繊維と親油性極細繊維とを含み、低融点繊維の低融点樹脂が融着していると、親油性極細繊維は確実にその繊維形態を維持できるため、確実に微細な空隙を形成でき、しかも皮膚と密着できるため皮脂の吸い取り性に優れている。また、ソフトで肌触りも優れている。
【0036】
この低融点繊維は低融点樹脂を表面に備えていることによって融着できるように、低融点樹脂は親油性極細繊維を構成する親油性樹脂よりも融点の低いことが必要である。その融点の低い程度は特に限定するものではないが、親油性極細繊維への影響を少なくできるように、親油性極細繊維を構成する親油性樹脂よりも15℃以上低いのが好ましく、20℃以上低いのがより好ましい。なお、親油性極細繊維が融点の異なる2種類以上の樹脂から構成されている場合には、低融点繊維の低融点樹脂は親油性極細繊維の作用を十分に発揮できるように、親油性極細繊維の最も融点の高い樹脂よりも融点が低いのが好ましい。
【0037】
本発明の「融点」はJIS K 7121(熱流束示差走査熱流量測定(DSC))に規定されている方法により、昇温速度10℃/分の条件下で得られる測定値をいう。
【0038】
また、前記低融点樹脂は融着できるように、低融点繊維の繊維表面を占めているが、低融点繊維の一部であっても全部であっても良いが、全部である方が融着性に優れているためより好適な態様である。
【0039】
なお、低融点繊維は低融点樹脂のみから構成されていても良いが、低融点樹脂よりも融点の高い高融点樹脂を含んでいるのが好ましい。高融点樹脂を含んでいると、高融点樹脂によって低融点繊維も繊維形態を維持でき、繊維形態を維持している繊維量が多くなるため、微細な空隙を形成でき、しかもあぶらとりシートの機械的強度がより優れ、取り扱い性に優れている。この低融点樹脂と高融点樹脂との融点差は特に限定するものではないが、低融点樹脂を融着させても低融点繊維の繊維形態を維持することが容易であるように、15℃以上差があるのが好ましく、20℃以上差があるのがより好ましい。なお、低融点樹脂と高融点樹脂の質量比率は、融着性及び繊維形態維持性に優れていれば良く、特に限定するものではないが、低融点樹脂対高融点樹脂が3:7〜7:3であるのが好ましい。このような高融点樹脂を含む低融点繊維の横断面形状として、例えば、芯鞘型(偏芯型を含む)、海島型、サイドバイサイド型、多重バイメタル型、オレンジ型などを挙げることができ、これらの中でも芯鞘型(偏芯型を含む)又は海島型が好ましい。
【0040】
本発明の低融点繊維を構成する低融点樹脂は皮脂の吸い取り性に優れているように、親油性樹脂から構成されているのが好ましく、より具体的にはポリオレフィン系樹脂及び/又はポリエステル系樹脂から構成されているのが好ましい。低融点樹脂は前述のような親油性極細繊維に悪影響を与えないように、親油性極細繊維を構成する樹脂によって変化する。例えば、親油性極細繊維がポリプロピレンからなる場合には、低融点樹脂はポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−アクリル酸共重合体などのエチレンコポリマーなど)からなるのが好ましい。なお、低融点繊維を構成する高融点樹脂は親油性である必要はないが、皮脂の吸い取り性に優れているように、親油性であるのが好ましい。
【0041】
なお、低融点繊維の引張強さはあぶらとりシートの機械的強度が優れているように、5g/d以上であるのが好ましく、5.5g/d以上であるのがより好ましく、6g/d以上であるのが更に好ましく、6.5g/d以上であるのが更に好ましい。なお、引張強さはJIS L 1015に規定されている標準時試験(定速緊張形)を用いて得られる測定値をいう。
【0042】
このような低融点繊維の繊維径及び繊維長は特に限定されるものではないが、繊維径は2.2dtex以下であるのが好ましく、1.5dtex以下であるのがより好ましい。繊維長は15mm以下であるのが好ましく、10mm以下であるのがより好ましい。繊維長の下限は特に限定するものではないが、2mm程度が適当である。
【0043】
本発明の親油性極細繊維層が前述のような親油性極細繊維と低融点繊維とからなる場合、平均孔径が15μm以下の微細な空隙を形成しやすく、柔軟な風合いを損なわず、しかも機械的強度を高めることができる限り、特に限定するものではないが、親油性極細繊維対低融点繊維の質量比率は2:8〜7:3であるのが好ましく、3:7〜7:3であるのがより好ましい。
【0044】
本発明の親油性極細繊維層を構成できる別の繊維として、ポリ乳酸繊維を含んでいることができる。ポリ乳酸繊維は親油性繊維であり、汗との親和性が高いばかりでなく、透明度が高いため皮脂の吸い取り効果の確認性を高めることができる。ポリ乳酸繊維は前記効果に優れるように、親油性極細繊維層中5mass%以上含まれているのが好ましく、10mass%以上含まれているのがより好ましい。一方、親油性極細繊維による触感や皮脂の吸い取り性を損なわないように、親油性極細繊維層中30mass%以下であるのが好ましく、20mass%以下であるのがより好ましい。
【0045】
本発明の親油性極細繊維層は上述のような親油性極細繊維、低融点繊維或いはポリ乳酸繊維以外にも、繊維径が5μmを超え(好ましくは40μm以下)、低融点樹脂よりも融点の高い、ポリ乳酸以外の樹脂からなる繊維(特に親油性繊維)を含んでいることができる。
【0046】
本発明の親油性極細繊維層を構成する繊維として、着色した着色繊維を含んでいるのが好ましい。着色繊維を含んでいると、皮脂を吸い取った際に着色繊維の色が浮き出て、皮脂の吸い取り効果の確認性が高くなるためである。この着色繊維として、例えば、前述のような親油性極細繊維、低融点繊維、或いはポリ乳酸繊維を構成する樹脂中に顔料又は染料を含んでいる親油性繊維や、前述のような親油性極細繊維、低融点繊維、ポリ乳酸のいずれにも該当しない繊維を構成する樹脂中に顔料又は染料を含んでいる繊維などを挙げることができる。なお、親油性極細繊維、低融点繊維、或いはポリ乳酸繊維が2種類以上の樹脂からなる場合には、全ての樹脂中に顔料又は染料が存在していても良いし、一部の樹脂中のみに顔料又は染料が存在していても良い。例えば、親油性極細繊維、融点繊維、或いはポリ乳酸繊維の横断面形状が芯鞘型である場合には、芯部分のみ、鞘部分のみ、或いは芯部分及び鞘部分に顔料又は染料が存在していることができ、親油性極細繊維、低融点繊維、或いはポリ乳酸繊維の横断面形状がサイドバイサイド型である場合には、いずれか一方の樹脂部分のみ、或いは両方の樹脂部分に顔料又は染料が存在していることができる。特に、芯鞘型の親油性極細繊維、低融点繊維、或いはポリ乳酸の芯部分のみ、又はサイドバイサイド型の親油性極細繊維、低融点繊維、或いはポリ乳酸の一方の樹脂部分のみに顔料又は染料が存在していると、皮脂を吸い取った部分の色の浮き出し効果が高く、吸い取り効果の確認性に優れているため好適である。なお、着色繊維が親油性極細繊維、低融点繊維、或いはポリ乳酸を構成する樹脂中に顔料又は染料を含んでいる場合、親油性極細繊維、低融点繊維、或いはポリ乳酸の質量比を考える場合には、親油性極細繊維、低融点繊維、或いはポリ乳酸繊維として数える。また、「着色した」とは、着色繊維の色が白色又は透明ではないことをいう。このような着色繊維は親油性極細繊維層中、20〜80mass%含まれているのが好ましい。
【0047】
本発明の親油性極細繊維層を構成する別の繊維として、カテキン、キチン、或いはキトサンなどの抗菌剤を含む抗菌繊維を含んでいるのが好ましい。このように抗菌繊維を含んでいると、あぶらとりシートが抗菌性に優れている。この抗菌繊維として、例えば、前述のような親油性極細繊維、低融点繊維、或いはポリ乳酸繊維を構成する樹脂中に抗菌剤を含んでいる親油性繊維や、抗菌剤を含む天然繊維(例えば、竹繊維、蓬繊維など)、キチン繊維、キトサン繊維などを挙げることができる。なお、抗菌繊維が2種類以上の樹脂からなる親油性極細繊維、低融点繊維、或いはポリ乳酸繊維の樹脂中に抗菌剤を含んでいる場合、少なくとも表面を構成する樹脂に抗菌剤が存在している必要がある。例えば、親油性極細繊維、低融点繊維、或いはポリ乳酸繊維の横断面形状が芯鞘型である場合には、鞘部分のみ、又は芯部分と鞘部分の両方に抗菌剤が存在している必要があり、親油性極細繊維、低融点繊維、或いはポリ乳酸繊維の横断面形状がサイドバイサイド型である場合には、いずれか一方の樹脂部分のみ、或いは両方の樹脂部分に抗菌剤が存在している必要がある。なお、抗菌繊維が親油性極細繊維、低融点繊維、或いはポリ乳酸繊維を構成する樹脂中に抗菌剤を含んでいる親油性繊維である場合、親油性極細繊維、低融点繊維、或いはポリ乳酸繊維の質量比を考える場合には、親油性極細繊維、低融点繊維、或いはポリ乳酸繊維として数える。このような抗菌繊維は親油性極細繊維層中、10〜80mass%含まれているのが好ましい。
【0048】
このように、親油性極細繊維層を構成する繊維は皮脂との親和性に優れ、皮脂の吸い取り性及び吸い取り効果の確認性に優れているように、ポリオレフィン系樹脂及び/又はポリエステル系樹脂から構成されているのが好ましい。
【0049】
本発明のあぶらとりシートは上述のような親油性極細繊維層に加えて、この親油性極細繊維層よりも平均繊維径の大きい太繊維層からなる表面層を備えているため、親油性極細繊維層と太繊維層とが当接するようにあぶらとりシートを積層して市販したとしても、隣接するあぶらとりシート同士の密着性が低いため、1枚のあぶらとりシートだけを取り出すことができる。また、この太繊維層によって機械的強度を向上させることができ、また張りをもたせることができるため、取り扱い性にも優れている。
【0050】
この太繊維層は親油性極細繊維層よりも平均繊維径が大きければ良く、特に限定するものではないが、太繊維層の平均繊維径は親油性極細繊維層の平均繊維径の1.1倍以上であるのが好ましく、1.2倍以上であるのがより好ましい。なお、太繊維層の平均繊維径と親油性極細繊維層の平均繊維径との差が大きすぎると、吸い取った皮脂の太繊維層への浸透速度が遅くなり、皮脂の吸い取り効果の確認性が低下する傾向があるため、太繊維層の平均繊維径は親油性極細繊維層の平均繊維径の2.5倍以下であるのが好ましく、2倍以下であるのがより好ましい。
【0051】
なお、「平均繊維径」は各層を構成する繊維の繊維径とその繊維の質量比率から算出される質量平均値をいう。例えば、親油性極細繊維層が繊維径Da(μm)の繊維Ma(mass%)と、繊維径Db(μm)の繊維Mb(mass%)とからなる場合の平均繊維径Dav(μm)は次の式から算出できる。
Dav={Da×Ma/(Ma+Mb)}+{Db×Mb/(Ma+Mb)}
【0052】
親油性極細繊維層と太繊維層との目付比は特に限定するものではないが、親油性極細繊維層対太繊維層が1:2〜3:1であるのが好ましい。
【0053】
この太繊維層を構成する繊維は特に限定するものではないが、親油性極細繊維層を構成する繊維と同様の、親油性極細繊維、低融点繊維、ポリ乳酸繊維、繊維径が5μmを超え(好ましくは40μm以下)、低融点樹脂よりも融点の高い、ポリ乳酸以外の樹脂からなる親油性繊維、着色繊維、抗菌繊維などを含むことができる。
【0054】
なお、太繊維層を構成する繊維として着色繊維を含んでいると、あぶらとりシートが皮脂を吸い取り、吸い取った皮脂が太繊維層へ到達した時に、太繊維層を構成する着色繊維の色が親油性極細繊維層側に浮き出て、明瞭に皮脂の吸い取り効果を確認することができる、という利点がある。この太繊維層を構成する着色繊維量は、皮脂を吸い取った際に着色繊維の色が浮き出て、皮脂の吸い取り効果の確認性に優れているように、太繊維層中、30mass%以上含まれているのが好ましく、50mass%以上含まれているのが更に好ましい。
【0055】
また、太繊維層を構成する繊維として親油性極細繊維層と同様の低融点繊維を含み、融着していると、あぶらとりシートの機械的強度を向上させることができ、またあぶらとりシートに張りをもたせることができ、取り扱い性に優れているため好適である。この低融点繊維の太繊維層における存在比率は前記効果に優れているように、30mass%以上であるのが好ましく、40mass%以上であるのがより好ましく、50mass%以上であるのが更に好ましい。なお、親油性極細繊維層に低融点繊維が存在しており、太繊維層にも低融点繊維が存在していると、あぶらとりシートの機械的強度に優れ、張りをもたせることができ、しかも層間剥離が生じにくいため好適である。
【0056】
この太繊維層を構成する繊維も親油性極細繊維層と同様に、皮脂との親和性に優れ、皮脂の吸い取り性及び吸い取り効果の確認性に優れているように、ポリオレフィン系樹脂及び/又はポリエステル系樹脂から構成されているのが好ましい。したがって、親油性極細繊維層及び太繊維層を構成する繊維がポリオレフィン系樹脂及び/又はポリエステル系樹脂から構成されているのが好ましい。
【0057】
以上、親油性極細繊維層からなる表面層と太繊維層からなる表面層について説明したが、本発明のあぶらとりシートはこれら繊維層以外の繊維層を親油性極細繊維層と太繊維層との間に備えていることができる。しかしながら、あぶらとりシートの触感や皮脂の吸い取り効果の確認性の点から、これら2層から構成されているのが好ましい。
【0058】
本発明のあぶらとりシートは皮脂との親和性に優れ、皮脂の吸い取り性及び吸い取り効果の確認性に優れているように、親油性繊維を75mass%以上含んでいるのが好ましく、親油性繊維の量が多ければ多いほど前記効果に優れているため、親油性繊維を80mass%以上含んでいるのが好ましく、90mass%以上含んでいるのがより好ましく、100mass%親油性繊維からなるのが最も好ましい。
【0059】
本発明のあぶらとりシートは前述のような繊維に加えて、粉体を含んでいることによって様々な特性を付与することができる。例えば、粉体を含んでいることによってあぶらとりシートの平均孔径を更に小さくすることができ、また地合いを向上させることができるため、皮脂の吸い取り性を向上させることができる。また、粉体固有の特性を付与することができる。例えば、皮脂や汗の吸着又は吸収性に優れる粉体を含んでいることによって、皮脂や汗の吸着又は吸収特性の向上、カオリン、アロフェン、ベントナイトなどの粉体を含んでいることによる触感向上、タルクや滑石などの粉体を含んでいることによる肌のすべすべ感向上、コラーゲンや絹フィブロインなどの粉体を含んでいることによる美顔や保湿効果の付与、香料含有粉体を含んでいることによる香りの付与、或いは隠蔽性の高い粉体を含んでいることによる皮脂の吸い取り効果の確認性の向上、殺菌性、抗菌性、或いは制菌性を有する粉体を含んでいることによる前記性能の付与、などの特性を付与することができる。また、染料や顔料などにより着色した粉体を使用することによって、意匠性や皮脂の吸い取り効果の確認性を向上させることができる。
【0060】
このような含むことのできる粉体が繊維(特に親油性極細繊維)と比較して大きすぎると、皮膚との密着性が損なわれる場合があるため、粉体の平均粒子径は30μm以下であるのが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であるのが更に好ましい。下限は特に限定されるものではないが、0.1μm程度が適当である。この粉体の「平均粒子径」は、コールターカウンター法により得られる値をいう。
【0061】
この粉体は特に限定されず、有機粉体、無機粉体、或いは金属粉体など、一種類以上の粉体を使用できる。より具体的には、粉体として、カオリン、ハロイサイト、蝋石、タルク、セリサイト、アロフェン、ゼオライト、モンモリナイト、ベントナイト、焼成ケイソウ土、アルミナ、ホワイトカーボン、超微粒子状無水シリカ、酸化チタン、亜鉛華、胡粉、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、トルマリン、などの無機粉体、キチン、キトサン、コラーゲン、絹フィブロイン、デンプン、小麦粉、ビタミン、結晶セルロース、マイクロカプセル、ナイロン粉体、アクリル粉体、エポキシ粉体、ポリエステル粉体、ポリエチレン粉体、メタクリル樹脂粉体、などの有機粉体、金、銀、銅などの金属粉体、あるいは金属微粉体を表面に担持した粉体などを含んでいることができる。これらの中でも、医薬品や化粧品材料として使用されている、無機粉体、有機粉体、或いは銀微粒子を担持させたセラミック粉体や、比較的皮膚に過剰な刺激やアレルギー反応を起こしにくい粉体を使用するのが好ましい。
【0062】
このような粉体は親油性極細繊維層及び/又は太繊維層に含んでいることができる。このような粉体は繊維によって形成された微細な空隙により固定されていたり、低融点樹脂の融着によって固定されている。
【0063】
このような粉体のあぶらとりシート中における含有量は、粉体の種類、あぶらとりシートのグレード、繊維の種類、空隙率等によって異なるため、特に限定するものではないが、5〜30mass%であるのが好ましく、10〜25mass%であるのがより好ましい。
【0064】
本発明のあぶらとりシートは皮脂の吸い取り性に優れ、瞬時に吸い取り面から他方の面まで皮脂を透過させることができ、皮脂量が少なくても皮脂の吸い取り効果の確認性に優れているように、平均孔径が15μm以下である。この平均孔径が小さければ小さい程、前記効果に優れているため、好ましい平均孔径は12μm以下であり、より好ましい平均孔径は10μm以下であり、更に好ましい平均繊維径は8μm以下である。なお、平均孔径の下限は特に限定するものではないが、皮脂の吸い取り量が多いように、0.1μm程度が適当である。このあぶらとりシートの「平均孔径」は、PMI社(Porous Materials Inc.米国)のパームポロメーター(Automated Perm Porometer)を用い、ASTM E−1294−89に基づいて求めた平均流量細孔径をいう。より具体的には、乾いたサンプルと試液で濡らしたサンプルについて、徐々に圧力を上げながら気体の透過流量と圧力の関係曲線を求め、次いで、濡れ流量曲線(wet flow curve)と乾き流量曲線(dry flow curve)の1/2の傾きの曲線(half dry curve)が交わる点の圧力を求め、これを次の方程式に代入して、平均孔径つまり平均流量孔径(μm)を求めることができる。
d=2860γ/P
ここで、d=平均流量細孔径(μm)、γ=試液の表面張力(mN/m)、P=圧力(Pa)をそれぞれ意味する。
【0065】
本発明のあぶらとりシートは上述のような繊維や粉体を含んでいることができるが、前述のような低融点繊維を含み、低融点繊維の低融点樹脂が融着しているのが好ましい。このように低融点樹脂が融着していると、使用時に繊維が脱落して皮膚に付着することがなく、機械的強度の優れる取り扱い性に優れるあぶらとりシートであることができる。特に、低融点繊維が高融点樹脂も含んでいる場合には、親油性極細繊維が繊維形態を維持して微細な空隙を形成できるばかりでなく、低融点繊維も繊維形態を維持し、前記効果に優れているため好適である。
【0066】
なお、本発明のあぶらとりシートにおいては、低融点繊維だけが融着している場合以外に、親油性極細繊維(着色繊維又は抗菌繊維である場合もある)の最も低い融点を有する樹脂も融着していることもできる。このように親油性極細繊維が融着していると、使用時に親油性極細繊維の脱落が生じにくく、皮膚に繊維が付着するなどの問題が生じにくい。
【0067】
本発明のあぶらとりシートが低融点繊維を含み、低融点樹脂が融着している場合、この低融点樹脂は熱及び圧力によりあぶらとりシート全体で融着しているのが好ましい。このように低融点樹脂が熱及び圧力によりあぶらとりシート全体で融着していることによって、より小さい平均孔径であることができ、孔径分布も狭い状態にあることができ、しかも機械的強度に優れているためである。なお、低融点樹脂を融着させるための熱は、低融点樹脂の融点よりも10〜50℃低い温度であるのが好ましく、20〜40℃低い温度であるのがより好ましい。一方、圧力は150〜300kg/cmであるのが好ましく、200〜260kg/cmであるのがより好ましい。
【0068】
本発明のあぶらとりシートは実質的に融着(特に、低融点繊維の低融点樹脂の融着)のみによって形態を維持しているのが好ましい。このように実質的に融着のみによって形態を維持していると、構成繊維(特に親油性極細繊維)が均一に分散した状態にあることができるため、より小さい平均孔径であることができ、孔径分布も狭い状態にあることができるため、皮脂の吸い取り性や皮脂吸い取り効果の確認性に優れている。例えば、融着以外に絡合によっても繊維同士が固定されていると、繊維同士を絡合させるための作用(例えば、水流などの流体流など)によって、繊維の偏在が生じて平均孔径が大きくなり、皮脂の吸い取り性等が悪くなるのに対して、実質的に融着のみによってあぶらとりシートの形態を維持していると、繊維(特に親油性極細繊維)の均一分散性に優れ、平均孔径が小さいため皮脂の吸い取り性等に優れている。なお、あぶらとりシートのもととなる不織布を製造する際に、繊維同士が絡むことがある。例えば、湿式法により繊維ウエブを形成した場合には、多かれ少なかれ繊維同士が絡合した状態にある。しかしながら、この絡合はあぶらとりシートを構成する繊維の均一分散性を阻害し、平均孔径を大きくするものではないため、実質的に絡合していないとみなすことができる。このように、「実質的に融着のみ」とは、繊維ウエブを形成した後における繊維同士の固定が融着のみによってなされていることをいう。
【0069】
本発明のあぶらとりシートの親油性極細繊維層は湿式繊維ウエブに由来しているのが好ましい。基本的に親油性極細繊維層は皮膚と接触して皮脂を吸い取る作用をするが、この親油性極細繊維層が湿式繊維ウエブに由来していると、親油性極細繊維が均一に分散した状態にあることができるため、より小さい平均孔径であることができ、孔径分布も狭い状態にあることができ、結果として皮脂の吸い取り性や皮脂の吸い取り効果の確認性に優れているためである。
【0070】
本発明のあぶらとりシートの目付、厚さ及び見掛密度は特に限定するものではないが、緻密で微細な空隙を有し、皮脂の吸い取り性及び皮脂吸い取り確認性に優れているように、目付は8〜20g/m2(10〜17g/m2であるのがより好ましい)であるのが好ましく、厚さは13〜38μm(18〜35μmであるのがより好ましい)、見掛密度は0.4〜0.75g/cm3(0.45〜0.7g/cm3であるのがより好ましい)であるのが好ましい。なお、「目付」はJIS L 1085:1998の6.2に規定された方法で測定した単位面積当たりの質量をいい、「厚さ」はJIS L1085:1998、6.1(厚さ)に規定されているA法により得られる値をいい、「見掛密度」は目付(g/cm2)を厚さ(cm)で除した値をいう。
【0071】
本発明のあぶらとりシートは見掛空隙容積が4〜16cm3/m2であるのが好ましい。見掛空隙容積がこの範囲にあると、皮脂量が少なくても皮脂の吸い取り効果の確認性に優れているためである。より好ましい見掛空隙容積は7〜14cm3/m2である。なお、この「見掛空隙容積」は次の式から得られる値をいう。
V=100×100×t×(1−d/s)
ここで、Vは見掛空隙容積(cm3/m2)を表し、tはあぶらとりシートの厚さ(cm)を表し、dはあぶらとりシートの見掛密度(g/cm3)を表し、sはあぶらとりシートの平均比重(g/cm3)を表す。なお、「平均比重」はあぶらとりシートを構成する比重の異なる各材料の質量比から算出した質量平均値をいう。例えば、あぶらとりシートが比重Gaの材料Ma(mass%)と、比重Gbの材料Mb(mass%)とからなる場合の平均比重Gav(g/cm3)は次の式から得られる値をいう。
Gav={Ga×Ma/(Ma+Mb)}+{Gb×Mb/(Ma+Mb)}
【0072】
このような本発明のあぶらとりシートは、例えば、次のようにして製造することができる。
【0073】
まず、太繊維層を構成する繊維として、低融点繊維(好ましくは引張強さが5g/d以上)を用意する。この低融点繊維は前述のように、ポリオレフィン系樹脂及び/又はポリエステル系樹脂から構成されているのが好ましい。なお、低融点繊維は高融点樹脂も含んでいるのが好ましい。場合により親油性極細繊維、ポリ乳酸繊維、或いは粉体を用意するのが好ましい。更に、低融点繊維は顔料及び/又は染料を含む着色繊維であっても、抗菌剤を含む抗菌繊維であっても良いし、粉体が顔料及び/又は染料を含む着色粉体であっても良い。
【0074】
次いで、低融点繊維、所望により親油性極細繊維及び/又はポリ乳酸繊維を配合して繊維ウエブを形成する。この繊維ウエブの形成方法は特に限定するものではないが、例えば、乾式法(例えば、カード法、エアレイ法など)や湿式法により形成することができる。これらの中でも繊維の均一分散性の優れる湿式法により形成するのが好ましい。この湿式法としては、例えば、水平長網方式、傾斜ワイヤー型短網方式、円網方式、又は長網・円網コンビネーション方式により形成できる。
【0075】
次いで、この繊維ウエブ(特に湿式繊維ウエブが好ましい)を構成する低融点繊維の低融点樹脂を融着させてあぶらとりシートの太繊維層を構成する太繊維シートを形成できる。なお、地合いが優れ、平均孔径が15μm以下でありやすいように、実質的に低融点繊維を構成する低融点樹脂の融着のみによって太繊維シートの形態を維持しているのが好ましい。この低融点樹脂の融着は、例えば、繊維ウエブを一対のカレンダーロール間を通過させることによって実施することができる。このカレンダーロールの温度は低融点樹脂の融点よりも10〜50℃低い温度に設定し、カレンダーロール間の圧力を150〜300kg/cmとするのが好ましい。このようなカレンダーロールとしていずれのカレンダーロールも表面が平滑なものを使用すると、太繊維シート全体が融着した状態とすることができ、また平均孔径が15μm以下のあぶらとりシートとしやすい。
【0076】
次いで、親油性極細繊維層を構成する繊維として、親油性極細繊維(好ましくは延伸状態にある)及び低融点繊維(好ましくは引張強さが5g/d以上)を用意する。これら繊維は前述のように、ポリオレフィン系樹脂及び/又はポリエステル系樹脂から構成されているのが好ましい。なお、低融点繊維は高融点樹脂も含んでいるのが好ましい。場合によりポリ乳酸繊維や粉体を用意するのが好ましい。更に、これら繊維は顔料及び/又は染料を含む着色繊維であっても、抗菌剤を含む抗菌繊維であっても良いし、粉体が顔料及び/又は染料を含む着色粉体であっても良い。
【0077】
次いで、用意した親油性極細繊維及び低融点繊維を用い、太繊維シートよりも平均繊維径が小さくなるように配合してスラリーを形成する。好ましくは親油性極細繊維量が20mass%以上のスラリーを形成する。次いで、このスラリーを前記太繊維シート上に抄き上げて、太繊維シート−親油性極細繊維ウエブ積層体を形成する。
【0078】
次いで、太繊維シート−親油性極細繊維ウエブ積層体を構成する低融点繊維の低融点樹脂を融着させ、親油性極細繊維層を形成すると同時に太繊維シートと融着して、本発明のあぶらとりシートを製造することができる。この低融点樹脂の融着は、例えば、太繊維シート−親油性極細繊維ウエブ積層体を一対のカレンダーロール間を通過させることによって実施することができる。このカレンダーロールの温度は親油性極細繊維ウエブを構成する低融点繊維の低融点樹脂の融点よりも10〜50℃低い温度に設定し、カレンダーロール間の圧力を150〜300kg/cmとするのが好ましい。このようなカレンダーロールとしていずれのカレンダーロールも表面が平滑なものを使用すると、あぶらとりシート全体が融着した状態とすることができ、また平均孔径が15μm以下のあぶらとりシートとしやすい。本発明のあぶらとりシートは地合いが優れ、平均孔径が15μm以下であるように、実質的に低融点樹脂の融着のみによって形態を維持しているのが好ましい。
【0079】
なお、上記方法は太繊維層となる繊維ウエブを構成する低融点繊維の低融点樹脂を融着させて太繊維シートを形成した後に、親油性極細繊維層となる繊維ウエブを積層する方法であるが、本発明のあぶらとりシートの製造方法はこれに限定されない。例えば、太繊維層となる繊維ウエブ上に親油性極細繊維層となる繊維ウエブを抄き上げて積層した後に、前述と同様の一対のカレンダーロール間を通過させることによって、太繊維層となる繊維ウエブを構成する低融点繊維及び親油性極細繊維層となる繊維ウエブを構成する低融点繊維を融着させて太繊維層及び親油性極細繊維層を形成すると同時に、太繊維層と親油性極細繊維層とを融着一体化して製造することもできる。この方法によれば、太繊維シートを形成する工程を省略できるばかりでなく、繊維ウエブの段階で積層されているため、太繊維層となる繊維ウエブの粗い領域に親油性極細繊維層となる繊維ウエブ構成繊維が進入しやすいため、平均孔径の小さいあぶらとりシートとなりやすく、層間剥離の生じにくいあぶらとりシートを製造しやすい。
【0080】
本発明のあぶらとりシートは皮脂の吸い取り性に優れ、皮脂の吸い取り効果の確認性に優れているように、平均孔径が15μm以下である必要があるが、このようなあぶらとりシートとするためには、例えば、親油性極細繊維層における親油性極細繊維量を多くすること、粉体を含ませること、湿式繊維ウエブから製造すること、熱及び圧力によってあぶらとりシート全体で融着させること、実質的に低融点樹脂の融着処理のみを行うこと、加熱加圧条件を調節して厚さを調整すること、などの諸条件を調整することによって製造することができる。特に、親油性極細繊維層における親油性極細繊維量を多くしたり、加熱加圧条件を強くすることにより、平均孔径のより小さいあぶらとりシートを製造することができる。
【0081】
また、本発明のあぶらとりシートの見掛空隙容積を4〜16cm3/m2とするには、あぶらとりシートの目付や加熱加圧条件を調節して厚さを調整することにより、前記見掛空隙容積を有するあぶらとりシートを製造することができる。
【0082】
本発明のあぶらとりシートは皮脂を払拭するというよりはむしろ、皮膚表面、中でも顔を中心として首周り、腕、掌や指などの微細な凹凸を有する皮膚表面に、あぶらとりシートの親油性極細繊維層を押し当てることにより密着させ、余分な皮脂を吸着吸収して除去できるものである。また、春夏の季節には、余分な皮脂と共に汗成分も吸着吸収して除去することができる。また、粉体を含んでいる場合には、粉体の性質により、美顔、保湿効果、さらさら感、香り成分などによるリラックス感、或いは清涼感を使用者が感じることができる。
【0083】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
【実施例】
(実施例1)
ポリ乳酸からなる海成分中にポリプロピレンからなる島成分が25個存在する、複合紡糸後の延伸工程により延伸して得た海島型繊維(繊度:1.7dtex、切断繊維長:2mm)を用意した。この海島型繊維を10mass%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、海成分であるポリ乳酸を抽出除去した後、風乾して、ポリプロピレン親油性極細繊維(繊維径:2μm、切断繊維長:2mm、フィブリル化していない、延伸状態にある、繊維軸方向において実質的に同じ直径を有する、横断面形状:円形、融点:165℃)を得た。
【0085】
他方、芯部分がポリプロピレン(融点:165℃)からなり、鞘部分が高密度ポリエチレン(融点:135℃)からなる芯鞘型親油性低融点繊維(繊度:0.6dtex、繊維径:9.1μm、繊維長:5mm、繊維表面全体を高密度ポリエチレンが占める、芯部分と鞘部分との体積比が6:4、引張り強さ:6.7g/d)を用意した。
【0086】
次いで、前記ポリプロピレン親油性極細繊維10mass%と前記芯鞘型親油性低融点繊維90mass%とを分散させたスラリーを傾斜ワイヤー(ネット)により抄造して、個々のポリプロピレン親油性極細繊維が分散した太繊維湿式繊維ウエブを形成した。
【0087】
次いで、前記ポリプロピレン親油性極細繊維50mass%と前記芯鞘型親油性低融点繊維50mass%とを分散させたスラリーを、傾斜ワイヤー(ネット)上に抄き上げた前記太繊維湿式繊維ウエブ上に抄き上げて、太繊維湿式繊維ウエブ−親油性極細繊維湿式繊維ウエブ(個々のポリプロピレン親油性極細繊維は分散した状態)積層体を形成した。
【0088】
次いで、この積層体を温度135℃に設定したオーブンで乾燥した後、温度100℃、圧力240kg/cmに設定された一対の表面平滑カレンダー間を通過させ、芯鞘型親油性低融点繊維の高密度ポリエチレンのみを全体的に融着させて、親油性極細繊維層と太繊維層を表面層とするあぶらとりシート(目付:15g/m2、厚さ:30μm、見掛密度:0.5g/cm3、平均孔径:7μm、見掛空隙容積:13.7cm3/m2)を製造した。このあぶらとりシートにおいては、ポリプロピレン親油性極細繊維と芯鞘型親油性低融点繊維のいずれも繊維形態を維持した状態にあった。また、実質的に高密度ポリエチレンの融着のみによってあぶらとりシートの形態を維持していた。親油性極細繊維層の平均繊維径は5.6μmで、太繊維層の平均繊維径は8.4μmであり、太繊維層の平均繊維径は親油性極細繊維層の平均繊維径の1.5倍であった。また、親油性極細繊維層の目付は7g/m2であり、太繊維層の目付は8g/m2であった。
【0089】
(実施例2)
ポリ乳酸からなる海成分中にポリプロピレン(融点:165℃)と高密度ポリエチレン(融点:135℃)とからなる島成分が25個存在する、複合紡糸後の延伸工程により延伸して得た海島型繊維(繊度:1.7dtex、切断繊維長:2mm)を用意した。この海島型繊維を10mass%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、海成分であるポリ乳酸を抽出除去した後、風乾して、ポリプロピレン−高密度ポリエチレン混合親油性極細繊維(繊維径:2μm、切断繊維長:2mm、部分的に高密度ポリエチレンが繊維表面を占める、フィブリル化していない、延伸状態にある、繊維軸方向において実質的に同じ直径を有する、横断面形状:円形)を得た。
【0090】
また、ポリ乳酸繊維(親油性繊維、融点:170℃、繊維径:13μm、繊維長:5mm)、及び実施例1と同じ芯鞘型親油性低融点繊維を用意した。
【0091】
前記ポリプロピレン−高密度ポリエチレン混合親油性極細繊維10mass%と前記芯鞘型親油性低融点繊維90mass%とを分散させたスラリーを傾斜ワイヤー(ネット)により抄造して、個々のポリプロピレン−高密度ポリエチレン混合親油性極細繊維が分散した太繊維湿式繊維ウエブを形成した。
【0092】
次いで、前記ポリプロピレン−高密度ポリエチレン混合親油性極細繊維70mass%と前記ポリ乳酸繊維30mass%とを分散させたスラリーを、傾斜ワイヤー(ネット)上に抄き上げた前記太繊維湿式繊維ウエブ上に抄き上げて、太繊維湿式繊維ウエブ−極細繊維湿式繊維ウエブ(個々のポリプロピレン−高密度ポリエチレン混合親油性極細繊維は分散した状態)積層体を形成した。
【0093】
次いで、この積層体を温度135℃に設定したオーブンで乾燥した後、温度80℃、圧力220kg/cmに設定された一対の表面平滑カレンダー間を通過させ、芯鞘型親油性低融点繊維の高密度ポリエチレン、及びポリプロピレン−高密度ポリエチレン混合親油性極細繊維の高密度ポリエチレンを全体的に融着させて、親油性極細繊維層と太繊維層を表面層とするあぶらとりシート(目付:14g/m2、厚さ:30μm、見掛密度:0.46g/cm3、平均孔径:6.3μm、見掛空隙容積:15.8cm3/m2)を製造した。このあぶらとりシートにおいては、いずれの繊維も繊維形態を維持した状態にあった。また、実質的に融着のみによってあぶらとりシートの形態を維持していた。親油性極細繊維層の平均繊維径は5.3μmで、太繊維層の平均繊維径は8.4μmであり、太繊維層の平均繊維径は親油性極細繊維層の平均繊維径の1.6倍であった。また、親油性極細繊維層の目付は7g/m2であり、太繊維層の目付は7g/m2であった。
【0094】
(実施例3)
芯部分がポリプロピレン(融点:165℃)からなり、鞘部分が高密度ポリエチレン(融点:135℃)からなる芯鞘型親油性低融点繊維(繊度:0.8dtex、繊維径:10.4μm、繊維長:5mm、繊維表面全体を高密度ポリエチレンが占める、芯部分と鞘部分との体積比が6:4、引張り強さ:7.7g/d)を用意した。
【0095】
また、芯部分が顔料(無機系グリーン色)を含有するポリプロピレン(融点:165℃)からなり、鞘部分が高密度ポリエチレン(融点:135℃)からなる芯鞘型親油性低融点着色繊維(繊維径:10.4μm、繊維長:5mm、繊維表面全体を高密度ポリエチレンが占める、芯部分と鞘部分との体積比が6:4、引張り強さ:6.5g/d)を用意した。
【0096】
更に、実施例1と同じポリプロピレン親油性極細繊維を用意した。
【0097】
次いで、前記芯鞘型親油性低融点着色繊維100%を分散させたスラリーを傾斜ワイヤー(ネット)により抄造して、太繊維湿式繊維ウエブを形成した。
【0098】
次いで、前記ポリプロピレン親油性極細繊維50mass%と前記芯鞘型親油性低融点繊維50mass%とを分散させたスラリーを、傾斜ワイヤー(ネット)上に抄き上げた前記太繊維湿式繊維ウエブ上に抄き上げて、太繊維湿式繊維ウエブ−極細繊維湿式繊維ウエブ(個々のポリプロピレン親油性極細繊維は分散した状態)積層体を形成した。
【0099】
次いで、この積層体を温度135℃に設定したオーブンで乾燥した後、温度100℃、圧力240kg/cmに設定された一対の表面平滑カレンダー間を通過させ、芯鞘型親油性低融点繊維の高密度ポリエチレン、及び芯鞘型親油性低融点着色繊維の高密度ポリエチレンを全体的に融着させて、親油性極細繊維層と太繊維層を表面層とするあぶらとりシート(目付:15g/m2、厚さ:30μm、見掛密度:0.5g/cm3、平均孔径:7.7μm、見掛空隙容積:13.7cm3/m2)を製造した。このあぶらとりシートにおいては、いずれの繊維も繊維形態を維持した状態にあった。また、実質的に融着のみによってあぶらとりシートの形態を維持していた。親油性極細繊維層の平均繊維径は6.2μmで、太繊維層の平均繊維径は10.4μmであり、太繊維層の平均繊維径は親油性極細繊維層の平均繊維径の1.7倍であった。また、親油性極細繊維層の目付は7g/m2であり、太繊維層の目付は8g/m2であった。
【0100】
(比較例1)
実施例1と同じポリプロピレン親油性極細繊維と、実施例3と同じ芯鞘型親油性低融点繊維と、実施例2と同じポリ乳酸繊維を用意した。
【0101】
次いで、前記ポリプロピレン親油性極細繊維30mass%、芯鞘型親油性低融点繊維60mass%、及びポリ乳酸繊維10mass%とを分散させたスラリーを傾斜ワイヤー(ネット)により抄造して、個々のポリプロピレン親油性極細繊維が分散した湿式繊維ウエブを形成した。
【0102】
次いで、この湿式繊維ウエブを温度135℃に設定されたオーブンで乾燥した後、温度100℃、圧力240kg/cmに設定された一対の表面平滑カレンダー間を通過させ、芯鞘型親油性低融点繊維の高密度ポリエチレンを全体的に融着させて、一層構造のあぶらとりシート(目付:13g/m2、厚さ:24μm、見掛密度:0.54g/cm3、平均孔径:8.4μm、見掛空隙容積:10.4cm3/m2)を製造した。このあぶらとりシートにおいては、いずれの繊維も繊維形態を維持した状態にあった。また、実質的に高密度ポリエチレンの融着のみによってあぶらとりシートの形態を維持していた。
【0103】
(比較例2)
実施例2と全く同様にして製造した積層体を温度135℃に設定したオーブンで乾燥した後、温度80℃、圧力50kg/cmに設定された、エンボスロール(凸部面積比率:8%、凸部高さ:0.6mm)と表面平滑ロールとの間を通過させ、芯鞘型親油性低融点繊維の高密度ポリエチレン、及びポリプロピレン−高密度ポリエチレン混合親油性極細繊維の高密度ポリエチレンを部分的に融着させて、親油性極細繊維層と太繊維層を表面層とするあぶらとりシート(目付:15g/m2、凸部の厚さ:90μm、見掛密度:0.17g/cm3、平均孔径:19.6μm、見掛空隙容積:74.2cm3/m2)を製造した。このあぶらとりシートにおいては、いずれの繊維も繊維形態を維持した状態にあった。また、実質的に融着のみによってあぶらとりシートの形態を維持していた。親油性極細繊維層の平均繊維径は5.3μmで、太繊維層の平均繊維径は8.4μmであり、太繊維層の平均繊維径は親油性極細繊維層の平均繊維径の1.6倍であった。また、親油性極細繊維層の目付は7g/m2であり、太繊維層の目付は7g/m2であった。
【0104】
(比較例3)
繊維径が5.6μmで、繊維長が3mmのポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)、及び実施例3と同じ芯鞘型親油性低融点繊維を用意した。
【0105】
次いで、前記芯鞘型親油性低融点繊維100%を分散させたスラリーを傾斜ワイヤー(ネット)により抄造して、湿式低融点繊維繊維ウエブを形成した。
【0106】
次いで、前記ポリエチレンテレフタレート繊維50mass%と前記芯鞘型親油性低融点繊維50mass%とを分散させたスラリーを、傾斜ワイヤー(ネット)上に抄き上げた前記湿式低融点繊維繊維ウエブ上に抄き上げて、湿式低融点繊維繊維ウエブ−PET繊維含有湿式繊維ウエブ積層体を形成した。
【0107】
次いで、この積層体を温度135℃に設定したオーブンで乾燥した後、温度100℃、圧力240kg/cmに設定された一対の表面平滑カレンダー間を通過させ、芯鞘型親油性低融点繊維の高密度ポリエチレンを全体的に融着させて、二層構造のあぶらとりシート(目付:15g/m2、厚さ:30μm、見掛密度:0.5g/cm3、平均孔径:24μm、見掛空隙容積:15.4cm3/m2)を製造した。このあぶらとりシートにおいては、いずれの繊維も繊維形態を維持した状態にあった。また、実質的に融着のみによってあぶらとりシートの形態を維持していた。PET繊維含有湿式繊維ウエブに由来する層の平均繊維径は8μmで、湿式低融点繊維繊維ウエブに由来する層の平均繊維径は10.4μmであり、湿式低融点繊維繊維ウエブに由来する層の平均繊維径はPET繊維含有湿式繊維ウエブに由来する層の平均繊維径の1.3倍であった。また、PET繊維含有湿式繊維ウエブに由来する層の目付は7g/m2であり、湿式低融点繊維繊維ウエブに由来する層の目付は8g/m2であった。
【0108】
(皮膚への触感試験)
無作為に選んだ20人のモニターに実際に使用してもらい、モニター評価の結果、80%以上の人が柔軟であると評価したものを○、80%未満の人が柔軟であると評価したものを×とした。この結果は表1に示す通りであった。
【0109】
(皮脂の吸い取り効果確認性試験)
4×4cm角のプラスチックプレート上に、約1mg/cm2量、約0.5mg/cm2量、及び約0.25mg/cm2量の合成皮脂をそれぞれ滴下し、均一に延ばした。
【0110】
その後、前記合成皮脂上に、あぶらとりシートのより平均繊維径の小さい表面層が当接するようにあぶらとりシートを載せ、指で押圧し、プラスチックプレート上の合成皮脂を吸い取った。この結果、あぶらとりシートの合成皮脂を吸い取った箇所が透明となり、合成皮脂を吸い取ったことが一目瞭然である場合の評価を○とし、そうではないものを×と評価した。この結果は表1に示す通りであった。
【0111】
(取り出し性の評価)
6.7cm×9cmの大きさに切断したあぶらとりシートを、平均繊維径のより小さい表面層と平均繊維径のより大きい繊維層とが当接するように積層して約1.5mmの厚さとした後、パッケージ(たて7.2cm、よこ9.5cm、厚さ2mm)に収納した。
【0112】
その後、パッケージから1枚ずつあぶらとりシートを50枚取り出し、その取り出し性を評価した。その結果、確実に1枚ずつ取り出すことができた場合を○、1枚ずつ取り出せないことがあった場合を×として評価した。この結果は表1に示す通りであった。
【0113】
(総合評価)
前記(皮膚への触感試験)、(皮脂の吸い取り効果確認性試験)及び(取り出し性の評価)の結果に加えて、使用時の形態安定性を加味して評価し、あぶらとりシートとして優れているものを○、やや劣るものを△、劣っているものを×と評価した。この結果は表1に示す通りであった。
【0114】
【表1】
【0115】
この表1から明らかなように、本発明のあぶらとりシートは皮脂量が少なくても皮脂の吸い取り効果を確認できる、皮脂の吸い取り性の優れるものであり、しかも触感の優れる、取り出し性の優れるものであった。
【0116】
【発明の効果】
本発明の皮膚用あぶらとりシートは触感、皮脂の吸い取り性、及び皮脂の吸い取り効果の確認性に優れている。また、親油性極細繊維層と太繊維層とが当接するように積層して市販すれば、1枚の皮膚用あぶらとりシートだけを確実に取り出すことができる。
Claims (16)
- 繊維径が5μm以下の親油性極細繊維を含む親油性極細繊維層と、前記親油性極細繊維層よりも平均繊維径の大きい太繊維層とで両表面層を構成しており、しかも平均孔径が15μm以下であることを特徴とする皮膚用あぶらとりシート。
- 親油性繊維を75mass%以上含んでいることを特徴とする、請求項1記載の皮膚用あぶらとりシート。
- 親油性極細繊維層及び/又は太繊維層を構成する繊維として、親油性極細繊維を構成する樹脂よりも融点の低い低融点樹脂を表面に備えた低融点繊維を含み、前記低融点樹脂が融着していることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の皮膚用あぶらとりシート。
- 親油性極細繊維層及び/又は太繊維層を構成する繊維が、ポリオレフィン系樹脂及び/又はポリエステル系樹脂から構成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート。
- 前記親油性極細繊維は延伸状態にあることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート。
- 前記親油性極細繊維が親油性極細繊維層の20mass%以上を占めていることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート。
- 前記低融点繊維が低融点樹脂よりも融点の高い高融点樹脂も含んでいることを特徴とする、請求項3〜請求項6のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート。
- 前記低融点繊維の引張強さが5g/d以上であることを特徴とする、請求項3〜請求項7のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート。
- ポリ乳酸繊維を含んでいることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート。
- 着色した着色繊維を含んでいることを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート。
- 太繊維層を構成する繊維として着色した着色繊維を含んでいることを特徴とする、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート。
- 親油性繊維のみから構成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項11のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート。
- 前記低融点樹脂が熱及び圧力により、前記皮膚用あぶらとりシート全体で融着していることを特徴とする、請求項3〜請求項12のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート。
- 前記皮膚用あぶらとりシートが実質的に融着のみによって形態を維持していることを特徴とする、請求項1〜請求項13のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート。
- 前記親油性極細繊維層が湿式繊維ウエブに由来することを特徴とする、請求項1〜請求項14のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート。
- 前記皮膚用あぶらとりシートの見掛空隙容積が4〜16cm3/m2であることを特徴とする、請求項1〜請求項15のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート。
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