JP4311693B2 - 光電変換装置及びそのリペア方法、それを用いたx線撮像システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光電変換装置及びそのリペア方法に関し、特に、光電変換素子とスイッチ素子が接続されたセンサセルを基板上に2次元的に複数個備えて構成される光電変換装置及びそのリペア方法に関する。
【0002】
また本発明は、たとえば、ファクシミリ、デジタル複写機あるいはX線撮像装置等の等倍読み取りを行う2次元の光電変換素子を備えた光電変換装置及びそのリペア方法に好適に用いられるものである。
【0003】
さらに、上記光電変換装置を組み込んだX線撮像システムに関する。
【0004】
【従来の技術】
従来、ファクシミリ、デジタル複写機あるいはX線撮像装置等の読み取り系としては縮小光学系とCCD型センサを用いた読み取り系が用いられていた。しかし、近年、水素化アモルファスシリコン(以下、a−Siと記す)に代表される光電変換半導体材料の開発がなされている。このことにより、光電変換素子及び信号処理部を大面積の基板に形成し、情報源と等倍の光学系で読み取りを行う、いわゆる密着型センサの開発がめざましい。
【0005】
特に、a−Siは光電変換材料としてだけでなく、薄膜電界効果型トランジスタ(以下、単に「トランジスタ」と記す)としても用いられることができる。したがって、光電変換半導体層とトランジスタの半導体層とを同時に形成することができる利点を有している。
【0006】
ここで、本出願人が提案した特開平8−116044号公報に記載の光電変換装置について、図7、図8を用いて説明する。図7は、光電変換装置を示す全体回路図である。また、図8(a)は、光電変換装置の1センサセルに相当する各構成素子の平面図である。さらに、図8(b)は、図8(a)のA−B線断面図である。
【0007】
まず、上記の光電変換装置の構成について説明する。図7において、1センサセルは、1個の光電変換素子S、コンデンサCおよびトランジスタTで構成されている。光電変換装置は、3×3の計9個のセンサセルを列ごとに3つのブロックに分けられている。すなわち、1ブロックは、3センサセルから構成されている。
【0008】
図中、S11〜S33は光電変換素子Sを示している。各々の光電変換素子Sの下部電極側をG、上部電極側をDとしている。また、C11〜C33は蓄積用のコンデンサを示しており、T11〜T33は転送用のトランジスタを示している。
【0009】
また、Vsは変換した電荷信号の読み出し用の電源、Vgはリフレッシュ用電源である。これらは、それぞれスイッチSWs、スイッチSWgを介して全光電変換素子S11〜S33のG電極に接続されている。スイッチSWsはインバータを介して、スイッチSWgは直接にリフレッシュ制御回路RFに接続されている。スイッチSWgは、リフレッシュ期間中にONするよう制御されている。
【0010】
さらに、図中の破線で囲んだ部分は、大面積である絶縁された同一基板上に形成されている。このうち、光電変換素子S11を備えるセンサセルの平面図を図8(a)に示す。また、図8(a)の破線A−B間の断面図を図8(b)に示す。
【0011】
図8(b)において、1は、絶縁基板上にゲート電極を形成する下部電極、2はゲート絶縁膜、3は光電変換を行う半導体層であるi層、4は正孔の注入を阻止するn層、5はソース、ドレイン電極を形成する上部電極である。ここで、センサセルの形成法としては、まず、下部電極層1、ゲート絶縁膜2、i層3、n層4、ソース、ドレイン電極として働く上部電極層5を順次成膜する。そして、上部電極5をエッチングして、ソース、ドレイン電極を形成する。その後、n層4をエッチングしてチャネル部を構成する。
【0012】
上記の光電変換装置においては、コンデンサC11と光電変換素子S11とを、特別に分離して設けていない。光電変換素子S11とコンデンサC11とを、同じ層構成としているためである。これは、この光電変換装置の特徴でもある。また、コンデンサC11は、光電変換素子S11の電極の面積を大きく確保しつつ形成されている。光電変換素子S11の電極の面積を大きくすると、たとえば、X線撮像装置の光電変換装置において要求されている、X線を減少させることに繋がるからである。
【0013】
また、センサセルの上部には、パッシベーション用窒化シリコン膜SiNとヨウ化セシウム等の蛍光体CsIが形成されている。センサセルの上方から、これらにX線(X−ray)を入射させると、蛍光体CsIにより光(破線矢印)に変換され、この光が光電変換素子S11に入射される。
【0014】
つぎに、光電変換装置の動作について説明する。各々の光電変換素子Sにおいて変換された電荷信号の出力は、蓄積用コンデンサCに蓄積される。そして、シフトレジスタ(SR1)からの出力信号によって、トランジスタTがONされ、信号配線SIGに蓄積信号が読み出される。読み出された電荷は、シフトレジスタ(SR2)から出力される制御信号によりスイッチSがONされ、検出用集積回路ICに入力される。
【0015】
具体的には、1ブロックのセンサセルから出力される電気信号は、同時に信号配線SIGに読み出され、シフトレジスタ(SR2)により、一括して検出用集積回路ICに転送される。そして、検出用集積回路ICに転送された電気信号は、Ampによって出力される(Vout)。
【0016】
つづいて、図9に示すタイミングチャートを用いて、この光電変換装置の動作について説明する。はじめに、シフトレジスタ(SR1)および(SR2)により制御配線g1〜g3、s1〜s3にHiが印加される。すると、シフトレジスタ(SR2)のHiに伴って、トランジスタT11〜T33とスイッチM1〜M3がONする。これにより、全光電変換素子S11〜S33のD電極はGND電位になる。積分検出器Amp15の入力端子は、GND電位に設計されているためである。
【0017】
リフレッシュ制御回路RFからHiを出力し、スイッチSWgをONさせる。全ての光電変換素子S11〜S33のG電極は、リフレッシュ用電源Vgにより正電位になる。すると、全ての光電変換素子S11〜S33は、リフレッシュモードになりリフレッシュされる。
【0018】
つぎに、リフレッシュ制御回路RFからLoを出力し、スイッチSWsONさせる。全ての光電変換素子S11〜S33のG電極は、読み取り用電源Vsにより負電位になる。すると、全ての光電変換素子S11〜S33は、光電変換モードになり、同時にコンデンサC11〜C33は初期化される。
【0019】
この状態でシフトレジスタ(SR1)および(SR2)により、制御配線g1〜g3、s1〜s2にLoが印加される。すると、トランジスタT11〜T33のスイッチM1〜M3がOFFされる。そして、全光電変換素子S11〜S33のD電極は、DC的にはオープンになるが、コンデンサC11〜C33によって電位は保持される。
【0020】
しかし、この時点ではX線は入射されていないため、光は全ての光電変換素子S11〜S33に入射されない。そのため、光電変換素子S11〜S33には、光電流は流れない。その後、X線がパルス的に出射され、人体等を通過して蛍光体CsIに入射されると、光に変換される。その光が、各々の光電変換素子S11〜S33に入射される。この光は、人体等の内部構造の情報が含まれている。この光により流れた光電流は、電荷としてそれぞれのコンデンサC11〜C33に蓄積され、X線の入射終了後も保持される。
【0021】
つぎに、シフトレジスタ(SR1)により、制御配線g1にHiの制御パルスが印加される。そして、シフトレジスタ(SR2)の制御配線s1〜s3への制御パルスを印加する。これによって、スイッチM1〜M3を通してVoutであるv1〜v3が、順次出力される。同様に、シフトレジスタ(SR1),(SR2)のHiまたはLoの制御信号により、他の光信号も順次出力される。これにより人体等の内部構造の二次元情報も、v1〜v9として得られる。
【0022】
なお、静止画像は、上記の動作によって得ることができる。一方、動画像は、上記の動作を繰り返すことによって得ることができる。
【0023】
上記の光電変換装置においては、光電変換素子SのG電極が、水平出力線に共通に接続されている。また、水平出力線をスイッチSWgとスイッチSWsとを介して、リフレッシュ用電源Vgと読み取り用電源Vsとの電位に制御している。そのため、全ての光電変換素子S11〜S33を同時にリフレッシュモードと光電変換モードとに切り換えることができる。このため複雑な制御を行うことなく、1センサセルあたり1個のトランジスタTによって、光出力を得ることができる。
【0024】
上記の光電変換装置においては、9個のセンサセルを3×3に二次元配置して、3センサセルを1ブロックとして、転送・出力した場合について説明した。しかし、光電変換装置の実施の態様は、これに限らず、たとえば、縦横1mmあたり5×5個のセンサセルを2000×2000個のセンサセルとして二次元的に配置してもよい。これにより、40cm×40cmのX線検出器を得ることができる。これをX線フィルムの代わりにX線発生器と組み合わせX線撮像装置等を構成すれば、胸部レントゲン検診等に使用できる。
【0025】
したがって、フィルムを使用した上記検診の場合と異なり、瞬時にその出力をCRTで検診結果を映し出すことが可能である。さらに、その検出結果をディジタルに変換して、コンピュータを用いて画像処理を行う等により、目的に合わせた出力に変換することも可能である。
【0026】
また、光磁気ディスクに保管をすることもできる。したがって、過去の画像を瞬時に検索・出力することもできる。さらに、感度もフィルムより良く、人体に影響の少ない微弱なX線で鮮明な画像を得ることもできる。
【0027】
ところで、上記のような光電変換装置を製造する場合には、少なからず一部のセンサセルが正常に機能しない場合がある。たとえば、アモルファスシリコン層を基板に堆積する時に、基板上からほこり等を完全に除去することは困難である。具体的には、製造時に生ずる微小なちり、薄膜堆積装置の壁からはがれるゴミ等の除去が困難である。したがって、同一平面上の配線のショート及び上下間の配線のショートをゼロにし難い。
【0028】
つぎに、図10及び図11を用いて、具体的な各素子の配線ショートによる異常なセンサセルの出力について説明する。まず、図10において、トランジスタT11では、ソース電極とドレイン電極がショートしている状態を表している。ソース電極及びドレイン電極をパターニングするレジストパターンが、微小なゴミ等により接続されてしまい、結果的にソース電極とドレイン電極がショートするためである。また、図11は、かかる動作のタイミングチャートである。
【0029】
通常、光電変換素子S11の出力電荷は、光が照射されている間に連続的に発生する。そして、電荷は蓄積用コンデンサC11に蓄積される。しかし、上記のように、ソース電極とドレイン電極がショートしている場合には、光電変換素子S11は、あたかも、トランジスタT11をONしてSIG線と接続されているかのような状態になる。そのため、蓄積用コンデンサC11に蓄積される電荷量が、通常の3分の1ほどになってしまう。したがって、光電変換素子S11の出力(図11に示すV1)を読み出すと、図11に示すように、通常の動作の出力に比較して3分の1ほどの出力に減少する。
【0030】
逆に、光電変換素子S21及びS31の出力(図11に示すV4、V7)を読み出すと、通常の動作の出力に比較して3分の1ほどの出力が加えられる。したがって、結果的に、図11に示すように通常の3分の4ほどの出力となる。
【0031】
つづいて、図10において、トランジスタT22のソース電極とゲート電極がショートしている場合の動作について説明する。上記トランジスタT11の場合と同様に、結果的にソース電極とゲート電極がショートする場合がある。
【0032】
このような場合、あたかも、トランジスタT22を介して信号配線SIGと制御配線g2が、接続されているかのような状態になる。したがって、光電変換素子S12およびS22,S32の出力(図11に示すV2およびV5、V8)を読み出す瞬間の制御配線g2は、トランジスタTをOFFする場合の電位に保たれている(一般に0V〜−5V)。そのため、光電変換素子S12およびS22,S32の出力(各々V2、V5、V8)は、図11に示すように、正常な場合の出力に比較して圧倒的に小さい出力に減少する。
【0033】
上記のように、センサセルに不具合が存在する場合には、不具合の出力の数をできる限り少なくする必要がある。そのため、不具合のあるセンサセルと接続されている信号配線をレーザー照射により蒸散させ断線することを行ってきた。
【0034】
このことについて、図12を用いて説明する。まず、図12は、図10において不具合のあったセンサセル11(ここでセンサセル11とはS11,C11,T11を含み、以降の説明においても同様である。)及びセンサセル22と接続されている信号配線をレーザー照射により蒸散させ断線していることを示している。
【0035】
センサセル11及びセンサセル22の各々のトランジスタT11及びT22と信号線の間にある破線の四角の部分が、不具合のあるセンサセルと接続されている信号配線をレーザー照射により蒸散させ、断線された部分を表している。なお、センサセルのその他の部分については、図10に示したものと同様であるので説明は省略する。
【0036】
ここで、センサセル11及び各配線の平面図を図13(a)に示す。また、不具合のあったセンサセルを図13に示す処理をした場合の光電変換装置の動作は、図14に示すタイミングチャートを用いて説明する。さらに、図13(a)の破線A−B間の断面図を図13(b)に示す。なお、トランジスタTは、ソース電極とドレイン電極がショートしている状態を表している。また、破線の四角の部分は、上記と同様に、信号配線をレーザー照射により蒸散させ、断線された部分を表している。
【0037】
図13(b)は、信号配線を断線された部分の断面構造を示している。信号配線のみでなく信号配線上部のパッシベーション用窒化シリコン膜SiN層及び信号配線下部のゲート絶縁膜2、i層3、n層4もレーザー照射により蒸散されてなくなっている。
【0038】
不具合のあったセンサセル11と接続されている信号配線をレーザー照射により蒸散させ断線すると、光電変換素子S11の出力であるV1は、通常の動作における出力を示さない。しかし、光電変換素子S11の出力が、漏れによって重畳されることは無くなる。したがって、光電変換素子S21及びS31の出力であるV4及びV7は、図14に示すような出力になる。
【0039】
また、センサセル22についても同様に、不具合のあるセンサセルと接続されている信号配線をレーザー照射により蒸散させ断線している。不具合のあったセンサセル22と接続されている信号配線をレーザー照射により蒸散させ断線すると、光電変換素子S22の出力であるV5は、通常の動作における出力を示さない。
【0040】
しかし、上記のセンサセル11を処理した場合と同様に、センサセル22のトランジスタT22のゲート線信号が、漏れによって重畳されることが無くなる。したがって、光電変換素子S12及びS32の出力であるV2及びV8は、図14に示すような出力になる。
【0041】
よって、上記のように、不具合のあるセンサセルと接続されている信号配線SIGをレーザー照射により蒸散させ断線することにより、図11に示すVoutから図14に示すVoutのように変化する。すなわち、図14のVoutは不具合のあるセンサセル11及びセンサセル22の出力V1及びV5以外は、正常な出力を示すように改善された。
【0042】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、X線撮像装置等の等倍読み取りを行う2次元の光電変換装置においては、人体に影響のあるX線を少しでも減らすことが要求されている。また、より精度の高いデータを得ることも要求されている。
【0043】
そのため、光電変換素子の面積を広げる方法が、一般に採られている。しかし、半導体のパターンが高密度化していることにより、センサセルと接続されている信号配線が縮小されている。したがって、上記のように、不具合のあるセンサセルと接続されている信号配線をレーザー照射により蒸散させ断線させることができなくなった。
【0044】
つまり、高S/N比又は高解像度の光電変換装置を製造する場合、センサセルと接続されている信号配線が、光電変換素子に使われ、信号配線が縮小又は削除される。そのため、不具合の生じているセンサセルと接続されている信号配線をレーザー照射により蒸散させ断線させることができなくなった。したがって、不具合のあるセンサセル以外の出力を、通常の出力にすることができなくなる。
【0045】
(発明の目的)
上記の課題を解決すべく本発明は、不具合のあるセンサセル以外の出力を正常な出力にし、より精度の高いデータを得ることができ、高S/N比又は高解像度の光電変換装置を提供することを目的とする。
【0046】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく、本発明にかかる光電変換装置は、光電変換素子と該光電変換素子に接続されたスイッチ素子とを有するセンサセルを基板上に2次元に複数個備えて構成される光電変換装置において、複数の前記センサセルは、前記スイッチ素子が除去されたセンサセルを含んでいることを特徴とする。
【0047】
また、本発明にかかる光電変換装置のリペア方法は、光電変換素子と該光電変換素子に接続されたスイッチ素子とを有するセンサセルを基板上に2次元に複数個備えて構成される光電変換装置のリペア方法において、正常に動作しない前記スイッチ素子をレーザー照射により蒸散することを特徴とする。
【0048】
さらに、本発明にかかるX線撮像システムは、入力されたX線を光に変換する蛍光体を備える前記光電変換装置と、前記光電変換装置からの信号を処理する信号処理手段と、前記信号処理手段からの信号を記録するための記録手段と、前記信号処理手段からの信号を表示するための表示手段と、前記信号処理手段からの信号を伝送するための伝送処理手段と、前記X線を発生させるためのX線源とを具備することを特徴とする。
【0049】
(作用)
上記構成における光電変換装置は、不具合の生じているトランジスタごとレーザー照射により蒸散させ、不具合のあるセンサセル以外の出力を正常な出力に戻す。
【0050】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる光電変換装置の全体回路図である。図1において、1センサセルは、1個の光電変換素子、コンデンサおよびトランジスタで構成されている。光電変換装置は、3×3の計9個のセンサセルを列ごとに3つのブロックに分けられている。すなわち、1ブロックは、3つのセンサセルから構成されている。図中、S11〜S33は光電変換素子Sを示している。各々の光電変換素子Sの下部電極側をG、上部電極側をDとしている。また、C11〜C33は蓄積用のコンデンサを示しており、T11〜T33は転送用のトランジスタを示している。
【0051】
さらに、10はトランジスタTのON/OFFするシフトレジスタ(SR1)、11はシフトレジスタ(SR1)10から出力される制御信号をトランジスタTに出力するための制御配線、12はコンデンサCに蓄積された電気信号を読み出す信号配線SIG、13は検出用集積回路ICであり、電気信号を取り込むためのシフトレジスタ(SR2)14及びVout用のAmp15を備えている。
【0052】
また、Vsは変換した電荷信号の読み出し用の電源16、Vgはリフレッシュ用電源17である。これらは、それぞれスイッチSWs19、スイッチSWg20を介して全光電変換素子S11〜S33のG電極に接続されている。スイッチSWs19はインバータを介してリフレッシュ制御回路RF21に接続されている。スイッチSWg20は直接にリフレッシュ制御回路RF21に接続されている。
【0053】
なお、従来技術において説明した図7、図10及び図12と同一機能の部分には、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0054】
つぎに、本実施形態の光電変換装置の動作について説明する。正常に動作するセンサセルの中の光電変換素子Sにおいて変換された電気信号の出力は、コンデンサCに蓄積される。そして、シフトレジスタ(SR1)11からの出力信号によって、トランジスタTがONされ、信号配線SIG12に蓄積信号が読み出される。読み出された電荷は、シフトレジスタ(SR2)14から出力される制御信号により、スイッチMがONされ、検出用集積回路IC13に入力される。
【0055】
具体的には、1ブロックのセンサセルから出力される電気信号は、同時に信号配線SIG12に読み出され、シフトレジスタ(SR2)14により、一括して検出用集積回路IC13に転送される。そして、検出用集積回路IC13に転送された電気信号は、Amp15によって出力される(Vout)。
【0056】
一方、正常に動作しないセンサセルの動作については、以下の処置が施される。ここで、正常に動作しないセンサセル11の中のトランジスタT11は、従来技術の図10に示したように、ソース電極とドレイン電極がショートしているとする。また、センサセル22のトランジスタT22は、ソース電極とゲート電極がショートしているとする。なお、図1に示す光電変換装置において、トランジスタT11及びトランジスタT22の位置に存在する四角の破線部は、図12で示したように、レーザー照射により蒸散させ削除したパターン回路部を示している。
【0057】
つぎに、正常に作動しないセンサセル及び各配線について図2を用いて説明する。図2(a)は、高S/N比又は高解像度の光電変換装置における1センサセル及び各配線の平面図である。また、図2(b)は、図2(a)の破線A−Bで示した部分の断面図である。さらに、図2(c)及び(d)は、各々図2(a)及び(b)において、トランジスタT11を素子ごとレーザー照射により蒸散させて削除した図である。
【0058】
なお、従来技術の項で説明した図8及び図13と同一機能の部分には、同一符号を付して説明を省略する。また、図2(b)及び図2(d)における光電変換素子の各構成素子については、従来技術と同様であるため説明を省略する。
【0059】
つぎに、従来技術で示したセンサセル等の構成に比較して、本実施形態にかかるセンサセル等の構成について説明する。まず、図2(a)と図13(a)とを比較して、パターン的に異なるのは、信号配線の長さを縮小し、光電変換素子S11の面積を拡大していることである。これは、従来技術の課題を解決すべくX線を減少等させた光電変換装置を製造するためである。
【0060】
つぎに、図2(c)と図13(a)とを比較して、パターン的に異なるのは、上記の図2(a)と図13(a)とを比較した場合と同様に、信号配線の長さを縮小し、光電変換素子S11の面積を拡大していることである。さらに、両者は、不具合の生じているセンサセルと接続されている信号配線を蒸散させ断線しているか、トランジスタT11を素子ごとに蒸散させ削除しているかということに相違がある。
【0061】
すなわち、従来技術において説明したように、図13は、図10において不具合のあったセンサセル11及びセンサセル22と接続されている信号配線をレーザー照射により蒸散させ断線していることを示している。一方、本実施形態にかかる不具合のあるセンサセル11及びセンサセル22は、そのセンサセル内のトランジスタTをレーザー照射により蒸散させ断線する。
【0062】
上記のように、不具合の生じているセンサセルと接続されている信号配線をレーザー照射により蒸散させ断線させることができないからである。そのため、不具合の生じているトランジスタTをレーザー照射により蒸散することにより、不具合の生じているセンサセルと信号線の間を断線させる。これにより、不具合のあるセンサセル以外の出力を通常の出力にすることができる。
【0063】
すなわち、図1に示す光電変換装置は、センサセル11のトランジスタT11及びセンサセル22のトランジスタT22が、素子すべてをレーザー照射により蒸散させ削除してあり、センサセルと信号線間の断線を行っている。具体的には、図2(d)に示すように、トランジスタT11ごと削除している。
【0064】
図2(d)は、トランジスタT11を断線された部分の断面構造を示している。トランジスタT11のみでなく、パッシベーション用窒化シリコン膜SiN層及び信号配線下部のゲート絶縁膜2、i層3、n層4もレーザー照射により蒸散されてなくなっている。
【0065】
正常に動作しないセンサセル11と接続されている信号配線をレーザー照射により蒸散させ断線すると、光電変換素子S11の出力であるV1は、通常の動作における出力を示さない。しかし、光電変換素子S11の出力が、漏れによって重畳されることは無くなる。したがって、光電変換素子S21及びS31の出力であるV4及びV7は、図14に示すような出力と同様になる。
【0066】
また、センサセル22についても同様に、不具合のあるTFTt22をレーザー照射により蒸散させ断線している。また、パッシベーション用窒化シリコン膜SiN層及び信号配線下部のゲート絶縁膜2、i層3、n層4もレーザー照射により蒸散されてなくなっている。不具合のあったセンサセル22等ををレーザー照射により蒸散させ断線すると、光電変換素子S22の出力であるV5は、通常の動作における出力を示さない。
【0067】
しかし、上記のセンサセル11を処理した場合と同様に、センサセル22のTFTt22のゲート線信号が、漏れによって重畳されることが無くなる。したがって、光電変換素子S12及びS32の出力であるV2及びV8は、図14に示すような出力と同様になる。
【0068】
さらに、厳密に言えば、本図に示すv1及びv5以外のセンサセルの出力信号の振幅は、図14に示した振幅よりも大きくなる。本実施形態にかかる光電変換装置の光電変換素子Sの面積は、従来技術に示した光電変換装置の光電変換素子Sより拡大しているためである。
【0069】
つぎに、2000×2000個のセンサセルを持つ光電変換装置の実装について、図3、図4を用いて説明する。図3、図4は、2000×2000個のセンサセルを持つ光電変換装置の実装を示す平面図である。2000×2000個の検出器を構成する場合には、図1に示した破線内の素子の数を縦と横とを共に増せばよい。しかし、この場合には、制御配線gは、g1〜g2000と2000本になる。また、信号配線SIGもsig1〜sig2000と2000本になる。
【0070】
さらに、シフトレジスタ(SR1)や検出用集積回路ICも2000本の信号線を制御・処理をしなければならないため大規模となる。これをそれぞれ1チップの素子で行うことは、1チップが非常に大きくなり、製造時の歩留まりや価格等で不利である。
【0071】
そこで、シフトレジスタ(SR1)は、たとえば、100段ごと1個のチップに形成し、20個(SR1−1〜SR1−20)を使用する。また検出用集積回路IC13においても100個の処理回路ごとに、1個のチップを形成し、20個(IC1〜IC20)を使用する。
【0072】
図3には、左側(L)に20チップ(SR1−1〜SR1−20)と下側(D)に20チップとを実装している。そして、1チップあたり100本の制御配線g、信号配線SIGを各々ワイヤーボンディングでチップと接線している。図中、破線部は上記の図1の破線部に相当する。なお、外部への接続は省略している。また、SWg、SWs、Vg、Vs、RF等の記載も省略している。
【0073】
検出集積回路IC1〜IC20からは、20本の出力(Vout)がある。これらは、スイッチ等を介して1本にまとめたり、20本をそのまま出力して、並列処理すればよい。
【0074】
つづいて、図4では、左側(L)に10チップ(SR1−1〜SR1−10)と、右側(R)に10チップ(SR1−11〜SR1−20)と、上側(U)に10チップ(IC1〜10)と、下側(D)に10チップ(IC11〜20)とを実装している。
【0075】
この構成は、上・下・左・右のそれぞれの側(U・D・L・R)に、それぞれ各配線を1000本ずつに振り分けている。そのため、各辺の配線の密度が小さくなる。また、各辺のワイヤーボンディングの密度も小さいため、歩留まりが向上する。配線の振り分けは左側(L)にg1,g3,g5,・・・g1999,右側(R)にg2,g4,g6,・・・g2000としている。つまり、奇数番目の制御線を左側(L)、偶数番目の制御線を右側(R)に振り分ける。こうすると各配線は等間隔に引き出され配線されるので密度の集中なく歩留まりが向上する。同様に、上側(U)・下側(D)への配線も振り分ける。
【0076】
また、図3、図4に示す光電変換装置の実装は、共に1枚の基板上に破線部の回路を形成した後に、その基板上にチップを実装してもよい。
【0077】
本実施形態によれば、簡易な製造工程により大面積・高性能の光電変換装置を製造することができる。すなわち、光電変換装置の製造工程は、各素子を共通な膜で同時に形成しているため、工程数が少ない。したがって、簡易的な工程で製造できるため、高歩留まりが可能である。よって、低コストで大面積・高性能の光電変換装置の生産を可能としている。また、コンデンサCと光電変換素子Sとを同じ素子内で構成でき、実質上素子を半減することが可能でさらに歩留まりを向上できる。
【0078】
(実施形態2)
以下、本実施形態にかかる光電変換装置をX線撮像装置に適用した場合について説明する。
【0079】
図5(a)、図5(b)は、実施形態1において説明した光電変換装置を搭載したX線撮像装置の模式的構成図及び模式的断面図である。まず、X線撮像装置の構成について説明する。光電変換素子とトランジスタは、a−Siセンサ基板6011内に複数個形成されている。そして、シフトレジスタSR1と検出用集積回路ICが実装されたフレキシブル回路基板6010が接続されている。
【0080】
フレキシブル回路基板6010の逆側は、回路基板PCB1、PCB2に接続されている。前記a−Siセンサ基板6011の複数枚が、基台6012の上に接着されている。また、大型の光電変換装置を構成する基台6012の下には、処理回路6018内のメモリ6014をX線から保護するため鉛板6013が実装されている。
【0081】
a−Siセンサ基板6011上には、X線を可視光に変換するための蛍光体6030、たとえば、CsIが塗布または貼り付けられている。図1で説明した光電変換装置を用いてX線を検出する。本実施形態では図5(b)に示されるように全体をカーボンファイバー製のケース6020に収納している。
【0082】
図6は、本発明の光電変換装置のX線診断システムへの応用例を示したものである。
【0083】
X線チューブ6050で発生したX線6060は患者あるいは被験者6061の胸部6062を透過し、蛍光体を上部に実装した光電変換装置6040に入射する。この入射したX線には患者6061の体内部の情報が含まれている。X線の入射に対応して蛍光体は発光し、これを光電変換して電気的情報を得る。この情報は、ディジタルに変換されイメージプロセッサ6070により画像処理され制御室のディスプレイ6080で観察できる。
【0084】
また、この情報は電話回線6090等の伝送手段により遠隔地へ転送でき、別の場所のドクタールームなどディスプレイ6081に表示もしくは光ディスク等の保存手段に保存することができ、遠隔地の医師が診断することも可能である。またフィルムプロセッサ6100によりフィルム6110に記録することもできる。
【0085】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかる光電変換装置は、不具合の生じているトランジスタをレーザー照射により蒸散する。すなわち、センサセルのパターンに拘わらず、不具合の生じているセンサセルと信号線の間を断線させることが容易にできる。したがって、従来技術と同様に、不具合のあるセンサセル以外の出力を通常の出力にすることができる。よって、高S/N比又は高解像度の光電変換装置を製造することができる。
【0086】
また、上記のセンサセルを従来技術で説明した大面積の光電変換装置のセンサセルとして用いることができる。これにより、簡易な製造工程により、高歩留まり・大面積・高性能の光電変換装置を製造することができる。
【0087】
さらに、上記したような優れた特性を有する光電変換装置を利用することでより低コストで大面積・高機能・高特性のファクシミリやX線撮像装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる光電変換装置の全体回路図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる光電変換装置の各構成素子の平面図及び断面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる光電変換装置の実装を示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる光電変換装置の実装を示す平面図である。
【図5】本発明の光電変換装置を有するシステムの一形態を説明するためのシステム構成図である。
【図6】光電変換部の構成例を説明する模式的断面図及び概略的回路図である。
【図7】従来技術にかかる光電変換装置における全体回路図である。
【図8】従来技術にかかる光電変換装置における各構成素子の平面図及び断面図である。
【図9】従来技術にかかる光電変換装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図10】従来技術にかかる光電変換装置における欠陥素子を説明するための全体回路図である。
【図11】従来技術にかかる光電変換装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図12】従来技術にかかる光電変換装置において配線部を蒸散させた全体回路図である。
【図13】従来技術にかかる光電変換装置における各構成素子の平面図及び断面図である。
【図14】従来技術にかかる光電変換装置の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
1 下部電極層
2 絶縁膜
3 光電変換半導体層(i層)
4 半導体層(n層)
5 上部電極層
10 シフトレジスタ(SR1)
11 制御配線g
12 信号配線SIG
13 検出用集積回路IC
14 シフトレジスタ(SR2)
15 Amp
16 電源Vs
17 リフレッシュ用電源Vg
19 スイッチSWs
20 スイッチSWg
21 リフレッシュ制御回路RF
Claims (8)
- 基板と、
前記基板上に配置された、光電変換素子を有する複数のセンサセルと、
前記光電変換素子の光電変換による電荷を転送するための信号配線と、
前記転送を制御するための制御配線と、を有する光電変換装置において、
前記複数のセンサセルには、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、ゲート絶縁層及び半導体層から構成されたスイッチ素子を有するセンサセルと、前記スイッチ素子を有さないセンサセルとがあり、
前記スイッチ素子を有するセンサセルが有する前記光電変換素子は、前記スイッチ素子を介して前記信号配線及び前記制御配線と接続されており、
前記スイッチ素子を有さないセンサセルが有する前記光電変換素子は、対応する前記信号配線及び前記制御配線とから分離されていることを特徴とする光電変換装置。 - 前記光電変換素子は、入射した光を電荷に変換する光電変換半導体層と、第1の電極層と、第2の電極層とを有し、
前記第1の電極層は、前記スイッチ素子に接続され、
前記第2の電極層は、前記光電変換素子に異なる電圧を供給するための複数の電源とスイッチを介して接続されていることを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。 - 前記複数の電源は、
前記光電変換素子に電界を与えることにより、前記光電変換素子が光電変換するための第1の電源と、
前記光電変換素子に電界を与えることにより、前記光電変換素子の光電変換による電荷をリフレッシュするための第2の電源と、を有することを特徴とする請求項2記載の光電変換装置。 - 前記光電変換素子は入射した光により第1及び第2のキャリアを発生させる光電変換半導体層と、ゲート電極を形成する下部電極層と、ソース、ドレイン電極を形成する上部電極層とを備え、
前記光電変換素子に電界を与えることにより、前記第1のキャリアを前記光電変換半導体層に蓄積し、かつ、前記第2のキャリアを前記上部電極層へ注入する光電変換手段と、
前記光電変換素子に電界を与えることにより、前記第1のキャリアを前記光電変換半導体層から前記上部電極層へ注入するリフレッシュ手段と、
前記光電変換手段による光電変換動作中に前記光電変換半導体層に蓄積された前記第1のキャリアもしくは前記上部電極層に注入された前記第2のキャリアを検出する検出手段とを有することを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。 - 基板と、
前記基板上に配置された、光電変換素子及びスイッチ素子を有する複数のセンサセルと、
前記光電変換素子の光電変換による電荷を、前記スイッチ素子を介して転送するための信号配線と、
前記スイッチ素子に制御信号を供給するための制御配線と、を有する光電変換装置のリペア方法において、
前記光電変換素子が前記信号配線及び前記制御配線に前記スイッチ素子を介して接続された複数のセンサセルを形成する工程と、
前記複数のセンサセルのうち、正常に動作しないセンサセルの前記スイッチ素子をレーザー照射により蒸散し、前記正常に動作しないセンサセルの前記光電変換素子と、対応する前記信号配線及び前記制御配線との接続を分断する工程と、を有することを特徴とする光電変換装置のリペア方法。 - 前記複数のセンサセルを形成する工程において、前記スイッチ素子がソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、ゲート絶縁層及び半導体層を有する薄膜トランジスタであることを特徴とする請求項5記載の光電変換装置のリペア方法。
- 前記光電変換素子は入射した光により第1及び第2のキャリアを発生させる光電変換半導体層と、ゲート電極を形成する下部電極層と、ソース、ドレイン電極を形成する上部電極層とを備え、
前記光電変換素子に電界を与えることにより、前記第1のキャリアを前記光電変換半導体層に蓄積し、かつ、前記第2のキャリアを前記上部電極層へ注入し、
前記光電変換素子に電界を与えることにより、前記第1のキャリアを前記光電変換半導体層から前記上部電極層へ注入し、
光電変換中に前記光電変換半導体層に蓄積された前記第1のキャリアもしくは前記上部電極層に注入された前記第2のキャリアを検出することを特徴とする請求項5記載の光電変換装置のリペア方法。 - 入力されたX線を光に変換する蛍光体と、
請求項1から4のいずれか記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置からの信号を処理する信号処理手段と、
前記信号処理手段からの信号を記録するための記録手段と、
前記信号処理手段からの信号を表示するための表示手段と、
前記信号処理手段からの信号を伝送するための伝送処理手段と、
前記X線を発生させるためのX線源とを具備することを特徴とするX線撮像システム。
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