JP4311527B2 - 射出成形樹脂ギヤ,射出成形樹脂回転体及び射出成形体 - Google Patents

射出成形樹脂ギヤ,射出成形樹脂回転体及び射出成形体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、カラー複写機やカラープリンタ及びVTR装置等の各種精密機械、各種自動車部品、産業機械等の動力伝達装置に使用される樹脂製のギヤであって、特に、射出成形によって形成された樹脂ギヤに関するものである。また、この発明は、射出成形樹脂ギヤ,射出成形樹脂ローラ,射出樹脂プーリ,射出成形樹脂スプロケット等の動力伝達部分に使用されることがある射出成形樹脂回転体に関するものである。さらに、この発明は、射出成形樹脂ギヤ,射出成形樹脂ローラ等の動的な射出成形樹脂回転体及び静的な軸支持部材等として使用される射出成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種精密機械等の動力伝達機構に広く使用されるようになってきた射出成形樹脂ギヤ31は、図6に示すように、外周側に歯32が形成された円筒状のリム33と、軸穴34が形成されたハブ35と、これらリム33とハブ35とを接続する略円板状のウェブ36とで構成されるようになっている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
また、図8に示すように、歯形に沿った凹部40を各歯41に形成し、歯41の肉厚を均一化して、歯形精度を確保するようにした射出成形樹脂ギヤ42が既に案出されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【非特許文献1】
精密工学会,成形プラスチック歯車研究専門委員会編「成形プラスチック歯車ハンドブック」シグマ出版、1995年4月20日、477頁〜479頁の図11.27〜図11.29
【特許文献1】
特開平4−236848号公報(段落番号0012〜0014、図3及び図4)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、非特許文献1に開示されたような形状の射出成形樹脂ギヤ31は、キャビティ内に射出された樹脂が冷却・固化する際に、肉厚の厚い領域の方が肉厚の薄い領域よりも大きく収縮するため、肉厚の厚いリム33とウェブ36との接続部側の方が肉厚の薄いリム33の歯幅方向端部側よりも半径方向内方へ大きく収縮し、図7に示すように、リム33の歯幅方向略中央部においてヒケ37が生じて、ギヤ精度(歯すじ誤差等)が低下するという特有の問題(切削加工される金属製ギヤには生じない問題)を有している。
【0006】
また、特許文献1に開示されたような従来の射出成形樹脂ギヤ42は、非特許文献1の射出成形樹脂ギヤ31において問題となる歯形精度の向上を目的として案出されたものであるが、歯形に沿った凹部40を形成しない射出成形樹脂ギヤに比較して強度が著しく劣るため、動力伝達機構に使用することが難しいという不具合を有している。
【0007】
そこで、本発明は、ギヤ精度が良く、カラー複写機やカラープリンタ等の各種機械の動力伝達装置に使用され、高精度の回転伝達を可能にする射出成形樹脂ギヤを提供することを目的とする。また、本発明は、射出成形樹脂ギヤと同様に動力伝達機構を構成する射出成形樹脂プーリ,射出成形樹脂スプロケット,射出成形樹脂ベルト車,射出成形樹脂ローラ等の射出成形樹脂回転体の高精度化を図ることを目的とする。また、本発明は、射出成形樹脂ローラとほぼ同様な外形形状を呈し、可動軸又は静止軸を支持することができるように形成された軸支持部材等の射出成形体の高精度化を図ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、歯が形成されたリムとハブとをウェブで接続してなる射出成形樹脂ギヤにおいて、前記リムの歯幅方向端部から前記リムと前記ウェブとの接続部に向かうにしたがって、前記リムの肉厚を漸減させるようになっている。そして、前記リムは、前記ウェブとの接続部において最も肉厚が薄くなっている
【0009】
請求項2の発明は、略円筒状の外周側円筒部と内周側円筒部とを円板状部で接続してなる射出成形樹脂回転体において、前記外周側円筒部の幅方向端部から前記外周側円筒部と前記円板状部との接続部に向かうにしたがって、前記外周側円筒部の肉厚を漸減させるようになっている。そして、前記外周側円筒部は、前記円板状部との接続部において最も肉厚が薄くなっている
【0010】
請求項3の発明は、外周側円筒部と内周側円筒部とを円板状部で接続してなる射出成形体において、前記外周側円筒部の幅方向端部から前記外周側円筒部と前記円板状部との接続部に向かうにしたがって、前記外周側円筒部の肉厚を漸減させるようになっている。そして、前記外周側円筒部は、前記円板状部との接続部において最も肉厚が薄くなっている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1及び図2は、本発明の実施の形態に係る射出成形樹脂ギヤ1を示すものである。これらの図に示す射出成形樹脂ギヤ1は、例えば、ポリアセタール,ポリアミド,ポリブチレンテレフタレート,ポリカーボネート等の樹脂材料を使用して射出形成されたものである。尚、図1は、射出成形樹脂ギヤ1の正面図である。また、図2は、図1のA−A線に沿って切断して示す射出成形樹脂ギヤ1の断面図である。
【0013】
これらの図に示す射出成形樹脂ギヤ1は、軸穴2内に軸3が嵌合されるようになっている略円筒状のハブ(内周側円筒部)4と、このハブ4の外周側に形成された略円板状のウェブ(円板状部)5と、このウェブ5の外周側に形成された略円筒状のリム(外周側円筒部)6と、を備えている。そして、この射出成形樹脂ギヤ1は、リム6の外周に歯7が形成されており(図1参照)、ウェブ5が歯幅方向略中央部に位置するように形成され(図2参照)、ウェブ5を中心としてほぼ左右対称形状になっている(図2参照)。
【0014】
リム6は、図3に詳細を示すように、歯幅方向両端部から歯幅方向略中央部(リム6とウェブ5との接続部9)に向かうにしたがって、その肉厚を漸減するように形成されている。言い換えれば、リム6は、その内周面8の直径が、歯幅方向両端部から歯幅方向略中央部に向かうに従って漸増するように、抜け勾配とは逆のテーパ形状に形成されている。したがって、リム6は、歯幅方向両端部において最も肉厚が厚く、ウェブ5との接続部9において最も肉厚が薄くなっている。ここで、リム6のテーパ角度θは、射出成形樹脂ギヤ1の樹脂材料の種類,外形寸法及び使用状態等に応じて最適の数値が選択される。
【0015】
このように、構成された本実施の形態の射出成形樹脂ギヤ1によれば、リム6の歯幅方向両端部から歯幅方向略中央部に向かうにしたがって、リム6の肉厚を漸減させることにより、リム6の収縮量が歯幅方向に沿ってほぼ均等化し、リム6とウェブ5との接続部9におけるヒケの発生を抑えることができるため、歯すじ誤差等のギヤ精度の高精度化を図ることができる。したがって、本実施の形態の射出成形樹脂ギヤ1は、カラー複写機やカラープリンタ等の各種機械に使用されると、回転を正確に伝達することが可能になる。
【0016】
尚、本実施の形態の射出成形樹脂ギヤ1は、リム6の内周面8が抜け勾配と逆のテーパ形状になっているため、キャビティから容易に取り出せるように、射出成形金型の型割等が工夫されている。
【0017】
[第2の実施の形態]
図4及び図5は、本発明の第2の実施の形態に係る射出成形樹脂回転体としての射出成形樹脂ローラ11を示すものである。
【0018】
これらの図に示す射出成形樹脂ローラ11は、軸穴12内に軸13が嵌合されるようになっている内周側円筒部(ハブ)14と、この内周側円筒部14の外周側に形成された円板状部(ウェブ)15と、この円板状部15の外周側に形成された外周側円筒部(リム)16と、を備えている。そして、この射出成形樹脂ローラ11は、外周側円筒部16の幅方向略中央部に円板状部15が位置するように形成され、円板状部15を中心としてほぼ左右対称形状になっている(図6参照)。
【0019】
外周側円筒部16は、幅方向両端部から幅方向略中央部(外周側円筒部16と円板状部15との接続部19)に向かうにしたがって、その肉厚を漸減するように形成されている。言い換えれば、外周側円筒部16は、その内周面17の直径が、幅方向両端部から幅方向略中央部に向かうに従って漸増するように、抜け勾配とは逆のテーパ形状に形成されている。したがって、外周側円筒部16は、幅方向両端部において最も肉厚が厚く、円板状部15との接続部19において最も肉厚が薄くなっている。ここで、外周側円筒部16のテーパ角度θは、射出成形樹脂ローラ11の樹脂材料(ポリアセタール,ポリアミド,ポリブチレンテレフタレート,ポリカーボネート等)の種類,外形寸法及び使用状態等に応じて最適の数値が選択される。
【0020】
このように、構成された本実施の形態の射出成形樹脂ローラ11によれば、外周側円筒部16の幅方向両端部から幅方向略中央部に向かうにしたがって、外周側円筒部16の肉厚を漸減させることにより、外周側円筒部16の収縮量が幅方向に沿ってほぼ均等化し、外周側円筒部16と円板状部15との接続部19におけるヒケの発生を抑えることができるため、外周側円筒部16の高精度化を図ることができる。
【0021】
[その他の実施の形態]
上述の第2の実施の形態は、射出成形樹脂回転体として射出成形樹脂ローラ11を例示したが、射出成形樹脂回転体としてはこれに限られず、平ベルトが巻き掛けられるベルト車とすることができる。また、第2の実施の形態の射出成形樹脂回転体(11)は、外周側円筒部16の外周側に歯(7)を形成して、第1の実施の形態で説明した射出成形樹脂ギヤ1とすることができる。また、第2の実施の形態の射出成形樹脂回転体(11)は、外周側円筒部16の外周側に、歯付きベルトに噛み合う歯を形成し、歯付きベルト用プーリとすることができる。また、第2の実施の形態の射出成形樹脂回転体(11)は、外周側円筒部16の外周側に、ベルトに係合するベルト溝を形成し、プーリ等とすることができる。また、第2の実施の形態の射出成形樹脂回転体(11)は、外周側円筒部16の外周側に、チェーンに噛み合う歯を形成することにより、チェーンスプロケットとすることができる。
【0022】
また、上述の第2の実施の形態に示す射出成形樹脂ローラ11と同様の形状の射出成形体を、往復動や回動する軸13を支持する軸支持部材及び静止軸(13)を支持する軸支持部材20として使用することが可能である。
【0023】
また、上述の第1の実施の形態は、ウェブ5をリム6の歯幅方向略中央部に接続する態様を例示したが、ウェブ5とリム6の接続部をリム6の歯幅方向端部側にずらす態様にも適用できる。
【0024】
また、上述の第2の実施の形態は、円板状部15を外周側円筒部16の幅方向略中央部に接続する態様を例示したが、円板状部15と外周側円筒部16の接続部を外周側円筒部16の幅方向端部側にずらす態様にも適用できる。
【0025】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る射出成形樹脂ギヤによれば、リムの歯幅方向端部からリムとウェブとの接続部に向かうにしたがって、リムの肉厚を漸減させることにより、リムの収縮量が歯幅方向に沿ってほぼ均等化し、リムとウェブとの接続部におけるヒケの発生を抑えることができるため、歯すじ誤差等のギヤ精度の高精度化を図ることができる。
【0026】
また、本発明に係る射出成形樹脂回転体によれば、外周側円筒部の幅方向端部から外周側円筒部と円板状部との接続部に向かうにしたがって、外周側円筒部の肉厚を漸減させることにより、外周側円筒部の収縮量が幅方向に沿ってほぼ均等化し、外周側円筒部と円板状部との接続部におけるヒケの発生を抑えることができるため、外形形状の高精度化を図ることができる。
【0027】
また、本発明に係る射出成形体は、外周側円筒部の幅方向両端部から幅方向略中央部に向かうにしたがって、外周側円筒部の肉厚を漸減させることにより、外周側円筒部の収縮量が幅方向に沿ってほぼ均等化し、外周側円筒部と円板状部との接続部におけるヒケの発生を抑えることができるため、外形形状の高精度化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る射出成形樹脂ギヤの正面図である。
【図2】図1のA−A線に沿って切断して示す射出成形樹脂ギヤの断面図である。
【図3】図2の一部を拡大して示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る射出成形樹脂回転体の正面図である。
【図5】図4のB−B線に沿って切断して示す射出成形樹脂回転体の断面図である。
【図6】従来の射出成形樹脂ギヤの縦断面図である。
【図7】従来の射出形成樹脂ギヤの不具合状態を示す拡大図である。
【図8】他の従来の射出成形樹脂ギヤの歯の一部を拡大して示す図である。
【符号の説明】
1……射出成形樹脂ギヤ、4……ハブ(内周側円筒部)、5……ウェブ(円板状部)、6……リム(外周側円筒部)、7……歯、11……射出成形樹脂ローラ(射出成形樹脂回転体)、14……内周側円筒部(ハブ)、15……円板状部(ウェブ)、16……外周側円筒部(リム)、20……軸支持部材(射出成形体)

Claims (3)

  1. 歯が形成されたリムとハブとをウェブで接続してなる射出成形樹脂ギヤにおいて、
    前記リムの歯幅方向端部から前記リムと前記ウェブとの接続部に向かうにしたがって、前記リムの肉厚を漸減させることにより、
    前記リムは、前記ウェブとの接続部において最も肉厚が薄くなっている、
    ことを特徴とする射出成形樹脂ギヤ。
  2. 略円筒状の外周側円筒部と内周側円筒部とを円板状部で接続してなる射出成形樹脂回転体において、
    前記外周側円筒部の幅方向端部から前記外周側円筒部と前記円板状部との接続部に向かうにしたがって、前記外周側円筒部の肉厚を漸減させることにより、
    前記外周側円筒部は、前記円板状部との接続部において最も肉厚が薄くなっている、
    ことを特徴とする射出成形樹脂回転体。
  3. 外周側円筒部と内周側円筒部とを円板状部で接続してなる射出成形体において、
    前記外周側円筒部の幅方向端部から前記外周側円筒部と前記円板状部との接続部に向かうにしたがって、前記外周側円筒部の肉厚を漸減させることにより、
    前記外周側円筒部は、前記円板状部との接続部において最も肉厚が薄くなっている、
    ことを特徴とする射出成形体。
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