JP4311120B2 - 多層基板の製造方法及び熱プレス機 - Google Patents

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本発明は、絶縁層と導体層とを積層してなる積層体を、熱プレス機により加熱・加圧してなる多層基板の製造方法及び当該方法を用いて多層基板を製造する熱プレス機に関するものである。
従来、絶縁層と導体層とを積層して積層体を形成し、当該積層体を熱プレス機により加熱・加圧してなる多層基板が知られている。このような多層基板の製造方法として、コア基板の上下両表面に1層ずつ片面銅箔付きフィルムを積層接着して多層基板を形成する方法、導体パターンを有する樹脂フィルムを一度に積層して一括で多層基板を形成する方法等がある。いずれの場合にも、一般的に熱プレス機を用いて積層体の上下両面から加熱・加圧を行い、樹脂同士を接着及び金属同士を接合させて多層基板を形成する。
その際、熱プレス機の熱プレス板間に1つの積層体のみを配置して加熱・加圧を行っても良いが、一対の熱プレス板間に、緩衝材や離型フィルム等を介して複数の積層体を上下方向に重ねて配置することで、一度の加熱・加圧により複数の多層基板を製造し、トータルでの製造時間短縮を図ることができる。
しかしながら、積層体の上下両面から熱プレス板により加熱・加圧するので、熱プレス板から遠い位置にある積層体ほど熱伝導に時間を要する。すなわち、1つの積層体を加熱する場合よりも加熱時間が長くなる。
本発明は上記問題点に鑑み、加熱時間を短縮できる多層基板の製造方法及び熱プレス機を提供することを目的とする。
上記目的を達成する為に、請求項1に記載の多層基板の製造方法は、絶縁層と導体層とを積層して積層体を形成する積層工程と、前記積層体を熱プレス板間に配置し、当該熱プレス板により前記積層体を上下両面から加熱・加圧する加熱・加圧工程とを備えている。そして、前記加熱・加圧工程において、積層体の側面側に、熱プレス板による積層体への加圧を妨げない長さを有する補助板を配置させるとともに、補助板の端面と熱プレス板との間に、熱プレス板からの圧力を受けて変形可能な第1の緩衝材を配置させた状態で加熱・加圧、熱プレス板の熱補助板及び第1の緩衝材を介して積層体の側面に伝達するようにしたことを特徴とする。
このように、本発明の多層基板の製造方法によると、積層体の側面側に補助板が配置され、補助板の端面と熱プレス板との間に第1の緩衝材が配置された状態で、熱プレス板を用いて積層体の加熱・加圧がなされる。したがって、熱プレス板からの熱、補助板及び第1の緩衝材を介して積層体の側面に効率良く伝達することができるこれにより、従来のように、積層体の上下両面のみから熱プレス板の熱が伝達される場合よりも、積層体への熱伝導時間、ひいては加熱時間を短縮することができる。すなわち多層基板の製造時間を短縮することができる。特に本発明では、熱プレス板からの圧力を受けて第1の緩衝材が変形し、補助板の端面と熱プレス板との間の隙間を埋める(第1の緩衝材が広い接触面積をもって補助板、熱プレス板と接する)ので、伝熱経路が増加し、熱プレス板からの熱を積層体の側面に効率よく伝達することができる。
また、真空中で多層基板の製造がなされない場合には、積層体の側面側に配置された補助板により、積層体からの放熱が抑制されるので、それによっても加熱時間が短縮される。
請求項2に記載の多層基板の製造方法は、絶縁層と導体層とを積層して積層体を形成する積層工程と、前記積層体を熱プレス板間に配置し、当該熱プレス板により前記積層体を上下両面から加熱・加圧する加熱・加圧工程とを備えている。そして、加熱・加圧工程において、積層体の側面側に、熱プレス板による積層体への加圧を妨げない長さを有する補助板と、熱プレス板からの圧力を受けて変形可能な第1の緩衝材とを配置させるとともに、第1の緩衝材と一体に設けられ、積層体側面の凹凸に合わせて変形可能な第2の緩衝材を、補助板と積層体との間に配置させつつ補助板の端面と熱プレス板との間に回り込んで配置させた状態で、加熱・加圧することを特徴とする。
このように、本発明の多層基板の製造方法によると、積層体の側面側に補助板と第1の緩衝材が配置された状態で、熱プレス板を用いて積層体の加熱・加圧がなされる。したがって、熱プレス板からの熱を、補助板及び第1の緩衝材を介して積層体の側面に効率良く伝達することができる。これにより、従来のように、積層体の上下両面のみから熱プレス板の熱が伝達される場合よりも、積層体への熱伝導時間、ひいては加熱時間を短縮することができる。すなわち多層基板の製造時間を短縮することができる。特に本発明では、熱プレス板からの圧力を受けて第2の緩衝材が変形し、補助板の端面と熱プレス板との間の隙間を埋める(第2の緩衝材が広い接触面積をもって補助板、熱プレス板と接する)ので、伝熱経路が増加し、熱プレス板からの熱を積層体の側面に効率よく伝達することができる。また、補助板と積層体の側面との間にも、積層体側面の凹凸に合わせて変形可能な第2の緩衝材を配置するので、補助板から積層体側面への伝熱経路が増加し、加熱時間をより短縮することができる。さらには、第1の緩衝材と第2の緩衝材が一体に設けられるので部品点数を削減できる。
請求項3に記載の多層基板の製造方法は、絶縁層と導体層とを積層して積層体を形成する積層工程と、前記積層体を熱プレス板間に配置し、当該熱プレス板により前記積層体を上下両面から加熱・加圧する加熱・加圧工程とを備えている。そして、絶縁層は樹脂フィルムであり、導体層は樹脂フィルム表面に設けられた導体パターンであり、加熱・加圧工程において、積層体の側面側に、熱プレス板による積層体への加圧を妨げない長さを有する補助板と、熱プレス板からの圧力を受けて変形可能な第1の緩衝材とを配置させるとともに、第1の緩衝材と一体に設けられ、積層体表面の凹凸に合わせて変形しつつ熱プレス板から積層体に加圧力を伝達する第3の緩衝材を、積層体表面と熱プレス板との間に配置させつつ補助板の端面と熱プレス板との間にも配置させた状態で、加熱・加圧することを特徴とする。
このように、本発明の多層基板の製造方法によると、積層体の側面側に補助板と第1の緩衝材が配置された状態で、熱プレス板を用いて積層体の加熱・加圧がなされる。したがって、熱プレス板からの熱を、補助板及び第1の緩衝材を介して積層体の側面に効率良く伝達することができる。これにより、従来のように、積層体の上下両面のみから熱プレス板の熱が伝達される場合よりも、積層体への熱伝導時間、ひいては加熱時間を短縮することができる。すなわち多層基板の製造時間を短縮することができる。特に本発明では、熱プレス板からの圧力を受けて第3の緩衝材が変形し、補助板の端面と熱プレス板との間の隙間を埋める(第3の緩衝材が広い接触面積をもって補助板、熱プレス板と接する)ので、伝熱経路が増加し、熱プレス板からの熱を積層体の側面に効率よく伝達することができる。また、積層体を構成する樹脂フィルム表面に凹凸があっても、第3の緩衝材がその凹凸に応じて変形するため、樹脂フィルム各部における圧力差を縮小でき、導体層である導体パターンの位置ずれを防止することができる。さらには、第1の緩衝材と第3の緩衝材が一体に設けられるので部品点数を削減できる。
なお、請求項3に記載の樹脂フィルムとしては、請求項4に記載のように、熱可塑性樹脂を採用することができる。
第1の緩衝材は、熱伝導性に優れるとともに熱プレス板からの圧力を受けて変形可能な材料から構成されれば良い。そのような材料として、例えば請求項5に記載のように金属繊維を採用することができる
請求項1〜5いずれかに記載の発明においては、請求項6に記載のように、加熱・加圧工程において、熱プレス板間に複数の積層体が配置されても良い。熱プレス板間に配置される積層体は1つでも良い。しかしながら、複数の積層体を配置することにより、一括で複数の多層基板を形成し、多層基板の製造時間を短縮することができる。その際、熱プレス板から離れた位置にある積層体であっても、少なくとも第1の緩衝材及び補助板を介して、側面側から積層体に熱プレスの熱が伝達されるので、積層体に側面から熱の伝達がない場合よりも加熱時間が短縮され、多層基板の製造時間をより短縮することができる。
補助板は、熱プレス板からの熱を積層体側面に伝達するため、熱伝導性に優れる材料から構成されれば良い。そのような材料として例えば請求項7に記載のように金属を採用することができる。
また、補助板は、熱プレス板による積層体への加圧を妨げない長さをもって積層体の側面側に配置されるものであれば、その形状は特に限定されるものではないが、請求項8に記載のように積層体の側面に沿って環状に設けられていることが好ましい。その場合、補助板と積層体との接触面積が増加するので、熱プレス板からの伝熱経路が増加し、より加熱時間を短縮することができる。
また、補助板は、請求項9に記載のように加熱手段を有し、加熱・加圧工程において、自ら積層体を加熱しても良い。補助板が加熱手段を有すれば、熱プレス板の熱を積層体に伝達するだけでなく、自らが発熱して積層体を加熱することができる。この場合、側面側から積層体に伝達される熱量が増加するので、さらに加熱時間を短縮することができる。
第1の緩衝材は補助板と独立して別個に配置されても良いが、請求項10に記載のように、一体に設けられても良い。熱伝導性に優れ、熱プレス板による積層体への加圧を妨げないように熱プレス板からの圧力を受けて変形可能な材料から構成されるものであれば第一の緩衝材と補助板とを一体に設けることができる。この場合、部品点数を削減することができる。
次に、本発明の熱プレス機について以下に説明する。請求項11に記載の熱プレス機は、複数の熱プレス板を備え、当該熱プレス板間に絶縁層と導体層とを積層してなる積層体を配置し、積層体の上下両面から熱プレス板により加熱・加圧して多層基板を製造する熱プレス機である。そして、熱プレス板間であって、積層体の側面側に配置され、熱プレス板による積層体への加圧を妨げない長さを有する補助板と、積層体の側面であって補助板の端面と熱プレス板との間に配置され、熱プレス板からの圧力を受けて変形可能な第1の緩衝材とを備えることを特徴とする。
この作用効果は、請求項1に記載の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
補助板は、熱プレス板からの熱を積層体側面に伝達するため、熱伝導性に優れる材料から構成されれば良いが、そのような材料として例えば請求項12に記載のように金属を採用することができる
また、補助板は、熱プレス板による積層体への加圧を妨げない長さをもって積層体の側面に配置されるものであれば、その形状は特に限定されるものではないが、請求項13に記載のように積層体の側面に沿って環状に設けられていることが好ましい。この場合、補助板と積層体との接触面積が増加するので、熱プレス板からの熱の伝達経路が増加し、より加熱時間を短縮することができる。
また、補助板は、請求項14に記載のように、加熱手段を有しても良い。補助板自体が加熱手段を有すれば、熱プレス板の熱を積層体に伝達するだけでなく、自らが発熱して積層体を加熱することができる。この場合、側面から積層体に伝達される熱量が増加するので、さらに加熱時間を短縮することができる。
また、第1の緩衝材は、熱伝導性に優れるとともに熱プレス板からの圧力を受けて変形可能な材料から構成されれば良い。そのような材料としては、例えば請求項15に記載のように金属繊維を採用することができる
また、第1の緩衝材は補助板と独立して別個に設けられても良いが、請求項16に記載のように、一体に設けられても良い。熱伝導性に優れ、熱プレス板による積層体への加圧を妨げないように熱プレス板からの圧力を受けて変形可能な材料から構成されるものであれば第一の緩衝材と補助板とを一体に設けることができる。
請求項17に記載のように、補助板と積層体との間に、熱伝導性に優れるとともに、積層体側面の凹凸に合わせて変形可能な第2の緩衝材を備えることが好ましい。
積層時の位置ずれや寸法誤差等により積層体の側面には凹凸が生じる。従って、補助板と積層体の側面との間にも、熱伝導性に優れるとともに、積層体側面の凹凸に合わせて変形可能な第2の緩衝材を備えると、補助板から積層体側面への伝熱経路が増すので、加熱時間を短縮することができる。
そのような第2の緩衝材の材料としては、例えば請求項18に記載のように、金属繊維を採用することができる
また、第2の緩衝材と第1の緩衝材は別個に設けられても良いが、請求項19に記載のように、一体に設けられても良い。この場合、第2の緩衝材は、補助板と積層体との間に配置されるとともに、補助板の端面と熱プレス板との間にも回り込んで配置される。
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態における加熱・加圧時の熱プレス機の概略構成を示す断面図である。従って、図1においては、熱プレス機の熱プレス板間に積層体が配置されている。
図1に示すように、熱プレス機10は、一対の熱プレス板20a,20bと、積層体の側面側に配設される補助板30と、積層体の側面側に配設されつつ当該補助板30の端面と熱プレス板20a,20bとの間に配設される第1の緩衝材40とにより構成される。
熱プレス板20a,20bは、積層体50を上下両側から挟むように配置され、積層体50を上下両面から加熱・加圧する。尚、本実施形態においては、一対の熱プレス板20a,20b間に、5つの積層体が積層方向に重なって位置決め配置される。この熱プレス板20a,20bは、例えば、チタン等の導電性金属から構成されており、電流を通電することにより発熱する。それ以外にも、熱プレス板20a,20b内にヒータを埋設して、そのヒータにより加熱したり、熱プレス板20a,20b内に流体の流通経路を設け、その流通経路内に加熱された流体を流すことにより熱プレス板20a,20bを加熱しても良い。
補助板30は、熱伝導性に優れる材料により構成され、例えばAlやCu等の金属からなる。また、補助板30は、熱プレス板20a,20bによる積層体50への加圧の妨げにならない長さをもって形成されており、積層体50の側面に接するように配置される。その際、補助板30の形状は特に限定されるものではないが、本実施形態においては、積層体50の側面に接するように、積層体50の側面にそって環状に設けられている。このように、積層体50の側面に沿って環状に設けられると、補助板30と積層体50の側面との接触面積が増加するので、熱プレス板20a,20bからの伝熱経路が増加し、加熱時間を短縮することができる。
第1の緩衝材40は、熱伝導性に優れつつ、熱プレス板20a,20bからの圧力を受けて変形可能な材料を用いて形成されている。そのような材料としては、例えば、金属を繊維状に加工し、その繊維状金属を不織布として板状に形成したものや、織布としてニット、クロスとしたもの(例えばナスロン(登録商標)のフエルト)を用いることができる。また、第1の緩衝材40は、積層体50が加熱・加圧された際に、熱プレス板20a,20bによる積層体50への加圧の妨げにならず、且つ、熱プレス板20a,20bの熱を補助板30の効率良く伝達可能な厚さ(積層方向)を有しており、積層体50の側面側に配置されつつ熱プレス板20a,20bと補助板30の端面との間に配置される。
次に、多層基板の製造方法について、図1を用いて説明する。
まず、図示されないが、積層体50を形成する積層工程が実施される。積層体50は、絶縁層と導体層とを積層して形成され、熱プレス板20a,20bからの加熱・加圧により多層基板となるもの(所謂ビルドアップ多層基板)であれば、その材料構成や形成方法は特に限定されるものではない。例えば、絶縁層は熱硬化性樹脂であっても良いし、熱可塑性樹脂であっても良い。さらには、ガラス布に樹脂を含浸し、加熱・乾燥してBステージとした樹脂シートであっても良い。また、導体層は、樹脂に貼着された導体箔をエッチング加工によりパターン化したものであっても良いし、メッキや導電性ペーストにより形成される導体パターンであっても良い。また、コア基板の上下両表面に1層ずつ片面銅箔付きフィルムを積層接着して多層基板を形成しても良いし、導体パターンを有する樹脂フィルムを一度に積層して一括で多層基板を形成しても良い。
本実施形態においては、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムを絶縁層とし、当該樹脂フィルムの片面に貼着された導体箔をエッチングによりパターン化してなる導体パターンを導体層として、当該片面導体パターンフィルムを含む複数の樹脂フィルムを積層することにより積層体50を形成する。そして、一括で多層基板を形成する。尚、熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、本実施形態においては、厚さ25〜100μmの液晶ポリマー(LCP)を用いるものとする。また、導体パターンに用いられる導体箔としては、例えばAu、Ag、Cu、Alの少なくとも1種を含む低抵抗金属箔を用いることができ、本実施形態においては安価でマイグレーションの心配のないCu箔を用いるものとする。
積層体50の形成後、熱プレス機10の熱プレス板20a,20b間に積層体50を位置決め配置する。熱プレス板20a,20b間に配置される積層体50の数は特に限定されるものではなく、1つだけ配置されても良い。本実施形態においては、図1に示すように、第3の緩衝材60と積層体50を交互に積層し、一対の熱プレス板20a,20b間に5つの積層体50を配置する。このように、複数の積層体50を配置し、一括で複数の多層基板を形成すると、多層基板の製造時間を短縮することができる。尚、図1において、下側の熱プレス板20bと第1の緩衝材40及び第3の緩衝材60の間には、金属からなる積層体50搬送用のパレット70が配設されている。
ここで、第3の緩衝材60は、加熱・加圧時に、積層体50表面の凹凸に合わせて変形しつつ、熱プレス板20a,20bの圧力を積層体50に伝達する材料をもって形成されている。例えば、ステンレス等の金属を繊維状に加工し、その繊維状金属を不織布として板状に形成したものや、織布としてニット、クロスとしたもの(例えばナスロン(登録商標))を用いることができる。それ以外にも、後述する加熱・加圧条件以上の耐性を有し、熱プレス板20a,20bの加圧面と積層体50との形状差を緩衝できる形状に弾性変形可能な柔軟性を有するものであれば、他の材質及び構成のものを使用できる。例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ケブラー(登録商標)及びポリテトラフルオロエチレン樹脂を特殊加工したハイパーシート(登録商標)ガスケット等の樹脂をフィルム或いは繊維化したもの、ガラス繊維などを用いることができる。尚、本実施形態においては、金属を繊維状に加工し、その繊維状金属を不織布として板状(フエルト)に形成したものを用いるものとする。
これにより、熱可塑性樹脂のように加熱・加圧時に流動する樹脂を構成要素とする積層体50を熱プレス板20a,20bにより加熱・加圧しても、積層体50表面の凹凸に応じて第3の緩衝材60が変形するため、積層体50の各所にほぼ均等に圧力が印加され、その結果、導体層の位置ずれを防止することができる。
次いで、熱プレス板20a,20bを用いて積層体50の上下両面から加熱・加圧する加熱・加圧工程が実施される。
まず、熱プレス板20a,20bが加熱・加圧動作に入る前に、積層体50の側面に接するように補助板30が配設され、それとともに積層体50の側面側(図1では積層体50に重なる第3の緩衝材60の側面に接するように)であって当該補助板30の熱プレス板20a,20bの圧力印加面と対向する端面上(熱プレス板20b側はパレット70との間)に、第1の緩衝材40が配設される。
そして、補助板30及び第1の緩衝材40が配設された状態で、熱プレス板20a,20bにより積層体50の上下方向から加熱・加圧がなされる。このとき、積層体50の上下両面には、第3の緩衝材60を介して熱プレス板20a,20bの熱が伝達されるとともに、熱プレス板20a,20bからの圧力が積層体50の各所に均等に印可される。
それとともに、本実施形態においては、第1の緩衝材40が熱プレス板20a,20bからの圧力を受けて熱プレス板20a,20bと補助板30の端面との間(下側の熱プレス板20bはパレット70を介して)で変形し、熱プレス板20a,20b及び補助板30と広い接触面積をもって接する(熱プレス板20a,20bと補助板30の端面との間の隙間を埋める)。従って、熱プレス板20a,20bからの熱が、第1の緩衝材40及び補助板30を介して、側面側からも積層体50に効率良く伝達される。
そして、積層体50を構成する熱可塑性樹脂が軟化して樹脂同士が接着されるとともに、予め樹脂フィルムに形成されていたビアホール内の層間接続材料同士或いは層間接続材料と導体層である導体パターンとが接合され、加熱・加圧後の冷却工程を経て、多層基板が形成される。尚、本実施形態において、熱プレス板20a,20bにより積層体50に印加される加熱・加圧条件は、例えば、温度は、200〜350℃の範囲の値であり、圧力は0.1〜10MPaの範囲の値である。また、多層基板は、熱プレス機により、所定の温度勾配をもって冷却されるように管理される。
このように、本実施形態における多層基板の製造方法によると、積層体50の側面側からも積層体50に熱プレス板20a,20bの熱を伝達することができるので、加熱時間を短縮することができる。すなわち多層基板の製造時間を短縮することができる。
また、真空引きせずに多層基板を製造する場合には、積層体50の側面に配置された補助板30により、積層体50からの放熱が抑制されるので、それによっても加熱時間が短縮される。
また、本実施形態に示すように、複数の積層体50を一括で熱プレスする場合、熱プレス板20a,20bの熱が、熱プレス板20a,20bから遠い位置にある積層体50にも側面側から伝達されるので、複数配置した積層体50間における温度差(温度むら)を低減することができる。すなわち、一括で複数の多層基板を製造するのに適しており、製造される多層基板の品質を安定させることができる。
尚、本実施形態において、補助板30の端面と熱プレス板20a,20bとの間に第1の緩衝材40が配置される例を示した。しかしながら、図2に示すように、補助板30が積層方向に分割してなる場合には、補助板30間に第1の緩衝材40を配置しても良い。尚、図2は、本実施形態の変形例を示す断面図であり、図1に対応している。この場合も、熱プレス板20a,20bからの圧力を受けて、第1の緩衝材40が補助板30間において変形し、補助板30と広い接触面積をもって接する(補助板30間の隙間を埋める)。従って、熱プレス板20a,20bからの熱が、補助板30及び第1の緩衝材40を介して、側面側からも積層体50に効率良く伝達される。尚、補助板30間とともに、補助板30の端面と熱プレス板20a,20bとの間にも、第1の緩衝材40を配置しても良い。
また、本実施形態において、補助板30と第1の緩衝材40とが独立して別個に設けられる例を示した。しかしながら、図3に示すように、第1の緩衝材40が補助板30と一体に設けられても良い。例えば、補助板30を、熱プレス板20a,20bからの圧力を受けた際に変形可能な材料をもって、且つ、第1の緩衝材40の配置位置まで伸延して形成すれば良い。そのような材料としては、例えば、ステンレス等の金属を繊維状に加工し、その繊維状金属を不織布として板状に形成したものや、織布としてニット、クロスとしたもの(例えばナスロン(登録商標))を用いることができる。この場合、部品点数を削減することができるだけでなく、第1の緩衝材40が補助板30の一部となっている分、補助板30の長さ(積層方向)調整が容易となる。尚、図3は、本実施形態の変形例を示す断面図であり、図1に対応している。
また、本実施形態において、第1の緩衝材40と第3の緩衝材60とが独立して設けられる例を示した。しかしながら、図4に示すように、第3の緩衝材60が第1の緩衝材40と一体に設けられても良い。第3の緩衝材60の内、積層体50と熱プレス板20a,20bとの間に配置される第3の緩衝材60のみを、例えば熱伝導性に優れる材料をもって、且つ、第1の緩衝材40の配置位置まで伸延して設ければ良い。そのような材料としては、例えば、ステンレス等の金属を繊維状に加工し、その繊維状金属を不織布として板状に形成したものや、織布としてニット、クロスとしたもの(例えばナスロン(登録商標))を用いることができる。この場合、部品点数を削減することができる。尚、図4は、本実施形態の変形例を示す断面図であり、図1に対応している。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図5に基づいて説明する。図5は、本実施形態における加熱・加圧時の熱プレス機10の概略構成を示す断面図である。尚、図5は、図1に対応している。
第2の実施の形態における多層基板の製造方法及び当該方法を用いて多層基板を製造する熱プレス機10は、第1の実施の形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
第2の実施の形態において、第1の実施の形態と異なる点は、熱プレス機10が第2の緩衝材を備える点である。
図5に示すように、本実施形態において、熱プレス機10は第2の緩衝材80を備え、補助板30と積層体50との間に当該第2の緩衝材80を配置した状態で、加熱・加圧がなされる。
第2の緩衝材80は、熱伝導性に優れるとともに、積層体50側面の凹凸に合わせて変形可能な材料を用いて形成されている。このような材料としては、例えば第1の緩衝材40と同様、金属を繊維状に裁断し、その繊維状金属を不織布として板状に形成したものや、織布としてニット、クロスとしたもの(例えばナスロン(登録商標))を用いることができる。また、第2の緩衝材80の形状は特に限定されるものではないが、本実施形態においては、補助板30同様、積層体50の側面に沿って環状に設けられており、積層方向における長さは、補助板30と略同等の長さを有している。
そして、加熱・加圧工程において、この第2の緩衝材80を積層体50の側面に配置し、その状態で補助板30を配置する。通常、積層時の位置ずれや寸法誤差等により、積層体50の側面は凹凸状となっている。従って、第1の実施形態で示したように、補助板30を積層体50の側面に配置しても、補助板30と積層体50の側面との間には部分的な隙間が生じる。しかしながら、本実施の形態においては、補助板30を第2の緩衝材80に接するように配置するとともに、第2の緩衝材80が補助板30と積層体50の側面との間で積層体50の表面凹凸に合わせて変形する。従って、補助板30が配置された状態で、第2の緩衝材80は、補助板30及び積層体50側面と広い接触面積をもって接することとなる。このように、熱伝導性に優れるとともに、積層体50の側面凹凸に合わせて変形可能な第2の緩衝材80を、補助板30と積層体50の側面との間に配置することにより、補助板30から積層体50側面への伝熱経路が増すので、加熱時間(製造時間)をより短縮することができる。
尚、本実施形態において、第1の緩衝材40と第2の緩衝材80とは独立して別個に配置される例を示した。しかしながら、図6に示すように、第2の緩衝材80は第1の緩衝材40と一体に設けられても良い。尚、図6は、本実施形態の変形例を示す断面図であり、図1に対応している。例えば、第2の緩衝材80を、熱プレス板20a,20bからの圧力を受けて変形可能な材料を用い、図6に示すように第1の緩衝材40の配置位置まで伸延して設ければ良い。この場合、第2の緩衝材80は、補助板30と積層体50との間に配置されるとともに、補助板30の端面と熱プレス板20a,20bとの間にも回り込んで配置される。そのような材料としては、例えば、金属を繊維状に加工し、その繊維状金属を不織布として板状に形成したものや、織布としてニット、クロスとしたもの(例えばナスロン(登録商標))を用いることができる。この場合、部品点数を削減することができる。尚、図6に示す第2の緩衝材80は、補助板30の周囲を全て覆うように(補助板30を包みこむように)設けられても良い。例えばテープ状の第2の緩衝材80を補助板30に巻きつけることにより補助板30の全周囲を覆うことができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図7に基づいて説明する。図7は、本実施形態における熱プレス機10の概略構成を示す断面図である。尚、図7は、図1に対応している。
第3の実施の形態における多層基板の製造方法及び当該方法を用いて多層基板を製造する熱プレス機10は、第1の実施の形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
第3の実施の形態において、第1の実施の形態と異なる点は、補助板30が加熱手段を有する点である。
本実施形態における熱プレス機10は、図7に示すように、補助板30に加熱手段90を備えている。そして、当該加熱手段90により、自らの熱で側面側から積層体50を加熱する。
加熱手段90としては、熱を生じるものであれば特に限定されるものではない。補助板30自体を通電することにより発熱させても良いし、ヒータ等を設置しても良い。また、補助板30の内部に流体を通し、当該流体を熱することで発熱させても良い。本実施形態においては、加熱手段90として、熱プレス板20a,20bと連動して加熱を行うヒータを有するものとする。
従って、補助板30は加熱手段90を有するので、熱プレス板20a,20bの熱を積層体50に伝達するだけでなく、自らが発熱して積層体50を加熱することができる。この場合、側面から積層体50に伝達される熱量が増加するので、さらに加熱時間(製造時間)を短縮することができる。
尚、図7において、加熱手段90が補助板30の中央付近に設けられる例を示したが、加熱手段90の形成位置は特に限定されるものではない。しかしながら、熱プレス板20a,20b間に配置される積層体50の数が増すほど、補助板30を有していても熱プレス板20a,20bから遠い位置にある積層体50に熱が伝達される時間が増加するので、図6に示すように、熱プレス板20a,20bから遠い部位に加熱手段90を形成すると加熱時間短縮に対して効果的である。
以上本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、種々変更して実施する事ができる。
本実施形態において、熱プレス機10は、一対の熱プレス板20a,20bを備える例を示した。しかしながら、熱プレス機10は複数の熱プレス板を備えれば良いので、一対に限定されるものではない。
また、本実施形態において、積層体50間及び積層体50と熱プレス板20a,20b間に全て同一の第3の緩衝材60を配置する例を示した。しかしながら、第3の緩衝材60は、積層体50と熱プレス板20a,20b間のみに配置されても良い。また、その場合、積層体50間には第3の緩衝材60とは異なる緩衝効果を有する材料を配置しても良い。また、積層体50間及び積層体50と熱プレス板20a,20b間に必ずしも第3の緩衝材60を配置する必要はなく、第3の緩衝材60の配置有無にかかわらず、ポリイミド等からなる離型シートや、SUS等からなる鏡面板等を積層体50間及び積層体50と熱プレス板20a、20b間に配置してもよい。
また、本実施の形態において、第1の緩衝材40と第2の緩衝材80、第1の緩衝材40と第3の緩衝材60が一体に設けられる例を示した。しかしながら、図8に示すように、第1の緩衝材40、第2の緩衝材80、及び第3の緩衝材60が一体に設けられても良い。尚、図8はその他の変形例を示す断面図であり、図1に対応している。例えば、第1の緩衝材40が1枚の大きな金属繊維からなり、積層体50の上面から側面を包むように配置された状態で、第1の緩衝材40の周縁部が、例えば図8に示すように、熱プレス板20bと補助板30との間に配置されれば、第1の緩衝材40が第2の緩衝材80と第3の緩衝材60も兼ねることができる。この場合、部品点数をより削減することができる。
本発明の第1の実施形態における加熱・加圧時の熱プレス機の概略構成を示す断面図である。 第1の実施形態の変形例を示す断面図である。 第1の実施形態の変形例を示す断面図である。 第1の実施形態の変形例を示す断面図である。 第2の実施形態における加熱・加圧時の熱プレス機の概略構成を示す断面図である。 第2の実施形態の変形例を示す断面図である。 第3の実施形態における加熱・加圧時の熱プレス機の概略構成を示す断面図である。 その他の変形例を示す断面図である。
符号の説明
10・・・熱プレス機
20a,20b・・・熱プレス板
30・・・補助板
40・・・第1の緩衝材
50・・・積層体
60・・・第3の緩衝材
80・・・第2の緩衝材
90・・・加熱手段

Claims (19)

  1. 絶縁層と導体層とを積層して積層体を形成する積層工程と、前記積層体を熱プレス板間に配置し、当該熱プレス板により前記積層体を上下両面から加熱・加圧する加熱・加圧工程とを備える多層基板の製造方法であって、
    前記加熱・加圧工程において、前記積層体の側面側に、前記熱プレス板による前記積層体への加圧を妨げない長さを有する補助板を配置させるとともに、前記補助板の端面と前記熱プレス板との間に、前記熱プレス板からの圧力を受けて変形可能な第1の緩衝材を配置させた状態で加熱・加圧、前記熱プレス板の熱前記補助板及び前記第1の緩衝材を介して前記積層体の側面に伝達するようにしたことを特徴とする多層基板の製造方法。
  2. 絶縁層と導体層とを積層して積層体を形成する積層工程と、前記積層体を熱プレス板間に配置し、当該熱プレス板により前記積層体を上下両面から加熱・加圧する加熱・加圧工程とを備える多層基板の製造方法であって、
    前記加熱・加圧工程において、前記積層体の側面側に、前記熱プレス板による前記積層体への加圧を妨げない長さを有する補助板と、前記熱プレス板からの圧力を受けて変形可能な第1の緩衝材とを配置させるとともに、前記第1の緩衝材と一体に設けられ、前記積層体側面の凹凸に合わせて変形可能な第2の緩衝材を、前記補助板と前記積層体との間に配置させつつ前記補助板の端面と前記熱プレス板との間に回り込んで配置させた状態で、加熱・加圧することを特徴とする多層基板の製造方法。
  3. 絶縁層と導体層とを積層して積層体を形成する積層工程と、前記積層体を熱プレス板間に配置し、当該熱プレス板により前記積層体を上下両面から加熱・加圧する加熱・加圧工程とを備える多層基板の製造方法であって、
    前記絶縁層は樹脂フィルムであり、前記導体層は前記樹脂フィルム表面に設けられた導体パターンであり、
    前記加熱・加圧工程において、前記積層体の側面側に、前記熱プレス板による前記積層体への加圧を妨げない長さを有する補助板と、前記熱プレス板からの圧力を受けて変形可能な第1の緩衝材とを配置させるとともに、前記第1の緩衝材と一体に設けられ、前記積層体表面の凹凸に合わせて変形しつつ前記熱プレス板から前記積層体に加圧力を伝達する第3の緩衝材を、前記積層体表面と前記熱プレス板との間に配置させつつ前記補助板の端面と前記熱プレス板との間にも配置させた状態で、加熱・加圧することを特徴とする多層基板の製造方法。
  4. 前記樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項3に記載の多層基板の製造方法。
  5. 前記第1の緩衝材は、金属繊維からなることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の多層基板の製造方法。
  6. 前記加熱・加圧工程において、前記熱プレス板間に複数の前記積層体が配置されることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の多層基板の製造方法。
  7. 前記補助板は、金属からなることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の多層基板の製造方法。
  8. 前記補助板は、前記積層体の側面に沿って環状に設けられていることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の多層基板の製造方法。
  9. 前記補助板は加熱手段を有し、前記加熱・加圧工程において、自ら前記積層体を加熱することを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の多層基板の製造方法。
  10. 前記第1の緩衝材は、前記補助板と一体に設けられることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項に記載の多層基板の製造方法。
  11. 複数の熱プレス板を備え、当該熱プレス板間に絶縁層と導体層とを積層してなる積層体を配置し、前記積層体の上下両面から前記熱プレス板により加熱・加圧して多層基板を製造する熱プレス機であって、
    前記熱プレス板間であって、前記積層体の側面側に配置され、前記熱プレス板による前記積層体への加圧を妨げない長さを有する補助板と、前記積層体の側面であって前記補助板の端面と前記熱プレス板との間に配置され、前記熱プレス板からの圧力を受けて変形可能な第1の緩衝材とを備えることを特徴とする熱プレス機。
  12. 前記補助板は、金属からなることを特徴とする請求項11に記載の熱プレス機。
  13. 前記補助板は、前記積層体の側面に沿って環状に設けられていることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の熱プレス機。
  14. 前記補助板は加熱手段を有することを特徴とする請求項11〜13いずれか1項に記載の熱プレス機。
  15. 前記第1の緩衝材は、金属繊維からなることを特徴とする請求項11〜14いずれか1項に記載の熱プレス機。
  16. 前記第1の緩衝材は、前記補助板と一体に設けられていることを特徴とする請求項11〜15いずれか1項に記載の熱プレス機。
  17. 前記補助板と前記積層体との間に、前記積層体側面の凹凸に合わせて変形可能な第2の緩衝材を備えることを特徴とする請求項11〜16いずれか1項に記載の熱プレス機。
  18. 前記第2の緩衝材は、金属繊維からなることを特徴とする請求項17に記載の熱プレス機。
  19. 前記第2の緩衝材は、前記第1の緩衝材と一体に設けられていることを特徴とする請求項17又は請求項18に記載の熱プレス機。
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