JP4310820B2 - カルバゾクロムスルホン酸誘導体の製法 - Google Patents
カルバゾクロムスルホン酸誘導体の製法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、止血薬として有用なカルバゾクロムスルホン酸誘導体の新規製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カルバゾクロムスルホン酸誘導体〔式(I)〕
【0003】
【化4】
【0004】
は、止血薬として有用な化合物である〔特公昭32−7781号公報、ファーマシューティカル ブリチン(Pharmaceutical Bulletin)第4巻、第251頁(1956年)。なお、これらの文献では、本化合物の式SO3Naで表される基の置換位置が3位であるとされているが、後に、ジャーナル オブ ヘテロサイクリック ケミストリー(Journal of Heterocyclic Chemistry)第10巻、第1059頁(1973年)において、2位であると訂正された。〕。とりわけ、その3水和物〔式(II)〕
【0005】
【化5】
【0006】
は、日本薬局方に、細血管に作用して血管透過性亢進を抑制し細血管抵抗値を増強することによって止血作用を示す薬物であるとして、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウムという名称で収載されている〔日本薬局方解説書第一部(第13改正)C−948(1996年)〕。
【0007】
化合物(I)およびその水和物は、従来、カルバゾクロムと亜硫酸水素ナトリウムとを、反応加速のため亜硫酸ガス飽和水溶液中で反応させることにより、製していた(上記文献参照)。しかしながら、上記文献に、反応系内に有機酸を混合させて化合物(I)またはその水和物を製する方法については、一切記載がない。
【0008】
また、亜硫酸ガスは毒性が強い有毒ガスであるため、安全性および取り扱いの面からさらに工業的に有利な製法が望まれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、止血薬として有用なカルバゾクロムスルホン酸誘導体を有毒な亜硫酸ガスを用いることなく効率良く製造しうる、工業的に有利な新規製法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、カルバゾクロムスルホン酸誘導体〔式(I)〕
【0011】
【化6】
【0012】
またはその水和物は、カルバゾクロム〔式(III)〕
【0013】
【化7】
【0014】
とナトリウムスルホナト化剤を有機酸触媒の存在下で反応させ、さらに要すれば水和物に変換することにより、製することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
具体的には、適当な溶媒中、有機酸触媒の存在下で、カルバゾクロムとナトリウムスルホナト化剤を反応させ、さらに、要すれば、水和物に変換することにより、カルバゾクロムスルホン酸誘導体(I)またはその水和物を製することができる。
【0016】
本反応の原料であるカルバゾクロムは、無水和物以外に、その水和物を用いてもよい。
【0017】
本反応において用いるナトリウムスルホナト化剤〔ナトリウムスルホナト基(SO3Na基)導入剤〕としては、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムが好ましく、とりわけ、亜硫酸水素ナトリウムが好ましい。亜硫酸水素ナトリウムを用いる場合、その量は、カルバゾクロムに対するモル比が1.4〜2.2であるのが好ましく、とりわけ、1.7〜2.0であるのが好ましい。ピロ亜硫酸ナトリウムを用いる場合、その量は、カルバゾクロムに対するモル比が0.5〜2.1であるのが好ましく、とりわけ、1.1〜1.8であるのが好ましい。
【0018】
有機酸触媒としては、溶媒中で水素イオンを与える有機酸であれば特に限定されず、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、酒石酸、マロン酸等のジカルボン酸;クエン酸、トリカルバリル酸等のトリカルボン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸等の低級アルカンスルホン酸;ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等のアレーンスルホン酸等を好適に用いることができる。また、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸も、有機酸触媒として使用することができる。さらに、アスコルビン酸のように、カルボキシル基やスルホ基を有さずとも水素イオンを与える有機化合物も、有機酸触媒として好適に用いることができる。
【0019】
これらの有機酸の中で、本反応における有機酸触媒として好ましい有機酸としては、アスコルビン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、アスパラギン酸等を挙げることができる。
【0020】
また、本反応は、式(IV)
【0021】
【化8】
【0022】
で示される化合物を反応中間体として経由して進行すると考えられる。化合物(IV)は容易に酸化されるため、本反応においては、このような副反応を抑えるため、還元性を示す有機酸触媒を用いることがより好ましい。
【0023】
そのような還元性を示す有機酸触媒としては、例えば、アスコルビン酸、ギ酸、メルカプト酢酸等を挙げることができる。その中でも、アスコルビン酸、ギ酸をより好適に用いることができ、とりわけ、アスコルビン酸を最も好適に用いることができる。
【0024】
本反応において用いる有機酸触媒の量は、カルバゾクロムに対するモル比が0.05〜0.30、とりわけ0.06〜0.19であるのが好ましく、特に0.08〜0.13であるのがより好ましい。
【0025】
溶媒としては、本反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、水;メタノール、エタノール等の低級アルコール類を挙げることができる。その中でも、とりわけ、水が好ましい。
【0026】
なお、水の存在下で本反応を行うことによって、または、本反応の反応混合物に常法により水を作用させることによって、化合物(I)の水和物を得ることができる。
【0027】
本反応は室温から加熱下で実施することができ、好ましくは、50〜80℃、より好ましくは60〜70℃で実施するのがよい。
【0028】
本反応後、反応混合物を冷却して析出する結晶を濾取することにより、カルバゾクロムスルホン酸誘導体(I)またはその水和物〔化合物(II)等〕が得られる。得られたカルバゾクロムスルホン酸誘導体(I)は、さらに必要であれば、水和物に変換する工程を実施することにより、水和物〔化合物(II)等〕に変換することができる。
【0029】
また、本反応の反応混合物は酸性を示すため、精製や収率の向上に必要であれば、結晶を濾取する前に反応混合物を中和してもよい。中和は、常法により、例えば水酸化ナトリウム等を用いることにより、実施することができる。
【0030】
水和物に変換する工程は、常法により、例えば、化合物(I)またはそれを含む反応混合物を含水溶媒中で慣用の方法によって結晶化させることにより、実施することができる。
【0031】
また、さらに要すれば、得られた結晶は、再結晶化等の常法により、精製することができる。
【0032】
【実施例】
実施例1
純水310mL、カルバゾクロム60.4g、亜硫酸水素ナトリウム46gおよびアスコルビン酸5.49g(アスコルビン酸のカルバゾクロムに対するモル比:0.122)の混合物を、徐々に60〜70℃まで加熱して溶解させた。溶解後さらに5分間加熱し、この反応混合物に、活性炭1gを加え、減圧下濾過し、純水10mLで洗浄し濾過した。濾液を55〜57℃で10分間保温後、25%水酸化ナトリウム17.4gでpH6.5に中和した。その後、濾液を冷却して晶析し、更に10℃で一夜攪拌した。得られた結晶を、濾過後、純水およびアセトンで順次洗浄し、72.45gのカルバゾクロムスルホン酸ナトリウム〔化合物(II)〕を得た〔収率:75%、融点:209℃(分解)〕。
【0033】
実施例2−13
各種有機酸触媒を用いて、実施例1と同様にして、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム〔化合物(II)〕を得た。その結果は表1の通りである。各実施例における、有機酸触媒のカルバゾクロムに対するモル比、用いたナトリウムスルホナト化剤の種類および生成物の収率も、表1に記載する。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、止血薬として有用なカルバゾクロムスルホン酸誘導体(I)またはその水和物を、毒性の強い亜硫酸ガスを用いることなく、安全に効率良く製することができるので、本発明の製法は、工業的に優れた製法である。さらに、本発明の製法においては、還元性を示す有機酸触媒を用いることにより、副反応を抑え、化合物(I)またはその水和物の収率を向上させることができる。
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