JP4309688B2 - 紫外線硬化型インクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線照射により硬化する紫外線硬化型インクが記録媒体に付着されることにより画像形成を行う紫外線硬化型インクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録装置は、軽量、小型化が可能であり記録時の振動、騒音が少ないこと等から、現在では様々な分野で利用されており、印刷対象となる記録媒体についても多様化が進んでいる。従来は、記録媒体として紙が用いられる場合が大部分であったが、近年においては紙以外の記録媒体への応用が図られるようになってきた。そのための記録方式として、紫外線硬化型のインクを用いるインクジェット記録方式が提案されている。
【0003】
紫外線硬化型インクは、紫外線を照射することにより硬化するという性質上、インクジェット記録ヘッドから吐出され記録媒体表面に付着したインクに紫外線を照射することで、記録媒体内部への浸透又は記録媒体上での滲みが発生する前に速やかにインクを硬化させることが可能である。従って、インク受容層を形成することなく紙、布帛、木材等のインク吸収性のある記録媒体はもとより、皮革、ガラス、金属、セラミックス、フィルム等のインク吸収性の無い記録媒体上にも高品質の画像を形成することができるようになる。
【0004】
インクジェット記録ヘッドから吐出されたインクを紫外線照射により硬化させる方法としては、例えば、特許文献1及び特許文献2のような方法が提案されている。特許文献1では、噴射ノズル近傍に紫外線照射手段を備えることにより、用紙表面に噴射されたインクを紫外線照射によって硬化させる点が記載されている。また、特許文献2では、主走査方向に移動可能なキャリッジに副走査方向に印刷ヘッドを配列し、印刷ヘッドを挟んで左右に紫外線ランプを配置した点が記載されている。
【0005】
このように紫外線照射手段を配置する場合、記録媒体上に付着したインクをできるだけ速やかに硬化させ、滲みの少ない高品位の画像を形成するため、インクジェット記録ヘッドにできるだけ近い位置に設置するほうがよい。ところが、紫外線照射手段から照射される紫外線は、紫外線ランプからの直接照射以外に紫外線ランプ内の反射板で反射されて照射されるため、対向する記録媒体表面や記録媒体保持面等で様々な方向に反射して、インクジェット記録ヘッドの吐出口に反射された紫外線が到達するようになる。したがって、紫外線照射手段をインクジェット記録ヘッドに近づけすぎると、インクジェット記録ヘッドの吐出口に紫外線が到達する量を増大させることになり、その結果、吐出口のインクが硬化して目詰まりが発生してしまう。
【0006】
図11は、従来技術における紫外線照射手段を設けた場合のインクジェット記録ヘッド30と紫外線照射手段60a、60bの位置関係を示す図である。
【0007】
インクジェット記録ヘッド30から記録媒体へ吐出された紫外線硬化型インクに対し往路、復路いずれにおいても速やかに紫外線が照射されるよう、インクジェット記録ヘッド30を主走査方向に挟み込むように紫外線照射手段60a、60bが設置されている。照射された紫外線は、図12に示すように紫外線照射手段と対向する記録媒体やプラテン等の保持面で反射され、隣接するインクジェット記録ヘッド表面に到達するようになり、インクジェット記録ヘッド表面に紫外線が常時照射されると回復不可能な目詰まりが発生するおそれがある。
【0008】
そこで、特許文献3では、インクジェット記録ヘッドのノズルプレートが遮光性を有するとともにインク撥水性の共析メッキ層が形成されることで、インクを奥に引き込んで紫外線によるノズル詰まりを防止する点が記載されている。しかしながら、長時間連続して記録動作を行っていると、ノズルプレート表面にインクが残留するようになり、結局反射した紫外線によりインクが硬化し、ノズルが目詰まりするおそれがある。
【0009】
【特許文献1】
特開平2−283452号公報
【特許文献2】
特開2002−292907号公報
【特許文献3】
特開平11−10874号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するとともに、様々な記録媒体に適用可能であって長時間の連続記録に対しても高い信頼性を備えた紫外線硬化型インクジェット記録装置を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る紫外線硬化型インクジェット記録装置は、複数のインク吐出口より紫外線硬化型インクを記録媒体に向かって吐出するインクジェット記録ヘッドと、前記記録媒体に付着したインクに紫外線を照射する紫外線照射手段と、画像信号に応じて前記インク吐出口から選択的にインクを吐出するように前記インクジェット記録ヘッドを駆動制御する駆動制御手段と、記録位置において前記記録媒体を保持する保持手段と、前記インクジェット記録ヘッド及び前記記録媒体を相対的に移動させる移動制御手段とを備えたインクジェット記録装置において、
前記紫外線照射手段は、(式1)を満たすような間隔Lを隔てて前記インクジェット記録ヘッドに隣接して配置されており、間隔L、間隔d 1 及び間隔d 2 の少なくとも1つの間隔を調整するための間隔調整手段が設けられていることを特徴とする。
L≧(d1+d2)tanθ・・・(式1)
但し、
d1:紫外線照射手段の保持手段に対する対向面と保持手段の記録媒体保持面との間隔
d2:インクジェット記録ヘッドの保持手段に対する対向面と前記記録媒体保持面との間隔
θ:前記記録媒体保持面に対する紫外線照射手段の照射範囲においてインクジェット記録ヘッドに最接近する位置での紫外線の入射角
【0012】
さらに、前記紫外線照射手段及び前記インクジェット記録ヘッドの少なくとも一方は、他方の前記対向面から離れるように傾斜して配置されていることを特徴とする。さらに、間隔d1、d2がd1≧d2の関係にあり、かつ間隔d1が1〜20mmであることを特徴とする。さらに、前記移動制御手段は、前記紫外線照射手段及び前記インクジェット記録ヘッドを一体として走査方向に往復移動制御するとともに、前記紫外線照射手段は、前記インクジェット記録ヘッドに対してその走査方向の前方及び後方の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする。さらに、前記移動制御手段は、複数のインク吐出口がライン状に配列されたインクジェット記録ヘッドにおける吐出口の配列方向と直交する方向に前記記録媒体を移動制御するとともに、前記紫外線照射手段は、前記インクジェット記録ヘッドに対して前記記録媒体の移動方向の下流側に配置されていることを特徴とする。
【0013】
上記のような構成を備えることで、インクジェット記録ヘッド及び紫外線照射手段の間隔を(式1)に示すように保持手段の記録媒体保持面からの間隔により規定するので、記録媒体として様々な厚さのものに記録しても記録媒体で反射する紫外線の影響を抑えることができる。すなわち、記録媒体の表面は、記録媒体保持面よりも紫外線照射手段に近い位置に配置されるため、記録媒体表面で反射された紫外線は、記録媒体保持面で反射された紫外線よりも紫外線照射手段寄りに到達することになり、記録媒体保持面で反射される紫外線がインクジェット記録ヘッドに影響を与えないようにできれば様々な厚さの記録媒体に対してもその影響を抑えることができる。また、記録媒体保持面に複数の記録媒体を保持した場合記録媒体の間から記録媒体保持面が露出して紫外線が反射されたり、記録媒体の両端部から外れた位置にインクジェット記録ヘッドが移動した場合に記録媒体保持面で紫外線が反射したりする際にもその影響を抑えることができる。
【0014】
また、記録媒体保持面に対する紫外線照射手段の照射範囲においてインクジェット記録ヘッドに最接近する位置での紫外線の入射角に基づいてインクジェット記録ヘッド及び紫外線照射手段の間隔を規定することで、記録媒体保持面で反射する紫外線のうち最もインクジェット記録ヘッドに影響を与える紫外線の影響を確実に抑えることが可能となる。
【0015】
以上のように、記録媒体表面で反射される紫外線の影響を抑えることができるので、長時間の連続記録を行ってもインクジェット記録ヘッドの吐出口が紫外線により目詰まりを生じることがなくなる。
【0016】
また、紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドの少なくとも一方が、他方の対向面から離れるように傾斜して配置されていることで、紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドの全体の間隔を広げることがなく(式1)で規定する間隔Lを設定することができ、装置のコンパクト化を図ることができる。さらに、紫外線照射手段を傾斜して配置すれば(式1)の入射角θを小さくすることができ、その分紫外線照射手段をインクジェット記録ヘッドに近接した位置に配置することが可能となる。さらに、前記間隔L、前記間隔d1及び前記間隔d2の少なくとも1つの間隔を調整するための間隔調整手段を設けることで、様々な記録媒体に対して適宜間隔を調整して記録媒体表面を反射する紫外線の影響を抑えることができる。
【0017】
また、間隔d1、d2について、d1≧d2とすることが好ましい。d1<d2である場合には、衝突防止のため記録媒体と紫外線照射手段との間隔を優先して設定する必要があるため、その結果、インクジェット記録ヘッドと記録媒体との間隔を広げざるを得ず、記録品位が劣ることとなる。そして、間隔d1は1〜20mmの範囲とすることが好ましい。20mmを超える場合については対向記録媒体で反射される紫外線の照射領域が増大し、インクジェット記録ヘッドと紫外線照射手段との間隔を広げざるを得ず、その結果、効果的にインクを硬化させることができなくなってしまうためである。また、1mm未満では、紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドが、記録媒体に衝突する危険性が大きくなるためである。
【0018】
さらに、紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドを一体として走査方向に往復移動する場合に、紫外線照射手段をインクジェット記録ヘッドに対してその走査方向の前方及び後方の少なくとも一方に配置することで、記録媒体に付着したインクを速やかに硬化することができる。また、複数のインク吐出口がライン状に配列されたインクジェット記録ヘッドにおける吐出口の配列方向と直交する方向に記録媒体を移動する場合に、紫外線照射手段をインクジェット記録ヘッドに対して記録媒体の移動方向の下流側に配置することで、同様に記録媒体に付着したインクを速やかに硬化することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は、本発明の第一実施形態を示す紫外線硬化型インクジェット記録装置の全体斜視図である。記録媒体保持手段70は、記録媒体8を支持する無縁端ベルトからなり、搬送ロール71により回転駆動される。搬送ロール71により記録媒体8は、副走査方向Yに搬送され、搬送される記録媒体8にはインクジェット記録ヘッド30により紫外線硬化型インクが付着される。そして、記録媒体8に付着された紫外線硬化型インクは紫外線照射手段60a、60bにより紫外線が照射されて硬化される。
【0021】
インクジェット記録ヘッド30は、ガイドレール43によって支持されたキャリッジ40上に位置決め固定されており、キャリッジ40はキャリッジモーター41の駆動によりタイミングベルト42を介して記録媒体8上を主走査方向(横切る方向X1、X2)に往復移動するようになっている。画像信号に応答して、キャリッジ40を主走査方向X1、X2へ移動するとともに、図示されない外部駆動制御手段から駆動信号がフレキシブルケーブル5を介してインクジェット記録ヘッド30に入力されて紫外線硬化型インクが記録媒体8表面に向けて吐出される。紫外線照射手段60a、60bにより記録媒体8表面に付着したインクへ紫外線が照射され、走査ライン毎に記録媒体8を副走査方向Yへ搬送するように移動制御する。以上の動作を順次繰り返すことにより、記録媒体8に対し画像形成することができる。紫外線照射手段60a、60bは、記録領域外の記録媒体の存在しない位置に移動する場合もあるため、その際に記録媒体保持面から反射する紫外線の影響を受けないようにする必要がある。
【0022】
紫外線照射手段60a、60bは、往路X1、復路X2いずれの場合においてもインクジェット記録ヘッド30から吐出された紫外線硬化型インクが記録媒体8上に付着した直後、直ちに紫外線が照射されるようにインクジェット記録ヘッド30を主走査方向に挟む形でキャリッジ40上に固定されている。インクジェット記録ヘッド30より吐出された紫外硬化型インクは、往路X1においては紫外線照射手段60aに、復路X2においては紫外線照射手段60bによる紫外線の照射で速やかに硬化され、滲みのない画像が記録媒体8上に形成される。
【0023】
図2は、キャリッジ40上に設置された紫外線照射手段60a、60bとインクジェット記録ヘッド30を副走査方向Yから見た図である。紫外線照射手段60a、60bは、図2に示すように、石英ガラスを配置した照射開口部63を有する箱状の照射ユニット筐体64内部に、紫外線ランプ61、熱線を透過し紫外線を反射するコールドミラーで構成された反射鏡62、照射ユニット筐体64内部に外部から冷却風を取り入れる吸気口65を有する。吸気口65からの冷却風は図示しない送風ファンにより照射ユニット筐体64内部に送られ、図示しない排気口から照射ユニット筐体64外部へ排気される。排気口から放出される気流の向きは、インクジェット記録ヘッドの吐出に悪影響を及ぼさないようにインクジェット記録ヘッドが設置されていない方向に設定される。
【0024】
本構成例においては、照射ユニット筐体自体をインクジェット記録ヘッド同様キャリッジに搭載するようにしたが、紫外線導光路として光ファイバーケーブルを用いてもよい。柔軟で可撓性を有する光ファイバーケーブルを介しインクジェット記録ヘッド30近傍まで紫外線を導くことができれば、紫外線照射ユニット自体をキャリッジ40に設置する必要がなくなり、キャリッジ40の小型、軽量化が可能となる。紫外線ランプ61に用いられる光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンフラッシュランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、ディープUVランプ、UVレーザー等が挙げられるが、使用されるインクを瞬時に硬化できるものであれば任意で使用することが可能である。但し、紫外線照射手段による紫外線の照射範囲は少なくとも一回の走査でインクジェット記録ヘッド30の記録領域以上の幅を有する必要がある。
【0025】
図3は、インクジェット記録ヘッド30と紫外線照射手段60a、60bの位置関係を示す図である。
【0026】
紫外線照射手段60a、60bと隣接するインクジェット記録ヘッド30との間隔Lは、L≧(d1+d2)tanθとなる条件を満たすよう設定する必要がある。
ここで、
d1:記録媒体保持手段70の記録媒体保持面と紫外線照射手段60a、60bの照射開口部の対向面との間隔、
d2:記録媒体保持手段70の記録媒体保持面とインクジェット記録ヘッド30の対向面との間隔、
θ:記録媒体保持面に対する紫外線照射手段の照射範囲においてインクジェット記録ヘッドに最接近する位置での紫外線の入射角
である。
【0027】
具体的には、インクジェット記録ヘッド30に隣接する紫外線照射手段60の照射開口部の内周面から記録媒体保持面へ下ろした垂線と記録媒体保持面に対する紫外線照射手段の照射範囲においてインクジェット記録ヘッドに最接近する位置との距離をW1、その最接近位置と記録媒体保持面で反射される紫外線が記録媒体保持手段からd2離れた位置への到達地点から記録媒体保持面へ下ろした垂線との距離をW2とした場合、最接近位置における入射角θの紫外線は、紫外線照射手段の照射開口部の内周面からW1=d1tanθとなる位置に到達した後、反射角θで反射されるためW2=d2tanθとなる位置に到達することになる。
【0028】
すなわち、記録媒体保持面で反射される紫外線がインクジェット記録ヘッド表面に到達することを防止するためには、インクジェット記録ヘッド30と紫外線照射手段60a、60bとの間隔Lを、
W1+W2=d1tanθ+d2tanθ=(d1+d2)tanθ
以上に設定する必要がある。このような条件であれば、例え記録媒体表面が鏡面である様な金属であっても、記録媒体表面から反射される紫外線がインクジェット記録ヘッド30のヘッドプレート10表面に到達することがなく、インク吐出口及びその周辺部でのインク増粘、インク硬化に起因する吐出不良の発生を抑制することが可能となり、高い連続吐出安定性を得ることができる。また、記録媒体が存在しない位置に紫外線照射手段60a、60bが移動して記録媒体保持面で紫外線が反射される場合にも同様である。
【0029】
この際、d1とd2の関係は、d1≧d2であるのが好ましい。記録媒体上に鮮明な画像形成を行うためには、記録媒体とインクジェット記録ヘッドとの間隔が出来るだけ小さい方が望ましいが、d1<d2である場合には、衝突防止のため記録媒体と紫外線照射手段との間隔を優先して設定する必要があるため、その結果、インクジェット記録ヘッドと記録媒体との間隔を広げざるを得ず、記録品位が劣ることとなる。さらに、間隔d1は1〜20mmの範囲であるのが好ましい。20mmを超える場合については対向記録媒体で反射される紫外線の照射領域が増大し、インクジェット記録ヘッドと紫外線照射手段との間隔を広げざるを得ず、その結果、効果的にインクを硬化させることができなくなってしまうためである。また、1mm未満では、紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドが、記録媒体に衝突する危険性が大きくなるためである。
【0030】
また、間隔Lについても、5〜150mmの範囲にすることが好ましく、より好ましくは10〜60mmの範囲がよい。5mm未満ではインクジェット記録ヘッドに紫外線照射手段において乱反射した紫外線の影響を受けやすくなる。すなわち、間隔Lが大きい場合には乱反射された紫外線の影響はほとんどなくインクジェット記録ヘッドに目詰まりが生じることはないが、インクジェット記録ヘッドを紫外線照射手段に近づけすぎると、紫外線照射手段での乱反射の影響がでてきてしまう。また、150mmを超えると記録媒体にインクが付着してから紫外線による硬化が行われるまで時間がかかり、布帛等を記録媒体として用いた場合にはインクの滲みが拡がってしまう。
【0031】
間隔Lを調整する場合には、例えば、紫外線照射手段を、キャリッジ40の走査方向に平行に設置されるガイドレール上を移動可能な図示しない支持キャリッジ上に設置する。また支持キャリッジには雌ねじ部が一体となるよう設置されており、キャリッジ40の走査方向に平行に配置されたリードスクリューがこの雌ねじ部に螺合されている。ジョイント部を介しモーターの出力軸に連結されたこのリードスクリューの回転方向及び回転量を制御することによりリードスクリューのネジ送り分だけ紫外線照射手段を支持する支持キャリッジを主走査方向にスライドすることが可能となる。その結果、インクジェット記録ヘッドと紫外線照射手段との間隔Lが制御される。
【0032】
間隔d1及びd2を調整する場合には、例えばインクジェット記録ヘッドと紫外線照射手段を支持するキャリッジ40を記録媒体保持表面に対し垂直方向に移動可能にすればよく、上述したガイドレールを走査方向に垂直に設置してリードスクリューによりキャリッジ40全体を上下動して調整すればよい。これによりdを可変することができる。
【0033】
なお、以上の間隔調整機構の例は、一例にすぎずこれに限定されるものではない。
【0034】
図4は、図2の変形例を示すものであり、図2と同一機能を示す部分については同一符号で示し、重複する部分については説明を省略する。図2との相違点は、紫外線照射手段60a、60bが、主走査方向の前方または後方に傾斜して設置されている点である。インクジェット記録ヘッド30の中心軸を記録媒体保持手段への垂線に対し平行に、紫外線照射手段60a、60bの中心軸を記録媒体保持手段への垂線に対しインクジェット記録ヘッド30から離れる方向にそれぞれ傾斜させてキャリッジ40に設置されている。キャリッジ40には、各紫外線照射手段に対応して軸支部が立設されており、各紫外線照射手段を軸支部にネジ等で固定すれば、所定の傾斜角で紫外線照射手段を固定することができ、また傾斜角を簡単に調整することができる。また、間隔d1、d2についてもキャリッジ40全体を記録媒体保持表面に対し垂直方向に移動して調整する手段を設けるとともに、紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドを個別に上下動させて微調整する手段を設ければ、記録媒体に合せて適宜調整することが可能となる。
【0035】
この場合紫外線照射手段60a、60bの傾斜角は、中心軸を記録媒体保持手段への垂線に対し1〜30度の範囲に設定するのが好ましい。この構成によれば、紫外線照射手段の中心軸が記録媒体保持手段への垂線に対し平行な場合と比較して、記録媒体保持面への紫外線入射角θが小さくなり、上述した間隔Lを短くすることができるためである(図5参照)。従って、インクジェット記録ヘッド30と紫外線照射手段60a、60bとの間隔Lを狭めて装置の小型化をさらに図ることが可能となる。そして、インクジェット記録ヘッド30から吐出され記録媒体8上に付着した紫外線硬化型インクに対し紫外線が照射されるまでの時間を短縮でき、紫外線硬化型インクの滲み発生を抑制できる。
【0036】
図6は、記録媒体保持面への垂線に対し、インクジェット記録ヘッド30及び紫外線照射手段60a、60bの中心軸が主走査方向に傾斜するようにキャリッジ40上にそれぞれを搭載したものである。例えば、2組のインクジェット記録ヘッド30、31は、インク配列が左右対称になるよう配置されており、往路X1においてはインクジェット記録ヘッド31による画像形成と紫外線照射手段60aによる紫外線照射を、復路X2においてはインクジェット記録ヘッド30による画像形成と紫外線照射手段60bによる紫外線照射を行う。往路、復路において同じ配列のインクジェット記録ヘッドが順番に駆動されように設定すれば、カラーインクを常に同じ順序で付着できるため、順序が異なることによる横縞の発生を防止することができる。
【0037】
また、インクジェット記録ヘッド30、31は、それぞれ往路、復路のいずれかの単方向の記録となるため、各インクジェット記録ヘッドから吐出される紫外線硬化型インクが記録媒体8に対し垂直な方向よりも主走査方向X1、X2の上流側にそれぞれ吐出される様にその中心軸を記録媒体保持手段への垂線に対し傾斜するよう搭載されている。
【0038】
この場合のインクジェット記録ヘッド30、31及び紫外線照射手段60a、60bの傾斜角は、図4と同様に、中心軸を記録媒体保持手段への垂線に対し1〜30度の範囲に設定するのが好ましい。
【0039】
また、インクジェット記録ヘッドの傾斜角度をキャリッジ40の移動速度に応じ設定すると、インクジェット記録ヘッドから吐出された紫外線硬化型インクが見かけ上記録媒体8に垂直に到達し、記録媒体8上にメインドットとサテライトとの飛翔速度差に起因する画像劣化のないシャープな画像形成を行うことができる。
【0040】
そして、キャリッジ40の主走査方向の往復移動速度が大きく設定でき、生産性向上を図ることも可能となる。
【0041】
図7は、1つの紫外線照射手段60aを主走査方向に挟む形でインクジェット記録ヘッド30、31を取り付けたものである。この構成においては、往路X1ではインクジェット記録ヘッドによりインクを吐出して紫外線照射手段60aで紫外線を照射して硬化し、復路X2ではインクジェット記録ヘッド31によりインクを吐出して紫外線照射手段60aで紫外線を照射して硬化する。いずれの場合においてもインクジェット記録ヘッド30、31から記録媒体8上に吐出された紫外線硬化型インクに対し、速やかに紫外線を照射することができ、装置のコンパクト化が図れるとともに部品点数削減によるコストダウンが期待できる。
【0042】
図8は、第二実施形態を示す紫外線硬化型インクジェット記録装置の全体斜視である。先に説明した第一実施形態と同一機能を示す部分については同一符号で示し、重複する部分については説明を省略する。
【0043】
この例では、インクジェット記録ヘッド32は、記録媒体8の搬送方向Yに対して交差する画像形成領域の全幅にわたってインク吐出口が複数形成されたラインヘッド(フルライン型インクジェット記録ヘッド)であり、紫外線硬化型インクを記録媒体8に対して吐出可能なインク吐出口を複数有するヘッドプレート12と前記ヘッドプレートと接続され各色毎に独立したインク収容部を有するインクタンク22とにより構成されており、記録媒体搬送方向に所定間隔で配列するように図示されないヘッド固定部に交換可能な状態で取り付けられている。
【0044】
紫外線照射手段60cは、インクジェット記録ヘッド32から吐出された紫外線硬化型インクが記録媒体8上に付着した後、直ちに紫外線が照射できるように記録媒体8の搬送方向Yの下流側に設置されている。紫外線照射手段60cの紫外線照射範囲は、インクジェット記録ヘッド32の吐出口の配列方向における記録領域の両端からさらに長く設定されており、紫外線照射範囲の搬送方向の長さは、搬送速度に応じ記録媒体8上に付着したインクが紫外線照射範囲を通過する間に十分硬化するように設定されている。
【0045】
記録媒体8を搬送方向Yへ連続して搬送し、画像信号に応答してインクジェット記録ヘッド32を駆動制御しインクを吐出して、紫外線照射手段60cによる記録媒体8表面への紫外線照射し、記録媒体8に画像形成を行う。
【0046】
図9は、紫外線照射手段60cとインクジェット記録ヘッド32との配置状態を吐出口の配列方向から見た図である。記録媒体保持面への垂線に対し、インクジェット記録ヘッド32の中心軸が記録媒体搬送方向上流側に、紫外線照射手段60cの中心軸が記録媒体搬送方向下流側に傾斜するように配置されている。紫外線照射手段60cとインクジェット記録ヘッド32とを傾斜配置するためには、例えば装置本体にそれぞれに対応して軸支部を設け、軸支部にネジ等で固定すれば、所定の傾斜角で紫外線照射手段を固定することができ、また傾斜角を簡単に調整することができる。
【0047】
図10は、図9のインクジェット記録ヘッド32と紫外線照射手段60cの位置関係を示す図である。本構成においては、インクジェット記録ヘッド32の中心軸を記録媒体保持面への垂線に対し傾斜するよう配置されているため、インクジェット記録ヘッド32から吐出されるインクが記録媒体8に対し垂直な方向よりも記録媒体搬送方向上流側に吐出され、記録媒体8上にメインドットとサテライトとの飛翔速度差に起因する画像劣化のないシャープな画像形成を行うことが可能となる。この場合、傾斜角度を記録媒体8の連続搬送速度に応じ設定することが好ましい。これにより記録媒体8の連続搬送速度を速くすることが可能となり、生産性を向上させることができる。また、インクジェット記録ヘッド32から吐出され記録媒体8上に付着したインクに対し紫外線が照射されるまでの時間を短縮することが可能となるため、記録媒体8に付着したインクの滲み発生を抑制することができる。なお、インクジェット記録ヘッド32及び紫外線照射手段60cの傾斜角は、第一実施形態と同様に記録媒体保持面への垂線に対し1〜30度の範囲であることが好ましい。
【0048】
本発明に使用可能な記録媒体としては、インク受容層が形成されていない紙、布帛、木材等のインク吸収性のある記録媒体はもとより、皮革、ガラス、金属、セラミックス、フィルム等のインク吸収性の無い記録媒体にも使用することができる。また、表面が毛羽立った媒体や凹凸のある媒体についてもヘッドと媒体の間隔を大きくとることで記録可能である。
【0049】
図1に記載のインクジェット記録装置を用いて、L=50mm、d1=10mm、d2=6mmに設定してポリエステル繊維からなる糸により織成した布帛(厚さ2.5mm)にカラー画像を記録した。240時間連続記録動作を行ったが、インクジェット記録ヘッドに紫外線硬化による目詰まりを生じることはなかった。
【0050】
【発明の効果】
以上の構成により、インクジェット記録ヘッド及び紫外線照射手段の間隔を(式1)に示すように保持手段の記録媒体保持面からの間隔により規定するので、記録媒体として様々な厚さのものに記録しても記録媒体で反射する紫外線の影響を抑えることができる。すなわち、記録媒体の表面は、記録媒体保持面よりも紫外線照射手段に近い位置に配置されるため、記録媒体表面で反射された紫外線は、記録媒体保持面で反射された紫外線よりも紫外線照射手段寄りに到達することになり、記録媒体保持面で反射される紫外線がインクジェット記録ヘッドに影響を与えないようにできれば様々な厚さの記録媒体に対してもその影響を抑えることができる。また、記録媒体保持面に複数の記録媒体を保持した場合記録媒体の間から記録媒体保持面が露出して紫外線が反射されたり、記録媒体の両端部から外れた位置にインクジェット記録ヘッドが移動した場合に記録媒体保持面で紫外線が反射したりする際にもその影響を抑えることができる。
【0051】
また、記録媒体保持面に対する紫外線照射手段の照射範囲においてインクジェット記録ヘッドに最接近する位置での紫外線の入射角に基づいてインクジェット記録ヘッド及び紫外線照射手段の間隔を規定することで、記録媒体保持面で反射する紫外線のうち最もインクジェット記録ヘッドに影響を与える紫外線の影響を確実に抑えることが可能となる。
【0052】
以上のように、記録媒体表面で反射される紫外線の影響を抑えることができるので、長時間の連続記録を行ってもインクジェット記録ヘッドの吐出口が紫外線により目詰まりを生じることがなくなる。
【0053】
また、紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドの少なくとも一方が、他方の対向面から離れるように傾斜して配置されていることで、紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドの全体の間隔を広げることがなく(式1)で規定する間隔Lを設定することができ、装置のコンパクト化を図ることができる。さらに、紫外線照射手段を傾斜して配置すれば(式1)の入射角θを小さくすることができ、その分紫外線照射手段をインクジェット記録ヘッドに近接した位置に配置することが可能となる。さらに、前記間隔L、前記間隔d1及び前記間隔d2の少なくとも1つの間隔を調整するための間隔調整手段を設けることで、様々な記録媒体に対して適宜間隔を調整して記録媒体表面を反射する紫外線の影響を抑えることができる。
【0054】
また、間隔d1、d2について、d1≧d2とすることが好ましい。d1<d2である場合には、衝突防止のため記録媒体と紫外線照射手段との間隔を優先して設定する必要があるため、その結果、インクジェット記録ヘッドと記録媒体との間隔を広げざるを得ず、記録品位が劣ることとなる。そして、間隔d1は1〜20mmの範囲とすることが好ましい。20mmを超える場合については対向記録媒体で反射される紫外線の照射領域が増大し、インクジェット記録ヘッドと紫外線照射手段との間隔を広げざるを得ず、その結果、効果的にインクを硬化させることができなくなってしまうためである。また、1mm未満では、紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドが、記録媒体に衝突する危険性が大きくなるためである。
【0055】
さらに、紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドを一体として走査方向に往復移動する場合に、紫外線照射手段をインクジェット記録ヘッドに対してその走査方向の前方及び後方の少なくとも一方に配置することで、記録媒体に付着したインクを速やかに硬化することができる。また、複数のインク吐出口がライン状に配列されたインクジェット記録ヘッドにおける吐出口の配列方向と直交する方向に記録媒体を移動する場合に、紫外線照射手段をインクジェット記録ヘッドに対して記録媒体の移動方向の下流側に配置することで、同様に記録媒体に付着したインクを速やかに硬化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態に関する概略斜視図である。
【図2】紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドの構成例を副走査方向から見た図である。
【図3】図2における紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドの間隔に関する説明図である。
【図4】紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドの別の構成例を副走査方向から見た図である。
【図5】図4における紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドの間隔に関する説明図である。
【図6】紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドの別の構成例を副走査方向から見た図である。
【図7】紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドの別の構成例を副走査方向から見た図である。
【図8】本発明の第二実施形態に関するの概略斜視図である。
【図9】紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドの構成例を記録媒体搬送方向から見た図である。
【図10】図9における紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドの間隔に関する説明図である。
【図11】従来の紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドの構成例を副走査方向から見た図である。
【図12】従来の紫外線照射手段及びインクジェット記録ヘッドの記録動作を説明する図である。
【符号の説明】
10 ヘッドプレート
11 ヘッドプレート
12 ヘッドプレート
20 インクタンク
21 インクタンク
22 インクタンク
30 インクジェット記録ヘッド
31 インクジェット記録ヘッド
32 インクジェット記録ヘッド
40 キャリッジ
41 キャリッジモーター
42 タイミングベルト
5 フラットケーブル
60a 紫外線照射手段
60b 紫外線照射手段
70 記録媒体保持手段
71 搬送ロール
8 記録媒体
Claims (5)
- 複数のインク吐出口より紫外線硬化型インクを記録媒体に向かって吐出するインクジェット記録ヘッドと、前記記録媒体に付着したインクに紫外線を照射する紫外線照射手段と、画像信号に応じて前記インク吐出口から選択的にインクを吐出するように前記インクジェット記録ヘッドを駆動制御する駆動制御手段と、記録位置において前記記録媒体を保持する保持手段と、前記インクジェット記録ヘッド及び前記記録媒体を相対的に移動させる移動制御手段とを備えたインクジェット記録装置において、
前記紫外線照射手段は、(式1)を満たすような間隔Lを隔てて前記インクジェット記録ヘッドに隣接して配置されており、間隔L、間隔d 1 及び間隔d 2 の少なくとも1つの間隔を調整するための間隔調整手段が設けられていることを特徴とする紫外線硬化型インクジェット記録装置。
L≧(d1+d2)tanθ・・・(式1)
但し、
d1:紫外線照射手段の保持手段に対する対向面と保持手段の記録媒体保持面との間隔
d2:インクジェット記録ヘッドの保持手段に対する対向面と前記記録媒体保持面との間隔
θ:前記記録媒体保持面に対する紫外線照射手段の照射範囲においてインクジェット記録ヘッドに最接近する位置での紫外線の入射角 - 前記紫外線照射手段及び前記インクジェット記録ヘッドの少なくとも一方は、他方の前記対向面から離れるように傾斜して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化型インクジェット記録装置。
- 間隔d 1 、d 2 がd 1 ≧d 2 の関係にあり、かつ間隔d 1 が1〜20mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線硬化型インクジェット記録装置。
- 前記移動制御手段は、前記紫外線照射手段及び前記インクジェット記録ヘッドを一体として走査方向に往復移動制御するとともに、前記紫外線照射手段は、前記インクジェット記録ヘッドに対してその走査方向の前方及び後方の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の紫外線硬化型インクジェット記録装置。
- 前記移動制御手段は、複数のインク吐出口がライン状に配列されたインクジェット記録ヘッドにおける吐出口の配列方向と直交する方向に前記記録媒体を移動制御するとともに、前記紫外線照射手段は、前記インクジェット記録ヘッドに対して前記記録媒体の移動方向の下流側に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の紫外線硬化型インクジェット記録装置。
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