以下、図面を参照しながら、本発明に係るインクジェットプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタという。)10の斜視図である。図2は、プリンタ10の正面図であり、後述のフロントカバー13が開いた状態を示す図である。図3はプリンタ10の平面図である。以下の説明において、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいる使用者から見た(ここでは、被印刷物5が搬送される方向から見た)左、右、上、下をそれぞれ意味する。プリンタ10の正面にいる使用者がプリンタ10から離れる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下をそれぞれ表している。図面中の符号Yは主走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。図面中の符号Xは副走査方向を示している。副走査方向Xは主走査方向Yと交差する方向(例えば、平面視において直交する方向)である。本実施形態では、副走査方向Xは前後方向である。なお、ここでは、主走査方向Yが第1方向の一例であり、副走査方向Xが第2方向の一例である。主走査方向Yの左側が第1方向の一方側の一例であり、右側が第1方向の他方側の一例である。ただし、これら方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
本実施形態に係るプリンタ10は、被印刷物5(図2参照)に印刷を行う。プリンタ10は、インクジェット方式のプリンタである。ここで、「インクジェット方式」とは、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式または圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む従来公知の各種の手法によるインクジェット式のことをいう。
被印刷物5は、例えばシート状に形成されている。被印刷物5の素材は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類はもちろんのこと、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合体などの樹脂類、アルミニウムやステンレス鋼などの金属類、陶器、セラミック、ガラス、ゴム、皮革などであってもよい。なお、被印刷物5は、携帯電話ケースなどの各種ケース、電子タバコなどの小型電子機器、キーホルダやフォトフレームなどの部品小物、日用品、アクセサリなどの立体物であってもよい。
図1に示すように、プリンタ10は箱状に形成されている。プリンタ10は、開口11(図2参照)を有するプリンタケース12と、開口11を開閉自在に覆うフロントカバー13とを備えている。フロントカバー13は、その後端を軸にして回転可能なように、プリンタケース12に支持されている。フロントカバー13の後端を軸にしてフロントカバー13が上方に開かれることにより、プリンタケース12の内部空間と外部空間とが連通される。
ここでは、フロントカバー13には窓14が設けられている。窓14は透明の素材で構成されている。そのため、使用者は、フロントカバー13を閉じた状態であっても、窓14を通じてプリンタケース12の内部空間を確認することができる。
図2に示すように、プリンタケース12の内部空間は、仕切り板15によって、印刷エリア16と制御エリア17とに区画されている。印刷エリア16は、仕切り板15の左側に位置する空間であり、被印刷物5に対して印刷が行われる空間である。制御エリア17は、仕切り板15の右側に位置する空間である。制御エリア17には、制御装置30が設けられている。
プリンタ10は、ガイドレール18と、キャリッジ19とを備えている。ガイドレール18は、印刷エリア16の上部に配置されている。ガイドレール18は、プリンタケース12に固定され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール18には、キャリッジ19が摺動自在に係合している。キャリッジ19は、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに往復移動が可能である。
本実施形態では、プリンタ10は、更にキャリッジ移動機構31(図5参照)を備えている。キャリッジ移動機構31は、キャリッジ19を主走査方向Yに移動させる機構である。なお、キャリッジ移動機構31の構成は、特に限定されない。図示は省略するが、本実施形態に係るキャリッジ移動機構31は、ガイドレール18の右端および左端に配置された一対のプーリと、無端状のベルトと、キャリッジモータとを備えている。キャリッジ19は、一対のプーリに巻き掛けられたベルトに固定されている。一方のプーリにはキャリッジモータが連結されている。キャリッジモータは、制御装置30と電気的に接続されており、制御装置30によって制御される。キャリッジモータが駆動するとプーリが回転し、ベルトが走行する。これにより、キャリッジ19がガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動する。
図2に示すように、プリンタ10は、複数のインクヘッド23を備えている。本実施形態では、インクヘッド23の数は3つであるが、インクヘッド23の数は特に限定されない。インクヘッド23は、キャリッジ19に設けられている。
図4は、インクヘッド23の後述するノズル面24を示す図である。図4に示すように、本実施形態では、キャリッジ19は、嵌合面19aを有している。この嵌合面19aは、キャリッジ19の下面を構成しており、嵌合面19aには、インクヘッド23が設けられる。ここでは、嵌合面19aには、3つの嵌合口19bが形成されている。インクヘッド23は、ノズル面24が下方に露出した状態で嵌合口19bに嵌る。
インクヘッド23は、後述のテーブル35の支持面35a(図2参照)に支持された被印刷物5にインクを吐出する。図4に示すように、複数のインクヘッド23は、主走査方向Yに並んでおり、インライン配列で配置されている。なお、以下の説明では、3つのインクヘッド23のうち、左から順に第1インクヘッド23A、第2インクヘッド23B、第3インクヘッド23Cと適宜称することとする。以下の説明において、インクヘッド23と称している場合には、3つのインクヘッド23A、23B、23Cのそれぞれに共通する構成であることを意味する。
インクヘッド23は、ノズル面24を有している。ノズル面24は、インクヘッド23の下面を構成している。本実施形態では、ノズル面24は、キャリッジ19(言い換えると嵌合面19a)から下方に突出するように配置されている。ノズル面24には、複数のノズル25が副走査方向Xに並んで形成されている。ノズル25からインクが吐出される。ここで、副走査方向Xに並んだノズル25の列のことをノズル列25aと称する。ここでは、ノズル列25aは、1つのノズル面24に対して2つ形成されている。
インクヘッド23は、可撓性を有するインクチューブ(図示せず)によってインクカートリッジ21(図2参照)と連通している。インクカートリッジ21には、例えば紫外線硬化型のインクが貯留されている。紫外線硬化型のインクは、典型的には重合性化合物と重合開始剤とを含んでいる。複数のインクカートリッジ21には、それぞれシアンインク(C)、マゼンタインク(M)、イエローインク(Y)、ブラックインク(K)などのプロセスカラーインク(CMYK)と、プライマインク(Pr)、ホワイトインク(Wh)などの特色インクのうちの何れかが貯留されている。なお、本明細書において「特色インク」とは、プロセスカラーインクと異なる色および/または特性を持つインク全般をいう。プライマインク(Pr)は、例えば撥インク性の高い被印刷物5に印刷を行う場合に、被印刷物5へのインクの乗りを良くするための前処理用インクである。
本実施形態では、プリンタ10が、6つのインクカートリッジ21を備えているが、インクカートリッジ21の数は特に限定されない。1つのインクカートリッジ21は、1つのノズル列25aを構成するノズル25に接続されている。そのため、1つのインクヘッド23につき、2種類の紫外線硬化型のインクを吐出する。
図3に示すように、プリンタ10は、1つの紫外線照射装置26を備えている。紫外線照射装置26は、キャリッジ19に設けられている。紫外線照射装置26は、インクヘッド23の左方に配置されている。紫外線照射装置26は、被印刷物5に吐出されたインクを硬化させるための紫外線を照射する装置である。紫外線照射装置26は、インクを硬化可能な紫外線波長を有する光を照射する。図4に示すように、紫外線照射装置26は、ケース27と、光源28とを備えている。
ケース27は、箱状に形成されており、内部に空間を有している。ケース27は、照射面29を有している。照射面29は、ケース27の下面を構成している。照射面29には、照射口29aが形成されている。照射口29aには、紫外線が通過可能である。光源28は、紫外線を発するものであり、ケース27の内部に配置されている。なお、光源28の種類は特に限定されない。光源28は、例えばLEDであってもよいし、蛍光灯(低圧水銀灯)や高圧水銀灯であってもよい。光源28から発せられた紫外線は、照射口29aを通過し、照射口29aを通じて被印刷物5に向かって照射される。
図2に示すように、プリンタ10は、いわゆるフラットベッドタイプのプリンタである。プリンタ10は、テーブル35を備えている。テーブル35は、キャリッジ19の下方であり、かつ、ガイドレール18の下方に配置されている。言い換えると、ガイドレール18は、テーブル35の上方に配置されている。テーブル35は、被印刷物5を支持する支持面35aを有している。支持面35aはテーブル35の表面を構成している。支持面35aは、水平方向に延びており、被印刷物5が載置される面である。被印刷物5は、支持面35aに支持された状態で印刷される。支持面35aと、キャリッジ19の嵌合面19aと、紫外線照射装置26の照射面29とは、互いが平行になるように配置されている。ここで、「平行」には、厳密に平行であること以外に、一方が他方に対して多少の傾きが生じている場合も含まれるものとする。本実施形態では、テーブル35は、支持台の一例である。
図2に示すように、プリンタ10は、第1テーブル移動機構36と、第2テーブル移動機構37とを備えている。テーブル35は、第1テーブル移動機構36によって、副走査方向Xに移動可能に構成されている。テーブル35は、第2テーブル移動機構37によって、上下方向に移動可能に構成されている。第1テーブル移動機構36は、一対のスライドレール36a、36bと、搬送部材36cと、第1移動用モータ(図示せず)とを備えている。図3に示すように、スライドレール36a、36bは、副走査方向Xに延びている。スライドレール36a、36bは、互いが平行に配置されている。搬送部材36cは、スライドレール36a、36bに対して摺動自在に設けられている。搬送部材36cの上方には、他の部材を介してテーブル35が支持されている。第1移動用モータは、制御装置30と電気的に接続されており、制御装置30によって制御される。第1移動用モータが駆動すると、スライドレール36a、36bに沿って搬送部材36cが移動する。これにより、搬送部材36cが支持するテーブル35は、副走査方向Xに移動する。
図2に示すように、第2テーブル移動機構37は、高さ調整部材37aと、第2移動用モータ(図示せず)とを備えている。高さ調整部材37aは、テーブル35の下面に設けられている。高さ調整部材37aは、第2移動用モータに接続されている。第2移動用モータは、制御装置30と電気的に接続されており、制御装置30によって制御される。第2移動用モータが駆動すると、高さ調整部材37aの高さが変化して、テーブル35の高さが調整される。
制御装置30は、プリンタ10の各部の動作を制御する。制御装置30は、典型的にはコンピュータである。制御装置30は、例えば、外部のコンピュータなどから印刷データを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置とを備えている。
図5は、プリンタ10のブロック図である。図5に示すように、制御装置30は、キャリッジ移動機構31(詳しくは、キャリッジ移動機構31のキャリッジモータ)と、第1テーブル移動機構36(詳しくは、第1テーブル移動機構36の第1移動用モータ)と、第2テーブル移動機構37(詳しくは、第2テーブル移動機構37の第2移動用モータ)と、に通信可能に接続されており、支持面35aに支持された被印刷物5と、インクヘッド23との相対的な位置関係を制御している。制御装置30は、インクヘッド23に通信可能に接続されており、被印刷物5に対するインクの吐出を制御している。制御装置30は、紫外線照射装置26の光源28と通信可能に接続されており、紫外線照射装置26の起動と停止を制御している。
以上、本実施形態に係るプリンタ10の基本的な構成について説明した。ところで、紫外線照射装置26の光源28から照射された紫外線は、テーブル35の支持面35aに支持された被印刷物5や、支持面35aに照射される。被印刷物5や支持面35aに照射された紫外線の一部は、被印刷物5の表面や支持面35aで反射することがあり得る。この紫外線の反射には、拡散反射が含まれる。拡散反射では、所定の一方向に向かって反射する正反射とは異なり、入射角度に依存せずに、あらゆる方向に向かって紫外線が反射する。そのため、被印刷物5の表面で拡散反射した紫外線の一部は、インクヘッド23のノズル25(図4参照)に照射されることとなる。ノズル25に照射される紫外線の量が蓄積されることで、ノズル25内のインクが硬化し、ノズル25の吐出不良が生じるおそれがある。以下の説明において、「反射」には拡散反射が含まれるものとする。
例えば被印刷物5や支持面35aで反射した紫外線がノズル25に照射され難くするために、従来では、紫外線照射装置26をインクヘッド23のノズル面24から離すように配置していた。ノズル面24から紫外線照射装置26が離れるほど、被印刷物5で反射した紫外線がノズル25に照射され難くなる。しかしながら、紫外線照射装置26をノズル面24から離すほど、キャリッジ19が大型化することになり、プリンタ10が主走査方向Yに大きくなる。その結果、プリンタ10が大型化することになる。そのため、キャリッジ19の大型化を抑えつつ、被印刷物5で反射した紫外線がノズル25に照射され難いことが好ましい。
そこで、本実施形態では、被印刷物5や支持面35aで反射した紫外線がノズル25に照射され難くするために、インクヘッド23のノズル面24を傾けることにした。以下、そのことについて詳述する。
図6は、キャリッジ19、インクヘッド23および紫外線照射装置26の正面図である。図6に示すように、本実施形態では、紫外線照射装置26は、インクヘッド23の左方に配置されている。3つのインクヘッド23のノズル面24は、右方を向くように支持面35aに対して傾斜している。言い換えると、ノズル面24は、紫外線照射装置26の反対側を向くように傾斜して配置されている。ここでは、インクヘッド23のノズル面24は、紫外線照射装置26の照射面29に対して傾斜しており、キャリッジ19の嵌合面19aに対しても傾斜している。
なお、本実施形態では、インクヘッド23自体がキャリッジ19に対して傾いた状態で配置されている。そのため、インクヘッド23の傾きに伴って、ノズル面24も傾斜して配置されている。ただし、インクヘッド23自体がキャリッジ19に対して傾いていなくてもよく、その場合、ノズル面24は、インクヘッド23に対して斜めに配置されるように、インクヘッド23に形成されているとよい。なお、図2では、インクヘッド23が傾いていないようにも見えるが、実際には、図6に示すように、インクヘッド23自体が傾斜して配置されている。
図7は、第1インクヘッド23Aのノズル面24の傾斜角度R1を示す正面図である。本実施形態では、図7に示すように、インクヘッド23のノズル面24の傾斜角度R1が定義される。なお、各インクヘッド23のノズル面24の傾斜角度R1は、同じように定義されるため、ここでは第1インクヘッド23Aのノズル面24の傾斜角度R1について説明する。
本実施形態では、第1インクヘッド23Aのノズル面24の傾斜角度R1は、正面視においてノズル平行線L1と支持面35aとが成す角度である。ノズル平行線L1は、正面視においてノズル面24と平行な線のことをいう。ここでは、ノズル平行線L1は、正面視においてノズル面24上を通る線である。支持面35aとは、テーブル35の表面と言い換えることが可能である。
本実施形態では、各インクヘッド23のノズル面24の傾斜角度R1の数値は特に限定されない。ただし、傾斜角度R1が大き過ぎると、ノズル25からより側方に向かってインクが吐出されるため、被印刷物5のインクの着弾位置にばらつきが生じ易くなり、印刷の品質が低下するおそれがある。そのため、傾斜角度R1は、大き過ぎない方が好ましく、例えば紫外線照射装置26からインクヘッド23までの距離や、支持面35aからノズル面24までの距離、支持面35aから紫外線照射装置26の照射面29までの距離に応じて適宜設定されているとよい。傾斜角度R1は、例えば0.1度~5度である。なお、図6~図11において、分かり易くするために傾斜角度R1を大きくしているが、実際には、傾斜角度R1は、例えば0.1度~5度程度である。
第1~第3インクヘッド23A~23Cのそれぞれのノズル面24の傾斜角度R1は、同じであってもよいし、一部が異なっていてもよい。仮に、第1~第3インクヘッド23A~23Cのそれぞれのノズル面24の傾斜角度R1が異なっている場合には、紫外線照射装置26から離れているインクヘッド23程、傾斜角度R1が小さいとよい。本実施形態の場合、図6に示すように、第1インクヘッド23A、第2インクヘッド23B、第3インクヘッド23Cの順に、紫外線照射装置26から離れている。そのため、仮に第1~第3インクヘッド23A~23Cのそれぞれのノズル面24の傾斜角度R1が異なっている場合には、インクヘッド23A、23B、23Cの順に傾斜角度R1が小さいとよい。
図8は、第1インクヘッド23Aに対する第1反射基準角度R21を示す正面図である。本実施形態では、図8に示すように、インクヘッド23のノズル面24に対する第1反射基準角度R21が定義される。なお、各インクヘッド23のノズル面24に対する第1反射基準角度R21は、同じように定義される。そのため、ここでは第1インクヘッド23Aのノズル面24に対する第1反射基準角度R21について説明する。
第1インクヘッド23Aのノズル面24に対する第1反射基準角度R21は、後述の支持面35aの支持面交点P1で反射した紫外線が第1インクヘッド23Aのノズル面24に照射される可能性がある最大の反射角度である。上記の傾斜角度R1がこの第1反射基準角度R21よりも大きいとき、支持面交点P1で反射した紫外線は、ノズル面24に照射され難くなる。一方、傾斜角度R1が第1反射基準角度R21よりも小さいとき、支持面交点P1で反射した紫外線は、ノズル面24に照射され易くなる。
第1インクヘッド23Aのノズル面24に対する第1反射基準角度R21は、以下のようにして算出することができる。ここでの第1反射基準角度R21は、図8に示すように、第1反射線L31と、支持面35aとが成す角度である。ここでは、まず正面視において紫外線照射装置26の照射面29と直交する線であって、照射口29aの中心C1を通過する線のことを照射線L2という。照射線L2が向く方向は、照射口29aが開口している方向であり、紫外線照射装置26の中心軸の方向と同じである。紫外線照射装置26において光源28から発せられた紫外線は、照射線L2の方向に沿って、支持面35aに支持された被印刷物5に照射される。
照射線L2とテーブル35の支持面35aとが交差する交点を支持面交点P1という。この支持面交点P1は、光源28から発せられた紫外線が支持面35aに照射される範囲の中心点である。
本実施形態では、正面視において上記の支持面交点P1から第1インクヘッド23Aのノズル面24の左端に向かって延びた線のことを、第1反射線L31とする。第1反射線L31は、支持面交点P1と、第1インクヘッド23Aのノズル面24の左端(言い換えると、第1インクヘッド23Aのノズル面24のうち紫外線照射装置26に最も近い端)とを繋ぐ線である。そして、第1反射線L31と支持面35aとが成す角度を、第1反射基準角度R21とする。
図9は、第1インクヘッド23Aに対する第2反射基準角度R22を示す正面図である。本実施形態では、図9に示すように、インクヘッド23のノズル面24に対する第2反射基準角度R22が定義される。なお、各インクヘッド23のノズル面24に対する第2反射基準角度R22は、同じように定義される。そのため、ここでは第1インクヘッド23Aのノズル面24に対する第2反射基準角度R22について説明する。
第1インクヘッド23Aのノズル面24に対する第2反射基準角度R22は、支持面35aに支持された被印刷物5の表面上の後述する印刷交点P2で反射した紫外線が第1インクヘッド23Aのノズル面24に照射される可能性がある最大の反射角度である。上記の傾斜角度R1がこの第2反射基準角度R22よりも大きいとき、印刷交点P2で反射した紫外線は、ノズル面24に照射され難くなる。一方、傾斜角度R1が第2反射基準角度R22よりも小さいとき、印刷交点P2で反射した紫外線は、ノズル面24に照射され易くなる。
第1インクヘッド23Aのノズル面24に対する第2反射基準角度R22は、第1反射基準角度R21(図8参照)における支持面交点P1を印刷交点P2に変更した場合と同じ手順で算出することができる。ここでの第2反射基準角度R22は、図9に示すように、第2反射線L32と、支持面35aに支持された被印刷物5の表面とが成す角度である。ここでは、照射線L2と支持面35aに支持された被印刷物5とが交差する交点を印刷交点P2という。この印刷交点P2は、光源28から発せられた紫外線が被印刷物5に照射される範囲の中心点である。
本実施形態では、正面視において印刷交点P2から第1インクヘッド23Aのノズル面24の左端に向かって延びた線のことを、第2反射線L32とする。第2反射線L32は、印刷交点P2と、第1インクヘッド23Aのノズル面24の左端(言い換えると、第1インクヘッド23Aのノズル面24のうち紫外線照射装置26に最も近い端)とを繋ぐ線である。そして、第2反射線L32と支持面35aに支持された被印刷物5の表面とが成す角度を、第2反射基準角度R22とする。
本実施形態では、第1~第3インクヘッド23A~23Cのそれぞれに対して、傾斜角度R1、第1反射基準角度R21および第2反射基準角度R22が設定されている。本実施形態では、上述のように第1~第3インクヘッド23A~23Cのそれぞれについて、同じ向きに傾斜しているため、傾斜角度R1は同じである。
第1反射基準角度R21および第2反射基準角度R22は、紫外線照射装置26から離れた位置に配置されたインクヘッド23程、小さくなる。本実施形態では、図6に示すように、紫外線照射装置26から近い方から順に、第1インクヘッド23A、第2インクヘッド23B、第3インクヘッド23Cとなる。そのため、インクヘッド23のうち第1インクヘッド23Aに対する第1反射基準角度R21および第2反射基準角度R22が最も大きく、第3インクヘッド23Cに対する第1反射基準角度R21および第2反射基準角度R22が最も小さくなる。
また、第1反射基準角度R21および第2反射基準角度R22は、支持面35aからノズル面24までの距離(ここでは、上下方向の距離)に応じて変わるものである。ここでは、支持面35aからノズル面24までの距離が長くなる程、第1反射基準角度R21および第2反射基準角度R22はそれぞれ大きくなる。
本実施形態では、各インクヘッド23において、図8に示すように、傾斜角度R1は、第1反射基準角度R21よりも大きく、図9に示すように、第2反射基準角度R22よりも大きい。言い換えると、図8に示すように、第1反射基準角度R21は、傾斜角度R1以下であり、かつ、図9に示すように、第2反射基準角度R22は、傾斜角度R1以下である。
図10は、傾斜部材50を示す正面断面図である。本実施形態では、図10に示すように、プリンタ10は、傾斜部材50を備えている。傾斜部材50は、インクヘッド23のノズル面24を支持面35a(図7参照)(言い換えると、キャリッジ19の嵌合面19a)に対して傾斜させる部材であり、傾斜角度R1(図7参照)を調整する部材である。傾斜部材50の構成は特に限定されない。
本実施形態では、インクヘッド23の側面には、インクヘッド23の外側に向かって延びた接触面23aが設けられている。接触面23aは、ノズル面24と平行な面であり、ノズル面24よりも上方に配置されている。ここでは、「平行」には、ノズル面24に対して接触面23aが若干傾いてる場合も含まれるものとする。本実施形態では、傾斜部材50は、プレート状の部材であり、インクヘッド23の接触面23aと、キャリッジ19の嵌合面19aとの間に配置されている。傾斜部材50には、上下に貫通した挿入孔50aが形成されている。この挿入孔50aには、インクヘッド23が挿入される。
傾斜部材50は、配置面51と、傾斜面52とを有している。配置面51は傾斜部材50の下面を構成しており、傾斜面52は傾斜部材50の上面を構成している。そのため、傾斜面52は、配置面51の上方に配置されている。配置面51は、嵌合口19bの周囲の嵌合面19aの部位上に接触して配置されている。配置面51は、嵌合面19aに載置される。配置面51は、嵌合面19aに沿って延びた面である。配置面51は、嵌合面19aに対して平行である。傾斜面52は、配置面51に対して傾斜している。傾斜面52と配置面51とがなす角度が傾斜角度R1(図7参照)となる。この傾斜面52は、インクヘッド23の接触面23aと接触する。
本実施形態では、傾斜部材50は、キャリッジ19の嵌合面19a、および、インクヘッド23の接触面23aに固定される。傾斜部材50を嵌合面19aおよび接触面23aに固定する機構は特に限定されない。傾斜部材50は、例えばネジ53aによって嵌合面19aに固定され、ネジ53bによって接触面23aに固定されている。傾斜部材50を嵌合面19aおよび接触面23aに固定することで、ノズル面24を支持面35aに対して、傾斜面52と配置面51とが成す角度分、傾けることができる。
本実施形態では、傾斜面52と配置面51とが成す角度が異なる傾斜部材50が複数用意されている。キャリッジ19の嵌合面19aと、インクヘッド23の接触面23aとの間に配置される傾斜部材50を変更することで、支持面35aに対するノズル面24の傾斜角度R1を変更することができる。
以上、本実施形態では、紫外線照射装置26は、図6に示すように、インクヘッド23に対して主走査方向Yの一方側(ここでは左側)に配置されている。インクヘッド23のノズル面24は、主走査方向Yの他方側(ここでは右側)を向くように、支持面35aに対して傾斜して配置されている。このことによって、インクヘッド23のノズル面24は、紫外線照射装置26とは反対側を向くように、支持面35aに対して傾斜して配置されている。そのため、ノズル面24は、例えば支持面35aに支持された被印刷物5の表面に対して傾斜している。よって、紫外線照射装置26から照射されて、被印刷物5の表面または支持面35aで拡散反射された紫外線が、従来と比較して、ノズル面24に照射され難い。したがって、ノズル面24に紫外線が照射され難くなっているため、ノズル面24に形成されたノズル25にも紫外線が照射され難い。その結果、紫外線照射装置26から照射された紫外線に起因してノズルの吐出不良が発生し難くすることができる。
本実施形態では、ノズル面24を傾斜して配置することで、紫外線照射装置26からインクヘッド23までの距離を短くした場合であっても、従来と比較して、ノズル面24に照射される紫外線の量を減らすことができる。よって、紫外線照射装置26からインクヘッド23までの距離を短くすることができるため、キャリッジ19が大型化することを抑制することができる。
本実施形態では、ノズル面24は、紫外線照射装置26の照射面29に対して傾斜して配置されている。照射面29と支持面35aとは、平行に配置されている。このことによって、従来と比較して、紫外線照射装置26から発せられた紫外線が支持面35aに到達する位置は、ノズル面24から離れた位置となる。よって、ノズル面24に紫外線が照射され難くなり、ノズル面24に形成されたノズル25にも紫外線が照射され難い。
本実施形態では、図8に示すように、第1インクヘッド23Aについて、正面視において照射面29と直交し、かつ、照射口29aの中心C1を通過する線を照射線L2とし、照射線L2と支持面35aとの交点(ここでは支持面交点)P1からノズル面24の左端に向かって延びた線を第1反射線L31とし、ノズル面24と平行な線をノズル平行線L1とする。正面視において、支持面35aと第1反射線L31とが成す第1反射基準角度R21は、支持面35aとノズル平行線L1とが成す傾斜角度R1以下である。この第1反射基準角度R21は、支持面交点P1で反射した紫外線が第1インクヘッド23Aのノズル面24に照射される可能性がある最大の反射角度である。傾斜角度R1が第1反射基準角度R21以上のとき、支持面交点P1で反射した紫外線を、ノズル面24に照射され難くすることができる。
本実施形態では、図9に示すように、第1インクヘッド23Aについて、正面視において照射線L2と、支持面35aに支持された被印刷物5の表面との交点(ここでは印刷交点)P2からノズル面24の左端に向かって延びた線を第2反射線L32とし、ノズル面24と平行な線をノズル平行線L1とする。正面視において、支持面35aと第2反射線L32とが成す第2反射基準角度R22は、支持面35aとノズル平行線L1とが成す傾斜角度R1以下である。第2反射基準角度R22は、支持面35aに支持された被印刷物5の表面上の印刷交点P2で反射した紫外線が第1インクヘッド23Aのノズル面24に照射される可能性がある最大の反射角度である。よって、上記の傾斜角度R1がこの第2反射基準角度R22以上のとき、印刷交点P2で反射した紫外線を、ノズル面24に照射され難くすることができる。
本実施形態では、図6に示すように、ノズル面24は、キャリッジ19の嵌合面19aに対して傾斜して配置されている。ここでは、インクヘッド23自体がキャリッジ19(言い換えると、嵌合面19a)に対して傾斜して配置されている。このように、インクヘッド23自体をキャリッジ19に対して傾斜させて配置することで、ノズル面24を支持面35aに対して傾斜して配置させ易い。
本実施形態では、キャリッジ19は、主走査方向Yに沿って移動可能である。インクヘッド23のノズル面24は、主走査方向Yの他方側(ここでは右側)に向かって傾斜して配置されている。印刷中、キャリッジ19と共にインクヘッド23および紫外線照射装置26は、主走査方向Yに移動する。よって、印刷中、ノズル面24は、主走査方向Yから紫外線照射装置26から発せられて、被印刷物5で反射した紫外線を受け易くなる。しかしながら、本実施形態では、ノズル面24は、主走査方向Yの他方側に向かうように傾斜しているため、紫外線照射装置26から発せられて、被印刷物5で反射した紫外線を受け難くすることができる。
本実施形態では、図10に示すように、傾斜部材50は、嵌合口19bの周囲の嵌合面19aの部位上に接触して配置され、嵌合面19aに沿って延びた配置面51と、配置面51の上方に配置され、配置面51に対して傾斜した傾斜面52とを有する。傾斜面52は、インクヘッド23の接触面23aに接触する。この傾斜部材50を、キャリッジ19の嵌合面19aと、インクヘッド23の接触面23aとの間に配置することで、ノズル面24の傾斜角度R1を容易に変更することができる。傾斜部材50を利用することで、既存のインクヘッド23を使用してノズル面24を傾斜して配置することができる。
なお、本実施形態では、3つのインクヘッド23のノズル面24は、全て傾斜して配置されていた。しかしながら、全てのインクヘッド23のノズル面24が傾斜して配置していなくてもよく、その場合、全てのインクヘッド23のうち、少なくとも紫外線照射装置26から最も近くに配置されたインクヘッド23(ここでは、第1インクヘッド23A)のノズル面24が、紫外線照射装置26の反対側を向いて傾斜しているとよい。
本実施形態では、図6に示すように、紫外線照射装置26は、インクヘッド23の左側に配置されていた。しかしながら、紫外線照射装置26は、インクヘッド23の右側に配置されていてもよい。この場合、インクヘッド23のノズル面24は、左側を向いて傾斜して配置されているとよい。
本実施形態では、各インクヘッド23において、傾斜角度R1は、第1反射基準角度R21以上であり、かつ、第2反射基準角度R22以上であった。しかしながら、各インクヘッド23において、傾斜角度R1は、第1反射基準角度R21より小さくてもよく、第2反射基準角度R22より小さくてもよい。この場合であっても、インクヘッド23のノズル面24自体は傾斜しているため、従来と比較して、被印刷物5または支持面35aで反射した紫外線がノズル面24に照射され難くすることができる。よって、従来と比較して、紫外線照射装置26から照射された紫外線に起因してノズルの吐出不良が発生し難くすることができる。
<他の実施形態>
次に、他の実施形態に係るプリンタ110について説明する。図11は、他の実施形態に係るプリンタ110のキャリッジ119、インクヘッド123および紫外線照射装置126a、126bの正面図である。図11に示すように、プリンタ110は、キャリッジ119と、インクヘッド123(詳しくは、第1インクヘッド123A、第2インクヘッド123B、第3インクヘッド123C)と、左側紫外線照射装置126aと、右側紫外線照射装置126bと、支持面135aを有するテーブル135と、を備えている。インクヘッド123は、ノズル面124を有している。
紫外線照射装置126a、126bは、キャリッジ119に設けられている。左側紫外線照射装置126aは、キャリッジ119の左方に配置され、右側紫外線照射装置126bは、キャリッジ119の右方に配置されている。インクヘッド123は、キャリッジ119に設けられており、左側紫外線照射装置126aと右側紫外線照射装置126bとの間に配置されている。第1インクヘッド123Aは、右側紫外線照射装置126bよりも左側紫外線照射装置126aに近い位置に配置されている。第3インクヘッド123Cは、左側紫外線照射装置126aよりも右側紫外線照射装置126bに近い位置に配置されている。第2インクヘッド123Bは、左側紫外線照射装置126aと右側紫外線照射装置126bとの中間位置に配置されている。
本実施形態では、インクヘッド123のノズル面124は、近くに配置されている紫外線照射装置126a、126bに対して反対側に向いて傾斜して配置されている。詳しくは、第1インクヘッド123Aのノズル面124は、最も近くに配置された左側紫外線照射装置126aの反対側(ここでは右側)に向くように傾斜して配置されている。第3インクヘッド123Cのノズル面124は、最も近くに配置された右側紫外線照射装置126bの反対側(ここでは左側)に向くように傾斜して配置されている。
なお、左側紫外線照射装置126aからの距離と、右側紫外線照射装置126bからの距離とが同じ位置に配置された第2インクヘッド123Bのノズル面124は、図11のように傾いて配置されていなくてもよい。第2インクヘッド123Bのノズル面124は、水平方向に延びるように配置されていてもよい。ただし、第2インクヘッド123Bのノズル面124は、左側に向くように傾斜して配置されていてもよいし、右側に向くように傾斜して配置されていてもよい。
本実施形態の場合であっても、インクヘッド23からより近い位置に配置された紫外線照射装置26から発せられて、被印刷物5で反射した紫外線がノズル面124に照射され難くすることができる。