JP4308068B2 - 導電性組成物、導電性塗料、コンデンサおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献2で開示されるような電解重合では、弁金属の多孔体表面にマンガン酸化物からなる導電層を形成した後に、これを電極として導電性高分子の前駆体モノマーの電解重合を行う必要がある。しかしながら、導電層を形成後、固体電解質層を電解重合にて形成することは、非常に煩雑である上に、マンガン酸化物は導電性が低いため、高導電性の導電性高分子を使用する効果が薄れてしまっていた。
また、本発明の目的は、低ESR化を図ることができ、耐熱性に優れ、誘電体層修復機能が確実に働くコンデンサ、およびこのコンデンサを容易に、かつ低コストで製造できる製造方法を提供することにある。
ここで、可溶性導電性高分子は、分子内にアニオン基および/または電子吸引性基を持つ高分子化合物と、導電性高分子とを含むものであることが望ましい。
さらに、本発明の導電性組成物は、ドーパントを含有することが望ましい。
可溶性導電性高分子における高分子化合物と導電性高分子との質量比は、5:95〜99:1であることが望ましい。
本発明の導電性塗料は、本発明の導電性組成物と、水または有機溶剤とを含有することを特徴とするものである。
また、本発明のコンデンサの製造方法は、弁金属の多孔体からなる陽極上に前記弁金属の酸化皮膜からなる誘電体層を形成し、該誘電体層上に請求項6に記載の導電性塗料を塗布、乾燥して、誘電体層表面に導電性組成物を含む陰極を形成することを特徴とする。
また、本発明のコンデンサは、低ESR化を図ることができ、耐熱性に優れ、誘電体層修復機能が確実に働く。
そして、本発明のコンデンサの製造方法によれば、低ESR化を図ることができ、耐熱性に優れ、誘電体層修復機能が確実に働くコンデンサを、容易に、かつ低コストで製造できる。
<導電性組成物>
本発明の導電性組成物は、可溶性導電性高分子と、導電性高分子で被覆されたウィスカーとを含有するものである。
本発明における可溶性導電性高分子とは、後述の水または有機溶剤への溶解性を有し、かつ導電性を有する高分子である。このような可溶性導電性高分子としては、単体で水または有機溶剤への溶解性を有するもの;および後述の分子内にアニオン基および/または電子吸引性基を持つ高分子化合物と、後述の導電性高分子とを混合することにより、導電性高分子のモノマー種、置換基に依存することなく、水または有機溶剤への高い溶解性を有するものが挙げられる。
これら可溶性導電性高分子の中でも、分子内にアニオン基および/または電子吸引性基を持つ高分子化合物と、導電性高分子とを含む可溶性導電性高分子が、導電性高分子の電気伝導度をあまり低下させずに、水または有機溶剤への溶解性を持たせることができることから、好適である。
導電性高分子としては、例えば、置換あるいは無置換のポリアニリン、置換あるいは無置換のポリピロール、置換あるいは無置換のポリチオフェン、これら導電性高分子の前駆体モノマーを2種類以上共重合した共重合体などが挙げられる。中でも、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリN−メチルピロール、ポリ3−メチルチオフェン、ポリ3−メトキシチオフェン、これら導電性高分子の前駆体モノマーを2種類以上共重合した共重合体が、抵抗値、コスト、反応性の点から好ましく用いられる。
特に、ポリN−メチルピロール、ポリ3−メチルチオフェンのようなアルキル置換化合物は、水または有機溶剤への溶解性を向上する効果が見られることからより好ましい。アルキル基の中では導電性に悪影響を与えることがないことから、メチル基が好ましい。
分子内にアニオン基および/または電子吸引性基を持つ高分子化合物は、導電性高分子を水または有機溶剤に溶解させる機能を有している。
分子内にアニオン基を持つ高分子化合物としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。
本発明におけるウィスカーは、導電性高分子の耐熱性、被膜強度を向上させるものである。
ウィスカーとしては、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、チタニアウィスカー、アルミナウィスカー、シリカウィスカー、アルミナ・シリカウィスカー、炭化ケイ素ウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、ムライトウィスカー、マグネシアウィスカー、ホウ酸マグネシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ホウ化チタンウィスカー等が挙げられる。特に、ウィスカーとしては、線径0.1〜5μm、繊維長3〜1000μmのものが好適に用いられる。
導電性高分子の水または有機溶剤への溶解性を高め、多孔体への浸透性を良好にしようとすると、導電性高分子の導電性は、不溶性の導電性高分子に比べ低下してしまう傾向にある。このような可溶性導電性高分子による導電性組成物の導電性の低下を補うため、導電性組成物に、表面が導電性のよい導電性高分子で被覆されたウィスカーを加える。これにより、多孔体への浸透性を高めつつ導電性組成物の導電性を向上させることができる。
また、長繊維のウィスカーを用いることで、導電性組成物からなる塗膜内に導電パスが形成されやすくなり、より導電性が向上する。ここで、ウィスカーの線径が小さい方が、ウィスカー全体の体積抵抗を抑えることができる。さらに、ウィスカーによる耐熱性向上の効果も同時に得られる。
本発明の導電性組成物は、導電性と耐熱性とをともにより向上させるためにドーパントを含むことが好ましい。通常、ドーパントとしては、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸などが用いられ、具体的には、有機カルボン酸、有機スルホン酸等の有機酸、有機シアノ化合物、フラーレン、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、カルボン酸化フラーレン、スルホン酸化フラーレンなどが挙げられる。
有機シアノ化合物としては、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレンなどが挙げられる。
本発明の導電性組成物は、次のようにして調製することができる。
まず、高分子化合物を、これを溶解可能な溶媒に溶解し、その溶液に導電性高分子の前躯体モノマー、および必要であればドーパントを添加し、十分攪拌混合してモノマー含有溶液を調製する。次いで、そのモノマー含有溶液に酸化剤を滴下して重合を進行させた後、高分子化合物と導電性高分子の複合体から酸化剤、残留モノマー、副生成物を除去することによってこれを精製して、高分子化合物と導電性高分子とを含む可溶性導電性高分子を得る。なお、可溶性導電性高分子を得た後に、これにドーパントを添加し、可溶性導電性高分子をドープしてもよい。
可溶性導電性高分子中の導電性高分子と、ウィスカーを被覆する導電性高分子とは、同一であっても、異なっていてもよい。
本発明の導電性塗料は、上述した導電性組成物と、水または有機溶剤とを含有するものである。有機溶剤としては、上述した高分子化合物を溶解する溶剤のうち、水以外のものが挙げられる。
導電性塗料は、導電性組成物を水または有機溶剤に添加することで製造してもよいし、上述した導電性組成物の製造方法で得られた溶媒を含んだ導電性組成物をそのまま用いてもよい。
本発明のコンデンサは、弁金属の多孔体からなる陽極と、該陽極に隣接し、前記弁金属の酸化皮膜からなる誘電体層と、上記導電性組成物を含む陰極とを有するものである。
このコンデンサの陰極は、上記導電性組成物から形成されているため、コンデンサは性能が優れる上に、過酷な使用環境にも耐えられる。
ここで、弁金属としてはアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンなどが挙げられるが、このうちコンデンサ陽極に用いられるものとしてはアルミニウム、タンタル、ニオブが好適である。
次いで、コンデンサ中間体に導電性塗料を浸漬法やスプレーコート法などの方法で塗布し、その後、乾燥して誘電体層表面に導電性組成物を含む陰極を形成してコンデンサを得る。
[実施例1]
(1)高分子化合物の製造:
アクリロニトリル50gとスチレン10gとをトルエン500ml中に溶解し、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを1.5g添加し、50℃で5時間重合した。そして、重合により生成したポリマーをメタノールで洗浄して高分子化合物を得た。
チタン酸カリウムウィスカー(大塚化学(株)製、ティスモN)5gをアセトニトリル500mlに分散させ、これにピロール10gおよびオクタデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム10gを加え、−20℃に冷却しながら1時間撹拌した。これに、塩化第二鉄250gをアセトニトリル1250mlに溶解した酸化剤溶液を、−20℃に保ちながら2時間かけて滴下し、さらに12時間撹拌を続けてピロールの重合を行った。
反応終了後、これにメタノール2000mlを加え、沈澱物をろ過し、ろ液が透明になるまでメタノールと純水で洗浄を行い、導電性高分子で被覆されたウィスカーを得た。
(1)で製造した高分子化合物10gをアセトニトリル90gに溶解し、これにピロール50gおよびオクタデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム20gを加え、−20℃に冷却しながら1時間攪拌した。これに、塩化第二鉄250gをアセトニトリル1250mlに溶解した酸化剤溶液を、−20℃を保ちながら2時間かけて滴下し、さらに12時間攪拌を続けてピロールの重合を行った。
反応終了後、これにメタノール2000mlを加え、沈殿物をろ過し、ろ液が透明になるまでメタノールと純水を用いて洗浄を行い、可溶性導電性高分子を得た。
(3)で製造した可溶性導電性高分子をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解して濃度5質量%の可溶性導電性高分子溶液を調製した。そして、この可溶性導電性高分子溶液の固形分100質量部に対して(2)で製造した導電性高分子で被覆されたウィスカー10質量部を加え、これらを混合し、攪拌して、導電性塗料を得た。
<試験方法>
(a)電気伝導度:
導電性塗料をPETフィルム上に塗布、乾燥して形成した厚さ2μmの塗膜の電気伝導度(単位S/cm)を、導電率計(商品名:ロレスタMCP−T600)を用いて測定した(表中、「初期」の欄)。
(b)耐熱性:
導電性塗料をPETフィルム上に塗布、乾燥して、厚さ10μmの塗膜を形成し、その後、125℃のオーブンに240時間放置し、240時間放置後における電気伝導度の変化を耐熱性の指標とした。
(1)可溶性導電性高分子の製造:
高分子化合物であるポリスチレンスルホン酸10gを水90gに溶解し、これにピロール50gおよびオクタデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム20gを加え、0℃に冷却しながら1時間攪拌した。これに、塩化第二鉄250gを水1250mlに溶解した酸化剤溶液を、0℃を保ちながら2時間かけて滴下し、さらに12時間攪拌を続けてピロールの重合を行った。
反応終了後、得られた溶液を限外ろ過装置で処理して、溶液中の不要なイオンを除去し、濃度5質量%となるまで濃縮し、可溶性導電性高分子溶液を得た。
(1)で製造した可溶性導電性高分子溶液の固形分100質量部に対して実施例1の(2)で製造した導電性高分子で被覆されたウィスカー10質量部を加え、これらを混合し、攪拌して、導電性塗料を得た。
得られた導電性塗料について実施例1と同様に試験した。結果を表1に示す。
(1)導電性高分子で被覆されたウィスカーの製造:
ホウ酸アルミニウムウィスカー(四国化成工業(株)製、アルボレックス)5gを濃硫酸100mlに加え、90〜100℃で16時間還流し、ウィスカー表面をスルホ基で修飾した。スルホ基含有ウィスカー5gをアセトニトリル100mlに分散させ、これにピロール10gおよびp−トルエンスルホン酸5gを加え、−20℃に冷却しながら1時間撹拌した。これに、塩化第二鉄15gをアセトニトリル100mlに溶解した酸化剤溶液を、−20℃に保ちながら2時間かけて滴下し、さらに12時間撹拌を続けてピロールの重合を行った。
反応終了後、ウィスカーをろ過し、ろ液が透明になるまでメタノールと純水で洗浄を行い、導電性高分子で被覆されたウィスカーを得た。
アクリロニトリル30gとメタクリル酸メチル20gとをトルエン500ml中に溶解し、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを1.5g添加し、50℃で5時間重合した。そして、重合により生成したポリマーをメタノールで洗浄して高分子化合物を得た。
(2)で製造した高分子化合物10gをアセトニトリル90gに溶解し、これにピロール50gおよびアントラキノンジスルホン酸ナトリウム20gを加え、−20℃に冷却しながら1時間攪拌した。これに、塩化第二鉄250gをアセトニトリル1250mlに溶解した酸化剤溶液を、−20℃を保ちながら2時間かけて滴下し、さらに12時間攪拌を続けてピロールの重合を行った。
反応終了後、これにメタノール2000mlを加え、沈殿物をろ過し、ろ液が透明になるまでメタノールと純水を用いて洗浄を行い、可溶性導電性高分子を得た。
(3)で製造した可溶性導電性高分子をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解して濃度5質量%の可溶性導電性高分子溶液を調製した。そして、この可溶性導電性高分子溶液の固形分100質量部に対して(1)で製造した導電性高分子で被覆されたウィスカー15質量部を加え、これらを混合し、攪拌して、導電性塗料を得た。
得られた導電性塗料について実施例1と同様に試験した。結果を表1に示す。
アセトニトリル100mlに3−ヘキシルチオフェン10を溶解し、5℃に冷却しながら1時間攪拌した。これに、塩化第二鉄50gをアセトニトリル250mlに溶解した酸化剤溶液を、5℃を保ちながら2時間かけて滴下し、さらに12時間攪拌を続けて3−ヘキシルチオフェンの重合を行った。
反応終了後、これにメタノール2000mlを加え、沈殿物をろ過し、ろ液が透明になるまでメタノールと純水を用いて洗浄を行い、可溶性導電性高分子を得た。
この可溶性導電性高分子をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解して濃度5質量%の可溶性導電性高分子溶液を調製し、これを導電性塗料とした。
得られた導電性塗料について実施例1と同様に試験した。結果を表1に示す。
Claims (8)
- 可溶性導電性高分子と、
導電性高分子で被覆されたウィスカーと
を含有することを特徴とする導電性組成物。 - 可溶性導電性高分子が、分子内にアニオン基および/または電子吸引性基を持つ高分子化合物と、導電性高分子とを含むものであることを特徴とする請求項1記載の導電性組成物。
- さらに、ドーパントを含有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の導電性組成物。
- ウィスカーが、表面にスルホ基および/またはカルボキシル基を有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項に記載の導電性組成物。
- 可溶性導電性高分子における高分子化合物と導電性高分子との質量比が、5:95〜99:1であることを特徴とする請求項2ないし4いずれか一項に記載の導電性組成物。
- 請求項1ないし5いずれか一項に記載の導電性組成物と、水または有機溶剤とを含有することを特徴とする導電性塗料。
- 弁金属の多孔体からなる陽極と、
前記弁金属の酸化皮膜からなる誘電体層と、
請求項1ないし5いずれか一項に記載の導電性組成物を含む陰極と
を有することを特徴とするコンデンサ。 - 弁金属の多孔体からなる陽極上に前記弁金属の酸化皮膜からなる誘電体層を形成し、該誘電体層上に請求項6に記載の導電性塗料を塗布、乾燥して、誘電体層表面に導電性組成物を含む陰極を形成することを特徴とするコンデンサの製造方法。
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