JP4307863B2 - 含フッ素共重合体およびその製造方法 - Google Patents
含フッ素共重合体およびその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、含フッ素共重合体およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、耐薬品性に優れ、光透過性、耐屈曲性および熱時強度に優れた含フッ素共重合体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
含フッ素共重合体は、含フッ素単量体であるフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)などの少なくとも2種類を共重合反応することにより得られ、エラストマー領域から樹脂領域のものまで存在し様々な特性を有しているが、特に含フッ素体であることにより、高温での熱安定性や極く低温での靱性および柔軟性を有し、さらには、耐薬品性に優れ、化学的に非常に安定で、非粘着性、低摩擦特性、電気的な諸特性にも優れるなど非常に優れた特性を備えている。
【0003】
これらのことから、含フッ素共重合体は、半導体、自動車、建築、電気・電子、食品分野など、様々な分野に用いられている。
その中でも,パーフルオロ共重合体であるため特に耐薬品性,耐熱性に優れるテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン二元系共重合体(以下、FEPと略称する。)は、その優れた電気特性を利用して電線、ケーブル、絶縁フィルムなどに使用され、また有機溶媒や腐食性液体などの輸送用のチューブ、ホースなどに使用されている。
【0004】
しかしながら、このような含フッ素共重合体では、耐薬品性、光透過性、耐屈曲性、熱時強度などの性能およびこれら性能のバランスの点で十分でない。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、耐薬品性に優れ、しかも、光透過性、耐屈曲性、熱時強度などの性能およびこれら性能のバランスに優れた含フッ素共重合体を提供することを目的としている。
【0006】
また、本発明は、上記のような特性、特に光透過率に優れた含フッ素共重合体を、より短い重合時間に、より低コストで製造し得るような、含フッ素共重合体の製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【発明の概要】
本発明に係る含フッ素共重合体は、
テトラフルオロエチレン(a)から誘導される成分単位および、
式[I]:CF2=CFCF2O−Rf(式[I]中、Rfはエーテル性酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜8のフルオロアルキル基を示す。)で表されるアリルエーテル系含フッ素化合物(b)から誘導される成分単位を有する含フッ素共重合体であって、
結晶融解熱量が15J/g以下であることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る含フッ素共重合体には、上記テトラフルオロエチレン(a)から誘導される成分単位が70.0〜98.0モル%、
上記式[I]で表されるアリルエーテル系含フッ素化合物(b)から誘導される成分単位が2.0〜30.0モル%(但し、全成分単位の合計((a)+(b))を100モル%とする。)の量で含まれていることが好ましい。
【0009】
本発明においては、上記式[I]で表されるアリルエーテル系含フッ素化合物(b)が、パーフルオロ(メチルアリルエーテル)であることが好ましい。
本発明に係る含フッ素加工品は、上記何れかに記載の含フッ素共重合体を成形してなる。
本発明に係る含フッ素共重合体の製造方法は、上記共重合用モノマー(a)および(b)を、重合の進行と共に、得るべきポリマーの組成比と同様の比率で逐次、反応系に導入することを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、耐薬品性に優れ、光透過性、耐屈曲性および熱時強度に優れた含フッ素共重合体が提供される。
また本発明に係る含フッ素共重合体の製造方法によれば、上記特性の含フッ素共重合体を、より短い重合時間によって低コストで製造し得る。
【0011】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る含フッ素共重合体およびその製造方法について具体的に説明する。
[含フッ素共重合体]
本発明に係る含フッ素共重合体は、テトラフルオロエチレン(a)から誘導される成分単位(テトラフルオロエチレン成分単位、成分単位(a)等とも言う。)および、
式[I]:CF2=CFCF2O−Rf(式[I]中、Rfはエーテル性酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜8のフルオロアルキル基を示す。すなわち、このRfはエーテル性酸素原子を含んでいてもよく、含まなくともよく、エーテル性酸素原子を含まない場合には、炭素数1〜8のフルオロアルキル基を示し、エーテル性酸素原子を含む場合には、エーテル性酸素原子をC−C主骨格中に1〜5個程度含んでいる炭素数1〜8のフルオロアルキル基を示す。)で表されるアリルエーテル系含フッ素化合物(b)から誘導される成分単位(アリルエーテル系含フッ素化合物単位、成分単位(b)等とも言う。)を有している。
【0012】
本発明においては、上記テトラフルオロエチレン成分単位(a)が70.0〜98.0モル%、好ましくは80.0〜96.0モル%の量で含まれ、
上記式[I]で表されるアリルエーテル系含フッ素化合物(b)から誘導される成分単位が2.0〜30.0モル%、好ましくは4.0〜20.0モル%(但し、全成分単位の合計((a)+(b))を100モル%とする。)の量で含まれていることが望ましい。
【0013】
この含フッ素共重合体中におけるテトラフルオロエチレン成分単位(a)の量が上記範囲より多く、アリルエーテル系含フッ素化合物成分単位(b)が上記範囲より少ないと、得られる含フッ素共重合体あるいはその形成体は、MIT曲げ寿命(ASTM−D−2176に準拠)で表される耐屈曲性や光透過率が低下する傾向があり、反対にテトラフルオロエチレン成分単位(a)の量が上記範囲より少なく、アリルエーテル系含フッ素化合物成分単位(b)が上記範囲より多いと、得られる含フッ素共重合体あるいはその形成体は、熱時強度、耐熱性などが低下する傾向がある。
【0014】
上記式[I]で表されるアリルエーテル系含フッ素化合物(b)は、共重合可能な不飽和基であるアリールエーテル基(CF2=CF−CF2−O−)を1個のみ有する、エーテル系含フッ素モノマーであるが、このようなアリルエーテル系含フッ素化合物(b)のうちでは、Rfが、エーテル性酸素原子をC−C主骨格中に1〜5個程度含んでいてもよい炭素数1〜8のフルオロアルキル基を示し、さらには、Rfは、炭素数1〜8のフルオロアルキル基を示すものが好ましい。
【0015】
このようなアリルエーテル系含フッ素化合物(b)のうちでも、全ての水素原子がフッ素置換されたパーフルオロ化合物が好ましい。
このようなアリルエーテル系含フッ素化合物(b)としては、具体的には、例えば、
パーフルオロ(メチルアリルエーテル)、パーフルオロ(エチルアリルエーテル)、パーフルオロ(プロピルアリルエーテル)、パーフルオロ(メトキシプロピルアリルエーテル)、パーフルオロ(メトキシイソプロピルアリルエーテル)、パーフルオロ(プロポキシイソプロピルアリルエーテル)、パーフルオロ(プロポキシイソプロポキシイソプロピルアリルエーテル)、などのエーテル結合を含有していてもよいパーフルオロ(アルキルアリルエーテル)類が挙げられる。
【0016】
これらのアリルエーテル系含フッ素化合物(b)のうちでは、パーフルオロ(メチルアリルエーテル)が共重合性や入手の容易さの点で好ましい。
これらの炭素−炭素二重結合(C=C)を1個のみ有するアリルエーテル系含フッ素化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明に係る含フッ素共重合体には、テトラフルオロエチレン成分単位(a)およびアリルエーテル系含フッ素化合物成分単位(b)以外に、例えば、式[II]:CF2=CFO−Rf’−OCF=CF2(式[II]中、Rf’はエーテル性酸素原子をC−C主骨格中に含まなくともよいが、必要によりC−C主骨格中に1〜10個程度含んでいてもよい炭素数1〜15のフルオロアルキル基を示す。)で表されるエーテル系含フッ素ジエン化合物(ジエンモノマー(c))から誘導される成分単位(c)が、共重合体中に5モル%以下の量で含まれていてもよい。
【0017】
このようなエーテル系含フッ素ジエン化合物(第三モノマー)としては、例えば、
CF2=CFO(CF2)2OCF=CF2、
CF2=CFO(CF2)2OCF(CF3)CF2OCF=CF2 、
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)2OCF(CF3)CF2OCF=CF2、
CF2=CFO(CF2)3OCF=CF2、
CF2=CFO(CF2)3OCF(CF3)CF2OCF=CF2 、
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)3OCF(CF3)CF2OCF=CF2 、
などが挙げられる。
【0018】
これらのジエンモノマー(c)は、1種または2種以上まれていてもよい。
なお、本発明に係る含フッ素共重合体では、用いられた各モノマー(a)、(b)および必要により用いられるモノマー(c)量に対応する量で、各モノマーに由来する成分単位(a)、(b)、(c)がランダムにあるいは規則的に配列して存在している。
【0019】
このような含フッ素共重合体中における各成分単位(a)、(b)、および必要により含まれる成分単位(c)の組成比は、赤外線吸収スペクトルなどから後述する方法にて求めることができる。なお、本発明の含フッ素共重合体は、その好ましい態様では、全ての水素原子がフッ素置換されたパーフルオロ共重合体であるため、汎用的な溶媒には不溶となる。そのため、19F-NMR測定による成分組成比の同定は行わないことが多い。
【0020】
また、この含フッ素共重合体中においては、用いられた各モノマーは、その炭素・炭素2重結合部位で2重結合が開裂して単結合のモノマーユニット(重合単位、成分単位などとも言う。)となり、隣接するモノマーユニットと互いに結合(連結)しているものと考えられる。なお、2個の二重結合を有するエーテル系含フッ素ジエンモノマー(c)では、これら複数の2重結合部位の一部〜全部が開裂して単結合となり、これら複数の2重結合部位で隣接するモノマーユニットと結合して、一部架橋構造が形成されているものと考えられる。
【0021】
本発明では、上記含フッ素共重合体としては、その結晶融解熱量ΔH(測定法:後述)が完全非晶質である0J/gに近づくほど、光透過性に有利となる傾向があり、本発明では、上記含フッ素共重合体の結晶融解熱量ΔHが15J/g以下、好ましくは13J/g以下であることが高い熱時強度と光透過性の両方に優れた含フッ素共重合体となる点で望ましい。なお、結晶融解熱が13J/gを超え、特に15J/gを超えると、得られる含フッ素共重合体は優れた高熱時強度を有するものの光透過率が低下してしまい、高熱時強度と高光透過率を両立させることが困難となってしまう。
【0022】
また、この含フッ素共重合体は、MIT曲げ寿命(ASTM−D−2176準拠し、MIT折り畳み耐久試験機を使用して、厚さ200μmフィルムにて測定。)を計測すると、5万回サイクルの試験後においてもフィルムの損傷が見られず耐屈曲性に優れている。
本発明に係る含フッ素共重合体を用いて100μmの厚さに成形されたフィルムの250〜650nmにおける光透過率は、60%以上、好ましくは70%以上と透明性に優れており、また、25℃における引っ張り破断強度(ASTM−D−1708準拠、引張速度200mm/min.)が15Mpa以上、好ましくは20Mpa以上であり、150℃における引っ張り破断強度が1Mpa以上、好ましくは5Mpa以上と常温および高温熱時の強度にも優れた成型品を与えるため、この含フッ素共重合体は、フィルム、シート、チューブ、ホースなどの各種成形体形成用の成形材料として好適に使用することができ、その成形体は、薬液チューブ、燃料ホースなどの軟質・透明・耐薬品性が要求される用途などの用途に好適である。
【0023】
本発明によれば、耐薬品性に優れ、光透過性、耐屈曲性および熱時強度に優れた含フッ素共重合体が提供される。
[含フッ素共重合体の製造]
本発明に係る含フッ素共重合体の製造方法では、上記の含フッ素共重合体を製造するに際して、上記共重合用モノマー(a)、(b)及び必要によりモノマー(c)を、重合の進行と共に、得るべきポリマー中の各成分単位の組成比(すなわち、各モノマー(a)、(b)、(c)由来の成分単位の組成比)と同様の比率で逐次、反応系に導入することが好ましい。このようにして含フッ素共重合体を製造することにより、共重合体の組成分布が小さいものとなり、TFE-TFEホモ結合に由来する結晶部をより低減することができるなどの特徴を有している。
【0024】
なお、本発明では、用いられる共重合用モノマー(a)、(b)および必要により用いられるモノマー(c)には、共重合性に差異があることが多い。そのため、例えば、重合開始時等の共重合反応の初期においては、テトラフルオロエチレンなどに比して、共重合性の低いコモノマーが存在すると、目標とする共重合体中の各成分単位(a)、(b)、(c)の組成比と同様の組成比で、コモノマー(a)、(b)、(c)を仕込んでも、意図したものとは異なり、共重合体中の各成分単位の組成分布が不均一となってしまう。
【0025】
そこで、本発明では、共重合反応の初期例えば、仕込み時には、共重合されにくいコモノマー量が高い配合比(組成比)となるようにコモノマー(a)、(b)、(c)を仕込んで共重合反応させ、その後、上記のように、目標とする共重合体の組成比と同様の共重合用モノマー組成比で、モノマー(a)、(b)、(c)を含むモノマー混合物を反応系内に適時、添加して共重合反応を進行させる、いわゆる「分添」を行うことが好ましい。このようにして共重合反応を行うと、含フッ素共重合体中の各成分単位の組成分布が均一で、小さくでき、TFE-TFEホモ結合に由来する結晶部を低減することができることから、特に光透過性に優れた含フッ素共重合体(樹脂)が、より短い重合時間で、より低コストで得られる傾向がある。また、分添重合の方がより短い重合時間での上記特性の含フッ素共重合体の製造が達成しやすい。
【0026】
以下、本発明で好ましく用いられる、含フッ素共重合体の製造方法について詳述する。
本発明の含フッ素共重合体の製造方法としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの方法が採用されるが、重合原料由来の不純物含有量をより低減しやすい溶液重合および懸濁重合が好ましい。
【0027】
上記含フッ素共重合体の製造の際には、原料モノマー(a)、(b)及び必要により用いられるモノマー(c)、重合溶媒(乳化・分散剤)、重合開始剤が、通常、用いられる。
具体的には、溶液重合の場合には、重合溶媒として、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、アルコール、ハイドロカーボン、パーフルオロ化合物等を用いることができる。
【0028】
また、懸濁重合の場合には、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、アルコール、ハイドロカーボン、パーフルオロ化合物などの媒体に水を加えたものを重合溶媒として用いることができる。これらの溶媒と水との混合比については、重合温度、重合圧力、原料モノマーの仕込量などに応じて任意に変更することができるが、重合熱の除去、共重合組成の均一化の観点から、有機溶媒の0.2〜10倍重量の水を共存させることが好ましい。
【0029】
重合開始剤としては、例えばジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネートおよびアゾ系のものを用いることができる。共重合体の耐熱性を考慮すると、含フッ素系、好ましくはパーフルオロ系のラジカル開始剤が好ましい。ラジカル開始剤の使用量は、用いる溶媒、重合条件、重合温度によって異なり、一概には決定できないが、通常、重合に用いるモノマーに対し、0.5〜20モル%、好ましくは1〜10モル%に相当するラジカル開始剤を仕込み時に添加することができる。また、重合条件、モノマー組成比によっては重合が進行し難い場合があるが、このような場合は重合途中で再度ラジカル開始剤を追加して重合を促進させるようにしても良い。
【0030】
また、含フッ素共重合体を得るために必要な原料モノマーの仕込み方法としては、重合モノマーを「分添」仕込みすること、つまり、重合反応の進行と共に重合モノマーを、得るべきポリマー中に存在する、各モノマー由来の成分単位の組成比と同様の比率で逐次、反応系に導入することが重要である。このことにより、上記したように、共重合体の組成分布が小さいものとなり、TFE-TFEホモ結合に由来する結晶部をより低減することができる。
【0031】
上記含フッ素共重合体の製造の際に添加可能なその他の配合成分としては、重合法により異なるが、乳化剤、pH調整剤、分散剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、還元剤等が挙げられる。
本発明では、このような共重合反応は、重合温度:約0〜80℃、好ましくは10〜50℃の温度範囲で行われる。また、重合圧力:約0.2〜3.0Mpa・G、好ましくは0.3〜2.0Mpaの圧力範囲で行われる。
【0032】
反応終了後は、得られた重合体混合物から有機溶媒を減圧留去し、減圧濾過、遠心分離器などにより水層の分離、減圧乾燥を行うことによりより、所定の含フッ素共重合体を回収することができる。
[含フッ素加工品]
得られた含フッ素共重合体は、成形温度における溶融粘度値に応じて、圧縮成形、押し出し成形、カレンダー成形、ブロー成形、射出成形などを行い、さらには、二次加工としての切削加工、溶接加工、溶融加工などを行うことにより、フィルム、シート、チューブ、ホースなどの各種成形体(含フッ素加工品)に加工することができる。
【0033】
すなわち、本発明に係る含フッ素加工品は、上記の何れかに記載の含フッ素共重合体を成形してなる。
特に、このようにして得られた含フッ素加工品は、上記含フッ素共重合体の優れた特性を保持しており、例えば、耐熱性が要求されるような成形体に適している。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、耐薬品性に優れ、高光透過性、耐屈曲性、熱時強度にバランス良く優れた含フッ素共重合体が提供される。
また、本発明によれば、重合体の組成分布が小さいものとなり、TFE-TFEホモ結合に由来する結晶部がより低減されており、上記特性の共重合体がより短い重合時間により、低コストで、効率よく得られるような、含フッ素共重合体の製造方法が提供される。
【0035】
本発明によれば、上記含フッ素共重合体を用いて100μmの厚さに成形されたフィルムの250〜650nmにおける光透過率は、60%以上、好ましくは70%以上と透明性に優れており、また、150℃における引っ張り破断強度が1Mpa以上、好ましくは5Mpa以上と常温および高温熱時の強度にも優れた成型品を与えるため、フィルム、シート、チューブ、ホースなどの各種成形材料として好適に使用することができる。
【0036】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、以下の実施例、比較例等で用いた試験方法等は、以下の通りである。
〈共重合体組成比の測定〉
・赤外吸収スペクトルを用いて、下記の式により共重合体中の各成分単位の組成比の測定を行った。
【0037】
【数1】
【0038】
(W:共重合体中のアリルエーテル系含フッ素化合物ユニットの重量%、D8.35:8.35μmの吸光度、D4.25:4.25μmの吸光度。)
なお、含フッ素共重合体中の各成分単位の組成比を求める上記式(W=D8.35/D4.25)中で、D8.35は含フッ素共重合体中のアリルエーテル系のユニット末端に由来するCF3基の吸収であり、D4.25は、ポリマー主鎖のCF2に由来する吸収であり、この吸収強度の比率により、含フッ素共重合体中のユニット(b)量すなわちアリルエーテル系含フッ素化合物ユニット(b)の量を求めることができる。
〈 MIT 曲げ寿命の測定〉
・ASTM D-2176に準拠したMIT折り畳み耐久試験機を用いた。厚さ200μmのフィルムを用い試験を行い、5万サイクルまでにフィルムの損傷が確認されない場合を○、5万サイクルまでにフィルムの損傷が確認された場合を×とした。
〈光透過率の測定〉
・日本分光社製の紫外可視分光光度計を用い、厚さ100μmのフィルムについて、波長250nmまたは650nmで測定した。
〈引っ張り破断強度の測定〉
・ASTM-D-1708に準拠し、共重合体試料を引っ張り速度200mm/min.で、25℃および150℃において引張り、該試料の破断時の強度を求めた。
〈溶融粘度の測定〉
・東洋精機製作所のメルトインデクサーを用いて試料の溶融粘度を測定した。測定の際には、得られた共重合体試料を内径9.5mmのシリンダーに入れ、350℃の温度に5分間保った後、5kgのピストン加重下に、内径2.095mm、長さ8.00mmのオリフィスを通して押し出したときの押出速度を測定して、共重合体の溶融粘度を求めた。
〈結晶融解熱量の測定〉
セイコーインスツルメント社製の結晶融解熱量測定器「DSC220C型」により含フッ素共重合体試料の結晶融解熱量を測定した。
【0039】
温度プログラムは、30℃から10℃/min.で350℃まで試料を加熱後、10℃/min.で30℃まで冷却し、再度350℃まで10℃/min.で昇温する際の吸熱ピークの吸熱熱量を試料の結晶融解熱量とした。
【0040】
【実施例1】
攪拌機付きの内容量3LのSUS316製オートクレーブを真空(-0.09Mpa)まで脱気し、
イオン交換水 ・・・・・・・・・・・・・・・1,200 g、
パーフルオロ(2-n-ブチルテトラヒドロフラン)(溶剤)・・・531 g、
2-プロパノール(連鎖移動剤) ・・・・・・・・・・0.1 g、
を仕込んだ後、オートクレーブを液体窒素で冷却し、内容物を固化した後、十分に脱気を行った。さらに窒素を0.1MPaの圧力まで導入し、そのまま内容物が溶解するまで昇温した(昇温の終点:10℃)。
【0041】
この操作(すなわち、上記「液体窒素による内容物の冷却・固化→ 脱気→ 窒素ガス導入→ 昇温」の一連の操作)を3回繰り返しオートクレーブ中の酸素を十分に除去した後、初期仕込みとして、
テトラフルオロエチレン[TFE] ・・・・・・・・・・170 g (50mol%)、
パーフルオロ(メチルアリルエーテル)[PFMA]・・・・・367 g (50mol%) 、
をそれぞれ仕込み、30℃に加温すると、オートクレーブの内圧は0.85MPa・Gとなった。
【0042】
ついで、開始剤としてビスパーフルオロイソブチリルパーオキサイドの(CClF2CF2CHClF)溶液を定量ポンプにより導入し重合を開始させた。
重合反応の進行に伴って、オートクレーブの内圧が0.8MPa・Gまで低下したらTFEを内圧が0.85MPa・Gになるまで追加供給する操作を、TFEの分添量が170gになるまで繰り返した。その際、他の共重合モノマーも、TFEの分添量(TFE/PFMAの所望の配合比率に応じて逐次供給されるTFE量(モル%))に応じてTFE/PFMA=90/10モル%の組成比で均一分添(供給)した。分添終了後、0.5Pa・Gまでエージングを行い、重合を完結させた。
【0043】
その後、オートクレーブに、溶媒および未反応モノマー冷却捕集するためのトラップを介して、設けられた真空ポンプを駆動させることにより、オートクレーブ内を撹拌しつつ減圧し、溶媒および未反応モノマーを完全に除去した。
オートクレーブから取り出された重合物を、水層から濾別した後、減圧乾燥させて白色粉末状の含フッ素共重合体を得た。
【0044】
含フッ素共重合体の組成(すなわち含フッ素共重合体中における各モノマー由来の成分単位量の組成。以下同様。)はTFE/PFMA=90/10(モル%)、DSCによる結晶融解熱量ΔHは7J/g、溶融粘度は20g/10min.、MIT曲げ寿命は○、各波長(250nm、650nm)における光透過率は71%(250nm)、95%(650nm)、引張破断強度は28Mpa(25℃)、12Mpa(150℃)であった。
【0045】
併せて結果を表1に示す。
【0046】
【実施例2】
実施例1において、脱気後の初期仕込みを、
テトラフルオロエチレン[TFE]・・・・・・・・・・96 g (30.0mol%)、
パーフルオロ(メチルアリルエーテル)[PFMA]・・・・・482 g (70.0mol%)、
に変更し、均一分添組成比をTFE/PFMA=80/20(モル%)で行い、全分添モノマー量(均一分添したTFEの合計量)が130gになったところで分添を終了とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0047】
得られた白色粉末状の含フッ素共重合体の組成はTFE/PFMA=80/20モル%、DSCによる結晶融解熱は3J/g、溶融粘度は42g/10min、MIT曲げ寿命は○、各波長(250nm、650nm)における光透過率は83%(250nm)、96%(650nm)、引張破断強度は24Mpa(25℃)、6Mpa(150℃)であった。
結果を併せて表1に示す。
【0048】
【実施例3】
実施例1において、脱気後の初期仕込みを、
テトラフルオロエチレン[TFE]・・・・・123 g (80.0mol%)、
パーフルオロ(メチルアリルエーテル)[PFMA]・・・・・67 g (20.0mol%)、
に変更し、均一分添組成比をTFE/PFMA=95/5(モル%)で行い、全分添モノマー量(均一分添したTFE合計量)が190gになったところで分添を終了とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0049】
得られた白色粉末状の含フッ素共重合体の組成はTFE/PFMA=95/5(モル%)、DSCによる結晶融解熱は13J/g、溶融粘度は12g/10min、MIT曲げ寿命は○、各波長(250nm、650nm)における光透過率は70%(250nm)、92%(650nm)、引張破断強度は30Mpa(25℃)、14Mpa(150℃)であった。
結果を併せて表1に示す。
【0050】
【比較例1】
実施例1において、脱気後の初期仕込みを、
テトラフルオロエチレン[TFE]・・・・・137 g (90.0mol%)、
パーフルオロ(メチルアリルエーテル)[PFMA]・・・・・33 g (10.0mol%)、
に変更し、均一分添組成比をTFE/PFMA=99/1(モル%)で行い、全分添モノマー量(均一分添したTFE合計量)が170gになったところで分添を終了とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0051】
得られた白色粉末状の含フッ素共重合体の組成はTFE/PFMA=99/1モル%、DSCによる結晶融解熱は17J/g、溶融粘度は5g/10min、MIT曲げ寿命は×、各波長(250nm、650nm)における光透過率は52%(250nm)、90%(650nm)、引張破断強度は30Mpa(25℃)、20Mpa(150℃)であった。
結果を併せて表1に示す。
【0052】
【比較例2】
実施例1において、脱気後の初期仕込みを、
テトラフルオロエチレン[TFE]・・・・・16 g (18.0mol%)、
パーフルオロ(メチルアリルエーテル)[PFMA]・・・・・154 g (82.0mol%)、
に変更し、均一分添組成比をTFE/PFMA=68/32(モル%)で行い、全分添モノマー量(均一分添したTFE合計量)が110gになったところで分添を終了とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0053】
得られた白色粉末状の含フッ素共重合体の組成はTFE/PFMA=69/31モル%、DSCによる結晶融解熱は検出されなかった。溶融粘度は60g/10min.、MIT曲げ寿命は×、各波長(250nm、650nm)における光透過率は84%(250nm)、96%(650nm)、引張破断強度は5Mpa(25℃)、0.2Mpa(150℃)であった。
【0054】
結果を併せて表1に示す。
【0055】
【比較例3】
実施例1において、脱気後の初期仕込みを、
テトラフルオロエチレン[TFE]・・・・・170 g (50.0mol%)、
ヘキサフルオロプロピレン[HFP]・・・・・255 g (50.0mol%)、
に変更し、均一分添組成比をTFE/HFP=90/10(モル%)で行い、全分添モノマー量(均一分添したTFE合計量)が170gになったところで分添を終了とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0056】
得られた白色粉末状の含フッ素共重合体の組成はTFE/HFP=90/10モル%、DSCによる結晶融解熱は7J/g、溶融粘度は18g/10min.、MIT曲げ寿命は×、各波長(250nm、650nm)における光透過率は64%(250nm)、93%(650nm)、引張破断強度は23Mpa(25℃)、7Mpa(150℃)であった。
結果を併せて表1に示す。
【0057】
【比較例4】
実施例3において、脱気後の初期仕込みを、
テトラフルオロエチレン[TFE]・・・・・170 g (80.0mol%)、
ヘキサフルオロプロピレン[HFP]・・・・・255 g (20.0mol%)、
に変更し、均一分添組成比をTFE/HFP=95/5(モル%)で行い、全分添モノマー量(均一分添したTFE合計量)が180gになったところで分添を終了とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0058】
得られた白色粉末状の含フッ素共重合体の組成はTFE/HFP=95/5モル%、DSCによる結晶融解熱は14J/g、溶融粘度は10g/10min、MIT曲げ寿命は×、各波長(250nm、650nm)における光透過率は59%(250nm)、90%(650nm)、引張破断強度は26Mpa(25℃)、8Mpa(150℃)であった。
結果を併せて表1に示す。
【0059】
【表1】
Claims (5)
- 目標とする共重合体の組成比と同様の共重合用モノマー組成比で、テトラフルオロエチレン(a)、式[I]:CF 2 =CFCF 2 O−Rf(式[I]中、Rfはエーテル性酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜8のフルオロアルキル基を示す。)で表されるアリルエーテル系含フッ素化合物(b)、エーテル系含フッ素ジエン化合物(ジエンモノマー(c))を含むモノマー混合物を反応系内に適時、添加して共重合反応を進行させてなり、
テトラフルオロエチレン(a)から誘導される成分単位を70.0〜98.0モル%、上記式[I]で表されるアリルエーテル系含フッ素化合物(b)から誘導される成分単位を2.0〜30.0モル%、エーテル系含フッ素ジエン化合物(ジエンモノマー(c))から誘導される成分単位を5モル%以下(但し、全成分単位の合計を100モル%とする。)有する含フッ素共重合体であって、結晶融解熱量が15J/g以下であることを特徴とする含フッ素共重合体。 - 共重合反応の初期の仕込み時には、得るべきポリマーの組成比を有するポリマーにおいて共重合されにくいコモノマー量が、高い配合比(組成比)となるように、コモノマーとしてテトラフルオロエチレン(a)、上記式[I]で表されるアリルエーテル系含フッ素化合物(b)、エーテル系含フッ素ジエン化合物(ジエンモノマー(c))を仕込んで共重合反応させ、その後、目標とする共重合体の組成比と同様の共重合用モノマー組成比で、テトラフルオロエチレン(a)、上記式[I]で表されるアリルエーテル系含フッ素化合物(b)、エーテル系含フッ素ジエン化合物(ジエンモノマー(c))を含むモノマー混合物を反応系内に適時、添加して共重合反応を進行させてなることを特徴とする請求項1に記載の含フッ素共重合体。
- 上記式[I]で表されるアリルエーテル系含フッ素化合物(b)が、パーフルオロ(メチルアリルエーテル)である請求項1〜2の何れかに記載の含フッ素共重合体。
- 請求項1〜3の何れかに記載の含フッ素共重合体を成形してなる含フッ素加工品。
- 請求項1〜3の何れかに記載の含フッ素共重合体を製造するに際して、共重合反応の初期の仕込み時には、得るべきポリマーの組成比を有するポリマーにおいて共重合されにくいコモノマー量が、高い配合比(組成比)となるように、コモノマーとしてテトラフルオロエチレン(a)、式[I]:CF 2 =CFCF 2 O−Rf(式[I]中、Rfはエーテル性酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜8のフルオロアルキル基を示す。)で表されるアリルエーテル系含フッ素化合物(b)、エーテル系含フッ素ジエン化合物(ジエンモノマー(c))を仕込んで共重合反応させ、その後、目標とする共重合体の組成比と同様の共重合用モノマー組成比で、テトラフルオロエチレン(a)、上記式[I]で表されるアリルエーテル系含フッ素化合物(b)、エーテル系含フッ素ジエン化合物(ジエンモノマー(c))を含むモノマー混合物を反応系内に適時、添加して共重合反応を進行させることを特徴とする含フッ素共重合体の製造方法。
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