JP4307456B2 - グルタチオンおよびγ−グルタミルシステインを過剰生成するSaccharomycesCerevisiae株ならびにその使用プロセス - Google Patents

グルタチオンおよびγ−グルタミルシステインを過剰生成するSaccharomycesCerevisiae株ならびにその使用プロセス Download PDF

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Description

(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、Saccharomyces cerevisiae株、ならびにグルタチオンおよびγ−グルタミルシステインを過剰生成するためのプロセスに関する。
(2.関連技術の説明)
グルタチオン(GSH)は、L−グルタミン酸、L−システインおよびグリシンから構成される低分子ペプチドであり、天然の抗酸化物質である。グルタチオンは、1888年に初めて単離され、1921年に正式に命名された。グルタチオンは、動物、植物および微生物を含む生物において広く見出されている。動物細胞におけるその代謝および生理学的機能、ならびにグルタチオンを過剰生成するためのプロセスは、詳しく報告されている(非特許文献1;非特許文献2;および非特許文献3)。グルタチオンは、肝臓保護剤(liver protector)、毒素のスカベンジャーおよび点眼剤において使用されてきた。グルタチオンは、機能性健康食品製品の有望な成分でもある。
グルタチオンを生成するための産業的プロセスとしては、化学合成、抽出、酵素的生成、および醗酵が挙げられ、その中でも、その操作が容易であるので、醗酵が好ましい。さらに、酵母を使用して醗酵によって生成されるグルタチオンは、食品において使用されるには、他の微生物(例えば、組換えEscherichia coli)を使用する醗酵方法により生成される同じ化合物よりも安全である。理由として、酵母は、機能性飲料および健康食品製品中で使用するためのグルタチオンを調製するために広く利用されているからである。アミドおよびインドフェノールのような変異原(これは、グルタチオン生成を改良する)によって生成される酵母変異株もまた、報告されている(特許文献1)。
生成物であるγ−グルタミルシステイン(γ−GC)は、グルタチオン合成プロセスにおけるグルタチオンの前駆体である。γ−グルタミルシステインは、マウスにおいて、肝臓に対するCClによる損傷を低下させるにあたって有効であることが報告されている。この生成物は、グルタチオンと同様の機能を有し、グルタチオンシンセターゼと同時に存在する場合、細胞中のグルタチオン含有量を調節し得る。さらに、γ−グルタミルシステインは、ヒト乳汁中の重要な要素であり、被験体の免疫発生能力を高め得る。
特開昭60−248199号公報 Tateishi N.ら,J.B.1974.75:93−103 Issels R.ら,Biochem Pharmacol.1988.37:881−888 Meister,A.ら,Ann.Rev.Biochem.1983.52:711−60
(発明の要旨)
本発明の1つの課題は、YAO2032およびYAO3083からなる群より選択されるSaccharomyces cerevisiae株の全ての特徴を含む微生物株の生物学的に純粋な培養物を提供することである。上記培養物は、グルタチオンおよびその前駆体であるγ−グルタミルシステインを生成し得る特徴的な性質を有する。
本発明の別の課題は、本発明に従う培養物を含む組成物を提供することである。
本発明のさらに別の課題は、グルタチオンおよび/またはその前駆体であるγ−グルタミルシステインの生成のためのプロセスを提供することである。このプロセスは、本発明の生物学的に純粋な培養物を培養することによって特徴づけられる。
上記の課題を解決するために、本発明は、具体的には以下を提供する:
(項目1) YAO2032株およびYAO3083株からなる群より選択されるSaccharomyces cerevisiae株のすべての特徴を含む微生物株の生物学的に純粋な培養物であって、該培養物は、グルタチオンおよびその前駆体であるγ−グルタミルシステインを生成することが可能な特徴的性質を有し、該YAO2032株は、ドイツ連邦共和国のD38124、ブラウンシュヴァイク、マッシャーオーダーヴェーク1bにあるドイチェ ザムルング フォン ミクロオルガニスメン ウント ツェルクルツゥーレン ゲーエムベーハー(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)(DSMZ)に、受託番号DSM 17789として受託されており、該YAO3083は、ドイツ連邦共和国のD38124、ブラウンシュヴァイク、マッシャーオーダーヴェーク1bにあるドイチェ ザムルング フォン ミクロオルガニスメン ウント ツェルクルツゥーレン ゲーエムベーハー(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)(DSMZ)に受託番号DSM 17790として受託されている、培養物。
(項目2) 項目1に記載の培養物であって、前記株は、YAO3083株である、培養物。
(項目3) 項目1に記載の培養物であって、前記株は、YAO2032株である、培養物。
(項目4) 項目1に記載の培養物を含む、組成物。
(項目5) 項目4に記載の組成物であって、該組成物は、薬学的組成物または食品組成物である、組成物。
(項目6) グルタチオンおよび/またはその前駆体であるγ−グルタミルシステインの生成のためのプロセスであって、該プロセスは、項目1に記載の微生物株の生物学的に純粋な培養物を培養する工程によって特徴付けられる、プロセス。
(項目7) 項目6に記載のプロセスであって、前記微生物は、Saccharomyces cerevisiae YAO3083である、プロセス。
(項目8) 項目6に記載のプロセスであって、前記微生物は、Saccharomyces cerevisiae YAO2032である、プロセス。
(項目9) 項目6に記載のプロセスであって、培養培地が、アミノ酸を含む、プロセス。
(項目10) 項目9に記載のプロセスであって、前記アミノ酸は、システイン、グリシン、およびグルタミン酸からなる群より選択される、プロセス。
(項目11) 項目10に記載のプロセスであって、前記アミノ酸は、システインである、プロセス。
(項目12) 項目9に記載のプロセスであって、前記アミノ酸は、0.1%〜0.75%の範囲の濃度を有する、プロセス。
(項目13) 項目9に記載のプロセスであって、前記アミノ酸は、醗酵開始から15時間目〜48時間目に前記培養培地に添加される、プロセス。
(項目14) 項目6に記載のプロセスであって、前記培養は、バッチ培養または流加培養である、プロセス。
(項目15) 項目14に記載のプロセスであって、前記培養は、流加培養である、プロセス。
(項目16) 項目6に記載のプロセスであって、前記微生物は、20℃〜40℃の範囲にある温度にて培養される、プロセス。
(項目17) 項目6に記載のプロセスであって、前記微生物は、3〜7の範囲にあるpH値にて培養される、プロセス。
(項目18) 項目6に記載のプロセスであって、前記微生物は、好気性条件下で培養される、プロセス。
(項目19) 項目6に記載のプロセスであって、グルタチオンおよび/またはγ−グルタミルシステインを前記培養培地から回収する工程をさらに包含する、プロセス。
(発明の詳細な説明)
酵母は、グルタチオンを生成し得る。本発明は、グルタチオンおよびその前駆体であるγ−グルタミルシステインを過剰生成し得る、新規かつ安定なSaccharomyces cerevisiae株を提供する。グルタチオンおよび/またはその前駆体を生成するためのプロセスもまた、本発明において例示されている。
本発明は、YAO2032およびYAO3083からなる群より選択されるSaccharomyces cerevisiae株の全ての特徴を含む微生物株の生物学的に純粋な培養物を提供する。この培養物は、グルタチオンおよびその前駆体であるγ−グルタミルシステインを生成し得る特徴的な性質を有する。
YAO2032およびYAO3083はともに、フード インダストリー リサーチ アンド デベロップメント インスティテュート(Food Industry Research and Development Institute;FIRDI)(Hsinchu,Taiwan,R.O.C.)で、受託番号CCRC21727の下で受託されたSaccharomyces cerevisiae 1−12に由来する。このSaccharomyces cerevisiae 1−12株(CCRC21727)は、本発明に従うアッセイにおいて5〜8mg/g 乾燥細胞のグルタチオンを生成する。このSaccharomyces cerevisiae 1−12(CCRC21727)株は、30〜300μg/mLのN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)を用いた変異誘発に15分間〜20分間供され、得られた変異株は、酸化剤および/または毒素(例えば、アジ化ナトリウム(NaN)、1,2,4−トリアゾールおよびメチルグリオキサール)を含むスクリーニング培地でスクリーニングされる。高濃度の酸化剤を含有するスクリーニング培地で変異株を培養すると、グルタチオンおよび/またはその前駆体を過剰生成する能力を有する株が、代々引き続いてスクリーニングされ得る。本発明に従って、YAO2032株は、変異誘発およびスクリーニングの3世代後に得られ、この株は、25〜26mg/g 乾燥細胞重量のグルタチオンを安定に生成する。YAO3083は、YAO2032を変異させ、その変異株をスクリーニングすることにより、さらに得られ、この株は、32〜34mg/g 乾燥細胞重量のグルタチオンを安定に生成する。YAO3083によるグルタチオンの収量は、野生型株であるSaccharomyces cerevisiae 1−12(CCRC21727)より4倍高い。
本発明に従う株は、非常に安定で、数回の継代および長期間の保存の後ですら、高収量でグルタチオンおよびその前駆体を生成する能力を保持する。本発明のアッセイにおいて、YAO2032およびYAO3083は、遺伝的安定性を保持し、30世代後ですら、高収率でグルタチオンおよびその前駆体を生成する。加えて、YAO2032およびYAO3083はまた、3年間の保存の後ですら、グルタチオンおよびその前駆体を過剰生成するにおいて活発である。よって、本発明に従う株は、産業的醗酵中で使用するために提供される。
YAO2032およびYAO3083に形態的特徴は、野生型株Saccharomyces cerevisiae 1−12(CCRC21727)の形態的特徴に類似している。酵母を培養するために一般に使用される培地は、YAO2032およびYAO3083の培養に適している。本発明の一実施形態において、本発明の株を培養するための培地は、YA培地(pH5.1)(3g/L 酵母抽出物、3g/L 麦芽抽出物、5g/L ペプトン、および10g/L デキストロースを含有する)である。本発明の一実施形態において、YAO2032およびYAO3083は、好気条件下で20〜40℃で培養される。
本発明はまた、本発明の培養物を含む組成物を提供する。
Saccharomyces cerevisiaeは、数千年もの間ヒトによって消費されてきており、ヒトの消費について安全な微生物であると考えられている。本発明の組成物は、本発明に従う微生物株の生物学的に純粋な培養物を含む。好ましくは、本発明に従う組成物は、薬学的組成物または食品組成物である。本発明の好ましい一実施形態において、この組成物は、機能性飲料または健康食品製品である。
本発明は、グルタチオンおよびその前駆体であるγ−グルタミルシステインの生成のためのプロセスをさらに提供し、本発明の微生物の生物学的に純粋な培養物を適切な培地中で培養する工程によって特徴づけられる。
好ましくは、この培養培地は、アミノ酸を含む。グルタチオンは、L−グルタミン酸、L−システインおよびグリシンから構成される。従って、アミノ酸を培養培地に添加すると、グルタチオンおよびその前駆体の生成に利益をもたらす。好ましくは、このアミノ酸は、システイン、グリシンおよびグルタミン酸からなる群より選択されるものである。最も好ましくは、このアミノ酸はシステインである。グリシンまたはシステインを添加すると、γ−グルタミルシステインの生成に利益をもたらす。さらに、システインを添加すると、グルタチオンの生成にも利益をもたらす。システインとグリシンとを組み合わせると、グルタチオンの生成に利益をもたらし、γ−グルタミルシステインのほぼ全てが、グルタチオンに変換される。システインとグルタミン酸とを組み合わせると、グルタチオンおよびγ−グルタミルシステインの両方の生成に利益をもたらす。好ましくは、このアミノ酸は、0.1%〜0.75%の範囲の濃度を有する。
このアミノ酸を添加するタイミングは、種々の程度にまで収量に対して影響を及ぼす。好ましくは、このアミノ酸は、醗酵開始から15〜48時間後に、培養培地に添加される。
醗酵は、当業者に周知の様式で行われ得る。好ましくは、培養は、バッチ培養または流加培養である。より好ましくは、培養は、流加培養である。バッチ培養法におけるグルタチオン収量および乾燥細胞重量は、ともに十分である。さらに、流加培養において得られるグルタチオン収量および乾燥細胞重量は、バッチ培養において得られるものより良好である。
本発明に従うプロセスの温度は、酵母を使用する一般的な醗酵の温度に類似している。好ましくは、この微生物は、20〜40℃の範囲の温度で培養される。より好ましくは、この微生物は、30℃の温度で培養される。
本発明に従う培養物のpH値は、酸性から中性である。好ましくは、この微生物は、3〜7の範囲のpH値で培養される。より好ましくは、この微生物は、pH値7で培養される。
グルタチオンおよびγ−グルタミルシステインは、微生物中に存在するかまたは培養培地中に存在する。本発明に従うプロセスは、グルタチオンおよび/またはγ−グルタミルシステインを液体培養培地から回収する工程をさらに包含する。この回収は、当業者に周知の様式で行われ得る。
以下の実施例は、例示目的で提供されるにすぎず、本発明の範囲を限定するとは意図されない。
(株)
実施例において使用される株は、Saccharomyces cerevisiae 1−12(CCRC21727)およびその変異株である。
(振盪フラスコ培養)
グリセロールストックされたCCRC21727を、寒天プレート上に配置して、30℃にて2日間培養した。その後、新しい単一コロニーを、4.75mLのYM培地(3g/Lの酵母抽出物、3g/Lの麦芽抽出物、5g/Lのペプトン、10g/Lのデキストロース、pH5.1)中に接種し、30℃にて攪拌速度150rpmで24時間培養した。その培養物のうちの5%を、スクリーニング培地(60g/Lグルコース、30g/Lペプトン、30g/L酵母抽出物、pH5.1)中にさらに接種し、同じ条件下で24時間〜48時間培養した。
(醗酵槽培養)
新たな単一コロニーを、50mLのYM培地中に接種した。24時間培養した後、その培養物のうちの3%〜5%を、100mLの活性培地(60g/Lのグルコース、12g/Lのペプトン、12g/Lの酵母抽出物、1g/LのMgSO・7HO、pH5.1)中に、同じ条件下で接種した。その培養物のうちの5%を、主要培地(55g/Lのグルコース、8.3g/Lの糖蜜、7g/Lのコーンスティープリカー(corn steep liquid)、4g/Lの(NHSO4、6g/LのKHPO、2.9g/Lの(NH)HPO、1.5g/LのMgSO・7HO、pH5.1)を含む5L醗酵槽中にさらに接種した。一般的な醗酵条件は、温度30℃、攪拌速度500rpm、曝気1L/分であった。
(変異誘発)
30℃にて3時間新たに培養した培養物を、滅菌リン酸緩衝液で2回洗浄し、その後、30μg/mL〜300g/mLのNTGを添加した。その細胞とNTGとを混合して、15分間そのままにした。リン酸緩衝液で2回洗浄した後の細胞を、1,2,4−トリアゾールと、NaNと、塩化ベンジルと、メチルグリオキサールとを含む、スクリーニングプレート上に配置した。そのプレートを、変異株をスクリーニングするために、30℃にて3日間〜7日間培養した。
(グルタチオンを評価するための発色反応)
1mLの培養物を、細胞ペレットを収集するために遠心分離した。そのペレットに、酸抽出用の0.1N酢酸を同体積添加した。抽出された細胞を、水中にて10分間煮沸し、氷上に放置した。その上清を得るために、さらに遠心分離を実施した。その上清に、3mLの反応溶液(0.6mMの 5,5’−ジチオビス−2−ニトロ安息香酸(DTNB)、0.1Mのリン酸緩衝液、pH7)を3mL添加し、充分に混合した。10分間反応させた後、その溶液のOD412吸光度を、その反応物のイオウ含有量を評価するためにアッセイした。
(グルタチオンおよびγ−グルタミルシステインを分析するための高速液体クロマトグラフィー(HPLC))
上記のような酸抽出溶液を、HPLCアッセイに供した。上記の上清0.5mLに、0.1mLの40mMヨード酢酸および0.2mLの1M NaHCOを添加した。この混合物を、暗中にて1時間反応させ、その後、一晩反応のために、着色剤である0.5mLの1.5% 1−フルオロ−2,4−ジニトロ−ベンゼン(FDNB)を添加した。その後、その反応溶液を、12,000rpmにて5分間遠心分離して濾過した。HPLC条件を、下記に列挙した(Schofield,J.D.およびX.Chen.1995.J.Cereal Science.21:127−136):
移動相:緩衝液A:80%メタノール;
緩衝液B:200mLの酢酸ナトリウム溶液(122mLの水と378mLの氷酢酸との中にある272gの酢酸ナトリウム三水和物)および800mLの緩衝液A
クロマトグラフィーカラム:LichrosorbTM NHカラム
流量:1mL/分間
検出器:UV検出器(365nm)。
(実施例1:株の変異誘発およびスクリーニング)
Saccharomyces cerevisiae 1−12(CCRC21727)を、NTG変異誘発に供し、その変異株を、酸化剤および/または毒素(1,2,4−トリアゾール、NaN、塩化ベンジル、およびメチルグルオキサール)によってスクリーニングした。NTGと、酸化剤および/または毒素の量が多く使用されるほど、グルタチオンの収量が高かった。Saccharomyces cerevisiae 1−12の野生株(CCRC21727)のグルタチオン収量は、5mg/g乾燥細胞〜8mg/g乾燥細胞であった。4世代の変異誘発およびスクリーニングの後、グルタチオン収量が25mg/g乾燥細胞〜26mg/g乾燥細胞であるYAO2032と、グルタチオン収量が34mg/g乾燥細胞であるYAO3083を、約8,000個の変異株から得た。理解され得るように、本発明の株のグルタチオン収量は、約4倍高かった。このプロセスおよび系統図を、図1に示す。
YAO2032およびYAO3083は、ドイツ連邦共和国のD38124、ブラウンシュヴァイク、マッシャーオーダーヴェーク1b(Mascheroder Weg 1b,D38124,Braunschweig,Germany)にあるドイチェ ザムルング フォン ミクロオルガニスメン ウント ツェルクルツゥーレン ゲーエムベーハー(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)(DSMZ)に、それぞれ受託番号DSM 17789およびDSM 17790として受託された。
(実施例2:安定性)
野生型株であるSaccharomyces cerevisiae 1−12(CCRC21727)、ならびにYAO2032およびYAO1176を、30世代にわたって連続継代し、それらの収量を評価した。
その結果を、図2に示す。示されるように、本発明の株は、良好な安定性を有する。
別に、野生型株であるSaccharomyces cerevisiae 1−12(CCRC21727)、ならびにYAO2032およびYAO3083を、長期保存アッセイに供した。その結果を、表1に示す。4℃において3年間保存した凍結乾燥細胞のグルタチオン収量、乾燥細胞重量、および生存率は、新鮮な細胞と同様であり、有意な変化はなかった。このように、その保存安定性は、満足がいくものであった。
(表1)
(実施例3:培地の改変)
グルタチオン生成を改良するために、L−システイン、グリシン、メチオニン、グルタミン酸、カザミノ酸、およびペプトンを、YAO2032の醗酵開始時または培養15時間目に、培養培地に添加した。412nmでの吸光度の結果を、図3に示す。この図は、細胞内イオウ含有量が、開始時に上記アミノ酸を添加した場合に少し改善されたことを示す。しかし、これらのイオウ含有量は、非常に増加した。システインを添加することにより最良の効果が得られることに、注意すべきである。
HPLCを、グルタチオンおよびγ−グルタミルシステインの分布を分析するために、さらに利用した。その結果を、図4に示す。グリシンを添加すると、グルタチオン生成を阻害し、システインを添加すると、グルタチオンが増加することなくγ−グルタミルシステインが蓄積されることが、見出された。グルタミン酸の添加だけが、γ−グルタミルシステイン生成もグルタチオン生成も誘導しない。
システインは、γ−グルタミルシステインの蓄積を改善するので、システインと他のアミノ酸とを組み合わせることもまた、アッセイした。その結果を、図5に示す。理解され得るように、システインとグリシンとを組み合わせると、グルタチオン生成に利益をもたらし、ほぼすべてのγ−グルタミルシステインが、グルタチオンへと変換される。システインとグルタミン酸とを組み合わせると、グルタチオン生成およびγ−グルタミルシステイン生成の両方に利益をもたらす。
(実施例4:5L醗酵槽における培養)
YAO3083を、本実施例において利用した。そのバッチ培養における結果を、図6に示す。40時間のバッチ培養の後、乾燥細胞重量当たりのグルタチオン生成および細胞溶液の体積当たりのグルタチオン濃度の両方を、定常期において得た。1L当たりの乾燥細胞重量は、約15gであった。グルタチオン濃度は、0.3g/Lであった。乾燥細胞重量当たりのグルタチオン重量は、30mg/g乾燥細胞重量であった。一方、γ−グルタミルシステイン生成が、少し増加した。
流加培養の結果を、図7に示す。システインおよびグリシンを、培養培地に添加した。細胞密度が、60g/Lに達した。この細胞密度は、バッチ醗酵において測定された15g/Lよりもかなり大きく、報告されている25g/L(米国特許第4,582,801号)よりもかなり大きい。15mg/g乾燥細胞重量という乾燥細胞重量当たりのグルタチオン重量は、バッチ醗酵における30mg/g乾燥細胞重量よりも小さかったが、全グルタチオン濃度は、1.0mg/mLに達した。この濃度は、バッチ醗酵における0.3g/Lよりもかなり大きかった。
別の局面において、γ−グルタミルシステインもまた、流加培養において生成された。上記細胞中の量は、10mg/g乾燥細胞重量であった。培地中の量は、0.5mg/g乾燥細胞重量であった。グルタチオンの生成およびγ−グルタミルシステインの生成の両方が、改善された。これによって、上記アミノ酸を連続添加すると、グルタチオン生成およびγ−グルタミルシステイン生成ならびに酵母細胞密度を改善することが、確認された。
(摘要)
本発明は、Saccharomyces cerevisiae YAO2032株またはYAO3083株の生物学的に純粋な培養物を提供する。この培養物は、グルタチオンおよびその前駆体であるγ−グルタミルシステインを生成することが可能な特徴的性質を有する。この培養物を含む組成物もまた、提供される。グルタチオンおよび/またはその前駆体であるγ−グルタミルシステインの生成のためのプロセスもまた、提供される。
本発明の実施形態が例示され記載されているが、種々の改変および改良が、当業者によってなされ得る。本発明は、例示されている特定の形態には限定されないことが、意図される。本発明の趣旨および範囲から逸脱しない改変すべてが、添付の特許請求の範囲において規定される範囲内にあることが、意図される。
図1は、野生型Saccharomyces cerevisiae 1−12(CCRC21727)に由来するグルタチオン過剰生成株の系統図を示す。N:アジ化ナトリウム。T:1,2,4−トリアゾール。M:メチルグリオキサール。B:塩化ベンジル。 図2は、種々の世代のグルタチオン生成変異株についての安定性試験の結果を示す。 図3は、YAO2032による細胞内硫黄含有化合物に対する種々のアミノ酸添加の比較を示す。白棒:開始時に添加。黒棒:15時間目に添加。 図4は、グルタチオンおよびγ−グルタミルシステイン生成に対する単一のアミノ酸添加の影響を示す。 図5は、グルタチオンおよびγ−グルタミルシステイン生成に対する種々のアミノ酸添加の影響を示す。 図6は、5L醗酵槽中でのグルタチオンバッチ醗酵の結果を示す。(白丸):OD660。(黒丸):グルタチオン濃度(mg/ml)。(黒菱形):細胞内グルタチオン含有量(mg/g 乾燥細胞重量)。(下向き白三角):グルコース濃度(%)。 図7は、5L醗酵槽でのグルタチオン流加培養醗酵の結果を示す。(黒丸):グルタチオン濃度(mg/ml)。(黒四角):細胞内グルタチオン含有量(mg/g DCW(乾燥細胞重量))。

Claims (18)

  1. Saccharomyces cerevisiae YAO2032株またはSaccharomyces cerevisiae YAO3083株生物学的に純粋な培養物であって、該培養物は、グルタチオンおよびその前駆体であるγ−グルタミルシステインを生成することが可能な特徴的性質を有し、該YAO2032株は、ドイツ連邦共和国のD38124、ブラウンシュヴァイク、マッシャーオーダーヴェーク1bにあるドイチェ ザムルング フォン ミクロオルガニスメン ウント ツェルクルツゥーレン ゲーエムベーハー(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)(DSMZ)に、受託番号DSM 17789として受託されており、該YAO3083は、ドイツ連邦共和国のD38124、ブラウンシュヴァイク、マッシャーオーダーヴェーク1bにあるドイチェ ザムルング フォン ミクロオルガニスメン ウント ツェルクルツゥーレン ゲーエムベーハー(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)(DSMZ)に受託番号DSM 17790として受託されている、培養物。
  2. 請求項1に記載の培養物であって、前記株は、YAO3083株である、培養物。
  3. 請求項1に記載の培養物であって、前記株は、YAO2032株である、培養物。
  4. 請求項1に記載の培養物を含む、薬学的組成物または食品組成物。
  5. グルタチオンおよび/またはその前駆体であるγ−グルタミルシステインの生成のためのプロセスであって、該プロセスは、請求項1に記載の微生物株の生物学的に純粋な培養物を培養する工程によって特徴付けられる、プロセス。
  6. 請求項に記載のプロセスであって、前記微生物は、Saccharomyces cerevisiae YAO3083である、プロセス。
  7. 請求項に記載のプロセスであって、前記微生物は、Saccharomyces cerevisiae YAO2032である、プロセス。
  8. 請求項に記載のプロセスであって、培養培地が、アミノ酸を含む、プロセス。
  9. 請求項に記載のプロセスであって、前記アミノ酸は、システイン、グリシン、およびグルタミン酸からなる群より選択される、プロセス。
  10. 請求項に記載のプロセスであって、前記アミノ酸は、システインである、プロセス。
  11. 請求項に記載のプロセスであって、前記アミノ酸は、0.1%〜0.75%の範囲の濃度を有する、プロセス。
  12. 請求項に記載のプロセスであって、前記アミノ酸は、醗酵開始から15時間目〜48時間目に前記培養培地に添加される、プロセス。
  13. 請求項に記載のプロセスであって、前記培養は、バッチ培養または流加培養である、プロセス。
  14. 請求項1に記載のプロセスであって、前記培養は、流加培養である、プロセス。
  15. 請求項に記載のプロセスであって、前記微生物は、20℃〜40℃の範囲にある温度にて培養される、プロセス。
  16. 請求項に記載のプロセスであって、前記微生物は、3〜7の範囲にあるpH値にて培養される、プロセス。
  17. 請求項に記載のプロセスであって、前記微生物は、好気性条件下で培養される、プロセス。
  18. 請求項に記載のプロセスであって、グルタチオンおよび/またはγ−グルタミルシステインを前記培養培地から回収する工程をさらに包含する、プロセス。
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