JP4628123B2 - 新規麹菌及びその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、アスペルギルス属に属する麹菌、及び該麹菌を用いる酒類の製造方法に関する。
焼酎、清酒、みりん等の酒類の製造では、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii、以下本発明では、AspergillusをA.と略記する)、アスペルギルス・アワモリ(A. awamori)、アスペルギルス・ニガー(A. niger)、アスペルギルス・オリーゼ(A. oryzae)といった麹菌が用いられている。麹菌は、各種酵素系に富んでおり、用途に応じ、その各種酵素系の発現に適した製麹方法が採られている。前記した酒類の製造においては、蒸煮した穀類等の固体原料へ麹菌の胞子を散布し、その表面で麹菌を増殖させる固体培養法により製麹された固体麹が広く利用されている。麹の原料となる米や麦等の穀類、イモ類等の種類により、また、それらのα化度、水分量により、製麹中の温度、湿度、培養時間、手入れ条件、通風・換気条件等のさまざまな製麹条件を調整して、糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性を目的とする一定の水準に保つように管理するのが一般的である。
焼酎、清酒、みりん等の酒類の製造では、醪を十分溶解させ原料利用率を向上させることが重要であるが、麹菌により得られる糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性だけでは不十分な場合がある。そのような場合、グルコアミラーゼ、α−アミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ等の市販酵素剤を添加して製造を行っている。コスト面、作業性等の点から、できるだけ酵素剤を使用せずに製造するのが望ましく、麹菌により得られる糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性を更に上昇させることができれば、酵素剤の使用量の低減につながるので、糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性をより上昇させた麹菌の開発が求められていた。
従来、麹菌の糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性を上昇させる方法としては、突然変異法、細胞融合法、形質転換法などがある。前記酵素活性に関し、親株よりも酵素活性を多重に上昇させる場合において、細胞融合法では、良質の形質を有する菌株同士を融合させる必要があるため、細胞融合に先立ち、良質の形質を有する菌株を得なければならない。したがって、多重に酵素活性を上昇させるには突然変異法あるいは形質転換法が有効である。例えば、麹菌の一種であるアスペルギルス・オリーゼ(A. oryzae)では、固体培養法及び液体培養法における酵素発現の差異に関する遺伝子工学的な解析研究がなされている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
アスペルギルス・ニドランス(A. nidulans)、アスペルギルス・ニガーでは、creA遺伝子の変異を行い、グルコース抑制が解除された変異株が得られている。
また、プロテアーゼ活性及びペプチダーゼ活性が上昇している麹菌とその育種法、及び該麹菌を用いる調味料の製造法がある(特許文献4)。更に、基本的代謝プロセスの調節に関与する遺伝子の変異により、目的とする各種酵素の発現の増強を図る方法がある(特許文献5、特許文献6)。
しかしながら、これらの方法では、広範な遺伝子の発現を制御する因子を常に活性化された状態にしてしまう、すなわち目的とする酵素以外の遺伝子の発現が活性化された状態にしてしまう、あるいは生育が顕著に影響を受けるなどの問題があった。
このように、種々の試みはなされているが、醸造用麹菌での実用株として、糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性が上昇し、かつ、生育が良好である菌株は得られていないのが現状である。
特開平10−84968号公報 特開平11−225746号公報 特開2002−191366公報 特開2001−321188公報 特表平11−512930号公報 特表2001−500022公報
本発明の目的は、親株よりも糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性が著しく上昇し、しかも焼酎、清酒等の醸造における実用株として有用な新規麹菌、及び該麹菌を用いて製麹し、得られた麹を用いる酒類の製造方法を提供することにある。
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明は、親株が、アスペルギルス・カワチに属する麹菌であって、親株よりもアリルアルコールに耐性を示し、かつ親株よりも糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性が上昇し、さらに親株よりもアクリフラビンに対して感受性を示す、アスペルギルス属に属する麹菌711C(FERM P−20275)に関し、第2の発明は、第1の発明に記載の麹菌を用いて製麹し、得られた麹を用いる酒類の製造方法であり、第の発明は、酒類が、焼酎である第の発明に記載の酒類の製造方法に関する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、白麹菌(アスペルギルス・カワチ)を親株とし、その変異処理株をアリルアルコール含有の寒天培地で培養し、麹菌の菌体当りのグルコアミラーゼ活性を指標として選択することによって、グルコアミラーゼ活性のみならず他の糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性が親株よりも顕著に上昇することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明では、親株よりも糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性が上昇したアスペルギルス属に属する麹菌、及び該麹菌を用いて製麹し、得られた麹を用いる酒類の製造方法を提供することができる。本発明の麹菌を、例えば焼酎等の酒類の製造に用いることにより、親株を用いた場合よりも原料利用率を向上させることができ、更に、グルコアミラーゼ、α−アミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ等の市販酵素剤の使用量を低減することができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明における親株として用いられる麹菌とは、分類上、こうじカビ属に属していればいかなる菌株であってもよく、特に限定はされないが、焼酎、清酒、みりん等の酒類の製造に使用できる糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性を有するアスペルギルス属に属する麹菌である。アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・オリーゼなどの麹菌が挙げられる。特に好ましくは、アスペルギルス・カワチ等に代表される白麹菌である。更に、前記した麹菌株を親株として、人為的に改変された株あるいは天然に存在する変異株なども包含される。
本発明の新規麹菌は、親株よりもアリルアルコールに耐性を示し、かつ親株よりも糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性が上昇したアスペルギルス属に属する麹菌であればよく、その取得方法に限定はないが、変異が好ましい。変異処理としては、公知の変異処理方法を用いることができ、物理的な紫外線(UV)、放射線等を照射させる方法、化学的なエチルメタンスルホネート、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、亜硝酸、アクリジン色素等の変異剤を用いる方法がある。特に好ましくは、紫外線(UV)を照射させる方法を挙げることができる。
本発明でいう「糖質分解酵素」とは、グルコアミラーゼ、α−アミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ及びセルラーゼからなる酵素群のうち1種又は2種以上をいい、「タンパク質分解酵素」とは、酸性プロテアーゼ及び酸性カルボキシペプチダーゼからなる酵素群のうち1種又は2種をいう。
本発明における各種酵素活性の測定は以下の通りである。
グルコアミラーゼ活性、酸性プロテアーゼ活性及び酸性カルボキシペプチダーゼ活性の測定は、第四回改正国税庁所定分析法により行った。第四回改正国税庁所定分析法は、例えば、平成5年2月20日、財団法人日本醸造協会発行、注解編集委員会編、「第四回改正国税庁所定分析法注解」(第四回改正版)、第211頁〜の「固体こうじ」の項に記載の方法である。
α−アミラーゼ活性の測定は、α−アミラーゼ測定キット〔キッコーマン(株)製〕を用いて行い、第四回改正国税庁所定分析法の活性に換算した。
α−グルコシダーゼ活性の測定は、今井らの方法〔日本醸造協会誌、第92巻、第4号、第296〜302頁(1997年)〕により行い、37℃で1分間に1μmoleのp−ニトロフェノールを遊離する酵素力をα−グルコシダーゼ活性の1単位とした。
β−グルコシダーゼ活性の測定は、太田らの方法〔日本醸造協会誌、第86巻、第7号、第536〜539頁(1991年)〕により行った。
セルラーゼ活性は、CMC(カルボキシメチルセルロース)糖化力で代替することとし、1%CMC溶液(50mM酢酸緩衝液、pH4.0)1mlに酵素液0.3mlを加え、40℃で60分間反応させたときに生成するグルコース量を測定し、グルコース1mgを生成する力価をセルラーゼ活性の1単位とした。
本発明の新規麹菌は、親株よりもアリルアルコールに耐性を示し、かつ親株よりも糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性が上昇したアスペルギルス属に属する麹菌であるという特徴を有する。本発明において、親株として用いる麹菌を培地に接種するときの形態は任意であり、胞子又は菌糸を用いることができる。本発明に使用する培地は、前記親株として用いる麹菌が生育できるものであれば限定はされないが、好ましくは、麹汁培地、YPD培地が挙げられる。常法により製麹を行い、麦麹及びイモ麹を調製して、得られた麹菌の評価を行った。なお、イモ麹には、麹の原料として、特開2001−95523公報記載の方法に従い、生イモを3mm×3mm×5mmにカットし、230℃で120秒焙炒した焙炒イモを用いた。
親株よりもアリルアルコールに耐性を示し、かつ親株よりも糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性が上昇したアスペルギルス属に属する麹菌の選抜方法の一例について説明する。具体的には、麹菌の胞子にUV照射を施した後、アリルアルコールを含有する寒天培地を用いて培養し、親株よりもアリルアルコール耐性を示す菌株の中から、麹菌の菌体当りのグルコアミラーゼ活性を指標として選択することによって、グルコアミラーゼ活性のみならず他の糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性が親株よりも顕著に上昇した変異株を取得することができる。
本発明でいう「親株よりもアリルアルコールに耐性を示す」とは、親株が市販の焼酎用麹菌アスペルギルス・カワチの場合、例えば、40mM、50mM及び60mMのアリルアルコールを含有する寒天培地を用いて、培養4日目から培養6日目までの生育の状態を観察し、変異株が親株よりも高いアリルアルコール濃度において、生育できることをいう。アスペルギルス・カワチ以外の他の菌株の場合、培地に含有させるアリルアルコール濃度は、各菌株に応じて適宜その濃度範囲を決定すればよい。
本発明の新規麹菌のうち、親株よりもアリルアルコールに耐性を示し、更に、親株よりもアクリフラビンに対して感受性を示す変異株は、親株よりも糖質分解酵素活性及びタンパク質分解酵素活性が顕著に上昇したアスペルギルス属に属する麹菌であるという特徴を有する。なお、アクリフラビンは、IUPAC名では3,6−ジアミノ―10−メチルアクリジニウムクロリドであるが、本発明では、一般名であるアクリフラビンに統一している。
本発明でいう「親株よりもアクリフラビンに感受性を示す」とは、親株が市販の焼酎用麹菌アスペルギルス・カワチの場合、例えば、0.030%、0.035%及び0.040%のアクリフラビンを含有する寒天培地を用いて、培養8日目から培養11日目までの生育の状態を観察し、変異株が親株よりも低いアクリフラビン濃度において、生育できないことをいう。アスペルギルス・カワチ以外の他の菌株の場合、培地に含有させるアクリフラビン濃度は、各菌株に応じて適宜その濃度範囲を決定すればよい。
本発明の新規麹菌は、親株よりもアリルアルコールに耐性を示し、かつ親株よりも糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性が上昇したアスペルギルス属に属する麹菌であり、麦麹及びイモ麹において、親株よりも、グルコアミラーゼ、α−アミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ及びセルラーゼの糖質分解酵素活性、更に酸性プロテアーゼ及び酸性カルボキシペプチダーゼのタンパク質分解酵素活性が顕著に上昇していることが確認されている。
焼酎用白麹菌であるアスペルギルス・カワチを親株として、本発明で新規に取得した麹菌は、下記の菌学的性質を有し、アスペルギルス属に属する麹菌であるが、親株よりもアリルアルコールに耐性を示し、更に、親株よりもアクリフラビンに対して感受性を示し、かつ親株よりも糖質分解酵素活性及びタンパク質分解酵素活性が顕著に上昇していることから、親株のアスペルギルス・カワチの変異株であると認め、Aspergillus kawachii 711C(以下、711Cと略記する)と命名、表示し、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにFERM P−20275として寄託されている。
711Cの菌学的性質を下記に示す。
(菌学的性質)
1.形態的性状
形態的性状において、711Cは、親株のアスペルギルス・カワチと相違はない。
2.生理的性質
(a)生育温度:15〜45℃
(b)最適生育温度:25〜40℃
(c)生育pH:2.0〜9.0
(d)最適生育pH:3.0〜9.0
(e)グルコアミラーゼ活性(麦麹及びイモ麹を製麹後、酵素活性を測定、以
下同じ)
親株であるアスペルギルス・カワチに比べて、グルコアミラーゼ活性は顕著に上昇していた(2〜3倍)。
(f)α−アミラーゼ活性(同上)
親株であるアスペルギルス・カワチに比べて、α−アミラーゼ活性は顕著に上昇していた(約2倍)。
(g)α−グルコシダーゼ活性(同上)
親株であるアスペルギルス・カワチに比べて、α−グルコシダーゼ活性は顕著に上昇していた(2〜5倍)。
(h)β−グルコシダーゼ活性(同上)
親株であるアスペルギルス・カワチに比べて、β−グルコシダーゼ活性は顕著に上昇していた(2〜8倍)。
(i)セルラーゼ活性(同上)
親株であるアスペルギルス・カワチに比べて、セルラーゼ活性は顕著に上昇していた(2〜5倍)。
(j)酸性プロテアーゼ活性(同上)
親株であるアスペルギルス・カワチに比べて、酸性プロテアーゼ活性は顕著に上昇していた(2〜3倍)。
(k)酸性カルボキシペプチダーゼ活性(同上)
親株であるアスペルギルス・カワチに比べて、酸性カルボキシペプチダーゼ活性は顕著に上昇していた(約2倍)。
(l)酸生成
酸度は麦麹で4〜6、イモ麹で6〜9を示し、親株であるアスペルギルス・カワチと比較しても遜色のない酸度を示し、焼酎等の酒類の製造に用いる醸造用麹菌としては十分なものであった。なお、酸度の測定は、第四回改正国税庁所定分析法により行った。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
711Cの取得
市販の焼酎用白麹菌アスペルギルス・カワチの胞子を用い、麹汁〔米麹:井水=1:4(重量)比率で混合し、55℃で18時間反応させた後、そのろ液を井水でブリックス度5.0にしたもの〕寒天培地に接種し、単一コロニーを生成させた。これを別の麹汁寒天培地に移植し、胞子を形成させ、この胞子の塊に0.025%Tween80を含む滅菌水溶液を加え、胞子をスプレッターで軽くかきとり、胞子懸濁液を得た。胞子懸濁液の菌数を1×10個/mlに調整し、この胞子懸濁液に20cmの距離から15WのUVランプを1分間照射した。このときの生存率は30〜50%であった。胞子懸濁液0.1mlを50mMアリルアルコールを含有する寒天培地に塗布し、30℃で6日間培養し、生育してくる菌株の中から、親株よりもアリルアルコール耐性を示す菌株を分離した。分離株について、麹汁寒天培地で胞子を形成させ、その胞子懸濁液を、炭素源として2%デンプン及び2%グルコースを含有する液体培地(500ml容斜ヒダ付三角フラスコに培地150ml)に植菌して、35℃、140rpmで培養した。20時間後、40時間後に培養液のグルコアミラーゼ活性を測定し、親株よりも有意に高いグルコアミラーゼ活性を示す菌株をスクリーニングした。本スクリーニング方法により、親株よりも糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性が上昇した麹菌の菌株が複数得られた。それらの菌株のうち、親株よりもアクリフラビンに対して感受性を示す、親株よりもグルコアミラーゼ活性が約2倍高い菌株である711Cは、グルコアミラーゼ活性のみならず他の糖質分解酵素活性及びタンパク質分解酵素活性の活性すべてにおいて親株よりも顕著に上昇していた。
711Cの培養及び薬剤耐性・感受性
(711Cの液体培養)
711Cと親株であるアスペルギルス・カワチについて、表1に示す3種類の炭素源の培地で、実施例1と同様の条件で液体培養を行い、20時間後、40時間後に培養液のグルコアミラーゼ活性を測定した。
Figure 0004628123
結果を図1に示す。
すなわち、図1は、711Cと親株について、各種炭素源の培地でのグルコアミラーゼ活性(U/mg菌体)を比較した図である。
40時間後のグルコアミラーゼ活性を比較すると、グルコアミラーゼの生産を抑制するといわれている4%グルコース培地では親株はほとんどグルコアミラーゼが生産されなかったのに対し、711Cはグルコアミラーゼが生産され、明らかに親株との違いが認められた。また、グルコアミラーゼの生産を誘導する4%デンプン培地においても、711Cは親株に比べてグルコアミラーゼ活性は約2倍に上昇していた。
更に、711Cと親株であるアスペルギルス・カワチについて、2%グルコース及び2%デンプンを含有する液体培地と4%デンプンを含有する液体培地で、実施例1と同様の条件で液体培養を行い、経時的に培養液のグルコアミラーゼ活性を測定した。
結果を図2に示す。
すなわち、図2は、711Cと親株について、液体培地での経時的なグルコアミラーゼ活性を比較した図であり、横軸は、それぞれ培養時間(時間)、縦軸はグルコアミラーゼ活性(U/mg菌体)を意味する。
両方の培地において、711Cは培養初期から親株に比べ、約2倍高いグルコアミラーゼ活性を示した。711Cにおけるグルコアミラーゼは、グルコースによる抑制が緩和されていた。
(711Cの固体培養)
711Cと親株であるアスペルギルス・カワチについて、麦麹、イモ麹を製麹し、50時間後の固体培養における各種酵素活性、pH、酸度、アミノ酸度を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0004628123
711Cは親株に比べ、グルコアミラーゼ活性、α−アミラーゼ活性、セルラーゼ活性(CMC糖化力で評価)は約2倍、α−グルコシダーゼ活性は約3倍、β−グルコシダーゼ活性は約6倍高くなった。酸性プロテアーゼ活性も約2倍高くなった。また、親株と同様に、生育も良好であった。
更に、市販の白麹菌5社7株について麦麹の製麹を行い、711Cと各種酵素活性を比較した。製麹は、26時間までは38℃(湿度98%)、26時間以降は35℃(湿度96%)とし、48時間後に出麹を行い、各種酵素活性を測定した。一般に市販されている白麹菌7株と比較した結果を表3に示す。
Figure 0004628123
711Cは、グルコアミラーゼ活性、α−アミラーゼ活性は約2倍、α−グルコシダーゼ活性は5〜6倍、β−グルコシダーゼ活性は3〜5倍、セルラーゼ活性(CMC糖化力で評価)は2〜3倍高くなった。酸性プロテアーゼ活性は2〜3倍、酸性カルボキシペプチダーゼ活性は約2倍高くなった。711Cは、各種酵素活性が上昇した麹菌であり、他の市販白麹菌に比べて優れていた。
これらの結果により、711Cは、液体培養、固体培養それぞれにおいて、糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性が親株よりも上昇し、また、親株と同様に、生育も良好で、醸造用麹菌での実用株として優れていることを示すものである。
(711Cの薬剤耐性)
711Cと市販の白麹菌7株について、40mM、50mM及び60mMのアリルアルコールを含有する寒天培地での生育を調べた。各菌株について、麹汁寒天培地で単一コロニーを生成させ、これを別の麹汁寒天培地に移植し、胞子を形成させた。各菌株について、0.025%Tween80溶液により胞子懸濁液を調製し、これを爪楊枝でアリルアルコールを含有する寒天培地にスポットし、30℃で4〜6日培養を行い、各菌株の生育を比較した。結果を表4に示す。
Figure 0004628123
培養4日目において、40mM、50mMのアリルアルコールを含有する寒天培地で市販の白麹菌7株は全く生育しないのに対し、711Cは生育が認められた。培養6日目においては、50mMのアリルアルコールを含有する寒天培地で711Cと他の市販の白麹菌7株との生育の違いがはっきりと確認でき、明らかにアリルアルコールに耐性を示した。
更に、711Cと市販の白麹菌7株について、0.030%、0.035%及び0.040%のアクリフラビンを含有する寒天培地での生育を調べた。各菌株について、胞子懸濁液を調製し、これを爪楊枝でアクリフラビンを含有する寒天培地にスポットし、30℃で8〜11日培養を行い、各菌株の生育を比較した。結果を表5に示す。
Figure 0004628123
アクリフラビンについては、0.035%の濃度のとき、菌株の生育に差が認められ、711Cは他の市販の白麹菌7株に比べ、アクリフラビンに対し感受性を示した。
711C麹を用いた麦焼酎の小仕込試験
711Cで製麹した麦麹を用いて、表6に示す仕込配合で麦焼酎の小仕込試験を行った。親株であるアスペルギルス・カワチで製麹した麦麹を用いたものを対照とした。711Cと親株を比較するため、酵素剤は添加しなかった。一次仕込は30℃一定で6日間、二次仕込は25℃一定で15日間発酵させた。
Figure 0004628123
炭酸ガス減量の経過を図3に示す。
すなわち、図3は、711Cと親株について、麦焼酎の小仕込試験における炭酸ガス減量の経過を示した図であり、横軸は、醪日数(日)、縦軸は炭酸ガス減量(g)を意味する。
711C麹を用いた醪は、対照に比べ、醪の溶解性が向上し、発酵経過(炭酸ガス減量の立上がり)が良好となった。
発酵終了醪の分析結果を表7に示す。
Figure 0004628123
711C麹を用いた醪は、対照に比べ、糖消費率が92.5%から94.0%に向上し、発酵歩合も88.8%から89.3%に向上した。なお、発酵歩合において、90%近いところでその歩合を更に上昇させていることは、711Cが優れた醸造用麹菌であることを示している。それらの醪を減圧蒸留したところ、711Cを用いたものは、対照と同様に、淡麗、きれいで良好な酒質であった。
711C麹を用いたイモ焼酎の小仕込試験
711Cで製麹したイモ麹を用いて、表8に示す仕込配合でイモ焼酎の小仕込試験を行った。親株であるアスペルギルス・カワチで製麹したイモ麹を用いたものを対照とした。711Cと親株を比較するため、酵素剤は添加しなかった。一次仕込は30℃一定で6日間、二次仕込は30℃一定で15日間発酵させた。
Figure 0004628123
炭酸ガス減量の経過を図4に示す。
すなわち、図4は、711Cと親株について、イモ焼酎の小仕込試験における炭酸ガス減量の経過を示した図であり、横軸は、醪日数(日)、縦軸は炭酸ガス減量(g)を意味する。
711C麹を使用した醪は、対照に比べ、醪の溶解性が向上し、発酵経過(炭酸ガス減量の立上がり)が良好となった。特に一次醪での差は顕著であった。
発酵終了醪の分析結果を表9に示す。
Figure 0004628123
711C麹を用いた醪は親株を用いたものに比べ、糖消費率が90.7%から92.2%に向上し、発酵歩合も82.0%から84.9%に向上した。なお、発酵歩合において、80%を超えたところでその歩合を更に上昇させていることは、711Cが優れた醸造用麹菌であることを示している。それらの醪を常圧蒸留したところ、711Cを用いたものは、対照と同様に、香り高く良好な酒質であった。
本発明の麹菌は、通常酒類の製造に用いられる麹菌(親株)よりも糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性が顕著に上昇しており、焼酎、清酒、みりん等の酒類の製造において、原料利用率の向上あるいは別途添加する市販酵素剤の低減につながるので、産業上極めて有用な発明である。
711Cと親株について、各種炭素源の培地でのグルコアミラーゼ活性を比較した図である。 711Cと親株について、液体培地での経時的なグルコアミラーゼ活性を比較した図である。 711Cと親株について、麦焼酎の小仕込試験における炭酸ガス減量の経過を示した図である。 711Cと親株について、イモ焼酎の小仕込試験における炭酸ガス減量の経過を示した図である。

Claims (3)

  1. 親株が、アスペルギルス・カワチに属する麹菌であって、親株よりもアリルアルコールに耐性を示し、かつ親株よりも糖質分解酵素活性及び/又はタンパク質分解酵素活性が上昇し、さらに親株よりもアクリフラビンに対して感受性を示す、アスペルギルス属に属する麹菌711C(FERM P−20275)
  2. 請求項1に記載の麹菌を用いて製麹し、得られた麹を用いる酒類の製造方法。
  3. 酒類が、焼酎である請求項2に記載の酒類の製造方法。
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