JP4304427B2 - 車両制動制御方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動クラッチ及び変速機を介して走行駆動力を駆動輪側へ出力するエンジンを備えた車両における制動制御方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンブレーキを補助する制動力を制御する技術、あるいは変速時にエンジンブレーキを制御する技術として次のような技術が存在する。
【0003】
すなわちアクセルペダル操作に対応させて、アクセルペダルが操作状態から解除された時に変速比に対応した減速度が実現されるようにエンジンブレーキ力を補助する制動力を発生させる技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
又、アクセルペダルの戻し操作に応じて、車速やエンジン回転数が高いほどアシスト制動力による減速度の立ち上がりを緩やかにして減速度の急変を防止する技術が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
この他、エンジンブレーキ自体を制御してアップシフト時の変速を円滑に実行する技術が知られている(例えば特許文献3,4)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−249034号公報(第5−6頁、第3図)
【特許文献2】
特開2001−315625号公報(第3−4頁、第4図)
【特許文献3】
特開平7−208600号公報(第9−10頁、第4,5図)
【特許文献4】
特開平11−255003号公報(第5頁、第2,3図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、自動クラッチを備えて運転者が直接クラッチを断接操作できない車両の場合に、自動クラッチが変速時に自動的に解放状態となった時には、変速前に存在したエンジンブレーキ力が、エンジン側と駆動輪側との間のトルク伝達が自動クラッチにより遮断されることによりエンジンブレーキ力が無効となる。このため車両の減速度が急に低下して運転者に違和感(いわゆる空走感)を与えるおそれがある。
【0008】
上述した従来技術では、このような自動クラッチの解放に起因したエンジンブレーキ力低減による車両減速度の低下の問題については開示がなく、運転者に対する違和感を解決することができない。
【0009】
本発明は、自動クラッチを用いた車両においてエンジンブレーキ時に自動クラッチが解放される時の車両減速度の急速な低下を抑制して運転者に対する違和感を防止することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の車両制動制御方法は、自動クラッチ及び変速機を介して走行駆動力を駆動輪側へ出力するエンジンを備えた車両における制動制御方法であって、前記自動クラッチが係合中にエンジンブレーキが発生すると推定された場合には、前記変速機の変速時に前記自動クラッチ解放状態となるのに応じて、前記自動クラッチから前記駆動輪までの間に設けられた制動手段から補助制動力を発生させてエンジンブレーキ力を補うとともに、前記自動クラッチの完全解放期間に前記補助制動力が、変速前の前記自動クラッチの係合状態におけるエンジンブレーキ力から変速後の前記自動クラッチの係合状態におけるエンジンブレーキ力へと変化するように前記補助制動力を制御することを特徴とする。
【0011】
自動クラッチの係合中にエンジンブレーキが発生すると推定される状況では、自動クラッチの解放状態に応じて前記制動手段の補助制動力によりエンジンブレーキ力を補っている。このため自動クラッチの解放によりエンジンブレーキ力の一部又は全部が駆動輪側に伝達されなくなっても、車両の制動力自体は維持されるので、車両減速度の急速な低下は抑制されて運転者に対する違和感を防止することができる。
【0012】
請求項2に記載の車両制動制御方法では、請求項1において、前記自動クラッチが係合中に生じるエンジンブレーキ力を表す物理量を推定し、該物理量の内で、前記自動クラッチの解放状態に応じて減少された分の物理量に相当する補助制動力を前記制動手段から発生させることによりエンジンブレーキ力を補うことを特徴とする。
【0013】
前記物理量としては、エンジンブレーキ力そのものや車両減速度を挙げることができ、エンジンブレーキ力はエンジン運転状態、変速機の変速段等から、車両減速度は車速等から推定できる。この物理量の内で自動クラッチの解放状態に応じて減少された分を、制動手段から補助制動力として発生させる。このことにより、自動クラッチの解放によりエンジンブレーキ力の一部又は全部が駆動輪側に伝達されなくなっても、車両の制動力自体は維持されるので、車両減速度の急速な低下は抑制されて運転者に対する違和感を防止することができる。
【0014】
請求項3に記載の車両制動制御方法では、請求項1又は2において、前記自動クラッチの解放時の変速段の変化に対応させて、前記補助制動力を変化させることを特徴とする。
【0015】
尚、変速段の切換時に発生する自動クラッチの解放においては、変速段の切り換えにより、自動クラッチ解放開始前と再係合後とではエンジンブレーキ力も異なる。このため補助制動力を変速段の変化に対応させて変化させることにより、運転者にとって、より違和感のない減速度を車両に与えることができる。
【0016】
請求項4に記載の車両制動制御装置は、自動クラッチ及び変速機を介して走行駆動力を駆動輪側へ出力するエンジンを備えた車両における制動制御装置であって、前記自動クラッチから前記駆動輪までの間に設けられた制動手段と、前記自動クラッチの作動状態を検出する自動クラッチ作動状態検出手段と、前記自動クラッチが係合されている場合でのエンジンブレーキの発生状態を推定するエンジンブレーキ推定手段と、前記エンジンブレーキ推定手段にてエンジンブレーキの発生が推定されると、前記自動クラッチ作動状態検出手段にて検出された前記変速機の変速時における前記自動クラッチの解放に応じて前記制動手段から補助制動力を発生させるエンジンブレーキ補助手段とを備え、前記自動クラッチの完全解放期間に前記補助制動力が、変速前の前記自動クラッチの係合状態におけるエンジンブレーキ力から変速後の前記自動クラッチの係合状態におけるエンジンブレーキ力へと変化するように前記補助制動力を制御することを特徴とする。
【0017】
エンジンブレーキ推定手段によりエンジンブレーキの発生が推定されると、エンジンブレーキ補助手段が、自動クラッチ作動状態検出手段にて検出された自動クラッチの解放状態に応じて制動手段から補助制動力を発生させることでエンジンブレーキ力を補っている。このため自動クラッチの解放によりエンジンブレーキ力の一部又は全部が駆動輪側に伝達されなくなっても、エンジンブレーキ補助手段の機能により車両の制動力自体は維持されるので、車両減速度の急速な低下は抑制されて運転者に対する違和感を防止することができる。
【0018】
請求項5に記載の車両制動制御装置では、請求項4において、前記エンジンブレーキ推定手段は、前記自動クラッチが係合されていた場合でのエンジンブレーキ力を表す物理量を推定し、前記エンジンブレーキ補助手段は、前記自動クラッチ作動状態検出手段にて検出された前記自動クラッチの解放状態に応じて前記自動クラッチにて伝達されるエンジンブレーキ力を表す物理量を算出し、該物理量と前記エンジンブレーキ推定手段にて推定された物理量との差に応じた補助制動力を前記制動手段から発生させることを特徴とする。
【0019】
エンジンブレーキ推定手段が推定する前記物理量としては、前述したごとくエンジンブレーキ力そのものや車両減速度を挙げることができ、エンジンブレーキ推定手段はエンジン運転状態、変速機の変速段、車速等から推定している。エンジンブレーキ補助手段は、この物理量の内で自動クラッチの解放状態に応じて伝達されるエンジンブレーキ力に対応する分を算出して、エンジンブレーキ推定手段が推定した物理量との差に応じて制動手段から補助制動力を発生させている。このことにより、自動クラッチの解放によりエンジンブレーキ力の一部又は全部が駆動輪側に伝達されなくなっても、エンジンブレーキ補助手段の機能により車両の制動力自体は維持されるので、車両減速度の急速な低下は抑制されて運転者に対する違和感を防止することができる。
【0020】
請求項6に記載の車両制動制御装置では、請求項4又は5において、前記変速機の変速段を設定する変速段設定手段を備え、前記エンジンブレーキ補助手段は、前記自動クラッチの解放時に、前記変速段設定手段にて設定される変速段に対応させて、前記補助制動力を変化させることを特徴とする。
【0021】
変速段設定手段により設定される変速段の切換時においては、この時に発生する自動クラッチの解放開始前と再係合後とではエンジンブレーキ力が異なる。このためエンジンブレーキ補助手段は、変速段の変化に対応させて補助制動力を変化させることにより、運転者にとって、より違和感のない車両減速度を実現することができる。
【0022】
請求項7に記載の車両制動制御装置では、請求項6において、前記変速段設定手段は、自動変速制御により変速段を設定することを特徴とする。
このような構成により、自動変速制御による変速中に減速度が急減することなく、あるいは更に変速段変化に対応した減速度が実現される。このため運転者にとって違和感のない車両減速度の自動変速を実現することができる。
【0023】
請求項8に記載の車両制動制御装置では、請求項6において、前記変速段設定手段は、手動変速制御において運転者による変速指示により変速段を設定することを特徴とする。
【0024】
このような構成により、手動変速制御による変速中に減速度が急減することなく、あるいは更に変速段変化に対応した減速度が実現される。このため運転者にとって違和感のない車両減速度の手動変速を実現することができる。
【0025】
請求項9に記載の車両制動制御装置では、請求項6〜8のいずれかにおいて、前記エンジンブレーキ補助手段は、前記自動クラッチの解放時に、前記変速段設定手段にて設定される変速段のダウンシフト変化あるいはアップシフト変化に対応させて、前記補助制動力を変化させることを特徴とする。
【0026】
特にダウンシフトにおいてはエンジンブレーキ力が強まる傾向にあり、このダウンシフト時に減速度が急減することは、運転者に違和感を生じさせやすい。
又、特に下り坂などではアップシフトによりエンジンブレーキを調節したい場合がある。例えば、運転者がエンジンブレーキ力の減少調節の目的で手動変速にてアップシフトさせた場合、減速度が必要以上に急減することは、運転者に操作上の違和感を生じさせるおそれがある。
【0027】
したがって、前述したごとくに、エンジンブレーキ補助手段により制動手段から補助制動力を発生させることにより、運転者に違和感を生じさせないようにできる。
【0028】
請求項10に記載の車両制動制御装置では、請求項5〜9のいずれかにおいて、前記エンジンブレーキ推定手段は、前記物理量を、エンジン運転状態と前記変速機の変速状態とを含むデータに基づいて推定することを特徴とする。
【0029】
エンジンブレーキ推定手段は、このようにエンジンブレーキ力を表す物理量を推定することにより、適切にエンジンブレーキ力の程度を把握でき、エンジンブレーキ補助手段は適切な補助制動力を制動手段から発生させることができる。このため運転者に対する違和感を効果的に防止できる。
【0030】
請求項11に記載の車両制動制御装置では、請求項5〜9のいずれかにおいて、前記エンジンブレーキ推定手段は、前記物理量を、前記自動クラッチの解放直前の車両減速度とすることを特徴とする。
【0031】
エンジンブレーキ力を表す物理量としては、自動クラッチの解放直前の車両減速度として設定することができる。このことにより直接検出したり簡易な計算でエンジンブレーキ力の程度を把握することができる。
【0032】
請求項12に記載の車両制動制御装置では、請求項4〜11のいずれかにおいて、前記制動手段は、ホイールブレーキ又はリターダであることを特徴とする。
このように制動手段として、ホイールブレーキ又はリターダを用いることができる。したがって既に車両に組み込まれている制動手段を利用でき、コストアップを抑制して容易に適用できる。
【0033】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1は、上述した発明が適用されたエンジン、クラッチ、変速機、制動装置及び電子制御ユニット(ECU)からなるシステムの概略構成を表すブロック図である。エンジン2はガソリンエンジンであり、車両走行駆動用として車両に搭載されている。又、変速機4は6段変速機(例えば平行軸式変速機)であり、自動クラッチ5を介してエンジン2のクランク軸6から駆動力を入力している。
【0034】
変速機4は、クラッチ出力軸Aiと内部のカウンタ軸との間に配置された複数のドライブギヤ、ドリブンギヤ及び後進アイドラギヤの間の駆動力伝達を、スリーブの係合制御にて実行している。このことによりクラッチ出力軸Aiから出力軸Aj側へ所望の変速比で駆動力を伝達して駆動輪側へ出力している。
【0035】
上記自動クラッチ5は、レリーズシリンダとマスタシリンダとを用いた油圧駆動機構PCにより、変速段の切換時、車両発進時、車両停止時等において係合あるいは解放がなされている。
【0036】
変速制御は、手動変速制御時にはシフト操作装置8に設けられたシフトレバー8aの操作に基づく指示により、変速制御装置としての変速制御用電子制御ユニット(変速制御用ECU)10が、油圧駆動機構PC及び変速油圧アクチュエータ11を駆動制御することにより実行される。更に変速制御は、自動変速制御時には変速線図に基づく指示により、変速制御用ECU10が、油圧駆動機構PC及び変速油圧アクチュエータ11を駆動制御することにより実行される。尚、本実施の形態では、シフトレバー8aには「R」、「N」、「A」、「M」、「+」、「−」の6ポジションが存在する。
【0037】
変速制御用ECU10は、運転者がシフトレバー8aを「R」にすると変速機4を後進段に設定し、「N」にするとニュートラルに設定する。シフトレバー8aを「A」にすると、自動変速モードが実行されて、前述した変速線図による自動変速制御を実行し、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて適切な変速段となるように変速機4を駆動する。シフトレバー8aを「M」にすると、手動変速モードが開始されて、運転者がシフトレバー8aを「M」に隣接するアップシフト位置「+」に移動させる毎にシフトが順次第1速から第6速へアップシフトするように変速機4が駆動制御される。又、「M」に隣接するダウンシフト位置「−」に移動させる毎にシフトは順次第6速から第1速へダウンシフトするように変速機4が駆動制御される。自動クラッチ5は、自動変速制御時も、シフトレバー8aによる手動変速制御時も、共に運転者が操作しなくても変速制御用ECU10により自動的に解放と係合とを実行する。
【0038】
変速制御用ECU10へは、シフト操作装置8のシフト位置SHFT信号、及び各スリーブの位置を検出するスリーブ位置センサ12のスリーブ位置SLVP信号が入力されている。更に変速制御用ECU10へは自動クラッチ5のストローク量を検出するクラッチストロークセンサ14のストロークPCL信号、及びクラッチ出力軸Aiの回転数NAを検出するクラッチ出力軸回転数センサ18から回転数NA信号が入力されている。更に変速制御用ECU10へは、出力軸Ajの回転数を検出する車速センサ22から車速SPD信号、エンジン2に設けられたエンジン回転数センサ24からエンジン回転数NE信号が入力されている。更に変速制御用ECU10へは、アクセル開度センサ26からアクセルペダル28の踏み込み量であるアクセル開度ACCP信号、スロットル開度センサ30からのスロットル開度TA信号が入力されている。これ以外に変速制御用ECU10へは制御上必要な信号が入力されているとともに、後述するエンジン制御用ECU32及びVSC−ECU50との間では、相互にデータ通信を実行して制御に必要なデータを相互に伝達している。
【0039】
エンジン制御装置としてのエンジン制御用ECU32は、前記エンジン回転数NE、スロットル開度TA、アクセル開度ACCP、更に空燃比センサ34からの空燃比AF信号等のデータに基づいてスロットルバルブ36の開度制御や燃料噴射量制御等を実行している。更に、変速制御用ECU10が変速時において自動クラッチ5を自動的に解放・係合する時には、変速制御用ECU10からの要求に応じてスロットル開度TAを調節してエンジン回転の吹き上がり等を防止して円滑に変速機4において変速段の切り換えがなされるようにしている。
【0040】
制動制御装置としてのVSC(ビークルスタビリティコントロール)−ECU50(演算制御回路に相当)は、制動力を制御することにより車両挙動の安定化を図るために設けられており、ブレーキペダル52の操作データを検出している。ブレーキペダル52にはブレーキスイッチ52aが設けられてブレーキペダル52の踏み込み状態BSWを表す信号をVSC−ECU50に出力する。
【0041】
ブレーキペダル52には、ブレーキペダル52の踏み込み力を増幅させる倍力装置としてブレーキブースタ56が設けられている。ブレーキブースタ56は、ダイヤフラム56aにより区画されて形成された2つの圧力室56b,56cを有している。この内、第1圧力室56bにはブレーキブースタ圧力センサ56dが設けられ、第1圧力室56b内のブレーキブースタ圧力BBPを検出してブレーキブースタ圧力BBPに対応する信号を出力する。この第1圧力室56bへは、チェック弁56eを介してエンジン2の吸気経路2a設けられたサージタンクから吸気負圧が供給されている。このチェック弁56eは第1圧力室56bからサージタンクへの空気の流れを許し、逆の流れは禁止するものである。
【0042】
ブレーキペダル52が踏み込まれると、ブレーキブースタ56により踏み込み力が増幅されて制動油圧として制動油圧アクチュエータ58に伝達される。そして制動油圧アクチュエータ58により制動油圧は、各車輪FL,FR,RL,RRに対応して設けられた各ホイールシリンダWfl,Wfr,Wrl,Wrrに供給され、ホイールブレーキとして車輪FL,FR,RL,RRに制動力を作用させる。
【0043】
VSC−ECU50は、例えば曲がり角などで車輪が横滑りしそうになると、自動的にエンジンの出力や制動力を制御して、車両を安定した走行状態に戻してくれる機能を果たすECUである。ここでは特に制動油圧アクチュエータ58に対して油圧制御を実行することでホイールシリンダWfl,Wfr,Wrl,Wrrによる制動力を調節して車両走行の安定性を維持する機能を果たしている。尚、後述するエンジンブレーキアシスト処理についてもVSC−ECU50の機能を利用して実行される。
【0044】
上述した各ECU10,32,50は、マイクロコンピュータを中心として構成されており、内部のROMに書き込まれているプログラムに応じてCPUが必要な演算処理を実行し、その演算結果に基づいて各種制御を実行している。これらの演算処理結果及び前述のごとく検出されたデータは、相互にデータ通信が可能とされているのでECU10,32,50間で必要に応じて交換される。このことによりECU10,32,50は相互に連携して制御を実行することが可能となっている。
【0045】
次に変速制御用ECU10にて実行される変速制御処理を図2のフローチャートに示す。本実施の形態は時間周期で繰り返し実行される処理である。本処理では、まず変速機4における変速段の設定が実行される(S102)。具体的には、自動変速モードの場合には前述したごとくアクセル開度ACCPと車速SPDとに基づいて変速段が設定され、手動変速モードの場合には前述したごとくシフトレバー8aの操作により変速段が設定される。
【0046】
そして変速段の切り換え要求が有るか否かが判定される(S104)。ステップS102にて求められている変速段と現在の変速段とが異なれば変速段の切り換え要求が有ると判断され、同じであれば変速段の切り換え要求が無いと判断される。
【0047】
ここで変速段の切り換え要求が無い場合には(S104で「NO」)、このまま一旦本処理を終了する。
一方、変速段の切り換え要求が有る場合には(S104で「YES」)、新たな変速段を設定するための変速シーケンス処理の実行が設定され(S106)、本処理を一旦終了する。この変速シーケンス処理は、変速制御用ECU10により別途実行されるものであり、まず自動クラッチ5を完全に解放するまで解放駆動する。そして要求される変速段を実現するいずれかのドライブギヤとドリブンギヤとの組み合わせを該当するスリーブにて噛合する。その後、自動クラッチ5を係合駆動して再係合させる一連の処理が実行されることになる。
【0048】
このような変速制御処理が実行されている時に、一旦、自動クラッチ5が完全に解放されて、エンジン2と駆動輪(ここでは後輪RL,RR)とが駆動力の伝達においては遮断状態となる。このため運転者がエンジンブレーキ力を生じさせる運転を実行させている場合には、エンジンブレーキ力が一時的に駆動輪に伝達されなくなる。
【0049】
VSC−ECU50は、この場合のエンジンブレーキ力を補う補助制動力を後輪側のホイールシリンダWrl,Wrrにより各後輪RL,RRに生じさせるように機能する。このためのエンジンブレーキアシスト処理を図3,4のフローチャートに示す。本処理は、時間周期で繰り返し実行される処理である。
【0050】
本処理は、変速前でのエンジンブレーキ力と、変速後でのエンジンブレーキ力とをそれぞれ推定し、この推定エンジンブレーキ力に対する自動クラッチ5の解放に伴う不足分を、ホイールブレーキ力により補う処理を行うものである。
【0051】
本処理(図3,4)が開始されると、まずクラッチ係合でないか否かが判定される(S202)。ここでのクラッチ係合とは、半クラッチ状態でなく自動クラッチ5が完全に係合している状態を意味する。したがって半クラッチでエンジンブレーキ力を部分的に伝達している場合、あるいは自動クラッチ5が完全に解放されてエンジンブレーキ力を全く駆動輪側に伝達していない状態は含まれない。
【0052】
ここでクラッチ係合である場合には(S202で「NO」)、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbに「0」を設定する(S203)。そしてエンジンブレーキ力伝達不足分Dbに対応する補助制動力出力処理がなされて(S240)、一旦本処理を終了する。この補助制動力出力処理(S240)により、VSC−ECU50は、制動油圧アクチュエータ58を制御することで駆動輪RL,RRの各ホイールシリンダWrl,Wrrに油圧を発生させてエンジンブレーキ力伝達不足分Dbに対応する補助制動力を発生させる。しかし、この時にはDb=「0」であるので補助制動力は実質的に発生しない。尚、例えば運転者によりブレーキペダル52が操作されて、ホイールシリンダWfl,Wfr,Wrl,Wrrに制動油圧が生じている場合には、補助制動力分の制動油圧は加えられないが、ブレーキペダル52の操作に対応した制動力は存在している。
【0053】
一方、クラッチ係合でない場合(S202で「YES」)、次に今回の非係合状態となって最初の処理か否かが判定される(S204)。ここで最初であれば(S204で「YES」)、次に変速前エンジンブレーキ力Eb1が推定され(S206)、更に変速後エンジンブレーキ力Eb2が推定される(S208)。尚、2回目以降は(S204で「NO」)、変速前エンジンブレーキ力Eb1は新たに推定されることはなく、変速後エンジンブレーキ力Eb2の値が推定により更新されてゆく(S208)。
【0054】
ここで、変速前エンジンブレーキ力Eb1は、変速する前の変速段におけるエンジンブレーキ力Ebを表し、変速後エンジンブレーキ力Eb2は、変速した後の変速段におけるエンジンブレーキ力Ebを表している。
【0055】
エンジンブレーキ力Ebは、例えばアクセル開度ACCP(ACCPの代わりにスロットル開度TAでも良い)、変速段、エンジン回転数NE(NEの代わりに車速SPDでも良い)及び後輪半径を用いて、計算又はマップから求められる。例えば、後輪半径は一定であるとして、図5は第1速、図6は第2速、図7は第3速、図8は第4速でエンジンブレーキ力Ebを求めるためのマップを示している。各マップにおいてエンジンブレーキ力Ebは、アクセル開度ACCPが大きくなるほど小さくなり、エンジン回転数NEが高くなるほど大きくなる。変速段の間では変速段が高くなるほどエンジンブレーキ力Ebは小さくなる。
【0056】
例えば、第2速から第1速への変速である場合には、変速前エンジンブレーキ力Eb1は図6のマップに従って第2速でのエンジンブレーキ力Ebが求められ、変速後エンジンブレーキ力Eb2は図5に従って第1速でのエンジンブレーキ力Ebが求められることになる。
【0057】
次にクラッチトルク伝達量Tcが推定される(S210)。このクラッチトルク伝達量Tcは、クラッチストロークセンサ14にて検出されるストロークPCLに基づいて算出される。尚、ストロークPCLが大きいほどクラッチトルク伝達量Tcは小さくなり、ストロークPCLが最大に近づくと、クラッチトルク伝達量Tcは「0(Nm)」となる。
【0058】
次にクラッチ解放駆動時か否かが判定される(S212)。前述した変速制御処理(図2)による変速シーケンス処理実行設定がなされることで変速のために自動クラッチ5が解放駆動(係合状態から完全解放状態までの駆動)されているとする。この時には(S212で「YES」)、変速前エンジンブレーキ力Eb1が、現在のクラッチトルク伝達量Tcより大きいか否かが判定される(S214)。
【0059】
Eb1≦Tcであれば(S214で「NO」)、自動クラッチ5は、まだ十分に変速前エンジンブレーキ力Eb1を駆動輪(後輪RL,RR)側へ伝達できる状態であるので、Db=「0」とすることで(S203)、実質的には補助制動力は出力されないようにして(S203)、一旦本処理を終了する。
【0060】
一方、Eb1>Tcであれば(S214で「YES」)、自動クラッチ5は変速前エンジンブレーキ力Eb1を駆動輪側へ十分に伝達できない状態であるので、次式1の計算によりエンジンブレーキ力伝達不足分Dbが算出される(S216)。
【0061】
【数1】
Db ← Eb1 − Tc … [式1]
前記式1により設定されるエンジンブレーキ力伝達不足分Dbは、自動クラッチ5の解放状態の程度により、係合状態でのエンジンブレーキ力Eb1に対して不足している制動力を表している。
【0062】
次に、こうして求められたエンジンブレーキ力伝達不足分Dbに対応する補助制動力出力が設定されて(S240)、一旦本処理を終了する。
図9のタイミングチャートに例示するごとく、例えば、第3速から第2速に変速する時は、解放駆動時に自動クラッチ5が解放されて行くに従って、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbの補助制動力が発生する(t0〜)。このことによりエンジンブレーキ力Eb1に対する不足分を補っている。
【0063】
尚、例えば運転者によりブレーキペダル52が操作されて、既にホイールシリンダWfl,Wfr,Wrl,Wrrに制動油圧が生じている場合がある。この場合には、駆動輪RL,RRのホイールシリンダWrl,Wrrに対する制動油圧は、ブレーキペダル52の操作に対応した制動油圧に、更にエンジンブレーキ力伝達不足分Dbに対応した制動油圧分が加えられることになる。本実施の形態及び他の実施の形態にてなされる補助制動力発生についても同様に実行される。
【0064】
そして、自動クラッチ5が完全に解放されて解放駆動が終了すると(t1)、エンジンブレーキ力Eb1は完全に駆動輪側には伝達されなくなる。この時にはステップS212にて「NO」と判定される。次にクラッチ係合駆動時か否かが判定される(S218)。最初はギヤ切り換えのために自動クラッチ5は完全解放状態に維持されているので(S218で「NO」)、次にステップS218にて「NO」と判定される最初のタイミングか否かが判定される(S224)。最初であれば(S224で「YES」)、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbに変速前エンジンブレーキ力Eb1を設定する(S226)。これは変速前エンジンブレーキ力Eb1を補助制動力にて完全に補うためである。そしてステップS240が実行されて、エンジンブレーキ力伝達不足分Db(この時は変速前エンジンブレーキ力Eb1)に応じた補助制動力がホイールシリンダWrl,Wrrの油圧制御により発生する。
【0065】
次の制御周期では、ステップS224にて「NO」と判定され、補助制動力の変動量αが算出される(S227)。この変動量αは、現時点から変速機4において新たな変速段に対応するギヤ噛合が完了するまでの時間tsを予測して、この時間tsにエンジンブレーキ力伝達不足分Dbを変速後エンジンブレーキ力Eb2まで次第に変化させるために設定される値である。例えば、制御周期毎に次式2に示すごとく算出する。
【0066】
【数2】
α ← tc ×(Db − Eb2)/ts … [式2]
尚、tcはエンジンブレーキアシスト処理の制御周期であり、時間tsは制御周期毎にtc分短くなるように設定される。時間tsの初期値としては例えば図9に示す期間(t1〜t3)であり、自動クラッチ5の完全解放からギヤ切り換えが最短時間で行われた場合のギヤ切り換え完了までの時間を予め実験にて求めて設定している。
【0067】
次に変速前エンジンブレーキ力Eb1が変速後エンジンブレーキ力Eb2より大きいか否かが判定される(S228)。Eb1<Eb2であれば(S228で「NO」)、次にDb>Eb2か否かが判定される(S230)。最初はDb(=Eb1)<Eb2であるので(S230で「NO」)、次式3に示すごとくエンジンブレーキ力伝達不足分Dbから変動量αが減算されて、新たにエンジンブレーキ力伝達不足分Dbとして設定される(S234)。ここでは実際には変動量α<0であるので、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbは、変動量αの絶対値分増加することになる。
【0068】
【数3】
Db ← Db − α … [式3]
こうしてステップS240が実行されて、変速前エンジンブレーキ力Eb1より変動量αの絶対値分増加したエンジンブレーキ力伝達不足分Dbに対応した補助制動力が出力される。以後、制御周期毎に前記式3によりエンジンブレーキ力伝達不足分Dbは、変動量αの絶対値分の漸増を繰り返す(t1〜)。
【0069】
そしてクラッチ係合駆動時になる前に(S218で「NO」)、Db>Eb2となった場合には(S230で「YES」、t3)、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbには、変速後エンジンブレーキ力Eb2を設定するようになる(S236)。したがってエンジンブレーキ力伝達不足分Dbは変速後エンジンブレーキ力Eb2より大きくなることはなく、クラッチ係合駆動時となるまで、Db=Eb2を維持することになる。
【0070】
そして新たな変速比のギヤ噛合が完了して前述した変速シーケンス処理にてクラッチ係合駆動が開始されると(S218で「YES」、t4)、次に変速後エンジンブレーキ力Eb2がクラッチトルク伝達量Tcより大きいか否かが判定される(S220)。初期においてはクラッチトルク伝達量Tc=0であることから、Eb2>Tcであるため(S220にて「YES」)、自動クラッチ5は十分に変速後エンジンブレーキ力Eb2を駆動輪側へ伝達できない状態であるので、次式4の計算によりエンジンブレーキ力伝達不足分Dbが算出される(S222)。
【0071】
【数4】
Db ← Eb2 − Tc … [式4]
ここではエンジンブレーキ力伝達不足分Dbは、自動クラッチ5の解放の程度により変速後エンジンブレーキ力Eb2に対して不足している分の制動力を表している。
【0072】
次に、こうして求められたエンジンブレーキ力伝達不足分Dbに対応する補助制動力出力がなされ(S240)、一旦本処理を終了する。
以後、自動クラッチ5が係合状態となるまで、ステップS222にて前記式4の計算により、クラッチトルク伝達量Tcの上昇に応じてエンジンブレーキ力伝達不足分Dbを小さくし、これに対応して補助制動力を小さくしてゆく処理が行われる(t4〜)。
【0073】
そして自動クラッチ5が係合状態となると(S202で「NO」、t5)、Db=「0」とされることにより(S203)、実質的に補助制動力は出力されなくなる(S240)。
【0074】
このことにより図9に実線にて示すごとく、車両減速度は、自動クラッチ5が途中で解放されても(t0〜t5)、滑らかに第3速の状態から第2速の状態へ変化させることができる。尚、比較例として示した一点鎖線は、補助制動力を付与しなかった場合での車両減速度であり、空気抵抗及び変速機4から駆動輪RL,RRまでの回転軸等のフリクションによる程度の車両減速度であって、非常に車両減速度が小さくなっている。
【0075】
次に、変速段を第3速から第4速にアップシフトしてエンジンブレーキ力を減少させる場合について説明する。この場合のタイミングチャートを図10に示す。この場合は変動量αの値は前記式2から変動量α>0に設定される。このため前記式3によりエンジンブレーキ力伝達不足分Dbは減少することになる。
【0076】
すなわち、一旦、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbが上昇して変速前エンジンブレーキ力Eb1に到達する(t10〜t11)。そして変速前エンジンブレーキ力Eb1は変速後エンジンブレーキ力Eb2より大きいので(S228で「YES」)、次にDb<Eb2か否かが判定される(S232)。最初はDb(=Eb1)>Eb2であるので(S232で「NO」)、前記式3に示すごとくエンジンブレーキ力伝達不足分Dbから変動量αが減算されて、新たにエンジンブレーキ力伝達不足分Dbとして設定される(S234)。ここでは前述したごとく変動量α>0であるので、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbは変動量α分減少する。
【0077】
こうしてステップS240が実行されて、変速前エンジンブレーキ力Eb1より変動量α分減少したエンジンブレーキ力伝達不足分Dbに応じて、補助制動力が出力される。以後、制御周期毎に前記式3によりエンジンブレーキ力伝達不足分Dbは、変動量α分の漸減を繰り返す(t11〜)。
【0078】
そしてクラッチ係合駆動時となる前に(S218で「NO」)、Db<Eb2となると(S232で「YES」、t13)、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbに変速後エンジンブレーキ力Eb2を設定するようになる(S236)。したがってエンジンブレーキ力伝達不足分Dbは変速後エンジンブレーキ力Eb2より小さくなることはなく、クラッチ係合駆動時となるまでDb=Eb2を維持することになる。
【0079】
そして新たな変速比のギヤ噛合が完了して前述した変速シーケンス処理にてクラッチ係合駆動が開始される(S218で「YES」、t14)。このことにより、前述したステップS220,S222,S240にて、自動クラッチ5が係合状態となるまで、前記式4の計算により、クラッチトルク伝達量Tcの上昇に応じてエンジンブレーキ力伝達不足分Dbを小さくし、これに対応して補助制動力を小さくしてゆく処理が行われる(t14〜)。
【0080】
そして自動クラッチ5が係合状態となると(S202で「NO」、t15)、補助制動力出力は停止する(S203,S240)。
このことにより図10に実線にて示すごとく、車両減速度は、自動クラッチ5が解放されている期間(t10〜t15)においても、滑らかに第3速の状態から第4速の状態へ変化させることができる。一点鎖線は、比較例として、補助制動力を付与しなかった場合での車両減速度を示している。
【0081】
上述した構成において、制動油圧アクチュエータ58及びホイールシリンダWrl,Wrrが制動手段に相当し、クラッチストロークセンサ14が自動クラッチ作動状態検出手段に相当する。VSC−ECU50にて実行されるエンジンブレーキアシスト処理(図3,4)がエンジンブレーキ推定手段及びエンジンブレーキ補助手段としての処理に相当する。変速制御用ECU10にて実行される変速制御処理(図2)が変速段設定手段としての処理に相当する。
【0082】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).自動クラッチ5の解放駆動時には、推定された変速前エンジンブレーキ力Eb1に基づいて、ホイールシリンダWrl,Wrrにより後輪RL,RRから自動クラッチ5の解放の進行に応じた補助制動力を発生させることでエンジンブレーキ力を補っている。更に、自動クラッチ5の係合駆動時には、推定された変速後エンジンブレーキ力Eb2に基づいて、ホイールシリンダWrl,Wrrにより後輪RL,RRから自動クラッチ5の係合の進行に応じた補助制動力を発生させることでエンジンブレーキ力を補っている。ここでは補助制動力は、エンジンブレーキ力Eb1,Eb2とクラッチトルク伝達量Tcとの差に基づいて得られている。
【0083】
このため自動クラッチ5の解放状態によりエンジンブレーキ力の一部又は全部が駆動輪RL,RR側に伝達されなくなっても、ホイールブレーキにより車両の制動力自体は維持されるので、車両減速度の急速な低下は抑制されて運転者に対する違和感を防止することができる。
【0084】
(ロ).変速段の切り替えが行われる自動クラッチ5の完全解放期間では、変速前エンジンブレーキ力Eb1から変速後エンジンブレーキ力Eb2へと、変速段の変化に対応させて補助制動力を変化させている。しかも変動量αにより徐々に変化させている。
【0085】
このように、変速段の変化に対応させて補助制動力を滑らかに変化させているので、運転者にとって、より違和感のない車両減速度を実現することができる。
(ハ).自動変速時においても手動変速時においても、前記(イ)、(ロ)の効果を生じさせているので、いずれの変速制御においても運転者にとって車両減速度において違和感のない変速を実現することができる。
【0086】
(ニ).特にダウンシフトにおいてはエンジンブレーキ力が強まる傾向にあり、このダウンシフト時に車両減速度が急減することは、運転者に違和感を生じさせやすい。又、下り坂などではアップシフトによりエンジンブレーキ力を調節したい場合があり、この時に車両減速度が急減すると運転者に操作上の違和感を生じさせるおそれがある。
【0087】
本実施の形態では、共にエンジンブレーキ力の変動に対応した補助制動力を発生させているので、車両減速度を適切なものにでき、運転者に違和感を生じさせないようにできる。
【0088】
(ホ).エンジンブレーキ力Eb1,Eb2は、アクセル開度ACCP、変速段、エンジン回転数NE及び後輪半径を用いて計算又はマップから求められる。このようにエンジンブレーキ力Eb1,Eb2を推定することにより、適切にエンジンブレーキ力Eb1,Eb2の程度を把握でき、適切な補助制動力を発生させることができ、運転者に対する違和感を効果的に防止できる。
【0089】
(ヘ).ホイールシリンダWrl,Wrrの制動油圧を調節することにより補助制動力を発生させているので、既に車両に組み込まれているホイールブレーキを、補助制動力の発生のために利用することができる。このためコストアップを抑制して容易に本発明を実際の車両に適用できる。
【0090】
[実施の形態2]
本実施の形態においては、VSC−ECU50は、前記エンジンブレーキアシスト処理(図3,4)の代わりに、図11,12に示すエンジンブレーキアシスト処理を実行するものである。本処理は、時間周期で繰り返し実行される処理であり、変速前と変速後での車両減速度をそれぞれ推定して、自動クラッチ5の解放に伴う車両減速度の不足分をホイールブレーキにより補う処理を行うものである。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0091】
本処理が開始されるとクラッチ係合でないか否かが判定される(S302)。この判定は前記ステップS202と同じである。
ここでクラッチ係合である場合には(S302で「NO」)、現在の車両加速度Gの符号を逆にした値、すなわち「−G」の値を、変速前車両減速度Dg1として設定する(S303)。この車両加速度GはVSC−ECU50自身あるいは他のECU10,32により、常に車速SPDの時間変化から算出されている値であり、この車両加速度Gに基づいて変速前車両減速度Dg1を設定している。そして、このまま一旦本処理を終了する。
【0092】
一方、クラッチ係合でない場合(S302で「YES」)、今回のクラッチ係合でない状態において、加速操作、ここではアクセルペダル28の踏み込みが有ったか否かが判定される(S304)。ここで加速操作が有った場合には(S304で「YES」)、このまま一旦本処理を終了する。
【0093】
加速操作がない場合には(S304で「NO」)、次に変速後車両減速度Dg2が推定される(S306)。ここで変速後車両減速度Dg2は変速した後の変速段における車両減速度を表している。変速後車両減速度Dg2は、例えば、変速前車両減速度Dg1、アクセル開度ACCP(ACCPの代わりにスロットル開度TAでも良い)、変速段、エンジン回転数NE(NEの代わりに車速SPDでも良い)及び後輪半径を用いて、計算又はマップから求められる。例えば、変速前車両減速度Dg1と後輪半径とは一定であるとして、変速後車両減速度Dg2は、前記図5〜8に類似したマップから算出される。
【0094】
次にクラッチ解放駆動時か否かが判定される(S308)。前述した変速制御処理(図2)により変速シーケンス処理が実行されることで、変速のために自動クラッチ5が解放駆動された時には(S308で「YES」)、変速前車両減速度Dg1が、目標車両減速度Dgtに設定される(S310)。
【0095】
次に、車両減速度が前記目標車両減速度Dgtとなるように補助制動力出力がなされる(S312)。すなわちVSC−ECU50は制動油圧アクチュエータ58を制御して駆動輪RL,RRの各ホイールシリンダWrl,Wrrに油圧を発生させて、目標車両減速度Dgtとなるように補助制動力を発生させる。こうして一旦本処理を終了する。
【0096】
そして自動クラッチ5が完全に解放されて解放駆動が終了すると、エンジンブレーキ力は完全に駆動輪側には伝達されなくなる。この時にはステップS308にて「NO」と判定される。次にクラッチ係合駆動時か否かが判定される(S314)。最初はギヤ切り換えのために自動クラッチ5は完全解放状態に維持されているので(S314で「NO」)、目標車両減速度Dgtの変動量βが算出される(S408)。この変動量βは現在時点から変速が完了するまでの時間tsを予測して、この時間tsに目標車両減速度Dgtが変速後車両減速度Dg2まで次第に変化させるために設定される値である。例えば、制御周期毎に次式5に示すごとく算出する。
【0097】
【数5】
β ← tc ×(Dgt − Dg2)/ts … [式5]
尚、制御周期tc、時間tsについては前記式2にて説明したごとくである。
【0098】
次に変速前車両減速度Dg1が変速後車両減速度Dg2より大きいか否かが判定される(S410)。Dg1<Dg2であれば(S410で「NO」)、次にDgt>Dg2か否かが判定される(S412)。最初はDgt(=Dg1)<Dg2であるので(S412で「NO」)、次式6に示すごとく目標車両減速度Dgtから変動量βが減算されて、新たに目標車両減速度Dgtとして設定される(S414)。ここでは実際には変動量β<0であるので、目標車両減速度Dgtは変動量βの絶対値分、増加することになる。
【0099】
【数6】
Dgt ← Dgt − β … [式6]
こうしてステップS312が実行されて、変速前車両減速度Dg1より変動量βの絶対値分増加した目標車両減速度Dgtとなるように補助制動力が出力される。以後、制御周期毎に前記式6により目標車両減速度Dgtは、変動量βの絶対値分の漸増を繰り返す。すなわち車両減速度は次第に強くなる。
【0100】
そしてクラッチ係合駆動時となる前に(S314で「NO」)、Dgt>Dg2となると(S412で「YES」)、目標車両減速度Dgtに変速後車両減速度Dg2を設定するようになる(S416)。したがって目標車両減速度Dgtは変速後車両減速度Dg2より大きい減速度となることはなく、クラッチ係合駆動時となるまで、Dgt=Dg2を維持することになる。
【0101】
そして新たな変速比のギヤ噛合が完了して変速シーケンス処理にてクラッチ係合駆動が開始されると(S314で「YES」)、次に目標車両減速度Dgtに変速後車両減速度Dg2が設定される(S316)。そして目標車両減速度Dgtとなるように補助制動力出力がなされ(S312)、一旦本処理を終了する。
【0102】
以後、自動クラッチ5が係合状態となるまで、変速後車両減速度Dg2となるように、自動クラッチ5の係合駆動の進行度に応じて補助制動力を小さくしてゆく処理が行われることになる。
【0103】
そして自動クラッチ5が係合状態となると(S302で「NO」)、エンジンブレーキアシスト処理(図11,12)では実質的に処理を行わずに終了するようになる。
【0104】
このことにより変速のために自動クラッチ5が解放状態となっても、前記図9に示した場合と同様に、車両減速度を滑らかに第3速の状態から第2速の状態へ変化させることができる。
【0105】
次に変速段が第3速から第4速にアップシフトしてエンジンブレーキ力が減少する場合について説明する。この場合は変動量βの値は前記式5から変動量β>0に設定される。このため前記式6により目標車両減速度Dgtは変動量β分、減少することになる。
【0106】
すなわち解放駆動時には目標車両減速度Dgtは変速前車両減速度Dg1に維持される(S310)。そして変速前車両減速度Dg1は変速後車両減速度Dg2より大きいので(S410で「YES」)、次にDgt<Dg2か否かが判定される(S418)。最初はDgt(=Dg1)>Dg2であるので(S418で「NO」)、前記式6に示すごとく目標車両減速度Dgtから変動量βが減算されて、新たに目標車両減速度Dgtとして設定される(S414)。ここでは前述したごとく変動量β>0であるので、目標車両減速度Dgtは変動量β分、減少する。
【0107】
こうしてステップS312が実行されて、変速前車両減速度Dg1より変動量β分減少した目標車両減速度Dgtとなるように補助制動力が出力される。以後、制御周期毎に前記式6により目標車両減速度Dgtは変動量β分の漸減を繰り返す。
【0108】
そしてクラッチ係合駆動時となる前に(S314で「NO」)、Dgt<Dg2となると(S418で「YES」)、目標車両減速度Dgtに変速後車両減速度Dg2を設定するようになる(S416)。したがって目標車両減速度Dgtは変速後車両減速度Dg2より小さくなることはなく、クラッチ係合駆動時となるまで、Dgt=Dg2を維持することになる。
【0109】
そして新たな変速比のギヤ噛合が完了して変速シーケンス処理にてクラッチ係合駆動が開始されると(S314で「YES」)、前述したステップS316,S312にて、自動クラッチ5が係合状態となるまで、目標車両減速度Dgtに変速後車両減速度Dg2を設定する。このことにより自動クラッチ5の係合状態の進行に対応して補助制動力を小さくしてゆく処理が行われる。
【0110】
そして自動クラッチ5が係合状態となると(S302で「NO」)、エンジンブレーキアシスト処理(図11,12)では実質的に処理を行わずに終了するようになる。
【0111】
このことにより前記図10に実線にて示したと同様に、変速のために自動クラッチ5が解放されても、車両減速度を滑らかに第3速の状態から第4速の状態へ変化させることができる。
【0112】
VSC−ECU50にて実行されるエンジンブレーキアシスト処理(図11,12)がエンジンブレーキ推定手段及びエンジンブレーキ補助手段としての処理に相当する。
【0113】
以上説明した本実施の形態2によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態1とは、変速前エンジンブレーキ力Eb1、変速後エンジンブレーキ力Eb2及びエンジンブレーキ力伝達不足分Dbと、変速前車両減速度Dg1、変速後車両減速度Dg2及び目標車両減速度Dgtとの違いがある。しかし、本実施の形態のごとく、エンジンブレーキ力を表す物理量として車両減速度を用いても、前記実施の形態1の(イ)〜(ヘ)と同等の効果を生じさせることができる。
【0114】
[実施の形態3]
本実施の形態においては、VSC−ECU50は、前記エンジンブレーキアシスト処理(図3,4)の代わりに、図13に示すエンジンブレーキアシスト処理を実行するものである。本処理は、時間周期で繰り返し実行される処理であり、変速前エンジンブレーキ力Eb1をギヤの切り換え完了まで維持し、その後の自動クラッチ5の係合駆動に伴って新たな変速段のエンジンブレーキ力Eb2に徐々に移行させる。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0115】
エンジンブレーキアシスト処理(図13)が開始されると、まずクラッチ係合でないか否かが判定される(S502)。このクラッチ係合とは、前記ステップS202にて説明したごとくである。ここでクラッチ係合である場合には(S502で「NO」)、Db=「0」とし(S503)、実質的に補助制動力を出力せずに(S516)、一旦本処理を終了する。
【0116】
一方、クラッチ係合でない場合(S502で「YES」)、次に今回の非係合状態となって最初の処理か否かが判定される(S504)。ここで最初であれば(S504で「YES」)、次に変速前エンジンブレーキ力Eb1が推定される(S506)。ここで変速前エンジンブレーキ力Eb1の推定は、前記図3のステップS206にて述べたごとくである。次に変速後エンジンブレーキ力Eb2が推定される(S507)。ここで変速後エンジンブレーキ力Eb2の推定は前記図3のステップS208にて述べたごとくである。尚、2回目以降は(S504で「NO」)、変速前エンジンブレーキ力Eb1は新たに推定されることはなく、変速後エンジンブレーキ力Eb2の値が推定により更新されてゆく(S507)。
【0117】
次にクラッチトルク伝達量Tcが推定される(S508)。このクラッチトルク伝達量Tcは、前記ステップS210にて述べたごとくである。
そして次にクラッチ解放駆動時か否かが判定される(S510)。自動クラッチ5が解放駆動されている時には(S510で「YES」)、変速前エンジンブレーキ力Eb1が現在のクラッチトルク伝達量Tcより大きいか否かが判定される(S512)。
【0118】
Eb1≦Tcであれば(S512で「NO」)、自動クラッチ5は、まだ十分に変速前エンジンブレーキ力Eb1を駆動輪側へ伝達できる状態であるので、Db=「0」とし(S503)、実質的に補助制動力を出力せずに(S516)、一旦本処理を終了する。
【0119】
一方、Eb1>Tcであれば(S512で「YES」)、自動クラッチ5は変速前エンジンブレーキ力Eb1を駆動輪側へ十分に伝達できない状態であるので、前記式1の計算によりエンジンブレーキ力伝達不足分Dbが算出される(S514)。
【0120】
次に、こうして求められたエンジンブレーキ力伝達不足分Dbに対応する補助制動力出力がなされる(S516)。こうして一旦本処理を終了する。
図15のタイミングチャートに例示するごとく、例えば、第3速から第2速に変速する時は、自動クラッチ5が解放されて行くに従って、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbの補助制動力が発生する(t20〜t21)。このことにより現在の変速段にて予定されるエンジンブレーキ力に対する不足分を補っている。
【0121】
そして自動クラッチ5が完全に解放されて解放駆動が終了すると、エンジンブレーキ力は完全に駆動輪側には伝達されなくなる。この時にはステップS510にて「NO」と判定される。次にクラッチ係合駆動時か否かが判定される(S518)。最初はギヤ切り換えのために自動クラッチ5は完全解放状態に維持されているので(S518で「NO」)、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbに変速前エンジンブレーキ力Eb1を設定する(S520)。これは変速前エンジンブレーキ力Eb1を補助制動力にて完全に補うためである。そしてステップS516が実行されて、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbに応じた補助制動力がホイールシリンダWrl,Wrrに対する油圧制御により発生する(t21)。
【0122】
次の制御周期においてもステップS510,S518にて「NO」と判定され、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbには変速前エンジンブレーキ力Eb1が設定される(S520)。こうしてステップS516が実行されて、エンジンブレーキ力伝達不足分Db(=変速前エンジンブレーキ力Eb1)に応じて、補助制動力が出力される。以後、変速前エンジンブレーキ力Eb1に相当する制動力に維持される(t21〜)。
【0123】
そしてクラッチ係合駆動時となると(S518で「YES」、t23)、図14に示すDb計算処理が実行される(S530)。Db計算処理では、まずエンジンブレーキ力Ebxが次式7により算出される(S532)。
【0124】
【数7】
Ebx ← Eb1 + (Eb2−Eb1)×係合率 … [式7]
ここで係合率とは、自動クラッチ5の係合度合いであり、自動クラッチ5が完全に解放されている時には「0.0」、完全に係合している時には「1.0」に設定され、解放駆動時及び係合駆動時ではこの中間の値「0.0〜1.0」となる。この係合率はストロークPCLに基づいてマップや関数から求められる。
【0125】
したがって自動クラッチ5が完全に解放されている時には、Ebx=Eb1であり、完全に係合されている時にはEbx=Eb2である。
次に次式8によりエンジンブレーキ力伝達不足分Dbが算出される(S534)。
【0126】
【数8】
Db ← Ebx − Tc … [式8]
前記式8により設定されるエンジンブレーキ力伝達不足分Dbは、自動クラッチ5の解放状態の程度によりエンジンブレーキ力Ebxに対して不足している制動力を表している。
【0127】
次にDb>0か否かが判定される(S536)。Db>0であれば(S536で「YES」)、このまま図13の処理に戻り、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbに対応する補助制動力出力がなされ(S516)、一旦本処理を終了する。
【0128】
Db≦0であれば(S536で「NO」)、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbには「0」が設定されて(S538)、図13の処理に戻り、Db=「0」であることにより実質的に補助制動力の出力は停止される(S516)。
【0129】
そして自動クラッチ5が係合状態(係合率=「1.0」)となると(S502で「NO」、t24)、Db=「0」とし(S503)、補助制動力を出力しない状態に維持される(S516)。
【0130】
このことにより図15に実線にて示すごとく、車両減速度は、自動クラッチ5が解放されても変速前の状態を維持し、その後、自動クラッチ5の係合駆動時に第2速の車両減速度へと滑らかに変化させることができる。尚、一点鎖線は、比較例として、補助制動力を付与しなかった場合での車両減速度を示している。
【0131】
次に変速段を第3速から第4速にアップシフトしてエンジンブレーキ力を減少させる場合について説明する。この場合のタイミングチャートを図16に示す。すなわち、一旦、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbが変速前エンジンブレーキ力Eb1に到達する(t30〜t31)。そして自動クラッチ5が完全に解放されている期間は変速前エンジンブレーキ力Eb1が維持される(S520,S516、t31〜)。
【0132】
そしてクラッチ係合駆動時になると(S518で「YES」、t33)、自動クラッチ5が係合状態となるまで、図14のDb計算処理にて前記式7,8によりエンジンブレーキ力伝達不足分Dbが算出され、これに対応して補助制動力が調節される(t33〜)。
【0133】
そして最終的には補助制動力は出力されなくなり(S538)、自動クラッチ5は係合状態となり(S502で「NO」、t34)、Db=「0」とし(S503)、補助制動力が出力されない状態が維持される(t34〜)。
【0134】
このことにより図16に実線にて示すごとく、車両減速度は、自動クラッチ5が解放されても変速前の状態を維持し、その後、自動クラッチ5の係合駆動時に第4速の車両減速度へ徐々に変化させることができる。一点鎖線は、比較例として、補助制動力を付与しなかった場合での車両減速度を示している。
【0135】
上述した構成において、VSC−ECU50にて実行されるエンジンブレーキアシスト処理(図13)及びDb計算処理(図14)がエンジンブレーキ推定手段及びエンジンブレーキ補助手段としての処理に相当する。
【0136】
以上説明した本実施の形態3によれば、以下の効果が得られる。
(イ).自動クラッチ5の解放駆動時から完全解放時には、推定された変速前エンジンブレーキ力Eb1に基づいて補助制動力を発生させることでエンジンブレーキ力を補っている。そして係合駆動時には変速前エンジンブレーキ力Eb1に基づく補助制動状態から変速後エンジンブレーキ力Eb2に基づく補助制動状態へ徐々に変化させている。このように変速前エンジンブレーキ力Eb1から変速後エンジンブレーキ力Eb2への移行タイミングが異なる点を除いては、前記実施の形態1の(イ)〜(ヘ)と同様な効果を生じる。
【0137】
[実施の形態4]
本実施の形態においては、VSC−ECU50は、前記エンジンブレーキアシスト処理(図3,4)の代わりに、図17に示すエンジンブレーキアシスト処理を実行するものである。本処理は、時間周期で繰り返し実行される処理であり、自動クラッチ5の解放駆動に伴って変速後エンジンブレーキ力Eb2による制動力制御に徐々に移行し、その後も変速後エンジンブレーキ力Eb2による制動力制御を自動クラッチ5の係合駆動終了まで実行するものである。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0138】
尚、エンジンブレーキアシスト処理(図17)のステップS602〜S610、S616,S618は、前記図13のステップS502〜S510、S516,S518と同じ処理である。
【0139】
エンジンブレーキアシスト処理(図17)について、前記図13と異なる処理を主に説明する。自動クラッチ5の解放駆動時には(S610で「YES」)、Db計算処理が実行される(S630)。このDb計算処理は前記図14と同じ処理が実行される。すなわち係合率の変化に応じて前記式7によりエンジンブレーキ力Ebxが算出され(S532)、このエンジンブレーキ力Ebxを用いて前記式8によりエンジンブレーキ力伝達不足分Dbが算出される(S534)。そしてステップS536の処理(必要に応じて更にステップS538の処理)後に、図17に戻り、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbに対応した補助制動力が出力される(S616)。このように本実施の形態では解放駆動時にDb計算処理(図14)が行われる点が前記図13と異なる。
【0140】
このことにより図18のタイミングチャートに例示するごとく、例えば、第3速から第2速に変速する時は、自動クラッチ5が解放されて行くに従って、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbの補助制動力が発生する(t40〜t41)。この時には、変速前エンジンブレーキ力Eb1から変速後エンジンブレーキ力Eb2に徐々に移行させている。
【0141】
そして自動クラッチ5が完全に解放されて解放駆動が終了すると、エンジンブレーキ力は駆動輪側には伝達されなくなる。この時にはステップS610にて「NO」と判定される。次にクラッチ係合駆動時か否かが判定される(S618)。最初はギヤ切り換えのために自動クラッチ5は完全解放状態に維持されているので(S618で「NO」)、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbに変速後エンジンブレーキ力Eb2を設定する(S620)。これは変速後エンジンブレーキ力Eb2を補助制動力にて完全に補うためである。そしてステップS616が実行されて、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbに応じた補助制動力がホイールシリンダWrl,Wrrの油圧制御により発生する(t41)。
【0142】
次の制御周期においてもステップS610,S618にて「NO」と判定され、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbには変速後エンジンブレーキ力Eb2が設定される(S620)。したがって、以後も変速後エンジンブレーキ力Eb2に相当する制動力に維持される(t41〜)。
【0143】
そしてクラッチ係合駆動時となると(S618で「YES」、t43)、変速後エンジンブレーキ力Eb2が現在のクラッチトルク伝達量Tcより大きいか否かが判定される(S622)。
【0144】
Eb1>Tcであれば(S622で「YES」)、自動クラッチ5は変速後エンジンブレーキ力Eb2を駆動輪側へ十分に伝達できない状態であるので、前記式4の計算によりエンジンブレーキ力伝達不足分Dbが算出される(S624)。そして、こうして求められたエンジンブレーキ力伝達不足分Dbに対応する補助制動力出力がなされる(S616)。こうして一旦本処理を終了する。
【0145】
一方、Eb2≦Tcであれば(S622で「NO」)、自動クラッチ5は変速後エンジンブレーキ力Eb2を駆動輪側へ十分に伝達できる状態となっているので、Db=「0」とし(S603)、実質的に補助制動力を出力せずに(S616)、一旦本処理を終了する。
【0146】
このことにより図18に実線にて示すごとく、車両減速度は、自動クラッチ5の解放駆動に伴って第2速の減速度状態へ次第に移行し、その後、自動クラッチ5の完全係合まで第2速の車両減速度を維持することができる。尚、一点鎖線は、比較例として、補助制動力を付与しなかった場合での車両減速度を示している。
【0147】
次に、変速段を第3速から第4速にアップシフトしてエンジンブレーキ力を減少させる場合について説明する。この場合のタイミングチャートを図19に示す。すなわち、自動クラッチ5の解放駆動時にエンジンブレーキ力伝達不足分Dbが変速後エンジンブレーキ力Eb2に次第に移行する(S630、t50〜t51)。そして以後は、自動クラッチ5の係合駆動開始まで、変速後エンジンブレーキ力Eb2が維持される(S620、t51〜)。更に、クラッチ係合駆動時においても(S618で「YES」、t53〜t54)、変速後エンジンブレーキ力Eb2を維持するように次第にエンジンブレーキ力伝達不足分Dbが減少される(S622,S624)。
【0148】
このことにより図19に実線にて示すごとく、車両減速度は、自動クラッチ5が解放駆動時に第3速から第4速の減速度状態に変化し、その後、自動クラッチ5が完全に係合するまで車両減速度を維持することができる。一点鎖線は、比較例として、補助制動力を付与しなかった場合での車両減速度を示している。
【0149】
上述した構成において、VSC−ECU50にて実行されるエンジンブレーキアシスト処理(図17)及びDb計算処理(図14)がエンジンブレーキ推定手段及びエンジンブレーキ補助手段としての処理に相当する。
【0150】
以上説明した本実施の形態4によれば、以下の効果が得られる。
(イ).自動クラッチ5の解放駆動時に変速前エンジンブレーキ力Eb1に基づく補助制動状態から変速後エンジンブレーキ力Eb2に基づく補助制動状態へ徐々に変化させている。そして完全解放時から係合駆動時には、推定された変速後エンジンブレーキ力Eb2に基づいて補助制動力を発生させることでエンジンブレーキ力を補っている。このように変速前エンジンブレーキ力Eb1から変速後エンジンブレーキ力Eb2への移行タイミングが異なる点を除いて、前記実施の形態1の(イ)〜(ヘ)と同様の効果を生じる。
【0151】
(ロ).自動クラッチ5の解放駆動時に直ちに、次の変速段のエンジンブレーキ力を実現することができるので、高応答でエンジンブレーキ力を調節することができる。
【0152】
[実施の形態5]
本実施の形態においては、VSC−ECU50は、前記エンジンブレーキアシスト処理(図3,4)の代わりに、図20,21に示す処理を実行するものである。本処理では、自動クラッチ5の解放駆動時から完全解放期間にかけて、変速前エンジンブレーキ力Eb1に基づく補助制動状態から変速後エンジンブレーキ力Eb2に基づく補助制動状態へと次第に変化させている。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0153】
尚、図20においてステップS702〜S710,S718,S720,S722,S740は図3のステップS202〜S210,S218,S220,S222,S240と同じ処理である。
【0154】
エンジンブレーキアシスト処理(図20,21)について説明する。尚、図22のタイミングチャートに処理の一例を示す。
本処理ではクラッチ解放駆動時になると(S702で「YES」、S718で「NO」)、図21に示す処理が実行されることになる。図21では、最初であれば(S724で「YES」)、エンジンブレーキ力推定値Dbxに変速前エンジンブレーキ力Eb1が設定される(S726)。
【0155】
そしてエンジンブレーキ力推定値Dbxがクラッチトルク伝達量Tcより大きいか否かが判定される(S754)。ここで係合駆動の初期においてはDbx<Tcであるので(S754で「NO」)、補助制動力を発生させなくても、エンジンブレーキ力は自動クラッチ5を介して十分に駆動輪RL,RR側に伝達されている。このことから、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbに「0」を設定する(S758)。この場合には実質的に補助制動力の出力設定をせずに(S740)、本処理を一旦終了する(t60)。
【0156】
そして以後の制御周期では、係合駆動時となる以前では(S718で「NO」、S724で「NO」)、まず補助制動力の変動量αが算出される(S727)。この変動量αは、現在の時点から変速が完了するまでの時間tsを予測して、この時間tsにエンジンブレーキ力推定値Dbxを変速後エンジンブレーキ力Eb2まで次第に変化させるために設定される値である。尚、本実施の形態では前記実施の形態1と異なり、時間tsには解放駆動期間も含まれている。具体的には、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbの代わりにエンジンブレーキ力推定値Dbxを用いて前記式2に示すごとく算出する。時間tsの初期値としては例えば図22に示すごとくであり(t60〜t63)、自動クラッチ5の解放駆動開始からギヤ切り換えが最短時間で行われた場合のギヤ切り換え完了までの時間を予め実験にて求めて設定している。
【0157】
次にEb1>Eb2か否かが判定される(S728)。ここでEb1<Eb2とすると(S728で「NO」)、次にDbx>Eb2か否かが判定される(S730)。最初はDbx(=Eb1)<Eb2であるので(S730で「NO」)、次式9に示すごとく現在のエンジンブレーキ力推定値Dbxから変動量αが減算されて、新たなエンジンブレーキ力推定値Dbxとして設定される(S750)。ここでは実際には変動量α<0であるので、エンジンブレーキ力推定値Dbxは前回よりも変動量αの絶対値分、増加した値が設定されることになる。
【0158】
【数9】
Dbx ← Dbx − α … [式9]
次にエンジンブレーキ力推定値Dbxがクラッチトルク伝達量Tcより大きいか否かが判定される(S754)。ここで、まだDbx≦Tcであれば(S754で「NO」)、補助制動力を発生させなくても良いことから、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbに「0」を設定する(S758)。そして実質的に補助制動力の出力設定をせずに(S740)、本処理を一旦終了する。
【0159】
一方、Dbx>Tcとなると(S754で「YES」)、エンジンブレーキ力は自動クラッチ5を介して駆動輪RL,RR側に十分に伝達されないことから次式10に示すごとくエンジンブレーキ力伝達不足分Dbを設定する(S756)。
【0160】
【数10】
Db ← Dbx − Tc … [式10]
ここではエンジンブレーキ力伝達不足分Dbは、自動クラッチ5の解放の程度によりエンジンブレーキ力推定値Dbxに対して不足している制動力を表している。こうしてステップS740が実行されて、変速前エンジンブレーキ力Eb1より変動量αの絶対値分増加したエンジンブレーキ力推定値Dbxに基づいて得られたエンジンブレーキ力伝達不足分Dbに応じて、補助制動力が出力される。以後、制御周期毎に前記式9によりエンジンブレーキ力推定値Dbxは変動量αの絶対値分の漸増を繰り返す(t60〜)。このエンジンブレーキ力推定値Dbxの漸増は、自動クラッチ5が完全に解放した後も継続する(t61〜)。
【0161】
そしてクラッチ係合駆動時となる前に(S718で「NO」)、Dbx>Eb2となった場合には(S730で「YES」、t63)、エンジンブレーキ力推定値Dbxに変速後エンジンブレーキ力Eb2を設定するようになる(S752)。そしてDbx>Tc(=0)であることから(S754で「YES」)、前記式10によりエンジンブレーキ力伝達不足分Dbが設定されて、補助制動力が出力設定される(S740)。
【0162】
その後、新たな変速比のギヤ噛合が完了して変速シーケンス処理にて係合駆動時となると(S718で「YES」、t64)、Eb2>Tcか否かが判定される(S720)。初期においてはEb2>Tc(=0)であることから(S720で「YES」)、前記式4によりエンジンブレーキ力伝達不足分Dbが設定されて(S722)、補助制動力が出力設定される(S740)。
【0163】
以後、自動クラッチ5が係合状態となるまで、ステップS722にて前記式4の計算により、クラッチトルク伝達量Tcの上昇に応じてエンジンブレーキ力伝達不足分Dbを小さくし、これに対応して補助制動力を小さくしてゆく処理が行われる(t64〜)。
【0164】
そして自動クラッチ5が係合状態となると(S702で「NO」、t65)、Db=「0」とされることにより(S703)、実質的に補助制動力は出力されなくなる(S740)。
【0165】
このことにより図22に実線にて示すごとく、車両減速度は変速シーケンス処理の当初から滑らかに第3速の減速度状態から第2速の減速度状態へ変化させることができる。尚、一点鎖線は、比較例として、補助制動力を付与しなかった場合での車両減速度を示している。
【0166】
次に、変速段を第3速から第4速にアップシフトしてエンジンブレーキ力を減少させる場合について説明する。この場合のタイミングチャートを図23に示す。この場合は変動量αの値は前記式2から変動量α>0に設定される。このため前記式9によりエンジンブレーキ力推定値Dbxは減少することになる。したがって車両減速度は次第に第3速の状態から第4速の状態へ低下し(t70〜)、第4速の車両減速度となる(t73)。一点鎖線は、比較例として、補助制動力を付与しなかった場合での車両減速度を示している。
【0167】
上述した構成において、VSC−ECU50にて実行されるエンジンブレーキアシスト処理(図20,21)がエンジンブレーキ推定手段及びエンジンブレーキ補助手段としての処理に相当する。
【0168】
以上説明した本実施の形態5によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態1の(イ)〜(ヘ)の効果を生じる。特に変速シーケンス処理の初期から、変速前エンジンブレーキ力Eb1に基づく補助制動状態から変速後エンジンブレーキ力Eb2に基づく補助制動状態への変化を実行しているので、一層車両減速度を滑らかに変化させることができる。
【0169】
[実施の形態6]
本実施の形態においては、VSC−ECU50は、前記実施の形態5のエンジンブレーキアシスト処理の内の図20の代わりに、図24に示す処理を実行するものである。本処理により自動クラッチ5の解放駆動時から係合駆動時にかけて、変速前エンジンブレーキ力Eb1に基づく補助制動状態から変速後エンジンブレーキ力Eb2に基づく補助制動状態へと次第に変化させている。他の構成は前記実施の形態5と同じである。
【0170】
尚、図24においてステップS802〜S810,S840は図20のステップS702〜S710,S740と同じ処理である。
エンジンブレーキアシスト処理(図24,21)について説明する。尚、図25のタイミングチャートに処理の一例を示す。
【0171】
本処理では変速シーケンス処理が開始されることでステップS802にて「YES」と判定されると、ステップS804〜S810の処理の後、最初であれば(S724で「YES」)、エンジンブレーキ力推定値Dbxに変速前エンジンブレーキ力Eb1が設定される(S726)。そして最初はDbx<Tcであるので(S754で「NO」)、Db=0とされて(S758)、実質的に補助制動力の出力はなされない(S840、図25のt80)。
【0172】
そして以後の制御周期では、ステップS724で「NO」と判定されて、まず補助制動力の変動量αが算出される(S727)。この変動量αは、現時点から変速が完了するまでの時間tsを予測して、この時間tsにエンジンブレーキ力推定値Dbxを変速後エンジンブレーキ力Eb2まで次第に変化させるために設定される値である。尚、本実施の形態では前記実施の形態5と異なり、時間tsには解放駆動期間、完全解放期間及び係合駆動期間が含まれている。具体的には前記式2に示すごとく算出する。時間tsの初期値としては例えば図25に示すごとくであり(t80〜t84)、自動クラッチ5の解放駆動開始から係合駆動完了までの時間を、ギヤ切り換えが最短時間で行われたものとして予め実験にて求めて設定している。尚、図25では、実際の変速シーケンス処理の時間(t80〜t85)が時間tsの初期値よりもわずかに長い例を示している。
【0173】
次にEb1>Eb2か否かが判定される(S728)。ここでEb1<Eb2とすると(S728で「NO」)、次にDbx>Eb2か否かが判定される(S730)。最初はDbx(=Eb1)<Eb2であるので(S730で「NO」)、前記式9に示したごとく現在のエンジンブレーキ力推定値Dbxから変動量αが減算されて、新たにエンジンブレーキ力推定値Dbxとして設定される(S750)。ここでは実際には変動量α<0であるので、エンジンブレーキ力推定値Dbxは前回よりも変動量αの絶対値分増加した値が設定されることになる。
【0174】
次にDbx>Tcか否かが判定される(S754)。ここでDbx≦Tcであれば(S754で「NO」)、補助制動力を発生させなくても、エンジンブレーキ力は自動クラッチ5を介して十分に駆動輪RL,RR側に伝達されることから、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbに「0」を設定する(S758)。この場合には実質的に補助制動力の出力設定をせずに(S840)、本処理を一旦終了する。
【0175】
一方、Dbx>Tcであれば(S754で「YES」)、エンジンブレーキ力は自動クラッチ5を介して駆動輪RL,RR側に十分に伝達されないことから前記式10に示したごとくエンジンブレーキ力伝達不足分Dbを設定する(S756)。こうしてステップS840が実行されて、変速前エンジンブレーキ力Eb1より変動量αの絶対値分増加したエンジンブレーキ力伝達不足分Dbに応じて、補助制動力が出力される。以後、制御周期毎に前記式9によりエンジンブレーキ力推定値Dbxは変動量αの絶対値分の漸増を繰り返す(t80〜)。このエンジンブレーキ力推定値Dbxの漸増は、図25の例では、自動クラッチ5が完全に解放した後も(t81〜)、更に係合駆動を開始してクラッチトルク伝達量Tcの上昇に応じて補助制動力を小さくしてゆく期間も継続する(t83〜)。
【0176】
そして係合駆動が終了する前に(S802で「YES」)、Dbx>Eb2となった場合には(S730で「YES」、t84)、エンジンブレーキ力推定値Dbxに変速後エンジンブレーキ力Eb2を設定するようになる(S752)。そしてDbx>Tcであれば(S754で「YES」)、前記式10によりエンジンブレーキ力伝達不足分Dbが設定され(S756)、Dbx≦Tcであれば(S754で「NO」)、Db=「0」とされる(S758)。
【0177】
そして自動クラッチ5が係合状態となると(S802で「NO」、t85)、Db=「0」とされることにより(S803)、実質的に補助制動力は出力されなくなる(S840)。
【0178】
このことにより図25に実線にて示すごとく、車両減速度は変速シーケンス処理の当初からほぼ最後まで、滑らかに第3速の減速度状態から第2速の減速度状態へ変化させることができる。尚、一点鎖線は、比較例として、補助制動力を付与しなかった場合での車両減速度を示している。
【0179】
次に変速段を第3速から第4速にアップシフトしてエンジンブレーキ力を減少させる場合について説明する。この場合のタイミングチャートを図26に示す。この場合は変動量αの値は前記式2から変動量α>0に設定される。このため前記式9によりエンジンブレーキ力推定値Dbxは減少することになる。したがって車両減速度は変速シーケンス処理の当初からほぼ最後まで、滑らかに第3速の減速度状態から第4速の減速度状態へ低下する(t90〜t94)。一点鎖線は、比較例として、補助制動力を付与しなかった場合での車両減速度を示している。
【0180】
上述した構成において、VSC−ECU50にて実行されるエンジンブレーキアシスト処理(図24,21)がエンジンブレーキ推定手段及びエンジンブレーキ補助手段としての処理に相当する。
【0181】
以上説明した本実施の形態6によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態1の(イ)〜(ヘ)の効果を生じる。特に変速シーケンス処理の初期からほぼ最後まで変速前エンジンブレーキ力Eb1に基づく補助制動状態から変速後エンジンブレーキ力Eb2に基づく補助制動状態への変化を実行しているので、一層車両減速度を滑らかに変化させることができる。
【0182】
[実施の形態7]
本実施の形態では、クラッチ解放駆動時からクラッチ完全解放期間にかけては変速直前の車両減速度を維持し、クラッチ係合駆動時において自動クラッチ5のストロークに応じて補助制動力を小さくしてゆき、自動クラッチ5が完全に係合した時に補助制動力を消滅させる処理を実行している。このために前記実施の形態2のエンジンブレーキアシスト処理(図11,12)の代わりに、図27に示すエンジンブレーキアシスト処理を実行する。これ以外は前記実施の形態2の構成と同じである。図29のタイミングチャートに、第3速から第2速にダウンシフトする場合の処理例を示す。
【0183】
本処理が開始されるとクラッチ係合でないか否かが判定される(S902)。この判定は図11のステップS302と同じ判定である。ここで、クラッチ係合である場合には(S902で「NO」)、現在の車両加速度Gの符号を逆にした値、すなわち「−G」の値を、変速前車両減速度Dg1として設定する(S904)。このステップS904は図11のステップS303と同じ処理である。そして一旦本処理を終了する。
【0184】
一方、クラッチ係合でない場合(S902で「YES」)、今回自動クラッチ5が解放している期間において、加速操作、ここではアクセルペダル28の踏み込みが有ったか否かが判定される(S906)。ここで加速操作が有った場合には(S906で「YES」)、このまま一旦本処理を終了する。
【0185】
加速操作がない場合には(S906で「NO」)、次にクラッチ解放駆動時か否かが判定される(S908)。前述した変速制御処理(図2)による変速シーケンス処理がなされることで変速のために自動クラッチ5が解放駆動された時には(S908で「YES」)、直前までステップS904で設定されていた変速前車両減速度Dg1が、目標車両減速度Dgtとして設定される(S910)。
【0186】
次に車両減速度が前記目標車両減速度Dgtとなるように補助制動力出力がなされる(S912)。この処理は図11のステップS312と同様に実行される。こうして一旦本処理を終了する。したがって以後、完全解放までは(ta0〜ta1)、補助制動力が次第に増加してゆく。
【0187】
そして自動クラッチ5が完全に解放されて解放駆動が終了すると(ta1)、エンジンブレーキ力は完全に駆動輪側には伝達されなくなる。この時にはステップS908にて「NO」と判定される。次にクラッチ係合駆動時か否かが判定される(S914)。最初はギヤ切り換えのために自動クラッチ5は完全解放状態に維持されているので(S914で「NO」)、現在の補助制動力が制動力値Bpに設定される(S916)。この補助制動力としては、例えばホイールシリンダWrl,Wrrに対する補助制動力分の制動油圧(ブレーキペダル52の操作により生じている分の制動油圧を除いた制動油圧)が、ストロークPCLから求められて、補助制動力分の制動油圧の値が制動力値Bpとして設定される。
【0188】
そして変速前車両減速度Dg1を目標車両減速度Dgtとして設定し(S910)、目標車両減速度Dgtとなるように補助制動力出力がなされる処理(S912)が継続されて、一旦本処理を終了する。自動クラッチ5が係合駆動時までは(S908で「NO」、S914で「NO」)、ステップS916,S910,S912の処理が繰り返される(ta1〜)。
【0189】
そして自動クラッチ5が係合駆動時となると(S914で「YES」、ta3)、次式11によりエンジンブレーキ力伝達不足分Dbが算出される(S918)。
【0190】
【数11】
Db ← fs(Bp,PCL) … [式11]
ここで関数fsは、クラッチストロークセンサ14が検出するストロークPCLに応じて、自動クラッチ5が完全に係合状態となるまでに、制動力値Bpを徐々に「0」までに減少させる計算を実行するものである。例えば図28に実線で示すごとくのマップ又は関数により、減少係数KbpをストロークPCLに基づいて求め、「Bp×Kbp」によりエンジンブレーキ力伝達不足分Dbを求める。尚、自動クラッチ5の特性や車両運転性能等の観点から、図28のマップ又は関数は、一点鎖線(3例を示す)にて示すごとく、非線形となるように設計しても良い。
【0191】
そして、このように求められたエンジンブレーキ力伝達不足分Dbに対応する補助制動力出力がなされる(S920)。本処理は前記図3のステップS240の処理と同じである。こうして一旦本処理を終了する。
【0192】
以後、クラッチ係合駆動時においては(S914で「YES」、ta3〜ta4)、自動クラッチ5が完全係合に近づくにつれて、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbによる補助制動力は小さくなり、自動クラッチ5が完全係合直前で、Db=「0」となるので補助制動力は消滅する。
【0193】
そして自動クラッチ5が完全係合すれば(S902で「NO」、ta4〜)、再度、変速前車両減速度Dg1を設定する処理(S904)が繰り返されるようになる。このことにより図29に実線にて示すごとく、車両減速度は、自動クラッチ5の係合駆動時に変速前の状態から変速後の状態に次第に変化させることができる。尚、一点鎖線は、比較例として、補助制動力を付与しなかった場合での車両減速度を示している。
【0194】
図30のタイミングチャートは第3速から第4速にアップシフトする例である。この場合は、車両減速度は低下しているが、クラッチ係合駆動時において(S914で「YES」、tb3〜tb4)、自動クラッチ5が完全係合に近づくにつれて、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbによる補助制動力は次第に小さくなることにより、自動クラッチ5が完全係合直前で補助制動力は消滅する。このためアップシフト時においてもエンジンブレーキ力による第3速での車両減速度から第4速での車両減速度に滑らかに移動させることができる。一点鎖線は、比較例として、補助制動力を付与しなかった場合での車両減速度を示している。
【0195】
VSC−ECU50にて実行されるエンジンブレーキアシスト処理(図27)がエンジンブレーキ推定手段及びエンジンブレーキ補助手段としての処理に相当する。
【0196】
以上説明した本実施の形態7によれば、以下の効果が得られる。
(イ).自動クラッチ5の解放駆動時及び完全解放時には、変速前車両減速度Dg1を維持するようにホイールブレーキにより後輪RL,RRから補助制動力を発生させることでエンジンブレーキ力を補っている。
【0197】
このため自動クラッチ5の解放状態によりエンジンブレーキ力の一部又は全部が駆動輪RL,RR側に伝達されなくなっても、車両の制動力自体は維持されるので、車両減速度の急速な低下は抑制されて運転者に対する違和感を防止することができる。
【0198】
(ロ).自動クラッチ5の係合駆動時には、係合してゆくに従ってホイールブレーキによる補助制動力を減少させて、完全係合時には補助制動力を消滅させている。
【0199】
このため変速段の変化に対応させて補助制動力を、滑らかに変化させることにより、運転者にとって違和感のない車両減速度を実現することができる。
(ハ).前記実施の形態1の(ハ)、(ニ)、(ヘ)の効果を生じる。
【0200】
[実施の形態8]
本実施の形態では、図31に示すごとく自動クラッチ105としては1つのクラッチでなくツインクラッチを用いている。そして変速機104は図示するごとくの平行軸式6段変速機として構成されている。尚、図31では変速機104の内部はスケルトン表示にて模式的に示されている。又、変速機104、自動クラッチ105、変速制御用ECU110、変速油圧アクチュエータ111、スリーブ位置センサ112、クラッチストロークセンサ114,116、油圧駆動機構PC1,PC2、クラッチ出力軸回転数センサ118,120、車速センサ122が前記実施の形態1とは異なる。又、VSC−ECU50の処理が後述するごとく異なる。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0201】
エンジン2の出力はクランク軸から自動クラッチ105の入力軸106に入力される。この入力軸106にはトーショナルダンパTDを介して自動クラッチとしての第1クラッチC1及び第2クラッチC2の各入力側が接続されている。第1クラッチC1の出力側には、変速機104の第1クラッチ出力軸A1が、第2クラッチC2の出力側には前記第1クラッチ出力軸A1の外側に同軸で配置されている第2クラッチ出力軸A2が接続されている。更に変速機104のカウンタ軸A3が、これらのクラッチ出力軸A1,A2に平行に配置され、出力軸A4が、クラッチ出力軸A1,A2の延長上に同軸に配置されている。
【0202】
このような変速機104は、クラッチ出力軸A1,A2とカウンタ軸A3との間に配置された各ドライブギヤI1〜I6,IR、各ドリブンギヤO1〜O6,OR及び後進アイドラギヤMRの間の駆動力伝達を、各スリーブS1〜S4の係合制御にて行っている。このことによりクラッチ出力軸A1,A2からカウンタ軸A3側へ所望の変速比で駆動力を伝達して出力している。
【0203】
上記クラッチC1,C2は、それぞれレリーズシリンダとマスタシリンダとを用いた油圧駆動機構PC1,PC2により、変速段の切換時、車両発進時、車両停止時等において係合駆動あるいは解放駆動される。
【0204】
変速制御は、手動変速制御時にはシフト操作装置8に設けられたシフトレバー8aの操作に基づく指示により、変速制御装置としての変速制御用電子制御ユニット(変速制御用ECU)110が、油圧駆動機構PC1,PC2及び変速油圧アクチュエータ111を駆動制御することにより実行される。更に、自動変速制御時には変速線図に基づく指示により、変速制御用ECU110が、油圧駆動機構PC1,PC2及び油圧アクチュエータ111を駆動制御することにより実行される。尚、シフト操作装置8及びシフトレバー8a自体の構成及び機能は、前記実施の形態1にて述べたごとくであり、これにより変速制御用ECU110にて実現される自動変速モード及び手動変速モードも前記実施の形態1にて述べたごとくである。そして、クラッチC1,C2は、手動変速制御時も自動変速制御時も共に運転者が操作しなくても変速制御用ECU110により自動的に解放と係合とを実行する。
【0205】
変速制御用ECU110は、双方向性バスを介して相互に接続されたRAM、ROM、CPU、入力ポート、出力ポート及び各種駆動回路を備えることで、デジタルコンピュータを中心として構成されている。変速制御用ECU110へは、シフト操作装置8のシフト位置SHFT信号、及び各スリーブS1〜S4の位置を検出するスリーブ位置センサ112のスリーブ位置SLVP信号が入力されている。更に変速制御用ECU110へは各クラッチC1,C2のストローク量を検出するクラッチストロークセンサ114,116のストロークPCL1,PCL2信号が入力されている。更に変速制御用ECU110へは各クラッチ出力軸A1,A2の回転数NA1,NA2を検出するクラッチ出力軸回転数センサ118,120から回転数NA1,NA2信号が入力されている。更に変速制御用ECU110へは、出力軸A4の回転数を検出する車速センサ122から車速SPD信号、エンジン2に設けられたエンジン回転数センサ24からエンジン回転数NE信号が入力されている。更に変速制御用ECU110へは、アクセル開度センサ26からアクセルペダル28の踏み込み量であるアクセル開度ACCP信号、スロットル開度センサ30からのスロットル開度TA信号が入力されている。これ以外に変速制御用ECU110へは制御上必要な信号が入力されているとともに、エンジン制御用ECU32及びVSC−ECU50との間では、相互にデータ通信を実行して制御に必要なデータを相互に伝達している。
【0206】
本実施の形態においては、変速制御用ECU110による変速シーケンス処理としては、まず、自動クラッチ105によるエンジン出力トルクの伝達状態はクラッチC1,C2の内の一方にて維持したままで他方のクラッチ側のギヤを新たな変速段に切り換える。その後、一種のクラッチツウクラッチ動作により、クラッチC1,C2の内の一方側を解放駆動してほぼ完全解放となると直ちに他方側を係合駆動する。
【0207】
このクラッチツウクラッチ動作においても一時的にエンジンブレーキ力の伝達が十分でなくなるので、VSC−ECU50は、前記図3,4の代わりに前記実施の形態6に示したエンジンブレーキアシスト処理(図24,21)を実行して車両減速度を維持する。
【0208】
ただし本実施の形態のステップS802にて判定されるクラッチ係合とは、2つのクラッチC1,C2の内でいずれか完全に係合したクラッチにより、エンジンブレーキ力を含めたエンジン出力トルクが、変速機104にて噛合したギヤを介して、すべて駆動輪側に伝達している状態を意味する。したがってエンジンブレーキ力を変速機104へ伝達している側のクラッチが半クラッチ状態でエンジン2の駆動力を部分的に伝達している場合、あるいは駆動力を伝達すべき側の自動クラッチ5が完全に解放されて、エンジン2の駆動力を全く駆動輪側に伝達していない状態では、クラッチ係合ではない。そしてクラッチ解放駆動とは、エンジンブレーキ力を変速機104へ伝達している側のクラッチが次第に完全解放にされるクラッチ作動状態を意味し、クラッチ係合駆動とは、エンジンブレーキ力を変速機104へ伝達しようとする側のクラッチが次第に完全係合にされるクラッチ作動状態を意味する。
【0209】
更に、ステップS810にて推定されるクラッチトルク伝達量Tcは、クラッチC1,C2の内でエンジンブレーキ力を変速機104を介して駆動輪RL,RR側へ伝達しているクラッチ側のクラッチストロークセンサ114,116から検出されるストロークPCL1,PCL2に基づいて求められる。
【0210】
本実施の形態は上述したごとく構成されていることにより、図32のタイミングチャートに例示するごとく、例えば、第3速から第2速に変速する時は、変速制御用ECU110により予めギヤの切り換えが行われる(tc0〜tc1)。ここでは第3速から第2速への切り換えであるので、エンジンブレーキ力を変速機104を介して駆動輪RL,RR側へ伝達している第1クラッチC1は係合したままで、完全に解放している第2クラッチC2側の伝達系列に属するドライブギヤI2とドリブンギヤO2とを第4スリーブS4により噛合状態にする。
【0211】
その後、まず第1クラッチC1を解放駆動することにより(S802で「YES」)、自動クラッチ105の解放駆動を実行する(tc1〜)。この時、自動クラッチ105が解放されてゆくに従って、第1クラッチストロークセンサ114から検出されるストロークPCL1に基づいて求められるクラッチトルク伝達量Tcが次第に小さくなる。しかし、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbの補助制動力が発生することにより、予定されるエンジンブレーキ力(エンジンブレーキ力推定値Dbx)に対する不足分が補われる。
【0212】
そして第1クラッチC1がほぼ完全に解放されると、直ちに第2クラッチC2が係合駆動を開始することで自動クラッチ105の係合駆動がなされる(tc2〜)。この時、自動クラッチ105が係合されてゆくに従って、第2クラッチストロークセンサ116から検出されるストロークPCL2に基づいて求められるクラッチトルク伝達量Tcが次第に大きくなる。クラッチトルク伝達量Tcが小さい間は、エンジンブレーキ力伝達不足分Dbの補助制動力によりエンジンブレーキ力(エンジンブレーキ力推定値Dbx)に対する不足分が補われる(tc2〜)。
【0213】
そして一旦、エンジンブレーキ力推定値Dbxは変速後エンジンブレーキ力Eb2に到達し(S730で「YES」、S752、tc3)、その後、自動クラッチ105が係合して(S802で「NO」)、Db=0とされ(S803)、実質的に補助制動力を出力しないようになる(S840)。
【0214】
このことにより図32に実線にて示すごとく、車両減速度は、自動クラッチ5が解放されている期間(tc1〜tc3)に、変速前の状態から変速後の状態に滑らかに変化するようになる。尚、一点鎖線は、比較例として、補助制動力を付与しなかった場合での車両減速度を示している。
【0215】
変速段を第3速から第4速にアップシフトしてエンジンブレーキ力を減少させる場合のタイミングチャートを図33に示す。この場合も車両減速度は、自動クラッチ5が解放されている期間に(td1〜td3)、変速前の状態から変速後の状態に次第に変化するようになる。一点鎖線は、比較例として、補助制動力を付与しなかった場合での車両減速度を示している。
【0216】
上述した構成において、VSC−ECU50にて実行されるエンジンブレーキアシスト処理(図24,21)がエンジンブレーキ推定手段及びエンジンブレーキ補助手段としての処理に相当する。
【0217】
以上説明した本実施の形態8によれば、以下の効果が得られる。
(イ).自動クラッチとしてツインクラッチを用いて係合解放駆動を実行する場合においても、前記実施の形態6と同様な効果を生じる。
【0218】
[その他の実施の形態]
(a).前記実施の形態8に示したツインクラッチと平行軸式変速機との組み合わせにおいて、前記実施の形態3のごとくクラッチ係合駆動時に変速前エンジンブレーキ力Eb1から変速後エンジンブレーキ力Eb2に相当する車両減速度に変化させても良い。又、前記実施の形態8において、前記実施の形態4のごとくクラッチ解放駆動時に変速前エンジンブレーキ力Eb1から変速後エンジンブレーキ力Eb2に相当する車両減速度に変化させるようにしても良い。又、前記実施の形態7のごとく自動クラッチ105の解放駆動時に車両減速度を一定に維持し、自動クラッチ105の係合駆動時に補助制動力を次第に消滅させても良い。
【0219】
又、前記実施の形態8に示したツインクラッチと平行軸式変速機との組み合わせにおいて、自動クラッチ105の完全解放時にギヤ噛合の切り換えを実行するように変速シーケンス処理を行う場合には、前記実施の形態1〜7と同様にブレーキアシスト処理を実行することができる。
【0220】
(b).前記実施の形態3においては、クラッチ係合駆動時にステップS530の代わりに、前記実施の形態7のステップS918,S920を実行することにより、補助制動力を次第に消滅させるようにしても良い。
【0221】
(c).前記各実施の形態では、補助制動力を発生させるための制動手段としてはホイールブレーキを用いて、ホイールシリンダWrl,Wrrに対する制動油圧調節により補助制動力を調節していた。これ以外に、自動クラッチから前記駆動輪までの間に設けられた制動手段、例えばリターダなどをホイールブレーキの代わりに用いることができる。
【0222】
(d).前記各実施の形態では、アップシフト時にもダウンシフト時にも、変速前又は変速後にエンジンブレーキ力が発生する状況であれば、不足するエンジンブレーキ力に対応して補助制動力が生じるようにしていた。しかし、アップシフト時において変速後にエンジンブレーキが発生しない(変速後エンジンブレーキ力Eb2≦0)と推定される場合には、エンジンブレーキアシスト処理自体を実行しないようにしても良い。
【0223】
又、アップシフト時には、エンジンブレーキ力の有無に関係なく、エンジンブレーキアシスト処理自体を実行しないようにしても良い。
(e).前記実施の形態2,7では車両減速度Dg1を車速SPDの変化から求めていたが、これ以外に車両前後方向の加速度を検出するGセンサを設けることにより、直接、車両減速度Dg1を求めても良い。
【0224】
(f).前記各実施の形態においては、自動クラッチ5,105の係合率、減少係数Kbp等といった係合程度あるいは解放程度はクラッチストロークセンサ14,114,116により検出されたストロークPCL,PCL1,PCL2に基づいてマップや関数から得ている。これ以外に油圧駆動機構PC,PC1,PC2における駆動油圧を検出し、この駆動油圧に基づいてマップや関数から、自動クラッチ5,105の係合率、減少係数Kbp等といった係合程度あるいは解放程度を求めても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1のエンジン、クラッチ、変速機、制動装置及びECUからなるシステムの概略構成を表すブロック図。
【図2】実施の形態1の変速制御用ECUが実行する変速制御処理のフローチャート。
【図3】実施の形態1のVSC−ECUが実行するエンジンブレーキアシスト処理のフローチャート。
【図4】同じくエンジンブレーキアシスト処理のフローチャート。
【図5】上記エンジンブレーキアシスト処理にて用いられるエンジン回転数NEとアクセル開度ACCPとから第1速でのエンジンブレーキ力Ebを求めるマップの構成説明図。
【図6】同じく第2速でのエンジンブレーキ力Ebを求めるマップの構成説明図。
【図7】同じく第3速でのエンジンブレーキ力Ebを求めるマップの構成説明図。
【図8】同じく第4速でのエンジンブレーキ力Ebを求めるマップの構成説明図。
【図9】実施の形態1の制御の一例を示すタイミングチャート。
【図10】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図11】実施の形態2のエンジンブレーキアシスト処理のフローチャート。
【図12】同じくエンジンブレーキアシスト処理のフローチャート。
【図13】実施の形態3のエンジンブレーキアシスト処理のフローチャート。
【図14】同じくDb計算処理のフローチャート。
【図15】実施の形態3の制御の一例を示すタイミングチャート。
【図16】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図17】実施の形態4のエンジンブレーキアシスト処理のフローチャート。
【図18】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図19】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図20】実施の形態5のエンジンブレーキアシスト処理のフローチャート。
【図21】同じくエンジンブレーキアシスト処理のフローチャート。
【図22】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図23】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図24】実施の形態6のエンジンブレーキアシスト処理のフローチャート。
【図25】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図26】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図27】実施の形態7のエンジンブレーキアシスト処理のフローチャート。
【図28】上記エンジンブレーキアシスト処理にて用いられるストロークPCLから減少係数Kbpを求めるマップの構成説明図。
【図29】実施の形態7の制御の一例を示すタイミングチャート。
【図30】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図31】実施の形態8のエンジン、クラッチ、変速機、制動装置及びECUからなるシステムの概略構成を表すブロック図。
【図32】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【図33】同じく制御の一例を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
2…エンジン、2a…吸気経路、4…変速機、5…自動クラッチ、6…クランク軸、8…シフト操作装置、8a…シフトレバー、10…変速制御用ECU、11…変速油圧アクチュエータ、12…スリーブ位置センサ、14…クラッチストロークセンサ、18…クラッチ出力軸回転数センサ、22…車速センサ、24…エンジン回転数センサ、26…アクセル開度センサ、28…アクセルペダル、30…スロットル開度センサ、32…エンジン制御用ECU、34…空燃比センサ、36…スロットルバルブ、50…VSC−ECU、52…ブレーキペダル、52a…ブレーキスイッチ、56…ブレーキブースタ、56a…ダイヤフラム、56b,56c…圧力室、56d…ブレーキブースタ圧力センサ、56e…チェック弁、58…制動油圧アクチュエータ、104…変速機、105…自動クラッチ、106…入力軸、110…変速制御用ECU、111…変速油圧アクチュエータ、111…油圧アクチュエータ、112…スリーブ位置センサ、114…第1クラッチストロークセンサ、116…第2クラッチストロークセンサ、118,120…クラッチ出力軸回転数センサ、122…車速センサ、Wfl,Wfr,Wrl,Wrr…ホイールシリンダ、Ai…クラッチ出力軸、Aj…出力軸、A1,A2…クラッチ出力軸、A3…カウンタ軸、A4…出力軸、C1,C2…クラッチ、FL,FR,RL,RR…車輪、I1〜I6,IR…ドライブギヤ、MR…後進アイドラギヤ、O1〜O6,OR…ドリブンギヤ、PC…油圧駆動機構、PC1,PC2…油圧駆動機構、S1〜S4…スリーブ、TD…トーショナルダンパ。

Claims (12)

  1. 自動クラッチ及び変速機を介して走行駆動力を駆動輪側へ出力するエンジンを備えた車両における制動制御方法であって、
    前記自動クラッチが係合中にエンジンブレーキが発生すると推定された場合には、前記変速機の変速時に前記自動クラッチ解放状態となるのに応じて、前記自動クラッチから前記駆動輪までの間に設けられた制動手段から補助制動力を発生させてエンジンブレーキ力を補うとともに、前記自動クラッチの完全解放期間に前記補助制動力が、前記自動クラッチの係合状態における変速前のエンジンブレーキ力から前記自動クラッチの係合状態における変速後のエンジンブレーキ力へと変化するように前記補助制動力を制御することを特徴とする車両制動制御方法。
  2. 請求項1において、前記自動クラッチが係合中に生じるエンジンブレーキ力を表す物理量を推定し、該物理量の内で、前記自動クラッチの解放状態に応じて減少された分の物理量に相当する補助制動力を前記制動手段から発生させることによりエンジンブレーキ力を補うことを特徴とする車両制動制御方法。
  3. 請求項1又は2において、前記自動クラッチの解放時の変速段の変化に対応させて、前記補助制動力を変化させることを特徴とする車両制動制御方法。
  4. 自動クラッチ及び変速機を介して走行駆動力を駆動輪側へ出力するエンジンを備えた車両における制動制御装置であって、
    前記自動クラッチから前記駆動輪までの間に設けられた制動手段と、
    前記自動クラッチの作動状態を検出する自動クラッチ作動状態検出手段と、
    前記自動クラッチが係合されている場合でのエンジンブレーキの発生状態を推定するエンジンブレーキ推定手段と、
    前記エンジンブレーキ推定手段にてエンジンブレーキの発生が推定されると、前記自動クラッチ作動状態検出手段にて検出された前記変速機の変速時における前記自動クラッチの解放に応じて前記制動手段から補助制動力を発生させるエンジンブレーキ補助手段と、
    を備え、前記自動クラッチの完全解放期間に前記補助制動力が、前記自動クラッチの係合状態における変速前のエンジンブレーキ力から前記自動クラッチの係合状態における変速後のエンジンブレーキ力へと変化するように前記補助制動力を制御することを特徴とする車両制動制御装置。
  5. 請求項4において、前記エンジンブレーキ推定手段は、前記自動クラッチが係合されていた場合でのエンジンブレーキ力を表す物理量を推定し、
    前記エンジンブレーキ補助手段は、前記自動クラッチ作動状態検出手段にて検出された前記自動クラッチの解放状態に応じて前記自動クラッチにて伝達されるエンジンブレーキ力を表す物理量を算出し、該物理量と前記エンジンブレーキ推定手段にて推定された物理量との差に応じた補助制動力を前記制動手段から発生させることを特徴とする車両制動制御装置。
  6. 請求項4又は5において、前記変速機の変速段を設定する変速段設定手段を備え、前記エンジンブレーキ補助手段は、前記自動クラッチの解放時に、前記変速段設定手段にて設定される変速段に対応させて、前記補助制動力を変化させることを特徴とする車両制動制御装置。
  7. 請求項6において、前記変速段設定手段は、自動変速制御により変速段を設定することを特徴とする車両制動制御装置。
  8. 請求項6において、前記変速段設定手段は、手動変速制御において運転者による変速指示により変速段を設定することを特徴とする車両制動制御装置。
  9. 請求項6〜8のいずれかにおいて、前記エンジンブレーキ補助手段は、前記自動クラッチの解放時に、前記変速段設定手段にて設定される変速段のダウンシフト変化あるいはアップシフト変化に対応させて、前記補助制動力を変化させることを特徴とする車両制動制御装置。
  10. 請求項5〜9のいずれかにおいて、前記エンジンブレーキ推定手段は、前記物理量を、エンジン運転状態と前記変速機の変速状態とを含むデータに基づいて推定することを特徴とする車両制動制御装置。
  11. 請求項5〜9のいずれかにおいて、前記エンジンブレーキ推定手段は、前記物理量を、前記自動クラッチの解放直前の車両減速度とすることを特徴とする車両制動制御装置。
  12. 請求項4〜11のいずれかにおいて、前記制動手段は、ホイールブレーキ又はリターダであることを特徴とする車両制動制御装置。
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