JP4303453B2 - シクロアルカノンおよびシクロアルカノールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シクロアルキルヒドロペルオキシドを分解して、シクロアルカノンおよびシクロアルカノールを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シクロアルキルヒドロペルオキシドをシクロアルカノンとシクロアルカノールに変換する反応は、産業上、有用な反応の一つであり、例えば、シクロヘキサンの酸素酸化によるKAオイル(シクロヘキサノンとシクロヘキサノールの混合物)製造プロセスにおいては、酸化反応混合物の後処理工程で行われている。この反応は、通常、シクロアルキルヒドロペルオキシド含有液を金属触媒やアルカリ水溶液等と混合することにより行われ、これまでに数多くの方法が提案されている。
【0003】
例えば、上記混合成分として、特開平5−112486号公報には、アミノ基含有アルコキシシランやメルカプト基含有アルコキシシランで変性したシリカ等の担体に金属化合物を担持した触媒が、特開平7−247230号公報には、担体にマンガン、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅の化合物を担持した触媒とアルカリ水溶液との組み合わせが、特開平8−34751号公報には、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅のトリアリールホスフィン錯体が、それぞれ提案されている。また、特開平9−77704号公報には、ルテニウムまたはコバルトの化合物とN−置換イミダゾールとの組み合わせが、特開平9−194408号公報には、アルカリ金属水酸化物とアルカリ金属塩を含む水溶液が、特開平10−1449号公報には、コバルト化合物と4級アンモニウム塩またはピリジニウム塩との組み合わせが、それぞれ提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平5−112486号公報、特開平7−247230号公報、特開平8−34751号公報に提案の方法では、混合成分が比較的高価であるため、コスト的に満足できないことがあった。また、上記特開平9−77704号公報、特開平9−194408号公報、特開平10−1449号公報に提案の方法では、シクロアルカノールよりも利用価値の高いシクロアルカノンをより多く得たい場合に、シクロアルカノンの選択率が必ずしも十分でないことがあった。そこで本発明の目的は、低コストでシクロアルカノンの選択性良く、シクロアルキルヒドロペルオキシドをシクロアルカノンとシクロアルカノールに変換しうる方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意研究を行った結果、シクロアルキルヒドロペルオキシド含有液を特定の成分と混合して反応を行うことにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、シクロアルカンを分子状酸素で液相接触酸化反応させることにより得られるシクロアルキルヒドロペルオキシドを0.1〜20重量%の濃度で含む液を、前記シクロアルキルヒドロペルオキシドを含む液に対して0.1〜100重量ppmのN−ヒドロキシ環状イミド、前記シクロアルキルヒドロペルオキシドを含む液に対してコバルトとして0.001〜10重量ppmのコバルト化合物、及び前記シクロアルキルヒドロペルオキシドを含む液に対して0.1〜10重量%のアルカリ濃度1〜50重量%のアルカリ水溶液と、20〜200℃の温度で混合して、シクロアルキルヒドロペルオキシドを反応させることにより、シクロアルカノンおよびシクロアルカノールを製造する方法に係るものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の方法に供されるシクロアルキルヒドロペルオキシドは、その炭素数が通常5〜20、好ましくは5〜10のものである。具体的には、例えば、シクロペンチルヒドロペルオキシド、シクロヘキシルヒドロペルオキシド、シクロヘプチルヒドロペルオキシド、シクロオクチルヒドロペルオキシド、シクロノニルヒドロペルオキシド、シクロデシルヒドロペルオキシド、シクロドデシルヒドロペルオキシド、シクロペンタデシルヒドロペルオキシド、シクロヘキサデシルヒドロペルオキシド等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0007】
上記のシクロアルキルヒドロペルオキシドを含む液を、N−ヒドロキシ環状イミド、コバルト化合物およびアルカリ水溶液と混合して反応を行い、シクロアルキルヒドロペルオキシドを対応するシクロアルカノンとシクロアルカノールに変換する。このようにシクロアルキルヒドロペルオキシド含有液を特定の成分で処理することにより、対応するシクロアルカノンを選択性良く生成させることができる。
【0008】
シクロアルキルヒドロペルオキシド含有液としては、通常、シクロアルキルヒドロペルオキシドの濃度が0.1〜20重量%程度のものが用いられれる。この含有液は、例えば、シクロアルキルヒドロペルオキシドを脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の有機溶媒に溶解させたものを用いてもよいし、対応するシクロアルカンを分子状酸素で液相接触酸化反応させることにより得られるシクロアルキルヒドロペルオキシドを含む反応混合物を用いてもよい。
【0009】
なお、シクロアルキルヒドロペルオキシド含有液として、上記の液相接触酸化反応による反応混合物を使用する場合、該混合物中には、通常、シクロアルキルヒドロペルオキシドと共に、未反応のシクロアルカンや、シクロアルカノン、シクロアルカノール、カルボン酸類、エステル類等の酸化生成物が含まれるが、これらは、該混合物を本発明の方法で処理した後、分離、回収することができ、その際、該混合物中に含まれていたシクロアルカノンやシクロアルカノールは、本発明の方法により生成したシクロアルカノンやシクロアルカノールとともに、分離、回収することができる。また、上記の液相接触酸化反応の際に酸化触媒としてN−ヒドロキシ環状イミドやコバルト化合物を用い、得られた反応混合物をシクロアルキルヒドロペルオキシド含有液として使用する場合、後処理方法等によっては該混合物中にN−ヒドロキシ環状イミドやコバルト化合物が残存していることがあるが、この場合でも、本発明の方法に従い該混合物にさらにN−ヒドロキシ環状イミドおよびコバルト化合物を配合することにより、シクロアルカノンの選択率を高めることができる。
【0010】
シクロアルキルヒドロペルオキシド含有液に混合されるN−ヒドロキシ環状イミドとしては、5員環状のものや6員環状のものが好適に用いられるが、中でも下記一般式(1)
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を表し、あるいは、R1およびR2が一緒になって、それらが結合する炭素原子とともに芳香族性または非芳香族性の環を形成しており、点線と実線が平行している部分は一重結合または二重結合を表す。)
で示される化合物のような5員環状のものが好ましい。
【0013】
一般式(1)中、R1またはR2がアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシカルボニル基である場合、該アルキル基、該アルコキシ基におけるアルキル基および該アルコキシカルボニル基におけるアルキル基としては、それぞれ例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基のような直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基のようなシクロアルキル基;アルキルシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基等が挙げられ、またこれらアルキル基の炭素数は通常1〜10、好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4である。
【0014】
一般式(1)中、R1またはR2がアリール基の場合、該アリール基としては、例えば、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ナフチル基、ピリジル基等が挙げられ、R1またはR2がハロゲン原子の場合、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、よう素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子、臭素原子であり、さらに好ましくは塩素原子である。
【0015】
また、一般式(1)中、R1またはR2がアシル基の場合、該アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等が挙げられ、これらアシル基の炭素数は通常1〜10、好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4である。
【0016】
また、一般式(1)中、R1およびR2が一緒になって、それらが結合する炭素原子とともに芳香族性または非芳香族性の環を形成している場合、環の員数は通常5〜12、好ましくは6〜10であり、環の種類としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環のような芳香族性の炭化水素環;シクロヘキサン環のようなシクロアルカン環;シクロヘキセン環のようなシクロアルケン環等が挙げられ、好ましくは芳香族性の炭化水素環である。環は置換基を有していてもよく、また複素環であってもよい。
【0017】
N−ヒドロキシ環状イミドの混合割合は、シクロアルキルヒドロペルオキシド含有液に対して、通常0.1〜100重量ppmであり、好ましくは1〜50重量ppm、さらに好ましくは5〜30重量ppmである。なお、N−ヒドロキシ環状イミドは、対応する環状酸無水物とヒドロキシルアミンとを反応させることにより調製することができる。
【0018】
またシクロアルキルヒドロペルオキシド含有液に混合されるコバルト化合物としては、例えば、塩化コバルト、臭化コバルトのようなハロゲン化物;酢酸コバルト、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルトのような有機酸塩;硫酸コバルト、硝酸コバルトのようなオキソ酸塩;ビス(アセチルアセトナート)コバルト、ビス(サリチリデン)エチレンジアミンコバルトのようなコバルト錯体等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0019】
コバルト化合物の混合割合は、シクロアルキルヒドロペルオキシド含有液に対して、コバルトとして、通常0.001〜10重量ppmであり、好ましくは0.01〜1重量ppm、さらに好ましくは0.05〜0.2重量ppmである。
【0020】
またシクロアルキルヒドロペルオキシド含有液に混合されるアルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのような金属炭酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウムのような金属酢酸塩等のアルカリを1種または2種以上含む水溶液が用いられる。この水溶液中のアルカリの濃度は、通常1〜50重量%であり、好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは20〜30重量%である。
【0021】
アルカリ水溶液の混合割合は、シクロアルキルヒドロペルオキシド含有液に対して、通常0.1〜10重量%である。また、シクロアルキルヒドロペルオキシド含有液中に、酸類やエステル類が含まれる場合には、この酸類やエステル類に対して、アルカリとして通常0.5〜5モル倍、好ましくは1〜3モル倍のアルカリ水溶液を混合するのが望ましい。
【0022】
上記反応の温度は、通常20〜200℃であり、好ましくは50〜160℃、さらに好ましくは80〜140℃である。また反応圧力は、通常0.1〜3MPaである。反応は回分式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。
【0023】
反応後の後処理操作については、公知の方法を適宜選択することができるが、例えば、反応混合物を油水分離し、得られた油層を蒸留に付することにより、シクロアルカノンとシクロアルカノールを分離することができる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0025】
参考例1(シクロヘキシルヒドロペルオキシド含有液の調製)
1Lのオートクレーブに、シクロヘキサン252.51g、N−ヒドロキシフタルイミド0.13g、0.47重量%のオクチル酸コバルト(II)を含むシクロヘキサン0.16g、シクロヘキサノン0.52g、およびシクロヘキサノール0.53gを入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら、圧力0.93MPa、温度140℃に調整した。この中に、窒素300ml/分と空気100ml/分の混合ガスを1時間吹き込んだ後、この混合ガスを空気200ml/分に切り替え、徐々に流量を上げて450ml/分とした。また、この切り替えと同時に、3.3重量ppmのオクチル酸コバルト(II)を含むシクロヘキサンを8.0g/分で、ならびに0.05重量%のN−ヒドロキシフタルイミド、2.36重量%のシクロヘキサノン、および2.40重量%のシクロヘキサノールを含むシクロヘキサンを0.8g/分で、供給開始するとともに、供給速度とほぼ等速度で反応液の抜き出しを開始し、滞留時間1時間で連続的に6.5時間反応を行った。抜き出した反応液は、連続的に200mLのオートクレーブに導入し、その中で水0.5ml/分と連続的に混合した後、油層と水層とに分離した。この油層をシクロヘキシルヒドロペルオキシド含有液として以下の例で使用した。
【0026】
実施例1
参考例1で得られ、ここで使用した油層を直前に分析したところ、シクロヘキサン94重量%、シクロヘキサノン1.23重量%、シクロヘキサノール1.72重量%、およびシクロヘキシルヒドロペルオキシド0.57重量%であった。また、この油層にはカルボン酸類およびエステル類が合計で0.20重量%含まれ、このうちシクロヘキシルエステル類はシクロヘキサノール換算で0.027重量%であった。200mLのオートクレーブに、この油層を48.58g、同じ油層に0.1重量%のN−ヒドロキシフタルイミドを加えたものを1.42g、47重量ppmのオクチル酸コバルト(II)を含むシクロヘキサンを0.64g、およびカルボン酸類とエステル類の合計に対し、水酸化ナトリウムとして1モル倍となる量の25重量%水酸化ナトリウム水溶液(0.18g)を入れ、窒素雰囲気下、120℃にて30分間撹拌した。
【0027】
得られた反応混合物を分析した結果、該反応混合物中には、シクロヘキサノン0.65g、シクロヘキサノール0.89g、シクロヘキシルヒドロペルオキシド0.18g、およびエステル類0.018g(内シクロヘキシルエステル類はシクロヘキサノール換算で0.010g)が含まれていた。シクロヘキシルヒドロペルオキシドの転化率は35%であり、シクロヘキシルヒドロペルオキシドを基準とするシクロヘキサノンの選択率は41%であった。
【0028】
比較例1
参考例1で得られ、ここで使用した油層を直前に分析したところ、シクロヘキサン93重量%、シクロヘキサノン1.24重量%、シクロヘキサノール1.73重量%、およびシクロヘキシルヒドロペルオキシド0.56重量%であった。また、この油層にはカルボン酸類およびエステル類が合計で0.21重量%含まれ、このうちシクロヘキシルエステル類は、シクロヘキサノール換算で0.028重量%であった。200mLのオートクレーブに、この油層を55.88g、47重量ppmのオクチル酸コバルト(II)を含むシクロヘキサンを0.70g、およびカルボン酸類とエステル類の合計に対し、水酸化ナトリウムとして1モル倍となる量の25重量%水酸化ナトリウム水溶液(0.19g)を入れ、窒素雰囲気下、120℃にて30分間撹拌した。
【0029】
得られた反応混合物を分析した結果、該反応混合物中には、シクロヘキサノン0.70g、シクロヘキサノール1.08g、シクロヘキシルヒドロペルオキシド0.19g、およびエステル類0.015g(内シクロヘキシルエステル類はシクロヘキサノール換算で0.007g)が含まれていた。シクロヘキシルヒドロペルオキシドの転化率は41%であり、シクロヘキシルヒドロペルオキシドを基準とするシクロヘキサノンの選択率は8%であった。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、低コストでシクロアルカノンの選択性良く、シクロアルキルヒドロペルオキシドをシクロアルカノンとシクロアルカノールに変換することができる。
Claims (2)
- シクロアルカンを分子状酸素で液相接触酸化反応させることにより得られるシクロアルキルヒドロペルオキシドを0.1〜20重量%の濃度で含む液を、前記シクロアルキルヒドロペルオキシドを含む液に対して0.1〜100重量ppmのN−ヒドロキシ環状イミド、前記シクロアルキルヒドロペルオキシドを含む液に対してコバルトとして0.001〜10重量ppmのコバルト化合物、及び前記シクロアルキルヒドロペルオキシドを含む液に対して0.1〜10重量%のアルカリ濃度1〜50重量%のアルカリ水溶液と、20〜200℃の温度で混合して、シクロアルキルヒドロペルオキシドを反応させることを特徴とするシクロアルカノンおよびシクロアルカノールの製造方法。
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