JP4303416B2 - 円筒状金属コイル加熱装置および加熱方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼板やアルミ板、銅板等コイル状に巻いた複数の円筒状金属コイルを効率よくかつ板幅方向の温度分布を制御しながら加熱できるコイル加熱装置および加熱方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、コイル状にした金属の加熱は、バッチ炉に入れガス加熱やパネルヒーターにより加熱する方法がほとんどである。バッチ加熱は、雰囲気が制御でき高温で焼鈍できるほか、機械的な歪みを与えずに焼鈍できることから、連続焼鈍装置では加熱できない特殊な材質のものや、品質が厳しいものなどに適用されている。
しかし、コイルのバッチ焼鈍は基本的には金属の塊を外部から加熱するため、加熱時間が非常に長くなると共に、温度偏差が大きくつきやすいため長時間にわたって均熱化する必要があるほか、加熱効率が極めて低い等の問題がある。
また、バッチで処理するため生産性が低く大量処理し難いという問題がある。
【0003】
これらの問題を解決するため、通電加熱を採用することが提案されている。
例えば特開平6ー10067号公報には、コイルの両端から通電することが、また特開平5ー171259号公報には、拡縮機構を有する内外電極により直接通電することが記載されている。また電気を使って加熱する方法としては、特開昭61ー19097号公報に、コイル内に鉄心を通し誘導加熱する方法が提案されている。
【0004】
さらには通電加熱する方法で問題となる、コイルと電極の接触面が均一に当たり難いことによる局部的な発熱に起因するコイル損傷や、圧延後の板厚差に起因するコイル内に生じる微少な隙間でのスパーク、および大電流を要することに起因する加熱速度が遅さ、あるいは誘導加熱する方法の時に問題となる表皮効果を解消するために、特開平11−236628号公報には、金属帯板コイルをトランス二次コイル状に配置し、一次コイルに電流を流すことで金属帯板に発生する二次電流によるジュール加熱を行う方法も提案されている。この方法によると、コイル加熱は効率が良いこと、極めて均一な加熱が行われることが示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、コイル焼鈍は必ずしも均一加熱のみが求められるのではなく、例えば特開昭57−134519号公報にあるように、方向性電磁鋼板の仕上焼鈍時に鋼板に適切な温度勾配を付けることで最終製品の磁気特性を格段に向上し得ることがある。この様な時には、例えばコイルの一方の端面から追加の加熱を行えれば、幅方向に温度勾配を付けることができる。
【0006】
その他にも、コイルを縦形に置く場合、下端部には常にコイル自重がかかり、温度が高くなると強度が落ちるため変形してしまうこともあり得るが、この様な時はコイル下部の温度を低めに加熱することができれば問題を回避することが可能である。
そこで本発明は、円筒状金属コイルを、板幅方向に温度分布を設けながら、効率よい加熱を一度に安定してできる生産性の高い加熱装置および加熱方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は下記の通りである。
(1) 金属帯板を巻いて円筒状にした一つまたは複数の円筒状金属コイルおよびコイルに絶縁されながら接するドーナッツ状同心円盤の内側を貫通する鉄心と、該鉄心と一次コイルを巻いた鉄心とを円筒状金属コイルの外で連結してリング状トランスを構成すると共に、円筒状金属コイルの最外周部の金属帯板と内周の金属帯板を導電部材で短絡し二次閉回路を構成し、一次コイルに通電することにより円筒状金属コイルを加熱しながら、同時に加熱される同心円盤からの伝熱によって円筒状金属コイルの板幅方向温度分布を制御可能に構成したことを特徴とする円筒状金属コイル加熱装置。
(2) 前記(1)に記載の加熱装置において、負荷となる同心円盤の差渡し方向に絶縁部が有り、絶縁部によって隔たれた部位を短絡する導電部材の途中に電流遮断機または、電圧、電流、電力の調整を行う調整回路を設けたことを特徴とする円筒状金属コイル加熱装置。
(3) 前記(1)または(2)に記載の加熱装置において、負荷となる円筒状金属コイルの外周部の金属帯板と内側の金属帯板を短絡する導電部材の途中に電流遮断機または、電圧、電流、電力の調整を行う調整回路を設けたことを特徴とする円筒状金属コイル加熱装置。
(4) 前記(1)に記載の円筒状金属コイル加熱装置において、円筒状金属コイルおよび同心円盤に設置した温度検出装置からの情報、および被加熱円筒状金属コイルの板厚、板幅、重量、種類、加熱時間、加熱温度から所要の電圧、電流の、いずれか一方または両方を制御装置で演算し、一次電源の電圧、電流および2次側の電流、電圧の、いずれか一方または両方を調整することを特徴とする円筒状金属コイルの加熱方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明による円筒状金属コイル加熱装置を説明する模式図で、1つの円筒状金属コイルを加熱する場合について説明する。図2は図1のA−A断面を示す図である。ここでは、同心円盤を台座としてその上に円筒状金属コイルを縦に置いた場合で説明するが、横置きであっても各円筒状金属コイルに接する同心円盤を据えることができれば構わない。
【0009】
図1において、帯状の金属を巻いた円筒状金属コイル1および同心円盤となっている台座2の内側の空間部分には、電磁鋼板等で作られたコの字状の鉄心を形成する1長辺の鉄心3が貫通し、円筒状金属コイル1および台座2の外で磁気回路が形成されるようにコの字状の鉄心4を接続し、リング状の鉄心を形成する。コの字状の鉄心4の他の1長辺鉄心には、電圧、電流等の調整が可能な一次電源5に接続された一次コイル6を巻く。すると、リング状に形成された鉄心はトランスの一次回路となる。
【0010】
一方、円筒状の金属コイル1は、表面に高抵抗の皮膜を形成するかあるいはコイル状に巻くときに、帯状金属板の間に絶縁体を入れて一緒に巻くことにより、板間の絶縁性を保つことができる。例えば熱延された鋼板などのように、表面に厚いスケール層ができそれが絶縁性を有する程の抵抗層になる場合や、電磁鋼板などのように表層に絶縁皮膜を設ける場合などのように、予めコイル層間の抵抗が高い場合、コイルに流れる電流は層間を伝わらずにコイル内部を伝わるため、円筒状金属コイル1は多数巻きの2次コイルを形成する。
【0011】
この円筒状金属コイル1の両端、すなわちコイル1の外周と内周の金属帯板をそれぞれ導電部材7で、電極8と電極9で短絡することにより、2次回路を形成する。これにより、一次電源5に一次電圧を加えると、一次コイル6の巻き数に応じた2次電圧が直接コイル1の中に誘起される。誘起された2次電圧により2次電流が円筒状金属コイル1内を流れることにより、コイル自体がジュール加熱される。この加熱方法では、加熱電源の周波数が低い場合には、コイル内の電流は板幅方向でほぼ均一に流れるため、均一な加熱をすることが可能である。
【0012】
それと同時に、コイルを据え置いた台座も1ターンではあるが鉄心を囲む二次回路を形成しているために二次電流が流れ、金属帯板コイルと同じ原理によってジュール加熱される。この時の二次回路に発生する起電力は金属帯板コイルと同じ量となるので、台座1ターン分の電気抵抗が金属帯板コイル全長の全電気抵抗より小さければ、より大きな電流が流れるため、金属帯板コイルより早く温度が高くなる。この時、台座とコイルが十分絶縁されていることが必要である。
【0013】
その結果、金属帯板コイルの台座に接する下端面は台座からの伝熱により他の部分より強く加熱されることになり、さらには鋼板内の伝熱により下端から上端に向かって温度勾配が発生することになる。台座、即ち同心円盤の温度は抵抗値を変えることで制御が可能である。例えば厚みを薄くすれば抵抗値が上昇するので、加熱能力が減少する。また、比抵抗値の小さな材質を選択すれば加熱能力を高めることもできる。
【0014】
さらには、円盤の円周方向を遮るように絶縁部を導入し、該絶縁部の両端を導電部材で短絡し、その途中に電流遮断機、または電圧、電流、電力の調整を行う調整回路を設けると、この回路の抵抗値を自在に変化させることができ、加熱能力を適宜高めたり低めたりすることができる。その結果、加熱される金属帯板コイルの幅方向の温度分布を大きくしたり小さくしたりすることができる。
【0015】
図3は、この方法による絶縁部を「空間」とする、即ち同心円盤の円周方向を横切るように裂け目を入れた構造を示す。図4は図3のA−A断面図である。図において、符号10〜18は図1の符号1〜9と同じ部位を示し、19,20は同心円盤台座の電極、21は導電部材、22は電流遮断機、あるいは電圧、電流、電力等を調整できる調整回路である。
【0016】
また、金属帯板コイルを短絡する導電部材の途中に電流遮断機、あるいは電圧、電流、電力等を調整できる調整回路23を設けて、コイルを流れる二次電流によるジュール加熱能力を制御し、帯板幅方向の温度勾配を調整してもよい。
なお、台座を金属帯板コイル端面に接する同心円盤としたが、形状は同心円である必要はなく、二次回路を形成していれば良いのであるが、同心円が最も均一に電流が流れる形状であるので、均一性を求める場合はできるだけ同心円形状に近づけるのがよい。
【0017】
本加熱方法では、一次コイルに加えられた電力は、直接2次コイルおよび同心円盤に誘起されるため、加熱効率が極めて高く、また二次電流も精度良く設定できるので制御性が高い。すなわち、円筒状金属コイル1内に発生した2次電流によるジュール損は、電極8,9,19,21など、導電部材7,21などの抵抗と2次電流の2乗分しかなく、これらの材質を低抵抗の銅等で形成すれば、ジュール損失を極めて小さなものにすることができる。
【0018】
また特に、コイル内に発生した2次電圧V2 は、発生した2次電流I2 コイル全体の抵抗Rcの積を引いた分だけが電極電圧E2 として生じる。
すなわち、これを式で示せば、
ここで、Rbは銅を用いればmΩオーダーにすることは容易であり、この場合には2次電流が10の3乗オーダーであっても高々Vオーダーにしかならず、仮に2次電流が大きな値であった場合でも、極めて安全な設備となる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
実験には、一辺が100mmの正方形断面の電磁鋼積層鉄心を用いた。この鉄心はコの字型とI型からできており、コの字の長辺の方は長さが1200mmで、一辺に一次コイルとして直径10mmの水冷銅パイプを10ターン巻き、1ターン毎にタップをたて、巻き数を自由に選択できるようにした。短辺は長さが600mmである。
【0020】
一方、2次側となる円筒状金属コイルは、内径を500mmとし、100mm幅の0.2mmの冷延鋼板(0.06%C)200Kgを、厚さ0.25mmのアルミナペーパーと共に重ねて巻いたものを3本用意した。アルミナペーパーは圧縮されて薄くなり、最終的には鋼板は560回巻いた。コイルを巻くときには、途中に熱電対を幅方向中央に入れておいた。
各コイルの内側と外側の鋼板端部は、長さ300mm、厚み10mm、幅50mmの銅製の電極2枚で挟み、100mm2 の銅ケーブルで短絡し2次回路を形成した。このケーブルの途中には、電磁式の電流遮断器を設けた。
【0021】
このように構成されたコイルを、コイルと同一材質の鋼からなり、直径1000mm、内径400mm、厚さ20mmのドーナツ状台座の上に、水に溶いたマグネシア粉末からなるスラリーを塗布し、乾燥させて薄い絶縁層とした上に、縦形に据え置いた。
【0022】
また、台座には一個所、円周方向を横切る方向に幅10mmの切れ目を入れ、切れ目の両端を100mm2 の銅ケーブルで短絡して2次回路を形成し、その途中に可変抵抗器を接続した。それと同時に台座上面で、冷延鋼板コイルに隣接する位置に熱電対を接続し、コイル温度に対する台座温度を常にモニターしながら可変抵抗器を制御できるようにした。一次電源は、周波数50Hz、電圧100V、容量250KVAのサイリスタインバーターを用いた。
【0023】
この装置を用い、まず台座によってできる二次回路の電気抵抗値が冷延鋼板コイルと同じになるように設定し、1次側で電圧が15[V]一定になるように設定し、10ターンで電流を流し、60分で800℃まで加熱したときの昇温時の温度分布を測定した。温度測定は、コイル厚み方向中心部で板幅方向に上端面から5mm点、50mm点、下端面から5mm点の3カ所の温度分布を測定した。
表1のA欄にその結果を示す。コイル内温度偏差は最大で6℃と極めて温度均一性が良好であることが確認できた。
【0024】
次に、台座に接続した可変抵抗を小さくし、台座の温度が900℃、コイル上端5mm位置の温度が800℃となるように加熱した時の温度分布を測定した。
表1のB欄にその結果を示す。コイル下端面温度は台座に追随して上端面より温度が上昇し、併せてコイル幅中心部も温度が上昇して、板幅方向に滑らかな温度勾配が形成されていることが分かる。
【0025】
さらに、コイル上端5mm位置の温度を800℃、台座の温度を700℃に設定して、逆の温度勾配を付けることを試みた。この際、台座の温度が上がりすぎるのを防ぐため、台座下面の断熱材を取り除いたうえで台座の加熱を行った。このように加熱を行った時の測温結果を表1のC欄に示す。台座の温度が低い場合でも、滑らかな温度勾配を形成させることが可能であることが分かった。
これらの実験により、コイル幅方向において所定の温度勾配を制御性良く形成させることが容易にできることが明らかとなった。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】
本発明により、円筒状金属コイル加熱時において、コイル板幅方向に目的とする温度勾配を付けることが容易に可能になる。すなわち、まず電流により円筒状金属コイルの内部から加熱を行うため、効率よく加熱時間を自在に制御できる上に、同様な方法で制御性良く温度を保たれた発熱体もしくは吸熱体がコイル端面に接することにより、温度勾配の形成の制御性が高まる。
【0028】
その結果、効率良く、加熱品質が良く歩留まり落ちを少なくでき、省エネにも大きく寄与する。また、種類、サイズ、昇温温度の異なる複数のコイルを同時に個別に処理できることから、生産性を著しく改善すると共に、生産の自由度も上げることができる。
また本発明では、通電に要する電圧、電流をコイルに直接誘起させるため、所要電圧が高いときでも電極部での電圧は極めて小さくでき、かつ円筒状金属コイルの場合、加熱長が長くなるため抵抗が大きくなり、所要電流を小さくできることから、設備の安全性の面からも有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による円筒状金属コイル加熱装置の例を示す模式図である。
【図2】図1に示すコイル加熱装置のA−A断面図である。
【図3】本発明による円筒状金属コイル加熱装置の他の例を示す模式図である。
【図4】図3に示すコイル加熱装置のA−A断面図である。
【符号の説明】
1:円筒状金属コイル 2:同心円盤台座
3,4:鉄心 5:電源
6,7:導電部材 8,9:電極
10:円筒状金属コイル 11:同心円盤台座
12,13:鉄心 14:電源
15,16:導電部材 17〜20:電極
21:導電材料
22,23:電流遮断機または電圧/電流/電力調整器
Claims (4)
- 金属帯板を巻いて円筒状にした一つまたは複数の円筒状金属コイルおよびコイルに絶縁されながら接するドーナッツ状同心円盤の内側を貫通する鉄心と、該鉄心と一次コイルを巻いた鉄心とを円筒状金属コイルの外で連結してリング状トランスを構成すると共に、円筒状金属コイルの最外周部の金属帯板と内周の金属帯板を導電部材で短絡し二次閉回路を構成し、一次コイルに通電することにより円筒状金属コイルを加熱しながら、同時に加熱される同心円盤からの伝熱によって円筒状金属コイルの板幅方向温度分布を制御可能に構成したことを特徴とする円筒状金属コイル加熱装置。
- 請求項1に記載の加熱装置において、負荷となる同心円盤の差渡し方向に絶縁部が有り、絶縁部によって隔たれた部位を短絡する導電部材の途中に電流遮断機または、電圧、電流、電力の調整を行う調整回路を設けたことを特徴とする円筒状金属コイル加熱装置。
- 請求項1または2に記載の加熱装置において、負荷となる円筒状金属コイルの外周部の金属帯板と内側の金属帯板を短絡する導電部材の途中に電流遮断機または、電圧、電流、電力の調整を行う調整回路を設けたことを特徴とする円筒状金属コイル加熱装置。
- 請求項1に記載の円筒状金属コイル加熱装置において、円筒状金属コイルおよび同心円盤に設置した温度検出装置からの情報、および被加熱円筒状金属コイルの板厚、板幅、重量、種類、加熱時間、加熱温度から所要の電圧、電流の、いずれか一方または両方を制御装置で演算し、一次電源の電圧、電流および2次側の電流、電圧の、いずれか一方または両方を調整することを特徴とする円筒状金属コイルの加熱方法。
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