JP3639712B2 - コイル加熱装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷延鋼板や電磁鋼板などの鋼板やアルミ板等のコイル状に巻いた金属帯板を効率よく、均一に加熱するコイル加熱装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、コイル状にした金属帯板の加熱は、バッチ炉に入れてガス加熱したり、パネルヒーターにより加熱する方法がほとんどである。バッチ加熱は雰囲気が制御でき、高温で焼鈍できるほか、機械的な歪みを与えずに焼鈍できることから、連続焼鈍装置では加熱できない特殊な材質のものや、品質が厳しいものなどに適用されている。
【0003】
しかし、コイルのバッチ焼鈍は、基本的には金属の塊を外部から輻射加熱するため、加熱時間が非常に長くなるとともに、温度偏差が大きくつきやすいため長時間にわたって均熱化する必要があるほか、加熱効率が極めて低い等の問題がある。
【0004】
この問題を解決するため通電加熱を採用することが提唱されている。たとえば、特開平6−10067号公報にはコイルの両端から通電することが、また特開平5−171259号公報には拡縮機構を有する内外電極により直接通電することが記載されている。また、電気を使って加熱する方法としては、特開昭61−19097号公報にコイル内に鉄心を通し、誘導加熱する方法が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、通電加熱する方法では、特開平6−10067号公報の場合、コイルと電極が均一に接触しにくいため局部的に発熱し、コイルに損傷を与えやすいという問題がある。また、特開平5−171259号公報では、圧延後の板厚差に起因するコイル内に生じる微小な隙間でのスパークが問題となる。また、両者とも塊状なため抵抗が小さく、大電流を流さないと発熱しにくく、加熱速度が遅いという問題がある。
【0006】
また、特開昭61−19097号公報では、誘導加熱が効果的に行われるのは周波数に応じた浸透深さまでの部分のみで、それ以外の部分は伝熱により熱が伝わるため加熱速度を制御することが難しいとともに、温度分布が大きくつきやすいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、制御性、効率がよく、安定して均一に加熱できるコイル加熱装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は下記の(1)〜(6)の通りである。
【0009】
(1)表面に絶縁性の皮膜を有する金属帯板を複数巻いてコイル状にしたコイルの内側を貫通する鉄心と、該鉄心とコイルの外で連結する一次コイルを巻いた鉄心とからなるトランスを構成し、コイルの外周部の金属帯板と内側の金属帯板を導電部材で短絡して二次回路を構成し、一次コイルに通電することにより金属帯板に二次電流を発生させ、電極電圧を、二次電流と、電極及び導電部材の抵抗の和の、積として生じさせて金属帯板を加熱させる機能を有することを特徴とするコイル加熱装置。
【0010】
(2)金属帯板と絶縁材を一緒に複数巻いてコイル状にしたコイルの内側を貫通する鉄心と、該鉄心とコイルの外で連結する一次コイルを巻いた鉄心とからなるトランスを構成し、コイルの外周部の金属帯板と内側の金属帯板を導電部材で短絡して二次回路を構成し、一次コイルに通電することにより金属帯板に二次電流を発生させ、電極電圧を、二次電流と、電極及び導電部材の抵抗の和の、積として生じさせて金属帯板を加熱させる機能を有することを特徴とするコイル加熱装置。
【0011】
(3)鉄心の表面を断熱材で覆ったことを特徴とする上記(1)、(2)のコイル加熱装置。
【0012】
(4)鉄心に冷却装置を有することを特徴とする上記(1)、(2)、(3)のコイル加熱装置。
【0013】
(5)上記(1)、(2)、(3)、(4)において、加熱周波数を制御することによりコイル内の加熱分布を制御することを特徴とするコイル加熱装置。
(6)前記金属帯板が鋼板であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のコイル加熱装置。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明のコイル加熱装置を説明する模式図、図2は図1のA−A断面を示す図である。
【0015】
帯状の金属を巻いたコイル1の内側の空間部分には、電磁鋼板等でつくられた鉄心2が貫通し、鉄心2と鉄心3とによりコイル1の外で磁気回路が形成されるようにリング状の鉄心を形成する。鉄心2は、鉄心3から分離できるように形成する。鉄心3には、一次電源8に接続された一次コイル4を巻くと、リング状に形成された鉄心はトランスの一次回路となる。
【0016】
一方、コイル1においては、表面に高抵抗の皮膜を有する金属帯板をコイル状に巻くか、あるいはコイル状にするときに金属帯板の間に絶縁材を入れて一緒に巻くことにより、コイル層間の絶縁性を保つことができる。例えば、熱延された鋼板などのように表面に厚いスケール層ができ、それが絶縁性を有する程の抵抗層になる場合や、電磁鋼板などのように表層にマグネシアの絶縁皮膜を作る材料などのように、あらかじめコイル層間の抵抗が高い場合、コイル1に流れる電流は層間を伝わらず、帯板内部を伝わるため、コイル1自体は多数巻きの二次コイルを形成する。
【0017】
このコイル1の両端、すなわちコイル1の外周部の金属帯板と内側の金属帯板とを導電部材5でつながった電極6と電極7で短絡することにより二次回路を形成する。これにより、一次電源8から一次電圧を加えると、一次コイル4の巻き数に応じた二次電圧が直接コイル1の中に誘起される。誘起された二次電圧により二次電流がコイル1内を流れることにより、コイル1自体がジュール加熱される。この加熱方法では、加熱電源の周波数が低い場合には、コイル1内の電流は板幅方向でほぼ均一に流れるため、均一に加熱することが可能である。逆に一次電源8の周波数を上げて、表皮効果によりコイル1の端面部分を中央部よりも高温にすることもできる。
【0018】
本加熱方法では、一次コイル4に加えられた電力は、直接二次コイルに誘起されるため、加熱効率が極めて高い。すなわち、コイル1内に発生した二次電流によるジュール損は、電極6、導電部材5、電極7の抵抗と二次電流の2乗分しかなく、これらを低抵抗の銅等の材質で形成すれば、ジュール損失を極めて小さなものにすることができる。また、コイル1内に発生した二次電圧V2 は、発生した二次電流I2 とコイル1全体の抵抗Rcの積を引いた分だけが電極電圧E2として生じる。すなわち、これを式で示せば数1の通りとなる。ここで、Rbは銅を用いればmΩオーダーにすることは容易であり、この場合には二次電流が10の3乗オーダーであっても高々Vオーダーにしかならず、仮に二次電流が大きな値であった場合でも、極めて安全な設備となる。
【0019】
【数1】
【0020】
本加熱装置では、電力の調整は一次電源8で行うことができるが、コイル1の巻き数が変化する場合には、一次コイル4の巻き数を変えられる様にタップを設けておき、負荷に応じてタップを切り替えるようにすればよい。なお、一次コイル4も温度上昇することから、一次コイル4には水冷の銅パイプなどを用いれば良い。
【0021】
また、コイル1を高温に加熱する場合には、コイル1からの輻射熱が問題になる。そのため、鉄心2、3の表面に断熱材を巻くことにより輻射熱の影響を抑えることができる。さらに、効果的に温度上昇を防ぐためには、鉄心2、3自体を強制冷却するのが望ましく、放熱板による放熱や強制空冷を行えば良く、熱の影響が無視できない場合には油などを用いた冷却を行えば良い。
【0022】
【実施例】
実験には、一辺が170mmの正方形断面の電磁鋼積層鉄心を用いた。この鉄心は、コの字型とI型とからできており、コの字型の方に一次コイルとして直径10mmの水冷銅パイプを10ターン巻いた。一方、二次側となるコイルは内径を500mmとし、500mm幅で、3mmのアルミナファイバーシートと0.3mmの冷延鋼板を重ねて1000回巻いて製作した。コイルを巻くときには、途中に熱電対を幅方向に入れておいた。このコイルの内側と外側の鋼板端部は、長さ800mm、厚み10mm、幅50mmの銅製の電極2枚で挟み、250mm2 の銅ケーブルで短絡し二次回路を形成した。一次電源には、周波数250Hz、電圧400V、容量600KVAのインバーターを用いた。
【0023】
この加熱装置を用い、一次側で電圧が400V一定になるように設定して電流を流し、30分で850℃まで加熱したときの昇温時の温度分布を測定した。温度測定は、厚み方向にコイル内側から20mm点、150mm点、外表面から20mm点の三箇所に、板幅方向として、両エッジから20mm点と中心の3点の温度分布を測定した。表1にその結果を示す。幅方向で見ると±5℃以内に納まるとともに、厚み方向でみても最大13℃の温度偏差しか生じず、極めて均熱性が良いことが確認できた。
【0024】
【表1】
【0025】
【発明の効果】
本発明の加熱装置を用いれば、コイルのバッチ加熱の本質的な問題である加熱温度分布の発生や、加熱効率が極めて低い問題を解決できる。すなわち、電流によりコイルの内部から加熱を行うため時間が自在に制御でき、しかも温度分布、加熱効率が極めて良いため、加熱品質が良く歩留まり落ちを少なくでき、省エネにも大きく寄与する。また、通電に要する電圧、電流は、コイルに直接誘起させるため、所要電圧が高いときでも電極部での電圧は極めて小さく、かつ、コイル形状で加熱長が長くなるため抵抗が大きくなり、所要電流も小さくできることから、設備の安全性の面からも有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコイル加熱装置を説明する模式図である。
【図2】図1に示す本発明のコイル加熱装置のA−A断面図である。
【符号の説明】
1 コイル
2 鉄心
3 鉄心
4 一次コイル
5 導電部材
6 電極
7 電極
8 一次電源
Claims (6)
- 表面に絶縁性の皮膜を有する金属帯板を複数巻いてコイル状にしたコイルの内側を貫通する鉄心と、該鉄心とコイルの外で連結する一次コイルを巻いた鉄心とからなるトランスを構成し、コイルの外周部の金属帯板と内側の金属帯板を導電部材で短絡して二次回路を構成し、一次コイルに通電することにより金属帯板に二次電流を発生させ、電極電圧を、二次電流と、電極及び導電部材の抵抗の和の、積として生じさせて金属帯板を加熱させる機能を有することを特徴とするコイル加熱装置。
- 金属帯板と絶縁材を一緒に複数巻いてコイル状にしたコイルの内側を貫通する鉄心と、該鉄心とコイルの外で連結する一次コイルを巻いた鉄心とからなるトランスを構成し、コイルの外周部の金属帯板と内側の金属帯板を導電部材で短絡して二次回路を構成し、一次コイルに通電することにより金属帯板に二次電流を発生させ、電極電圧を、二次電流と、電極及び導電部材の抵抗の和の、積として生じさせて金属帯板を加熱させる機能を有することを特徴とするコイル加熱装置。
- 鉄心の表面を断熱材で覆ったことを特徴とする請求項1ま たは2に記載のコイル加熱装置。
- 鉄心に冷却装置を有することを特徴とする請求項1、2ま たは3に記載のコイル加熱装置。
- 加熱周波数を制御することによりコイル内の加熱分布を制 御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコイル加熱装置。
- 前記金属帯板が鋼板であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のコイル加熱装置。
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JPH11236626A JPH11236626A (ja) | 1999-08-31 |
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