JP3668036B2 - 円筒状金属コイル加熱装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼板やアルミ板、銅板等のコイル状に巻いた複数の円筒状金属コイルを効率よく加熱できる円筒状金属コイル加熱装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、コイル状にした金属の加熱は、バッチ炉に入れガスやパネルヒーターにより加熱する方法がほとんどである。バッチ加熱は、雰囲気が制御でき、高温で焼鈍できるほか、機械的な歪みを与えずに焼鈍できることから、連続焼鈍装置では加熱できない特殊な材質のものや、品質が厳しいものなどに適用されている。
【0003】
しかし、コイルのバッチ焼鈍は、基本的には金属の塊を外部から加熱するため、加熱時間が非常に長くなるとともに、温度偏差が大きくつきやすいため長時間にわたって均熱化する必要があるほか、加熱効率が極めて低い等の問題がある。また、バッチで処理するため生産性が低く、大量処理しにくいという問題がある。
【0004】
これらの問題を解決するため、通電加熱を採用することが提唱されている。たとえば、特開平6−10067号公報にはコイルの両端から通電することが、また特開平5−171259号公報には拡縮機構を有する内外電極により直接通電することが記載されている。また、特開昭61−19097号公報にはコイル内に鉄心を通し、誘導加熱する方法が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、通電加熱する方法では、特開平6−10067号公報の場合、コイルと電極の接触面が均一に当たりにくいため局部的に発熱し、コイルに損傷を与えやすいという問題がある。また、特開平5−171259号公報では圧延後の板厚差に起因してコイル内に生じる微少な隙間でのスパークが問題となる。また、両者とも塊状なため抵抗が小さく、大電流を流さないと発熱しにくく、加熱速度が遅いという問題がある。
【0006】
また、特開昭61−19097号公報では、誘導加熱が効果的に行われるのは、周波数に応じた浸透深さまでの部分のみで、それ以外の部分は、伝熱により熱が伝わるため加熱速度を制御することが難しいとともに、温度分布が大きくつきやすいという問題がある。
【0007】
さらに、これらの加熱方法では複数の円筒状金属コイルを効率よく迅速に処理することは難しい。
【0008】
そこで、本発明は、複数の円筒状金属コイルを効率よく、均一な加熱を一度に安定してできる生産性の高い加熱装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は下記の通りである。
【0010】
(1)金属帯板を板間が絶縁するように巻いて円筒状にした複数の円筒状金属コイルの内側を貫通する鉄心と一次コイルを巻いた鉄心とを円筒状金属コイルの外で連結してリング状トランスを構成するとともに、各円筒状金属コイルの最外周部の金属帯板と最内周部の金属帯板とを導電部材でつなげた最外周部の金属帯板の電極と最内周部の金属帯板の電極で短絡して二次閉回路を構成し、一次コイルに通電することにより円筒状金属コイルに2次電流を発生させ、電極電圧を、2次電流と、電極及び導電部材の抵抗の和の、積として生じさせて円筒状金属コイルを加熱することを特徴とする円筒状金属コイル加熱装置。
【0011】
【0012】
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、本発明による円筒状金属コイル加熱装置を説明する模式図で、3つの円筒状金属コイルを加熱する場合について説明する。図2は図1のA−A断面を示す図である。ここでは円筒状金属コイルを横にした場合で説明するが、各円筒状金属コイルを分離する台座等を用いれば縦置きでも構わない。
【0015】
図1において、帯状の金属を巻いた円筒状金属コイル1、2、3の内側の空間部分には、電磁鋼板等でつくられたコの字状の鉄心を形成する1長辺の鉄心16が貫通し、円筒状金属コイル1、2、3の外で磁気回路が形成されるように鉄心16の開口部に着脱自在な鉄心17を接続し、リング状の鉄心を形成する。コの字状の鉄心を形成する他の1長辺鉄心18には、電圧、電流等の調整が可能な一次電源20に接続された一次コイル19を巻く。すると、リング状に形成された鉄心はトランスの一次回路となる。
【0016】
一方、円筒状金属コイル1、2、3は、表面に高抵抗の皮膜を形成するか、あるいはコイル状に巻くときに帯状金属板の間に絶縁体を入れて一緒に巻くことにより、板間の絶縁性を保つことができる。例えば、熱延された鋼板などのように、表面に厚いスケール層ができそれが絶縁性を有する程の抵抗層になる場合や、電磁鋼板などのように表層に絶縁皮膜を設ける場合などのように、あらかじめコイル層間の抵抗が高い場合、コイルに流れる電流は層間を伝わらず、コイル内部を伝わるため、円筒状金属コイル1、2、3は多数巻きの2次コイルを形成する。
【0017】
この円筒状金属コイル1、2、3の両端、すなわちコイル1の最外周と最内周の金属帯板をそれぞれ導電部材6、9、12で、電極4と電極5、電極7と電極8、電極10と電極11で短絡することにより、2次回路を形成する。これにより、一次電源20に一次電圧を加えると、一次コイル19の巻き数に応じた2次電圧が直接円筒状金属コイル1、2、3の中に誘起される。誘起された2次電圧により2次電流が円筒状金属コイル1、2、3内を流れることにより、コイル自体がジュール加熱される。この加熱装置では、加熱電源の周波数が低い場合には、コイル内の電流は板幅方向でほぼ均一に流れるため、均一な加熱をすることが可能である。逆に、加熱電源の周波数を上げることにより、表皮効果によりコイルの端面部分を中央部よりも高温にすることもできる。
【0018】
本加熱装置では、一次コイル19に加えられた電力は、直接2次コイルに誘起されるため、加熱効率が極めて高い。すなわち、円筒状金属コイル1、2、3内に発生した2次電流によるジュール損は、電極4、7、10、導電部材6、9、12、電極5、8、11の抵抗と2次電流の2乗分しかなく、これらの材質を低抵抗の銅等で形成すれば、ジュール損失を極めて小さなものにすることができる。また、コイル内に発生した2次電圧V2は、発生した2次電流I2とコイル全体の抵抗Rcの積を引いた分だけが電極電圧E2として生じる。すなわち、これを式で示せば、(1)式となる。ここで、R bは電極、導電部材の抵抗の和である。銅を用いればmΩオーダーにすることは容易であり、この場合 には2次電流が10の3乗オーダーであっても高々Vオーダーにしかならず、仮に2次電流が大きな値であった場合でも、極めて安全な設備となる。
【0019】
電極電圧E2 = V2−I2× Rc= I2×Rb …(1)
【0020】
本加熱装置では、円筒状金属コイル1、2、3の板厚、板幅、重量、種類がほぼ同じ場合には、2次側の負荷がほぼ同じとなるため、電力の調整は一次電源20で行うことができるが、円筒状金属コイル1、2、3の重量(巻き数)が大きく変化する場合には、一次コイル19の巻き数を変えられる様に一次コイル19にタップを設けておき、負荷に応じてタップを切り替えるようにすればよい。一次コイル19も温度上昇することから、一次コイル19には水冷の銅パイプなどを用いれば良い。あるいは、図1に示すように、導電部材6、9、12の途中に電流遮断機、または、電圧、電流、電力の調整を行う調整回路13、13'、14、14'、15、15'を設け、負荷側の方で電流を単純にon/offしても良いし、あるいは電圧、電流、電力等を制御してきめ細かく温度制御することもできる。この 様に円筒状金属コイル側で制御できれば、円筒状金属コイル1、2、3のサイズ、重量、種類等が異なっていても独立して加熱制御することができる様になり、複数の円筒状金属コイルを一度に処理する場合には、加熱温度を個別に制御したり、あるいは所定温度に加熱した後、一定温度に保持したりするなど操業の自由度を大きく増すことができる。
【0021】
電極からの電流の偏流が問題にならなければ、例えば図3に示すように最外周の帯板に接続する電極4、7、10と最内周の帯板に接続する電極5、8、11とを接続する導電部材6、9、12は片側だけに設けても構わず、この片側に設けた導電部材6、9、12の途中に電流遮断機、または、電圧、電流、電力の調整を行う調整回路13'、14'、15'を設けてもよい。さらに、加熱する複 数の円筒状金属コイル1〜3が負荷的にあまり大きく異ならない場合には、図4に示すような並列接続や、図5に示す直列接続をしても構わない。しかし、一般には円筒状金属コイルの厚みと重量が異なると2次の巻き数が大きく異なることから、処理する円筒状金属コイルの組み合わせによっては必ずしも適切な負荷にならない。そこで、図6の様に負荷に合わせて円筒状金属コイルの並列接続と直列接続とを組み合わせれば、2次側で負荷の調整をすることができる様になり、一次電源側の負担を軽くすることもできる。たとえば被加熱材が銅やアルミなどの様に抵抗が小さい場合には、1コイル当たりの抵抗が小さくなることから、コイルを短絡する導電部材の断面積を大きくしなければならないが、この場合も複数のコイルを直列に接続することでトータルのインピーダンスを大きくすることが可能となり、導電部材の断面積を小さくすることが可能になるとともに、一次電源の電流容量を小さくすることができる。また、逆にたとえば電磁鋼板やステンレス鋼板などの様に固有抵抗が大きい場合には、コイルを並列に接続することでインピーダンスを下げることができるようになる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0023】
【実施例1】
絶縁層として、アルミナペーパーを用いた例を示す。
【0024】
実験には、一辺が100mmの正方形断面の電磁鋼積層鉄心を用いた。この鉄心は、コの字型 とI型からできており、コの字の長辺の方は長さが1800mmで一辺に一次コイルとして直径10mmの水 冷銅パイプを100ターン巻き、10ターン毎にタップをたて巻き数を自由に選択できるようにした。短 辺は長さが600mmである。一方、2次側となる円筒状金属コイルは、内径を500mmとし、100mm幅の0.2mmの冷延鋼板(0.06%C)200Kgを、厚さ0.25mmのアルミナペーパーとともに重ねて巻いたものを3本 用意した。コイルの外部は、内周、外周、側面を厚み50mmのセラミックスファイバーで巻いて熱放散を抑制するようにした。アルミナペーパーは圧縮されて薄くなり、最終的には鋼板は560回巻いた。コイ ルを巻くときに、途中に熱電対を幅方向中央に入れておいた。各コイルの内側と外側の鋼板端部は、長さ300mm、厚み10mm、幅50mmの銅製の電極2枚で挟み、100mm2の銅ケーブルで短絡して2次回路 を形成した。このケーブルの途中には、電磁式の電流遮断器を設けた。一次電源は、周波数50Hz、電圧100V、容量250KVAのサイリスタインバーターを用いた。
【0025】
この装置を用い、3本の冷延コイルを上記コの字鉄心に200mmの間隔でセットし、1次 側で電圧が100[V]一定になるように設定し、50ターンで電流を流して60分で800℃まで加熱したときの 昇温時の温度分布を、厚み方向にコイル内表面から5mm点、150mm点、外表面から5mm点の3カ所で測定 した。表1にその結果を示す。
【0026】
【表1】
Figure 0003668036
【0027】
加熱したコイルを鉄心に挿入した順にA、B、Cとし、厚み方向で測定した温度測定結果では、A、B、Cともにほぼ同じ温度に加熱されており、複数コイルを同時に加熱しても良好な加熱ができることを確認した。温度偏差も最大で8℃と極めて温度均一性が良好であることが確認できた。これは、従来の様にガス加熱で実験に用いたコイルの加熱を行う場合には、温度偏差が±50℃以上つく とともに、均熱性を求める場合には、数時間を要することから、本加熱装置の急速加熱性、均熱性が著しく優れていることが明らかである。
【0028】
【実施例2】
絶縁皮膜として、鋼板表面にMgOを塗布した9mm、100mm幅の電磁鋼板を用いた例を説明する。
【0029】
実験は、実施例1で使用したものと同じ装置を用いて同じ様に行った。コイルは、3本の電磁鋼コイルを上記コの字鉄心に200mmの間隔でセットし、1次側で電圧が100[V]一定になるように 設定し、50Tで電流を流して60分で800℃まで加熱した。加熱したコイルの温度分布は、コイル間の温 度偏差、コイル内の温度偏差が±4℃とほぼ同じ温度に加熱されており、コイル表面に絶縁材を塗布し た電磁鋼板コイルを同時に加熱しても良好な加熱ができることを確認した。また、加熱後にコイルを巻きほどいてコイル層間の絶縁破壊状況をみたが、絶縁皮膜が破れコイル層間が短絡している箇所は確認されなかった。
【0030】
【実施例3】
絶縁皮膜として、圧延後に生じたスケールを用いた例として、2.3mm、幅100mmの0.06%C熱延鋼板を用いた例を説明する。
【0031】
実験は、実施例1、2で使用したものと同じ装置を用い同じ様に行った。コイルは、3本の熱延鋼板コイルを上記コの字鉄心に200mmの間隔でセットし、1次側で電圧が100[V]一定になるよ うに設定し、50Tで電流を流して60分で800℃まで加熱した。加熱したコイルの温度分布は、コイル間 の温度偏差、コイル内の温度偏差が±3℃とほぼ均一に加熱されており、コイル表面のスケールの絶縁 性を利用して熱延鋼板コイルを同時に加熱しても良好な加熱ができることを確認した。また、加熱後にコイルを巻きほどいてコイル層間の絶縁破壊状況をみたが、絶縁皮膜が破れコイル層間が短絡している箇所は確認されなかった。
【0032】
【実施例4】
絶縁皮膜として、圧延後に生じたスケールを用いた例として、2.3mm、幅100mmの18-8ステンレス熱延鋼板を用いた例を説明する。
【0033】
実験は、実施例1〜3で使用したものと同じ装置を用い同じ様に行った。コイルは、3本のステンレスコイルを上記コの字鉄心に200mmの間隔でセットし、1次側で電圧が100[V]一定になる ように設定し、50Tで電流を流して60分で800℃まで加熱した。加熱したコイルの温度分布は、コイル 間の温度偏差、コイル内の温度偏差が±3℃とほぼ均一に加熱されており、コイル表面のスケールの絶 縁性を利用してステンレス熱延鋼板コイルを同時に加熱しても良好な加熱ができることを確認した。また、加熱後にコイルを巻きほどいてコイル層間の絶縁破壊状況をみたが、絶縁皮膜が破れコイル層間が短絡している箇所は確認されなかった。
【0034】
【発明の効果】
本発明の加熱装置を用いれば、円筒状金属コイルのバッチ加熱の本質的な問題である外表面からの輻射加熱によって生じる加熱温度分布の発生や、加熱時間がかかりすぎて生産性が著しく落ち、加熱効率が極めて低いという問題を解決できる。すなわち、電流により円筒状金属コイルの内部から加熱するため、加熱時間を自在に制御でき、しかも温度分布、加熱効率が極めて良いため、加熱品質が良く歩留まり落ちを少なくでき、省エネにも大きく寄与する。また、複数のコイルを同時に個別に処理できることから、生産性を著しく改善するとともに、生産の自由度もあげることができる。
【0035】
また、本発明では、通電に要する電圧、電流をコイルに直接誘起させるため、所要電圧が高いときでも電極部での電圧は極めて小さくでき、かつ、円筒状金属コイルは加熱長が長くなるため抵抗が大きくなり、所要電流を小さくできることから、設備の安全性の面からも有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による、複数の円筒状金属コイルを加熱する加熱装置を説明する模式図である。
【図2】 図1に示す加熱装置のA−A断面図である。
【図3】 本発明による加熱装置の2次側の短絡線を片側のみにした例を示す図である

【図4】 本発明による、複数の円筒状金属コイルを並列接続により加熱する加熱装置を説明する模式図である。
【図5】 本発明による、複数の円筒状金属コイルを直列接続により加熱する加熱装置を説明する模式図である。
【図6】 本発明による、複数の円筒状金属コイルを並列接続と直列接続を組み合わせて加熱する加熱装置を説明する模式図である。
【符号の説明】
1 円筒状金属コイル
2 円筒状金属コイル
3 円筒状金属コイル
4 電極
5 電極
6 導電部材
7 電極
8 電極
9 導電部材
10 電極
11 電極
12 導電部材
13,13' 電流遮断機、または、電圧、電流、電力の調整を行う調整回路
14,14' 電流遮断機、または、電圧、電流、電力の調整を行う調整回路
15,15' 電流遮断機、または、電圧、電流、電力の調整を行う調整回路
16 鉄心
17 鉄心
18 鉄心
19 一次コイル
20 一次電源

Claims (1)

  1. 金属帯板を板間が絶縁するように巻いて円筒状にした複数の円筒状金属コイルの内側を貫通する鉄心と一次コイルを巻いた鉄心とを円筒状金属コイルの外で連結してリング状トランスを構成するとともに、各円筒状金属コイルの最外周部の金属帯板と最内周部の金属帯板とを導電部材でつなげた最外周部の金属帯板の電極と最内周部の金属帯板の電極で短絡して二次閉回路を構成し、一次コイルに通電することにより各円筒状金属コイルに2次電流を発生させ、電極電圧を、2次電流と、電極及び導電部材の抵抗の和の、積として生じさせて円筒状金属コイルを加熱することを特徴とする円筒状金属コイル加熱装置。
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