JP4301492B2 - ポリマー水分散体の製造方法およびポリマー水分散体 - Google Patents

ポリマー水分散体の製造方法およびポリマー水分散体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリマー水分散体の製造方法および当該製造方法により得られたポリマー水分散体に関する。本発明のポリマー水分散体は、各種用途に適用できる。たとえば、紙基材やポリ塩化ビニル、ポリオレフィン等の各種プラスチック基材等に用いられる水系剥離剤、水系耐ブロッキング剤、水系滑り剤および水系撥水剤等として有用である。特に、剥離シート用の水系剥離剤として有用であり、本発明の水系剥離剤を塗工した剥離シートは粘着テープ、粘着シート等の粘着面の保護、保存に好適である。
【0002】
【従来の技術】
一般に、粘着テープ、粘着シート等の粘着体においては、その粘着面の保護のために、該粘着面に剥離シートを貼着するか、あるいは粘着体をロール状に巻いて該粘着面を基材の背面に貼着している。これら剥離シートの剥離面や基材の背面には、使用時における剥離性を良好にするために剥離剤が塗布されている。
【0003】
従来より、上記剥離剤としてはシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基等の長鎖炭化水素基を有するポリマーからなる剥離剤(以下、長鎖アルキル系剥離剤という)が用いられているが、長鎖アルキル系剥離剤はシリコーン系剥離剤に比べて再粘着性、筆記性および印刷性が優れていることから、近年、長鎖アルキル系剥離剤が注目を集めている。例えば、エチレンビニルアルコールにアルキルイソシアナートを反応させたポリマーを溶剤型の剥離剤として用いることが提案されている(たとえば特許文献1参照。)。
【0004】
さらに、作業環境や公害に対する配慮から長鎖アルキル系剥離剤を水系化する技術が提案されている。例えば、原料を水中撹拌下で反応させることにより長鎖アルキル系剥離剤を得ている(たとえば特許文献2参照。)。また、長鎖アルキル基を有する剥離ポリマーを、水中で乳化分散させて得た水分散体を水系剥離剤として用いている(たとえば特許文献3、特許文献4参照。)。
【0005】
前記長鎖アルキル基を有する剥離ポリマーの水分散体からなる水系剥離剤は、その塗工物が一般的に有用と考えられている薄層となるように得られた水分散体中の被分散体の体積平均粒径が1μm以下の微細なものであり、しかも保存安定性が良好で分散安定化した水分散体であることが要求される。そのため、前記水分散体の製造にあたっては、必然的に多量の乳化剤が用いられる。これら水分散体における乳化剤量は、一般的に剥離剤ポリマー100重量部(乾燥重量)に対して10〜100重量部(乾燥重量)である。
【0006】
しかし、乳化剤の使用量を多くして製造された水分散体(水系剥離剤等)が各種基材に塗工された剥離シートを粘着体等に適用すると、剥離シートに形成された剥離性皮膜の一部が、粘着体等の粘着剤面に移行して粘着剤の粘着力を低下させたり、粘着体に貼り付けた被着体表面を汚染するなどの悪影響を及ぼす。
【0007】
また、水系剥離剤は、長鎖アルキル基を有するラジカル重合性モノマーを極性を有するモノマーと共に水中に乳化分散させて、乳化共重合する方法により得ることができる(たとえば特許文献5参照。)。この方法は、比較的に少量の乳化剤で、サブミクロン以下の体積平均粒径の剥離ポリマーの水分散体を得るのに有用な方法と考えられる。しかし、長鎖アルキル基を有するラジカル重合性モノマーとそれと共重合させる極性モノマーは、水に対する溶解度が大きく異なる。そのため、通常の乳化重合の場合には、前記各モノマーのミセル中への可溶化速度が異なり、意図した組成比の共重合体を得ることは困難であった。したがって、得られる水系剥離剤も意図した特性を有するものが得られていない。一方、通常の懸濁重合では、サブミクロン以下の体積平均粒径の剥離ポリマーの水分散体を得ることは困難であった。
【0008】
【特許文献1】
特公昭60−30355号公報
【0009】
【特許文献2】
特開昭61−113678号公報
【0010】
【特許文献3】
特開平9−111197号公報
【0011】
【特許文献4】
特開平9−29756号公報
【0012】
【特許文献5】
特開平4−222886号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、少量の乳化剤を用いて、2種類以上のラジカル重合性モノマーから、体積平均粒径が小さい、所望の共重合組成比のポリマーの水分散体を製造する方法および当該製造方法により得られたポリマー水分散体を提供することを目的とする。さらには、当該ポリマーの水分散体を用いてなり、粘着体等の粘着剤の粘着特性に影響を及ほさない水系剥離剤を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す製造方法により、前記目的を達成できることを見出し本発明を解決するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、少なくとも2種類のラジカル重合性モノマーを含有するモノマー混合物、開始剤および分散剤を含有する被分散水溶液を、注入圧力:6.5×10 Pa以上で噴射することにより分散させてモノマー水分散体とした後、当該モノマー水分散体を共重合するポリマー水分散体の製造方法であって、前記ラジカル重合性モノマーが、非極性モノマーと極性モノマーとを含み、前記非極性モノマーが、炭素数が12〜22の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、前記極性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸およびアクリロニトリルから選ばれるいずれか少なくとも1種であることを特徴とするポリマー水分散体の製造方法、に関する。
【0016】
前記ポリマー水分散体の製造方法において、前記被分散水溶液を、注入圧力:6.5×107 〜3.1×108 Pa、注入初速度:150〜630m/secで噴射することが好ましい。
【0017】
本発明では、分散質(開始剤およびモノマー混合物)と分散媒(分散剤および水)を含有する被分散水溶液を、注入圧力が6.5×107 Pa以上の超高圧、超高速度で噴射して相互接触することにより、モノマー混合物を水中に分散させて微細粒子のモノマー水分散体としている。また、超高圧、超高速度で分散質と分散媒を噴射しているため、高いエネルギーを効率良く、モノマー水分散体の製造に費やすことが可能となり、非常に少ない分散剤量で、サブミクロン以下の平均粒径の微細なモノマー水分散体を得ることができる。また、モノマー水分散体中には、分散質であるモノマー混合物が同時にモノマー水分散体中に取り込まれるため、モノマー混合物が性質の異なる2種類のラジカル重合性モノマーを含有する場合にも所望の共重合組成比のポリマーの水分散体を得ることができる。
【0018】
前記注入圧力は高いほど得られるモノマー水分散体の粒径も小さくなり好ましい。前記注入圧力は6.5×107 Pa以上、さらには1.8×108 Pa以上であるのが好ましい。注入圧力6.5×107 Pa未満では、一般的な回転式乳化機との差別化が難しく、注入圧力からの高いエネルギー効率でモノマー水分散体を製造することができず、得られるモノマー水分散体の平均粒径が大きくなる。大きな粒径のモノマー水分散体を用いて重合して得られたポリマー分散体は必然的に大きな粒径のポリマー分散体となる。当該ポリマー分散体を、水系剥離剤として用いた場合には適正な厚みの処理物とはならず、また形成された皮膜の均一性にも劣り、粘着テープ等に用いた場合、接着力の低下等の悪影響を及ばす。一方、一般的な装置の性能上から前記注入圧力の上限は、3.1×108 Pa程度である。
【0019】
また注入初速度は、得られるモノマー水分散体の平均粒径を適正に制御する点から、150m/sec以上であることが好ましい。さらには370m/sec以上であることが好ましい。一方、装置の安定運転の点から、注入初速度は、630m/sec以下、さらには560m/sec以下であることが好ましい。
【0020】
前記ポリマー水分散体の製造方法には、ラジカル重合性モノマーとして、水への溶解性が悪い非極性モノマーと水への溶解性が良い極性モノマーとを含む場合にも好適に適用できる。水への溶解性が悪い非極性モノマーとしては、たとえば、炭素数が8以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルがあげられる。また、水への溶解性が良い極性モノマーとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸およびアクリロニトリルから選ばれるいずれか少なくとも1種があげられる。
【0021】
本発明のポリマー水分散体の製造方法は、前述の通り、モノマー混合物が性質の異なる2種類のラジカル重合性モノマーを含有する場合にも所望の共重合組成比のポリマーの水分散体を得ることができる。たとえば、剥離性ポリマーを調製する場合には、炭素数が8以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを少なくとも1種類用いるとともに、得られる剥離性ポリマーの皮膜の耐熱性の向上や、塗布する基材への投錨性等の改良のために、極性基を持つモノマーを併用することができる。
【0022】
前記ポリマー水分散体の製造方法において、モノマー混合物100重量部(乾燥重量)に対し、分散剤(乾燥重量)が10重量部以下の割合で配合されているのが好ましい。本発明のポリマー水分散体は、分散剤の前記使用量を10重量部以下と少なくした場合にもモノマー水分散体の体積平均粒径を小さくして、かつ得られるポリマー水分散体の保存安定性を良好に維持できる。また、分散剤の前記使用量は剥離剤としての特性からは少なければ少ない程良く、分散剤が剥離処理面に接した粘着剤に移行したり、粘着剤の接着力を低下させることがなく、粘着剤の汚染の原因もなくなる。分散剤の前記使用量は、3重量部以下とするのがより好ましい。一方、保存安定性の良好な水分散体を得るには、分散剤の使用量を0.2重量部以上、さらには0.5重量部以上とするのが好ましい。
【0023】
前記ポリマー水分散体の製造方法において、モノマー水分散体の体積平均粒径が、1μm以下の微細粒子であることが好ましい。本発明のモノマー水分散体は、前記微細粒子であっても保存安定性が良好である。前記体積平均粒径は、好ましくは0.05〜0.5μmである。なお、モノマー水分散体を、共重合して得られるポリマーの水分散体の体積平均粒径も1μm以下、より好ましくは0.05〜0.5μm以下である。
【0024】
また本発明は、前記製造方法により得られたポリマー水分散体に関する。さらには前記ポリマー水分散体を含有してなる水系剥離剤に関する。前記本発明のポリマー水分散体は各種用途において使用できるが、特に水系剥離剤として有用であり、粘着体の粘着面への汚染性等の問題が生じない薄層の塗工物を提供することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明のポリマー水分散体は、少なくとも2種類のラジカル重合性モノマーを含有するモノマー混合物、開始剤および分散剤を含有する被分散水溶液を、モノマー水分散体とした後、共重合することにより得られる。
【0026】
ラジカル重合性モノマーは、特に制限されないが、前述の通り、剥離性ポリマーの水分散体を製造するにあたっては、水への溶解性が悪い非極性モノマーと水への溶解性が良い極性モノマーとを含むことが好ましい。
【0027】
水への溶解性が悪い非極性モノマーとしては、たとえば、炭素数が8以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルがあげられる。炭素数が7以下では剥離性の点で不都合がある。炭素数が8以上の長鎖アルキル基としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等があげられ、通常、長鎖アルキル基の炭素数は8〜22程度である。当該炭素数は12〜20であるのが、ポリマーの剥離性の点からより好ましい。一方、水への溶解性が良い極性モノマーとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル等があげられる。
【0028】
前記非極性モノマーと極性モノマーとの割合は、非極性モノマー1モル部に対して、極性モノマーを0.2〜120モル部とするのが好適である。極性モノマーが0.2モル部以下では、得られるポリマーの皮膜の耐熱性の改善効果と基材に対する投錨性の向上が不十分である。120モル部を超える場合には剥離特性に影響を及ぼし、剥離力が大きくなり望ましくない。
【0029】
なお、モノマー混合物には、得られるポリマーの性質に応じて、各種モノマーを含有させることができる。前記剥離性ポリマーの水分散体を製造する際には、前記例示の非極性モノマー、極性モノマーの他に、ポリマーの剥離性を損なわない範囲で他のモノマーをさらに含有させることもできる。
【0030】
開始剤としては、一般的にラジカル重合に用いられる油溶性、水溶性のいずれも使用できるが、モノマー水分散体中に取り込まれ、モノマー混合物を懸濁重合させることができる、モノマーとの相溶性の良い油溶性開始剤が好適である。油溶性開始剤としては、たとえば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等が用いられる。開始剤の使用量は、通常のラジカル重合の場合と同様であり、モノマー混合物100重量部に対して、0.1〜10重量部が好適である。
【0031】
分散剤としては、モノマー混合物を微細な油滴として、安定に分散させるのに適したものが好ましい。分散剤は、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の分散剤を単独で、または併用系で用いることができる。分散剤の使用量は、前述の通り、モノマー混合物100重量部に対して、10重量部以下が望ましい。
【0032】
分散剤の具体例としては、たとえば、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等のアニオン系分散剤;ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ポリエチレングリコールモノステアレート等のノニオン系分散剤;セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン系分散剤等があげられる。
【0033】
被分散水溶液は、少なくとも2種類のラジカル重合性モノマーを含有するモノマー混合物、開始剤および分散剤を含有する。被分散水溶液中には、さらに、得られるポリマーの分子量を制御するために、モノマー混合物との相溶性の良い連鎖移動剤を用いることもできる。また被分散水溶液中には各種の添加剤を加えることもできる。被分散水溶液は、油分(水以外の成分)の濃度が、通常、20〜60重量%程度に調製するのが好ましい。さらに好ましくは30〜50重量%である。
【0034】
被分散水溶液は、予め、前記各成分を混合して調製しておく。また、被分散水溶液は、例えば回転式乳化機等の一般的な高速乳化により予備乳化分散しておくことができる。
【0035】
本発明のポリマー水分散体の製造方法では、前記被分散水溶液を、前記超高圧、超高速度で噴射する。これにより体積平均粒径が、サブミクロン以下の微細なモノマー水分散体を得ることができる。
【0036】
前記被分散水溶液を超高圧、超高速度で噴射する乳化分散機としては、超高圧ジェット流反転式乳化分散機(日本BEE社製)を用いることができる。図1は当該乳化分散機の概念図である。当該乳化分散機は、被分散水溶液を供給する注入口1を有し、注入口1に続き超高圧、超高速度で被分散水溶液を噴射させるノズルアッセンブリー2を有する。噴射液は噴射口2aを通過して吸収(ABC)セル4内に導入される。ノズルアッセンブリー2によって噴射口2aの流量を調整して超高圧、超高速度を制御できる。注入口1と噴射口2aの間にはカップリング3が交換可能に設けられている。カップリング3により層流と乱流を形成でき、噴射液は噴射前にプレミキシングすることができる。吸収セル4は複数連結されており、リテーナー5により保持されている。また吸収セル4の連結部にはPEEKシール6がされている。混合物の噴射方向の吸収セル4の末端にはリバース用プラグ7またはフィード用プラグ7′が交換可能に設けられている。噴射口2と吸収セル4の間には排出口8(または注入口8′)が設けられている。
【0037】
上記製造方法では、たとえば、前記超高圧ジェット流反転式乳化分散機(日本ビーイーイ社製)を図2の態様で用いる。被分散水溶液は、高圧ポンプ等により注入口1に供給され、超高圧、超高速度で噴射口2aを通過して吸収(ABC)セル4内に導入される。当該混合物の噴射方向の吸収セル4の末端はリバース用プラグ7が設けられている。超高速度で噴射された前記被分散水溶液の第一流体は、セル4の中心部を通ってリバース用プラグ7に当たって反転し、反転した第二流体はセル4の内部の外側を逆流して、噴射口2aと吸収セル4の間に設けられた排出口8より得られる。第二流体はシール6の窪みでミキシングされる。たとえば、ベルヌイの定理より求められる注入初速度630m/secで噴射された超高速度の混合物は、反転して逆流する液と接触してエネルギーを交換し、リバース用プラグ7の部分での第一流体の流速は2m/secとなり、エネルギーが効率良く液の乳化分散に転化されたことがわかる。
【0038】
次いで、得られたモノマー水分散体には、通常のラジカル重合反応を行い、モノマー混合物を共重合する。共重合にあたっては、モノマー水分散体に水を加え、油分濃度を適宜に調整することができる。通常、油分濃度を、20〜60重量%程度に調整するのが好ましい。
【0039】
共重合は、加熱により行う。加熱温度は、モノマー混合物の種類に応じて適宜に調整できる。通常は、60〜80℃程度である。共重合は、窒素等の不活性ガスの雰囲気下で行うのが好ましい。
【0040】
こうして、サブミクロン以下の平均粒径を持つポリマーの水分散体が得られる。得られたポリマーの重量平均分子量は特に制限されないが、0.5〜50万程度のものが好ましい。特に1〜30万のものが好適である。重量平均分子量が0.5万未満では剥離性ポリマーとして用いた場合には、耐熱性が不十分であり、50万を超えると剥離性皮膜としての形成能に劣る傾向があり望ましくない。
【0041】
【実施例】
以下に、本発明について実施例をあげて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1
(被分散水溶液の調製)
オクタデシルメタクリレート184g、アクリロニトリル190g、1−ドデカンチオール3g、アゾビスイソブチロニトリル1g 塩化ステアリルトリメチルアンモニウム8g、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(エチレングリコールの付加モル数が140)3gに対して、油分が45重量%となるように水を加えて被分散水溶液を調製した。
【0043】
(水分散体の製造)
次いで、上記被分散水溶液を、図2に示す態様の超高圧ジェット流反転式乳化分散装置のDeBEE2000(日本ビーイーイ社製)を用いて、注入圧力1.8×108 Pa、注入初速度:370m/secで分散を行った。得られたモノマー水分散体の体積平均粒径は0.2μmであった。なお、注入圧力は、AUTOCLAVE ENGINEERS社のInstrument QualityPressure Gaugesにより測定した値である。注入初速度は注入圧力によりノズル形状をもとに理論的に求めた計算値である。
【0044】
得られたモノマー水分散体に対して、水を加えて油分を33重量%に調整した。これを冷却管、窒素導入口、温度センサーを取り付けたフラスコに入れ、窒素置換を十分に行った後、70℃に加温し、懸濁重合を行い、ポリマー水分散体を得た。得られたポリマー水分散体の体積平均粒径は0.2μmであった。
【0045】
実施例2
(被分散水溶液の調製)
オクタデシルメタクリレート134g、アクリロニトリル210g、アクリル酸30g、2−メルカプトエタノール1.6g、過酸化ベンゾイル1gおよびポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム11gに対して、油分が45重量%となるように水を加えて被分散水溶液を調製した。
【0046】
(水分散体の製造)
実施例1において、上記被分散水溶液を用いたこと以外は実施例1と同じ条件で分散を行い、モノマー水分散体を得た。得られたモノマー水分散体の体積平均粒径は0.2μmであった。また、得られたモノマー水分散体に対して、実施例1と同様に懸濁重合を行った。得られたポリマー水分散体の体積平均粒径は0.2μmであった。
【0047】
実施例3
(被分散水溶液の調製)
オクタデシルアクリレート190g、アクリロニトリル154g、1−ドデカンチオール3g、アゾビスイソブチロニトリル0.8g、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム10gおよびモノステアリン酸ポリエチレングリコール(エチレングリコールの付加モル数が140)3.5gに対して、油分が45重量%となるように水を加えて被分散水溶液を調製した。
【0048】
(水分散体の製造)
実施例1において、上記被分散水溶液を用いたこと以外は実施例1と同じ条件で分散を行い、モノマー水分散体を得た。得られたモノマー水分散体の体積平均粒径は0.3μmであった。また、得られたモノマー水分散体に対して、実施例1と同様に懸濁重合を行った。得られたポリマー水分散体の体積平均粒径は0.3μmであった。
【0049】
実施例4
(被分散水溶液の調製)
オクタデシルメタクリレート170g、メタアクリル酸204g、1−ドデカンチオール4g、アゾビスイソブチロニトリル1gおよびポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム11gに対して、油分が45重量%となるように水を加えて被分散水溶液を調製した。
【0050】
(水分散体の製造)
実施例1において、上記被分散水溶液を用いたこと以外は実施例1と同じ条件で分散を行い、モノマー水分散体を得た。得られたモノマー水分散体の体積平均粒径は0.3μmであった。また、得られたモノマー水分散体に対して、実施例1と同様に懸濁重合を行った。得られたポリマー水分散体の体積平均粒径は0.3μmであった。
【0051】
比較例1
オクタデシルメタクリレート184g、アクリロニトリル190g、1−ドデカンチオール3gおよびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム11gに対して、油分が45重量%となるように水を加えて被分散水溶液を調製した。
【0052】
このものをホモミキサーFK−2(特殊機化工業(株)製)で8000rpmで1分間の乳化分散を行った。得られた乳化分散物(モノマー水分散体)の体積平均粒径は0.2μmであった。得られた乳化分散物を冷却管、窒素導入口,温度センサーを取り付けたフラスコに入れ、窒素置換を行った後、70℃に加温し、開始剤として過硫酸アンモニウム1gを加えて撹拌下に乳化重合を行った。得られた乳化重合物の体積平均粒径は0.2μmであった。
【0053】
比較例2
オクタデシルメタクリレート134g、アクリロニトリル210g、アクリル酸30g、2−メルカプトエタノール1.6g、過酸化ベンゾイル1gおよびポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム11gに対して油分が45重量%となるように水を加えて被分散水溶液を調製した。
【0054】
このものをホモミキサーFK−2(特殊機化工業(株)製)で8000rpmで1分間の乳化分散を行った。得られたモノマー水分散体の体積平均粒径は2μmであった。次いで、この乳化分散を実施例1と同様の条件で懸濁重合を行った。得られたポリマー水分散体の体積平均粒径は2μmであった。
【0055】
実施例および比較例で得られたポリマー水分散体または乳化重合物について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
[体積平均粒径]
粘度分布測定装置((株)堀場製作所)にて、レーザー回折(散乱式)を行い得られた水分散体中の被分散体の体積平均粒径(μm)を求めた。
【0057】
[皮膜の汚染性]
ポリマー水分散体または乳化重合物をポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み38μm)上に厚み0.2μmとなるように塗工し、熱風乾燥機にて120℃で3分間の乾燥条件で剥離性皮膜を形成した剥離シートを作製した。この剥離シートとポリエステル粘着テープNo31B(日東電工(株)製)を貼り合せて、50℃で3日間保存して試験用サンプルとした。
【0058】
(剥離力)
ポリエステル粘着テープNo31Bの剥離シートからの剥離力(N/20mm)をテンシロン引っ張り試験機((株)東洋製作所製)で引っ張り速度300mm/minで測定した(剥離角180°,23℃)。
【0059】
(残接力)
ポリエステル粘着テープNo31Bを剥離シートから剥がした後、当該粘着テープをSUS304ステンレス板に貼り付けて、30分後の接着力を上記の試験機で同様の条件で測定した。残接力は、剥離シートに非接触のNo31B粘着テープ(ブランク)のSUS304ステンレス板に対する接着力を100%とし、その接着力値との比較における値を%で表示した。
【0060】
【表1】
Figure 0004301492
表1から、実施例のポリマー水分散体は、いずれも体積平均粒径が1μm以下であり、剥離力が軽く、かつ残接力が高く有用な剥離剤であることが分かる。これから実施例で得られたポリマー水分散体は、所望の組成比の共重合体であることが分かる。一方、比較例1はモノマー混合物の種類、組成比が実施例1と同じであるが、得られたポリマー水分散体は剥離力が大きくて、残接力が低いことが分かる。これから比較例1で得られたポリマー水分散体は、所望の組成比の共重合体が得られいないことが分かる。比較例2はモノマー混合物の種類、組成比が実施例2と同じであるが、得られたポリマー水分散体は体積平均粒径が大きい。そのため残接力が低く実用的ではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に用いる乳化分散機の一例である。
【図2】図1の乳化分散機の一態様である。

Claims (6)

  1. 少なくとも2種類のラジカル重合性モノマーを含有するモノマー混合物、開始剤および分散剤を含有する被分散水溶液を、注入圧力:6.5×10Pa以上で噴射することにより分散させてモノマー水分散体とした後、当該モノマー水分散体を共重合するポリマー水分散体の製造方法であって、
    前記ラジカル重合性モノマーが、非極性モノマーと極性モノマーとを含み、
    前記非極性モノマーが、炭素数が12〜22の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、
    前記極性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸およびアクリロニトリルから選ばれるいずれか少なくとも1種であることを特徴とするポリマー水分散体の製造方法。
  2. 被分散水溶液を、注入圧力:6.5×10〜3.1×10Pa、注入初速度:150〜630m/secで噴射することを特徴とする請求項1記載のポリマー水分散体の製造方法。
  3. 前記非極性モノマーと極性モノマーとの割合が、非極性モノマー1モル部に対して、極性モノマーを0.2〜120モル部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマー水分散体の製造方法。
  4. 前記モノマー混合物100重量部(乾燥重量)に対し、分散剤(乾燥重量)が10重量部以下の割合で配合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリマー水分散体の製造方法。
  5. 前記分散剤が、アニオン系、カチオン系、及び、ノニオン系分散剤からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリマー水分散体の製造方法。
  6. 前記モノマー水分散体の体積平均粒径が、1μm以下の微細粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリマー水分散体の製造方法。
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