以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1〜3には、本発明の第一の実施形態としての自動車用のエンジンマウントの一種であるトルクロールマウント10が、その出荷状態において示されている。このトルクロールマウント10は、インナ軸部材としての内筒金具12とアウタ筒部材としての外筒金具14を本体ゴム弾性体16によって弾性連結せしめた構造の筒型の防振装置本体としてのマウント本体18を備えている。そして、このマウント本体18に対して、その軸方向両側(以下、左右両側ともいう)に一対のストッパゴムプレート20,20が組み付けられていると共に、外筒金具14に対してアウタブラケット22が組み付けられており、更に内筒金具12に対してインナブラケット24が組み付けられている。
なお、かかるトルクロールマウント10は、図1,3中の上下方向が略鉛直上下方向となり、図1, 2中の左右方向が略車両前後方向となる状態で、外筒金具14がアウタブラケット22を介して図示しない自動車の車両ボデーに固定的に取り付けられる一方、内筒金具12がインナブラケット24を介して図示しない自動車のパワーユニットに固定的に取り付けられることによって、自動車のパワーユニットと車両ボデーの間に装着されることとなる。また、かかる装着状態下では、内筒金具12と外筒金具14の間に、パワーユニットの分担支持荷重が及ぼされることとなり、本体ゴム弾性体16が所定量だけ弾性変形して、内外筒金具12,14が軸直角方向に所定量だけ相対変位せしめられることにより、それら内外筒金具12,14が略同一中心軸上に位置せしめられるようになっている。
より詳細には、マウント本体18は、図4〜6に示されているように、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品にて構成されている。即ち、内筒金具12は小径の厚肉円筒形状を有していると共に、外筒金具14は大径の薄肉円筒形状を有しており、内筒金具12の外周側に所定距離を隔てて外筒金具14が配設されている。なお、内外筒金具12,14は、装着状態下に及ぼされる静的な分担支持荷重を考慮して、予め分担支持荷重の入力方向と反対側に所定量だけ偏倚して位置決めされている。
そして、これら内筒金具12と外筒金具14の径方向対向面間に、全体として略厚肉の円筒形状を有する本体ゴム弾性体16が介装されており、本体ゴム弾性体16の内周面に対して内筒金具12の外周面が加硫接着されていると共に、本体ゴム弾性体16の外周面に対して外筒金具14の内周面が加硫接着されている。
また、本体ゴム弾性体16には、内筒金具12をその偏心方向となる径方向一方向で挟んだ上下両側に位置するようにして、上側スリット26と下側スリット28が、それぞれ、軸方向に貫通して形成されている。なお、上下のスリット26,28は、何れも、軸方向端面形状が、図5に示されているように略逆V字形状とされており、それによって内筒金具12と外筒金具14を相互に連結する本体ゴム弾性体16が、実質的に、内筒金具12から外筒金具14に向かって上方に逆V字状に拡開して延びる一対の弾性連結部30,32からなる横断面形状とされている。このような一対の弾性連結部30,32とされることにより、装着状態下で及ぼされるパワーユニットの分担支持荷重による本体ゴム弾性体16における引張応力の発生が軽減されるようになっている。
更にまた、装着状態下においてパワーユニットの分担支持荷重が内外筒金具12,14間に及ぼされて弾性連結部30,32が弾性変形せしめられることにより、内外筒金具12,14が略同一中心軸上に配されて、内筒金具12を挟んだ径方向上下両側には、所定幅で軸方向に貫通する上下スリット26,28が形成されることとなる。そして、これら上下スリット26,28を挟んだ上下両側には、本体ゴム弾性体16によって形成されて上下の緩衝ゴムストッパ34,36が形成されている。即ち、内外筒金具12,14間に過大な上下方向の荷重が及ぼされた際、内筒金具12が、上下の緩衝ゴムストッパ34,36を介して外筒金具14に当接することにより、内外筒金具12,14の相対的な軸直角方向の変位量が緩衝的に制限されるようになっている。
さらに、本体ゴム弾性体16には、軸方向一方の端面において、軸方向外方に突出する軸方向判別手段としての判別突起38が一体形成されている。なお、かかる判別突起38は、例えば、本体ゴム弾性体16の成形時に、成形キャビティにゴム材料を射出充填するためのノズル部分を利用して、有利に形成され得る。特に本実施形態では、一方の弾性連結部32の端面において、外筒金具14に近い、本体ゴム弾性体16の外周縁部付近に突出形成されており、外筒金具14よりも大きく外方に突出せしめられている。
また、内筒金具12の軸方向両端部分が、本体ゴム弾性体16から軸方向両側に所定長さで突出せしめられている。そして、各突出部分の外周面には、その外周面上において周上の複数箇所で3つ以上(本実施形態では、3個)の係合用凸部40,40,40が形成されている。特に、本実施形態では、これら3つの係合用凸部40,40,40が、半円状を有する略一定の断面形状で軸方向に延びる、全体として略蒲鉾形状をもって、本体ゴム弾性体16と一体形成されている。なお、本実施形態では、3つの係合用凸部40,40,40が、互いに略同一の形状と大きさをもって形成されている。
各軸方向端部における3つの係合用凸部40,40,40は、図5及び図6に示されているように、内筒金具12の周方向で互いに所定距離を隔てて位置せしめられている。しかも、3つの係合用凸部40,40,40は、それらの周方向での相対的な離隔距離:La,Lb,Lcが、互いに異なるように設定されている。特に本実施形態では、3つの距離:La,Lb,Lcが、出来るだけ相互に異なるように、望ましくはθ1 (La)=90±10度(=80〜100度),θ1 (Lb)=150±10度(=140〜160度),θ1 (Lc)=120±10度(=110〜130度)に設定されており、より望ましくはθ1 (La)≒90度,θ1 (Lb)≒150度,θ1 (Lc)≒120度に設定されている。なお、θ1 (La),θ1 (Lb),θ1 (Lc)は、内筒金具12の中心軸である中心点:O1 のまわりにおいて、それぞれ隣接する一対の係合用凸部40,40間の周方向の離隔距離を設定する角度をいう。
しかも、これら3つの係合用凸部40,40,40は、図5及び図6に示されているように、内筒金具12の軸方向の投影で重なるような位置にはなく、軸方向両端面の形状を相互に重ね合わせた際に、即ち図4における左端面図である図5と右端面図である図6を相互に重ね合わせた場合に、両端面における各3つの係合用凸部40,40,40が、互いに、内筒金具12の中心軸である中心点:O1 を中心として点対称となる位置関係をもって形成されているのである。
そして、このような構造とされた一体加硫成形品であるマウント本体18は、図7,図8に示されている如きアウタブラケット22に対して組み付けられる。
かかるアウタブラケット22は、円筒形状の嵌着筒部42に対して、その外周面上に第一の固定用脚部44と第二の固定用脚部46が、それぞれ溶着されて突設された構造とされている。なお、第一の固定用脚部44は、嵌着筒部42の外周面上で軸方向に両側に大きく広がっている一方、第二の固定用脚部46は、嵌着筒部42の外周面上で、軸直角方向外方に大きく突出している。そして、これら第一及び第二の固定用脚部44,46に設けられた固定孔48に挿通される固定ボルト(図示せず)によって、アウタブラケット22が、自動車の車両ボデーに対して固定的に取り付けられるようになっている。
而して、図9,10,11に示されているように、このようなアウタブラケット22の嵌着筒部42に対して、軸方向一方の側からマウント本体18が圧入されることによって、アウタブラケット22がマウント本体18に対して外嵌固定されている。なお、かかる圧入固定に際しては、マウント本体18が、その形状および径方向のばね特性が中心軸回りの周方向で異ならされていると共に、アウタブラケット22も、その形状が、第一及び第二の固定用脚部44,46の位置に関して中心軸回りの周方向で異ならされている。従って、何れも非回転体形状とされているマウント本体18とアウタブラケット22であるから、それらを相互に組み付ける際には、中心軸回りの周方向で相対的に位置決めすることが必要となる。
かかる位置決めは、例えば公知の手法に従い、圧入用の治具によって行うことが可能である。具体的には、嵌着筒部42の中心軸が略鉛直方向となるようにアウタブラケット22を載置して支持しておき、その軸方向上方からマウント本体18を同一中心軸上に重ね合わせて圧入する工程において、下側のベース治具においてアウタブラケット22を周方向で位置決めするために、例えば第一の固定用脚部44に係合する係合部を形成しておくと共に、マウント本体18に形成された上下のスリット26,28に対して嵌まり込む係合ピンを、下側ベース治具からアウタブラケット22の嵌着筒部42を通って上方に突設し、この係合ピンによって、嵌着筒部42に重ね合わされるマウント本体18を周方向で位置決めすることによって、相対位置決めが有利に実施され得る。
そして、マウント本体18をアウタブラケット22に対して圧入固定した後、マウント本体18に対して、図示されている如き一対のストッパゴムプレート20,20が組み付けられる。
これら一対のストッパゴムプレート20,20は、図12,図13,図14に示されているように、互いに同一のものが採用されている。具体的には、略一定の肉厚寸法で広がる略矩形板形状を有するゴム弾性体からなる一体加硫成形品であって、その中心よりも所定量だけ偏倚した位置に円形の装着孔50が貫設されている。また、装着孔50の偏倚方向と反対側に位置する、装着孔50から最も離れた一つの外周縁部は、略装着孔50の中心軸回りに延びる円弧形状の当接側端縁部52とされている。
また、ストッパゴムプレート20には、当接側端縁部52おいて、一方の面(図13中の上面であって、以下、表面ともいう。)側に向かって突出する弾性突部54,54,54が一体形成されている。これらの弾性突部54,54,54は、何れも、突出先端側に行くに従って次第に細幅となる山形断面形状をもって、装着孔50の中心軸から径方向外方に向かって延びる径方向線上に延びるようにして、一体形成されている。また、弾性突部54,54,54は、当接側端縁部52の周方向で相互に所定距離(本実施形態では略同一距離)を隔てて位置せしめられている。
さらに、ストッパゴムプレート20は、その装着孔50の周囲が、表面側に向かって突出せしめられて厚肉とされており、所定幅で周方向に延びる補強肉厚部56が円環形状をもって形成されている。また、この補強肉厚部56には、装着孔50と面一とされる内周面において、周上の複数箇所で3つ以上の係合用凹部58,58,58が形成されている。これらの係合用凹部58,58,58は、内筒金具12の軸方向端部外周面に突出形成された係合用凸部40,40,40と同じ数(従って、本実施形態では3つ)だけ形成されており、該係合用凸部40と略同じかそれよりも僅かに大きな断面形状で、補強肉厚部56の内周面および装着孔50の内周面の略全体に亘って厚さ方向(図13中、上下)に延びる、凹溝形状をもって形成されている。即ち、本実施形態では、係合用凸部40に対応して、3つの係合用凹部58,58,58が、何れも略同一形状で形成されている。
これら3つの係合用凹部58,58,58は、装着孔50の周方向で互いに所定距離を隔てて位置せしめられている。ここにおいて、これら3つの係合用凹部58,58,58の周方向での相対的な離隔距離が、内筒金具12における係合用凸部40,40,40に対応して、それと同じ周方向の離隔距離:La’,Lb’,Lc’に設定されている。具体的には、本実施形態では、望ましくはθ1 (La’)=90±10度,θ1 (Lb’)=150±10度,θ1 (Lc’)=120±10度に設定されており、より望ましくはθ1 (La’)≒90度,θ1 (Lb’)≒150度,θ1 (Lc’)≒120度に設定されている。なお、θ1 (La’),θ1 (Lb’),θ1 (Lc’)は、装着孔50の中心軸である中心点:O2 のまわりにおいて、それぞれ隣接する一対の係合用凹部58,58間の周方向の離隔距離を設定する角度をいう。
しかも、これら3つの係合用凹部58,58,58の位置は、周方向の相対位置だけでなく、周方向の絶対位置に関しても、ストッパゴムプレート20の表裏との関係と、弾性突部54の形成位置との関係で特定されている。
加えて、本実施形態では、ストッパゴムプレート20が、装着孔50の中心軸を挟んで、該装着孔50の偏倚方向(図12中、左右)となる一本の直線:X−X、即ち弾性突部54,54,54が形成された当接側端縁部52とその対辺60との対向方向に延びる直線:X−Xを挟んで、その両側が、弾性突部54,54,54を含めて互いに線対称となる形状とされている。なお、装着孔50の内周面に形成された3つの係合用凹部58,58,58だけは、上述の如く、直線:X−Xに関する線対称関係にない。
その関係を具体的に説明する。即ち、かかる一対のストッパゴムプレート20,20は、アウタブラケット22に圧入固定されたマウント本体18に対して、その内筒金具12の軸方向両端部に対して、それぞれ、装着孔50において外嵌されて組み付けられることとなる。なお、この組付作業は、作業者が手作業にて行うことが可能である。
そこにおいて、内筒金具12に突設された係合用凸部40,40,40に対して、ストッパゴムプレート20,20に形成された係合用凹部58,58,58を相対位置に位置合わせして互いに嵌め合わせるようにしなければ、ストッパゴムプレート20,20を内筒金具12に対して組み付けることができない程度に、それら係合用凹凸40,58の形状や大きさが設定されている。
しかも、内筒金具12における3つの係合用凸部40,40,40は、周方向で互いに異なる離隔距離をもって形成されていることから、これに対してストッパゴムプレート20に形成された3つの係合用凹部58,58,58を嵌め合わせるためには、ストッパゴムプレート20の表裏を特定しなければ嵌め合わせることができない。
加えて、内筒金具12に形成された3つの係合用凸部40,40,40は、内筒金具12の軸方向両側において互いに点対称となる相対位置、即ち周方向で位相が反転した位置に形成されていることから、これに対して同一のストッパゴムプレート20,20を嵌め込もうとすると、ストッパゴムプレート20,20は、必ず内筒金具12の軸方向一方の向き(例えば、図9中における左から右に向かう向き)を基準とした場合に、内筒金具12の左右において表裏を反対に設定しなければ嵌め合わせることができないこととなる。
従って、ストッパゴムプレート20,20を内筒金具12に対して組み付ける場合には、自ずから、図9,図10,図11に示されているように、その表裏が特定され、各表側がマウント本体18に向き合う状態で組み付けられることとなり、しかも周方向位置が特定され、軸方向で互いに向き合う状態で装着されることとなる。換言すれば、内筒金具12の軸方向両端部に組み付けられた一対のストッパゴムプレート20,20は、それが直線:X−Xを挟んだ線対称形状とされていることから、マウント本体18とアウタブラケット22を軸方向に挟んで、マウント軸方向で互いに面対称となる状態で、即ち相互に鏡に写したような関係をもって対向位置せしめられて配設されるのである。
また、各ストッパゴムプレート20,20における対称線である直線:X−Xは、マウント本体18における内外筒金具12,14の偏心方向に直交する方向である水平方向となるように、内筒金具12の係合用凸部40,40,40が設定されている。そして、装着状態下で、ストッパゴムプレート20,20における各3つの弾性突部54, 54,54が、何れも、アウタブラケット22の嵌着筒部42および外筒金具14の各軸方向端面に対して、特に第二の固定用脚部46と略径方向の反対側に位置する部分に対して、軸方向で所定距離:Lを隔てて対向位置せしめられている。
なお、マウント装着状態下では、内筒金具12と外筒金具14の間にパワーユニットの分担支持荷重が及ぼされて、それら内外筒金具12,14が略同一中心軸上に配設されることにより、ストッパゴムプレート20,20の各弾性突部54が、アウタブラケット22の嵌着筒部42および外筒金具14の軸方向端面に対して、その周方向に略沿って位置せしめられるように位置設定されている。
さらに、上述の如くして左右のストッパゴムプレート20,20が組み付けられた組付体62に対しては、図1〜3に示されているように、インナブラケット24が組み付けられる。
このインナブラケット24は、図15〜17に示されているように、厚肉の略コ字状断面をもって所定幅で延びる形状を有しており、軸直角方向(図15中、上下)に拡がる当接部材としての支持プレート64の左右一対が軸方向(図15中、左右)に延びる連結部66で連結されることにより軸方向で離隔して対向位置せしめられた構造とされている。連結部66は、長手状の略矩形形状を呈していると共に、その軸方向中間部分には、固定用のボルト孔68の複数(本実施形態では、3つ)が、連結部66の幅方向(図17中、上下)に貫設されている。
また、支持プレート64は、薄肉の略矩形平板形状を呈しており、特に軸方向内方に向かう表面は、全体に亘って略平坦とされている。更に、左右一対の支持プレート64,64には、それぞれ、挿通孔70が軸方向に貫設されている。これら挿通孔70,70は、一対の支持プレート64,64の対向方向(図15中、左右)と平行に延びる同一の軸方向線上で対向位置せしめられている。また、支持プレート64における連結部66から最も離れた一つの外周縁部が、略挿通孔70の中心軸回りに延びる略円弧形状とされている。
そして、インナブラケット24における各支持プレート64の軸方向内方に向かう面が、各ストッパゴムプレート20の弾性突部54が突設されていない裏面(軸方向外方に向かう面)に密着状態で重ね合わせられていると共に、長手状の固定用ボルト72が、一方の支持プレート64の挿通孔70から一方のストッパゴムプレート20の装着孔50、内筒金具12の内孔、他方の装着孔50および他方の挿通孔70に挿通されて、該他方の挿通孔70から突出した先端部分が固定用ナット74で他方の支持プレート64に螺着固定されていることにより、インナブラケット24がマウント本体18およびアウタブラケット22を備えた組付体62に固定されている。それによって、本実施形態に係るトルクロールマウント10が構成されている。
このような組付状態下では、各支持プレート64の軸方向内方に向かう略平坦な面が、各ストッパゴムプレート20の弾性突部54が突設されていない裏面に密着状態で重ね合わされていることにより、軸直角方向に広がるストッパゴムプレート20の支持面として機能している。
かくの如きトルクロールマウント10は、例えば、判別突起38が突設されたマウント本体18の軸方向一方が車両後方(図1,2中、右)になる形態で、一対のストッパゴムプレート20, 20が対向位置せしめられたマウント本体18の軸方向が、車両前後方向(図1,2中、左右)になると共に、マウント本体18における緩衝ゴムストッパ34が他方の緩衝ゴムストッパ36よりも上方に位置せしめられた形態で、両ゴムストッパ34,36が内筒金具12を挟んで対向位置せしめられたマウント本体18の軸直角方向一方向が、車両上下方向(図1,3中、上下)になるようにして、パワーユニットと車両ボデーの間の適当な箇所に配置されている。而して、インナブラケット24が、該ブラケット24における各ボルト孔68に図示しない固定ボルトが挿通されて、該固定ボルトを介してパワーユニットに固定されると共に、アウタブラケット22が、該ブラケット22における各固定孔48に図示しない固定ボルトが挿通されて、該固定ボルトを介して車両ボデーに固定される。これにより、トルクロールマウント10が、パワーユニットと車両ボデーの間に配設され、パワーユニットを車両ボデーに対して防振支持せしめるようになっている。
特に本実施形態では、内筒金具12と外筒金具14の間に大きな車両前後方向の荷重が及ぼされた際に、内筒金具12が、その軸方向両端部に固設された各ストッパゴムプレート20における弾性突部54の少なくとも一つを介してアウタブラケット22の嵌着筒部42の軸方向端部、延いては該嵌着筒部42に固設された外筒金具14の軸方向端部に当接せしめられることとなり、内筒金具12と外筒金具14の相対的な軸方向の変位量が緩衝的に制限されるようになっている。
このような構造とされたトルクロールマウント10においては、内筒金具12の軸方向両端部に突設された3つの係合用凸部40,40,40が、それぞれ異なる周方向離隔距離をもって形成されていると共に、一方の端部における各係合用凸部40と他方の端部における各係合用凸部40が、何れも軸方向で対向位置せしめられないようになっている。更に、一対のストッパゴムプレート20, 20の装着孔50に形成される3つの係合用凹部58,58,58の周方向離隔距離や形状が、内筒金具12の各一方の端部に形成された3つの係合用凸部40,40,40に対応している。その結果、一対のストッパゴムプレート20,20の各弾性突部54が軸方向で対向位置せしめられた状態で、一方のストッパゴムプレート20の各係合用凹部58と他方のストッパゴムプレート20の各係合用凹部58が軸方向で対向位置せしめられないようになっている。
従って、内筒金具12の一方の端部に形成された3つの係合用凸部40, 40,40の形成位置と対応する3つ係合用凹部58,58,58を備えた一方のストッパゴムプレート20のみが内筒金具12に対して嵌め合わされることによって、両ストッパゴムプレート20,20の組み付け状態下で、ストッパゴムプレート20における各弾性突部54が外筒金具14を挟んで軸方向で対向位置せしめられることとなるのである。
それ故、各ストッパゴムプレート20の周方向位置が異なっていたり、弾性突部54の突出方向が反対であったりすると、ストッパゴムプレート20を内筒金具12に対して組み付けることが出来ないようになっていることから、誤った組み付けを略完全に防止することが出来、それによって、品質安定性や作業効率の向上が図られ得る。
また、本実施形態では、ストッパゴムプレート20の誤組付けの防止が、3組の係合用凸部40および係合用凹部58からなる係合部材によって実現されていることにより、製作が容易となる。
さらに、本実施形態では、第一及び第二の固定用脚部44,46を備えたアウタブラケット22が外筒金具14に外嵌固定されていると共に、マウント本体18に軸方向の別を判別する判別突起38が設けられていることにより、マウント本体18のアウタブラケット22に対する装着方向を軸方向で特定することが出来るのであり、その結果、固定用脚部44,46の突出方向等によってアウタブラケット22のマウント本体18に対する装着方向が周方向で特定される場合にも、アウタブラケット22のマウント本体18に対する周方向の取付位置を確実に設定することが出来る。
また、本実施形態では、トルクロールマウント10を製造するに際して、前述したように、(a)内筒金具12と外筒金具14が本体ゴム弾性体16で一体加硫成形されることによって内筒金具12の軸方向両端部に、それぞれ、3つの係合用凸部40,40,40が設けられたマウント本体18を準備すると共に、(b)第一及び第二の固定用脚部44,46を溶着したアウタブラケット22に対して圧入用の治具を用いて外筒金具14をマウント本体18の軸方向の別を特定して圧入固定することにより、マウント本体18にアウタブラケット22を組み付けて組付体62を準備すると共に、(c)内筒金具12の各一方の端部の3つの係合用凸部40,40,40の形成位置に対応した3つの係合用凹部58,58,58が装着孔50の内周面に形成されたストッパゴムプレート20を一対準備した後に、(d)組付体62における内筒金具12の軸方向両端部に対して一対のストッパゴムプレート20,20の各装着孔50を外嵌して、それぞれのストッパゴムプレート20,20における係合用凹部58を内筒金具12における係合用凸部40に係合させることにより、一対のストッパゴムプレート20,20を内筒金具12に対してその表裏を特定し且つ内筒金具12回りの周方向位置を特定して組み付ける、筒型防振装置の製造方法が採用されている。
このような本発明方法を本実施形態のトルクロールマウント10に採用することにより、マウント本体18に対して、一対のストッパゴムプレート20,20を、その表裏と周方向位置を正確に特定して組み付けることが出来るのであり、たとえ手作業でストッパゴムプレート20を組み付ける場合であっても、作業者に要求される注意力の持続を含む労力負担が大幅に軽減されるのであり、誤組付けに起因する前述の如き問題が効率的に解消されて、優れた生産効率が実現可能となるのである。
次に、図18には、本発明の第二の実施形態としての流体封入式の自動車用エンジンマウント80が示されている。このエンジンマウント80は、非圧縮性流体が封入された防振装置本体としてのマウント本体82を備えており、かかる非圧縮性流体の流動作用等に基づく防振効果を得るようになっている。なお、以下の説明中、前記第一の実施形態と実質的に同一の構造とされた部材及び部位については、図中に第一の実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
より詳細には、本実施形態に係る内筒金具12が、図19〜22に示される如きマウント本体82の一部を構成している。また、内筒金具12の外周面上には、繊維強化樹脂や金属等の硬質材料によって形成されたストッパ部材84が固着されている。このストッパ部材84は、略中央部分に貫設された取付孔86において内筒金具12に外挿された状態で配設されており、内筒金具12の軸方向中央部分において、軸直角方向一方向(図19, 20中、上下)で互いに反対方向に向かって延びるバウンドストッパ部88とリバウンドストッパ部90が一体形成されている。バウンドストッパ部88は、内筒金具12の軸方向中間部分から軸直角方向一方(図19中、下)に向かって突出する略矩形の柱形状とされている。リバウンドストッパ部90は、内筒金具12の軸方向中間部分からバウンドストッパ部88と反対の軸直角方向他方(図19中、上)に突出し、マウント80の軸方向(図19中、左右)に略一定の矩形断面で延びる柱形状とされている。
また、内筒金具12の径方向外方には、中間スリーブとしての金属スリーブ92が、径方向に所定距離を隔てて且つ所定量だけ偏心して配設されている。金属スリーブ92は、薄肉の略円筒形状を有しており、その軸方向中央部分には、周方向に所定の長さ(例えば半周弱の長さ)で広がる略平面視矩形状の第一の窓部94と第二の窓部96が形成されている。これら第一の窓部94と第二の窓部96は、金属スリーブ92と内筒金具12の偏心方向である径方向一方向(図19,20中、上下)で対向位置せしめられている。また、第一の窓部94と第二の窓部96の周方向両端部間には、軸方向中央部分が径方向内方に凹陥されて小径化された連結部98が、それぞれ形成されている。それによって、金属スリーブ92における連結部98の外周面上には、径方向外方に向かって凹状に開口する幅広の周溝100が形成されており、第一の窓部94と第二の窓部96の周方向両端部縁間に跨って周方向に延びている。換言すると、金属スリーブ92は、軸方向に所定距離を隔てて同一中心軸上に配設された一対のリング状部102,102が一対の連結部98,98によって一体的に連結された構造とされている。
また、内筒金具12と金属スリーブ92の間には、本体ゴム弾性体104が介装されている。本体ゴム弾性体104は、厚肉の略円筒形状を有しており、その内周面が内筒金具12の外周面に加硫接着されていると共に、その外周面が金属スリーブ92の内周面に加硫接着されている。即ち、本体ゴム弾性体104は、内筒金具12と金属スリーブ92を備えた一体加硫成形品106として形成されている。また、金属スリーブ92の外周面には、本体ゴム弾性体16と一体形成された薄肉のシールゴム層が略全体に亘って加硫接着されている。
さらに、本体ゴム弾性体104には、内筒金具12と金属スリーブ92の偏心方向(図19,20中、上下)一方の側に第一のポケット部108が設けられて、金属スリーブ92の第一の窓部94を通じて外周面に開口せしめられていると共に、偏心方向他方の側に第二のポケット部110が設けられて、金属スリーブ92の第二の窓部96を通じて外周面に開口せしめられている。
また、第一のポケット部108の内部には、底壁中央からストッパ部材84のバウンドストッパ部88が突設されている。また、バウンドストッパ部88には、本体ゴム弾性体104と一体形成された薄肉の緩衝ゴム層が、全体を覆うようにして加硫接着されている。
さらに、本体ゴム弾性体104において第二のポケット部110の底壁部を構成する部位には、軸方向に貫通して延びる肉抜部としての肉抜孔112が形成されている。特に本実施形態では、肉抜孔112が、本体ゴム弾性体104における内筒金具12と金属スリーブ92の偏心方向小なる側の略半周部分の領域において、本体ゴム弾性体104の外周縁部(第二のポケット部110の底壁端部)よりも径方向内方に位置せしめられた部分を該外周縁部に沿って延びており、全体として略平面視逆V字状を呈している。それによって、第二のポケット部110の底壁部が、薄肉とされて、変形容易な可撓性膜としてのダイヤフラム114とされている。また、肉抜孔112の周方向中央部分には、内筒金具12側から径方向外方に向かってリバウンドストッパ部90が突設されている。リバウンドストッパ部90には、本体ゴム弾性体104と一体形成された薄肉の緩衝ゴム層が、略全体を覆うようにして加硫接着されている。本実施形態では、リバウンドストッパ部90と対向位置せしめられた肉抜孔112の周方向中央部分と内筒金具12における軸直角方向の離隔距離や肉抜孔112の周方向両端部分と内筒金具12の軸直角方向の離隔距離が、肉抜孔112の中央部分と各端部の間の周方向中間部分と内筒金具12との軸直角方向離隔距離に比して大きくされている。また、リバウンドストッパ部90の軸方向両端部が、肉抜孔112を挟んで金属スリーブ92のリング状部102,102に対して所定距離を隔てて対向位置せしめられている。
また、金属スリーブ92の各連結部98には、本体ゴム弾性体104やシールゴム層と一体形成された弾性仕切壁116が被着形成されている。弾性仕切壁116は、略平面視円弧形状とされて、金属スリーブ92のリング状部102と略同じ曲率とされており、その周方向両端部が、各連結部98の端部よりも周方向外方に延びて、第一の窓部94や第二の窓部96の縁部にまで延び出している。更に、両弾性仕切壁116,116の少なくとも一つには、周方向に螺旋状に乃至はストレートに延びる凹溝118が形成されており、該凹溝118を通じて第一のポケット部108の開口部分と第二のポケット部110の開口部分が相互に接続されている。
また、このような一体加硫成形品106には、薄肉の略大径円筒形状を有する外筒金具14が外挿されて、八方絞り等の縮径加工が施されることにより、金属スリーブ92に嵌着固定されている。特に外筒金具14の内周面には、薄肉のシールゴム層120が略全体に亘って被着形成されている。これに基づいて、外筒金具14が、シールゴム層120や金属スリーブ92に被着されたシールゴム層等を介して金属スリーブ92の外周面に対して流体密に重ね合わされて嵌着固定されている。その結果、本体ゴム弾性体16における第一のポケット部108や第二のポケット部110、弾性仕切壁116の凹溝118が、外筒金具14で流体密に覆蓋されている。
従って、内筒金具12と外筒金具14の間における偏心方向の大なる側(図19, 20中、下側)には、壁部の一部が本体ゴム弾性体104の第一のポケット部108の底壁部で構成されて、内筒金具12と外筒金具14の間に径方向の振動荷重が入力された際に圧力変動が生ぜしめられる受圧室122が形成されている。また、内外筒金具12,14の間の偏心方向の小なる側(図19,20中、上側)には、肉抜孔112の外周側に位置せしめられていることにより内筒金具12からの応力伝達が実質的に回避されていると共に、壁部の一部が本体ゴム弾性体104の第二のポケット部110の底壁部、即ち変形容易なダイヤフラム114で構成されて、該ダイヤフラム114の弾性変形に基づいて容積変化が容易に許容される平衡室124が形成されている。これら受圧室122や平衡室124には、それぞれ、非圧縮性流体が封入されている。封入流体としては、例えば水やアルキレングリコール, ポリアルキレングリコール, シリコーン油等が採用されるが、特に流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果を有効に得るためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。なお、受圧室122や平衡室124への流体の封入は、例えば一体加硫成形品106に対する外筒金具14の組み付けを非圧縮性流体中で行うことによって実現される。
さらに、弾性仕切壁116の外周面に開口, 形成された凹溝118が外筒金具14で流体密に閉塞されていることにより、受圧室122と平衡室124を相互に連通せしめて、それら両室122,124間での流体流動を許容するオリフィス通路126が形成されている。即ち、マウント本体82の径方向に振動が入力されて、受圧室122と平衡室124に相対的な圧力変動が惹起されるに際して、オリフィス通路126を通じて流動せしめられる流体の流動量が確保されて、この流体の共振作用等の流動作用に基づいて防振効果が得られるようになっている。なお、オリフィス通路126の通路長さや断面積は、例えばエンジンシェイクやアイドリング振動、走行こもり音等の各種の防振対象振動に対して有効な防振効果が発揮されるように、封入流体の密度や受圧室122や平衡室124の壁ばね剛性等を考慮して設定されている。
また、内筒金具12の側から径方向外方に向かって突出するストッパ部材84のバウンドストッパ部88が、受圧室122内に位置せしめられて外筒金具14と所定距離をおいて対向位置せしめられている。これにより、内筒金具12と外筒金具14の間にパワーユニットの分担支持荷重の入力方向となるバウンド方向の過大な荷重が及ぼされた際に、内筒金具12が、バウンドストッパ部88を介して外筒金具14に当接することにより、内外筒金具12,14におけるバウンド方向の相対的な変位量が緩衝的に制限されるようになっている。
また、内筒金具12の側から径方向外方に向かって突出するストッパ部材84のリバウンドストッパ部90と外筒金具14を外嵌固定した金属スリーブ92における一対のリング状部102,102が、内筒金具12と外筒金具14(金属スリーブ92)の偏心方向小なる側の間でダイヤフラム114等を挟んで対向位置せしめられている。これにより、内筒金具12と外筒金具14の間にパワーユニットの分担支持荷重の入力方向と反対方向となるリバウンド方向の過大な荷重が及ぼされた際に、内筒金具12がリバウンドストッパ部90やリング状部102を介して外筒金具14に当接することにより、内筒金具12と外筒金具14におけるバウンド方向の相対的な変位量が緩衝的に制限されるようになっている。
そこにおいて、内筒金具12における軸方向一方(図19中、左)の端部の外周面には、本体ゴム弾性体104と一体形成された3つの係合用凸部128a,128b,128cが設けられている。これらの係合用凸部128a, 128b、128cは、第一の実施形態に係る係合用凸部40と略同様に、略一定の半円状断面で軸方向に延びる略蒲鉾形状を呈している。特に本実施形態では、係合用凸部128aが、図21にも示されているように、リバウンドストッパ部90が突出する方向と反対方向(図21中、下)に向かって突設されている。それによって、係合用凸部128aが、その先端部分が本体ゴム弾性体104における肉抜孔112の形成部位を避けた位置に設けられている。換言すれば、係合用凸部128aの先端部分が、肉抜孔112の縁部から肉抜孔112の内側に突出せしめられないようになっている。
また、係合用凸部128bが、肉抜孔112の周方向中央部分と周方向一方(図21中、左)の端部の間に向かって突出している。特に本実施形態では、係合用凸部128aと係合用凸部128bが、周方向に離隔距離:Laを隔てて位置せしめられており、当該位置関係を定める内筒金具12の中心点:O1 のまわりの角度:θ2 (La)が、好適にはθ2 (La)=150±10度に、より好適にはθ2 (La)≒140度に設定されている。また、係合用凸部128bは、肉抜孔112の形状や上述の係合用凸部128aとの位置関係に設定されていることに基づいて、その先端部分が肉抜孔112の形成部位を避けた位置に設けられている。
さらに、係合用凸部128cが、肉抜孔112の周方向中央部分と周方向他方(図21中、右)の端部の間に向かって突出している。特に本実施形態では、係合用凸部128bと係合用凸部128cが、周方向に離隔距離:Lbを隔てて位置せしめられており、その位置関係を定める内筒金具12の中心点:O1 のまわりの角度:θ2 (Lb)が、好適にはθ2 (Lb)=90±10度に、より好適にはθ2 (Lb)≒100度に設定されている。更に、係合用凸部128cと係合用凸部128aが、周方向に離隔距離:Lcを隔てて位置せしめられており、その位置関係を定める内筒金具12の中心点:O1 のまわりの角度:θ2 (Lc)が、好適にはθ2 (Lc)=120±10度に、より好適にはθ2 (Lc)≒120度に設定されている。
特に本実施形態では、係合用凸部128cが、肉抜孔112の形状や前述の係合用凸部128aまたは係合用凸部128bと各別に前述の位置関係に設定されていることに基づいて、その先端部分が本体ゴム弾性体104の肉抜孔112の形成部位にかかるような位置に設けられている。そこにおいて、係合用凸部128cの先端部分には、切欠部130が形成されている。切欠部130は、例えば肉抜孔112を備えた本体ゴム弾性体104と係合用凸部128を一体加硫成形する際に、本体ゴム弾性体104を軸方向に貫通して肉抜孔112を形成する部材において該肉抜孔112から軸方向外方に突出する部分の外周面上に係合用凸部128cの先端部分の形成部位が位置せしめられるようにして、本体ゴム弾性体104と係合用凸部128cが一体加硫成形されることによって、形成されている。その結果、係合用凸部128cの軸直角方向の延び出し寸法が、制限されて、他の係合用凸部128aや係合用凸部128bの軸直角方向の延び出し寸法よりも小さくされていると共に、係合用凸部128cの先端部分が、本体ゴム弾性体104の肉抜孔112の形成部位を避けて、肉抜孔112の縁部から肉抜孔112内方に突出せしめられないようになっている。
更にまた、3つの係合用凸部128a,128b,128cが設けられた内筒金具12の軸方向端部の外周面には、補助用凸部132が突設されている。補助用凸部132は、係合用凸部128と略同様に、略一定の半円状断面で軸方向に延びる略蒲鉾形状を有していると共に、本体ゴム弾性体104と一体形成されている。特に本実施形態では、補助用凸部132が、係合用凸部128bと係合用凸部128cの周方向間における内筒金具12の外周面上に突設されている。
より具体的には、補助用凸部132が係合用凸部128bと所定距離:Ldを隔てて位置せしめられるように、内筒金具12の中心点:O1 のまわりにおいて補助用凸部132と係合用凸部128bの間の距離を設定する角度:θ(Ld)が、θ(Ld)=50±10度とされ、好適にはθ(Ld)≒40度とされている。また、補助用凸部132が係合用凸部128cと所定距離:Leを隔てて位置せしめられるように、内筒金具12の中心点:O1 のまわりにおいて補助用凸部132と係合用凸部128c間の距離の設定角度:θ(Le)が、θ(Le)=50±10度とされ、好適にはθ(Le)≒60度とされている。その結果、本実施形態の補助用凸部132が、内筒金具12の中心軸を挟んで係合用凸部128aと軸直角方向で対向位置せしめられていると共に、内筒金具12に固着されたリバウンドストッパ部90における軸方向一方(図19中、左)の端部の略中央部分に位置せしめられている。また、補助用凸部132の先端部分が、肉抜孔112と軸直角方向に十分な距離を隔てて位置せしめられている。
また、内筒金具12における軸方向他方(図19中、右)の端部の外周面には、図22にも示されているように、前述の3つの係合用凸部128a,128b、128cや補助用凸部132と略同じ形状や大きさ等とされた、3つの係合用凸部128a’,128b’, 128c’や補助用凸部132’が設けられている。これら3つの係合用凸部128a’,128b’, 128c’や補助用凸部132’は、内筒金具12の軸方向両端面の形状を互いに重ね合わせた場合に、軸方向一方の端面に設けられた3つの係合用凸部128a,128b、128cや補助用凸部132と、内筒金具12の中心点:O1 を中心として点対称となる位置関係をもって形成されている。
従って、係合用凸部128a’が、リバウンドストッパ部90の軸方向他方(図19中、右)の端部の略中央部分に位置せしめられていると共に、その先端部分が、肉抜孔112と軸直角方向に十分な距離を隔てて位置せしめられている。また、補助用凸部132’が、内筒金具12の中心を挟んで係合用凸部128a’と軸直角方向で対向位置せしめられており、肉抜孔112の周方向中央部分から遠ざかる方向(図22中、下)に延びている。
さらに、係合用凸部128b’が、内筒金具12を挟んで肉抜孔112における周方向中央部分と周方向一方(図22中、左)の端部間と離隔して位置せしめられている。それによって、係合用凸部128b’の先端部分が、本体ゴム弾性体104における肉抜孔112の形成部位を避けた位置に設けられている。
更にまた、係合用凸部128c’が、内筒金具12を挟んで肉抜孔112における周方向中央部分と周方向他方(図22中、右)の端部間と離隔して位置せしめられていることによって、係合用凸部128c’の先端部分が、本体ゴム弾性体104における肉抜孔112の形成部位を避けた位置に設けられている。従って、内筒金具12の一方(図19中、左)の端部の係合用凸部128cにおいて肉抜孔112の形成部位を避けるために設けられていた切欠部130を特に設ける必要がないことから、係合用凸部128c’は切欠部130を備えていない。それによって、係合用凸部128c’の軸直角方向の延び出し寸法が制限されておらず、他の2つの係合用凸部128a’, 128b’の軸直角方向の延び出し寸法と略同じとされている。
また、このような係合用凸部128や補助用凸部132を備えたマウント本体82が、アウタブラケット22に圧入固定されていると共に、図23〜25に示される如き一対のストッパゴムプレート20,20がマウント本体82に組み付けられる。
特に、各ストッパゴムプレート20の装着孔50には、内筒金具12の軸方向両端部の外周面に形成された各3つの係合用凸部128a(128a’), 128b(128b’), 128c(128c’)に、それぞれ対応して、3つの係合用凹部134a, 134b, 134cが形成されている。更に、各装着孔50において各補助用凸部132(132’)と対応した位置、即ち各係合用凹部134bと係合用凹部134cの周方向間には、補助用凸部132(132’)と対応して補助用凹部136が形成されている。これら係合用凹部134や補助用凹部136は、係合用凸部128や補助用凸部132よりも僅かに大きな形状とされている。
すなわち、図25にも示されているように、装着孔50の中心点:O2 のまわりにおいて係合用凹部134aと係合用凹部134bの周方向間距離を設定する角度θ2 (La’)が、θ2 (La’)=150±10度とされ、好適にはθ2 (La’)≒140度とされている。また、装着孔50の中心点:O2 のまわりにおいて係合用凹部134bと係合用凹部134cの周方向間距離を設定する角度θ2 (Lb’)が、θ2 (Lb’)=100±10度とされ、好適にはθ2 (Lb’)≒100度とされている。更に、装着孔50の中心点:O2 のまわりにおいて係合用凹部134cと係合用凹部134aの周方向間距離を設定する角度θ2 (Lc’)が、θ2 (Lc’)=120±10度とされ、好適にはθ2 (Lc’)≒120度とされている。また、装着孔50の中心点:O2 のまわりにおいて補助用凹部136と係合用凹部134bの周方向間距離を設定する角度θ(Ld’)が、θ(Ld’)=50±10度とされ、好適にはθ2 (Ld’)≒40度とされている。更に、装着孔50の中心点:O2 のまわりにおいて補助用凹部136と係合用凹部134cの周方向間距離を設定する角度θ(Le’)が、θ(Le’)=50±10度とされ、好適にはθ2 (Le’)≒60度とされている。
而して、内筒金具12の各端部に形成された3つの係合用凸部128a, 128b、128cが、ストッパゴムプレート20の装着孔50の3つの係合用凹部134a, 134b、134cに嵌め込まれていると共に、内筒金具12の補助用凸部132が、ストッパゴムプレート20の装着孔50の補助用凹部136に嵌め込まれている。それによって、係合用凸部128および係合用凹部134の係合作用に加えて補助用凸部132および補助用凹部136の係合作用に基づいて、ストッパゴムプレート20と内筒金具12が周方向に相対的に変位することが阻止されている。
また、一対のストッパゴムプレート20,20がマウント本体82に組み付けられていることによって、各ストッパゴムプレート20に一体形成された各弾性突部54が外筒金具14と軸方向に所定距離を隔てて位置せしめられている。そこにおいて、本実施形態では、第一の実施形態と同様に、内筒金具12の各端部における3つの係合用凸部128a, 128b、128cおよび補助用凸部132の形成位置と対応する係合用凹部134a, 134b、134cおよび補助用凹部136を備えた各ストッパゴムプレート20のみが内筒金具12に対して嵌め合わされていることによって、一対のストッパゴムプレート20, 20の各弾性突部54が外筒金具14を挟んだ軸方向で対向位置せしめられることとなる。即ち、係合用凸部128や補助用凸部132が、対応する係合用凹部134や補助用凹部136に嵌め合わされることによって、ストッパゴムプレート20の周方向位置や表裏が特定されるのである。なお、上述の説明からも明らかなように、本実施形態では、補助用凸部132や補助用凹部136が、実質的に係合用凸部128や係合用凹部134として機能している。
また、一対のストッパゴムプレート20,20が組み付けられたマウント本体82にインナブラケット24が組み付けられることによって、本実施形態の自動車用エンジンマウント80が構成されている。そして、かかるエンジンマウント80は、例えば一対のストッパゴムプレート20,20が対向位置せしめられたマウント本体82の軸方向が車両前後方向になると共に、ストッパ部材84のリバウンドストッパ部90がバウンドストッパ部88よりも上方に位置せしめられた形態で、リバウンドストッパ部90およびバウンドストッパ部88の延びる方向が車両上下方向になるようにして、パワーユニットと車両ボデーの間の適当な箇所に配される。更に、エンジンマウント80は、インナブラケット24がパワーユニットにボルト固定されると共に、アウタブラケット22が車両ボデーにボルト固定されることによって、パワーユニットを車両ボデーに対して防振支持せしめるようになっている。
本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント80においては、内筒金具12の軸方向端部の外周面に形成された複数の係合用凸部128のうち、先端部分が肉抜孔112の縁部から内方に突出せしめられるおそれのある係合用凸部128cに切欠部130が設けられていることによって、係合用凸部128cの肉抜孔112への軸直角方向の突出寸法が抑えられている。また、その他の係合用凸部128a, 128bや補助用凸部132が内筒金具12における肉抜孔112の形成部位を外れた位置に形成されている。
従って、内筒金具12と外筒金具14の間の限られたスペースにおいて、肉抜孔112の外周側に形成されるダイヤフラム114の自由表面積が大きく確保されて、延いては平衡室124の容積が十分に確保されることから、所期の防振効果が安定して得られる。しかも、3対の係合用凸部128と係合用凹部134に加え、内筒金具12における肉抜孔112の形成部位を外れた位置に設けられた補助用凸部132と補助用凹部136の係合に基づいて、ストッパゴムプレート20の組み付け位置の安定性がより高度に発揮されるのである。
また、本実施形態では、補助用凸部132および補助用凹部136と隣り合う二対の係合用凸部128b、128cおよび係合用凹部134b、134cとの各周方向の離隔距離が比較的に小さくされていると共に、それら二対の係合用凸部128b、128cおよび係合用凹部134b、134cと別の一対の係合用凸部128aおよび係合用凹部134aとの各周方向の離隔距離が比較的に大きくされている。それによって、例えば周方向の離隔距離が小さい補助用凸部132や係合用凸部128b, 128cが誤って別の係合用凹部134b, 134cや補助用凹部136に強引に嵌め付けられた場合においても、周方向の離隔距離が大きい一対の係合用凸部128aが係合用凹部134aに嵌め付けられないことに基づいて、ストッパゴムプレート20の表裏やストッパゴムプレート20の外筒金具14に対する周方向位置がより確実に特定されることとなり、誤組付けが一層有利に防止されるのである。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であり、これら実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
例えば、前記実施形態では、3対の係合用凸部40, 128と係合用凹部58, 134が略同一の形状や大きさ等とされていたが、これに限定されるものでない。具体的には、例えば高さや幅寸法等を相互に異ならせることも可能であり、それによって、組み付けに際しての無理やりの嵌め込みを一層確実に防止することが出来、信頼性の更なる向上が図られ得る。
また、前記実施形態では、3対の係合用凹部58, 134および係合用凸部40, 128が採用されていたが、かかる具体例に何等限定されるものでなく、ストッパゴムプレート20を内筒金具12に組み付けるに際して、その周方向位置と表裏を特定できれば良いのであり、各種の係合用凹部や係合用凸部が採用可能である。その一つの例として、例えば、周上で2つの係合用凹部と係合用凸部の形状を相互に異ならせることで、ストッパゴムプレートの表裏と周方向位置を特定させるようにしても良い。
具体的には、例えば2つの係合用凹部および係合用凸部における周方向の幅寸法を大きく異ならせると共に、二つの異なる周方向間隔を設定したり、或いは、2つの係合用凹凸における突出高さ寸法乃至は凹溝深さ寸法を大きく異ならせると共に、二つの異なる周方向間隔を設定すること等によって、前記実施形態と同様な作用, 効果を得ることが可能である。
また、前記実施形態では、内筒金具12側に係合用凸部40,128が形成されていると共に、ストッパゴムプレート20側に係合用凹部58,134が形成されていたが、これに限定されるものでなく、例えば内筒金具12側に係合用凹部を形成すると共に、ストッパゴムプレート20側に係合用凸部を形成しても良く、或いは内筒金具12とストッパゴムプレート20に対して、それぞれ係合用凸部と係合用凹部を周方向で適宜に離隔配置させて形成しても良い。
また、補助用凸部132や補助用凹部136は、例示の如きものに限定されるものでなく、その数や形状、大きさ、構造、位置等は当業者が適宜に判断しうる事項である。
また、先端部分が切り欠かれて、軸直角方向での延び出し寸法が制限された係合用凸部128cが、肉抜孔112の形状や大きさ、内筒金具12と外筒金具14の偏心量に基づく係合用凸部128cと肉抜孔112の離隔距離等の各種の条件に応じて、その数や形状、大きさ、構造、位置等が設定変更されることは勿論可能である。
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車のトルクロールマウントに適用したものの具体例について説明したが、本発明は、その他の各種エンジンマウントやボデーマウント、デフマウント、或いは流体封入式の各種防振マウントの他、自動車以外の各種振動体の防振装置に対して、何れも、適用可能であることは言うまでもない。