JP4300358B2 - エンジンの吹抜ガス量算出装置及び内部egr量推定装置 - Google Patents
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Description
EGRには、排気管と吸気管との間に接続されたEGR管を介して行う外部EGRと、このEGR管を介さずに行う内部EGRとがある。これらのうち、内部EGRによる還流ガス量を推定する装置として、次のものが知られている(特許文献1)。吸気弁開期間と排気弁開期間とがオーバーラップしない作動条件のもと、エンジン回転数及び排気弁閉時期に基づいて内部EGR量の基本値を算出するとともに、オーバーラップするときは、オーバーラップ量及び吸気圧力を考慮して算出したオーバーラップ分の補正値を加算して、内部EGR量を算出するものである。オーバーラップ分の補正値は、オーバーラップ量に応じた基準補正値を吸気圧力により補正して、算出される。
図1は、本発明の一実施形態に係るエンジン1の構成を示している。
吸気通路11の導入部には、エアクリーナ12が取り付けられており、エアクリーナ12により吸入空気中の粉塵等が除去される。吸気通路11において、エアクリーナ12の下流には、電子制御式のスロットル弁13が設置されている。スロットル弁13の下流には、サージタンク14が取り付けられており、サージタンク14にブランチ15が取り付けられ、吸気マニホールドが構成されている。サージタンク14内の吸入空気は、ブランチ15及びシリンダヘッドに形成された吸気ポート16を介して筒内に流入する。各気筒の吸気ポート16には、燃料供給用のインジェクタ17が設置されている。
インジェクタ17、点火プラグ27及び各可変動弁装置25,26の動作は、エンジンコントロールユニットとしての電子制御ユニット(以下「ECU」という。)41により制御される。ECU41には、エアフローメータ51からの吸入空気量検出信号、圧力センサ52からの吸気圧力検出信号、温度センサ53からの冷却水温度検出信号、クランク角センサ54からの単位クランク角及び基準クランク角検出信号(ECU41は、これをもとに、エンジン回転数NEを算出する。)、圧力センサ55からの排気圧力検出信号、温度センサ56からの排気温度検出信号、酸素センサ57からの空燃比検出信号、アクセルセンサ58からのアクセル開度検出信号、及びカム角センサ59,60からのカム角検出信号(これをもとに、カムとカムシャフトとの実際の位相差を検出可能である。)が入力される。なお、本実施形態では、吸気温度Tinを検出するための温度センサが、エアフローメータ51と一体に構成されている。ECU41は、入力した各信号をもとに、上記の各デバイスの制御量を設定する。
次に、ECU41による内部EGR量MRESの推定について説明する。
本実施形態では、内部EGR量MRESを、オーバーラップ期間中に排気側から吸気側に吹き抜ける排気の量である吹抜ガス量MRESOLと、排気弁閉時期を過ぎても筒内に残る排気の量である残留ガス量MRESCYLとに分け、算出した各ガス量を加算することにより算出する。
図2は、内部EGR量推定ルーチンのフローチャートである。
S101では、排気圧力Pex、排気温度Tex及び目標燃焼当量比TFBYA等、各種の運転状態を読み込む。
S102では、残留ガス量MRESCYLを算出する。排気弁閉時期にシリンダヘッドとピストン19とにより画成される空間の容積(以下「シリンダ容積」という。)VEVCを算出するとともに、目標燃焼当量比TFBYAに応じた排気のガス定数Rexを算出する。算出したシリンダ容積及びガス定数VEVC,Rexと、排気弁閉時期における筒内圧力PEVC及び筒内温度TEVCをもとに、次式により残留ガス量MRESCYLを算出する。筒内圧力及び温度PEVC,TEVCは、圧力センサ55及び温度センサ56からの信号に基づいて夫々推定することができ、排気弁閉時期は、排気側カム角センサ60からの信号に基づいて検出する。
S103では、吹抜ガス量MRESOLを算出する。吹抜ガス量MRESOLは、後述する吹抜ガス量演算ルーチンにより算出する。
S104では、算出した残留ガス量MRESCYL及び吹抜ガス量MRESOLをもとに、(1)式により内部EGR量MRESを算出する。
MRESFR=MRES/(MRES+MACYL×(1+TFBYA/14.7)) ・・・(3)
次に、吹抜ガス量MRESOLの算出について説明する。
ECU41には、図4に示す同調次数テーブルと、図6に示す基本吹抜ガス量テーブルとが記憶されている。基本吹抜ガス量テーブルは、負荷毎に設定され、記憶されている。ECU41は、実際の運転条件に応じた同調回転数NEKの変化量DNEを算出するとともに、算出した変化量DNEに応じて基本吹抜ガス量qblow0とエンジン回転数NEとの対応をずらし、ずらした後のテーブルを検索して、単位吹抜ガス量qblowを算出する。算出した単位吹抜ガス量qblowに有効開口面積ASUMOLを乗算して、吹抜ガス量MRESOLを算出する。
便宜上、後者の基本吹抜ガス量テーブルから説明する。エンジン1が温度に関して平衡状態にあり、かつ吸気温度Tin及び外気圧力が夫々基準吸気温度(ここでは、25℃)、大気圧であるとして、各可変動弁装置25,26が所定の作動状態にあるときの、オーバーラップ期間における単位クランク角(ここでは、1°)毎の吸気圧力Pin及び排気圧力Pexを、机上計算により把握する。吸気及び排気圧力Pin,Pexの把握は、実験により行うこととしてもよい。運転状態に応じた排気温度Texを算出し、算出した排気温度Tex及び目標燃焼当量比TFBYAをもとに、排気のガス定数Rex及び比熱比κexを算出する。比熱比κexは、排気温度Tex及び目標燃焼当量比TFBYAに応じて各比熱比を割り付けたマップ(図13)を検索して算出する。比熱比κexは、排気温度Texを一定としたときに、理論空燃比相当下で最も小さく、目標燃焼当量比TFBYAがこれよりも小さく又は大きくなるほど、大きな値として算出される。また、目標燃焼当量比TFBYAを一定としたときに、リーン側及びリッチ側の領域の双方において、排気温度Texが高くなるほど、小さな値として算出される。
Qblow=ΣQblwagl ・・・(5)
単位クランク角毎の開口面積Aaglをオーバーラップ期間に亘り積算し、積算開口面積Asumstdを算出するとともに、理論吹抜ガス量Qblowを算出した積算開口面積Asumstdで除算し、単位開口面積及び単位クランク角当たりの吹抜ガス量(以下「単位吹抜ガス量」という。)qblowを算出する。基準吸気温度下で算出した単位吹抜ガス量qblowを基本吹抜ガス量qblow0とし、エンジン回転数毎のデータとしてテーブル化して、ECU41に記憶する。基本吹抜ガス量テーブルは、負荷(ここでは、吸気圧力Pinと排気圧力Pexとの比PINBYEX=Pin/Pex)毎に設定し、記憶する(図6)。
qblow0(=qblow)=Qblow/Asumstd ・・・(7)
他方、同調次数テーブルは、基準吸気温度での同調次数Min0の理論式を、計算又は実験の結果により補正して設定する。図4に点線で示す直線L1は、基準吸気温度での理論上の同調次数Min0の逆数を示しており、次式により表される。
(8)式において、吸気通路内での気柱振動の基本周波数をFinとしており、この基本周波数Finは、吸気通路11の等価管長をLeとし、音速をSpsdとして、次式により算出される。なお、(10)式において、吸気通路11の実管長をLinとし、開放端補正値をDLとする。また、(11)式において、比熱比をκairとし、ガス定数をRairとする。
Le=2(Lin+DL) ・・・(10)
Spsd=√{κair×Rair×Tin} ・・・(11)
基本吹抜ガス量テーブルの設定に際して算出した理論吹抜ガス量Qblowをエンジン回転数毎にプロットするとともに、得られた曲線C1(図5)から、同調次数Min=Aに相当する点P1のエンジン回転数NEa1を読み取る。図4において、直線L1上の1/Min0=1/Aに対応するエンジン回転数NEa0を読み取り、理論式(8)の傾きを次式により補正する(直線L2)。
このようにして得られた(12)式をテーブル化し、同調次数テーブルとしてECU41に記憶する。なお、同調次数Minの特性は、テーブルに代え、関数として記憶してもよい。
S202では、実際の運転条件(ここでは、吸気温度Tin)に応じた同調回転数の変化量DNEを算出する。読み込んだ吸気温度Tin(たとえば、70℃)での同調次数特性線(図4のL3)を、(9)〜(12)式により算出し、算出した特性線上の、1/Min=1/Aに対応するエンジン回転数NEa2を、同調回転数NEKとして算出する。算出した同調回転数NEK(=NEa2)と、基準吸気温度下で同調次数MinをAとするエンジン回転数NEa1との差を、変化量DNEとして算出する。なお、変化量DNEの算出に際して採用する同調次数Minは、実用運転領域を考慮して選択する。
S204では、シフト操作後のテーブルt3’を読み込んだエンジン回転数NEにより検索して、単位吹抜ガス量qblowを算出する。
S206では、算出した単位吹抜ガス量qblowをもとに、次式により一サイクル当たりの吹抜ガス量MRESOLを算出する。
算出した吹抜ガス量MRESOLは、既述の内部EGR量推定ルーチン(図2)において、内部EGR量MRESの算出に用いられる。
次に、有効開口面積ASUMOLの演算について説明する。
本実施形態では、最大オーバーラップ時におけるオーバーラップ期間を所定のクランク角DCA(ここでは、1°)毎に分割するとともに、ECU41に対し、分割した各区間の吸気弁20及び排気弁23の弁作動特性値CAMPFIn,CAMPFEn(n=1〜N)を記憶させておく。これらの弁作動特性値CAMPFIn,CAMPFEnは、カムに固有のものであり、カムプロフィールを変更した場合は、その都度適合させる。エンジン1の運転時には、記憶されている各弁作動特性値CAMPFIn,CAMPFEnから吸気弁20又は排気弁23に関するバルブクリアランスVCLRIn,VCLREnを減算し、吸気弁20が形成する区間開口面積VAREAI、及び排気弁23が形成する区間開口面積VAREAEを算出する。算出した区間開口面積VAREAI,VAREAEは、区間毎に対応させた配列として記憶させる(図11)。有効開口面積ASUMOLの演算では、記憶されている配列を参照して、吸気側及び排気側区間開口面積VAREAI,VAREAEのうち小さい方をその区間の実質的な区間開口面積VAREAnとして選択し、選択した区間開口面積VAREAnをオーバーラップ期間に亘り積算して、有効開口面積ASUMOLを算出する。
S301では、列番号表示値nに1を加算する。列番号表示値nは、このルーチンによる配列の作成が終了するたびに、0に設定される。
S302では、列番号表示値nにより特定される吸気弁20及び排気弁23の弁作動特性値CAMPFIn,CAMPFEnを読み込む。
VLIFTEn=CAMPFEn−VCLREn ・・・(14b)
S304では、算出した弁リフト量VLIFTIn,VLIFTEnに対し、流量感度係数Cvに応じた係数KCVI#,KCVE#と、吸気弁20又は排気弁23の弁体投影面積VAREAI0#,VAREAE0#とを乗算し、吸気側及び排気側区間開口面積VAREAI,VAREAEを算出する。なお、流量感度係数Cvは、弁リフト量VLIFTに対して理論的に与えられる流量と実際に与えられる流量との比で表し、吸気弁20及び排気弁23がともに開く低リフト域では、弁リフト量VLIFTにほぼ比例する(図10)。係数KCVI#,KCVE#は、流量感度係数Cvが描く近似直線の傾きとして算出し、固定値としてECU41に記憶させる。また、次式において、一気筒当たりに設けられる吸気弁20又は排気弁23の数をa,bとし、吸気弁20及び排気弁23のシート当接部径をVDI,VDEとする。
VAREAE=VLIFTEn×KCVE#×VAREAE0#×b ・・・(15b)
VAREAI0#=(VDI/2)^2×π ・・・(16a)
VAREAE0#=(VDE/2)^2×π ・・・(16b)
S305では、算出した区間開口面積VAREAI,VAREAEを列番号表示値nと対応させて記憶する。
VAREAEn=VAREAE ・・・(17b)
S306では、列番号表示値nが最終列番号Nに達したか否かを判定する。達したときは、S307へ進み、達していないときは、S301へ戻り、次の列について吸気側及び排気側区間開口面積VAREAI,VAREAEを算出し、記憶する。
図9は、有効開口面積演算ルーチンのフローチャートである。
S401では、吸気カム捻り角ANGI及び排気カム捻り角ANGEを読み込む。
S402では、読み込んだカム捻り角ANGI,ANGEをもとに、最大オーバーラップ時からの吸気弁開時期に対する排気弁閉時期の相対変化量SIFTEVCを算出し、吸気側区間開口面積VAREAIの配列に対し、排気側区間開口面積VAREAEの配列を算出した相対変化量SIFTEVCに応じた列数だけ前進させる(図12)。たとえば、最大オーバーラップ時からの吸気弁開時期及び排気弁閉時期の変化量が夫々クランク角で30°,10°である場合は、相対変化量SIFTEVCが40°であり、配列の作成に当たりオーバーラップ期間を1°毎に分割しているので、排気側区間開口面積VAREAEの配列を40°に応じた列数(=40)だけ前進させる。
S404では、吸気側区間開口面積VAREAIの配列及び前進させた排気側区間開口面積VAREAEの配列から、列番号表示値nに対応する列の区間開口面積VAREAIn,VAREAEnを読み出す。
S405では、読み出した吸気側区間開口面積VAREAInが排気側区間開口面積VAREAEnよりも大きいか否かを判定する。VAREAEnよりも大きいときは、S406へ進み、VAREAEn以下であるときは、S407へ進む。
S407では、吸気側区間開口面積VAREAInをその区間についての実質的な区間開口面積VAREAnとする。
S408では、各区間について算出した区間開口面積VAREAnをオーバーラップ期間に亘り積算する。
S409では、列番号表示値nが最終列番号Nに達したか否かを判定する。達したときは、S410へ進み、達していないときは、S403へ戻り、次の列について区間開口面積VAREAnを算出し、積算する。
S410では、算出した積算値SIGMAを有効開口面積ASUMOLとする。
S411では、列番号表示値n及び積算値SIGMAを0に設定する。
算出した有効開口面積ASUMOLは、既述の吹抜ガス量演算ルーチン(図3)において、吹抜ガス量MRESOLの演算に用いられる。
本実施形態に関し、図3に示すフローチャート全体が吹抜ガス量算出装置(図6に示す基本吹抜ガス量テーブルが基本吹抜ガス量記憶手段を、図3に示すフローチャートのS202が同調回転数変化量算出手段を、同フローチャートのS203,204及び206が吹抜ガス量算出手段を構成する。)を構成する。また、図2に示すフローチャートのS102が残留ガス量算出手段を、図3に示すフローチャートのS201がエンジン回転数検出手段を、図8及び9に示すフローチャート全体が開口面積算出手段を構成する。
第1に、基準吸気温度下で設定した基本吹抜ガス量qblow0を記憶させておき、実際の運転時では、運転条件(すなわち、吸気温度Tin)に応じた同調回転数の変化量DNEを算出し、算出した変化量DNEによるシフト操作後のテーブルを検索して、吹抜ガス量MRESOLを算出することとしたので、吹抜ガス量MRESOLを簡単に算出し、内部EGR量MRESを推定することができる。
第3に、基本吹抜ガス量テーブルのシフト操作により実際の運転条件に対応することができるため、このテーブルを異なる温度毎に設定する必要がなく、記憶容量を軽減することができる。
Claims (6)
- エンジンの吸気弁開期間と排気弁開期間とのオーバーラップ期間中に排気側と吸気側との間で吹き抜ける排気の量を吹抜ガス量として算出するエンジンの吹抜ガス量算出装置であって、
所定の基準条件下で設定された基本吹抜ガス量を記憶する基本吹抜ガス量記憶手段と、
実際の運転条件に応じた吸気系気柱振動に関する同調回転数の変化量を算出する同調回転数変化量算出手段と、
算出された同調回転数の変化量及び基本吹抜ガス量をもとに、実際の吹抜ガス量を算出する吹抜ガス量算出手段と、
実際のエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、を含んで構成され、
前記吹抜ガス量算出手段は、基本吹抜ガス量をエンジン回転数毎に記憶すると共に、算出された同調回転数の変化量分、基本吹抜ガス量をエンジン回転数に関してずらすとともに、ずらした後の基本吹抜ガス量を算出されたエンジン回転数により検索して、実際の吹抜ガス量を算出するエンジンの吹抜ガス量算出装置。 - 同調回転数変化量算出手段は、同調回転数の変化量を所定の同調次数について算出し、
吹抜ガス量算出手段は、算出された同調回転数の変化量分、基本吹抜ガス量を運転領域に渡り一律にずらす請求項1に記載のエンジンの吹抜ガス量算出装置。 - 吸気弁及び排気弁によりオーバーラップ期間中に形成される実際の開口面積を算出する開口面積算出手段を更に含んで構成され、
基本吹抜ガス量記憶手段は、単位開口面積当たりの基本吹抜ガス量を記憶し、
吹抜ガス量算出手段は、基本吹抜ガス量に算出された開口面積を乗算して、実際の吹抜ガス量を算出する請求項1または2に記載のエンジンの吹抜ガス量算出装置。 - 基本吹抜ガス量記憶手段は、基本吹抜ガス量を単位開口面積及び単位時間当たりの量として記憶し、
開口面積算出手段は、オーバーラップ期間を含む所定の期間を前記単位時間毎の複数の区間に分割するとともに、各区間につき、予め定められた弁作動特性値をもとに、吸気弁及び排気弁により形成される実質的な区間開口面積を算出し、算出した区間開口面積をオーバーラップ期間に亘り積算して得たものを、実際の開口面積として算出する請求項3に記載のエンジンの吹抜ガス量算出装置。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の吹抜ガス量算出装置を含んで構成され、
算出された吹抜ガス量をもとに、エンジンの内部EGR量を算出するエンジンの内部EGR量推定装置。 - 排気弁閉時期に筒内に残る排気の量を残留ガス量として算出する残留ガス量算出手段を更に含んで構成され、
吹抜ガス量算出装置及び残留ガス量算出手段により算出された各ガス量をもとに、内部EGR量を算出する請求項5に記載のエンジンの内部EGR量推定装置。
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