JP4298954B2 - 衛生洗浄装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は瞬間式加熱装置を備えた衛生洗浄装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置においては、人体に不快感を与えないようにするため洗浄に用いる洗浄水を適切な温度に調整する加熱装置が備えられている。このような加熱装置には、主に貯湯式加熱装置または瞬間式加熱装置がある。
【0003】
貯湯式加熱装置は、予め所定量の洗浄水を貯えるとともに内蔵した加熱ヒータにより洗浄水を所定の温度に加熱する温水タンクを備え、人体の局部を洗浄する際に、予め温水タンク内で所定の温度に加熱した洗浄水を水道圧を利用するかもしくはポンプ等により圧送してノズルより噴出させる方法を採用している。
【0004】
この貯湯式加熱装置においては、人体の局部を洗浄する際まで、予め温水タンク内の洗浄水を所定の温度に維持し続けなければならない。そのため、加熱ヒータに常時電力を供給する必要があることから消費電力が大きくなる。また、複数の人が連続して局部を洗浄し、予め温水タンク内で所定の温度に加熱した洗浄水の量以上を使用した際、温水タンク内の洗浄水の温度が所定の温度以下に低下して人体に不快感を与えてしまう。
【0005】
一方、瞬間式加熱装置は、人体の局部を洗浄する際に、洗浄水を昇温速度に優れたセラミックヒータ等の加熱ヒータにより所定の温度に加熱し、水道圧を利用するかもしくはポンプ等により圧送してノズルより噴出させる方法を採用している。
【0006】
そのため、瞬間式加熱装置においては、予め洗浄水を所定の温度に維持し続ける必要がなく、使用時のみ加熱ヒータに電力を供給すればよいので消費電力を抑制することができる。また、長時間の洗浄や、トイレの連続使用等により多量の洗浄水を人体の局部の洗浄に用いた際でも、洗浄水の温度が所定の温度以下に低下して人体に不快感を与えることを防止することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、瞬間式加熱装置を用いた衛生洗浄装置では、冬季等の周囲温度が低い場合、給水源より低温の洗浄水が供給され、所定の温度に加熱するために多くの電力が必要となる。しかし、加熱ヒータ等に供給できる電力に制限があるため、使用開始時に未加熱の状態の洗浄水が噴出され、人体に不快感を与えることがあった。
【0008】
本発明の目的は、洗浄開始時の洗浄水の温度を適温に維持できる衛生洗浄装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
(第1の発明)
本発明に係る衛生洗浄装置は、給水源から供給される洗浄水を加熱して噴出する衛生洗浄装置であって、洗浄の前動作を開始するための指示を行う開始指示手段と、洗浄動作を指示する洗浄指示手段と、給水源から供給される洗浄水を流動させつつ加熱する加熱装置と、給水源からの洗浄水を加熱装置に供給する洗浄水供給手段と、洗浄水を噴出する噴出手段と、加熱装置により加熱された洗浄水を加圧して噴出手段に供給する加圧手段と、洗浄水供給手段により加熱装置に洗浄水が供給されて加熱装置が洗浄水で満たされていることを検出する通水検出手段と、開始指示手段による指示に応答して洗浄水供給手段による加熱装置への洗浄水の供給を開始させた後に加熱装置が洗浄水で満たされていることが通水検出手段により検出されたことに応答して加熱装置による洗浄水の加熱を開始させるとともに加圧手段を定常動作させずに加熱装置からの洗浄水を噴出手段から排出させる前動作を行い、洗浄指示手段による指示に応答して、加熱装置に洗浄水の加熱を行わせるとともに、加圧手段を定常動作させることにより加熱装置からの洗浄水を加圧手段により加圧して噴出手段から噴出させる洗浄動作を行う制御手段とを備え、前動作時において噴出手段へ単位時間当たりに供給される洗浄水の流量が洗浄動作時において噴出手段へ単位時間当たりに供給される洗浄水の流量よりも少ないものである。
【0010】
第1の発明に係る衛生洗浄装置においては、開始指示手段による指示に応答して洗浄の前動作が行われる。洗浄の前動作では、洗浄水供給手段による加熱装置への洗浄水の供給が開始された後に、加熱装置が洗浄水で満たされていることが通水検出手段により検出されたことに応答して加熱装置による洗浄水の加熱が開始されるとともに、加圧手段が定常動作せずに加熱装置からの洗浄水が噴出手段から排出される。その後、洗浄指示手段による指示に応答して洗浄動作が行われる。洗浄動作では、加熱装置により洗浄水の加熱が行われるとともに、加圧手段が定常動作することにより加熱装置からの洗浄水が加圧手段により加圧されて噴出手段から噴出される。また、前動作時において噴出手段へ単位時間当たりに供給される洗浄水の流量が洗浄動作時において噴出手段へ単位時間当たりに供給される洗浄水の流量よりも少ない。
【0011】
この場合、周囲環境の温度が低い場合でも滞留した低温の洗浄水が前動作において予備加熱されつつ噴出手段から噴出されずに排出された後、洗浄動作において所望の温度に加熱された洗浄水が噴出手段から噴出される。したがって、加熱装置に供給される電力に制限がある場合でも、洗浄開始時に未加熱の状態の洗浄水が噴出されず、洗浄水の温度を適温に維持できる。その結果、人体に不快感を与えることを防止することができる。
また、開始指示手段による指示に応答して洗浄水供給手段による加熱装置への洗浄水の供給が開始された後に加熱装置が洗浄水で満たされていることが通水検出手段により検出されたことに応答して加熱装置による洗浄水の加熱が開始されるので、確実に加熱装置の空焚きを防止することができる。その結果、加熱装置の空焚きにより洗浄水が高温となることを確実に防止できるとともに機器の損傷や火災を防止できる。
【0012】
(第2の発明)
第2の発明に係る衛生洗浄装置は、第1の発明に係る衛生洗浄装置の構成において、噴出手段は、シリンダ部およびシリンダ部内に移動可能に挿入されたピストン部からなり、シリンダ部は、加熱装置から供給される洗浄水を受け入れる給水口を有し、ピストン部は、洗浄水を噴出する噴出孔と、シリンダ部内の洗浄水を噴出孔に導く第1の流路とを有し、ピストン部の外周面とシリンダ部の内周面との間には、シリンダ部内の洗浄水をシリンダ部の外部に導く第2の流路が形成され、前動作時に加熱装置からの洗浄水が第2の流路より排出され、洗浄動作時に加熱装置からの洗浄水が第1の流路を通して噴出孔から噴出されるものである。
【0013】
この場合、前動作時に、加熱装置からシリンダ部内に供給される洗浄水がピストン部の外周面とシリンダ部の内周面との間に形成される第2の流路を通して排出され、洗浄動作時に、加熱装置から供給される洗浄水がピストン部の第1の流路を通して噴出孔から噴出される。したがって、前動作時に予備加熱中の低温の洗浄水が人体にかからずに排出され、洗浄動作時に所望の温度に加熱された洗浄水が人体に噴出される。
【0014】
(第3の発明)
第3の発明に係る衛生洗浄装置は、第2の発明に係る衛生洗浄装置の構成において、第2の流路は、第1の流路よりも低い圧力損失を有するものである。
【0015】
この場合、第2の流路は、第1の流路よりも低い圧力損失を有するため、第1の流路よりも優先的に第2の流路に洗浄水が流れる。したがって、洗浄の前動作時において、予備加熱中の低温の洗浄水を第1の流路よりも優先的に第2の流路を通して排出することができる。
【0016】
(第4の発明)
第4の発明に係る衛生洗浄装置は、第2または第3の発明に係る衛生洗浄装置の構成において、加熱装置より供給される洗浄水の圧力が所定の圧力以上となった場合にピストン部がシリンダ部から突出するとともにピストン部がシリンダ部に水密に接触することにより、第2の流路が遮断され、かつ第1の流路を介して洗浄水が噴出孔より噴出されるものである。
【0017】
前動作時には、加圧手段が定常動作を行わないので、噴出手段に供給される洗浄水の圧力が所定の圧力よりも低い。この場合、ピストン部の外周面とシリンダ部の内周面との間に形成される第2の流路を通して洗浄水が排出される。洗浄動作時には、加圧手段が定常動作を行うので噴出手段に供給される洗浄水の圧力が所定の圧力以上になる。それにより、ピストン部がシリンダ部から突出するとともにピストン部がシリンダ部に水密に接触し、第2の流路が遮断される。この場合、洗浄水は第1の流路を通して噴出孔から噴出される。このように、洗浄水の圧力変化により洗浄水の流れる経路が第2の流路から第1の流路に切替えられる。
【0018】
(第5の発明)
第5の発明に係る衛生洗浄装置は、第1〜第4のいずれかの発明に係る衛生洗浄装置の構成において、開始指示手段による指示に応答して、時間の経過を計測する計時手段をさらに備え、制御手段は、前動作時に、計時手段により計測された時間に基いて加熱装置による加熱を停止させるものである。
【0019】
この場合、制御手段が、計時手段により計測された時間に基いて加熱装置による洗浄水の加熱を停止させることができるため、前動作時に加熱装置により加熱された洗浄水が高温となることを防止できる。その結果、洗浄動作への移行時に、高温の洗浄水が噴出手段より噴出することを防止することができる。
【0020】
(第6の発明)
第6の発明に係る衛生洗浄装置は、第5の発明に係る衛生洗浄装置の構成において、加熱装置に供給される洗浄水の温度を検出する第1の温度検出手段をさらに備え、制御手段は、前動作時に、第1の温度検出手段により検出された温度に基いて加熱装置による洗浄水の加熱時間を算出し、算出された加熱時間および計時手段により計測された時間に基いて加熱装置による加熱を停止させるものである。
【0021】
この場合、前動作時に、加熱装置に供給される洗浄水の温度に基いて洗浄水の加熱時間が算出され、算出された加熱時間および計時手段により計測された時間に基いて加熱装置による加熱が停止される。加熱装置に供給される洗浄水の温度が低い場合、制御手段により算出される加熱時間が長くなり、加熱装置に供給される洗浄水の温度が高い場合、制御手段により算出される加熱時間が短くなる。それにより、前動作時に洗浄水を最適な温度に予備加熱することができる。
【0022】
(第7の発明)
第7の発明に係る衛生洗浄装置は、第6の発明に係る衛生洗浄装置の構成において、周囲の雰囲気中の温度を検出する第2の温度検出手段をさらに備え、制御手段は、前動作時に、第1の温度検出手段により検出された温度および第2の温度検出手段により検出された温度に基いて加熱装置による洗浄水の加熱時間を算出し、算出された加熱時間および計時手段により計測された時間に基いて加熱装置による加熱を停止させるものである。
【0023】
この場合、前動作時に、加熱装置に供給される洗浄水の温度および周囲の雰囲気中の温度に基いて加熱装置による洗浄水の加熱時間が算出され、算出された加熱時間および計時手段により計測された時間に基いて加熱装置による加熱が停止される。
【0024】
この場合、洗浄水の温度を優先して加熱時間を算出し、周囲の雰囲気中の温度に応じてさらに加熱時間の長さを細分化する。それにより、周囲の雰囲気中の温度に応じて前動作時に洗浄水を最適な温度に予備加熱することができる。
【0025】
加熱装置に供給される洗浄水の温度が低く、かつ周囲の雰囲気中の温度が低い場合には、制御手段により算出される加熱時間が最も長くなる。また、加熱装置に供給される洗浄水の温度が低く、かつ周囲の雰囲気中の温度が高い場合には、制御手段により算出される加熱時間が長くなる。
【0026】
さらに、加熱装置に供給される洗浄水の温度が高く、かつ周囲の雰囲気中の温度が低い場合には、制御手段により算出される加熱時間が短くなる。また、加熱装置に供給される洗浄水の温度が高く、かつ周囲の雰囲気中の温度が高い場合には、制御手段により算出される加熱時間が最も短くなる。
【0027】
(第8の発明)
第8の発明に係る衛生洗浄装置は、第1〜第4のいずれかの発明に係る衛生洗浄装置の構成において、加熱装置により加熱された洗浄水の温度を検出する第3の温度検出手段をさらに備え、制御手段は、前動作時に、第3の温度検出手段により検出された温度に基いて加熱装置による加熱を停止させるものである。
【0028】
この場合、加熱装置により加熱された洗浄水の温度を第3の温度検出手段により検出することができるため、制御手段は、前動作時に加熱された洗浄水の温度を最適に制御することができる。その結果、洗浄動作への移行時に高温の洗浄水が噴出手段より噴出することを防止することができる。
【0029】
(第9の発明)
第9の発明に係る衛生洗浄装置は、第1〜第8のいずれかの発明に係る衛生洗浄装置の構成において、洗浄水供給手段は、給水源と加熱装置との間に設けられた止水電磁弁であるものである。
【0030】
この場合、制御手段は、開始指示手段による指示に応答して止水電磁弁による加熱装置への洗浄水の供給を開始させた後に加熱装置が洗浄水で満たされていることが検出されたことに応答して加熱装置による洗浄水の加熱を開始することができるので、加熱装置の空焚きを防止することができる。したがって、加熱装置の空焚きにより洗浄水が高温となることを防止できるとともに機器の損傷や火災を防止できる。
【0031】
第10の発明に係る衛生洗浄装置は、第1〜第9のいずれかの発明に係る衛生洗浄装置の構成において、通水検出手段は、加熱装置の下流の配管に設けられた通水センサであるものである。
【0032】
この場合、制御手段は、通水センサにより加熱装置が洗浄水で満たされていることが検出されたことに応答して加熱装置による洗浄水の加熱を開始させることができるので、衛生洗浄装置の故障により洗浄水が加熱装置に流れない場合に確実に加熱装置の空焚きを防止することができる。その結果、加熱装置の空焚きにより洗浄水が高温となることを確実に防止できるとともに機器の損傷や火災を防止できる。
【0033】
(第11の発明)
第11の発明に係る衛生洗浄装置は、第1〜第10のいずれかの発明に係る衛生洗浄装置の構成において、加熱装置により加熱された洗浄水の温度を検出する第4の温度検出手段をさらに備え、制御手段は、洗浄動作時に、第4の温度検出手段により検出された温度に基づいて加圧手段を定常動作させるものである。
【0034】
この場合、制御手段は、洗浄動作時に、加熱装置により加熱された洗浄水の温度に基いて加圧手段が定常動作する。したがって、噴出手段より最適な温度の洗浄水の噴出を行うことができる。
【0035】
(第12の発明)
第12の発明に係る衛生洗浄装置は、第11の発明に係る衛生洗浄装置の構成において、洗浄動作時の温度を設定する温度設定手段をさらに備え、制御手段は、洗浄動作時に、第4の温度検出手段により検出された温度が温度設定手段により設定された温度よりも所定値低い温度に達した場合に加圧手段を定常動作させるものである。
【0036】
この場合、洗浄動作時に、加熱装置により加熱された洗浄水の温度が温度設定手段により設定された温度よりも所定値低い温度に達した場合に加圧手段が定常動作する。すなわち、設定された温度よりも所定値低い温度で加圧手段を定常動作させ、洗浄水を噴出させることができる。したがって、洗浄指示手段による指示から洗浄水を噴出させるまでの時間を短縮することができる。
【0037】
(第13の発明)
第13の発明に係る衛生洗浄装置は、第11の発明に係る衛生洗浄装置の構成において、洗浄動作時の温度を設定する温度設定手段をさらに備え、制御手段は、洗浄動作時に、第4の温度検出手段により検出された温度が温度設定手段により設定された温度よりも所定値高い温度に達した場合に加圧手段を定常動作させるものである。
【0038】
この場合、洗浄動作時に、加熱装置により加熱された洗浄水の温度が温度設定手段により設定された温度よりも所定値高い温度に達した場合に加圧手段が定常動作する。すなわち、衛生洗浄装置の各流路における温度低下を考慮して設定された温度よりも所定値高い温度で、加圧手段を定常動作させ、洗浄水を噴出させることができる。したがって、周囲の温度が低い場合でも、快適な温度の洗浄水を確実に噴出させることができる。
【0039】
(第14の発明)
第14の発明に係る衛生洗浄装置は、第1〜第13のいずれかの発明に係る衛生洗浄装置の構成において、開始指示手段は、衛生洗浄装置の使用開始を検出し、制御手段に前動作を開始するための指示を与える使用開始検出手段を含むものである。
【0040】
この場合、使用開始検出手段により、衛生洗浄装置の使用開始が検出されると、制御手段に前動作を開始するための指示が与えられる。それにより、前動作を開始することができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る衛生洗浄装置について説明する。
【0042】
図1は本発明の一実施の形態に係る衛生洗浄装置を便器に装着した状態を示す斜視図である。
【0043】
図1に示すように、便器600上に衛生洗浄装置100が装着される。タンク700は、水道配管に接続されており、便器600内に洗浄水を供給する。
【0044】
衛生洗浄装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および蓋部500により構成される。
【0045】
本体部200には、便座部400および蓋部500がヒンジ部501を介して開閉自在に取り付けられ、便座部400の下面には、着座スイッチ401が取り付けられる。さらに、本体部200には、ノズル部30を含む洗浄水供給機構が設けられるとともに、制御部が内蔵されている。本体部200の制御部は、後述するように遠隔操作装置300により送信される信号に基いて、洗浄水供給機構を制御する。さらに、本体部200の制御部は、便座部400の下面に取り付けられた便座スイッチ401からの信号を受け、便座部400に内蔵されたヒータ、本体部200に設けられた脱臭装置(図示せず)および温風供給装置(図示せず)等の制御を行う。
【0046】
図2は図1の遠隔操作装置300の一例を示す模式図である。
図2に示すように、遠隔操作装置300は、複数のLED(発光ダイオード)301、複数の調整スイッチ302、おしりスイッチ303、刺激スイッチ304、停止スイッチ305、ビデスイッチ306、乾燥スイッチ307および脱臭スイッチ308を備える。
【0047】
使用者により調整スイッチ302、おしりスイッチ303、刺激スイッチ304、停止スイッチ305、ビデスイッチ306、乾燥スイッチ307および脱臭スイッチ308が押下操作される。それにより、遠隔操作装置300は、後述する衛生洗浄装置100の本体部200に設けられた制御部に所定の信号を無線送信する。本体部200の制御部は、遠隔操作装置300より無線送信される所定の信号を受信し、洗浄水供給機構等を制御する。
【0048】
例えば、使用者が、おしりスイッチ303またはビデスイッチ306を押下操作することにより図1の本体部200のノズル部30が移動して洗浄水が噴出する。刺激スイッチ304を押下操作することにより図1の本体部200のノズル部30から人体の局部に刺激を与える洗浄水が噴出される。停止スイッチ305を押下操作することによりノズル部30からの洗浄水の噴出が停止する。
【0049】
また、乾燥スイッチ307を押下操作することにより人体の局部に対して衛生洗浄装置100の温風供給装置(図示せず)より温風が噴出される。脱臭スイッチ308を押下操作することにより衛生洗浄装置100の脱臭装置(図示せず)により周辺の脱臭が行われる。
【0050】
調整スイッチ302は、水勢調整スイッチ302a,302b、温度調整スイッチ302c,302dおよびノズル位置調整スイッチ302e,302fを含む。
【0051】
使用者が、ノズル位置調整スイッチ302e,302fを押下操作することにより図1の衛生洗浄装置100の本体部200のノズル部30の位置が変化し、温度調整スイッチ302c,302dを押下操作することにより、ノズル部30より噴出される洗浄水の温度が変化する。また、水勢調整スイッチ302a,302bを押下操作することにより、ノズル部30より噴出される洗浄水の水量、圧力および噴出形態等が変化する。本実施の形態では、温度調整スイッチ302c,302dを押下操作することにより、洗浄水の温度が32度〜40度の間で調整される。例えば、温度調整スイッチ302c,302dが押下操作され、洗浄水の温度調整が32度に設定された場合、LED301が1個点灯し、洗浄水の温度調整が34度に設定された場合、LED301が2個点灯し、洗浄水の温度調整が36度に設定された場合、LED301が3個点灯し、洗浄水の温度調整が38度に設定された場合、LED301が4個点灯し、洗浄水の温度調整が40度に設定された場合、LED301が5個点灯する。
【0052】
以下、本発明の一実施の形態に係る衛生洗浄装置100の本体部200について説明を行う。図3は本発明の一実施の形態に係る衛生洗浄装置100の本体部200の構成を示す模式図である。
【0053】
図3に示す本体部200は、制御部4、分岐水栓5、ストレーナ6、逆止弁7、定流量弁8、止水電磁弁9、流量センサ10、熱交換器11、温度センサ12a,12b、室温センサ12c、通水センサ12d、ポンプ13、切替弁14およびノズル部30を含む。また、ノズル部30は、おしりノズル1、ビデノズル2およびノズル洗浄用ノズル3を含む。
【0054】
図3に示すように、水道配管201に分岐水栓5が介挿される。また、分岐水栓5と熱交換器11との間に接続される配管202に、ストレーナ6、逆止弁7、定流量弁8、止水電磁弁9、流量センサ10および温度センサ12aが順に介挿されている。さらに、熱交換器11と切替弁14との間に接続される配管203に、温度センサ12b、通水センサ12dおよびポンプ13が介挿されている。また、室温センサ12cは、衛生洗浄装置100の本体部200の周囲の温度が測定可能な位置に設けられる。
【0055】
まず、水道配管201を流れる浄水が、洗浄水として分岐水栓5によりストレーナ6に供給される。ストレーナ6により洗浄水に含まれるごみや不純物等が除去される。次に、逆止弁7により配管202内における洗浄水の逆流が防止される。そして、定流量弁8により配管202内を流れる洗浄水の流量が一定に維持される。
【0056】
また、ポンプ13と切替弁14との間にはリリーフ配管204が接続され、止水電磁弁9と流量センサ10との間には、分岐点Aにおいて逃がし水配管205が接続されている。リリーフ配管204には、リリーフ弁206が介挿されている。リリーフ弁206は、配管203の特にポンプ13の下流側の圧力が所定値を超えると開成し、水圧異常時の機器の破損、ホースの外れ等の不具合を防止する。一方、定流量弁8によって流量が調節され供給される洗浄水のうちポンプ13で吸引されない洗浄水を逃がし水配管205から放出する。これにより、水道供給圧に左右されることなくポンプ13には所定の背圧が作用することになる。
【0057】
なお、定流量弁8は、通常、一般家庭のコンセント容量(15A)により0℃近い洗浄水の水温を人体の洗浄に適した水温(40℃)まで昇温させることができる単位時間当たりの流量(0.5L/分)に配管内を流れる洗浄水の流量を調整している。
【0058】
次いで、流量センサ10は、配管202内を流れる洗浄水の流量を測定し、制御部4に流量測定値を与える。また、温度センサ12aは、配管202内を流れる洗浄水の温度を測定し、制御部4に温度測定値を与える。
【0059】
続いて、熱交換器11は、制御部4により与えられる制御信号に基いて、配管202を通して供給された洗浄水を所定の温度に加熱する。温度センサ12bは、熱交換器11により所定の温度に加熱された洗浄水の温度を測定し、制御部4に温度測定値を与える。通水センサ12dは、配管203内に洗浄水が通水していることを示す通水信号を制御部4に与える。
【0060】
ポンプ13は、熱交換器11により加熱された洗浄水を制御部4により与えられる制御信号に基いて、切替弁14に圧送する。切替弁14は、制御部4により与えられる制御信号に基いて、ノズル部30のおしりノズル1、ビデノズル2およびノズル洗浄用ノズル3のいずれか1つに洗浄水を供給する。それにより、おしりノズル1、ビデノズル2およびノズル洗浄用ノズル3のいずれか1つより洗浄水が噴出される。
【0061】
室温センサ12cは、衛生洗浄装置100の本体部200の周囲の温度を測定し、温度測定値を制御部4に与える。
【0062】
制御部4は、図1の遠隔操作装置300から無線送信される信号、着座スイッチ401からの信号、流量センサ10から与えられる流量測定値、温度センサ12a,12bおよび室温センサ12cから与えられる温度測定値、通水センサ12dから与えられる通水信号に基き止水電磁弁9、熱交換器11、ポンプ13および切替弁14に対して制御信号を与える。
【0063】
また、制御部4は、流量センサ10から与えられる流量測定値、温度センサ12a,12bおよび室温センサ12cから与えられる温度測定値、通水センサ12dから与えられる通水信号に基いて衛生洗浄装置の故障または異常を判定した場合、止水電磁弁9、熱交換器11、ポンプ13および切替弁14に対して緊急停止信号を与える。例えば、制御部4は、通水センサ12dより通水信号が与えられ、かつ温度センサ12aより洗浄水の温度測定値が与えられていて、流量センサ10の流量測定値が0である場合、流量センサ10が故障しているとして、止水電磁弁9、熱交換器11およびポンプ13に緊急停止信号を送信する。
【0064】
図4は熱交換器11の構造の一例を示す一部切り欠き断面図である。
図4に示すように、樹脂ケース504内に曲折された蛇行配管510が埋設されている。蛇行配管510に接触するように平板状のセラミックヒータ505が設けられている。矢印Yで示すように、洗浄水が、給水口511から蛇行配管510内に供給され、蛇行配管510中を流れる間に、セラミックヒータ505により効率よく加熱され、排出口512から排出される。
【0065】
図3の制御部4は、温度センサ12a,12bおよび室温センサ12cより与えられる温度測定値に基いて、熱交換器11のセラミックヒータ505の温度をフィードバック制御する。
【0066】
本実施の形態においては、制御部4がフィードバック制御により熱交換器11のセラミックヒータ505の温度を制御することとしたが、これに限定されず、フィードフォワード制御によりセラミックヒータ505の温度を制御してもよく、あるいは、温度上昇時には、フィードフォワード制御によりセラミックヒータ505を制御し、定常時には、フィードバック制御によりセラミックヒータ505を制御する複合的な制御を行ってもよい。
【0067】
図5はポンプ13の構造の一例を示す断面図である。図5のポンプは複動型レシプロポンプである。
【0068】
図5において、本体部138内には、円柱状空間139が形成されている。円柱状空間139内には圧送ピストン136が設けられている。圧送ピストン136の外周部には、X字パッキン136aが装着されている。圧送ピストン136により円柱状空間139がポンプ室139aとポンプ室139bとに分割される。
【0069】
本体部138の一側部には洗浄水入口PIが設けられ、他側部には洗浄水出口POが設けられている。洗浄水入口PIには図3の配管203を介して熱交換器11が接続され、洗浄水出口POには配管203を介して切替弁14が接続される。
【0070】
洗浄水入口PIは、内部流路P1、小室S1および小室S3を介してポンプ室139aに連通するとともに、内部流路P2、小室S2および小室S4を介してポンプ室139bに連通している。
【0071】
ポンプ室139aは、小室S5、小室S7および内部流路P3を介して洗浄水出口POに連通している。ポンプ室139bは、小室S6、小室S8および内部流路P4を介して洗浄水出口POに連通している。
【0072】
小室S3、小室S4、小室S7および小室S8には、それぞれアンブレラパッキン137が設けられている。
【0073】
モータ130の回転軸にギア131が取り付けられ、ギア131にギア132が噛合っている。また、ギア132には、クランクシャフト133の一端が一点支持で回動可能に取り付けられ、クランクシャフト133の他端には、ピストン保持部134およびピストン保持棒135を介して圧送ピストン136が取り付けられている。
【0074】
図3の制御部4により与えられる制御信号に基いて、モータ130の回転軸が回転すると、モータ130の回転軸に取り付けられたギア131が矢印R1の方向に回転し、ギア132が矢印R2の方向に回転する。これにより、圧送ピストン136が図中の矢印Zの方向に上下運動する。
【0075】
図6はアンブレラパッキン137の動作を説明するための模式図である。例えば、図5の圧送ピストン136が、下方向に移動し、ポンプ室139aの容積を増加させた場合、小室S1の圧力よりもポンプ室139a内の圧力が低くなるため、小室S3に設けられたアンブレラパッキン137は、図6(b)に示すように変形する。その結果、洗浄水入口PIから供給された洗浄水が、内部流路P1、小室S1および小室S3を介してポンプ室139aに流入する。この場合、小室S7の圧力よりもポンプ室139a内の圧力が低くなるため、小室S7に設けられたアンブレラパッキン137は、図6(a)に示す状態のまま変形しない。そのため、洗浄水がポンプ室139a内へ流入したり、逆に洗浄水出口POより吐出されることもない。
【0076】
一方、図5の圧送ピストン136が、上方向に移動し、ポンプ室139aの容積を減少させた場合、小室S1の圧力よりもポンプ室139a内の圧力が高くなるため、小室S3に設けられたアンブレラパッキン137は、図6(a)に示す状態のまま変形しない。その結果、小室S1内の洗浄水が、ポンプ室139aに流入しない。この場合、小室S7に設けられたアンブレラパッキン137は、図6(b)に示すように変形する。そのため、ポンプ室139a内の洗浄水が、小室S5、小室S7および内部流路P3を介して洗浄水出口POから吐出される。
【0077】
なお、小室S4内に設けられたアンブレラパッキン137は、圧送ピストン136が上方向に移動した場合に、図6(b)に示すように変形し、圧送ピストン136が下方向に移動した場合に、図6(a)に示す状態のまま変形しない。一方、小室S8に設けられたアンブレラパッキン137は、圧送ピストン136が上方向に移動した場合に、図6(a)に示す状態のまま変形せず、圧送ピストン136が下方向に移動した場合に、図6(b)に示すように変形する。それにより、ポンプ室139a内の洗浄水が洗浄水出口POから吐出されるときに、ポンプ室139b内に洗浄水入口PIからの洗浄水が流入し、ポンプ室139a内に洗浄水入口PIからの洗浄水が流入するときに、ポンプ室139b内の洗浄水が洗浄水出口POから吐出される。
【0078】
図7は図5のポンプ13の各部の圧力変化を示す図である。図7の縦軸は圧力を示し、横軸は時間を示す。
【0079】
図7に示すように、ポンプ13の洗浄水入口PIに圧力Piの洗浄水が供給される。この場合、図6の圧送ピストン136が上下方向に運動することにより、ポンプ室139a内の洗浄水の圧力Paは、点線のように変化する。一方、ポンプ室139b内の洗浄水の圧力Pbは、破線のように変化する。ポンプ13の洗浄水出口POより吐出される洗浄水の圧力Poutは、太い実線で示すように、圧力Pcを中心として上下に周期的に変化する。
【0080】
このように、ポンプ13においては、圧送ピストン136が上下運動を行うことにより、ポンプ室139aまたはポンプ室139b内の洗浄水に対して交互に圧力が加えられ、洗浄水入口PIの洗浄水が昇圧されて洗浄水出口POから吐出される。以下、ポンプ13において圧送ピストン136が上下運動を行い圧力Pcで洗浄水を吐出することを定常動作すると呼ぶ。
【0081】
図8(a)は切替弁14の縦断面図であり、図8(b)は図8(a)の切替弁14のA−A線断面図であり、図8(c)は図8(a)の切替弁14のB−B線断面図である。
【0082】
図8に示す切替弁14は、モータ141、内筒142および外筒143により構成される。
【0083】
外筒143内に内筒142が挿入され、モータ141の回転軸が内筒142に取り付けられている。モータ141は、制御部4により与えられる制御信号に基いて回転動作を行う。モータ141が回転することにより内筒142が回転する。
【0084】
図8(a),(b),(c)に示すように、外筒143の一端には、洗浄水入口143aが設けられ、側部の対向する位置に洗浄水出口143b,143cが設けられ、側部の洗浄水出口143b,143cと異なる位置に洗浄水出口143dが設けられている。内筒142の互いに異なる位置に孔142e,142fが設けられている。孔142eの周辺には、図8(b)に示すように、面取り部が形成されている。内筒142の回転により、孔142eが外筒143の洗浄水出口143bまたは143cと対向可能になっており、孔142fが外筒143の洗浄水出口143dと対向可能になっている。
【0085】
洗浄水入口143aには、図3の配管203が接続され、洗浄水出口143bには、おしりノズル1が接続され、洗浄水出口143cには、ビデノズル2が接続され、洗浄水出口143dには、ノズル洗浄用ノズル3が接続されている。
【0086】
図9は図8の切替弁14の動作を示す断面図である。
図9(a)に示すように、モータ141が回転せず、内筒142の孔142eが外筒143の洗浄水出口143dと同じ側にある場合、内筒142の孔142eが外筒143の洗浄水出口143b,143cのいずれにも対向せず、かつ内筒142の孔142fが外筒143の洗浄水出口143dに対向しない。したがって、洗浄水が洗浄水出口143b,143c,143dのいずれからも流出しない。
【0087】
次に、図9(b)に示すように、モータ141が内筒142を45度回転させた場合には、内筒142の孔142eの周囲の面取り部の一部が外筒143の洗浄水出口143bに対向する。したがって、少量の洗浄水が洗浄水入口143aより内筒142の内部を通過して、矢印W1で示すように洗浄水出口143bから流出する。
【0088】
また、図9(c)に示すように、モータ141が内筒142を90度回転させた場合には、内筒142の孔142eが外筒143の洗浄水出口143bに対向する。したがって、多量の洗浄水が洗浄水入口143aより内筒142の内部を通過して、矢印W2で示すように洗浄水出口143bから流出する。
【0089】
さらに、モータ141が内筒142を270度回転させた場合には、内筒142の孔142eが外筒143の洗浄水出口143cに対向する。したがって、多量の洗浄水が洗浄水入口143aより内筒142の内部を通過して洗浄水出口143cから流出する。
【0090】
また、モータ141が内筒142を180度回転させた場合には、内筒142の孔142fが外筒143の洗浄水出口143dに対向する。したがって、多量の洗浄水が洗浄水入口143aより内筒142の内部を通過して洗浄水出口143dから流出する。
【0091】
以上のように、制御部4からの制御信号に基いてモータ141が回転することにより内筒142の孔142e,142fのいずれかが外筒143の洗浄水出口143b〜143dのいずれかに対向した場合には洗浄水が流出し、内筒142の孔142e,142fのいずれもが外筒143の洗浄水出口143b〜143dのいずれにも対向しない場合には洗浄水が流出しない。
【0092】
次に、図3のノズル部30のおしりノズル1について説明する。図10は図3のノズル部30のおしりノズル1の断面図である。なお、図3のノズル部30のビデノズル2の構成および動作は図10のおしりノズル1と同様である。
【0093】
図10に示すように、おしりノズル1は、円筒状のピストン部20、円筒状のシリンダ部21、シールパッキン22およびスプリング23により構成される。
【0094】
ピストン部20の先端近傍には、洗浄水を噴出するための噴出孔25が形成されている。ピストン部20の後端には、フランジ形状のストッパ部26が設けられている。また、ストッパ部26には、シールパッキン22が装着されている。ピストン部20の内部には、後端面から噴出孔25に連通する流路27が形成されている。
【0095】
一方、シリンダ部21は、先端側の径小部分と後端側の径大部分とからなる。それにより、径小部分と径大部分との間に、ストッパ部26がシールパッキン22を介して当接可能なストッパ面21bが形成されている。シリンダ部21の後端面には、洗浄水入口24が設けられ、シリンダ部21の内部空間が温度変動緩衝部28となる。洗浄水入口24は、シリンダ部21の中心軸とは異なる位置に偏心して設けられている。洗浄水入口24は、図8の切替弁14の洗浄水出口143bに接続されている。
【0096】
ピストン部20は、ストッパ部26が温度変動緩衝部28内に位置し、先端部が開口部21aから突出するように、シリンダ部21内に移動可能に挿入されている。
【0097】
さらに、スプリング23は、ピストン部20のストッパ部26とシリンダ部21の開口部21aの周縁との間に配設されており、ピストン部20をシリンダ部21の後端側に付勢する。
【0098】
ピストン部20のストッパ部26の外周面とシリンダ部21の内周面との間に微小隙間BS1が形成され、ピストン部20の外周面とシリンダ部21の開口部21aの内周面との間に微小隙間BS2が形成されている。
【0099】
次いで、図10のおしりノズル1の動作について説明する。図11は図10のおしりノズル1の動作を説明するための断面図である。
【0100】
まず、図11(a)に示すように、シリンダ部21の洗浄水入口24より洗浄水が供給されない場合、ピストン部20が、スプリング23の弾性力により矢印Xの方向と逆方向に後退し、シリンダ部21内に収容されている。その結果、ピストン部20は、シリンダ部21の開口部21aより最も突出していない状態となる。このとき、シリンダ部21内には、温度変動緩衝部28が形成されない。
【0101】
次いで、図11(b)に示すように、シリンダ部21の洗浄水入口24より洗浄水の供給が開始された場合、洗浄水の圧力によりピストン部20がスプリング23の弾性力に抗して矢印Xの方向に徐々に前進する。それにより、シリンダ部21内に温度変動緩衝部28が形成されるとともに温度変動緩衝部28に洗浄水が流入する。
【0102】
洗浄水入口24がシリンダ部21の中心軸に対して偏心した位置に設けられているので、温度変動緩衝部28に流入した洗浄水は、矢印Vで示すように渦巻状に還流する。
【0103】
温度変動緩衝部28の洗浄水は、後述する条件下でピストン部20のストッパ部26の外周面とシリンダ部21の内周面との間の微小隙間BS1を通して、ピストン部20の外周面とシリンダ部21の開口部21aの内周面との間の微小隙間BS2から流出する。
【0104】
ピストン部20がさらに前進すると、図11(c)に示すように、ストッパ部26がシールパッキン22を介してシリンダ部21のストッパ面21bに水密に接触する。それにより、ピストン部20のストッパ部26の外周面とシリンダ部21の内周面との間の微小隙間BS1からピストン部20の外周面とシリンダ部21の開口部21aの内周面との間の微小隙間BS2に至る流路が遮断される。したがって、温度変動緩衝部28の洗浄水が、ピストン部20内の流路27を通して噴出孔25のみから噴出される。
【0105】
図12は図3の分岐点Aより配管202を介して図10のおしりノズル1に供給される洗浄水の流量および分岐点Aより逃がし水配管205を介して排出される洗浄水の流量を示す図である。
【0106】
図12においては、縦軸が洗浄水の圧力を示し、横軸が単位時間当りの洗浄水の流量を示す。また、破線H1が配管202を介して図10のおしりノズル1に供給される単位時間当りの洗浄水の流量の変化を示し、実線H2が逃がし水配管205を介して排出される単位時間当りの洗浄水の流量の変化を示す。
【0107】
本実施の形態においては、水道配管201より供給される単位時間当りの洗浄水の流量は、例えば1.5L/minであり、洗浄水の圧力はPiである。
【0108】
図12に示すように、ポンプ13が定常動作を行わない場合、逃がし水配管205より外部に排出される単位時間当りの洗浄水の流量は、例えば1.3L/minである。したがって、熱交換器11に接続された配管202内に供給される単位時間当りの洗浄水の流量は、0.2L/minである。
【0109】
一方、ポンプ13が定常動作を行った場合、洗浄水の圧力が圧力Pcまで上昇され、分岐点Aに負圧が加わり熱交換器11に接続された配管202内に供給される単位時間当りの洗浄水の流量は、0.5L/minに増加する。したがって、逃がし水配管205より外部に排出される単位時間当りの洗浄水の流量は、例えば1.0L/minとなる。
【0110】
この場合、図11に示すおしりノズル1の微小隙間BS1による圧力損失を0.2L/minに設定し、噴出孔25による圧力損失を微小隙間BS1による圧力損失よりも大きく設定する。また、微小隙間BS2による圧力損失を微小隙間BS1による圧力損失よりも小さく設定する。
【0111】
以上のことより、洗浄水入口24より0.2L/min以下の洗浄水が供給された場合、おしりノズル1のピストン部20が、シリンダ部21内の開口部21aからわずかに突出するように移動するが、噴出孔25による圧力損失が微小隙間BS1の圧力損失より大きいため、噴出孔25より洗浄水が噴出しない。さらに、微小隙間BS1による圧力損失よりも微小隙間BS2による圧力損失が小さいため、微小隙間BS1を流通する洗浄水は、全て微小隙間BS2より排出される。したがって、ポンプ13が定常動作を行い洗浄水を圧力Piよりも昇圧させた場合には、ピストン部20の噴出孔25より洗浄水を噴出させることができるが、ポンプ13が定常動作を行わない場合には、ピストン部20の噴出孔25より洗浄水が噴出されず、微小隙間BS1および微小隙間BS2を介して洗浄水を排出することができる。
【0112】
続いて、図13は本実施の形態に係る制御部4の洗浄前動作の一例を示すフローチャートであり、図14は本実施の形態に係る制御部4の洗浄前動作の他の例を示すフローチャートである。
【0113】
まず、図13に示す洗浄前動作の一例を説明する。制御部4は、着座センサ401からの着座信号を受信したか否かを判定する(ステップS11)。この着座信号は、使用者が便座部400に腰掛けた際に着座センサ401より制御部4に送信される。制御部4は、着座センサ401より着座信号を受信したと判定した場合、洗浄前動作を開始する。
【0114】
まず、洗浄前動作において、制御部4は、止水電磁弁9に洗浄水を流通させるように指示する(ステップS12)。
【0115】
次いで、制御部4は、熱交換器11の出口側(下流側)に設けられた通水センサ12dより通水信号を受信したか否かを判定する(ステップS13)。この通水センサ12dは、配管203内が洗浄水で満たされている場合にのみ通水信号を制御部4に送信する。それにより、制御部4は、通水センサ12dから通水信号を受信すると、配管203に接続された熱交換器11の蛇行配管510内が洗浄水で満たされていると判定する。
【0116】
制御部4は、温度センサ12aより洗浄水の温度測定値を受信する(ステップS14a)。さらに、制御部4は、室温センサ12cより室温の温度測定値を受信する(ステップS14b)。
【0117】
制御部4は、温度センサ12aより与えられた洗浄水の温度測定値、室温センサ12cより与えられた室温の温度測定値および予め設定された洗浄水の目標温度設定値に基いて熱交換器11の洗浄前動作の加熱時間を算出し、熱交換器11をオンする(ステップS15)。それにより、熱交換器11は、蛇行配管510を流通する洗浄水を加熱する。
【0118】
この場合、洗浄前動作時に、熱交換器11に供給される洗浄水の温度および周囲の雰囲気中の温度に基いて熱交換器11による洗浄水の加熱時間が算出され、算出された加熱時間および制御部4により計測された時間に基いて熱交換器11による加熱が停止される。
【0119】
この場合、洗浄水の温度を優先して加熱時間を算出し、周囲の雰囲気中の温度に応じてさらに加熱時間の長さを細分化する。それにより、周囲の雰囲気中の温度に応じて洗浄前動作時に洗浄水を最適な温度に予備加熱することができる。
【0120】
熱交換器11に供給される洗浄水の温度が低く、かつ周囲の雰囲気中の温度が低い場合には、制御部4により算出される加熱時間が最も長くなる。また、熱交換器11に供給される洗浄水の温度が低く、かつ周囲の雰囲気中の温度が高い場合には、制御部4により算出される加熱時間が長くなる。例えば、洗浄水の温度が低く、かつ周囲の雰囲気中の温度が高い場合としては、トイレが温風供給装置(図示せず)により暖房されている場合等が考えられる。この場合には、熱交換器11により加熱された洗浄水の温度低下が抑えられ、また、体感的にも冷感を感じやすいため、加熱時間を長くする。
【0121】
さらに、熱交換器11に供給される洗浄水の温度が高く、かつ周囲の雰囲気中の温度が低い場合には、制御部4により算出される加熱時間が短くなる。例えば、洗浄水の温度が高く、かつ周囲の雰囲気中の温度が低い場合としては、井戸水の使用や水道管が地中深くに埋設されている場合等が考えられる。この場合には、熱交換器11により加熱された洗浄水の温度低下が起こり得るが、雰囲気中の空気よりも洗浄水の方が熱容量が大きいため、洗浄水の水温を優先して加熱時間を短くする。また、熱交換器11に供給される洗浄水の温度が高く、かつ周囲の雰囲気中の温度が高い場合には、制御部4により算出される加熱時間が最も短くなる。
【0122】
次いで、制御部4は、切替弁14をおしりノズル1側に切替える(ステップS16)。それにより、切替弁14のモータ141が回転し、内筒142の孔142eが外筒143の洗浄水出口143bと対向し、おしりノズル1の洗浄水供給口24に洗浄水が供給される。
【0123】
この場合、ポンプ13が停止しているため、おしりノズル1に供給された洗浄水は、図11の微小隙間BS1および微小空間BS2を介しておしりノズル1の外部に排出され、噴出孔25より噴出されない。
【0124】
次いで、制御部4は、算出した洗浄前動作の加熱時間を経過したか否かを判定する(ステップS17)。算出した洗浄前動作の加熱時間が経過していないと判定した場合、制御部4は、洗浄前動作の加熱時間が経過するまで待機する。一方、算出した洗浄前動作の加熱時間が経過したと判定した場合、制御部4は、熱交換器11をオフする(ステップS18)。
【0125】
制御部4は、一定時間経過後、止水電磁弁9における洗浄水の流通を停止するように指示する(ステップS19)。このようにして、制御部4は、洗浄前動作を終了する。
【0126】
以上のように、洗浄前動作において、止水電磁弁9より洗浄水を流通させ、制御部4により室温センサ12c、温度センサ12a,12bおよび所定の目標設定温度に応じて加熱時間を算出する。そして、算出された加熱時間が経過するまで熱交換器11により洗浄水を予備加熱し、おしりノズル1の微小隙間BS1より排出させることにより、衛生洗浄装置100の止水電磁弁9からおしりノズル1の噴出孔までの流路において滞留していた低温の洗浄水がおしりノズル1より排出される。また、冬季等の周囲温度が低下した場合でも、熱交換器11により加熱時間が経過するまで予備加熱された洗浄水がおしりノズル1より排出されるので、熱交換器11自体、配管203、切替弁14およびおしりノズル1等を確実に温めることができる。したがって、洗浄開始時に使用者に対して未加熱の洗浄水が噴出されることが防止される。
【0127】
さらに、通水センサ12dからの通水信号に基づいて熱交換器11内に洗浄水が供給されている場合にのみ洗浄水が加熱されるので、熱交換器11の空焚きを防止することができる。したがって、空焚きされた熱交換器11内を通過することにより高温の洗浄水が発生することがないため、洗浄開始時に使用者に対して高温の洗浄水が噴出されることが防止される。
【0128】
次に、図14に示す洗浄前動作の他の例を説明する。制御部4は、着座センサ401からの着座信号を受信したか否かを判定する(ステップS21)。この着座信号は、使用者が便座部400に腰掛けた際に着座センサ401より制御部4に送信される。制御部4は、着座センサ401より着座信号を受信したと判定した場合、洗浄前動作を開始する。
【0129】
まず、洗浄前動作において、制御部4は、止水電磁弁9に洗浄水を流通させるように指示する(ステップS22)。
【0130】
次いで、制御部4は、熱交換器11の出口側(下流側)に設けられた通水センサ12dより通水信号を受信したか否かを判定する(ステップS23)。この通水センサ12dは、配管203内が洗浄水で満たされている場合にのみ通水信号を制御部4に送信する。それにより、通水センサ12dから通水信号を受信すると、制御部4は、配管203に接続された熱交換器11の蛇行配管510内が洗浄水で満たされていると判定する。
【0131】
制御部4は、通水信号を受信したと判定した場合、熱交換器11をオンする(ステップS24)。それにより、熱交換器11は、蛇行配管510を流通する洗浄水を加熱する。
【0132】
次いで、制御部4は、切替弁14をおしりノズル1側に切替える(ステップS25)。それにより、切替弁14のモータ141が回転し、内筒142の孔142eが外筒143の洗浄水出口143bと対向し、おしりノズル1の洗浄水供給口24に洗浄水が供給される。
【0133】
この場合、ポンプ13が停止しているため、おしりノズル1に供給された洗浄水は、図11の微小隙間BS1および微小空間BS2を介しておしりノズル1の外部に排出され、噴出孔25より噴出されない。
【0134】
次いで、制御部4は、温度センサ12bより洗浄水の温度測定値を受信する(ステップS26)。そして、制御部4は、温度センサ12bより与えられた温度測定値が、予め設定された目標温度設定値に達しているか否かを判定する(ステップS27)。制御部4は、温度センサ12bより与えられた温度測定値が、目標設定温度値に達していないと判定した場合、ステップS26に戻り、設定された目標設定温度値に達するまでステップS26,S27の処理を繰り返し行う。
【0135】
一方、制御部4は、温度センサ12bより与えられた温度測定値が、目標設定温度値に達したと判定した場合、熱交換器11をオフする(ステップS28)。制御部4は、一定時間経過後、止水電磁弁9における洗浄水の流通を停止するように指示する(ステップS29)。このようにして、制御部4は、洗浄前動作を終了する。
【0136】
以上のように、洗浄前動作において、止水電磁弁9より洗浄水を流通させ、熱交換器11により洗浄水を所定の目標設定温度になるまで予備加熱しておしりノズル1の微小隙間BS1より排出させることにより、衛生洗浄装置100の止水電磁弁9からおしりノズル1の噴出孔までの流路において滞留していた低温の洗浄水がおしりノズル1より排出される。また、冬季等の周囲温度が低下した場合でも、熱交換器11により目標設定温度にまで予備加熱された洗浄水がおしりノズル1より排出されるので、熱交換器11自体、配管203、切替弁14およびおしりノズル1等を確実に温めることができる。したがって、洗浄開始時に使用者に対して未加熱の洗浄水が噴出されることが防止される。
【0137】
さらに、通水センサ12dからの通水信号に基づいて熱交換器11内に洗浄水が通水している場合にのみ洗浄水が加熱されるので、熱交換器11の空焚きを防止することができる。したがって、空焚きされた熱交換器11内を通過することにより高温の洗浄水が発生することがないため、洗浄開始時に使用者に対して高温の洗浄水が噴出されることが防止されるとともに器機の損傷や火災が防止される。
【0138】
すなわち、熱交換器11が空焚き状態になると、熱交換器11に設けられた温度センサ12bで異常温度が検知される。例えば、温度センサ12bにより異常温度が検知された場合には制御部4により熱交換器11への通電が遮断される。しかし、熱交換器11への通電が遮断されなかった場合、衛生洗浄装置は樹脂等を中心として構成されているため、他の部品が焼損したり、最悪のケースでは火災になる。
【0139】
また、加熱装置には安全装置として溶断ヒューズ(図示せず)が設けられている。溶断ヒューズとは温度が過度に上昇すると内部の導通体が溶け、導通がなくなるものであるため、溶断ヒューズが切れた場合には熱交換器11の交換が必要となる。
【0140】
続いて、図15は本実施の形態に係る制御部4の洗浄動作の一例を示すフローチャートであり、図16は本実施の形態に係る制御部4の洗浄動作の他の例を示すフローチャートである。
【0141】
なお、ここでは、使用者により洗浄水の温度調整スイッチ302c,302dが押下操作され、洗浄水の温度が設定される。以下、使用者により設定された洗浄水の温度を使用者設定値と呼ぶ。本例では、使用者設定値を38℃とする。
【0142】
まず、図15に示す洗浄動作の一例を説明する。使用者により図2の遠隔操作部300のおしり洗浄スイッチ303が押下操作された際、遠隔操作部300より制御部4におしり洗浄スイッチ押下信号が送信される。
【0143】
図15に示すように、制御部4は、遠隔操作部300よりおしり洗浄スイッチ押下信号を受信したか否かを判定する(ステップS30)。制御部4は、おしり洗浄スイッチ押下信号を受信した場合、洗浄動作を開始する。
【0144】
まず、洗浄動作において、制御部4は、止水電磁弁9に洗浄水を流通させるように指示する(ステップS31)。
【0145】
次に、制御部4は、熱交換器11の出口側(下流側)に設けられた通水センサ12dより通水信号を受信したか否かを判定する(ステップS32)。この通水センサ12dは、配管203内が洗浄水で満たされている場合にのみ通水信号を制御部4に送信する。それにより、制御部4は、通水センサ12dから通水信号を受信すると、配管203に接続された熱交換器11の蛇行配管510内が洗浄水で満たされていると判定する。
【0146】
次いで、制御部4は、熱交換器11をオンする(ステップS33)。それにより、熱交換器11は、蛇行配管510を流れる洗浄水を加熱する。
【0147】
制御部4は、温度センサ12bより洗浄水の温度測定値を受信する(ステップS34)。制御部4は、温度センサ12bより受信した洗浄水の温度測定値が第1の温度制御値に達したか否かを判定する(ステップS35)。ここで、第1の温度制御値とは、使用者設定値よりも所定値低い温度をいう。本例では、所定値を2degとする。この場合、第1の温度制御値は、36℃となる。
【0148】
ここで、図15の制御部4の洗浄動作における第1の温度制御値について説明する。例えば、冬季等の周囲温度が最も低下する条件下(例えば5℃雰囲気中)においては、おしりノズル1の噴出孔25より噴出される洗浄水の温度は、熱交換器11のセラミックヒータ501により加熱された直後の洗浄水の温度より約2deg低下する。しかし、通常、おしりノズル1の噴出孔25より噴出する洗浄水の温度が32℃以下とならなければ、使用者に不快感を感じさせることがない。そこで、第1の温度制御値を使用者設定値(38℃)よりも所定値(2deg)低い温度(36℃)に設定する。
【0149】
制御部4は、温度センサ12bより与えられた洗浄水の温度測定値が第1の温度制御値(36℃)に達していないと判定した場合、ステップS34に戻り、ステップS34,S35の処理を繰り返す。一方、温度センサ12bより与えられた洗浄水の温度測定値が第1の温度制御値(36℃)に達したと判定した場合、制御部4は、切替弁14をおしりノズル1側に切替える(ステップS36)。それにより、切替弁14のモータ141が回転し、内筒142の孔142eが外筒143の洗浄水出口143bと対向し、おしりノズル1の洗浄水供給口24に洗浄水が供給される。
【0150】
続いて、制御部4は、ポンプ13をオンする(ステップS37)。ポンプ13は、洗浄水入口PIに接続された配管203の洗浄水を加圧して、洗浄水出口POより吐出する。そのため、図3のポンプ13の上流側の配管202,203に負圧がかかり、配管202,203を流通する単位時間当りの洗浄水の流量が増加する。
【0151】
この場合、配管202,203を流通する洗浄水の流量がおしりノズル1の微小隙間BS1により単位時間当りに排出できる洗浄水の流量を超過するため、おしりノズル1のピストン部20が図11(b)に示す状態からスプリング23の弾性力に抗して矢印Xの方向に徐々に前進する。
【0152】
そして、ピストン部20がさらに前進し、図11(c)に示すように、ストッパ部26がシールパッキン22を介してシリンダ部21のストッパ面21bに水密に接触する。それにより、ピストン部20のストッパ部26の外周面とシリンダ部21の内周面との間の微小隙間BS1からピストン部20の外周面とシリンダ部21の開口部21aの内周面との間の微小隙間BS2に至る流路が遮断される。したがって、洗浄水が、ピストン部20内の流路27を通して噴出孔25のみから噴出され、洗浄状態へ移行される。
【0153】
以上のことにより、第1の温度制御値を通常人体に不快感を与えない温度で使用者により設定された温度よりも所定値低い温度(本例では36℃)に設定することにより、おしり洗浄スイッチ303が押下操作されてから短時間で洗浄状態に移行することが可能となる。
【0154】
さらに、通水センサ12dからの通水信号に基づいて熱交換器11内に洗浄水が通水している場合にのみ洗浄水が加熱されるので、熱交換器11の空焚きを防止することができる。したがって、洗浄開始時に使用者に対して高温の洗浄水が噴出されることが防止されるとともに機器の損傷や火災が防止される。
【0155】
次に、図16に示す洗浄動作の他の例を説明する。図16の制御部4の洗浄動作が、図15に示す制御部4の洗浄動作と異なるのはステップS35aの処理である。ステップS35aでは、制御部4は、温度センサ12bより受信した洗浄水の温度測定値が第2の温度制御値に達したか否かを判定する(ステップS35a)。ここで、第2の温度制御値とは、使用者設定値よりも所定値高い温度をいう。本例では、所定値を2degとする。この場合、第2の温度制御値は、40℃となる。
【0156】
図16の制御部4の洗浄動作における第2の温度制御値について説明する。例えば、冬季等の周囲温度が最も低下する条件下(例えば5℃雰囲気中)においては、おしりノズル1の噴出孔25より噴出される洗浄水の温度は、熱交換器11のセラミックヒータ501により加熱された直後の洗浄水の温度より約2deg低下する。そこで、第2の温度制御値を使用者設定値(38℃)よりも所定値(2deg)高い温度(40℃)に設定する。以上のことにより、第2の温度制御値を使用者が設定した温度よりも所定値高い温度(40℃)に設定することにより、冬季等の周囲温度が低下する条件下でも、使用者に噴出される洗浄水を最適な温度に維持することが可能となる。
【0157】
さらに、通水センサ12dからの通水信号に基づいて熱交換器11内に洗浄水が通水している場合にのみ洗浄水が加熱されるので、熱交換器11の空焚きを防止することができる。したがって、洗浄開始時に使用者に対して高温の洗浄水が噴出されることが防止される。なお、本実施の形態では、上記の洗浄前動作の2つの例のうちいずれか一方および上記の洗浄動作の2つの例のうちいずれか一方を選択して組合せることができる。
【0158】
また、上記の例においては、所定値を2degとし、第1の温度制御値を36℃に設定し、第2の温度制御値を40℃に設定した場合について説明したが、第1の温度制御値および第2の温度制御値は、この値に限定されず、人体に不快感を与えない温度範囲、例えば、32℃〜40℃に設定することが好ましい。
【0159】
本実施の形態においては、おしりノズル1およびビデノズル2が噴出手段に相当し、熱交換器11が加熱装置に相当し、着座スイッチ401が開始指示手段および使用開始検出手段に相当し、ポンプ13が供給手段に相当し、制御部4が制御手段に相当し、遠隔操作装置300が洗浄指示手段に相当し、洗浄水入口24が給水口に相当し、流路27が第1の流路に相当し、ピストン部20のストッパ部26の外周面とシリンダ部21の内周面との間の微小隙間BS1が第2の流路に相当し、温度センサ12aが第1の温度検出手段に相当し、室温センサ12cが第2の温度検出手段に相当し、温度センサ12bが第3および第4の温度検出手段に相当し、止水電磁弁9が洗浄水供給手段に相当し、通水センサ12dが通水検出手段に相当し、温度調整スイッチ302c,302dが温度設定手段に相当する。
【0160】
また、本実施の形態においては、開始指示手段および使用開始検出手段として着座スイッチ401を用いているが、これに限定されず、例えば、図1のヒンジ部501に感圧スイッチを設けてもよく、便座部400の静電容量を検出するセンサを用いてもよく、赤外線センサまたは超音波センサにより使用者の入出を検出してもよい。
【0161】
さらに、本実施の形態においては逃がし水配管205および定流量弁8により熱交換器11、ポンプ13およびノズル部30に供給する洗浄水の流量を調整する場合について説明したが、これに限定されず、一定の圧力を維持させる定圧弁等を用いてもよい。
【0162】
さらに、本実施の形態においてはポンプ13として複動型レシプロポンプを用いる場合について説明したが、これに限定されず、回転型ポンプまたは往復型ポンプを用いてもよい。
【0163】
本実施の形態では、洗浄前動作時にポンプ13を停止させることによりポンプ13を定常動作させていないが、洗浄前動作時におしりノズル1またはビデノズル2の噴出孔から洗浄水が噴出されない程度にポンプ13を動作させてもよい。すなわち、ポンプ13の「定常動作」とは、ポンプ13の吐出圧力がおしりノズル1またはビデノズル2の噴出孔から洗浄水が噴出される圧力となる動作を意味する。
【0164】
【発明の効果】
本発明によれば、周囲環境の温度が低い場合でも滞留した低温の洗浄水が前動作において予備加熱されつつ噴出手段から噴出されずに排出された後、洗浄動作において所望の温度に加熱された洗浄水が噴出手段から噴出される。したがって、加熱装置に供給される電力に制限がある場合でも、洗浄開始時に未加熱の状態の洗浄水が噴出されず、洗浄水の温度を適温に維持できる。その結果、人体に不快感を与えることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る衛生洗浄装置を便器に装着した状態を示す斜視図
【図2】図1の遠隔操作装置の一例を示す模式図
【図3】本発明の一実施の形態に係る衛生洗浄装置の本体部の構成を示す模式図
【図4】熱交換器の構造の一例を示す一部切り欠き断面図
【図5】ポンプの構造の一例を示す断面図
【図6】アンブレラパッキンの動作を説明するための模式図
【図7】ポンプの各部の圧力変化を示す図
【図8】(a)は切替弁の縦断面図であり、(b)は(a)の切替弁のA−A線断面図であり、(c)は(a)の切替弁のB−B線断面図
【図9】図8の切替弁の動作を示す断面図
【図10】図3のノズル部のおしりノズルの断面図
【図11】図10のおしりノズルの動作を説明するための断面図
【図12】図3の分岐点Aより配管を介して図10のおしりノズルに供給される洗浄水の流量および分岐点Aより逃がし水配管を介して排出される洗浄水の流量を示す図
【図13】本実施の形態に係る制御部の洗浄前動作の一例を示すフローチャート
【図14】本実施の形態に係る制御部の洗浄前動作の他の例を示すフローチャート
【図15】本実施の形態に係る制御部の洗浄動作の一例を示すフローチャート
【図16】本実施の形態に係る制御部の洗浄動作の他の例を示すフローチャート
【符号の説明】
1 おしりノズル
2 ビデノズル
3 ノズル洗浄用ノズル
4 制御部
5 分岐水栓
6 ストレーナ
7 逆止弁
8 定流量弁
9 止水電磁弁
10 流量センサ
11 熱交換器
12a,12b 温度センサ
12c 室温センサ
12d 通水センサ
13 ポンプ
14 切替弁
20 ピストン部
21 シリンダ部
21a 開口部
21b ストッパ面
22 シールパッキン
23 スプリング
24 洗浄水入口
25 噴出孔
26 ストッパ部
27 流路
28 温度変動緩衝部
30 ノズル部
100 衛生洗浄装置
200 本体部
201 水道配管
300 遠隔操作装置
302 調整スイッチ
302a,302b 水勢調整スイッチ
400 便座部
401 着座スイッチ
500 蓋部
501 ヒンジ部
600 便器
700 タンク

Claims (14)

  1. 給水源から供給される洗浄水を加熱して噴出する衛生洗浄装置であって、
    洗浄の前動作を開始するための指示を行う開始指示手段と、
    洗浄動作を指示する洗浄指示手段と、
    前記給水源から供給される洗浄水を流動させつつ加熱する加熱装置と、
    前記給水源からの洗浄水を前記加熱装置に供給する洗浄水供給手段と、
    洗浄水を噴出する噴出手段と、
    前記加熱装置により加熱された洗浄水を加圧して噴出手段に供給する加圧手段と、
    前記洗浄水供給手段により前記加熱装置に洗浄水が供給されて前記加熱装置が洗浄水で満たされていることを検出する通水検出手段と、
    前記開始指示手段による指示に応答して前記洗浄水供給手段による前記加熱装置への洗浄水の供給を開始させた後に前記加熱装置が洗浄水で満たされていることが前記通水検出手段により検出されたことに応答して前記加熱装置による洗浄水の加熱を開始させるとともに前記加圧手段を定常動作させずに前記加熱装置からの洗浄水を前記噴出手段から排出させる前動作を行い、前記洗浄指示手段による指示に応答して、前記加熱装置に洗浄水の加熱を行わせるとともに、前記加圧手段を定常動作させることにより前記加熱装置からの洗浄水を前記加圧手段により加圧して前記噴出手段から噴出させる洗浄動作を行う制御手段とを備え、
    前記前動作時において前記噴出手段へ単位時間当たりに供給される洗浄水の流量が前記洗浄動作時において前記噴出手段へ単位時間当たりに供給される洗浄水の流量よりも少ないことを特徴とする衛生洗浄装置。
  2. 前記噴出手段は、シリンダ部および前記シリンダ部内に移動可能に挿入されたピストン部からなり、
    前記シリンダ部は、前記加熱装置から供給される洗浄水を受け入れる給水口を有し、
    前記ピストン部は、洗浄水を噴出する噴出孔と、前記シリンダ部内の洗浄水を前記噴出孔に導く第1の流路とを有し、
    前記ピストン部の外周面と前記シリンダ部の内周面との間には、前記シリンダ部内の洗浄水を前記シリンダ部の外部に導く第2の流路が形成され、
    前記前動作時に前記加熱装置からの洗浄水が前記第2の流路より排出され、前記洗浄動作時に前記加熱装置からの洗浄水が前記第1の流路を通して前記噴出孔から噴出されることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
  3. 前記第2の流路は、前記第1の流路よりも低い圧力損失を有することを特徴とする請求項2記載の衛生洗浄装置。
  4. 前記加熱装置より供給される洗浄水の圧力が所定の圧力以上となった
    場合に前記ピストン部が前記シリンダ部から突出するとともに前記ピストン部が前記シリンダ部に水密に接触することにより、前記第2の流路が遮断され、かつ前記第1の流路を介して洗浄水が前記噴出孔より噴出されることを特徴とする請求項2または3記載の衛生洗浄装置。
  5. 前記開始指示手段による指示に応答して、時間の経過を計測する計時手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記前動作時に、前記計時手段により計測された時間に基いて前記加熱装置による加熱を停止させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の衛生洗浄装置。
  6. 前記加熱装置に供給される洗浄水の温度を検出する第1の温度検出手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記前動作時に、前記第1の温度検出手段により検出された温度に基いて前記加熱装置による洗浄水の加熱時間を算出し、算出された加熱時間および前記計時手段により計測された時間に基いて前記加熱装置による加熱を停止させることを特徴とする請求項5記載の衛生洗浄装置。
  7. 周囲の雰囲気中の温度を検出する第2の温度検出手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記前動作時に、前記第1の温度検出手段により検出された温度および前記第2の温度検出手段により検出された温度に基いて前記加熱装置による洗浄水の加熱時間を算出し、算出された加熱時間および前記計時手段により計測された時間に基いて前記加熱装置による加熱を停止させることを特徴とする請求項6記載の衛生洗浄装置。
  8. 前記加熱装置により加熱された洗浄水の温度を検出する第3の温度検出手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記前動作時に、前記第3の温度検出手段により検出された温度に基いて前記加熱装置による加熱を停止させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の衛生洗浄装置。
  9. 前記洗浄水供給手段は、前記給水源と前記加熱装置との間に設けられた止水電磁弁であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の衛生洗浄装置。
  10. 前記通水検出手段は、前記加熱装置の下流の配管に設けられた通水センサであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の衛生洗浄装置。
  11. 前記加熱装置により加熱された洗浄水の温度を検出する第4の温度検出手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記洗浄動作時に、前記第4の温度検出手段により検出された温度に基づいて前記加圧手段を定常動作させることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の衛生洗浄装置。
  12. 前記洗浄動作時の温度を設定する温度設定手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記洗浄動作時に、前記第4の温度検出手段により検出された温度が前記温度設定手段により設定された温度よりも所定値低い温度に達した場合に前記加圧手段を定常動作させることを特徴とする請求項11記載の衛生洗浄装置。
  13. 前記洗浄動作時の温度を設定する温度設定手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記洗浄動作時に、前記第4の温度検出手段により検出された温度が前記温度設定手段により設定された温度よりも所定値高い温度に達した場合に前記加圧手段を定常動作させることを特徴とする請求項11記載の衛生洗浄装置。
  14. 前記開始指示手段は、
    使用開始を検出し、制御手段に前記前動作を開始するための指示を与える使用開始検出手段を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の衛生洗浄装置。
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