JP4298853B2 - 長尺先受け工法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は長尺先受け工法に係り、山岳トンネル工事において、パイプルーフ工が先行打設された掘削予定地山に対し、先受け鋼管をトンネル切羽面から施工する際に、トンネル断面内に施工された先受け鋼管を効率よく除去して掘削を行えるようにした長尺先受け工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
市街地トンネルの掘削工事では、トンネル建設予定地の地上に住宅等が建設されていることが多いため、地表面沈下に対する制約条件が厳しい。そこで、大断面トンネルの掘削では、トンネルの天端の安定と地山の先行緩み抑止のために注入を伴う長尺先受け工法が用いられることがある。図5は従来の長尺先受け工法の一種であるトレヴィチューブ工法によるトンネル先行補強の一例を示したトンネル縦断面図である。
【0003】
このトレヴィチューブ工法では、これから掘削するトンネル切羽50の奥部にかけて、専用機60により支持体としての先受け鋼管52を建て込むようになっている。さらにその鋼管52を利用してウレタンやセメントミルクなどの注入材を地山に充填して、各鋼管の周囲に連続した改良体53を形成し、改良体53により上半アーチの外周地山を確実に改良することができる。図5には切羽50の奥部にかけて所定長さの先受け鋼管52を建て込んだ状態が示されている。この先受け鋼管52は図示した打設専用機60を用いて所定単位長さの単位管を切羽口元で順次連結して構成したものである。また切羽50の近傍にはすでに建て込まれた鋼管52をガイドとして所定のピッチで支保工55が建て込まれている。さらにこの支保工55間を埋めるようにして吹付けコンクリート56が施工されている。この吹付けコンクリート56を施工した後においても、インバート51とトンネル天端54間のトンネル高さHが確保されるようになっている。
【0004】
次に、図示した打設専用機60の構成について説明する。この打設専用機は本体に装備されたクローラ61で自走可能な2重管ボルトの削孔機で、その本体の前後にはガイドシェル64を支持する支持ポスト62、63が立設されている。この支持ポスト62、63は独立してその長さ(高さ)を変化させることができ、前後高さを変えることによりガイドシェル64の仰角(場合によっては俯角)を設定することができる。これによりトンネル切羽において先受け鋼管の打設角度を精度よく設定することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、トンネル地山安定のための補助工法の併用としてパイプルーフが施工されることがある(図6参照)。この種のパイプルーフ工法では、トンネル天端54から上半アーチ肩部にかけての地山の崩落防止を目的とするもので、直径約80cm程度の鋼管パイプ57がトンネル天端54から上半アーチの一部の外周縁に沿って所定の上げ越し量を確保して、ほぼ水平に打設される。掘削時には先行して打設されたパイプルーフ57をガイドとして支保工55を精度よく順次建て込むことができる。
【0006】
ところで、このパイプの終端以降において引き続いて長尺先受け工法を施工する際、すでに切羽奥部のトンネル天端近傍にパイプが埋設されているため、長尺の先受け鋼管を所定の仰角で打設しようとすると、鋼管の一部がパイプと干渉してしまうので、それを避けると管口元位置がトンネル断面内にきてしまう。このためパイプ終端部より奥部にかけて先受け鋼管を打設するにはトンネル切羽面から先受け鋼管を施工せざるを得ない。
【0007】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、トンネル切羽から所定仰角をなして先受け鋼管を打設するような場合にも以後のトンネル掘削に支障が生じないようにした長尺先受け工法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明はトンネル外形に沿ってトンネル天端を中心として周方向の所定範囲に配列されるように、前記トンネル外形から所定の上げ越し量を確保してトンネル延長方向にパイプルーフが先行打設され、該パイプルーフの奥部の地山に、複数本の単位管を連結してなる長尺の先受け鋼管を、前記トンネルのアーチ周方向に沿って所定間隔をあけてトンネル軸線から所定仰角をなして打設し、該先受け鋼管に形成された注入材吐出孔を介して前記先受け鋼管の周辺地山に注入を行って連続した改良体を形成し、該改良体により前記トンネル切羽の奥部の地山の先行補強を行うようにした長尺先受け工法において、前記トンネル外形に沿って配列された前記パイプルーフ間に合わせた所定仰角で1段目の先受け鋼管をトンネル切羽面から打設し、所定の切羽の進行の後、前記1段目の隣り合う先受け鋼管の中間位置に、各パイプルーフとの干渉を回避可能な打設仰角で2段目の先受け鋼管をトンネル切羽面から打設し、各先受け鋼管の単位管のうち、前記トンネル切羽表面の口元から前記トンネル断面内に残置される末端管に樹脂製管を用いるようにしたことを特徴とする。
【0009】
前記樹脂製管として、ガラス繊維補強ポリエステル樹脂管を用いることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の長尺先受け工法の一実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1にはトンネル1の天端2に施工されたパイプルーフ3の終端部3aから長尺先受け工法を開始し、先受け鋼管を施工した状態を示したトンネル縦断図である。同図に示したように、パイプルーフ終端部3aは切羽4の崩落を防止するためにある程度の長さにわたりトンネル切羽4の奥部まで延在している。また、このパイプルーフ3は図示したようにトンネル内空断面に対して支保工5の高さ分の上げ越し量を確保して水平に打設されている。したがって、パイプルーフ終端部3aから先の地山に長尺の先受け鋼管10を所定仰角で打設するのに必要な拡幅断面が確保できない。
【0011】
そこで、本発明では、パイプルーフ終端部3aから通常の長尺先受け工法が実施可能になるまでの範囲を、第1シフト、第2シフトのショートステップからなる2段階手順によって、先受け鋼管10の施工を行うこととした。このとき第1シフトではトンネル拡幅は行えず、第2シフトの削孔からはトンネル断面とパイプルーフ3との間に約600mm断面が拡幅される。そして最終的に第3シフトから通常の打設仰角を確保した先受け鋼管10の施工を行うようにした。
なお、第1シフトは、打設する先受け鋼管10とパイプルーフ3、支保工5との干渉を回避するためにさらに2段階に分けた施工とし、各段階において、所定の打設仰角を設定し、トンネル切羽面4から先受け鋼管10を施工するようにした。
【0012】
本実施の形態では、先受け鋼管10を打設する具体的な打設仰角をそれぞれ以下のように設定した。第1シフトでの打設仰角は2段階でそれぞれ異なる打設角度(θ11=9.0°、θ12=11.0°)とし、第2シフト(図示せず)での打設仰角は、第1シフトより小さな角度(θ2=8.3°)で施工している。さらに第3シフトからは通常の打設仰角(θ3=2.3°:図5参照)での打設を行うようにした。
【0013】
上述したように、本発明では第1シフトの先受け鋼管10は、打設仰角の関係上、トンネル切羽面4から所定の仰角で打設することになる。したがって、施工が完了した状態で口元側の末端管10C(図4参照)がトンネル内空断面内に残置されることになる。そこで、トンネル切羽面4から打設される末端管10Cの管体にはガラス繊維補強含浸樹脂(以下、単にFRP管と記す。)管を使用することとした。そして掘削時にこのトンネル内空を侵す位置に露出した末端管10Cを破砕ないし切断して掘削を進めるようにした。このFRP管は、管状に積層したガラス長繊維クロスにポリエステル樹脂によって含浸して型成形した公知の軽量管体である。その構成は、図4を参照して後述する。
【0014】
なお、これらの先受け鋼管10を打設するには、地山削孔と同時に先受け鋼管10を埋設可能な公知の2重管タイプの打設専用機60を使用している(図5と同様の構成のため同一符号を付す)。図1に示した打設専用機60は従来のものと同等の性能からなり、インナロッドとしての削孔ボルト(図示せず)及びアウタケーシングとしての先受け鋼管10とを連続装填可能なローディング機構をガイドシェル64上に備え、2重管削孔に伴って発生するくり粉は、アウタケーシング内に供給される循環水によって管後方へ搬送され、管口元付近に形成された排出孔から排出されるようになっている。なお、図示した専用機に限らず、ガイドシェルを所定の仰角にセットでき、2重管の削孔が可能な機種であれば、既存のロックボルトジャンボ等を搭載して用いることもできる。
【0015】
次に、パイプ終端部3aから奥部にかけて先受け鋼管10を施工するための施工手順について添付図を参照して説明する。
(1)第1シフト(1段目打設)(図1、図3(a)参照)
第1シフトの第1段目の先受け鋼管10の打設ピッチは、トンネル外形の周方向に沿って配列されたパイプルーフ3の打設ピッチ(トンネル周方向@900mm)とほぼ等しく設定されている(図3(a)参照)。またパイプルーフ終端部3aと長尺先受け鋼管10とがトンネルの側方から見て一部重なるように、トンネル切羽面4からパイプルーフ継手(図示せず)の谷部に向かって打設仰角θ11=9.0°で打設されている。さらにパイプルーフを施工した範囲の両端には左右4本ずつ先受け鋼管10が打設されている。このとき先受け鋼管10として図4に示した注入用鋼管およびFRP管からなる単位管が連結して使用されている。
【0016】
ここで、図4を参照して、先受け鋼管10の構成について説明する。
先受け鋼管10を構成する単位管をそれぞれ配置された位置により先端管10A、中間管10B、末端管10Cと呼んで以下説明する。先端管10Aには本実施の形態では、外径φ=114.3mm、肉厚t=6mmの一般構造用炭素鋼鋼管(STK400)が使用されている。管先端には削孔時のアウタケーシングとして削孔機能を発揮するためにシールドクラウン11が装着されている。管後端にはネジ式接合管(プロロング)12a(雄ネジ部)が溶接されている。中間管11Bの先端には先端管後端の接続管12aと螺合可能な接合管12b(雌ネジ部)が溶接されている。この先端管10Aと中間管10Bの管周全面には、所定間隔をあけて注入材吐出孔13が形成されている。さらに、末端管10Cとして上述したFRP管が用いられている。このFRP管先端にも同形状の接合管12bが取り付けられ、中間管後端の接合管12aと螺合するようになっている。FRP管端への接合管の取付は接着によっている。これらは削孔、打設に従って、打設専用機のガイドシェル先端位置で連結される。
【0017】
図1、図2に示したようにトンネル断面の一部を侵すように地山内に残置されたFRP製末端管10Cはトンネル切羽の進行に応じて切断機により破砕、切断させることができ、地山掘削時に管の取り外し、溶断等の必要がなくなる。また、このFRP末端管に代えて硬質塩化ビニル管や種々の樹脂製管を使用することができる。
【0018】
(2)第1シフト(2段目打設)(図2、図3(b)参照)
第1シフトの第2段目の先受け鋼管10の打設ピッチもパイプルーフ3の打設ピッチ(トンネル周方向@900mm)に設定され、打設されている(図3(b)中の太い破線)。なお、図3(b)には第1段目に打設された先受け鋼管10も細破線で示されている。同図に示したように、隣り合った第1段目の先受け鋼管10と、その間に打設された第2段目の先受け鋼管10とは、パイプルーフ3の打設ピッチの1/2ピッチ(450mm)の間隔で周方向に配置されることになる。すなわち、この第2段目の鋼管は、すでに打設された1段目の各先受け鋼管10の中間位置にくるように仰角θ12=11.0°をなしてトンネル切羽面から打設されている。本実施の形態では、この打設仰角θ12を確保するために、打設専用機の施工盤がS.L.-500mmに設定されているが、打設専用機60の支持ポスト62、63の伸縮により所定の打設仰角を設定できる場合には、盤下げを行う必要はない。また、1段目と同様にパイプルーフ3の下面あるいは建て込まれる支保工5と干渉する範囲に位置する末端管10CにはFRP管が用いられている。
【0019】
第1シフトの先受け鋼管10を打設したら、パイプルーフ3区間より先端の地山位置における地山補強のために1段目、2段目の両方の先受け鋼管10を利用して注入材の注入を行う。本実施の形態では、注入材として高浸透型ウレタンが使用されている。この注入により、先受け鋼管10を中心軸として直径が約φ1000mmの改良体15が地山内に造成される。
【0020】
(3)第2シフト(図示せず)
第1シフトで建て込まれた支保工5の影響を受けるため、先受け鋼管10の打設仰角θ2=8.3°とした。第2シフト以後の先受け鋼管10打設では、地山内に打設された鋼管10がトンネル内空断面を侵さないので、すべての単位管を鋼管とすることができる。また、第2シフトでは地山内で先受け鋼管10と、その内側に建て込まれる支保工5とのすき間が大きくなる。そこで、切羽面からすぐ奥の地山の崩落を抑止するために高浸透型ウレタンを用いてφ1000mmの改良体15を造成する。なお、第2シフトは、長尺先受け鋼管10と鋼製支保工との間に地山が大きく残るため、プレロードシェルは行わず、吹付けコンクリートで直ちに地山を保護することが好ましい。また、掘削時に鋼管下部の土塊が剥離して落下する場合はウレタン系フォアポーリングを行う。
【0021】
(4)第3シフト
第3シフト以後は設置されたパイプルーフ3の影響を受けないため、通常の打設仰角θ3=2.3°での打設となる。この打設状態は図5に示した従来の先受け鋼管10の場合と同等の角度をなすものである。
【0022】
なお、打設された先受け鋼管10を用いて行う注入作業は、従来のものと同様であり、対象地山に応じて高浸透型ウレタン、セメントミルク系注入材等を適宜選択して使用することが好ましい。
【0023】
【発明の効果】
以上に述べたように、トンネル切羽面から先受け鋼管を打設するような場合に、その末端管にFRP管等の樹脂成形管を使用したことにより、トンネル掘削断面中に先受け鋼管の一部が露出するような場合にも掘削を中断することなく進めることができ、効率のよいトンネル掘削を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による長尺先受け工法の一実施の形態を示したトンネル縦断面図(第1シフト第1段目)。
【図2】長尺先受け工法の一実施の形態を示したトンネル縦断面図(第1シフト第2段目)。
【図3】図1、図2に示したトンネルの切羽位置でのトンネル横断面図。
【図4】先受け鋼管の単位管の組立構成図。
【図5】従来の長尺先受け工法によるトンネル施工状態を示したトンネル縦断面図。
【図6】従来のパイプルーフ工法の一例を示したトンネル縦断面図。
【符号の説明】
1 トンネル
3 パイプルーフ
4 トンネル切羽面
5 支保工
10 先受け鋼管
10A 先端管
10B 中間管
10C 末端管
15 改良体

Claims (2)

  1. トンネル外形に沿ってトンネル天端を中心として周方向の所定範囲に配列されるように、前記トンネル外形から所定の上げ越し量を確保してトンネル延長方向にパイプルーフが先行打設され、該パイプルーフの奥部の地山に、複数本の単位管を連結してなる長尺の先受け鋼管を、前記トンネルのアーチ周方向に沿って所定間隔をあけてトンネル軸線から所定仰角をなして打設し、該先受け鋼管に形成された注入材吐出孔を介して前記先受け鋼管の周辺地山に注入を行って連続した改良体を形成し、該改良体により前記トンネル切羽の奥部の地山の先行補強を行うようにした長尺先受け工法において、
    前記トンネル外形に沿って配列された前記パイプルーフ間に合わせた所定仰角で1段目の先受け鋼管をトンネル切羽面から打設し、所定の切羽の進行の後、前記1段目の隣り合う先受け鋼管の中間位置に、各パイプルーフとの干渉を回避可能な打設仰角で2段目の先受け鋼管をトンネル切羽面から打設し、各先受け鋼管の単位管のうち、前記トンネル切羽表面の口元から前記トンネル断面内に残置される末端管に樹脂製管を用いるようにしたことを特徴とする長尺先受け工法。
  2. 前記樹脂製管は、ガラス繊維補強ポリエステル樹脂管であることを特徴とする請求項1記載の長尺先受け工法。
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