JP4298837B2 - 電動式ブレーキ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータを駆動源とするブレーキを備えた車両用の電動式ブレーキ装置に関するものであり、特に、そのモータを制御する技術の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両用のブレーキ装置の分野においては、モータを用いてブレーキを電気的に作動させる電動式ブレーキ装置が既に知られている。そして、特開平10−331876号公報には、次のような電動式ブレーキ装置が開示されている。それは、(a) ブレーキペダル等、運転者により操作されるブレーキ操作部材と、(b) ブレーキ操作部材の操作力,操作ストローク等、操作値を検出するブレーキ操作値センサと、(c) ブレーキと、(d) コントローラとを含むように構成されている。
【0003】
ブレーキは、電源から供給される電力により駆動されるモータの駆動力(駆動トルクを含む概念)により摩擦材を、車輪と共に回転する回転体に押し付け、それにより、その回転体に制動トルクを発生させ、その発生させられた制動トルクにより車輪を制動するように構成される。ブレーキはさらに、一連のブレーキ操作の開始前には摩擦材が回転体に接触しない状態にあり、その開始後に回転体に接触する状態に移行するように構成される。ブレーキには、ブレーキパッドを摩擦材、ディスクを回転体としてそれぞれ備えたディスク式と、ブレーキライニングを摩擦材、ドラムを回転体としてそれぞれ備えたドラム式とがある。
【0004】
コントローラは、ブレーキ操作部材の操作値とモータに供給される信号との間に予め定められた関係に従い、かつ、ブレーキ操作値センサにより検出されたブレーキ操作値に基づき、モータを制御するように構成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および発明の効果】
この種の電動式ブレーキ装置においては、一連のブレーキ操作の初期において、ブレーキ操作値の時間的な増加勾配がほぼ一定であっても、ブレーキの制動トルクに一時的な急変が発生してしまい、ブレーキ操作フィーリングが悪化するおそれがある。以下、その一例を具体的に説明する。
【0006】
この種の電動式ブレーキ装置においては、ブレーキ制御中、モータがフィードバック制御される場合がある。この場合、モータの駆動力の実際値である実駆動力と目標駆動力との差を監視しつつ、その差ができる限り早期に0になるように、モータに供給される信号が決定される。上記フィードバック制御の一例は、比例制御と微分制御と積分制御とを一緒に行うPID制御である。
【0007】
前述のように、ブレーキにおいては、一連のブレーキ操作の開始前にあっては、摩擦材が回転体から離間させられているため、それら摩擦材と回転体との間にクリアランス(以下、「ブレーキクリアランス」という)が存在する。そして、一連のブレーキ操作が開始されると、まず、モータの駆動によってブレーキクリアランスが減少させられる。ブレーキクリアランスが存在するうちは、モータの実駆動力は増加するがその増加量は少ない。モータが外部から受ける負荷が小さいからである。さらに、ブレーキクリアランスが存在するうちはもちろん、制動トルクは発生せず、車体減速度も発生しない。その後、ブレーキクリアランスが消滅させられると、モータが摩擦材から負荷を受けるため、モータの実駆動力が、ブレーキクリアランスの消滅前におけるより急な勾配で増加するとともに、制動トルクが発生し、車体減速度も発生する。
【0008】
このように、この電動式ブレーキ装置においては、モータが外部から受ける負荷が、ブレーキクリアランスが消滅する後より消滅する前の方が小さい。それにもかかわらず、モータのフィードバック制御を、ブレーキクリアランスが消滅する前と後とで同じ規則に従って実行すると、次のような事態が生じる。
【0009】
すなわち、ブレーキクリアランスが消滅する前においては、モータの負荷が小さいため、モータの実駆動力の増加勾配が不足し、そのため、実駆動力が目標駆動力をやや大きく下回る。その結果、フィードバック制御により、モータが比較的高速で作動させられ、摩擦材が回転体に強くかつ高速で衝突させられる。このようにして摩擦材が回転体に衝突させられてブレーキクリアランスが消滅した直後には、モータの実駆動力の増加勾配が過大になり、そのため、図7に示すように、時期t1 において制動トルクが急増し、車体減速度も急増する。その結果、実駆動力(同図において「実加圧力F」に対応する)は今度は、目標駆動力(同図において「目標加圧力F* 」に対応する)をやや大きく上回ることになり、そのため、フィードバック制御により、モータの実駆動力が急減させられ、その結果、同図に示すように、制動トルクが急増から急減に転じ、車体減速度も急増から急減に転じる。
【0010】
このように、一連のブレーキ操作の初期であって、摩擦材が回転体に接触しない状態から接触する状態に移行する際には、その移行に起因する変化すなわち制動トルクの急増および急減が生じる可能性があり、そのような制動トルクの変化はブレーキ操作フィーリングを悪化させる要因となる。そのような制動トルクの変化は、ブレーキ操作値の時間的変化に起因しない変化を車体減速度に生じさせることになるからである。
【0011】
このような事情を背景として、本発明は、一連のブレーキ操作の初期において、ブレーキ操作に起因しない車体減速度の変化が一時的に生じてブレーキ操作フィーリングが悪化することを抑制することを課題としてなされたものであり、本発明によって下記各態様が得られる。各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合せのいくつかの理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴やそれらの組合せが以下の態様に限定されると解釈されるべきではない。
【0012】
(1) 運転者により操作されるブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材の操作値を検出するブレーキ操作値センサと、
前記ブレーキ操作部材の一連のブレーキ操作の開始前には摩擦材が回転体に接触しない不接触状態にあり、前記一連のブレーキ操作の開始後に電力により駆動されるモータの駆動力により前記摩擦材が前記回転体に接触する接触状態に移行させられ、それにより、前記回転体に制動トルクを発生させ、その発生させた制動トルクにより車輪を制動するブレーキと、
前記ブレーキ操作部材の操作値と前記モータに供給される信号との間予め定められた関係に従い、かつ、前記ブレーキ操作値センサにより検出されたブレーキ操作値に基づき、モータを制御するコントローラと
を含む電動式ブレーキ装置において、
前記コントローラに、前記摩擦材の前記不接触状態から前記接触状態への移行に起因する前記制動トルクの変化が生じる可能性がある期間、前記モータを比較的低速で回転させ、その低速回転中のモータによって前記摩擦材を回転体に接触させ、前記可能性のある期間から前記可能性ない期間に移行するのに応じて、同じブレーキ操作値に対応する前記モータの駆動力と作動速度との少なくとも一方が増加するように前記ブレーキ操作値と前記モータに供給される信号との関係を変化させ、前記モータの回転速度を前記低速回転中より増大させる関係変化部を設けたことを特徴とする電動式ブレーキ装置〔請求項1〕。
この電動式ブレーキ装置においては、一連のブレーキ操作の開始に伴い、摩擦材が回転体に接触しない不接触状態から接触する接触状態に移行するが、同じブレーキ操作値に対応するモータの駆動力と作動速度との少なくとも一方が、その移行に起因する制動トルクの変化が生じる可能性がある期間においては小さくなり、その可能性のない期間においては大きくなるように、前記関係が変化させられる。
一方、ブレーキ操作値に対する制動トルクの応答性は、同じブレーキ操作値に対応するモータの駆動力と作動速度との少なくとも一方が小さい場合において大きい場合におけるより低下する。したがって、摩擦材の不接触状態から接触状態への移行に起因して制動トルクが変化する量が、同じブレーキ操作値に対応するモータの駆動力と作動速度との少なくとも一方が小さい場合において大きい場合におけるより少なくて済む。
したがって、この電動式ブレーキ装置によれば、摩擦材の不接触状態から接触状態への移行に起因する制動トルクの変化が生じることが抑制される。すなわち、ブレーキクリアランスの消滅に起因した車体減速度の変化が抑制されるのであり、その結果、一連のブレーキ操作の初期においてブレーキ操作フィーリングが悪化することが抑制される。
この電動式ブレーキ装置においては、ブレーキをドラム式としたり、ディスク式とすることができる。
(2) 前記関係変化部が、同じブレーキ操作値に対応する前記モータの駆動力と作動速度との少なくとも一方が増加するように前記ブレーキ操作値と前記モータに供給される信号との関係を変化させる時期を、前記摩擦材の摩耗量に追従して変化させる時期変化手段を含む(1) 項に記載の電動式ブレーキ装置〔請求項3〕。
摩擦材は使用につれて摩耗するのが一般的であり、また、摩擦材の摩耗量が多いほどブレーキクリアランスが大きくなる。また、摩擦材の不接触状態から接触状態への移行時期は、摩擦材の摩耗量によって変化し、具体的には、摩擦材の摩耗量が大きいほど遅くなる。また、その移行時期が遅くなれば、それに合わせて、同じブレーキ操作値に対応するモータの駆動力と作動速度との少なくとも一方が増加するように前記関係を変化させる時期を遅くすることが望ましい。
このような知見に基づいて本項に記載の電動式ブレーキ装置がなされたのであり、よって、この電動式ブレーキ装置によれば、前記関係を変化させる時期をブレーキクリアンスの実際値との関係において適正化し得る。
(3) 前記関係変化部が、前記モータの駆動力であるかまたはそれに関連する量であるモータ駆動力関連量と、そのモータ駆動力関連量の時間的変化勾配と、前記モータの作動位置であるかまたはそれに関連する量であるモータ作動位置関連量と、そのモータ作動位置関連量の時間的変化勾配との少なくとも一方に基づいて前記関係を変化させる関係変化手段を含む(1) または(2) 項に記載の電動式ブレーキ装置。
摩擦材が不接触状態から接触状態に移行する時期においては、モータの駆動力または作動位置がある値に増加しているのが普通であり、さらに、その移行の前後で、モータの駆動力または作動位置の変化勾配が大きく変化するのが普通である。一方、その移行時期は、同じブレーキ操作値に対応するモータの駆動力と作動速度との少なくとも一方が増加するように前記関係を変化させる時期を決定するために利用することが適当である物理量である。
このような知見に基づいて本項に記載の電動式ブレーキ装置がなされたのであり、よって、この電動式ブレーキ装置によれば、摩擦材の不接触状態から接触状態への移行時期を考慮することにより、前記関係を理想的な時期に変化させることが容易になる。
この電動式ブレーキ装置において「モータの駆動力に関連する量」は例えば、モータにより摩擦材が回転体に対して加圧される加圧力とすることができ、また、「モータの作動位置に関連する量」は例えば、モータにより駆動される部材(例えば、摩擦材)の作動位置とすることができる。
(4) 前記関係変化部が、前記モータの駆動力であるかまたはそれに関連する量であるモータ駆動力関連量と、そのモータ駆動力関連量の時間的変化勾配との少なくとも一方に基づいて前記ブレーキ操作値と前記モータに供給される信号との関係を変化させる関係変化手段を含む(1) または(2) 項に記載の電動式ブレーキ装置〔請求項4〕。
前記(3) 項に記載の説明から明らかなように、モータ駆動力またはそれの変化勾配は、摩擦材の不接触状態から接触状態への移行時期を取得するために利用することが適当である物理量である。また、ブレーキがディスク式である場合には一般に、モータ駆動力およびそれの変化勾配は、モータ作動位置またはそれの変化勾配とは異なり、ブレーキクリランスによって変化しない。一方、ブレーキがドラム式である場合には、摩擦材を回転体から離間させる向きに常時付勢するリターンスプリングが用いられるのが普通であるため、ディスク式である場合とは異なり、ブレーキクリアランスによって変化するが、モータ作動位置およびそれの変化勾配におけるほどには大きく変化しない。
このような知見に基づいて本項に記載の電動式ブレーキ装置がなされたのであり、よって、この電動式ブレーキ装置によれば、ブレーキクリアランスの変化に左右されることなく、摩擦材の不接触状態から接触状態への移行時期を正確に把握可能となるとともに、その移行時期との関係において前記関係の変化を容易に適正化し得る。
この電動式ブレーキ装置において「モータの駆動力に関連する量」は例えば、モータにより摩擦材が回転体に対して加圧される加圧力とすることができ、また、「モータの作動位置に関連する量」は例えば、モータにより駆動される部材(例えば、摩擦材)の作動位置とすることができる。
(5) 前記関係変化手段が、前記摩擦材が不接触状態から接触状態に移行したときの前記モータ駆動力関連量を参照値として取得するとともに、同じブレーキ操作値に対応する前記モータの駆動力と作動速度との少なくとも一方が増加するように前記関係を変化させる時期を、前記取得された参照値に基づいて決定する時期決定手段を含む(4) 項に記載の電動式ブレーキ装置。
この電動式ブレーキ装置において「関係を変化させる時期」は例えば、取得された参照値に一定値を加算することによって取得された基準関連量までモータ駆動力関連量が増加した時期に決定することができる。
(6) 前記時期決定手段が、前記モータ駆動力関連量の時間的変化勾配を逐次取得するとともに、今回取得した時間的変化勾配の、前回取得した時間的変化勾配からの変化量である勾配変化量が基準変化量に増加したときの前記モータ駆動力関連量を前記参照値に決定する参照値決定手段を含む(5) 項に記載の電動式ブレーキ装置。
(7) 前記参照値決定手段が、前記モータ駆動力関連量の増加中に前記勾配変化量が前記基準変化量に増加したときの前記モータ駆動力関連量を前記参照値に決定する第1決定手段を含む(6) 項に記載の電動式ブレーキ装置。
(8) 前記参照値決定手段が、前記モータ駆動力関連量の減少中に前記勾配変化量が前記基準変化量に増加したときの前記モータ駆動力関連量を前記参照値に決定する第2決定手段を含む(6) または(7) 項に記載の電動式ブレーキ装置。
(9) 前記関係変化部が、前記可能性のある期間から前記可能性のない期間に移行するのに応じて、前記ブレーキ操作値から前記モータの駆動力またはそれに関連する量の目標値を求めるためにそのブレーキ操作値に掛け算される制御ゲインを大きくする手段を含む(1) ないし(8) 項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置〔請求項2〕
(10)前記モータが、相対回転可能なロータおよびステータと、そのロータの回転軸線まわりに並んだ複数のコイルとを有するとともに、それら複数のコイルが正回転方向に順に励磁されれば、モータが前記摩擦材を前記回転体に接近させる向きの力が増加する一方、それら複数のコイルが逆回転方向に順に励磁されれば、モータが摩擦材を回転体から離間させる向きの力が増加するものであり、
前記コントローラが、ブレーキ操作値の増加中であって、前記可能性ない期間のうち前記可能性がある期間に先行する部分において、前記可能性ない期間において利用されるものとして予め定められた前記関係に従い、かつ、前記ブレーキ操作値センサにより検出されたブレーキ操作値に基づき、前記モータにそれの複数のコイルを正回転方向に順に励磁するための第1励磁信号を供給する第1励磁信号供給部を含み、
前記関係変化部が、前記可能性がある期間において、予め定められた時間の間、モータにそれの複数のコイルを逆回転方向に順に、予め定められた電力で励磁するための第2励磁信号を供給する第2励磁信号供給部を含む(1) 項に記載の電動式ブレーキ装置〔請求項5〕。
この電動式ブレーキ装置によれば、比較的低速で回転させられているモータにより摩擦材が回転体に接触させられるため、上記低速回転中ではないモータにより接触させられる場合に比較し、摩擦材が回転体に衝突する際の強さが軽減される。したがって、この電動式ブレーキ装置によれば、摩擦材の不接触状態から接触状態への移行に起因する制動トルクの変化が生じることが抑制され、その結果、一連のブレーキ操作の初期においてブレーキ操作フィーリングが悪化することが抑制される。
この電動式ブレーキ装置において「電力」は、電圧により表現したり、電流により表現することができる。また、この電動式ブレーキ装置において「ブレーキ」は、ドラム式としたり、ディスク式とすることができる。
(11)前記第2励磁信号供給部が、前記時間と前記電力との少なくとも一方を、前記ブレーキ操作値またはそれに関連する量と、前記モータの回転速度またはそれに関連する量との少なくとも一方に基づいて設定する設定手段を含む(10)項に記載の電動式ブレーキ装置〔請求項6〕。
摩擦材の不接触状態から接触状態への移行に起因する制動トルクの変化が生じる可能性がある期間においては、複数のコイルを逆回転方向に順に励磁することが、モータを逆転させるためにではなく、減速させるために行われることが望ましい。モータが逆転させられると、モータの実駆動力の増加勾配が不足するおそれがあるからである。一方、モータの減速量の過不足を防止するためには、前記時間と前記電力との少なくとも一方を、モータの回転速度またはブレーキ操作値すなわちモータの目標駆動力に応じて設定することが望ましい。
このような知見に基づいて本項に記載の電動式ブレーキ装置がなされたのであり、よって、この電動式ブレーキ装置によれば、モータの減速量をモータの回転速度または目標駆動力との関係において適正化し得る。
この電動式ブレーキ装置において「ブレーキ操作値に関連する量」は例えば、モータの駆動力の目標値としたり、モータにより摩擦材が回転体に対して加圧される加圧力の目標値としたり、モータの回転位置の目標値とすることができる。また、「モータの回転速度に関連する量」は例えば、モータにより駆動される部材(例えば、摩擦材)の作動速度とすることができる。
(12)前記設定手段が、前記時間と前記電力とのいずれかを、前記モータの回転速度が増加するにつれて増加するとともに、前記ブレーキ操作値が増加するにつれて増加するように変化させる手段を含む(11)項に記載の電動式ブレーキ装置。
モータの回転速度が大きいほど、摩擦材が回転体に強く衝突する傾向が強く、また、ブレーキ操作値が大きいほど、摩擦材が回転体に強く衝突する傾向が強い。一方、前記時間が長いほど、モータが大きく減速させられる傾向が強く、また、前記電力が大きいほど、モータが大きく減速させられる傾向が強い。
このような知見に基づいて本項に記載の電動式ブレーキ装置がなされたのであり、よって、この電動式ブレーキ装置によれば、前記時間または前記電力がモータ回転速度およびブレーキ操作値との関係において適正化され、モータの減速量も適正化される。
(13)前記第1励磁信号供給部が、前記第1励磁信号の供給を、一連のブレーキ操作の開始時に開始するものである(11)または(12)項に記載の電動式ブレーキ装置。
(14)前記第2励磁信号供給部が、前記第2励磁信号の供給を、前記モータの駆動力またはそれに関連する量であるモータ駆動力関連量と、そのモータ駆動力関連量の変化勾配との少なくとも一方に関して予め定められた条件が成立した時期に開始するものである(11)ないし(13)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
(15)前記第2励磁信号供給部が、前記第2励磁信号の供給を、前記ロータの回転速度またはそれに関連する量であるロータ回転速度関連量と、そのロータ回転速度関連量の変化勾配との少なくとも一方に関して予め定められた条件が成立した時期に開始するものである(11)ないし(13)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
(16)前記コントローラが、さらに、
(a) 前記ブレーキ操作部材の操作速度が基準値以上である急ブレーキ操作時に前記関係変化部が作動することを禁止する作動禁止部と、
(b) 急ブレーキ操作時に、その急ブレーキ操作時に利用されるものとして予め定められた前記関係に従い、かつ、前記ブレーキ操作値センサにより検出されたブレーキ操作値に基づき、前記モータを制御する急ブレーキ操作時制御部と
を含む(1) ないし(15)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置〔請求項7〕
摩擦材の不接触状態から接触状態への移行に起因する制動トルクの変化が生じる可能性がある期間においては、ブレーキ操作値に対する制動トルクの応答性が、前記関係変化部を作動させた場合において作動させない場合におけるより低下する。一方、急ブレーキ操作時において通常ブレーキ操作時におけるより、制動トルクの応答性を向上させる必要性が高い。
このような知見に基づいて本項に記載の電動式ブレーキ装置がなされたのであり、よって、この電動式ブレーキ装置によれば、急ブレーキ操作時に制動トルクの応答性を低下させることなく、通常ブレーキ操作時にブレーキ操作フィーリングの悪化が防止される。
この電動式ブレーキ装置において「ブレーキ」は、ドラム式としたり、ディスク式とすることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明の第1実施形態である電動式ブレーキ装置の全体構成が示されている。この電動式ブレーキ装置は、左右前輪FL,FRと左右後輪RL,RRとを備えた4輪車両に設けられている。左右前輪FL,FRにはDCモータを駆動源とするとともに流体圧を使用しない電動式ディスクブレーキが設けられている。一方、左右後輪RL,RRには、DCモータを駆動源とするとともに流体圧を使用しない電動式ドラムブレーキが設けられている。ただし、本実施形態を通して本発明を理解するために説明することが特に必要であるのは電動式ドラムブレーキであるため、同図には、左右後輪の一方に設けられた電動式ドラムブレーキ(以下、単に「ブレーキ」という)10のみが代表的に示されている。
【0015】
電動式ブレーキ装置は、ブレーキ10に加えて、ブレーキペダル12をブレーキ操作部材として備えるとともに、図示しない反力付与機構を備えている。ブレーキペダル12は、車両左右方向に延びる一軸線まわりに回動可能に車体に取り付けられている。反力付与機構は、ブレーキペダル12の操作ストロークに応じた反力をブレーキペダル12に発生させる。電動式ブレーキ装置はさらに、ブレーキ操作値センサ14を備えている。ブレーキ操作値センサ14は、ブレーキペダル12の操作力または操作ストロークをブレーキ操作値として検出する。ブレーキ操作値センサ14は、ブレーキペダル12の操作力を歪みゲージ等により検出する形式としたり、ブレーキペダル12の回動角をロータリポテンショメータにより検出する形式とすることができる。
【0016】
電動式ブレーキ装置はさらに、モータ駆動力センサ18を備えている。モータ駆動力センサ18については後に詳述する。
【0017】
電動式ブレーキ装置はさらに、電子制御ユニット(以下、「ECU」と略称する)20と、電源としてのバッテリ22とを備えている。ECU20は、CPU,ROMおよびRAMを含むコンピュータを主体として構成されている。ROMには、図4ないし図6にそれぞれにフローチャートで表されているブレーキ制御ルーチン,制御ゲイン決定ルーチンおよび参照値決定ルーチンを始めとして各種ルーチンが記憶されており、それらルーチンがCPUによりRAMを使用つつ実行されることにより、ブレーキ10が制御される。バッテリ22は、車両のエンジンの回転により充電させられる。
【0018】
図2には、ブレーキ10が拡大されて示されている。
【0019】
ブレーキ10は、図示しない車体に取り付けられた非回転部材としての、ほぼ円板状を成すバッキングプレート200と、内周面に摩擦面202を備えて車輪と共に回転するドラム204とを備えている。同図には、車両前進時に車輪が回転するのに伴ってドラム204が回転するドラム回転方向が矢印で示されている。
【0020】
バッキングプレート200の一直径方向に隔たった2箇所には、それぞれアンカ部材としてのアンカピン206と中継リンクとしてのアジャスタ208とが設けられている。アンカピン206はバッキングプレート200に位置固定に取り付けられている。一方、アジャスタ208はフローティング式とされている。それらアンカピン206とアジャスタ208との間には、各々円弧状を成す一対のブレーキシュー210a,210bがドラム204の内周面に対面するように取り付けられている。一対のブレーキシュー210a,210bは、シューホールドダウン装置212a,212bによってバッキングプレート200にそれの面に沿って移動可能に取り付けられている。なお、バッキングプレート200の中央に設けられた貫通穴には、図示しないアクスルシャフトが回転可能に突出して設けられるようになっている。
【0021】
一対のブレーキシュー210a,210bは、一端部同士がアジャスタ208により相互に接近は不能、隔離は可能に連結される一方、各他端部がアンカピン206と当接させられており、それにより、各端部の回りに回動可能に支持されている。一対のブレーキシュー210a,210bの一端部同士は、アジャスタスプリング214によりアジャスタ208を介して互いに接近する向きに付勢されている。一方、一対のブレーキシュー210a,210bの各他端部は各シューリターンスプリング215a,215bによりアンカピン206に向かって付勢されている。各ブレーキシュー210a,210bの外周面にブレーキライニング216a,216bが保持され、それら一対のブレーキライニング216a,216bがドラム204の内周面に接触させられることにより、それらブレーキライニング216a,216bとドラム204との間に摩擦力が発生する。アジャスタ208は、一対のブレーキライニング216a,216bとドラム204との隙間を一対のブレーキシュー210a,210bの摩耗に応じて自動的に調整する。
【0022】
各ブレーキシュー210a,210bはリム220とウェブ222とから構成されており、一対のブレーキシュー210a,210bの一方のウェブ222には、レバー230がドラム204の回転軸線と交差する方向に回動可能に取り付けられている。ウェブ222にレバー支持部材としてのピン232が位置固定に取り付けられ、そのピン232にレバー230の一端部が回動可能に連結されているのである。このレバー230と他方のブレーキシュー210bとの互いに対向する部分の切欠きには、力伝達部材としてのストラット236の両端が係合させられている。このストラット236はその長さをねじ機構により調節するアジャスト機能を備えている。
【0023】
以上の説明から明らかなように、ブレーキ10は、車体の前進時にも後退時にも、いずれのブレーキシュー210a,210bにもセルフサーボ効果が発生するデュオサーボ型なのである。
【0024】
レバー230の他端部(自由端部)にはケーブル240の一端部が連結されている。このケーブル240は、複数本のワイヤをより合わせて構成されており、フレキシブルである。このケーブル240は、バッキングプレート200に取り付けられたシュー拡張アクチュエータ250により駆動される。シュー拡張アクチュエータ250は、図3に拡大して示すように、DCモータ(以下、単に「モータ」という)251の回転軸に減速機252の入力軸が連結され、その減速機252の出力軸に運動変換機構としてのボールねじ機構254の入力部材が連結されて構成されており、そのボールねじ機構254の出力部材にケーブル240の他端部が連結されている。ボールねじ機構254は、モータ251の回転運動を直線運動に変換する機構である。図において符号256および258は共にブラケットを示し、また、符号260および262は共に、各ブラケット256,258をバッキングプレート200へ取り付けるための取付けボルトを示している。
【0025】
ボールねじ機構254は、入力部材としてのおねじ264に出力部材としてのナット266が図示しない複数個のボールを介して螺合されて構成されている。ナット266は固定部材としてのハウジング267に回転不能かつ軸方向移動可能に嵌合されている。それにより、おねじ264の回転運動がナット266の直線運動に変換される。ナット266の両端部のうちおねじ264の側とは反対側の端部に出力シャフト268が同軸に取り付けられている。それらおねじ264,ナット266および出力シャフト268の相互の摺動部へのダストの侵入が、ハウジング267および伸縮可能なダストブーツ270により阻止されている。
【0026】
出力シャフト268とケーブル240の他端部との結合は次のような構成により行われる。すなわち、出力シャフト268の両端部のうちボールねじ機構254の側とは反対側の端部にケーブル取付け用おねじ272が形成される一方、ケーブル240の他端部にケーブル取付け用ナット274が結合されている。そのケーブル取付け用ナット274がケーブル取付け用おねじ272に螺合され、そのケーブル取付け用おねじ272に回り止め用ナット276が螺合されるとともに、その回り止め用ナット276がケーブル取付け用ナット274に押し付けられることにより、ケーブル取付け用ナット274の緩みが防止されている。
【0027】
以上のように構成されたシュー拡張アクチュエータ250は、ブレーキペダル12の操作時にケーブル240に引張力を付与し、それにより、レバー230がそれの他端部がブレーキシュー210bから離隔される向きに回動させられ、その結果、ストラット236により一対のブレーキシュー210a,210bが拡張される。
【0028】
ブレーキ10は、一対のブレーキシュー210a,210bをそれに発生するセルフサーボ効果に打ち勝って収縮させるのに効果的なシュー収縮機構を備えている。シュー収縮機構は、本実施形態においては、図2に示すように、レバー230とバッキングプレート200との間に張り渡されたリターンスプリング280とされている。このリターンスプリング280は、ケーブル240と同軸に張り渡されるとともに、一端部がレバー230の他端部に、他端部がシュー拡張アクチュエータ250のうちの固定部分(例えば、ハウジング,ブラケット等)にそれぞれ係合させられている。したがって、ブレーキペダル12の操作の解除時に、シュー拡張アクチュエータ250が初期位置に向かって戻されれば、レバー230はリターンスプリング280の圧縮力によって初期位置に向かって回動させられる。
【0029】
前記モータ駆動力センサ18は、レバー230に装着されている。モータ駆動力センサ18は、歪みゲージ方式であり、レバー230に生じた歪みを検出するとともに、その検出した歪みに基づいてそのレバー230にモータ251が加えたモータ駆動力Dを検出する。
【0030】
なお、モータ駆動力センサ18は、他の方式でモータ駆動力Dを検出するものとすることが可能である。例えば、モータ251に供給された電流を検出するモータ電流センサをそのモータ251に設け、かつ、モータ251に供給された電流と、そのモータ251がレバー230に加えたモータ駆動力Dとの間に成立する一定の関係を利用することにより、モータ電流センサにより検出された電流からモータ駆動力Dを検出することが可能なのである。
【0031】
以上説明したブレーキ10のモータ251はECU20のコンピュータにより制御される。以下、この制御を説明するが、まず、概略的に説明し、次に、図4ないし図6のフローチャートを参照しつつ具体的に説明する。
【0032】
ECU20は、ブレーキ操作値Aに基づき、ブレーキ10により発生させる車体減速度の目標値である目標減速度G* を決定する。
【0033】
ECU20はさらに、モータ251がレバー230を介してブレーキライニング216a,216bをドラム204に加圧する加圧力の目標値である目標加圧力F* を決定する。すなわち、ECU20は、その目標加圧力F* を、決定された目標減速度G* に制御ゲインk(係数)を掛け算することにより、決定するのであり、具体的には、
* =k×G*
なる式を用いて決定する。
【0034】
なお、目標減速度G* は、ブレーキ操作値Aに対応する値であることから、モータ251にとって入力を意味し、一方、目標加圧力F* は、モータ251にとって出力を意味する。そして、それら入力と出力との比率を表すのが制御ゲインkである。すなわち、本実施形態においては、制御ゲインkが「関係」を構成しているのである。
【0035】
ECU20は、一連のブレーキ操作の初期において制御ゲインkを、小値bから大値aに変化させる。以下、このようにする理由を具体的に説明する。
【0036】
図7には、一連のブレーキ操作の初期において制御ゲインkを変化させない場合に、ブレーキ操作値Aが滑らかに増加するために目標加圧力F* も滑らかに増加するにもかかわらず実加圧力Fおよび制動トルクTに一時的急変が生じる様子が2つのグラフで示されている。それらグラフにおいて「t0 」は、一連のブレーキ操作が開始された時期を表している。また、「t1 」は、ブレーキライニング216a,216bとドラム204との間のブレーキクリアランスが消滅し、ブレーキライニング216a,216bがドラム204に接触し始めた時期を表している。また、「t2 」は、ブレーキ操作値Aの時間的変化に起因しない変化が実加圧力Fおよび制動トルクTにそれぞれ発生する可能性がある領域から、その可能性がない領域に移行する時期を表している。
【0037】
このような事実に基づき、ECU20は、図8にグラフで示すように、ブレーキクリアランスの消滅に起因した変化が制動トルクTに発生する可能性がある領域(時期t0 〜t2 )では、小値bと等しくなり、その可能性がない領域(時期t2 以後)では、大値aとなるように変化させられる。その可能性がある領域は、一連のブレーキ操作の開始時から開始されるとともに、時期t2 に終了する。
【0038】
ECU20は、時期t2 を、モータ251がレバー230に加える駆動力の実際値である実駆動力Dが、その時期t2 に取るべき基準値である基準駆動力D00に到達したか否かを判定することによって決定する。基準駆動力D00は、時期t1 における実駆動力Dの値である参照値D0 に一定増分ΔDを加算することによって演算される。参照値D0 は、後に詳述する参照値決定ルーチンにより決定される。
【0039】
ECU20は、さらに、モータ251がレバー230に加える駆動力の目標値である目標駆動力D* を決定する。ところで、レバー230には、モータ251からの駆動力に他に、リターンスプリング280の弾性力がブレーキライニング216a,216bをドラム204から離間させる向きに常時付与されている。このことが図9の(a) にグラフで示されている。このグラフは、実駆動力Dがリターンスプリング280の弾性力f0 に到達するまでは、ブレーキクリアランスが存在するために、実加圧力Fが0に維持され、弾性力f0 に到達したときに、ブレーキクリアランスが消滅し、以後、実加圧力Fが増加することを示している。ECU20は、このことを考慮して目標駆動力D* を、
* =F* /α+f0
なる式を用いて決定する。ここに「α」は定数である。
【0040】
ブレーキライニング216a,216bは、その使用により摩耗が生じる。摩耗が生じると、ブレーキクリアランスが増加する。このことは、非作用位置にあるブレーキライニング216a,216bがドラム204に接触するまでにレバー230が回動する角度が増加することを意味し、さらに、リターンスプリング280の引張長さが長くなってそれの弾性力f0 が増加することを意味する。図9の(b) には、摩耗発生前の弾性力がf0 、摩耗発生後の弾性力がf0 ’でそれぞれ示されており、摩耗発生後において発生前におけるより弾性力が増加することが分かる。
【0041】
このような事情を考慮し、ECU20は、参照値D0 を可変値として決定する。具体的には、図8の(c) にグラフで示すように、ブレーキライニング216a,216bがドラム204に接触する前と後とでは、実駆動力Dの変化勾配mが大きく異なるという事実に着目することにより、実駆動力Dの変化勾配mを逐次取得するとともに、今回取得した変化勾配m(i) の、前回取得した変化勾配m(i-1) からの変化量Δm(i) が基準値Δm0 を超えたか否かを判定し、超えたときの実駆動力Dを参照値D0 に決定する。
【0042】
ただし、ECU20は、急ブレーキ操作中である場合には、制御ゲインkを大値aに維持する。制御ゲインkを小値bにすることは、ブレーキ操作値Aに対する制動トルクTの応答性が低下し、車体減速度Gの応答性も低下することを意味する。一方、運転者が急ブレーキ操作を行う際には、制動トルクTの応答性が高いことが制動距離短縮の観点から望ましい。よって、急ブレーキ操作中である場合には、制御ゲインkが大値aに維持され、これにより、本来のブレーキの機能が損なわれることがないようにされている。すなわち、本実施形態においては、大値aは、急ブレーキ操作時に利用されるものとして予め定められた「関係」でもあるのである。
【0043】
ECU20は、さらにまた、モータ251に供給すべき制御電圧(これが「信号」の一例である)を決定する。モータ制御電圧は、フィードバック制御方式の一例であるPID制御方式により決定される。そのため、ECU20は、モータ駆動力センサ18により実駆動力Dを検出し、その検出された実駆動力Dと、上記決定された目標駆動力D* との差に基づき、モータ制御電圧を決定する。
【0044】
次に、ブレーキ制御ルーチンを図4に基づいて具体的に説明する。
【0045】
本ルーチンは、車両の走行開始指令スイッチとしてのイグニションスイッチがOFFからONに操作された後、繰返し実行される。各回の実行時には、まず、ステップS1(以下、単に「S1」で表す。他のステップについても同じ)において、所定のイニシャル処理が行われる。このイニシャル処理は、モータ251を制御するために必要な初期値をROMからRAMに転送する処理を含んでいる。次に、S2において、所定時間が経過するのが待たれる。本ルーチンが一定の周期(例えば、5ms)で実行されるようにするためである。所定時間が経過したならば、S2の判定がYESとなり、S3において、入力処理が行われる。この入力処理は、ブレーキ操作値センサ14からブレーキ操作値Aを入力する処理と、モータ駆動力センサ18から実駆動力Dを入力する処理とを含んでいる。その後、S4において、目標加圧力F* が演算される。
【0046】
このS4の詳細が目標加圧力演算ルーチンとして図10にフローチャートで表されている。
【0047】
本ルーチンにおいては、まず、S11において、前記入力されたブレーキ操作値Aに基づいて目標減速度G* が決定される。ECU20のコンピュータのROMには、ブレーキ操作値Aが変化するにつれて目標減速度G* が変化する関係がテーブル,マップ等の形態で記憶されており、その関係に従い、今回のブレーキ操作値Aに対応する今回の目標減速度G* が決定される。その関係は例えば、ブレーキ操作値Aが増加するにつれてリニアに目標減速度G* が増加するように設定される。
【0048】
その後、S12において、RAMに記憶されている制御ゲインkが読み込まれる。制御ゲインkは、後述の制御ゲイン決定ルーチンにより決定されて記憶される。
【0049】
続いて、S13において、目標駆動力D* が、その読み込まれた制御ゲインkと、前記決定された目標減速度G* との積として決定される。
【0050】
以上でS4の実行が終了し、続いて、図4のS5において、モータ制御電圧が演算される。このS5の詳細が図11にモータ制御電圧演算ルーチンとしてフローチャートで表されている。
【0051】
本ルーチンにおいては、まず、S21において、前記定数αと弾性力f0 とが前記コンピュータのROMから読み込まれるとともに、それら定数αおよび弾性力f0 と、前記演算された目標加圧力F* とを、前述の、目標駆動力D* を算出する式に代入することにより、目標駆動力D* が演算される。次に、S22において、その演算された目標駆動力D* と、前記入力された実駆動力Dとの差に基づき、PID制御方式により、モータ制御電圧が演算される。
【0052】
以上でS5の実行が終了し、続いて、図4のS6において、出力処理が行われる。この出力処理は、上記演算されたモータ制御電圧をモータ251に出力する処理を含んでいる。以上でこのブレーキ制御ルーチンの一回の実行が終了する。
【0053】
次に、制御ゲイン決定ルーチンを図5に基づいて具体的に説明する。
【0054】
本ルーチンも、イグニションスイッチがOFFからONに操作された後、繰返し実行される。各回の実行時には、まず、S31において、ブレーキ操作値センサ14からブレーキ操作値Aが入力される。次に、S32において、現在、急ブレーキ操作中であるか否かが判定される。具体的には、ブレーキ操作値Aの今回値A(i) の前回値A(i-1) からの変化量ΔAが正のしきい値ΔA0 より大きいか否かが判定され、大きい場合には急ブレーキ操作中であると判定され、大きくない場合には急ブレーキ操作中ではなく、通常ブレーキ操作中であると判定される。今回は、急ブレーキ操作中であると仮定すれば、判定がYESとなり、S33ないしS35がスキップされ、S37において、制御ゲインkが大値aに設定されるとともに、それがRAMに記憶される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0055】
これに対して、今回は、急ブレーキ操作中ではないと仮定すれば、S32の判定がNOとなり、S33以下に移行する。S33においては、モータ駆動力センサ18から実駆動力Dが入力され、その後、S34において、RAMから参照値D0 が読み込まれる。参照値D0 は、後に詳述する参照値決定ルーチンの実行により決定されてRAMに記憶される。続いて、S35において、上記入力された実駆動力Dが、参照値D0 と一定増分ΔDとの和である基準駆動力D00より大きいか否かが判定される。ブレーキクリアランスの消滅に起因した変化が制動トルクTに生じる可能性がないか否かが判定されるのである。今回は、一連のブレーキ操作の開始直後であるため、実駆動力Dが基準駆動力D00より大きくはないと仮定すれば、判定がNOとなり、S36において、制御ゲインkが小値bに設定されるとともに、それがRAMに記憶される。今回は、ブレーキクリアランスの消滅前であるため、制御ゲインkが小値bに設定され、それにより、制動トルクTがブレーキ操作値Aに対して鈍感に変化するようにされる。その後、S33に戻る。
【0056】
その後、S33ないしS36の実行が繰り返されるうちに、実駆動力Dが基準駆動力D00より大きくなったと仮定すれば、S35の判定がYESとなり、S37において、制御ゲインkが大値aに設定されるとともに、それがRAMに記憶される。ブレーキクリアランスの消滅に起因した変化が制動トルクT に生じる可能性がない状態に移行したため、制御ゲインkが増加させられるのであり、このことは、制御ゲインkが正規値に復帰させられることとして把握することが可能である。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0057】
次に、参照値決定ルーチンを図6に基づいて具体的に説明する。
【0058】
本ルーチンもイグニションスイッチがOFFからONに操作された後、繰返し実行される。各回の実行時には、まず、S51において、ブレーキ操作値Aの増加中であるか否かが判定される。本ルーチンは、ブレーキ操作値Aの増加中である場合に限り、実駆動力Dの変化勾配に基づいて参照値D0 を決定するように設計されているからである。ブレーキ操作値Aの増加中であるか否かは、ブレーキ操作値Aの今回値A(i) から前回値A(i-1) を引き算した値ΔAを考慮することにより判定され、その値ΔAが正であれば、増加中であると判定され、正でなければ、増加中ではないと判定される。今回は、ブレーキ操作値Aの増加中ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちに本ルーチンの一回の実行が終了するが、今回は、ブレーキ操作値Aの増加中であると仮定すれば、判定がYESとなり、S52以下に移行する。
【0059】
S52においては、所定時間が経過するのが待たれる。本ルーチンが一定の周期Δt(例えば、5ms)で実行されるようにするためである。所定時間が経過したならば、S52の判定がYESとなり、S53において、モータ駆動力センサ18から実駆動力Dが入力されるとともに、それが今回値D(i) とされる。その後、S54において、実駆動力Dの変化勾配mが演算されるとともに、それが今回値m(i) とされる。変化勾配の今回値m(i) は、実駆動力Dの今回値D(i) と、RAMから読み出された前回値D(i-1) との差に基づき、かつ、
(i) =(D(i) −D(i-1) )/Δt
なる式を用いて演算される。
【0060】
なお、前回値D(i-1) は、後述のS56によりRAMに記憶されることになるが、そのS56の初回の実行前においては、前記イニシャル処理によりROMからRAMに転送された初期値、すなわち、0が使用される。このことは、前回値m(i-1) についても同様である。
【0061】
続いて、S55において、変化勾配mの今回値m(i) の、RAMから読み出された前回値D(i-1) からの変化量Δmの絶対値が基準値Δm0 より大きいか否かが判定される。実駆動力Dの変化勾配mが大きく変化したか否かが判定されるのである。今回は、変化量Δmの絶対値が基準値Δm0 より大きくはないと仮定すれば、判定がNOとなり、S56において、今回値D(i) が前回値D(i-1) としてRAMに記憶される。続いて、S57において、今回値m(i) が前回値m(i-1) としてRAMに記憶される。その後、S52に戻る。
【0062】
その後、S52ないしS57の実行が繰り返されるうちに、変化量Δmの絶対値が基準値Δm0 より大きくなれば、S55の判定がYESとなり、S58において、最新の参照値D0 が前回値D(i-1) に決定される。続いて、S59において、RAMに記憶されている参照値D0 が、その最新の参照値D0 と等しくなるように更新される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0063】
図12には、本実施形態の効果が3つのグラフで示されている。それらグラフから明らかなように、本実施形態によれば、一連のブレーキ操作の初期において、ブレーキクリアランスの消滅に起因した一時的急変が実加圧力Fに発生せずに済み、その結果、制動トルクTにもそのような一時的急変が発生せずに済む。それにより、ブレーキ操作フィーリングがブレーキクリアランスの消滅に起因して悪化することが抑制される。
【0064】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ECU20が「コントローラ」を構成し、ECU20のうち図5の制御ゲイン決定ルーチンを実行する部分が「関係変化部」を構成し、ECU20のうち図5のS34を実行する部分と、図6の参照値決定ルーチンを実行する部分とが互いに共同して「時期変化手段」を構成しているのである。また、ECU20のうち図5のS33ないしS37を実行する部分がモータ駆動力センサ18と共同して「関係変化手段」を構成し、ECU20のうち図5のS31およびS32を実行する部分がブレーキ操作値センサ14と共同して「作動禁止部」を構成し、同図のS37を実行する部分が「急ブレーキ操作時制御部」を構成しているのである。
【0065】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と、参照値決定ルーチンのみが異なり、他の要素については共通であるため、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0066】
第1実施形態においては、実駆動力Dの増加中に参照値D0 が決定されるが、本実施形態においては、実駆動力Dの減少中に参照値D0 が、第1実施形態におけると同じ原理により、決定される。
【0067】
ブレーキペダル12の操作が終了し、その結果、ブレーキ操作値Aが0に減少すると、図8の(c) のグラフを用いて説明すれば、ブレーキライニング216a,216bが時期t3 において、ドラム204に接触する状態から接触しない状態に移行する。図8の(c) のグラフには、時期t3 より手前の期間においては、ブレーキライニング216a,216bがドラム204に接触している状態にあるため、実駆動力Dが大きな勾配で減少するのに対して、時期t3 より後の期間においては、ブレーキライニング216a,216bがドラム204に接触しない状態にあるため、実駆動力Dが小さい勾配で減少する。そして、時期t3 が、ブレーキライニング216a,216bがドラム204から離間し始めた時期であり、ブレーキクアリンランスが発生し始めた時期でもある。このように、時期t3 の前後では、時期t1 の前後におけると同様に、実駆動力Dの変化勾配mが大きく異なっている。このような事実に着目することにより、本実施形態においては、実駆動力Dの減少中に参照値D0 が決定される。
【0068】
図13には、本実施形態である電動式ブレーキ装置のECUのコンピュータにより実行される参照値決定ルーチンがフローチャートで表されている。本ルーチンは、図6のルーチンと同様に、イグニションスイッチがOFFからONに操作された後、繰返し実行される。各回の実行時には、まず、S81において、一連のブレーキ操作が終了したか否かが判定される。一連のブレーキ操作の終了は、ブレーキ操作値Aが0でない値から0に減少したこととして検出したり、ブレーキ操作を検出しないときにはOFF、検出したときにはONに変化するブレーキスイッチの信号がOFFからONに変化したこととして検出することができる。今回は、一連のブレーキ操作が終了してはいないと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちに本ルーチンの一回の実行が終了する。これに対して、今回は、一連のブレーキ操作が終了したと仮定すれば、判定がYESとなり、S82以下が実行される。なお、S82以下のステップは、図6におけるS53以下のステップと同様であるため、説明を省略する。
【0069】
本実施形態においては、各回の一連のブレーキ操作の末期において参照値D0 が決定される。したがって、各回の一連のブレーキ操作において参照値D0 が決定されるのを待っていたのでは、同じ回の一連のブレーキ操作の初期において制御ゲインkを変化させるタイミングを決定することができない。一方、本実施形態においては、制御ゲインkを変化させるタイミングは、RAMから最新の参照値D0 を読み出してその値を利用することによって決定される。したがって、本実施形態においては、今回の一連のブレーキ操作の初期において制御ゲインkが変化させられるタイミングが、前回の一連のブレーキ操作の末期において決定された最新の参照値D0 を用いて決定されることになる。
【0070】
一連のブレーキ操作の初期であって、実駆動力Dが0から増加させられる期間においては、その増加勾配が、各回のブレーキ操作ごとに異なる傾向が強いのに対して、一連のブレーキ操作が終了した後においては、実駆動力Dの減少勾配が、各回のブレーキ操作ごとに異なる傾向が弱い。一連のブレーキ操作の終了後には、ブレーキペダル12を非操作位置に付勢する図示しないリターンスプリングの弾性力によってブレーキペダル12が非操作位置に復帰させられ、そのため、実駆動力Dの減少勾配が依存するブレーキ操作値Aの減少勾配が運転者に依存しないからである。したがって、ブレーキクリアランスが回復し始める時期は、ブレーキクリアランスが消滅した時期より高い精度で検出可能であり、よって、本実施形態によれば、参照値D0 を、第1実施形態におけるより高い精度で決定可能である。
【0071】
なお付言すれば、本実施形態においては、一連のブレーキ操作の末期においてのみ参照値D0 が決定され、また、第1実施形態においては、一連のブレーキ操作の初期においてのみ参照値D0 が決定されるが、同じ回の一連のブレーキ操作の初期と末期との双方において参照値D0 をそれぞれ暫定値として決定し、それら2個の暫定値を総合的に考慮した値、例えば、それらの平均値を最終値として決定することが可能である。
【0072】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
【0073】
図14には、第3実施形態である電動式ブレーキ装置の全体構成が示されている。この電動式ブレーキ装置は、第1実施形態と同様に、左右前輪FL,FRと左右後輪RL,RRとを備えた4輪車両に設けられている。左右前輪FL,FRにはDCモータを駆動源とするとともに流体圧を使用しない電動式ディスクブレーキが設けられている。一方、左右後輪RL,RRには、DCモータを駆動源とするとともに流体圧を使用しない電動式ドラムブレーキが設けられている。ただし、本実施形態を通して本発明を理解するために説明することが特に必要であるのは電動式ディスクブレーキであるため、同図には、左右前輪の一方に設けられた電動式ディスクブレーキ(以下、単に「ブレーキ」という)300のみが代表的に示されている。
【0074】
電動式ブレーキ装置は、第1実施形態と同様に、ブレーキ300に加えて、ブレーキペダル12と、図示しない反力付与機構と、ブレーキ操作値センサ14とを備えている。さらに、電動式ブレーキ装置は、モータ駆動力センサ304とモータ回転速度センサ306とを備えているが、それらについては後に詳述する。
【0075】
電動式ブレーキ装置はさらに、電子制御ユニット(以下、「ECU」と略称する)308と、電源としてのバッテリ310とを備えている。ECU308は、CPU,ROMおよびRAMを含むコンピュータを主体として構成されている。ROMには、図17にフローチャートで表されているブレーキ制御ルーチンを始めとして各種ルーチンが記憶されており、それらルーチンがCPUによりRAMを使用つつ実行されることにより、ブレーキ300が制御される。バッテリ310は、車両のエンジンの回転により充電させられる。
【0076】
図15には、ブレーキ300が拡大されて示されている。
【0077】
このブレーキ300は、DCモータ(以下、単に「モータ」という)312を駆動源として備えている。モータ312は、ステータ314とロータ316とが同軸に相対回転可能に配置されて構成されている。ステータ314は、ロータ316の周方向に並んだ複数のコイル318がコア320に巻き付けられて構成されている。これに対して、ロータ316は、周方向においてN極とS極とに交互に着磁された永久磁石322をステータ314に対向する位置に備えている。
【0078】
このブレーキ300は、さらに、(a) 車輪と共に回転するディスク(回転体)330と、(b) そのディスク330の両側においてディスク330を挟むように配置された一対のブレーキパッド(摩擦材)332a,332bと、(c) ディスク330を跨いでそれら一対のブレーキパッド332a,332bを保持するキャリパ334とを備えている。キャリパ334は図示しない固定部材に、ディスク330に対してそれの軸線方向に摺動可能に取り付けられる。このキャリパ334には、一方のブレーキパッド332aに背後から係合するリアクション部336と、他方のブレーキパッド332bに背後から係合する押圧ロッド340(加圧部材)を、それの軸線方向に移動可能に支持する押圧部342とが形成されている。その押圧部342にモータ312が内蔵されている。
【0079】
このブレーキ300においては、モータ312の回転力が、回転運動を直線運動に変換する運動変換機構の一例であるローラねじ機構350を経て押圧ロッド340に伝達される。ローラねじ機構350は、国際公開明細書WO96/03301に開示されたローラねじ機構や、特開平10−159931号公報に記載されたローラねじ機構と類似するため、簡単に説明する。
【0080】
ローラねじ機構350は、ロータ316と一体的に回転するナット352と、そのナット352の内側に同軸に配置されたねじシャフト354とを備えている。本実施形態においては、ナット352がキー355によりロータ316と結合されている。また、ナット352は押圧部342により、複数個のベアリング356,358を介して回転可能に支持されている。ローラねじ機構350は、さらに、それらナット352とねじシャフト354との間においてそれらとかみ合わされる複数本のねじローラ360を備えている。それら複数本のねじローラ360は図示しないリテーナ(ケージ)に保持され、それにより、それらねじローラ360はねじシャフト354に対して、それと平行な姿勢で、かつ、周方向において互いに等間隔な位置において回転可能とされている。ナット352のねじ面には、それと同軸に延びる溝(図示しない)が形成されている。ナット352とねじシャフト354とが相対回転すれば、ねじローラ360がナット352内を公転し、それに伴って、ねじローラ360が軸線方向に移動する。ねじローラ360がナット352内を公転して上記溝に嵌入すれば、ねじローラ360がナット352とねじシャフト354との双方から離脱する。離脱したねじローラ360は、ナット352に固定の戻し部材(図示しない)によって元の軸方向位置に戻され、再びナット352とねじシャフト354との間に入り込んで公転を開始する。ねじシャフト354は押圧ロッド340と一体に形成されている。その結果、ナット352の回転運動がねじシャフト354および押圧ロッド340の直線運動に変換される。
【0081】
前記モータ駆動力センサ304は、押圧ロッド340の先端部に装着されている。モータ駆動力センサ304は、押圧ロッド340がブレーキパッド332bを押圧する力を実駆動力Dとして検出する。ブレーキ300においては、第1実施形態におけるブレーキ10とは異なり、レバー230に相当する押圧ロッド340をディスク330から離間させる向きに常時付勢するリターンスプリングが設けられてはいない。よって、モータ駆動力センサ304により検出される実駆動力Dは、モータ312によりブレーキパッド332aがディスク330に加圧される実加圧力と実質的に一致する。
【0082】
前記モータ回転速度センサ306は、ロータ316の回転位置を検出するセンサとして構成されている。具体的には、モータ回転速度センサ306は、図16に示すように、複数個の永久磁石386と、少なくとも1個の磁気検出素子としての複数個のホール素子388とを備えている。本実施形態においては、複数個の永久磁石386がロータ316にそれと同軸な一円周に沿って等間隔で取り付けられ、一方、複数個のホール素子388が、キャリパ334に、複数個の永久磁石386に少ない隙間を隔てて対向する位置において取り付けられている。
【0083】
以上説明したブレーキ300のモータ312はECU308のコンピュータにより制御される。以下、この制御を説明するが、まず、概略的に説明し、次に、図17のフローチャートを参照しつつ具体的に説明する。
【0084】
ECU308は、第1実施形態と同様にして、ブレーキ操作値Aに応じて目標減速度G* を決定し、さらに、その決定した目標減速度G* と制御ゲインkとの積として目標加圧力F* を決定する。ただし、第1実施形態とは異なり、制御ゲインkは常に一定とされる。したがって、本実施形態においては、目標加圧力F* がブレーキ操作値Aに相当する物理量であるということができる。
【0085】
ECU308は、さらに、目標駆動力D* を、
* =F* /β
なる式を用いて決定する。ここに「β」は定数である。
【0086】
ブレーキ300は、第1実施形態におけるブレーキ10とは異なり、レバー230に相当する押圧ロッド340をディスク330から離間する向きに常時付勢するリターンスプリングを備えていない。そのため、何ら対策を講じないと、ブレーキ操作が解除された後であってもブレーキパッド322a,322bがディスク330に接触し続ける現象、いわゆるブレーキの引きずりが生じるおそれがある。そこで、本実施形態においては、モータ312を制御するモードとしてモータ逆転モードが設定されるとともに、ブレーキ操作が解除された場合には、モータ逆転モードに移行してモータ312が逆転させられ、それにより、押圧ロッド340が初期位置に復帰させられてブレーキクリアランスが回復させられる。
【0087】
本実施形態においては、一連のブレーキ操作中、制御ゲインkが変化させられない。そのため、何ら対策を講じないと、一連のブレーキ操作の初期に、ブレーキパッド322a,322bがディスク330に強く衝突し、その結果、ブレーキ操作値Aの時間的変化に起因しない一時的急変がブレーキ300の制動トルクTに生ずるおそれがある。ブレーキパッド322a,322bとディスク330との間のブレーキクリアランスの消滅に起因した変化がブレーキ300の制動トルクTに生じるおそれがあるのである。
【0088】
そこで、本実施形態においては、ブレーキ操作の解除前であっても、そのような一時的急変が生じる可能性がある期間においては、モータ逆転モードに移行させられ、それにより、ブレーキパッド322a,322bがディスク330に衝突することを緩和する衝突緩和制御が行われる。
【0089】
本実施形態においては、ブレーキ操作値Aの時間的変化に起因しない変化が制動トルクTに生じる可能性が、一連のブレーキ操作の開始時τ0 から発生するのではなく、実駆動力Dの増加勾配が一連のブレーキ操作中に最初に、基準値を超えた時期τ1 から発生するとともに、その時期τ1 から一定時間が経過した時期τ2 に消滅すると考えられている。ここに、時期τ1 は、ブレーキクリアランスが消滅した時期と一致する。
【0090】
したがって、ブレーキ操作値Aの時間的変化に起因しない制動トルクTの変化を防止するためのモータ逆転モードへの移行は、一連のブレーキ操作が開始されてから少しの時間が経過した後に行われ、よって、その移行前には、モータ312が正転させられてブレーキパッド322a,322bがディスク330に接近する過程にある。このような状態でモータ逆転モードへ移行するため、モータ312が直ぐに逆転に転じてしまうことはないが、モータ逆転モードの実行時にモータ312に供給されるモータ制御電圧Eが高すぎる場合や、モータ逆転モードの連続実行時間、すなわち、衝突緩和制御時間Δτが長すぎる場合には、モータ312が逆転に転じてしまう。モータ312が逆転に転じてしまうと、ブレーキパッド322a,322bがディスク330に接近することが阻害されてしまう。
【0091】
そこで、本実施形態においては、モータ制御電圧Eの高さと衝突緩和制御時間Δτとの少なくとも一方が、目標加圧力F* とモータ回転速度Nとの少なくとも一方に基づいて設定される。
【0092】
図20には、モータ制御電圧Eと、モータ回転速度Nと、衝突緩和制御時間Δτと、目標加圧力F* との関係の一例がグラフで示され、一方、図21には、別の例がグラフで示されている。図20に示す関係に従えば、モータ制御電圧Eの高さが、モータ回転速度Nおよび目標加圧力F* とは無関係に一定とされる一方、衝突緩和制御時間Δτが、モータ回転速度Nが増加するにつれて増加するとともに、目標加圧力F* が増加するにつれて増加するように決定される。一方、図21に示す関係に従えば、衝撃緩和制御時間Δτの長さが、モータ回転速度Nおよび目標加圧力F* とは無関係に一定とされる一方、モータ制御電圧Eが、モータ回転速度Nが増加するにつれて増加するとともに、目標加圧力F* が増加するにつれて増加するように決定される。
【0093】
次に、ブレーキ制御ルーチンを図17のフローチャートを参照しつつ具体的に説明する。ただし、本ルーチンは図4のブレーキ制御ルーチンと共通するステップが多いため、共通するステップについては簡単に説明し、異なるステップについてのみ詳細に説明する。
【0094】
本ルーチンは、図4のルーチンと同様に、イグニションスイッチがOFFからONに操作された後、繰返し実行される。各回の実行時には、まず、S101において、前記S1と同様に、イニシャル処理が行われる。次に、S102において、前記S2と同様に、所定時間が経過するのが待たれる。所定時間が経過したならば、S103において、入力処理が行われる。この入力処理は、ブレーキ操作値センサ14からブレーキ操作値Aを入力する処理と、モータ駆動力センサ304から実駆動力Dを入力する処理と、モータ回転速度センサ306からモータ回転速度Nを入力する処理とを含んでいる。
【0095】
その後、S104において、目標加圧力F* が演算される。具体的には、まず、ブレーキ操作値Aに応じて目標減速度G* が、第1実施形態と同様にして決定され、次に、目標加圧力F* が、その決定された目標減速度G* と固定値である制御ゲインkの積として決定される。続いて、S105において、モータ制御電圧Eが演算される。
【0096】
このS105の詳細がモータ制御電圧演算ルーチンとして図18にフローチャートで表されている。
【0097】
本ルーチンにおいては、まず、S121において、衝突緩和制御の実行中であるか否かが判定される。具体的には、RAMに設けられたフラグであって、OFFで衝突緩和制御中ではないことを示し、ONで衝突緩和制御中であることを示す衝突緩和制御中フラグがONであるか否かが判定される。今回は、一連のブレーキ操作の開始直後であると仮定すれば、衝突緩和制御が実行されてはいないため、判定がNOとなり、S122に移行する。
【0098】
S122においては、実加圧力Fの今回値F(i) と前回値(i-1) との差が基準値より大きいか否かを判定することにより、実加圧力Fの立ち上がりエッジが発生したか否かが判定される。実加圧力Fは、モータ駆動力センサ304により検出された実駆動力Dで代用される。このS122は、ブレーキパッド322a,322bがディスク330に接触した直後であるか否かを判定するステップであると考えることができる。今回は、一連のブレーキ操作の開始直後であるため、実加圧力Fの立ち上がりエッジが発生してはいないと仮定すれば、判定がNOとなり、S123に移行する。
【0099】
このS123の詳細が基本制御ルーチンとして図19にフローチャートで表されている。
【0100】
本ルーチンにおいては、まず、S141において、ブレーキ操作が解除されたか否かが判定される。例えば、ブレーキペダル12が非操作位置にあればOFF、操作位置にあればONに信号が変化するストップスイッチ(図示しない)からの信号がONからOFFに変化した直後であるか否かが判定され、そうであれば、ブレーキ操作が解除されたと判定される。今回は、ブレーキ操作が解除されてはいないと仮定すれば、判定がNOとなり、S142において、目標駆動力D* が、目標加圧力F* に基づいて前述のようにして演算される。その後、S143において、その演算された目標駆動力D* と、前記入力された実駆動力Dとの差に基づき、PID制御方式により、モータ制御電圧Eが演算される。このとき、モータ制御電圧Eは、目標駆動力D* と実駆動力Dとの差と、モータ制御電圧Eとの間の関係であって、ブレーキパッド322a,322bがディスク330に接触することに起因する変化が制動トルクTに生じる可能性がない期間において利用されるものとして予め定められた関係に従って演算される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0101】
これに対して、今回は、ブレーキ操作が解除された直後であると仮定すれば、S141の判定がYESとなり、S144において、モータ制御モードとしてモータ逆転モードが設定され、その後、S145において、モータ逆転モードのためのモータ制御電圧Eが設定される。モータ制御電圧Eは、押圧ロッド340が適当な速度で初期位置に復帰するのに適当な高さに設定される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0102】
このS143の実行が終了すると、図18のルーチンの一回の実行が終了する。その後、図17のS106において、出力処理が行われる。この出力処理は、モータ逆転モードが設定されていない場合には、モータ312に第1モータ電圧信号が、前記演算されたモータ制御電圧Eの下、複数のコイル318がロータ316の正回転方向または逆回転方向に順に励磁されるように出力される。実駆動力Dを増加させることが必要である場合には、複数のコイル318をロータ316の正回転方向に順に励磁するための第1モータ電圧信号がモータ312に出力され、これに対して、実駆動力Dを減少させることが必要である場合には、複数のコイル318をロータ316の逆回転方向に順に励磁するための第1モータ電圧信号がモータ312に出力される。
【0103】
これに対して、モータ逆転モードが設定されている場合には、モータ312に第2モータ電圧信号が、前記演算されたモータ制御電圧Eの下、複数のコイル318がロータ316の逆回転方向に順に励磁されるように出力される。以上でこのブレーキ制御ルーチンの一回の実行が終了する。
【0104】
本実施形態においては、第1モータ電圧信号が、複数のコイル318をロータ316の正回転方向に順に励磁するための信号と、複数のコイル318をロータ316の逆回転方向に順に励磁するための信号とから構成されているが、先の信号のみが「第1励磁信号」に相当する。
【0105】
また、本実施形態においては、第2モータ電圧信号が、ブレーキ操作の解除を原因として出力される場合と、ブレーキクリアランスの消滅に起因した変化が制動トルクTに生じる可能性があることを原因として出力される場合とがある。前者の場合には、モータ312が逆転させられて押圧ロッド340がディスク330に対して後退させられるのに対して、後者の場合には、モータ312が正転状態のまま減速させられる。よって、後者の場合に出力される第2モータ電圧信号のみが、「第2励磁信号」に相当する。
【0106】
その後、このブレーキ制御ルーチンが何回か実行され、その結果、図18のS121ないしS123の実行が何回か繰り返され、そのうちに、実加圧力Fの立ち上がりエッジが発生したと仮定すると、S122の判定がYESとなり、S124以下に移行する。
【0107】
S124においては、衝突緩和制御中フラグがONにされ、その後、S125において、モータ制御モードとしてモータ逆転モードが設定される。続いて、S126において、モータ制御電圧Eが設定され、S127において、衝突緩和制御時間Δτが設定される。それらモータ制御電圧Eおよび衝突緩和制御時間Δτは、図20または図21に示す関係に従い、前記演算された目標加圧力F* と、前記入力されたモータ回転速度Nとに基づいて設定される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0108】
その後、図17のS106において、出力処理が実行されれば、今回はモータ逆転モードが設定されているため、モータ312に第2モータ電圧信号(これが「第2励磁信号」の一例である)が、前記演算されたモータ制御電圧Eの下、複数のコイル318がロータ316の逆回転方向に順に励磁されるように出力される。今回の場合には、その第2モータ電圧信号の出力に先立ち、ロータ316が正転させられている。したがって、ロータ316はその慣性により、正転し続けようとする。よって、ロータ316は、ブレーキ操作の解除時とは異なり、正転から逆転に転じることはなく、正転の回転速度が減少するのみであり、その結果、ブレーキパッド322a,322bがディスク330に適当に小さな速度で衝突することとなる。したがって、本実施形態によれば、ブレーキクリアランスの消滅に起因した変化が制動トルクTに生ずることが抑制され、一連のブレーキ操作の初期においてブレーキ操作フィーリングが悪化することが抑制される。
【0109】
その後、再度、ブレーキ制御ルーチンが実行され、それのS105において、図18のモータ制御電圧演算ルーチンが実行されると、S121において、衝突緩和制御の実行中であるか否かが判定される。今回は、衝突緩和制御中フラグがONにされているため、判定がYESとなり、S128において、前記設定された衝突緩和制御時間Δτが経過したか否かが判定される。今回は経過してはいないと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちに本ルーチンの一回の実行が終了するが、今回は経過したと仮定すれば、判定がYESとなり、S129において、衝突緩和制御中フラグがOFFにされる。
【0110】
したがって、その後、図17のS106が実行されれば、今回は、衝突緩和制御中フラグがOFFにされており、このことは、モータ逆転モードの設定が解除されたことを意味するため、モータ312への第2モータ電圧信号の出力が停止させられる。
【0111】
その後、図18のモータ制御電圧演算ルーチンが実行されれば、S121の判定はNO、S122の判定もNOとなり、S123において、図19の基本制御ルーチンが実行される。モータ312が、一連のブレーキ操作の開始直後と同じ状態で制御されることになるのである。
【0112】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ECU300が「コントローラ」を構成し、ECU300のうち図18のS123を実行する部分がモータ駆動力センサ304と共同して「第1励磁信号供給部」を構成し、同図のS121,S122,S124ないしS129を実行する部分がモータ回転速度センサ306と共同して「第2励磁信号供給部」を構成しているのである。
【0113】
以上、本発明のいくつかの実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および発明の効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を加えた形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である電動式ブレーキ装置の全体構成を示す系統図である。
【図2】図1における電動式ドラムブレーキを示す正面図である。
【図3】図2におけるシュー拡張アクチュエータを拡大して示す正面図である。
【図4】図1のECUのコンピュータにより実行されるブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】上記コンピュータにより実行される制御ゲイン決定ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】上記コンピュータにより実行される参照値決定ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】一連のブレーキ操作の初期において制御ゲインを変化させない場合にブレーキ操作フィーリングが悪化する様子の一例を示すグラフである。
【図8】図5の制御ゲイン決定ルーチンにより、一連のブレーキ操作の初期において制御ゲインkが時間と共に変化させられる様子を示すグラフである。
【図9】図2の電動式ドラムブレーキにおける実駆動力Dと実加圧力Fとの関係を説明するためのグラフである。
【図10】図4のS4の詳細を目標加圧力演算ルーチンとして示すフローチャートである。
【図11】図4のS5の詳細をモータ制御電圧演算ルーチンとして示すフローチャートである。
【図12】上記第1実施形態の効果を説明するためのグラフである。
【図13】本発明の第2実施形態である電動式ブレーキ装置のECUのコンピュータにより実行される参照値決定ルーチンを示すフローチャートである。
【図14】本発明の第3実施形態である電動式ブレーキ装置の全体構成を示す系統図である。
【図15】図14における電動式ディスクブレーキを示す部分断面正面図である。
【図16】図14におけるモータ回転速度センサを拡大して示す正面図である。
【図17】図14のECUのコンピュータにより実行されるブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図18】図17のS105の詳細をモータ制御電圧演算ルーチンとして示すフローチャートである。
【図19】図18のS123の詳細を基本制御ルーチンとして示すフローチャートである。
【図20】図18のモータ制御電圧演算ルーチンが使用するモータ回転速度と目標加圧力とモータ制御電圧と衝突緩和制御時間との関係の一例を示すグラフである。
【図21】図18のモータ制御電圧演算ルーチンが使用するモータ回転速度と目標加圧力とモータ制御電圧と衝突緩和制御時間との関係の別の例を示すグラフである。
【符号の説明】
10 電動式ドラムブレーキ
12 ブレーキペダル
14 ブレーキ操作値センサ
18,304 モータ駆動力センサ
20,308 電子制御ユニットECU
204 ドラム
216a,216b ブレーキライニング
251,312 DCモータ
300 電動式ディスクブレーキ
306 モータ回転速度センサ
314 ステータ
316 ロータ
318 コイル
330 ディスク
332a,332b ブレーキパッド

Claims (7)

  1. 運転者により操作されるブレーキ操作部材と、
    そのブレーキ操作部材の操作値を検出するブレーキ操作値センサと、
    前記ブレーキ操作部材の一連のブレーキ操作の開始前には摩擦材が回転体に接触しない不接触状態にあり、前記一連のブレーキ操作の開始後に電力により駆動されるモータの駆動力により前記摩擦材が前記回転体に接触する接触状態に移行させられ、それにより、前記回転体に制動トルクを発生させ、その発生させた制動トルクにより車輪を制動するブレーキと、
    前記ブレーキ操作部材の操作値と前記モータに供給される信号との間予め定められた関係に従い、かつ、前記ブレーキ操作値センサにより検出されたブレーキ操作値に基づき、モータを制御するコントローラと
    を含む電動式ブレーキ装置において、
    前記コントローラに、前記摩擦材の前記不接触状態から前記接触状態への移行に起因する前記制動トルクの変化が生じる可能性のある期間、前記モータを比較的低速で回転させ、その低速回転中のモータによって前記摩擦材を回転体に接触させ、前記可能性のある期間から前記可能性ない期間に移行するのに応じて、同じブレーキ操作値に対応する前記モータの駆動力と作動速度との少なくとも一方が増加するように前記ブレーキ操作値と前記モータに供給される信号との関係を変化させ、前記モータの回転速度を前記低速回転中より増大させる関係変化部を設けたことを特徴とする電動式ブレーキ装置。
  2. 前記関係変化部が、前記可能性のある期間から前記可能性のない期間に移行するのに応じて、前記ブレーキ操作値から前記モータの駆動力またはそれに関連する量の目標値を求めるためにそのブレーキ操作値に掛け算される制御ゲインを大きくする手段を含む請求項1に記載の電動式ブレーキ装置。
  3. 前記関係変化部が、同じブレーキ操作値に対応する前記モータの駆動力と作動速度との少なくとも一方が増加するように前記ブレーキ操作値と前記モータに供給される信号との関係を変化させる時期を、前記摩擦材の摩耗量に追従して変化させる時期変化手段を含む請求項1または2に記載の電動式ブレーキ装置。
  4. 前記関係変化部が、前記モータの駆動力であるかまたはそれに関連する量であるモータ駆動力関連量と、そのモータ駆動力関連量の時間的変化勾配との少なくとも一方に基づいて前記ブレーキ操作値と前記モータに供給される信号との関係を変化させる関係変化手段を含む請求項1ないし3のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
  5. 前記モータが、相対回転可能なロータおよびステータと、そのロータの回転軸線まわりに並んだ複数のコイルとを有するとともに、それら複数のコイルが正回転方向に順に励磁されれば、モータが前記摩擦材を前記回転体に接近させる向きの力が増加する一方、それら複数のコイルが逆回転方向に順に励磁されれば、モータが摩擦材を回転体から離間させる向きの力が増加するものであり、
    前記コントローラが、ブレーキ操作値の増加中であって、前記可能性ない期間のうち前記可能性がある期間に先行する部分において、前記可能性ない期間において利用されるものとして予め定められた前記関係に従い、かつ、前記ブレーキ操作値センサにより検出されたブレーキ操作値に基づき、前記モータにそれの複数のコイルを正回転方向に順に励磁するための第1励磁信号を供給する第1励磁信号供給部を含み、
    前記関係変化部が、前記可能性がある期間において、予め定められた時間の間、モータにそれの複数のコイルを逆回転方向に順に、予め定められた電力で励磁するための第2励磁信号を供給し、前記第1励磁信号のみが供給される状態に比較して前記モータの平均回転速度を低下させる第2励磁信号供給部を含む請求項1または2に記載の電動式ブレーキ装置。
  6. 前記第2励磁信号供給部が、前記時間と前記電力との少なくとも一方を、前記ブレーキ操作値またはそれに関連する量と、前記モータの回転速度またはそれに関連する量との少なくとも一方に基づいて設定する設定手段を含む請求項5に記載の電動式ブレーキ装置。
  7. 前記コントローラが、さらに、
    (a) 前記ブレーキ操作部材の操作速度が基準値以上である急ブレーキ操作時に前記関係変化部が作動することを禁止する作動禁止部と、
    (b) 前記急ブレーキ操作時に、その急ブレーキ操作時に利用されるものとして予め定められた前記関係に従い、かつ、前記ブレーキ操作値センサにより検出されたブレーキ操作値に基づき、前記モータを制御する急ブレーキ操作時制御部と
    を含む請求項1ないしのいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
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