JP3740800B2 - 電動式ブレーキ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータを駆動源とするブレーキを備えた車両用の電動式ブレーキ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記電動式ブレーキ装置は、一般に、(a) ブレーキペダル等、運転者により操作されるブレーキ操作部材と、(b) バッテリ等、電源と、(c) その電源から供給される電力により駆動されるモータの駆動力により摩擦材を車輪と共に回転する回転体に押し付けることにより、車輪を制動するブレーキと、(d) ブレーキ操作時に、電源からモータに電力を供給するとともに、そのときの供給電力値をブレーキ操作部材の操作値に基づいて決定することにより、ブレーキを制御するコントローラとを含むように構成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段,作用および効果】
ブレーキにおいては一般に、ブレーキパッド,ブレーキライニング等、摩擦材の摩擦係数が、劣化,摩耗等によって経時的に変動する場合や、熱や水分によって変動する場合があり、さらに、製造ばらつきによって製品間で異なる場合もある。また、上記電動式ブレーキ装置においては、ブレーキ摩擦材の摩擦係数が変化すれば、それに応じて、電源からモータに供給される電力の実際値とブレーキが車輪に付与する制動トルクの実際値との関係が変化する。したがって、この電動式ブレーキ装置においては、モータへの供給電力値とブレーキの制動トルク値との関係が常に一定であるとは限らない。
【0004】
しかしながら、従来の電動式ブレーキ装置においては、モータへの供給電力値とブレーキの制動トルク値との実際の関係が取得されて利用されるようになってはいなかった。そのため、従来の電動式ブレーキ装置においては、その関係が常に一定であると仮定し、ブレーキ操作部材の操作値に基づき、予め定められた唯一の関係に従ってモータへの供給電力値を決定せざるを得なかった。よって、従来の電動式ブレーキ装置には、ブレーキをブレーキ操作値との関係において十分に高い精度で制御することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであり、その課題は、モータへの供給電力値とブレーキの制動トルク値との実際の関係を取得して利用可能な電動式ブレーキ装置を提供することにある。
【0006】
この課題は下記態様の電動式ブレーキ装置によって解決される。なお、以下の説明において、本発明の各態様を、それぞれに項番号を付して請求項と同じ形式で記載する。各項に記載の特徴を組み合わせて採用することの可能性を明示するためである。また、 (1) 項〜 (3) 項および (6) 項を合わせたものが、特許請求の範囲の請求項1に相当し、請求項1に (4) 項の技術的特徴を付加したものが請求項2に、請求項1または2に (5) 項の技術的特徴を付加したものが請求項3に、請求項1〜3のいずれかに (7) 項の技術的特徴を付加したものが請求項4に、請求項1〜4のいずれかに (8) 項の技術的特徴を付加したものが請求項5に、それぞれ相当する。さらに、請求項5に (9) 項の技術的特徴を付加したものが請求項6に、請求項5または6に (10) 項の技術的特徴を付加したものが請求項7に、請求項5〜7のいずれかに (11) 項の技術的特徴を付加したものが請求項8に、請求項5〜8のいずれかに (12) 項の技術的特徴を付加したものが請求項9に、それぞれ相当する。さらにまた、請求項1〜9のいずれかに (20) 項の技術的特徴を付加したものが請求項10に、請求項1〜9のいずれかに (22) 項の技術的特徴を付加したものが請求項11に相当する。また、請求項5または6に (25) 項の技術的特徴を付加したものが請求項12に、請求項12に (26) 項の技術的特徴を付加したものが請求項13に相当し、請求項1〜13のいずれかに (30) 項の技術的特徴を付加したものが請求項14に、請求項14に (31) 項の技術的特徴を付加したものが請求項15に、請求項14または15に (36) 項の技術的特徴を付加したものが請求項16に、それぞれ相当する。
【0007】
(1) 運転者により操作されるブレーキ操作部材と、
電源と、
その電源から供給される電力により駆動されるモータの駆動力により摩擦材を車輪と共に回転する回転体に押し付けることにより、車輪を制動するブレーキと、
ブレーキ操作時に、前記電源から前記モータに電力を供給するとともに、そのときの供給電力値を前記ブレーキ操作部材の操作値に基づいて決定することにより、ブレーキを制御するコントローラと
を含む電動式ブレーキ装置において、
車両走行中であって前記ブレーキの作動中に、前記電源から前記モータに供給される電力の実際値とブレーキが前記車輪に付与する制動トルクの実際値である実制動トルク値とを取得し、それら2つの取得値に基づいて供給電力値と制動トルク値との関係を推定するとともに、その推定された関係を利用する関係推定・利用手段を設けたことを特徴とする電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置によれば、モータへの供給電力値とブレーキの制動トルク値との実際の関係を車両走行中に推定し得るとともに、その推定された関係を種々の用途に利用し得る。その種々の用途に例えば、後述のブレーキ制御や、運転者への情報提供がある。
このブレーキ装置において「電力値」は、電圧値により表現したり、電流値により表現することができる。また、「モータ」は、超音波モータとしたり、DCモータとすることができる。また、「操作値」は、ブレーキ操作部材の操作力と定義したり、ブレーキ操作部材の操作ストロークと定義することができる。また、このブレーキ装置において「走行中であってブレーキの作動中」なる文言中の「作動」には、ブレーキ操作に基づく本来の作動のみならず、非ブレーキ操作時の、関係推定のための自動的作動も含まれる。
(2)前記供給電力値と制動トルク値との関係が、前記摩擦材の摩擦係数に関連付けられたものである(1) 項に記載の電動式ブレーキ装置。
(3) 前記関係が、前記供給電力値が変化するにつれて前記制動トルク値が変化するパターンで定義されるものであり、前記関係推定・利用手段が、前記パターンが取り得る複数種類の候補パターンの中から、前記2つの取得値が対応するものを該当パターンとして選択することにより、前記関係を推定するパターン型関係推定手段を含む(1) または(2) 項に記載の電動式ブレーキ装置。
(4) 前記パターン型関係推定手段が、(a) 前記複数種類の候補パターンを記憶する候補パターン記憶手段と、(b) 記憶された複数種類の候補パターンの中から前記該当パターンを選択する該当パターン選択手段とを含む(3) 項に記載の電動式ブレーキ装置。
(5) 前記関係推定・利用手段が、前記関係を複数のレベルで段階的に推定する段階的関係推定手段を含む(1) ないし(4) 項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置によれば、関係を連続的に推定する場合に比較して関係の推定にかかる負担を軽減し得る。
(6)前記関係推定・利用手段が、ブレーキ操作時に、前記摩擦材の摩擦係数の変動に伴う前記制動トルクの変動を補償すべく、前記供給電力値を前記推定された関係に従って決定することにおいて、前記推定された関係を利用するものである(1) ないし(5)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
(7) 前記関係推定・利用手段が、前記コントローラに設けられ、ブレーキ操作時に、前記操作値に基づいて目標制動トルク値を決定するとともに、前記供給電力値を、決定された目標制動トルク値に基づき、前記推定された関係に従って決定することにおいて、前記推定された関係を利用する関係利用手段を含む(1) ないし(6) 項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置によれば、ブレーキ操作時にモータへの供給電力値が、モータへの供給電力値と制動トルク値との実際の関係を考慮して決定されるため、ブレーキ摩擦材の摩擦係数の変動にもかかわらず、ブレーキをブレーキ操作値との関係において精度よく制御可能となる。
(8) 前記関係推定・利用手段が、車両走行中の非ブレーキ操作時に、前記電源から前記モータに電力を設定電力値で設定時間供給することによって前記ブレーキを作動させ、その間に前記実制動トルク値を取得する非ブレーキ操作時取得手段を含む(1) ないし(7) 項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置によれば、ブレーキが本来の作動を行わせられない時に関係推定を目的として作動を行わせられ、その作動の結果に基づいて関係が推定されるため、関係推定を精度よく行い得る。
また、車両の一連の走行においては一般に、最初の実質的なブレーキ操作に先立って最初の非ブレーキ操作が存在するため、このブレーキ装置によれば、最初の実質的なブレーキ操作に先立ってモータへの供給電流値と制動トルク値との実際の関係を推定可能となる。したがって、推定された関係をブレーキ制御に利用する形態の電動式ブレーキ装置においては、最初の実質的なブレーキ操作の当初から、実際の関係を利用してブレーキを制御可能となる。
このブレーキ装置において「非ブレーキ操作時取得手段」は、非ブレーキ操作時における取得値に基づく関係の推定を、同じ非ブレーキ操作時に行ったり、その非ブレーキ操作に後続するブレーキ操作時に行うことができる。
(9) 前記非ブレーキ操作時取得手段が、(a) ブレーキ操作を検出するブレーキ操作センサと、(b) 車両の走行を検出する車両走行センサとを含み、ブレーキ操作の非検出時かつ車両走行の検出時に前記ブレーキを作動させるものである(8) 項に記載の電動式ブレーキ装置。
(10)車両が、前記車輪を左右にそれぞれ備えたものであり、前記非ブレーキ操作時取得手段が、それら左右輪について同時に前記ブレーキを作動させる手段を含む(8) または(9) 項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置によれば、非ブレーキ操作時にブレーキが左右輪について同時に作動させられるため、それら左右輪についてのブレーキ作動の強さを互いに等しくすれば、非ブレーキ操作時にブレーキの作動によって車体にそれを変向させるモーメントが発生せずに済み、運転者に違和感を与えることなく関係を推定し得る。
(11)車両が、前記車輪を前後にそれぞれ備えたものであり、前記非ブレーキ操作時取得手段が、それら前後輪について互いに異なる時期に前記ブレーキを作動させる手段を含む(8) ないし(10)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置によれば、非ブレーキ操作時にブレーキを前後輪について同時に作動させる場合に比較して、そのブレーキの作動によって各時期に車体に発生する減速度が低くて済み、運転者に違和感を与えることなく関係を推定し得る。また、非ブレーキ操作時にブレーキの作動が車体に各時期に生じさせる減速度が低下することから、運転者に違和感を与えることなく、関係の推定精度向上のために非ブレーキ操作時におけるブレーキ作動の強さを増加させ得る。
(12)前記非ブレーキ操作時取得手段が、車両の一連の走行が開始された後の最初の非ブレーキ操作時に限り、前記ブレーキを作動させて前記実制動トルク値を取得する最初非ブレーキ操作時取得手段を含む(8) ないし(11)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
(13)車両が、それの走行を開始する際に運転者により操作される走行開始操作部材を含み、前記最初非ブレーキ操作時取得手段が、その走行開始操作部材が操作されたときに前記一連の走行が開始されたと判定する手段を含む(12)項に記載の電動式ブレーキ装置。
(14)前記関係推定・利用手段が、車両の一連の走行が開始された後、最初に前記関係が推定されるまでの間、前記推定されるべき関係として、メモリに予め記憶された標準的な関係を暫定的に使用する標準的関係暫定的使用手段を含む(1) ないし(13)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
(15)前記関係推定・利用手段が、車両の各回の一連の走行時に前記推定された関係をメモリに記憶させるとともに、今回の一連の走行時に最初に前記関係が推定されるまでの間、今回推定されるべき関係として、前回の一連の走行時に前記メモリに記憶させられた関係を暫定的に使用する前回推定関係暫定的使用手段を含む(1) ないし(13)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置によれば、車両の今回の一連の走行時に最初に関係が推定されるまでの間、前回の一連の走行時に推定された前回の関係が暫定的に使用されるため、実際の関係とは直接に関係しない標準的な関係を暫定的に使用する場合に比較して、関係推定・利用手段の信頼性を向上させ得る。
(16)前記関係推定・利用手段が、車両走行中のブレーキ操作時に前記供給電力値と前記実制動トルク値とを取得し、それら2つの取得値に基づいて前記関係を推定するブレーキ操作時取得手段を含む(1) ないし(7) 項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置は、上記(13)ないし(15)項のいずれかに記載の技術と共に実施可能である。
(17)さらに、前記電源と前記モータとの間に、外部からの指令に基づいて電源からモータに電力を供給するドライバが設けられ、前記関係推定・利用手段が、前記指令に基づき、前記電源から前記モータに実際に供給された電力値を推定する実供給電力値推定手段を含み、推定された供給電力値に基づいて前記関係を推定するものである(1) ないし(16)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置によれば、モータへの実供給電力値を検出するモータ電力センサなしで、電源からモータに実際に供給された電力値を取得可能となる。
このブレーキ装置においては、前記関係推定・利用手段が、非ブレーキ操作時にブレーキを作動させて実制動トルク値を取得する非ブレーキ操作時取得手段を含む形態である場合には、「前記指令」が、その非ブレーキ操作時取得手段により前記ドライバに供給されたものを意味し、また、ブレーキ操作時にそのブレーキ操作に基づくブレーキの本来の作動を利用して実制動トルク値を取得するブレーキ操作時取得手段を含む形態である場合には、「前記指令」が、ブレーキ操作時に前記コントローラにより前記ドライバに供給されたものを意味することになる。
(18)前記関係推定・利用手段が、前記電源から前記モータに実際に供給された電力を検出するモータ電力センサを含み、検出された実供給電力値に基づいて前記関係を推定するものである(1) ないし(16)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
上記ドライバに供給された指令と、モータに実際に供給された電力値とが必ずしも整合するとは限らず、指令が同じでも、モータの負荷が変化するとそれに応じて電力値が変化する。そのため、上記(17)項に記載のブレーキ装置におけるように、ドライバに供給された指令に基づいて電力値を推定する場合には、実供給電力値を精度よく取得できない場合がある。これに対して、この(18)項に記載のブレーキ装置においては、モータ電力センサにより電力値を精度よく取得可能となり、よって、モータへの供給電力値と制動トルク値との実際の関係も精度よく推定可能となる。
(19)前記関係推定・利用手段が、前記実制動トルクを検出する実制動トルクセンサを含み、その検出値に基づいて前記関係を推定するものである(1) ないし(18)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
(20)前記関係推定・利用手段が、車体減速度を検出する車体減速度検出手段を含み、その検出値に基づいて前記実制動トルク値を取得するものである(1) ないし(18)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、実制動トルク値と車体減速度との間に、実制動トルク値が大きいほど車体減速度が高くなるという関係が成立するという事実に基づき、車体減速度に基づいて実制動トルク値が取得される。また、車体減速度は、実制動トルクを直接に検出する場合に比較して比較的容易に検出し得る。したがって、このブレーキ装置によれば、実制動トルク値を比較的容易に取得し得る。
このブレーキ装置において「車体減速度検出手段」は、(a) 車体減速度を直接に検出する車体減速度センサとしたり、(b) 車速センサと、それにより検出された車速から車体減速度を演算する車体減速度演算手段との組合せとしたり、(c) 複数個の車輪の各々の車輪速を検出する複数個の車輪速センサと、それら複数個の車輪速センサにより検出された複数個の車輪速に基づき、複数個の車輪速のうち最も速いものが真の車速に最も近いという事実を利用して、車速を推定する車速推定手段と、推定された車速から車体減速度を演算する車体減速度演算手段との組合せとすることができる。
(21)前記関係推定・利用手段が、車両が走行している路面の傾斜角が実質的に0であるときに車体減速度を検出する車体減速度検出手段を含み、その検出値に基づいて前記実制動トルク値を取得するものである(1) ないし(18)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
前述のように、車体減速度は、実制動トルク値が大きいほど高くなるが、実制動トルク値が同じでも、路面の傾斜角が変化すればそれに応じて変化してしまう。この事実に基づき、このブレーキ装置においては、路面の傾斜角が実質的に0であるときの車体減速度に基づいて実制動トルク値が取得される。したがって、このブレーキ装置によれば、車体減速度に基づいて精度よく実制動トルク値を取得し得る。
(22)前記関係推定・利用手段が、前記車輪の回転速度である車輪速を検出する車輪速センサを含み、検出された車輪速に基づいてその車輪速の変化速度である車輪減速度を取得し、その取得された車輪減速度に基づいて前記実制動トルク値を取得するものである(1) ないし(18)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
実制動トルク値と車輪減速度との間には、実制動トルク値が大きいほど車輪減速度が高くなるという関係が成立する。この事実に基づき、このブレーキ装置においては、車輪減速度に基づいて実制動トルク値が取得される。また、車輪減速度は、実制動トルクを直接に検出する場合に比較して比較的容易に検出し得る。したがって、このブレーキ装置によれば、実制動トルク値を比較的容易に取得し得る。
車両が複数個の車輪を有して複数個のブレーキを有する場合、それら複数個のブレーキの全部またはそのうちの複数個が作動中であるときの車体減速度は、作動中の複数個のブレーキの影響を総合的に得ることになる。したがって、そのような車体減速度に基づいて各輪の実制動トルク値を個別に精度よく取得することが困難である。これに対して、この(22)項に記載のブレーキ装置によれば、実制動トルク値を各輪毎に個別に取得可能となる。したがって、このブレーキ装置によれば、モータへの供給電力値と制動トルク値との実際の関係を各輪毎に個別に推定可能となる。よって、推定された関係をブレーキの制御に利用する形態の電動式ブレーキ装置においては、各ブレーキの実際の条件を個別に考慮して各ブレーキを制御可能となる。
(23)車両が、前記車輪を複数個有するものであり、前記非ブレーキ操作時取得手段が、それら複数個の車輪について互いに異なる時期に前記ブレーキを作動させるとともに、各輪についてのブレーキの作動に同期して車体減速度を検出し、各輪について検出された車体減速度に基づいてその各輪についての前記実制動トルク値を取得するものである(8) または(9) 項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、非ブレーキ操作時に、複数の車輪について互いに異なる時期にブレーキが作動させられるとともに、それに同期して車体減速度が検出される。したがって、ある時期に検出された一つの車体減速度は、作動状態にある一つのブレーキの実制動トルクのみを反映したものとなるため、車体減速度に基づいて実制動トルク値を各輪毎に個別に精度よく取得可能となる。さらに、前記関係を各輪毎に個別に推定可能となる。
(24)車両が、前記車輪を前後にそれぞれ有するものであり、前記非ブレーキ操作時取得手段が、それら前後輪について同時に前記ブレーキを作動させるとともに、そのブレーキの作動に同期して車体減速度を検出し、その検出された車体減速度に基づき、前輪の実制動トルク値と後輪の実制動トルク値とを取得し、取得された各輪の実制動トルク値に基づいて前記関係を各輪毎に推定するものである(8) または(9) 項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、前後輪について同時にブレーキの作動が行われるため、互いに異なる時期にブレーキを作動させる場合に比較して、ブレーキ作動時間を短縮し得る。
前後輪について同時にブレーキの作動が行われる際に検出される車体減速度は、前輪ブレーキの実制動トルク値と後輪ブレーキの実制動トルク値との双方の影響を受けたものとなるが、車体減速度から計算により、前輪ブレーキの実制動トルク値と後輪ブレーキの実制動トルク値とを推定可能である。そこで、この(22)項に記載のブレーキ装置においては、検出された車体減速度に基づき、前輪の実制動トルク値と後輪の実制動トルク値とが取得され、取得された各輪の実制動トルク値に基づいて関係が各輪毎に推定される。したがって、このブレーキ装置によれば、前後輪について同時にブレーキの作動が行われるとともに、複数個のブレーキの影響を総合的に受ける車体減速度に基づいて実制動トルク値を取得する形態であるにもかかわらず、実制動トルク値の取得と関係の推定とを各輪毎に行い得る。
(25)さらに、前記関係推定・利用手段が前記ブレーキを作動させると運転者に違和感を与える可能性がある場合に、その関係推定・利用手段による前記ブレーキの作動を禁止する第1禁止手段を含む(8) または(9) 項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置によれば、非ブレーキ操作時に運転者に違和感を与えることなく実制動トルク値を取得可能となる。
(26)前記第1禁止手段が、車速が基準値より低い時に前記ブレーキの作動を禁止する低速走行時禁止手段を含む(25)項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、車両走行中、車速が基準値より低い時には、高い時におけるより、非ブレーキ操作時にブレーキを作動させると運転者が違和感を抱き易いという本発明者らの知見に基づき、非ブレーキ操作時のうち車速が基準値より低い時にブレーキの作動が禁止される。
(27)前記低速走行時禁止手段が、車速を検出する車速検出手段を含み、検出された車速が前記基準値より低い場合に前記ブレーキの作動を禁止するものである(26)項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置において「車速検出手段」は、(a) 車速を直接に検出する車速センサとしたり、(b) 複数個の車輪の各々の車輪速を検出する複数個の車輪速センサと、それら複数個の車輪速センサにより検出された複数個の車輪速に基づき、複数個の車輪速のうち最も速いものが真の車速に最も近いという事実を利用して、車速を推定する車速推定手段との組合せとすることができる。
(28)前記第1禁止手段が、車両の旋回時に前記ブレーキの作動を禁止する旋回時禁止手段を含む(25)ないし(27)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、車両の旋回時にブレーキを作動させると、車両の挙動が変化して運転者が違和感を抱き易いという本発明者らの知見に基づき、非ブレーキ操作時のうち車両の旋回時にブレーキの作動が禁止される。
(29)前記旋回時禁止手段が、車両の旋回を検出する旋回センサを含み、その旋回センサによる車両旋回の検出時に前記ブレーキの作動を禁止するものである(28)項に記載の電動式ブレーキ装置。
(30)さらに、前記関係推定・利用手段が前記関係を精度よく推定することができない可能性がある場合に、その関係推定・利用手段による前記推定と前記利用とのうち少なくとも利用を禁止する第2禁止手段を含む(1) ないし(29)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、関係を常に精度よく推定することができるとは限らないという本発明者らの知見に基づき、関係を精度よく推定することができない可能性がある場合に、関係の推定と利用とのうち少なくとも利用が禁止される。したがって、このブレーキ装置によれば、関係推定・利用手段の信頼性を向上させ得る。また、推定された関係をブレーキの制御に利用する形態の電動式ブレーキ装置においては、低い精度で推定された関係に従ってブレーキを制御せずに済み、当該ブレーキ装置の信頼性を向上させ得る。
(31)前記第2禁止手段が、車両の駆動力の変化時に前記少なくとも利用を禁止する車両駆動力変化時禁止手段を含む(30)項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、車両の駆動力の変化時に関係を精度よく推定することができない可能性があるという本発明者らの知見に基づき、車両の駆動力の変化時に関係の少なくとも利用が禁止される。
このブレーキ装置において「車両の駆動力の変化」の原因には、原動機の出力の変化,後述の駆動力伝達装置の伝達速度比の変化等がある。
(32)車両が、(a) その車両を駆動する原動機と、(b) その原動機の出力を増加させて車両を加速するために運転者により非操作状態から操作状態に向かって操作される加速操作部材とを含み、前記車両駆動力変化時禁止手段が、その加速操作部材が操作状態にある時に前記少なくとも利用を禁止する加速操作時禁止手段を含む(31)項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、加速操作部材が操作状態にある時に、関係を精度よく推定することができない可能性があるという本発明者らの知見に基づき、加速操作部材が操作状態にある時に、関係の少なくとも利用が禁止される。
このブレーキ装置において「原動機」は、エンジン(内燃機関)としたり、モータとしたり、それらを併用したものとすることができる。
また、このブレーキ装置においては、加速操作部材の操作状態にあるときに加速操作時と称することができるが、この「加速操作時」は広義である。すなわち、加速操作部材の操作状態は、正確には、原動機の出力を増加させる向きに加速操作部材が操作されている第1の過渡状態と、原動機の出力を維持するように加速操作部材が同じ位置に保持されている定常状態と、原動機の出力を減少させる向きに加速操作部材が操作されている第2の過渡状態とに区別することができ、それらすべてを広義の「加速操作時」と称することができる一方、第1の過渡状態のみを狭義の「加速操作時」と称することもできるのである。そして、このブレーキ装置は、広義の加速操作時、すなわち、狭義の加速操作時,定常操作時または減速操作時に、関係の少なくとも利用が禁止される態様としたり、狭義の加速操作時または減速操作時、すなわち、過渡操作時に、関係の少なくとも利用が禁止される態様としたり、狭義の加速操作時に、関係の少なくとも利用が禁止される態様とすることができる。
ところで、加速操作部材の現在位置を検出する手段として、加速操作部材の現在位置が非操作状態にあるか操作状態にあるかを検出するスイッチと、加速操作部材の現在位置が操作状態にある状態でその現在位置を連続的に検出するセンサとがある。スイッチは、加速操作部材が定常的に非操作状態にあるか操作状態にあるかを検出する手段として使用されるのが一般的であるが、その信号の変化を考慮することにより、加速操作部材が非操作状態から操作状態に移行した時期を検出したり、操作状態から非操作状態に移行した時期を検出することが可能である。しかし、スイッチでは、加速操作部材の操作状態でその加速操作部材の現在位置が変化しても、そのことを検出することができない。すなわち、スイッチでは、広義の加速操作時であるか否かを判定することはできても、狭義の加速操作時であるのか定常操作時であるのか減速操作時であるのかを区別することができないのである。これに対して、センサによれば、狭義の加速操作時であるのか定常操作時であるのか減速操作時であるのかを区別することができる。そして、スイッチの一例は、後述のアクセルペダルスイッチであり、センサの一例は、アクセル操作角センサであり、別の例は、原動機としてのエンジン(内燃機関)の吸気管内に設けられたスロットルバルブの開度を検出するスロットルバルブ開度センサである。スロットルバルブには、加速操作部材のみに応じて作動する形式や、加速操作部材に応じた作動と自動的な作動との双方を選択的に行う形式とがあり、エンジンの出力変化をより正しく検出するには、そのようなスロットルバルブの開度を検出するセンサが有効である。
(33)車両が、(a) その車両を駆動するエンジンと、(b) そのエンジンの燃焼室に燃料を選択的に供給する燃料供給装置とを含み、前記車両駆動力変化時禁止手段が、その燃料供給装置が燃料を供給する状態と供給しない状態とのいずれか一方から他方へ移行する時に前記少なくとも利用を禁止する燃料供給状態変化時禁止手段を含む(31)項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、燃料供給装置が燃料を供給する状態と供給しない状態とのいずれか一方から他方へ移行する時に、関係を精度よく推定することができない可能性があるという本発明者らの知見に基づき、燃料供給装置が燃料を供給する状態と供給しない状態とのいずれか一方から他方へ移行する時に、関係の少なくとも利用が禁止される。
車両には、燃料供給装置の、燃料を供給する状態と供給しない状態とのいずれか一方から他方への移行が、前記加速操作部材の非操作状態でも行われる形式の車両がある。このような車両においては、加速操作部材の操作状態でも、エンジンの出力変化に起因して関係を精度よく推定することができない可能性がある。このような車両にこの(33)項に記載のブレーキ装置は特に有効である。
(34)車両が、(a) 原動機と、(b) その原動機の駆動力を前記車輪に伝達するとともにその伝達速度比を変化させる変速を選択的に行う駆動力伝達装置とを含み、前記車両駆動力変化時禁止手段が、その駆動力伝達装置の変速時に前記少なくとも利用を禁止する変速時禁止手段を含む(31)ないし(33)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、駆動力伝達装置の変速時に関係を精度よく推定することができない可能性があるという本発明者らの知見に基づき、駆動力伝達装置の変速時に関係の少なくとも利用が禁止される。
(35)前記変速時禁止手段が、前記駆動力伝達装置の変速を検出する変速センサを含む(34)項に記載の電動式ブレーキ装置。
(36)前記第2禁止手段が、車両の旋回時に前記少なくとも利用を禁止する旋回時禁止手段を含む(30)ないし(35)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、車両の旋回時に関係を精度よく推定することができない可能性があるという本発明者らの知見に基づき、車両の旋回時に関係の少なくとも利用が禁止される。
(37)前記旋回時禁止手段が、車両の旋回を検出する旋回センサを含む(36)項に記載の電動式ブレーキ装置。
(38)前記第2禁止手段が、車両が表面の凹凸が激しい悪路を走行している時に前記少なくとも利用を禁止する悪路走行時禁止手段を含む(30)ないし(37)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、車両の悪路走行時に関係を精度よく推定することができない可能性があるという本発明者らの知見に基づき、車両の悪路走行時に関係の少なくとも利用が禁止される。
このブレーキ装置において「悪路」には、じゃり路,ベルジアン路,非舗装路,オフロード,突起路,段差路等がある。
(39)前記悪路走行時禁止手段が、車両の悪路走行を検出する悪路走行検出手段を含む(38)項に記載の電動式ブレーキ装置。
(40)前記第2禁止手段が、前記車輪のスリップ率が基準値より大きい時に前記少なくとも利用を禁止する大スリップ率時禁止手段を含む(30)ないし(39)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
(41)前記大スリップ率時禁止手段が、前記車輪のスリップ率が前記基準値より大きい大スリップ率状態を検出する大スリップ率状態検出手段を含む(40)項に記載の電動式ブレーキ装置。
(42)前記関係推定・利用手段が、車体減速度の時間的変化量、または前記車輪の回転速度の変化速度である車輪減速度の時間的変化量に基づいて前記実制動トルク値を取得する手段を含む(1) ないし(41)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
車体減速度に基づいて実制動トルク値を取得する場合や、駆動輪である車輪についてそれの車輪減速度に基づいて実制動トルク値を取得する場合には、車体減速度または車輪減速度が車両全体の駆動力または駆動輪の駆動力の変化の影響を受け易い。これに対して、車体減速度の時間的変化量または車輪減速度の時間的変化量に基づいて実制動トルク値を取得する場合には、上記の場合に比較して、駆動力変化の影響を受け難い。したがって、この(42)項に記載のブレーキ装置においては、車両または車輪の駆動力変化の影響を軽減しつつ実制動トルク値を取得し得る。
(43)前記ブレーキが、前記摩擦材と前記回転体との間の摩擦力によってその摩擦力を増加させるセルフサーボ機構を有するセルフサーボ型ブレーキを含む(1) ないし(42)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
図8には、ブレーキがセルフサーボ機構を有する場合に、モータへの供給電力値としてのモータ電流値Iとブレーキの制動トルク値Tとの関係(I−T特性)がブレーキ摩擦材の摩擦係数μによって変化する様子がグラフで示されている。このグラフから明らかなように、制動トルク値Tのモータ電流値Iに対する変化が、摩擦材の摩擦係数μが高い場合において低い場合におけるより敏感となる。したがって、ブレーキがセルフサーボ機構を有する場合に、モータへの供給電力値とブレーキの制動トルク値との実際の関係を推定してブレーキ制御等に利用する必要性が高い。この(43)項に記載の電動式ブレーキ装置によれば、そのような高い必要性が満たされ、また、ブレーキがセルフサーボ機構を有するにもかかわらず、ブレーキの制動トルクをブレーキ操作値との関係において精度よく制御可能となる。
(44)前記セルフサーボ型ブレーキが、前記摩擦材としてのブレーキライニングと前記回転体としてのドラムとを有するドラムブレーキを含む(43)項に記載の電動式ブレーキ装置。
(45)前記セルフサーボ型ブレーキが、前記摩擦材としてのブレーキパッドと前記回転体としてのディスクとを有するディスクブレーキを含む(43)または(44)項に記載の電動式ブレーキ装置。
(46)モータの駆動力により摩擦材を車輪と共に回転する回転体に押し付けることにより車輪を制動するとともに、摩擦材と回転体との間の摩擦力によってその摩擦力を増加させるセルフサーボ機構を有するセルフサーボ型電動式ブレーキにおいて、
前記摩擦材と固定部材との間に、摩擦材を前記回転体から離間する向きに付勢する付勢機構を設けたことを特徴とするサルフサーボ型電動式ブレーキ。
セルフサーボ効果の発生状態では、制動トルクを素早く低下させるべく、モータにそれを初期位置に戻すための信号を供給しても、モータの作動遅れと相まって摩擦材が回転体から十分に迅速に離間しようとはしないが、付勢機構があれば、摩擦材が回転体から迅速に離間することが促進され、制動トルクの素早い低下が可能となる。
このブレーキにおいて「付勢機構」は、常時摩擦材を付勢する形式としたり、必要に応じて摩擦材を付勢する形式とすることができる。制動トルクを素早く低下させることが必要である場合に限って摩擦材を付勢する形式とすることができるのである。
(47)前記関係推定・利用手段が、車体の走行状態の、前記ブレーキの作動に起因する変化に基づいて前記実制動トルク値を取得する手段を含む(1) ないし(41)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置において「車体の走行状態の変化」には例えば、車体減速度が含まれる。
(48)前記関係推定・利用手段が、前記車輪の回転状態の、前記ブレーキの作動に起因する変化に基づいて前記実制動トルク値を取得する手段を含む(1) ないし(41)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置において「車輪の回転状態の変化」には例えば、車輪減速度,車輪減速度の時間的変化量が含まれる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0009】
図1には、本発明の第1実施形態である電動式ブレーキ装置の全体構成が示されている。この電動式ブレーキ装置は、左右前輪FL,FRと左右後輪RL,RRとを備えた4輪車両に設けられている。この車両は、原動機としてのエンジン10(内燃機関)と、駆動力伝達装置としてのオートマチックトランスミッション12(以下、「A/T」と略称する。)とを備えており、それらエンジン10とA/T12とにより左右前輪と左右後輪との少なくとも一方が駆動されることにより、車両が駆動される。
【0010】
左右前輪FL,FRにはモータ20を駆動源とする電動式ディスクブレーキ22が設けられている。一方、左右後輪RL,RRにはモータ30を駆動源とする電動式ドラムブレーキ32が設けられている。本実施形態においては、それらモータ20,30が共にDCモータとされているが、共に超音波モータとしたり、前輪側は超音波モータ、後輪側はDCモータとしたり、前輪側はDCモータ、後輪側は超音波モータとすることができる。
【0011】
この車両には、運転者により操作される部材がいくつか設けられている。そのいくつかの操作部材には、主ブレーキ操作部材(ブレーキ操作部材の一例)としてのブレーキペダル40と、パーキングブレーキ操作部材としてのパーキングペダル42と、加速操作部材としてのアクセルペダル44と、ステアリングホイール46とがある。ブレーキペダル40が操作されれば、4輪の電動式ブレーキ22,32が作動させられ、それにより、車両が制動される。パーキングペダル42が操作されれば、左右後輪の電動式ドラムブレーキ32が作動させられ、それにより、車両が駐車される。アクセルペダル44が操作されれば、エンジン10の駆動力が増加させられ、それにより、車両が駆動される。ステアリングホイール46が回転操作されれば、それに応じて操舵車輪が図示しない操舵装置によって操舵される。
【0012】
この電動式ブレーキ装置においては、ブレーキペダル40の操作時(主ブレーキ操作時)には、コントローラ50により4輪の電動式ブレーキ22,32がモータ20,30の駆動力により作動させられることによって車両が制動される。したがって、この電動式ブレーキ装置においては、ブレーキペダル40の操作時に運転者がブレーキペダル40に力を付与することは不可欠ではない。しかし、運転者のペダル操作フィーリングを従来の液圧式ブレーキ装置と同等のものにするためには、運転者がブレーキペダル40に操作力を付与すればそれに応じてブレーキペダル40の操作ストロークが変化することが必要である。そのため、本実施形態においては、操作力に応じた操作ストロークをブレーキペダル40に発生させるため、ブレーキペダル40にストロークシミュレータ52が設けられている。このストロークシミュレータ52は、(a) ブレーキペダル40と連動する連動部材54と、(b) その連動部材54をガイドするガイド部材56と、(c) 連動部材54の移動によって伸縮させられて弾性力が増減させられる弾性部材としてのスプリング58とを備え、そのスプリング58の弾性により、操作力に応じた長さの操作ストロークをブレーキペダル40に発生させる構成とされている。
【0013】
図2には、左右前輪用の電動式ディスクブレーキ22の詳細が示されている。ただし、図には、右前輪FR用の電動式ディスクブレーキ22のみが代表的に示されている。
【0014】
この電動式ディスクブレーキ22は、図示しない車体に取り付けられた固定部材としてのマウンティングブラケット100と、両側に摩擦面102を備えて車輪と共に回転するディスク104とを備えている。マウンティングブラケット100は、(a) 一対のブレーキパッド106a,106b(摩擦材の一例)をディスク104を両側から挟む位置においてディスク104の回転軸線に沿って移動可能に支持する部分と、(b) ディスク104との接触時に各ブレーキパッド106a,106bに発生する摩擦力を受ける部分(受け部材)とを備えている。図において矢印Xは、車体前進時にディスク104が回転するディスク回転方向を示している。
【0015】
一対のブレーキパッド106a,106bのうち車体外側(図において右側)のアウタパッド106aは、ディスク104との接触時にディスク104との連れ回りが実質的に阻止される状態でマウンティングブラケット100に支持されている。これに対して、車体内側(図において左側)のインナパッド106bは、アウタパッド106aとは異なり、ディスク104との接触時にディスク104との連れ回りが積極的に許容される状態でマウンティングブラケット100に支持されている。図において矢印Yは、インナパッド106bの連れ回り方向を示している。
【0016】
ただし、インナパッド106bの連れ回りは、常に許容されるのではなく、ディスク104との間に発生した摩擦力が設定値より小さい状態では阻止され、設定値以上になった状態ではじめて許容されるようになっている。このような連れ回り制御を実現するため、本実施形態においては、インナパッド106bの後端部110が、弾性部材としてのスプリング112を介してマウンティングブラケット100に係合させられている。インナパッド106bの摩擦力が設定値より小さい状態では、スプリング112が弾性変形せずにインナパッド106bの連れ回りが阻止され、設定値以上となった状態ではじめてスプリング112が弾性変形してインナパッド106bの連れ回りが許容されるのである。また、本実施形態においては、インナパッド106bの連れ回り量が設定値となったときにマウンティングブラケット100に当接するストッパ114が設けられている。これにより、インナパッド106bの連れ回り限度が規制され、ひいては、後述のセルフサーボ効果の過大化が防止される。
【0017】
電動式ディスクブレーキ22はさらに、ディスク104の回転軸線方向には移動可能、ディスク104の回転方向には移動不能なボデー120を備えている。ボデー120は、ディスク104の回転軸線に平行に延びる姿勢で車体に取り付けられた図示しない複数本のピンに摺動可能に嵌合されている。ボデー120は、ディスク104を跨き、一対のブレーキパッド106a,106bを背後から挟む姿勢で車体に取り付けられている。ボデー120は、(a) アウタパッド106aに背後から係合するリアクション部126と、(b) インナパッド106bに背後において近接する押圧部128と、(c) それらリアクション部126と押圧部128とを互いに連結する連結部130とを含むように構成されている。
【0018】
押圧部128においては、モータ20が運動変換機構としてのボールねじ機構132を介して押圧部材134に同軸に連結されている。押圧部材134は押圧部128により、押圧部材134の軸線回りに回転不能かつその軸線方向に移動可能に支持されている。したがって、モータ20の回転軸136が回転すればその回転運動がボールねじ機構132によって押圧部材134の直線運動に変換される。それにより、押圧部材134がそれの軸線に沿って前後に移動させられ、その移動によってインナパッド106b、ひいてはアウタパッド106aに押圧力が付与され、それにより、一対のブレーキパッド106a,106bがディスク104に押圧される。
【0019】
アウタパッド106aにおいては、裏板140の板厚がディスク回転方向Xにおいて均一とされているが、インナパッド106bにおいては、それの連れ回り方向Yにおいて後側(車体において前側)から前側(車体において後側)に進むにつれて板厚が漸減するようにされている。インナパッド106bの裏板140の背面が、ディスク104の摩擦面102に対する斜面142とされ、押圧部材134の前端面がその斜面142においてインナパッド106bと接触させられているのである。さらに、その斜面142と押圧部材134の前端面とはそれらの面に沿って相対移動可能とされている。したがって、インナパッド106bの連れ回りが行われる状態では、インナパッド106bと押圧部材134との間にくさび効果が発生し、電動式ディスクブレーキ22のセルフサーボ効果が実現される。なお、本実施形態においては、押圧部材134の軸線が斜面142と直角とされている。
【0020】
本実施形態においては、押圧部材134の前端面において複数のボール144(ローラ等でも可。)が押圧部材134の軸線回りの一円周に沿ってほぼ等間隔で保持されるとともに、各ボール144が転動可能に保持されている。インナパッド106bの裏板140と押圧部材134とがスラストベアリング146により互いに接触させられているのであり、それらインナパッド106bと押圧部材134との間の摩擦が低減されている。
【0021】
次にこの電動式ディスクブレーキ22の作動を説明する。
【0022】
運転者によりブレーキペダル40が操作され、それに伴ってモータ20が回転させられて押圧部材134が非作動位置から前進させられれば、一対のブレーキパッド106a,106bが一緒にディスク104に押圧され、それにより、各ブレーキパッド106a,106bとディスク104との間に摩擦力が発生し、車輪が制動される。
【0023】
インナパッド106bの摩擦力が設定値より低く、スプリング112の設定荷重に打ち勝つことができない状態では、スプリング112によってインナパッド106bの連れ回りが阻止され、それにより、セルフサーボ効果の発生が阻止される。したがって、電動式ディスクブレーキ22の効き当初,弱いブレーキ操作時等であるためにインナパッド106bの摩擦力が小さい状態では、モータ20の駆動のみにより車輪が制動される。
【0024】
これに対して、インナパッド106bの摩擦力が設定値以上となり、スプリング112の設定荷重に打ち勝つことができる状態となれば、スプリング112によってインナパッド106bの連れ回りが許容される。インナパッド106bが連れ回れば、それに伴って斜面142が一体的に移動し、その結果、ディスク104の摩擦面102と斜面142との距離が増加する。それにより、インナパッド106bがディスク104と押圧部材134とにより板厚方向に強く圧縮され、その結果、インナパッド106bが大きな力でディスク104に押圧される。したがって、ブレーキペダル40が強く(例えば、車体に0.3ないし0.6G程度の減速度が発生する程度に)操作されたためにインナパッド106bの摩擦力が大きくなった状態では、斜面142を介して互いに接触するインナパッド106bと押圧部材134との間にくさび効果が発生し、その結果、モータ20の駆動とセルフサーボ効果との双方により車輪が制動される。
【0025】
インナパッド106bの摩擦力がさらに増加してストッパ114がマウンティングブラケット100と当接すれば、インナパッド106bの更なる連れ回りが阻止され、それにより、セルフサーボ効果の過大化が阻止される。
【0026】
図3には、左右後輪用の電動式ドラムブレーキ32の詳細が示されている。ただし、図には、左後輪用の電動式ドラムブレーキ32のみが代表的に示されている。
【0027】
この電動式ドラムブレーキ32は、図示しない車体に取り付けられた非回転部材としての、ほぼ円板状を成すバッキングプレート200と、内周面に摩擦面202を備えて車輪と共に回転するドラム204とを備えている。バッキングプレート200の一直径方向に隔たった2箇所には、それぞれアンカ部材としてのアンカピン206と中継リンクとしてのアジャスタ208とが設けられている。アンカピン206はバッキングプレート200に位置固定に取り付けられている。一方、アジャスタ208はフローティング式とされている。それらアンカピン206とアジャスタ208との間には、各々円弧状を成す一対のブレーキシュー210a,210b(摩擦材の一例)がドラム204の内周面に対面するように取り付けられている。一対のブレーキシュー210a,210bは、シューホールドダウン装置212a,212bによってバッキングプレート200にそれの面に沿って移動可能に取り付けられている。なお、バッキングプレート200の中央に設けられた貫通穴には、図示しないアクスルシャフトが回転可能に突出して設けられるようになっている。
【0028】
一対のブレーキシュー210a,210bは、一端部同士がアジャスタ208により作動的に連結される一方、各他端部がアンカピン206と当接することによって回動可能に支持されている。一対のブレーキシュー210a,210bの一端部同士は、アジャスタスプリング214によりアジャスタ208を介して互いに接近する向きに付勢されている。一方、一対のブレーキシュー210a,210bの各他端部は各シューリターンスプリング215a,215bによりアンカピン206に向かって付勢されている。各ブレーキシュー210a,210bの外周面にブレーキライニング216a,216bが保持され、それら一対のブレーキライニング216a,216bがドラム204の内周面に接触させられることにより、それらブレーキライニング216a,216bとドラム204との間に摩擦力が発生する。アジャスタ208は、一対のブレーキシュー210a,210bの摩耗に応じて一対のブレーキライニング216a,216bとドラム204との隙間を調整する。
【0029】
各ブレーキシュー210a,210bはリム220とウェブ222とから構成されており、一対のブレーキシュー210a,210bの一方のウェブ222には、レバー230が回動可能に取り付けられている。そのウェブ222にレバー支持部材としてのピン232が位置固定に取り付けられ、そのピン232にレバー230の一端部が回動可能に連結されている。このレバー230と他方のブレーキシュー210bとの互いに対向する部分の切欠きには、力伝達部材としてのストラット236の両端が係合させられている。すなわち、この電動式ドラムブレーキ32は、車体の前進時にも後退時にも、いずれのブレーキシュー210a,210bにもセルフサーボ効果が発生するデュオサーボ型なのである。なお、本実施形態においては、レバー230が、一対のブレーキシュー210a,210bのうち車体前進時にセカンダリシューとして作用するブレーキシュー210aに取り付けられているが、プライマリシューとして作用するブレーキシュー210bに取り付けることが可能である。
【0030】
この電動式ドラムブレーキ32は、ブレーキペダル40の操作時であるかパーキングペダル42の操作時(パーキングブレーキ操作時)であるかを問わず、同じレバー230の回動によって作動させられる。そのため、レバー230の他端部に主ブレーキケーブル240の一端部とパーキングブレーキケーブル242の一端部とが連結されている。各ケーブル240,242は、複数本のワイヤをより合わせて構成されており、フレキシブルである。なお、レバー230の他端部とバッキングプレート200との間には、従来の液圧式ブレーキ装置におけると同様に、圧縮型のスプリング244がパーキングブレーキケーブル242と同軸に配設されている。
【0031】
主ブレーキケーブル240は、バッキングプレート200に取り付けられたシュー拡張アクチュエータ250により駆動される。シュー拡張アクチュエータ250は、図4に拡大して示すように、モータ30の回転軸に減速機252の入力軸が連結され、その減速機252の出力軸に運動変換機構としてのボールねじ機構254の入力部材が連結されて構成されており、そのボールねじ機構254の出力部材に主ブレーキケーブル240の他端部が連結されている。ボールねじ機構254は、モータ30の回転運動を直線運動に変換する機構である。図において符号256および258は共にブラケットを示し、また、符号260および262は共に、各ブラケット256,258をバッキングプレート200へ取り付けるための取付けボルトを示している。
【0032】
ボールねじ機構254は、入力部材としてのおねじ264に出力部材としてのナット266が図示しない複数個のボールを介して螺合されて構成されている。ナット266は固定部材としてのハウジング267に回転不能かつ軸方向移動可能に嵌合されている。それにより、おねじ264の回転運動がナット266の直線運動に変換される。ナット266の両端部のうちおねじ264の側とは反対側の端部に出力シャフト268が同軸に取り付けられている。それらおねじ264,ナット266および出力シャフト268の相互の摺動部へのダストの侵入が、ハウジング267および伸縮可能なダストブーツ270により阻止されている。
【0033】
出力シャフト268と主ブレーキケーブル240の他端部との結合は次のような構成により行われる。すなわち、出力シャフト268の両端部のうちボールねじ機構254の側とは反対側の端部にケーブル取付け用おねじ272が形成される一方、主ブレーキケーブル240の他端部にケーブル取付け用ナット274が結合されている。そのケーブル取付け用ナット274がケーブル取付け用おねじ272に螺合され、そのケーブル取付け用おねじ272に回り止め用ナット276が螺合されるとともに、その回り止め用ナット276がケーブル取付け用ナット274に押し付けられることにより、ケーブル取付け用ナット274の緩みが防止されている。
【0034】
以上のように構成されたシュー拡張アクチュエータ250は、ブレーキペダル40の操作時に主ブレーキケーブル240に引張力を付与し、それにより、レバー230の他端部がブレーキシュー210bに接近する向きに回動させられ、その結果、一対のブレーキシュー210a,210bが拡張される。
【0035】
この電動式ドラムブレーキ32は、一対のブレーキシュー210a,210bをそれに発生するセルフサーボ効果に打ち勝って収縮させるのに効果的なシュー収縮機構を備えている。シュー収縮機構は、本実施形態においては、レバー230とバッキングプレート200との間に張り渡された主ブレーキリターンスプリング280とされている。この主ブレーキリターンスプリング280は、主ブレーキケーブル240と同軸に張り渡されるとともに、一端部がレバー230の他端部に、他端部がシュー拡張アクチュエータ250のうちの固定部分(例えば、ハウジング,ブラケット等)にそれぞれ係合させられている。したがって、ブレーキペダル40の操作の解除時に、シュー拡張アクチュエータ250が初期位置に向かって戻されれば、レバー230は主ブレーキリターンスプリング280の圧縮力によって初期位置に向かって回動させられる。ただし、この電動式ドラムブレーキ32にそのようなシュー収縮機構を追加することは不可欠なことではなく、例えば、既存のスプリングであるアジャスタスプリング214やシューリターンスプリング215a,215bの弾性力を増加させることによって同じ目的を達成することは可能である。
【0036】
パーキングブレーキケーブル242の他端部は、図1に示すように、よく知られているパーキングコントロール284に連結されている。そのパーキングコントロール284は、パーキングペダル42の操作力により機械的に作動し、パーキングコントロール284に引張力を、一対のブレーキシュー210a,210bが拡張する向き(以下、単に「シュー拡張方向」という。)にレバー230が回動する向きに付与する。
【0037】
図3に示すように、ブレーキペダル40の操作時には、シュー拡張アクチュエータ250により、主ブレーキケーブル240のみに引張力が付与されてレバー230がシュー拡張方向に回動させられ、このとき、パーキングブレーキケーブル242は撓ませられる。また、パーキングペダル42の操作時には、パーキングコントロール284により、パーキングブレーキケーブル242のみに引張力が付与されてレバー230がシュー拡張方向に回動させられ、このとき、主ブレーキケーブル240は撓ませられる。このように、同じレバー230に連結されて互いに異なる時期に作用させられる2つのケーブル240,242が共にフレキシブルであるため、一方のケーブルの作用が他方のケーブルによって阻害されることがない。
【0038】
以上、この電動式ブレーキ装置のハードウェア構成を説明したが、次にソフトウェア構成を説明する。
【0039】
図1に示すように、コントローラ50は、CPU,ROMおよびRAMを含むコンピュータ300を主体として構成されている。このコントローラ50の入力側にはいくつかのセンサおよびスイッチが接続されている。そのいくつかのセンサおよびスイッチには、操作力センサ302,ブレーキペダルスイッチ304,アクセルペダルスイッチ306,舵角センサ308,車体減速度センサ310,車速センサ312,4個の車輪速センサ314およびモータ電流センサ316がある。
【0040】
操作力センサ302は、ブレーキペダル40の操作力Fを検出し、その大きさを規定する信号を出力する。ブレーキペダルスイッチ304は、ブレーキ操作センサの一例であり、ブレーキペダル40の非操作時にはOFF信号(第1信号)、操作時にはON信号(第2信号)を出力する。アクセルペダルスイッチ44は、加速操作センサの一例であり、アクセルペダル44の非操作時にはOFF信号(第1信号)、操作時にはON信号(第2信号)を出力する。舵角センサ308は、旋回センサの一例であり、ステアリングホイール46の回転操作角θを検出し、その大きさを規定する信号を出力する。車体減速度センサ310は、車体の前後方向における減速度Gを検出し、その高さを規定する信号を出力する。車速センサ312は、車速Vを検出し、その大きさを規定する信号を出力する。4個の車輪速センサ314は4輪にそれぞれ設けられ、各輪の車輪速VW を検出し、その大きさを規定する信号を出力する。モータ電流センサ316は、4輪の電動式ブレーキ22,32の各々のモータ20,30のコイルに接続され、電源としてのバッテリ320からドライバ322を経てそのモータ20,30に実際に供給された電流を検出し、その実供給電流値Iを規定する信号を出力する。その出力信号は、電圧により表されるものであり、結局、モータ電流センサ316は、実供給電流値Iを電圧の高さとしてコントローラ50に出力することになる。
【0041】
一方、コントローラ50の出力側には、上記ドライバ322が接続されている。ブレーキペダル40の操作時には、コントローラ50からそのドライバ322に指令が供給され、その指令に応じてドライバ322が電流をバッテリ320から各電動式ブレーキ22,32のモータ20,30に供給する。コントローラ50の出力側にはさらに、エンジン10の図示しないエンジン出力制御装置(スロットル制御装置,燃料供給制御装置,点火時期制御装置等)と、A/T12の図示しない変速制御装置(変速ソレノイド等を含む)とが接続されている。コントローラ50は、車両駆動時に、駆動車輪のスピンを抑制すべく、それらエンジン出力制御装置および変速制御装置に駆動力を抑制する信号を出力する。すなわち、コントローラ50は、トラクション制御も実行するようになっているのである。
【0042】
コンピュータ300のROMには、ブレーキ制御ルーチンおよび摩擦材μ推定ルーチンを含むいくつかのルーチンが記憶されている。ブレーキ制御ルーチンは図5、摩擦材μ推定ルーチンは図6にそれぞれフローチャートで表されている。さらに、ROMには、F−T特性をテーブル,関数式等で表すデータ、およびI−T特性(モータへの供給電力値とブレーキの制動トルク値との関係の一例)をテーブル,関数式等で表すデータを含むいくつかのデータも記憶されている。
【0043】
F−T特性は、ブレーキペダル40の操作力F(ブレーキ操作部材の操作値の一例)とブレーキ22,32が各輪に付与する制動トルク値Tとの関係を表すものであり、図7にグラフで示されている。これに対して、I−T特性は、モータ20,30への供給電流値Iとブレーキ22,32が各輪に付与する制動トルク値Tとの関係(実験的にまたは計算により取得される)を表すものであり、図8にグラフで示されている。それらF−T特性およびI−T特性はそれぞれ、前後間で共通しないのが普通であることを考慮し、前輪と後輪とに関連付けてROMに記憶されている。
【0044】
I−T特性は、同図に示すように、供給電流値Iに応じて制動トルク値Tが変化するパターンで定義されており、そのパターンが複数種類、摩擦材の摩擦係数μ(以下、単に「摩擦材μ」で表す。)の複数個の離散値に関連付けて設けられている。ここに、「摩擦材」は、前輪用の電動式ディスクブレーキ22の一対のブレーキパッド106a,106bと後輪用の電動式ドラムブレーキ32の一対のブレーキライニング216a,216bとを総称するものであり、以下、同様である。
【0045】
以下、コントローラ50によるブレーキ制御および摩擦材μ推定を説明するが、まず、概略的に説明する。
【0046】
図9には、この電動式ブレーキ装置におけるコントローラ50とモータ20,30と摩擦材300と車輪302との関係が概念的に示されている。コントローラ50には運転者からの操作情報としてブレーキペダル40の操作力Fが供給され、コントローラ50はその操作力Fに応じてモータ20,30に電流値Iを供給する。モータ20,30は、供給された電流値Iに応じて駆動力Dを摩擦材300に供給する。摩擦材300は、それの実際の摩擦係数μの下に、供給された駆動力Dにより車輪302に制動トルクTを付与する。車輪302に制動トルクTが付与されることにより、車体に減速度Gが発生するとともに、車輪302に減速度GW が発生する。
【0047】
このブレーキ制御においては、ブレーキペダル40の操作力Fに基づいてモータ20,30への供給電流値Iが決定されるが、操作力Fに基づき、F−T特性に従って目標制動トルク値T* が各輪毎に決定され、各輪の目標制動トルク値T* に基づき、I−T特性に従って供給電流値Iが各輪毎に決定される。
【0048】
これに対して、摩擦材μ推定においては、非ブレーキ操作時であり、かつ、加速操作時でなく、かつ、車両直進時であり、かつ、悪路走行時でなく、かつ、低速走行時でなく、かつ、A/T12の変速時でない時に、モータ20,30が駆動されることによってブレーキ22,32が作動させられる。本実施形態においては、車速が0であれば、低速走行時であると判定されるため、結局、車両停止時、すなわち、車両走行時でない時には、非ブレーキ操作時であっても、ブレーキ22,32が作動させられないことになる。
【0049】
さらに、この摩擦材μ推定においては、ブレーキ22,32の作動中に、モータ20,30の供給電流値Iと車体減速度Gとがそれぞれ取得されるとともに、車体減速度Gに基づいて各輪の実制動トルク値Tが取得される。さらに、前記複数種類のI−T特性パターンのうち、取得された実制動トルク値Tと供給電流値Iとの組合せが対応するものが今回のI−T特性パターンとして選択され、その選択されたI−T特性パターンに対応する摩擦材μが実際の摩擦材μとして推定される。この摩擦材μ推定値はRAMに格納される。
【0050】
摩擦材μは本来、各輪毎に推定すべきであるが、本実施形態においては、摩擦材μが前後輪間では異なるが、左右輪間ではほぼ等しいという前提に基づき、摩擦材μが前後輪については独立に推定されるが、左右輪については共通に推定される。
【0051】
また、上記ブレーキ制御においては、摩擦材μの今回推定値がRAMに存在する期間には、その摩擦材μの今回推定値に応じてI−T特性パターンが選択され、その選択されたI−T特性パターンに従って供給電流値Iが決定される。一方、摩擦材μの今回推定値がRAMに存在しない期間には、前回推定値がRAMに存在する場合には、前回推定値に対応するI−T特性パターンが今回推定値が取得されるまで暫定的に使用される一方、前回推定値がRAMに存在しない場合には、摩擦材μの標準値(ROMに記憶されている)に対応するI−T特性パターンが今回推定値が取得されるまで暫定的に使用される。
【0052】
次に、ブレーキ制御および摩擦材μ推定を図5および図6のフローチャートに基づいて具体的に説明する。
【0053】
図5のブレーキ制御ルーチンは、車両のイグニションスイッチがONに操作されると実行を開始され、まず、ステップS1(以下、単に「S1」で表す。他のステップについても同じとする。)において、操作力センサ302により操作力Fが検出される。次に、S2において、摩擦材μの今回推定値がRAMに存在するか否かが判定される。存在すれば判定がYESとなり、S3において、摩擦材μの今回推定値がRAMから読み込まれ、それが摩擦材μの今回使用値とされ、これに対して、存在しなければ判定がNOとなり、S4において、摩擦材μの前回推定値がRAMに存在するか否かが判定される。存在すれば判定がYESとなり、S5において、摩擦材μの前回推定値がRAMから読み出され、それが摩擦材μの今回使用値とされ、一方、存在しなければ判定がNOとなり、S6において、摩擦材μの標準値がROMから読み出され、それが摩擦材μの今回使用値とされる。
【0054】
いずれの場合にも、その後、S7において、今回のI−T特性パターンが選択される。前記複数種類のI−T特性パターンの中から、摩擦材μの今回使用値に対応するものが今回のI−T特性パターンとして選択されるのである。続いて、S8において、検出された操作力Fに基づき、前記F−T特性に従って、各輪の目標制動トルク値T* が決定される。その後、S9において、決定された各輪の目標制動トルク値T* に基づき、選択された今回のI−T特性パターンに従って、モータ20,30へ供給する電流値の目標値I* が各輪毎に決定される。続いて、S10において、決定された各目標供給電流値I* で電流がモータ20,30へ供給される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了し、再びS1に戻る。
【0055】
これに対して、図6の摩擦材μ推定ルーチンも、車両のイグニションスイッチがONに操作されると実行を開始され、まずS11において、初期設定が行われ、それにより、RAMのμ推定フラグが0とされる。μ推定フラグは、0で一回の車両走行中に摩擦材μが一度も推定されていないことを示し、1で一回の車両走行中に摩擦材μが一度推定されたことを示す。
【0056】
次に、S12〜S18において、各種条件の成否が判定される。具体的には、S12においては、μ推定フラグが0であるか否かが判定される。S13においては、ブレーキペダルスイッチ304がOFFであるか否かにより、非ブレーキ操作時であるか否かが判定される。S14においては、アクセルペダルスイッチ306がONであるか否かにより、加速操作時(広義の加速操作時)であるか否かが判定される。S15においては、舵角センサ308により検出されたステアリングホイール46の回転操作角θが実質的に0でないか否かにより、車両旋回時であるか否かが判定される。S16においては、車輪減速度GW の符号の変化頻度が基準値以上である車輪302が存在するか否かにより、車両の悪路走行時であるか否かが判定される。車輪減速度GW は、車輪速センサ314により検出された車輪速VW を実質的に時間微分することによって取得される。S17においては、車速センサ312により検出された車速Vが基準値V0 より低いか否かにより、車両の低速走行時であるか否かが判定される。S18においては、A/T12からコントローラ50に供給された信号に基づき、A/T12の変速時であるか(過渡状態にあるか)否かが判定される。S12およびS13の判定は共にYES、S14〜S18の判定はいずれもNOであれば、S19以下のステップに移行するが、そうでなければ直ちにS12に戻る。
【0057】
S19においては、左右前輪のブレーキ22のモータ20に同時に電流が設定電流値I0 で設定時間Δtの間供給されることにより、左右前輪のブレーキ22が作動させられる。S20においては、その作動中、モータ電流センサ316によりモータ20への実供給電流値Iが検出される。S21においては、その作動中、車体減速度センサ310により車体減速度Gが検出される。その後、S22において、実供給電流値Iと車体減速度Gとから、左右前輪のブレーキ22の摩擦材μが推定される。具体的には、車体減速度Gから左右前輪のブレーキ22の実制動トルク値Tが計算により取得され、前記複数種類のI−T特性パターンのうち、実制動トルク値Tと実供給電流値Iとの組合せに対応するI−T特性パターンに対応する摩擦材μが、左右前輪のブレーキ22の摩擦材μの今回推定値とされる。S23〜S26においては、S19〜S22におけると同じ内容が左右後輪のブレーキ32について実行される。左右前輪のブレーキ22についても左右後輪のブレーキ32についても摩擦材μ推定が終了したならば、S27において、μ推定フラグが1とされる。その後、S12に戻る。その後、S12が実行されれば、μ推定フラグが1であるため、以後、今回の車両走行が終了するまで、S12の判定がNOとし続けられることにより、S19〜S26による摩擦材μ推定が省略される。
【0058】
すなわち、本実施形態においては、一回の車両走行中の最初の非ブレーキ操作時に一回限り、摩擦材μ推定が行われ、その車両走行が終了するまでの間、摩擦材μの推定値が更新されないようになっているのである。ただし、更新されるようにして本発明を実施することはもちろん可能である。
【0059】
図10には、非ブレーキ操作時にブレーキ22,32が作動させられ、それにより、車速Vが時間的に低下させられる様子がグラフで示されている。
【0060】
時期t1 に前述の摩擦材μ推定開始条件が成立すれば、左右前輪のブレーキ22のモータ20に電流が設定電流値I0 で供給され、それにより、左右前輪のブレーキ22の作動が開始される。その結果、車速Vが低下するが、このときの勾配すなわち車体減速度Gは左右前輪のブレーキ22の摩擦材μに依存し、摩擦材μが高い場合には高い車体減速度G1 、摩擦材μが低い場合には低い車体減速度G2 が発生することになる。時期t1 から設定時間Δtが経過して時期t2 になれば、モータ20への電流供給が中止させられるとともにモータ20が初期状態に復元される。
【0061】
その後、わずかな時間が経過した時期t3 には、左右後輪のブレーキ32のモータ30に電流が設定電流値I0 で供給され、それにより、左右後輪のブレーキ32の作動が開始される。その結果、上記の場合と同様に、車速Vが低下するが、このときの勾配すなわち車体減速度Gは左右後輪のブレーキ32の摩擦材μに依存し、上記の場合と同様に、摩擦材μが高い場合には高い車体減速度G3 、摩擦材μが低い場合には低い車体減速度G4 が発生することになる。時期t3 から設定時間Δtが経過して時期t4 になれば、モータ30への電流供給が中止させられるとともにモータ30が初期状態に復元される。
【0062】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コントローラ50のうち図5のルーチンおよび図6のルーチンを実行する部分が「関係推定・利用手段」の一例を構成し、また、図5のルーチンを実行する部分が「関係利用手段」の一例を構成し、また、図6のS13およびS19〜S26を実行する部分が「非ブレーキ操作時取得手段」の一例を構成し、また、車体減速度センサ310が「車体減速度検出手段」の一例を構成し、また、図6のS15およびS17を実行する部分が「第1禁止手段」の一例を構成し、S17を実行する部分が「低速走行時禁止手段」の一例を構成し、また、同図のS14〜S16およびS18を実行する部分が「第2禁止手段」の一例を構成し、また、S14およびS18を実行する部分が「車両駆動力変化時禁止手段」の一例を構成し、また、S15を実行する部分が「旋回時禁止手段」の一例を構成しているのである。
【0063】
次に第2実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0064】
本実施形態においては、非ブレーキ操作時に4輪について同時にブレーキ22,32の作動が行われるとともにそれと同期して車体減速度Gが検出されることにより、実制動トルク値Tが取得される点で、非ブレーキ操作時に前後輪について互いに異なる時期にブレーキ22,32の作動が行われるとともにそれと同期して車体減速度Gが検出されることにより、実制動トルク値Tが前後輪について独立に取得される第1実施形態と相違する。
【0065】
図11には、本実施形態における摩擦材μ推定ルーチンがフローチャートで表されている。以下、その摩擦材μ推定ルーチンを説明するが、第1実施形態における摩擦材μ推定ルーチンと共通するステップについては簡単に説明する。
【0066】
まず、S51において、初期設定が行われ、μ推定フラグが0とされる。次に、S52において、μ推定フラグが0であるか否かが判定される。今回は0であるから、判定がNOとなり、S53において、非ブレーキ操作時であるか否かが判定される。ブレーキ操作時であれば判定がNOとなり、直ちにS52に戻るが、非ブレーキ操作時であれば判定がYESとなり、S54に移行する。S54においては、低速走行時であるか否か、すなわち、車速Vが基準値V0 より低いか否かが判定される。低速走行時であれば判定がYESとなり、直ちにS52に戻るが、低速走行時でなければ判定がNOとなり、S55に移行する。S55においては、摩擦材μの推定精度を低下させる要因が発生したか否かが判定される。精度低下要因には、第1実施形態におけると同様に、加速操作,車両旋回,悪路走行およびA/T12の変速がある。精度低下要因が発生していれば判定がYESとなり、直ちにS52に戻るが、発生していなければ判定がNOとなり、S56以下のステップに移行する。
【0067】
S56においては、ブレーキ22,32の作動が4輪について同時に行われる。ここに「同時に」とは、厳密に同時であることまで要求する用語はでなく、実質的に同時であれば足りる。S57においては、4輪のブレーキ22,32の作動に同期して実供給電流値Iが各輪毎に検出される。S58においては、4輪のブレーキ22,32の作動に同期して車体減速度Gが検出される。
【0068】
その後、S59において、実供給電流値Iと車体減速度Gとから摩擦材μが推定される。具体的には、まず、検出された車体減速度Gに基づき、ブレーキ22,32の能力の前後バランス,車両重量の前後バランス等を考慮して、左右前輪のブレーキ22の実制動トルク値Tの合計値と、左右後輪のブレーキ32の実制動トルク値Tの合計値とがそれぞれ推定され、次に、前者の合計値の半値は各前輪のブレーキ22の実制動トルク値T、後者の合計値の半値は各後輪のブレーキ32の実制動トルク値Tと推定される。その後、各前輪と各後輪とについて、複数種類のI−T特性パターンのうち実供給電流値Iと実制動トルク値Tとの組合せに対応するI−T特性パターンに対応する摩擦材μが摩擦材μの今回推定値とされる。すなわち、本ステップにおいては、4輪のブレーキ22,32の作動の総合的な影響を受けた車体減速度Gに基づいて摩擦材μを推定するにもかかわらず、摩擦材μが左右輪については共通に推定されるのに対して、前後輪については互いに独立に推定されることになるのである。続いて、S60において、μ推定フラグが1とされ、その後、S52に戻る。
【0069】
次に第3実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0070】
本実施形態においては、非ブレーキ操作時に前後輪についてのみならず左右輪についても互いに異なる時期にブレーキ22,32の作動が行われるとともにそれと同期して車体減速度Gが検出されることにより、実制動トルク値Tが各輪毎に独立して取得される点で、非ブレーキ操作時に左右輪について互いに同じ時期にブレーキ22,32の作動が行われるとともにそれと同期して車体減速度Gが検出されることにより、実制動トルク値Tが左右輪については共通に取得される第1実施形態と相違する。
【0071】
図12には、本実施形態における摩擦材μ推定ルーチンがフローチャートで表されている。以下、その摩擦材μ推定ルーチンを説明するが、第1実施形態における摩擦材μ推定ルーチンと共通するステップについては簡単に説明する。
【0072】
まず、S71において、初期設定が行われ、μ推定フラグが0とされる。次に、S72において、μ推定フラグが0であるか否かが判定される。今回は0であるから、判定がNOとなり、S73において、非ブレーキ操作時であるか否かが判定される。ブレーキ操作時であれば判定がNOとなり、直ちにS72に戻るが、非ブレーキ操作時であれば判定がYESとなり、S74に移行する。S74においては、低速走行時であるか否か、すなわち、車速Vが基準値V0 より低いか否かが判定される。低速走行時であれば判定がYESとなり、直ちにS72に戻るが、低速走行時でなければ判定がNOとなり、S75に移行する。S75においては、摩擦材μの推定精度を低下させる要因が発生したか否かが判定される。精度低下要因には、第1実施形態におけると同様に、加速操作,車両旋回,悪路走行およびA/T12の変速がある。精度低下要因が発生していれば判定がYESとなり、直ちにS72に戻るが、発生していなければ判定がNOとなり、S76以下のステップに移行する。
【0073】
S76においては、ブレーキ22,32の作動が4輪について互いに異なる時期に行われる。例えば、左前輪,右前輪,左後輪および右後輪の順に行われる。S77においては、各ブレーキ22,32の作動に同期して実供給電流値Iが各輪毎に検出される。S78においては、各ブレーキ22,32の作動に同期して車体減速度Gが、作動状態にある各輪に関連付けて検出される。各輪に関連付けて検出された車体減速度Gは、各ブレーキ22,32の個別的な作動の強さを反映しており、各ブレーキ22,32の実制動トルク値Tを精度よく反映している。その後、S79において、各輪毎に、実供給電流値Iと車体減速度Gとから摩擦材μが推定される。具体的には、まず、各輪に関連する車体減速度Gに基づいて各輪の実制動トルク値Tが推定され、次に、各輪毎に、複数種類のI−T特性パターンのうち実供給電流値Iと実制動トルク値Tとの組合せに対応するI−T特性パターンに対応する摩擦材μが摩擦材μの今回推定値とされる。続いて、S80において、μ推定フラグが1とされ、その後、S72に戻る。
【0074】
次に第4実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0075】
本実施形態においては、車両が走行している路面の傾斜が急である場合に車体減速度Gに基づく実制動トルク値Tの取得が行われることがあることを前提として、路面の傾斜が急である場合にはその取得が禁止される点で、路面の傾斜は一般には急ではないことを前提とする第1実施形態と相違する。
【0076】
図13には、本実施形態である電動式ブレーキ装置の全体構成が示されている。本実施形態においては、第1実施形態におけるとは異なり、車両が走行している路面の傾斜を検出する路面傾斜センサ340が追加されている。
【0077】
図14には、本実施形態におけるコントローラ342のコンピュータ344のROMに記憶されている摩擦材μ推定ルーチンがフローチャートで示されている。以下、その摩擦材μ推定ルーチンを説明するが、第1実施形態における摩擦材μ推定ルーチンと共通するステップについては簡単に説明する。
【0078】
まず、S81において、初期設定が行われ、μ推定フラグが0とされる。次に、S82において、μ推定フラグが0であるか否かが判定される。今回は0であるから、判定がNOとなり、S83において、非ブレーキ操作時であるか否かが判定される。ブレーキ操作時であれば判定がNOとなり、直ちにS82に戻るが、非ブレーキ操作時であれば判定がYESとなり、S84に移行する。S84においては、低速走行時であるか否か、すなわち、車速Vが基準値V0 より低いか否かが判定される。低速走行時であれば判定がYESとなり、直ちにS82に戻るが、低速走行時でなければ判定がNOとなり、S85に移行する。S85においては、摩擦材μの推定精度を低下させる要因が発生したか否かが判定される。精度低下要因には、第1実施形態におけると同様に、加速操作,車両旋回,悪路走行およびA/T12の変速がある。さらに、本実施形態においては、路面傾斜もある。路面傾斜の有無は、路面傾斜センサ340により検出された路面傾斜角が実質的に0でないか否かにより判定される。精度低下要因が発生していれば判定がYESとなり、直ちにS82に戻るが、発生していなければ判定がNOとなり、S86以下のステップに移行する。
【0079】
S86においては、ブレーキ22,32が各種方式で作動させられる。各種方式には、先のいくつかの実施形態におけるように、(a) 4輪について同時に作動させる方式と、(b) 左右輪については同時に作動させる一方、前後輪については互いに異なる時期に作動させる方式と、(c) 4輪について互いに異なる時期に作動させる方式とがある。S87においては、ブレーキ22,32の作動に同期して、各輪毎に実供給電流値Iが検出される。S88においては、ブレーキ22,32の作動に同期として車体減速度Gが検出される。S89においては、実供給電流値Iと車体減速度Gとからブレーキ22,32の摩擦材μが推定される。その推定方式は、先のいくつかの実施形態に示すように、ブレーキ22,32の作動方式に応じて決定される。その後、S90において、μ推定フラグが1とされ、続いて、S82に戻る。
【0080】
次に第5実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0081】
本実施形態においては、実制動トルクTが車輪減速度GW に基づいて取得される点で、車体減速度Gに基づいて取得される第1実施形態と相違する。
【0082】
図15には、本実施形態である電動式ブレーキ装置の全体構成が示されている。図から明らかなように、本実施形態においては、第1実施形態とは異なり、車体減速度センサ310が設けられてはいない。本実施形態においては、第1実施形態とは異なり、実制動トルク値Tの取得に車体減速度Gの検出が不要であるからである。
【0083】
図16には、本実施形態におけるコントローラ360のコンピュータ362のROMに記憶されている摩擦材μ推定ルーチンがフローチャートで表されている。以下、その摩擦材μ推定ルーチンを説明するが、第1実施形態における摩擦材μ推定ルーチンと共通するステップについて簡単に説明する。
【0084】
まず、S101において、初期設定が行われ、μ推定フラグが0とされる。次に、S102において、μ推定フラグが0であるか否かが判定される。今回は0であるから、判定がNOとなり、S103において、非ブレーキ操作時であるか否かが判定される。ブレーキ操作時であれば判定がNOとなり、直ちにS102に戻るが、非ブレーキ操作時であれば判定がYESとなり、S104に移行する。S104においては、低速走行時であるか否か、すなわち、車速Vが基準値V0 より低いか否かが判定される。低速走行時であれば判定がYESとなり、直ちにS102に戻るが、低速走行時でなければ判定がNOとなり、S105に移行する。S105においては、摩擦材μの推定精度を低下させる要因が発生したか否かが判定される。精度低下要因には、第1実施形態におけると同様に、加速操作,車両旋回,悪路走行およびA/T12の変速がある。精度低下要因が発生していれば判定がYESとなり、直ちにS102に戻るが、発生していなければ判定がNOとなり、S106以下のステップに移行する。
【0085】
S106においては、4輪について同時にブレーキ22,32が作動させられる。S107においては、各ブレーキ22,32の作動に同期して実供給電流値Iが各輪毎に検出される。S108においては、各ブレーキ22,32の作動に同期して車輪減速度GW が各輪毎に演算される。車輪減速度GW の演算は、各ブレーキ22,32の作動に同期して検出された車輪速VW に対して実質的な時間微分を行うことにより行われる。
【0086】
図17には、ブレーキ22,32の作動によって車輪速VW が時間的に変化する様子がグラフで示されている。ブレーキ22,32の摩擦材μが高い場合には、車輪速VW が急な勾配(車輪減速度)GW1で減少するのに対して、摩擦材μが低い場合には、車輪速VW が緩い勾配(車輪減速度)GW2で減少することになる。
【0087】
その後、S109において、各輪毎に、実供給電流値Iと車輪減速度GW とから摩擦材μが推定される。具体的には、まず、各輪の車輪減速度GW に基づいて各輪の実制動トルク値Tが推定され、次に、各輪毎に、複数種類のI−T特性パターンのうち実供給電流値Iと実制動トルク値Tとの組合せに対応するI−T特性パターンに対応する摩擦材μが摩擦材μの今回推定値とされる。続いて、S110において、μ推定フラグが1とされ、その後、S102に戻る。
【0088】
次に第6実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第5実施形態と摩擦材μ推定ルーチンのみが異なり、他の要素については共通するため、摩擦材μ推定ルーチンのみを詳細に説明する。
【0089】
本実施形態においては、摩擦材μ推定がブレーキ操作時に行われる点で、非ブレーキ操作時に行われる第5実施形態と異なっている。
【0090】
図18には、本実施形態における摩擦材μ推定ルーチンがフローチャートで示されている。まず、S201において、初期設定が行われ、それにより、μ推定フラグが0とされる。次に、S202において、μ推定フラグが0であるか否かが判定される。今回は0であるから、判定がYESとなり、S203において、ブレーキ操作時であるか否かが判定される。ブレーキペダルスイッチ304がONであるか否かが判定され、ONであればブレーキ操作時であると判定されるのである。ブレーキ操作時でなければ判定がNOとなり、直ちにS201に戻るが、ブレーキ操作時であれば判定がYESとなり、S204に移行する。S204においては、摩擦材μの推定精度を低下させる要因が発生したか否かが判定される。精度低下要因には、第5実施形態におけると同様に、加速操作,車両旋回,悪路走行およびA/T12の変速があり、さらに、アンチロック制御の実行および車両停止もある。なお、そのアンチロック制御は、コントローラ50が車輪速センサ314からの信号に基づいて各ブレーキ22,32の各モータ20,30を制御することによって実行される。車両停止の有無は、車速センサ312により検出された車速Vが設定値以下であるか否かにより判定される。精度低下要因が発生していれば判定がYESとなり、直ちにS102に戻るが、発生していなければ判定がNOとなり、S205以下のステップに移行する。S205以下のステップにおいては、第5実施形態におけるS107〜S110におけると同様な内容が実行される。
【0091】
次に第7実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0092】
本実施形態においては、各ブレーキ22,32の実制動トルク値Tが専用のセンサにより直接に検出される点で、車体減速度Gに基づいて間接に検出される第1実施形態と相違する。
【0093】
図19には、本実施形態である電動式ブレーキ装置の全体構成が示されている。本実施形態においては、第1実施形態におけるとは異なり、(a) 前輪用の電動式ディスクブレーキ22における実制動トルクTを力として検出する第1力センサ380と、(b) 後輪用の電動式ドラムブレーキ32における実制動トルクTを力として検出する第2力センサ382とが設けられている。また、本実施形態においては、第1実施形態におけるとは異なり、車体減速度センサ310が設けられてはいない。
【0094】
図20には、前輪用の電動式ディスクブレーキ22が示されており、第1力センサ380は、スプリング112とマウンティングブラケット100との間に挟まれて設けられている。図21には、後輪用の電動式ドラムブレーキ32が示されており、第2力センサ382は、一方のブレーキシュー210a,210bとしてのセカンダリシュー210a(負荷が大きい方のブレーキシュー)に設けられている。なお、第2力センサ382は、アンカピン206に設けることが可能である。
【0095】
図22には、本実施形態におけるコントローラ384のコンピュータ386のROMに記憶されている摩擦材μ推定ルーチンがフローチャートで示されている。以下、本ルーチンを説明するが、第1実施形態における摩擦材μ推定ルーチンと共通するステップについては簡単に説明する。
【0096】
まず、S301において、初期設定が行われ、μ推定フラグが0とされる。次に、S302において、μ推定フラグが0であるか否かが判定される。今回は0であるから、判定がNOとなり、S303において、非ブレーキ操作時であるか否かが判定される。ブレーキ操作時であれば判定がNOとなり、直ちにS302に戻るが、非ブレーキ操作時であれば判定がYESとなり、S304に移行する。S304においては、低速走行時であるか否か、すなわち、車速Vが基準値V0 より低いか否かが判定される。低速走行時であれば判定がYESとなり、直ちにS302に戻るが、低速走行時でなければ判定がNOとなり、S305に移行する。S305においては、摩擦材μの推定精度を低下させる要因が発生したか否かが判定される。精度低下要因には、第1実施形態におけると同様に、加速操作,車両旋回,悪路走行およびA/T12の変速がある。精度低下要因が発生していれば判定がYESとなり、直ちにS302に戻るが、発生していなければ判定がNOとなり、S306以下のステップに移行する。
【0097】
S306においては、ブレーキ22,32が各種方式で作動させられる。各種方式には、前述のように、(a) 4輪について同時に作動させる方式と、(b) 左右輪については同時に作動させる一方、前後輪については互いに異なる時期に作動させる方式と、(c) 4輪について互いに異なる時期に作動させる方式とがある。S307においては、ブレーキ22,32の作動に同期して、各輪毎に実供給電流値Iが検出される。S308においては、第1力センサ380および第2力センサ382により、ブレーキ22,32の作動に同期として実制動トルク値Tが検出される。S309においては、各輪毎に、実供給電流値Iと実制動トルク値Tとからブレーキ22,32の摩擦材μが推定される。具体的には、各輪毎に、複数種類のI−T特性パターンのうち実供給電流値Iと実制動トルク値Tとの組合せに対応するI−T特性パターンに対応する摩擦材μが摩擦材μの今回推定値とされる。その後、S309において、μ推定フラグが1とされ、続いて、S302に戻る。
【0098】
なお付言すれば、以上説明した実施形態においては、実供給電流値I,車体減速度G,車輪減速度GW および実制動トルクTのような各物理量の検出が行われるが、各物理量の検出は例えば、検出期間中における検出値のピーク値を最終的な値として使用したり、検出期間中における複数個の検出値の平均値を最終的な値として使用することができる。また、検出期間中における複数個の検出値の積分値を用いて最終的な値を決定することも可能である。
【0099】
以上、本発明の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、それらの他にも、特許請求の範囲を逸脱することなく当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を施した形態で本発明を実施することができるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である電動式ブレーキ装置の全体構成を示す系統図である。
【図2】図1における電動式ディスクブレーキを拡大して示す平面断面図である。
【図3】図1における電動式ドラムブレーキを拡大して示す側面断面図である。
【図4】図3におけるシュー拡張アクチュエータを拡大して示す部分断面側面図である。
【図5】図1のコンピュータのROMに記憶されているブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】上記ROMに記憶されている摩擦材μ推定ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】上記第1実施形態におけるF−T特性を示すグラフである。
【図8】上記第1実施形態におけるI−T特性を示すグラフである。
【図9】上記第1実施形態の構成を概念的に示す系統図である。
【図10】上記第1実施形態において非ブレーキ操作時に車速Vがブレーキの作動によって低下させられる様子を示すグラフである。
【図11】本発明の第2実施形態である電動式ブレーキ装置のコントローラのコンピュータのROMに記憶されている摩擦材μ推定ルーチンを示すフローチャートである。
【図12】本発明の第3実施形態である電動式ブレーキ装置のコントローラのコンピュータのROMに記憶されている摩擦材μ推定ルーチンを示すフローチャートである。
【図13】本発明の第4実施形態である電動式ブレーキ装置の全体構成を示す系統図である。
【図14】図13のコンピュータのROMに記憶されている摩擦材μ推定ルーチンを示すフローチャートである。
【図15】本発明の第5実施形態である電動式ブレーキ装置の全体構成を示す系統図である。
【図16】図15におけるコンピュータのROMに記憶されている摩擦材μ推定ルーチンを示すフローチャートである。
【図17】上記第5実施形態において非ブレーキ操作時に車輪速VW がブレーキの作動によって低下させられる様子を示すグラフである。
【図18】本発明の第6実施形態である電動式ブレーキ装置のコントローラのコンピュータのROMに記憶されている摩擦材μ推定ルーチンを示すフローチャートである。
【図19】本発明の第7実施形態である電動ブレーキ装置の全体構成を示す系統図である。
【図20】上記第7実施形態における電動式ディスクブレーキを拡大して示す平面断面図である。
【図21】上記第7実施形態における電動式ドラムブレーキのシュー拡張アクチュエータを拡大して示す側面断面図である。
【図22】図19におけるコンピュータのROMに記憶されている摩擦材μ推定ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
20,30 モータ
22 電動式ディスクブレーキ
32 電動式ドラムブレーキ
40 ブレーキペダル
42 パーキングペダル
44 アクセルペダル
50,342,360,384 コントローラ
310 車体減速度センサ
314 車輪速センサ
316 モータ電流センサ
320 バッテリ
380 第1力センサ
382 第2力センサ

Claims (16)

  1. 運転者により操作されるブレーキ操作部材と、
    電源と、
    その電源から供給される電力により駆動されるモータの駆動力により摩擦材を車輪と共に回転する回転体に押し付けることにより、車輪を制動するブレーキと、
    ブレーキ操作時に、前記電源から前記モータに電力を供給するとともに、そのときの供給電力値を前記ブレーキ操作部材の操作値に基づいて決定することにより、前記ブレーキを制御するコントローラと
    両走行中であって前記ブレーキの作動中に、前記電源から前記モータに供給される電力の実際値とブレーキが前記車輪に付与する制動トルクの実際値である実制動トルク値とを取得し、それら2つの取得値に基づいて、前記摩擦材の摩擦係数に関連付けられた供給電力値と制動トルク値との関係を推定するとともに、ブレーキ操作時に、前記摩擦材の摩擦係数の変動に伴う前記制動トルクの変動を補償すべく、前記供給電力値を前記推定された関係に従って決定することにおいて、前記推定された関係を利用する関係推定・利用手段
    を含む電動式ブレーキ装置において、
    前記関係が、前記供給電力値が変化するにつれて前記制動トルク値が変化するパターンで定義されるものであり、前記関係推定・利用手段が、前記パターンが取り得る複数種類の候補パターンの中から、前記2つの取得値が対応するものを該当パターンとして選択することにより、前記関係を推定するパターン型関係推定手段を含むことを特徴とする電動式ブレーキ装置。
  2. 前記パターン型関係推定手段が、 (a) 前記複数種類の候補パターンを記憶する候補パターン記憶手段と、 (b) 記憶された複数種類の候補パターンの中から前記該当パターンを選択する該当パターン選択手段とを含む請求項1に記載の電動式ブレーキ装置。
  3. 前記関係推定・利用手段が、前記関係を複数のレベルで段階的に推定する段階的関係推定手段を含む請求項1または2に記載の電動式ブレーキ装置。
  4. 前記関係推定・利用手段が、前記コントローラに設けられ、ブレーキ操作時に、前記操作値に基づいて目標制動トルク値を決定するとともに、前記供給電力値を、決定された目標制動トルク値に基づき、前記推定された関係に従って決定することにおいて、前記推定された関係を利用する関係利用手段を含む請求項1ないし3のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
  5. 前記関係推定・利用手段が、車両走行中の非ブレーキ操作時に、前記電源から前記モータに電力を設定電力値で設定時間供給することによって前記ブレーキを作動させ、その間に前記実制動トルク値を取得する非ブレーキ操作時取得手段を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
  6. 前記非ブレーキ操作時取得手段が、 (a) ブレーキ操作を検出するブレーキ操作センサと、 (b) 車両の走行を検出する車両走行センサとを含み、ブレーキ操作の非検出時かつ車両走行の検出時に前記ブレーキを作動させるものである請求項5に記載の電動式ブレーキ装置。
  7. 車両が、前記車輪を左右にそれぞれ備えたものであり、前記非ブレーキ操作時取得手段が、それら左右輪について同時に前記ブレーキを作動させる手段を含む請求項5または6に記載の電動式ブレーキ装置。
  8. 車両が、前記車輪を前後にそれぞれ備えたものであり、前記非ブレーキ操作時取得手段が、それら前後輪について互いに異なる時期に前記ブレーキを作動させる手段を含む請求項5ないし7のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
  9. 前記非ブレーキ操作時取得手段が、車両の一連の走行が開始された後の最初の非ブレーキ操作時に限り、前記ブレーキを作動させて前記実制動トルク値を取得する最初非ブレーキ操作時取得手段を含む請求項5ないし8のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
  10. 前記関係推定・利用手段が、車体減速度を検出する車体減速度検出手段を含み、検出された車体減速度に基づいて前記実制動トルク値を取得するものである請求項1ないし9のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
  11. 前記関係推定・利用手段が、前記車輪の回転速度である車輪速を検出する車輪速センサを含み、検出された車輪速に基づいてその車輪速の変化速度である車輪減速度を取得し、その取得された車輪減速度に基づいて前記実制動トルク値を取得するものである請求項1ないし9に記載の電動式ブレーキ装置。
  12. さらに、前記関係推定・利用手段が前記ブレーキを作動させると運転者に違和感を与える可能性がある場合に、その関係推定・利用手段による前記ブレーキの作動を禁止する第1禁止手段を含む請求項5または6に記載の電動式ブレーキ装置。
  13. 前記第1禁止手段が、車速が基準値より低い時に前記ブレーキの作動を禁止する低速走行時禁止手段を含む請求項12に記載の電動式ブレーキ装置。
  14. さらに、前記関係推定・利用手段が前記関係を精度よく推定することができない可能性がある場合に、その関係推定・利用手段による前記推定と前記利用とのうち少なくとも利用を禁止する第2禁止手段を含む請求項1ないし13のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
  15. 前記第2禁止手段が、車両の駆動力の変化時に前記少なくとも利用を禁止する車両駆動力変化時禁止手段を含む請求項14に記載の電動式ブレーキ装置。
  16. 前記第2禁止手段が、車両の旋回時に前記少なくとも利用を禁止する旋回時禁止手段を含む請求項14または15に記載の電動式ブレーキ装置。
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