JP4109741B2 - 電動式ブレーキ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータを駆動源とする電動式ブレーキに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記電動式ブレーキは一般に、(a) 摩擦面を有して車輪と共に回転する回転体と、(b) 摩擦面に押し付けられて回転体の回転を抑制する摩擦材と、(c) ブレーキペダル等、ブレーキ操作部材の操作に基づき、電力によって駆動されるモータと、(d) 回動により摩擦材を摩擦面に押し付ける回動部材と、(e) その回動部材にモータの駆動力を伝達する力伝達機構とを含むように構成される。
【0003】
この電動式ブレーキの一従来例が欧州特許出願公開公報EP0594233A1に記載されている。この電動式ブレーキにおいては、力伝達機構が、モータの駆動力を回動部材としてのレバーに、モータの駆動力によって一直線に沿って駆動される剛体のシャフトを介して伝達する構造を有するものとされていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段,作用および効果】
この従来の電動式ブレーキにおいては、モータによる駆動時に、シャフト上の各点は一直線に沿って移動するのに対して、レバー上の各点は一円周に沿って移動する。このように、シャフト上の各点とレバー上の各点との間では移動軌跡が互いに異なる。そのため、この従来の電動式ブレーキにおいては、モータによる駆動時に、シャフトとレバーとの間にシャフトの移動方向と交差する方向に滑りすなわち摩擦が生じ、それにより、それらシャフトとレバーとの接触部が摩耗し易いという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであり、その課題は、力伝達機構における部材間の摩耗を抑制し得る電動式ブレーキを提供することにある。
【0006】
この課題は下記態様の電動式ブレーキによって解決される。なお、以下の説明において、本発明の各態様を、それぞれに項番号を付して請求項と同じ形式で記載する。各項に記載の特徴を組み合わせて採用することの可能性を明示するためである。
【0007】
(1) 内周面に摩擦面を備え、車輪と共に回転するドラムと、
車体に回転不能に取り付けられたバッキングプレートと、
そのバッキングプレートに相対移動可能に取り付けられた一対のブレーキシューに保持され、前記摩擦面に押し付けられて前記ドラムの回転を抑制する一対のブレーキラニングと、
第一ブレーキ操作部材の操作に基づき、電力によって駆動されるモータと、
回動により前記一対のブレーキラニングを前記摩擦面に押し付ける回動部材と、
その回動部材に前記モータの駆動力を伝達する力伝達機構と
を含む電動式ブレーキであって、
前記モータが、前記バッキングプレートに固定されるとともに、前記回動部材に、直接、2つの可撓性を有する中継部材が連結され、前記力伝達機構が、それら2つの中継部材のうちの一方を介して前記モータの駆動力を前記回動部材に伝達する構造を有するものであり、当該電動式ブレーキが、前記2つの中継部材のうちの他方を介して前記第一ブレーキ操作部材とは別の第二ブレーキ操作部材の操作による引張力を前記回動部材に付与する力付与機構を含み、かつ、前記第一ブレーキ操作部材が、運転者によって、車両を減速および停止させるために操作される部材であり、前記第二ブレーキ操作部材が、運転者によって、車両を停止状態に保つために操作される部材であることを特徴とする電動式ブレーキ〔請求項1〕。
このブレーキは、電動式のドラムブレーキである。電動式のドラムブレーキにおいては、モータがバッキングプレートに固定される。そして、モータの駆動力が回動部材に、可撓性を有する中継部材を介して伝達される。したがって、このブレーキによれば、モータの駆動時に、中継部材と回動部材との間にそれらの接触部において滑りすなわち摩擦が生じなくなり、よって、力伝達機構における2部材の接触部の摩耗が抑制される。
このブレーキにおいて「可撓性を有する中継部材」は、剛体の中継部材より変形し易いものであればよく、後述の、フレキシブルなワイヤで構成したり、フレキシブルなロッドで構成したり、フレキシブルなリーフスプリングで構成することができる。
また、このブレーキにおいては、可撓性を有する2つの中継部材が回動部材に直接連結される。一方の中継部材には、第1ブレーキ操作部材の操作に基づくモータの駆動による駆動力が付与され、他方の中継部材には、第2ブレーキ操作部材の操作力に応じた引張力が付与される。第1ブレーキ操作部材が、主ブレーキ操作のために運転者により操作される主ブレーキ操作部材であり、第2ブレーキ操作部材が、パーキングブレーキ操作のために運転者により操作されるパーキングブレーキ操作部材である。ここに「主ブレーキ操作」とは、車両を減速および停止させるために、通常行われる主要なブレーキ操作をいう。また、「パーキングブレーキ操作」とは、車両を停止状態に保持するために行われるブレーキ操作をいう。
引張力を回動部材に付与する中継部材が可撓性を有しない場合には、一方のブレーキ操作部材の操作のために引張力を中継部材を介して回動部材に付与しようとしても、その付与が他方の中継部材によって妨げられてしまう。これに対して、このブレーキにおいては、いずれの中継部材も可撓性を有しており、一方のブレーキ操作のために引張力を一方の中継部材を介して回動部材に付与しようとすれば、それに応じて他方の中継部材が撓むことになる。このように、ブレーキ操作の種類を問わず、引張力が回動部材に付与されれば、回動部材が同じ向きに回動させられる。したがって、このブレーキによれば、中継部材の可撓性を利用することにより、複雑な機構なしでも、一方のブレーキ操作が他方のブレーキ操作のための中継部材によって阻害されてしまうことが防止される。同じ回動部材により2種類のブレーキ操作を行い得るのであり、よって、ブレーキ操作の種類毎に回動部材を設ける場合に比較して当該ブレーキ装置の小形化,軽量化および低コスト化が容易となる。
(2)前記回動部材が、前記モータの駆動力を倍力するレバーである(1)項に記載の電動式ブレーキ。
(3)前記回動部材が、前記摩擦材に回動可能に取り付けられている(1)または(2)項に記載の電動式ブレーキ。
(4)前記力伝達機構が、前記モータの駆動力を前記回動部材に引張力として伝達するものである(1)ないし(3)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ。
(5)前記2つの中継部材が、それぞれ、フレキシブルなワイヤで構成されており、前記力伝達機構が、前記モータの駆動力を前記回動部材に引張力として伝達するものであり、かつ、前記一方の中継部材の一端部が、前記モータの回転軸の回転運動を出力部材の直線運動に変換する運動変換機構の前記出力部材に固定された(1)ないし(4)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ〔請求項2〕。
このブレーキによれば、可撓性を有する中継部材を容易に構成し得る。
このブレーキにおいて「中継部材」は、1本のワイヤで構成したり、複数本のワイヤで構成することができる。複数本のワイヤをより合わせたケーブルで構成することもできる。
(6)前記力付与機構が、前記第二ブレーキ操作部材の操作に基づいて機械的に引張力を発生させる機械的力発生機構を含む(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の電動式ブレーキ。
(7)前記力付与機構が、前記第二ブレーキ操作部材の操作に基づいて電気的に引張力を発生させる電気的力発生機構を含む(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の電動式ブレーキ。
(8)前記第二ブレーキ操作部材が、非常ブレーキ操作のために運転者により操作される非常ブレーキ操作部材であり、前記力付与機構が、その非常ブレーキ操作部材の操作に基づいて機械的に引張力を発生させる機械的力発生機構を含む(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の電動式ブレーキ。
ここに「非常ブレーキ操作」とは、電動式ブレーキのうち主ブレーキ操作に関連する部分が故障した非常状態で、車両を減速および停止させるために行われるブレーキ操作をいう。
(9)当該電動式ブレーキが、前記回動部材の回動により前記一対のブレーキシューを駆動する駆動機構であって、回動部材の回動ストロークを拡大して前記一対のブレーキシューに伝達するものを含む(1) ないし(8)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ〔請求項3〕。
この電動式ブレーキによれば、一対のブレーキシューに同じストロークを生じさせるのに必要な回動部材の回動ストロークが回動部材の回動ストロークを拡大しないでブレーキシューに伝達する場合におけるより減少し、その結果、電動式ブレーキの作動応答性を容易に向上させ得る。
(10)前記駆動機構が、(a)前記回動部材と連動する入力部材と、(b)前記一対のブレーキシューと連動する出力部材と、(c)前記入力部材の作動力を前記出力部材に、入力部材の作動ストロークを拡大した作動ストロークが出力部材に生じるように伝達するてことを含む(9)項に記載の電動式ブレーキ〔請求項4〕。
(11)前記入力部材および出力部材が、前記ドラムの回転軸線とほぼ直角な一平面内に実質的に含まれるかまたはその平面と実質的に平行に配置され、前記てこが、前記平面とほぼ直角な回動軸線のまわりに回動可能に連結されている(10)項に記載の電動式ブレーキ。
(12)前記回動部材が、前記平面とほぼ直角な回動軸線のまわりに回動可能に連結されたレバーである(11)項に記載の電動式ブレーキ。
(13)前記レバーとてことブレーキシューとが前記平面上を作動させられる(12)項に記載の電動式ブレーキ。
この電動式ブレーキによれば、レバーの回動により入力部材にも出力部材にもモーメントが発生せずに済み、駆動機構の構造が複雑化せずに済む。
(14)摩擦面を有して前記車輪と共に回転するドラムと、
前記摩擦面に押し付けられて前記回転体の回転を抑制する一対のブレーキライニングと、
そのブレーキライニングがそれぞれ固着された一対のブレーキシューと、
ブレーキ操作部材の操作に基づき、電力によって駆動されるモータと、
そのモータにより回動させられる主レバーと、
その主レバーの回動により前記一対のブレーキシューを駆動する駆動機構であって、レバーの回動ストロークを拡大して前記一対のブレーキシューに伝達すのものと
を含むことを特徴とする電動式ドラムブレーキ。
この電動式ドラムブレーキによれば、前記(10)項に記載の電動式ブレーキと同様な原理により、電動式ドラムブレーキの作動応答性を容易に向上させ得る。
(15)前記駆動機構が、
(a) 前記主レバーと連動する入力部材と、
(b) 前記一対のブレーキシューと連動する出力部材と、
(c) 前記入力部材の作動力を前記出力部材に、入力部材の作動ストロークを拡大した作動ストロークが出力部材に生じるように伝達する中間レバーとを含む(14)項に記載の電動式ドラムブレーキ。
(16)前記入力部材および出力部材が、前記ドラムの回転軸線とほぼ直角な一平面内に実質的に含まれるかまたはその平面と実質的に平行に配置され、前記中間レバーが、前記平面とほぼ直角な回動軸線のまわりに回動可能に連結されている(15)項に記載の電動式ドラムブレーキ。
(17)前記主レバーが、前記平面とほぼ直角な回動軸線のまわりに回動可能に連結されている(16)項に記載の電動式ドラムブレーキ。
(18)前記主レバーと中間レバーと一対のブレーキシューとが前記平面上を作動させられる(17)項に記載の電動式ドラムブレーキ。
この電動式ドラムブレーキによれば、主レバーの回動により入力部材にも出力部材にもモーメントが発生せずに済み、駆動機構の構造が複雑化せずに済む。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0009】
図1には、本発明の第1実施形態である電動式ドラムブレーキを含む電動式ブレーキ装置の全体構成が示されている。この電動式ブレーキ装置は、左右前輪FL,FRと左右後輪RL,RRとを備えた4輪車両に設けられている。この車両は、原動機としてのエンジン10(内燃機関)と、駆動力伝達装置としてのオートマチックトランスミッション12(以下、「A/T」と略称する。)とを備えており、それらエンジン10とA/T12とにより左右前輪と左右後輪との少なくとも一方が駆動されることにより、車両が駆動される。
【0010】
左右前輪FL,FRにはモータ20を駆動源とする電動式ディスクブレーキ22が設けられている。一方、左右後輪RL,RRにはモータ30を駆動源とする電動式ドラムブレーキ32が設けられている。本実施形態においては、それらモータ20,30が共にDCモータとされているが、共に超音波モータとしたり、前輪側は超音波モータ、後輪側はDCモータとしたり、前輪側はDCモータ、後輪側は超音波モータとすることができる。
【0011】
この車両には、運転者により操作される部材がいくつか設けられている。そのいくつかの操作部材には、主ブレーキ操作部材(ブレーキ操作部材の一例)としてのブレーキペダル40と、パーキングブレーキ操作部材(第2のブレーキ操作部材の一例)としてのパーキングペダル42と、加速操作部材としてのアクセルペダル44と、ステアリングホイール46とがある。ブレーキペダル40が操作されれば、4輪の電動式ブレーキ22,32が作動させられ、それにより、車両が制動される。パーキングペダル42が操作されれば、左右後輪の電動式ドラムブレーキ32が作動させられ、それにより、車両が駐車される。アクセルペダル44が操作されれば、エンジン10の駆動力が増加させられ、それにより、車両が駆動される。ステアリングホイール46が回転操作されれば、それに応じて操舵車輪が図示しない操舵装置によって操舵される。
【0012】
この電動式ブレーキ装置においては、ブレーキペダル40の操作時(主ブレーキ操作時)には、コントローラ50により4輪の電動式ブレーキ22,32がモータ20,30の駆動力により作動させられることによって車両が制動される。したがって、この電動式ブレーキ装置においては、ブレーキペダル40の操作時に運転者がブレーキペダル40に力を付与することは不可欠ではない。しかし、運転者のペダル操作フィーリングを従来の液圧式ブレーキ装置と同等のものにするためには、運転者がブレーキペダル40に操作力を付与すればそれに応じてブレーキペダル40の操作ストロークが変化することが必要である。そのため、本実施形態においては、操作力に応じた操作ストロークをブレーキペダル40に発生させるため、ブレーキペダル40にストロークシミュレータ52が設けられている。このストロークシミュレータ52は、(a) ブレーキペダル40と連動する連動部材54と、(b) その連動部材54をガイドするガイド部材56と、(c) 連動部材54の移動によって伸縮させられて弾性力が増減させられる弾性部材としてのスプリング58とを備え、そのスプリング58の弾性により、操作力に応じた長さの操作ストロークをブレーキペダル40に発生させる構成とされている。
【0013】
図2には、左右前輪用の電動式ディスクブレーキ22の詳細が示されている。ただし、図には、右前輪FR用の電動式ディスクブレーキ22のみが代表的に示されている。
【0014】
この電動式ディスクブレーキ22は、図示しない車体に取り付けられた固定部材としてのマウンティングブラケット100と、両側に摩擦面102a,102bを備えて車輪と共に回転するディスク104とを備えている。マウンティングブラケット100は、(a) 一対のブレーキパッド106a,106bをディスク104を両側から挟む位置においてディスク104の回転軸線に沿って移動可能に支持する部分と、(b) ディスク104との接触時に各ブレーキパッド106a,106bに発生する摩擦力を受ける部分(受け部材)とを備えている。図において矢印Xは、車体前進時にディスク104が回転する方向を示している。
【0015】
一対のブレーキパッド106a,106bのうち車体外側(図において右側)のアウタパッド106aは、ディスク104との接触時にディスク104との連れ回りが実質的に阻止される状態でマウンティングブラケット100に支持されている。これに対して、車体内側(図において左側)のインナパッド106bは、アウタパッド106aとは異なり、ディスク104との接触時にディスク104との連れ回りが積極的に許容される状態でマウンティングブラケット100に支持されている。図において矢印Yは、インナパッド106bの連れ回り方向を示している。
【0016】
ただし、インナパッド106bの連れ回りは、常に許容されるのではなく、ディスク104との間に発生した摩擦力が設定値より小さい状態では阻止され、設定値以上になった状態ではじめて許容されるようになっている。このような連れ回り制御を実現するため、本実施形態においては、インナパッド106bの前端部110が、弾性部材としてのスプリング112を介してマウンティングブラケット100に係合させられている。インナパッド106bの摩擦力が設定値より小さい状態では、スプリング112が弾性変形せずにインナパッド106bの連れ回りが阻止され、設定値以上となった状態ではじめてスプリング112が弾性変形してインナパッド106bの連れ回りが許容されるのである。また、本実施形態においては、インナパッド106bの連れ回り量が設定値となったときにマウンティングブラケット100に当接するストッパ114が設けられている。これにより、インナパッド106bの連れ回り限度が規制され、ひいては、後述のセルフサーボ効果の過大化が防止される。
【0017】
電動式ディスクブレーキ22はさらに、ディスク104の回転軸線方向には移動可能、ディスク104の回転方向には移動不能なボデー120を備えている。ボデー120は、ディスク104の回転軸線に平行に延びる姿勢で車体に取り付けられた図示しない複数本のピンに摺動可能に嵌合されている。ボデー120は、ディスク104を跨き、一対のブレーキパッド106a,106bを背後から挟む姿勢で車体に取り付けられている。ボデー120は、(a) アウタパッド106aに背後から係合するリアクション部126と、(b) インナパッド106bに背後において近接する押圧部128と、(c) それらリアクション部126と押圧部128とを互いに連結する連結部130とを含むように構成されている。
【0018】
押圧部128においては、モータ20が運動変換機構としてのボールねじ機構132を介して押圧部材134に同軸に連結されている。押圧部材134は押圧部128により、押圧部材134の軸線回りに回転不能かつその軸線方向に移動可能に支持されている。したがって、モータ20の回転軸136が回転すればその回転運動がボールねじ機構132によって押圧部材134の直線運動に変換される。それにより、押圧部材134がそれの軸線に沿って前後に移動させられ、その移動によってインナパッド106b、ひいてはアウタパッド106aに押圧力が付与され、それにより、一対のブレーキパッド106a,106bがディスク104に押圧される。
【0019】
アウタパッド106aにおいては、裏板140の板厚がディスク回転方向Xにおいて均一とされているが、インナパッド106bにおいては、それの連れ回り方向Yにおいて後側(車体において後側)から前側(車体において前側)に進むにつれて板厚が漸減するようにされている。インナパッド106bの裏板140の背面が、ディスク104の摩擦面102に対する斜面142とされ、押圧部材134の前端面がその斜面142においてインナパッド106bと接触させられているのである。さらに、その斜面142と押圧部材134の前端面とはそれらの面に沿って相対移動可能とされている。したがって、インナパッド106bの連れ回りが行われる状態では、インナパッド106bがディスク104と押圧部材134との間においてくさびとして機能し、電動式ディスクブレーキ22のセルフサーボ効果が実現される。なお、本実施形態においては、押圧部材134の軸線が斜面142と直角とされている。
【0020】
本実施形態においては、押圧部材134の前端面において複数のボール144(ローラ等でも可。)が押圧部材134の軸線回りの一円周に沿ってほぼ等間隔で保持されるとともに、各ボール144が転動可能に保持されている。インナパッド106bの裏板140と押圧部材134とがスラストベアリング146により互いに接触させられているのであり、それらインナパッド106bと押圧部材134との間の摩擦が低減されている。
【0021】
次にこの電動式ディスクブレーキ22の作動を説明する。
【0022】
運転者によりブレーキペダル40が操作され、それに伴ってモータ20が回転させられて押圧部材134が非作動位置から前進させられれば、一対のブレーキパッド106a,106bが一緒にディスク104に押圧され、それにより、各ブレーキパッド106a,106bとディスク104との間に摩擦力が発生し、車輪が制動される。
【0023】
インナパッド106bの摩擦力が設定値より低く、スプリング112の設定荷重に打ち勝つことができない状態では、スプリング112によってインナパッド106bの連れ回りが阻止され、それにより、セルフサーボ効果の発生が阻止される。したがって、電動式ディスクブレーキ22の効き当初,弱いブレーキ操作時等であるためにインナパッド106bの摩擦力が小さい状態では、モータ20の駆動のみにより車輪が制動される。
【0024】
これに対して、インナパッド106bの摩擦力が設定値以上となり、スプリング112の設定荷重に打ち勝つことができる状態となれば、スプリング112によってインナパッド106bの連れ回りが許容される。インナパッド106bが連れ回れば、それに伴って斜面142が一体的に移動し、その結果、ディスク104の摩擦面102と斜面142との距離が増加する。それにより、インナパッド106bがディスク104と押圧部材134とにより板厚方向に強く圧縮され、その結果、インナパッド106bが大きな力でディスク104に押圧される。したがって、ブレーキペダル40が強く(例えば、車体に0.3ないし0.6G程度の減速度が発生する程度に)操作されたためにインナパッド106bの摩擦力が大きくなった状態では、インナパッド106bがくさびとして機能し、その結果、モータ20の駆動とセルフサーボ効果との双方により車輪が制動される。
【0025】
インナパッド106bの摩擦力がさらに増加してストッパ114がマウンティングブラケット100と当接すれば、インナパッド106bの更なる連れ回りが阻止され、それにより、セルフサーボ効果の過大化が阻止される。
【0026】
図3には、左右後輪用の電動式ドラムブレーキ32の詳細が示されている。ただし、図には、右後輪用の電動式ドラムブレーキ32のみが代表的に示されている。
【0027】
この電動式ドラムブレーキ32は、図示しない車体に取り付けられた非回転部材としての、ほぼ円板状を成すバッキングプレート200と、内周面に摩擦面202を備えて車輪と共に回転するドラム204とを備えている。バッキングプレート200の一直径方向に隔たった2箇所には、それぞれアンカ部材としてのアンカピン206と中継リンクとしてのアジャスタ208とが設けられている。アンカピン206はバッキングプレート200に位置固定に取り付けられている。アンカピン206はドラム204の回転軸線に平行に延びている。一方、アジャスタ208はフローティング式とされている。それらアンカピン206とアジャスタ208との間には、各々円弧状を成す一対のブレーキシュー210a,210bがドラム204の内周面に対面するように取り付けられている。一対のブレーキシュー210a,210bは、シューホールドダウン装置212a,212bによってバッキングプレート200にそれの面に沿って移動可能に取り付けられている。なお、バッキングプレート200の中央に設けられた貫通穴には、図示しないアクスルシャフトが回転可能に突出して設けられるようになっている。
【0028】
一対のブレーキシュー210a,210bは、一端部同士がアジャスタ208により作動的に連結される一方、各他端部がアンカピン206と当接することによって回動可能に支持されている。一対のブレーキシュー210a,210bの一端部同士は、アジャスタスプリング214によりアジャスタ208を介して互いに接近する向きに付勢されている。一方、一対のブレーキシュー210a,210bの各他端部は各シューリターンスプリング215a,215bによりアンカピン206に向かって付勢されている。各ブレーキシュー210a,210bの外周面にブレーキライニング216a,216bが保持され、それら一対のブレーキライニング216a,216bがドラム204の内周面に接触させられることにより、それらブレーキライニング216a,216bとドラム204との間に摩擦力が発生する。アジャスタ208は、一対のブレーキシュー210a,210bの摩耗に応じて一対のブレーキライニング216a,216bとドラム204との隙間を調整する。
【0029】
各ブレーキシュー210a,210bはリム220とウェブ222とから構成されており、一対のブレーキシュー210a,210bの一方のウェブ222には、レバー230(主レバー)が回動可能に取り付けられている。そのウェブ222にレバー支持部材としてのピン232が位置固定に取り付けられ、そのピン232にレバー230の一端部が回動可能に連結されている。このレバー230と他方のブレーキシュー210bとの互いに対向する部分の切欠きには、力伝達部材としてのストラット236の両端が係合させられている。すなわち、この電動式ドラムブレーキ32は、車体の前進時にも後退時にも、いずれのブレーキシュー210a,210bにもセルフサーボ効果が発生するデュオサーボ型なのである。なお、本実施形態においては、レバー230が、一対のブレーキシュー210a,210bのうち車体前進時にセカンダリシューとして作用するブレーキシュー210aに取り付けられているが、プライマリシューとして作用するブレーキシュー210bに取り付けることが可能である。
【0030】
この電動式ドラムブレーキ32は、ブレーキペダル40の操作時であるかパーキングペダル42の操作時(パーキングブレーキ操作時)であるかを問わず、同じレバー230の回動によって作動させられる。そのため、レバー230の他端部に主ブレーキケーブル240の一端部とパーキングブレーキケーブル242の一端部とが連結されている。各ケーブル240,242は、複数本のワイヤをより合わせて構成されており、フレキシブルである。なお、レバー230の他端部とバッキングプレート200との間には、従来の液圧式ブレーキ装置におけると同様に、圧縮型のスプリング244がパーキングブレーキケーブル242と同軸に配設されている。
【0031】
主ブレーキケーブル240は、バッキングプレート200に取り付けられたシュー拡張アクチュエータ250により駆動される。シュー拡張アクチュエータ250は、図4に拡大して示すように、モータ30の回転軸に減速機252の入力軸が連結され、その減速機252の出力軸に運動変換機構としてのボールねじ機構254の入力部材が連結されて構成されており、そのボールねじ機構254の出力部材に主ブレーキケーブル240の他端部が連結されている。ボールねじ機構254は、モータ30の回転運動を直線運動に変換する機構である。図において符号256および258は共にブラケットを示し、また、符号260および262は共に、各ブラケット256,258をバッキングプレート200へ取り付けるための取付けボルトを示している。
【0032】
ボールねじ機構254は、入力部材としてのおねじ264に出力部材としてのナット266が図示しない複数個のボールを介して螺合されて構成されている。ナット266は固定部材としてのハウジング267に回転不能かつ軸方向移動可能に嵌合されている。それにより、おねじ264の回転運動がナット266の直線運動に変換される。ナット266の両端部のうちおねじ264の側とは反対側の端部に出力シャフト268が同軸に取り付けられている。それらおねじ264,ナット266および出力シャフト268の相互の摺動部へのダストの侵入が、ハウジング267および伸縮可能なダストブーツ270により阻止されている。
【0033】
出力シャフト268と主ブレーキケーブル240の他端部との結合は次のような構成により行われる。すなわち、出力シャフト268の両端部のうちボールねじ機構254の側とは反対側の端部にケーブル取付け用おねじ272が形成される一方、主ブレーキケーブル240の他端部にケーブル取付け用ナット274が結合されている。そのケーブル取付け用ナット274がケーブル取付け用おねじ272に螺合され、そのケーブル取付け用おねじ272に回り止め用ナット276が螺合されるとともに、その回り止め用ナット276がケーブル取付け用ナット274に押し付けられることにより、ケーブル取付け用ナット274の緩みが防止されている。
【0034】
以上のように構成されたシュー拡張アクチュエータ250は、ブレーキペダル40の操作時に主ブレーキケーブル240に引張力を付与し、それにより、レバー230の他端部がブレーキシュー210から離間する向きに回動させられ、その結果、ストラット236により一対のブレーキシュー210a,210bが拡張される。
【0035】
この電動式ドラムブレーキ32は、一対のブレーキシュー210a,210bをそれに発生するセルフサーボ効果に打ち勝って収縮させるのに効果的なシュー収縮機構を備えている。シュー収縮機構は、本実施形態においては、レバー230とバッキングプレート200との間に張り渡された主ブレーキリターンスプリング280とされている。この主ブレーキリターンスプリング280は、主ブレーキケーブル240と同軸に張り渡されるとともに、一端部がレバー230の他端部に、他端部がシュー拡張アクチュエータ250のうちの固定部分(例えば、ハウジング,ブラケット等)にそれぞれ係合させられている。したがって、ブレーキペダル40の操作の解除時に、シュー拡張アクチュエータ250が初期位置に向かって戻されれば、レバー230は主ブレーキリターンスプリング280の圧縮力によって初期位置に向かって回動させられる。ただし、この電動式ドラムブレーキ32にそのようなシュー収縮機構を追加することは不可欠なことではなく、例えば、既存のスプリングであるアジャスタスプリング214やシューリターンスプリング215a,215bの弾性力を増加させることによって同じ目的を達成することは可能である。
【0036】
パーキングブレーキケーブル242の他端部は、図1に示すように、よく知られているパーキングコントロール284に連結されている。そのパーキングコントロール284は、パーキングペダル42の操作力により機械的に作動し、パーキングコントロール284に引張力を、一対のブレーキシュー210a,210bが拡張する向き(以下、単に「シュー拡張方向」という。)にレバー230が回動する向きに付与する。
【0037】
図3に示すように、ブレーキペダル40の操作時には、シュー拡張アクチュエータ250により、主ブレーキケーブル240のみに引張力が付与されてレバー230がシュー拡張方向に回動させられ、このとき、パーキングブレーキケーブル242は撓ませられる。また、パーキングペダル42の操作時には、パーキングコントロール284により、パーキングブレーキケーブル242のみに引張力が付与されてレバー230がシュー拡張方向に回動させられ、このとき、主ブレーキケーブル240は撓ませられる。このように、同じレバー230に連結されて互いに異なる時期に作用させられる2つのケーブル240,242が共に変形可能なため、一方のケーブルの作用が他方のケーブルによって阻害されることがない。
【0038】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、モータ30の駆動力がレバー230に、変形可能な主ブレーキケーブル240を介して伝達されるため、モータ30の駆動時に、主ブレーキケーブル240とレバー230との間にそれらの接触部において滑りすなわち摩擦が生じなくなり、その結果、それら主ブレーキケーブル240とレバー230との接触部の摩耗が抑制される。
【0039】
さらに、本実施形態によれば、モータ30の駆動時に、主ブレーキケーブル240とレバー230との間にそれらの接触部において滑りが生じなくなるため、その接触部に異物が侵入し難くなる。
【0040】
さらにまた、本実施形態によれば、レバー230とシュー拡張アクチュエータ250とを互いに連結する主ブレーキケーブル240がフレキシブルであるため、シュー拡張アクチュエータ250のレバー230に対する相対位置を比較的自由に変更し得、よって、シュー拡張アクチュエータ250の配設位置の自由度が向上する。
【0041】
さらにまた、本実施形態によれば、同じレバー230により2種類のブレーキ操作、すなわち、主ブレーキ操作とパーキングブレーキ操作とを行い得るため、ブレーキ操作の種類毎にレバーを設ける場合に比較して電動式ドラムブレーキ32の小形化,軽量化および低コスト化が容易となる。
【0042】
さらにまた、本実施形態においては、同じレバー230と連結された主ブレーキケーブル240とパーキングブレーキケーブル240とがいずれもフレキシブルであるため、主ブレーキ操作時にはパーキングブレーキケーブル242が撓んでレバー230の回動を阻害せず、また、パーキングブレーキ操作時には主ブレーキケーブル240が撓んでレバー230の回動を阻害せず、よって、特別な機構なしで、いずれのブレーキ操作も支障なく行い得る。
【0043】
ところで、レバー230とシュー拡張アクチュエータ250とを剛体のリンクにより、シュー拡張アクチュエータ250からレバー230へ向かう力もその逆向きの力も伝達可能に互いに連結した場合を想定すれば、この場合には、パーキングブレーキ操作時にレバー230からシュー拡張アクチュエータ250に力が作用してしまう。一方、シュー拡張アクチュエータ250においては、減速機252およびボールねじ機構254が、モータ30(入力側)から出力シャフト268(出力側)へ向かう力に対しては倍力作用を果たす一方、逆に出力側から入力側へ向かう力に対しては力伝達抑制作用を果たすことになる。そのため、シュー拡張アクチュエータ250が連結されたレバー230を作用位置に向かって作動させるためには、レバー230が、力伝達抑制作用の下にシュー拡張アクチュエータ250にそれを作用位置に向かって作動させるための力を付与しなければならず、その分、パーキングブレーキペダル42の操作力が増加してしまうことになる。これに対して、本実施形態においては、パーキングブレーキ操作時には、主ブレーキケーブル240が撓むため、レバー230の作用位置への作動が力伝達抑制作用によって妨げられることがなく、よって、同じレバー230を主ブレーキとパーキングブレーキとに共用することに起因するパーキングペダル42の操作力増加が防止される。
【0044】
すなわち、本実施形態においては、ブレーキペダル40が「ブレーキ操作部材」の一例を構成し、また、レバー230が「回動部材」の一例を構成し、ボールねじ機構254および主ブレーキケーブル240が互いに共同して「力伝達機構」の一例を構成し、また、主ブレーキケーブル240が「中継部材」の一例を構成しているのである。また、パーキングペダル42が「第2のブレーキ操作部材」の一例を構成し、また、パーキングコントロール284およびパーキングブレーキケーブル242が互いに共同して「力付与機構」の一例を構成し、また、パーキングブレーキケーブル242が「第2の中継部材」の一例を構成しているのである。
【0045】
以上、この電動式ブレーキ装置のハードウェア構成を説明したが、次にソフトウェア構成を説明する。
【0046】
図1に示すように、コントローラ50は、CPU,ROMおよびRAMを含むコンピュータ300を主体として構成されている。このコントローラ50の入力側にはいくつかのセンサおよびスイッチが接続されている。そのいくつかのセンサおよびスイッチには、操作力センサ302,ブレーキペダルスイッチ304,アクセルペダルスイッチ306,舵角センサ308,車体減速度センサ310,車速センサ312,4個の車輪速センサ314およびモータ電流センサ316がある。
【0047】
操作力センサ302は、ブレーキペダル40の操作力Fを検出し、その大きさを規定する信号を出力する。ブレーキペダルスイッチ304は、ブレーキ操作センサの一例であり、ブレーキペダル40の非操作時にはOFF信号(第1信号)、操作時にはON信号(第2信号)を出力する。アクセルペダルスイッチ306は、加速操作センサの一例であり、アクセルペダル44の非操作時にはOFF信号(第1信号)、操作時にはON信号(第2信号)を出力する。舵角センサ308は、旋回センサの一例であり、ステアリングホイール46の回転操作角θを検出し、その大きさを規定する信号を出力する。車体減速度センサ310は、車体の前後方向における減速度Gを検出し、その高さを規定する信号を出力する。車速センサ312は、車速Vを検出し、その大きさを規定する信号を出力する。4個の車輪速センサ314は4輪にそれぞれ設けられ、各輪の車輪速VW を検出し、その大きさを規定する信号を出力する。モータ電流センサ316は、4輪の電動式ブレーキ22,32の各々のモータ20,30のコイルに接続され、電源としてのバッテリ320からドライバ322を経てそのモータ20,30に実際に供給された電流を検出し、その実供給電流値Iを規定する信号を出力する。その出力信号は、電圧により表されるものであり、結局、モータ電流センサ316は、実供給電流値Iを電圧の高さとしてコントローラ50に出力することになる。
【0048】
一方、コントローラ50の出力側には、上記ドライバ322が接続されている。ブレーキペダル40の操作時には、コントローラ50からそのドライバ322に指令が供給され、その指令に応じてドライバ322が電流をバッテリ320から各電動式ブレーキ22,32のモータ20,30に供給する。コントローラ50の出力側にはさらに、エンジン10の図示しないエンジン出力制御装置(スロットル制御装置,燃料供給制御装置,点火時期制御装置等)と、A/T12の図示しない変速制御装置(変速ソレノイド等を含む)とが接続されている。コントローラ50は、車両駆動時に、駆動車輪のスピンを抑制すべく、それらエンジン出力制御装置および変速制御装置に駆動力を抑制する信号を出力する。すなわち、コントローラ50は、トラクション制御も実行するようになっているのである。
【0049】
コンピュータ300のROMには、ブレーキ制御ルーチンおよび摩擦材μ推定ルーチンを含むいくつかのルーチンが記憶されている。ブレーキ制御ルーチンは図5、摩擦材μ推定ルーチンは図6にそれぞれフローチャートで表されている。さらに、ROMには、F−T特性をテーブル,関数式等で表すデータ、およびI−T特性をテーブル,関数式等で表すデータを含むいくつかのデータも記憶されている。
【0050】
F−T特性は、ブレーキペダル40の操作力Fとブレーキ22,32が各輪に付与する制動トルク値Tとの関係を表すものであり、図7にグラフで示されている。これに対して、I−T特性は、モータ20,30への供給電流値Iとブレーキ22,32が各輪に付与する制動トルク値Tとの関係(実験的にまたは計算により取得される)を表すものであり、図8にグラフで示されている。それらF−T特性およびI−T特性はそれぞれ、前後間で共通しないのが普通であることを考慮し、前輪と後輪とに関連付けてROMに記憶されている。
【0051】
I−T特性は、同図に示すように、供給電流値Iに応じて制動トルク値Tが変化するパターンで定義されており、そのパターンが複数種類、摩擦材の摩擦係数μ(以下、単に「摩擦材μ」で表す。)の複数個の離散値に関連付けて設けられている。ここに、「摩擦材」は、前輪用の電動式ディスクブレーキ22の一対のブレーキパッド106a,106bと後輪用の電動式ドラムブレーキ32の一対のブレーキライニング216a,216bとを総称するものであり、以下、同様である。
【0052】
以下、コントローラ50によるブレーキ制御および摩擦材μ推定を説明するが、まず、概略的に説明する。
【0053】
図9には、この電動式ブレーキ装置におけるコントローラ50とモータ20,30と摩擦材300と車輪302との関係が概念的に示されている。コントローラ50には運転者からの操作情報としてブレーキペダル40の操作力Fが供給され、コントローラ50はその操作力Fに応じてモータ20,30に電流値Iを供給する。モータ20,30は、供給された電流値Iに応じて駆動力Dを摩擦材300に供給する。摩擦材300は、それの実際の摩擦係数μの下に、供給された駆動力Dにより車輪302に制動トルクTを付与する。車輪302に制動トルクTが付与されることにより、車体に減速度Gが発生するとともに、車輪302に減速度GW が発生する。
【0054】
このブレーキ制御においては、ブレーキペダル40の操作力Fに基づいてモータ20,30への供給電流値Iが決定されるが、操作力Fに基づき、F−T特性に従って目標制動トルク値T* が各輪毎に決定され、各輪の目標制動トルク値T* に基づき、I−T特性に従って供給電流値Iが各輪毎に決定される。
【0055】
これに対して、摩擦材μ推定においては、非ブレーキ操作時であり、かつ、加速操作時でなく、かつ、車両直進時であり、かつ、悪路走行時でなく、かつ、低速走行時でなく、かつ、A/T12の変速時でない時に、モータ20,30が駆動されることによってブレーキ22,32が作動させられる。さらに、その間におけるモータ20,30の供給電流値Iと車体減速度Gとがそれぞれ取得されるとともに、車体減速度Gに基づいて各輪の実制動トルク値Tが取得される。さらに、前記複数種類のI−T特性パターンのうち、取得された実制動トルク値Tと供給電流値Iとの組合せが対応するものが今回のI−T特性パターンとして選択され、その選択されたI−T特性パターンに対応する摩擦材μが実際の摩擦材μとして推定される。この摩擦材μ推定値はRAMに格納される。
【0056】
摩擦材μは本来、各輪毎に推定すべきであるが、本実施形態においては、摩擦材μが前後輪間では異なるが、左右輪間ではほぼ等しいという前提に基づき、摩擦材μが前後輪については独立に推定されるが、左右輪については共通に推定される。
【0057】
また、上記ブレーキ制御においては、摩擦材μの今回推定値がRAMに存在する期間には、その摩擦材μの今回推定値に応じてI−T特性パターンが選択され、その選択されたI−T特性パターンに従って供給電流値Iが決定される。一方、摩擦材μの今回推定値がRAMに存在しない期間には、前回推定値がRAMに存在する場合には、前回推定値に対応するI−T特性パターンが今回推定値が取得されるまで暫定的に使用される一方、前回推定値がRAMに存在しない場合には、摩擦材μの標準値(ROMに記憶されている)に対応するI−T特性パターンが今回推定値が取得されるまで暫定的に使用される。
【0058】
次に、ブレーキ制御および摩擦材μ推定を図5および図6のフローチャートに基づいて具体的に説明する。
【0059】
図5のブレーキ制御ルーチンは、車両のイグニションスイッチがONに操作されると実行を開始され、まず、ステップS1(以下、単に「S1」で表す。他のステップについても同じとする。)において、操作力センサ302により操作力Fが検出される。次に、S2において、摩擦材μの今回推定値がRAMに存在するか否かが判定される。存在すれば判定がYESとなり、S3において、摩擦材μの今回推定値がRAMから読み込まれ、それが摩擦材μの今回使用値とされ、これに対して、存在しなければ判定がNOとなり、S4において、摩擦材μの前回推定値がRAMに存在するか否かが判定される。存在すれば判定がYESとなり、S5において、摩擦材μの前回推定値がRAMから読み出され、それが摩擦材μの今回使用値とされ、一方、存在しなければ判定がNOとなり、S6において、摩擦材μの標準値がROMから読み出され、それが摩擦材μの今回使用値とされる。
【0060】
いずれの場合にも、その後、S7において、今回のI−T特性パターンが選択される。前記複数種類のI−T特性パターンの中から、摩擦材μの今回使用値に対応するものが今回のI−T特性パターンとして選択されるのである。続いて、S8において、検出された操作力Fに基づき、前記F−T特性に従って、各輪の目標制動トルク値T* が決定される。その後、S9において、決定された各輪の目標制動トルク値T* に基づき、選択された今回のI−T特性パターンに従って、モータ20,30へ供給する電流値の目標値I* が各輪毎に決定される。続いて、S10において、決定された各目標供給電流値I* で電流がモータ20,30へ供給される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了し、再びS1に戻る。
【0061】
これに対して、図6の摩擦材μ推定ルーチンも、車両のイグニションスイッチがONに操作されると実行を開始され、まずS11において、初期設定が行われ、それにより、RAMのμ推定フラグが0とされる。μ推定フラグは、0で一回の車両走行中に摩擦材μが一度も推定されていないことを示し、1で一回の車両走行中に摩擦材μが一度推定されたことを示す。
【0062】
次に、S12〜S18において、各種条件の成否が判定される。具体的には、S12においては、μ推定フラグが0であるか否かが判定される。S13においては、ブレーキペダルスイッチ304がOFFであるか否かにより、非ブレーキ操作時であるか否かが判定される。S14においては、アクセルペダルスイッチ306がONであるか否かにより、加速操作時であるか否かが判定される。S15においては、舵角センサ308により検出されたステアリングホイール46の回転操作角θが実質的に0でないか否かにより、車両旋回時であるか否かが判定される。S16においては、車輪減速度GW の符号の変化頻度が基準値以上である車輪302が存在するか否かにより、車両の悪路走行時であるか否かが判定される。車輪減速度GW は、車輪速センサ314により検出された車輪速VW を実質的に時間微分することによって取得される。S17においては、車速センサ312により検出された車速Vが基準値V0 より低いか否かにより、車両の低速走行時であるか否かが判定される。S18においては、A/T12からコントローラ50に供給された信号に基づき、A/T12の変速時であるか(過渡状態にあるか)否かが判定される。S12およびS13の判定は共にYES、S14〜S18の判定はいずれもNOであれば、S19以下のステップに移行するが、そうでなければ直ちにS12に戻る。
【0063】
S19においては、左右前輪のブレーキ22のモータ20に同時に電流が設定電流値I0 で設定時間Δtの間供給されることにより、左右前輪のブレーキ22が作動させられる。S20においては、その作動中、モータ電流センサ316によりモータ20への実供給電流値Iが検出される。S21においては、その作動中、車体減速度センサ310により車体減速度Gが検出される。その後、S22において、実供給電流値Iと車体減速度Gとから、左右前輪のブレーキ22の摩擦材μが推定される。具体的には、車体減速度Gから左右前輪のブレーキ22の実制動トルク値Tが計算により取得され、前記複数種類のI−T特性パターンのうち、実制動トルク値Tと実供給電流値Iとの組合せに対応するI−T特性パターンに対応する摩擦材μが、左右前輪のブレーキ22の摩擦材μの今回推定値とされる。S23〜S26においては、S19〜S22におけると同じ内容が左右後輪のブレーキ32について実行される。左右前輪のブレーキ22についても左右後輪のブレーキ32についても摩擦材μ推定が終了したならば、S27において、μ推定フラグが1とされる。その後、S12に戻る。その後、S12が実行されれば、μ推定フラグが1であるため、以後、今回の車両走行が終了するまで、S12の判定がNOとし続けられることにより、S19〜S26による摩擦材μ推定が省略される。
【0064】
すなわち、本実施形態においては、一回の車両走行中の最初の非ブレーキ操作時に一回限り、摩擦材μ推定が行われ、その車両走行が終了するまでの間、摩擦材μの推定値が更新されないようになっているのである。ただし、更新されるようにして本発明を実施することはもちろん可能である。
【0065】
図10には、非ブレーキ操作時にブレーキ22,32が作動させられ、それにより、車速Vが時間的に低下させられる様子がグラフで示されている。
【0066】
時期t1 に前述の摩擦材μ推定開始条件が成立すれば、左右前輪のブレーキ22のモータ20に電流が設定電流値I0 で供給され、それにより、左右前輪のブレーキ22の作動が開始される。その結果、車速Vが低下するが、このときの勾配すなわち車体減速度Gは左右前輪のブレーキ22の摩擦材μに依存し、摩擦材μが高い場合には高い車体減速度G1 、摩擦材μが低い場合には低い車体減速度G2 が発生することになる。時期t1 から設定時間Δtが経過して時期t2 になれば、モータ20への電流供給が中止させられるとともにモータ20が初期状態に復元される。
【0067】
その後、わずかな時間が経過した時期t3 には、左右後輪のブレーキ32のモータ30に電流が設定電流値I0 で供給され、それにより、左右後輪のブレーキ32の作動が開始される。その結果、上記の場合と同様に、車速Vが低下するが、このときの勾配すなわち車体減速度Gは左右後輪のブレーキ32の摩擦材μに依存し、上記の場合と同様に、摩擦材μが高い場合には高い車体減速度G3 、摩擦材μが低い場合には低い車体減速度G4 が発生することになる。時期t3 から設定時間Δtが経過して時期t4 になれば、モータ30への電流供給が中止させられるとともにモータ30が初期状態に復元される。
【0068】
次に、本発明の第2実施形態である電動式ドラムブレーキを説明する。ただし、本実施形態は先の第1実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0069】
図11には、本実施形態である電動式ドラムブレーキを含む電動式ブレーキ装置の全体構成が示されている。本実施形態においては、センサおよびスイッチとして、操作力センサ302と、ブレーキペダルスイッチ304と、パーキングペダルスイッチ400(パーキングブレーキ操作センサの一例)とが設けられている。パーキングペダルスイッチ400は、非操作時にはOFF(第1信号)、操作時にはON(第2信号)となるパーキングブレーキ操作信号を出力する。それらセンサおよびスイッチはコントローラ402の入力側に接続されている。コントローラ402はコンピュータ404を主体として構成されている。このコントローラ402の出力側には、バッテリ320が接続されたドライバ322を介して、左右前輪の電動式ディスクブレーキ22の超音波モータ408と、左右後輪の電動式ドラムブレーキ32のDCモータ410とが接続されている。コントローラ402は、超音波モータ408はOFF状態で十分に大きな自己保持トルクを発生するという事実を利用し、パーキングブレーキ操作時には、超音波モータ408をONして電動式ディスクブレーキブレーキ22を作動させた後にその作動状態で超音波モータ408をOFFにし、車両を停止状態に保持する。本実施形態には、操作部材として、非常ブレーキペダル412(非常ブレーキ操作部材の一例)が設けられている。モータ408,410による車両制動が不良となった非常時に、非常ブレーキペダル412の操作力によって機械的に電動式ドラムブレーキ32が作動させられるようになっている。非常ブレーキペダル412は非常ブレーキコントロール414および非常ブレーキケーブル416を介してレバー230に連結されている。それら非常ブレーキコントローラ414および非常ブレーキケーブル416の構成は先の実施形態におけるパーキングコントロール284およびパーキングブレーキケーブル242と同じである。
【0070】
コンピュータ404のROMには、図12にフローチャートで表されているブレーキ制御ルーチンが記憶されている。本ルーチンは、車両のイグニションスイッチがONに操作されたときに実行を開始され、まず、S401において、ブレーキペダルスイッチ304がONであるか否かにより、主ブレーキ操作時であるか否かが判定される。今回は主ブレーキ操作中ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S402において、パーキングペダルスイッチ400の出力信号がOFFからONに変化した時であるか否かにより、パーキングブレーキ操作開始時であるか否かが判定される。今回は開始時ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S403において、パーキングペダルスイッチ400の出力信号がONからOFFに変化した時であるか否かにより、パーキングブレーキ操作終了時であるか否かが判定される。今回は終了時でもないと仮定すれば、判定がNOとなり、S401に戻る。
【0071】
今回は、主ブレーキ操作時であると仮定すれば、S401の判定がYESとなり、S404において、操作力センサ302によりブレーキペダル40の操作力Fが検出され、次に、S405において、検出された操作力Fに基づき、超音波モータ408およびDCモータ410に電流が供給されることにより、電動式ディスクブレーキ22および電動式ドラムブレーキ32が作動させられる。その結果、車両が制動される。その後、S401に戻る。
【0072】
これに対して、今回は、パーキングブレーキ操作開始時であって主ブレーキ操作時ではないと仮定すれば、S401の判定はNO、S402の判定はYESとなり、S406において、超音波モータ408がONされて電動式ディスクブレーキ22が作動状態とされ、一定時間後、S407において、超音波モータ408がその位置でOFFされる。それにより、超音波モータ408に自己保持トルクが発生し、その自己保持トルクにより電動式ディスクブレーキ22が作動状態に保持され、その結果、車両が停止状態に保持される。その後、S401に戻る。
【0073】
また、今回は、パーキングブレーキ操作終了時であって主ブレーキ操作時ではないと仮定すれば、S401の判定はNO、S402の判定もNO、S403の判定はYESとなり、S408において、超音波モータ408にそれを原位置に戻すための信号が出力され、続いて、S409において、超音波モータ408がOFFされる。その後、S401に戻る。
【0074】
次に、本発明の第3実施形態である電動式ドラムブレーキを説明する。この電動式ドラムブレーキは電動式ブレーキ装置に設けられており、その電動式ブレーキ装置のソフトウェア構成は最先の第1実施形態と共通する。また、電動式ドラムブレーキの基本的構成は第1実施形態における電動式ドラムブレーキ32と共通するため、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0075】
図13に示すように、本実施形態における電動式ドラムブレーキ450は、電動式ドラムブレーキ32に対して、ストラット236が駆動機構452に変更された構成とされている。
【0076】
駆動機構452は、ストラット236と同様に、回動部材としてのレバー230(主レバー)によりブレーキシュー210b(プライマリシュー)を駆動する。しかし、駆動機構452は、レバー230の回動ストロークをそのままブレーキシュー210bに伝達するストラット236とは異なり、レバー230の回動ストロークを拡大してブレーキシュー210bに伝達する。
【0077】
駆動機構452は、レバー230と連動する入力部材460をストラット236に対応する位置に備えている。入力部材460は、棒状を成していて、ドラム204の回転軸線に直角な一平面である設計基準平面内に配置されている。入力部材460は、その両端部においてレバー230とブレーキシュー210bのウェブ222とにそれぞれ支持されている。ただし、入力部材460は、ストラット236とは異なり、図14(図13におけるA−A断面図)に拡大して示すように、ブレーキシュー210bとの間に大きな軸方向隙間が残るようにブレーキシュー210bに支持されている。電動式ドラムブレーキ450の作動時に入力部材460がブレーキシュー210bに接触することがないようにされているのである。
【0078】
駆動機構452はまた、図13に示すように、アンカピン206に回動可能に連結されたてこ462(中間レバー)を備えている。てこ462も、棒状を成していて、前記設計基準平面内に配置されている。てこ462は、図14に示すように、入力部材460の軸方向中央部に形成された貫通穴464を貫通させられており、入力部材460のブレーキシュー210bに接近する向きの軸方向運動がてこ462に、それの自由端部(先端部)がブレーキシュー210bに接近する向きの回動として伝達されるようになっている。
【0079】
駆動機構452はさらに、図13に示すように、ブレーキシュー210bと連動する出力部材468を、入力部材460とほぼ平行に、かつ、入力部材460に関しててこ462の回動中心点とは反対側の位置に備えている。出力部材468も、棒状を成していて、前記設計基準平面内に配置されている。結局、入力部材460とてこ462と出力部材468とが同じ設計基準平面内に配置されているのである。出力部材468は、それの両端部においててこ462の先端部とブレーキシュー210bのウェブ222とにそれぞれ支持されている。出力部材468とてこ462とはピン470により回動可能に連結されている。図15(図13におけるB−B断面図)には出力部材468が拡大して示されている。
【0080】
駆動機構452はさらにまた、図13に示すように、てこ462をそれの先端部がブレーキシュー210bから離間する向きに回動させる向きに常時付勢するリターンスプリング472を備えている。このリターンスプリング472はてこ462とレバー230とにかけられている。
【0081】
以上のように構成された駆動機構452においては、モータ30を駆動源とするシュー拡張アクチュエータ250が作動させられることによってレバー230がブレーキシュー210bに接近する向きに回動させられると、それに応じて入力部材460がブレーキシュー210bに接近する向きに(図において右方に)直線運動させられる。この直線運動によりてこ462がブレーキシュー210bに接近する向きに回動させられ、この回動により出力部材468がブレーキシュー210bを押圧する向きに回動させられ、その結果、ブレーキシュー210bに固着されたブレーキライニング216bがドラム204の摩擦面に押圧される。てこ462と出力部材468との連結点は、てこ462と入力部材460との連結点より、てこ462の回動支持点から遠ざかる位置に位置させられている。したがって、レバー230の回動ストロークすなわち入力部材460の作動ストロークがてこ462のレバー比に応じて拡大されて出力部材468に伝達されることになる。
【0082】
このようなストローク拡大機構により次のような効果が得られる。
【0083】
非ブレーキ操作時には、ブレーキライニング216bとドラム204との間に比較的大きな初期クリアランスが存在する。本実施形態においては、レバー230の回動ストロークが拡大されてブレーキシュー210bに伝達される。したがって、本実施形態によれば、比較的大きな初期クリアランスを比較的小さな回動ストロークにより早期に消滅可能となり、電動式ドラムブレーキ450の作動応答性が向上する。
【0084】
初期クリアランスの消滅後、すなわち、ブレーキシュー210bの作動時のみかけの剛性が高い領域においても、レバー230の回動ストロークが拡大されてブレーキシュー210bに伝達される。したがって、本実施形態によれば、ブレーキシュー210bに同じストロークを生じさせるのに必要なレバー230の回動ストロークが減少し、ブレーキライニング216bに同じ摩擦力を生じさせるのに必要なレバー230の回動ストロークも減少し、その結果、電動式ドラムブレーキ450の作動応答性が向上する。
【0085】
ブレーキライニング216a,216bの摩耗につれて、ブレーキシュー210bを作動させるのに必要なレバー230の回動ストロークが増加し、それによりモータ30の最大回転角度も増加する。本実施形態においては、レバー230の回動ストロークが拡大されてブレーキシュー210bに伝達される。したがって、本実施形態によれば、ブレーキライニング216a,216bが摩耗してもモータ30の最大回転角度がそれほど大きくならずに済み、モータ30の駆動力をモータ30の回転角度の変化範囲全体において安定した精度で制御することが容易となる。
【0086】
次に、本発明の第4実施形態である電動式ドラムブレーキを説明する。ただし、本実施形態は先の第3実施形態と駆動機構の構成のみが異なり、他の要素については共通であるため、共通の要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、駆動機構の構成のみを詳細に説明する。
【0087】
第3実施形態における駆動機構452においては、図14に示すように、てこ462の回動平面(てこ462が回動により描く軌跡)とブレーキシュー210bのウェブ222の回動平面とが正確に互いに一致するのに対して、レバー230の回動平面とてこ464の回動平面とが正確には互いに一致しない。そのため、電動式ドラムブレーキ450の作動時に入力部材460にモーメントが発生してしまう。これに対して、本実施形態においては、電動式ドラムブレーキにおけるレバー500が、図16に示すように、ブレーキシュー210aのウェブ222を含む一平面に関して対称な形状を有するものとされ、また、駆動機構502が、入力部材504の両端部がそのようなレバー500と前記てこ462およびブレーキシュー210bとに連携させられた構成とされている。それにより、本実施形態においては、てこ462の回動平面とブレーキシュー210bのウェブ222の回動平面とが正確に互いに一致するのみならず、レバー500の回動平面とてこ462の回動平面とが正確に互いに一致している。したがって、本実施形態によれば、電動式ドラムブレーキの作動時に入力部材504にモーメントが発生せずに済む。
【0088】
以上、本発明のいくつかの実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、それらの他にも、特許請求の範囲を逸脱することなく当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を施した形態で本発明を実施することができるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である電動式ドラムブレーキを含む電動式ブレーキ装置の全体構成を示す系統図である。
【図2】図1における電動式ディスクブレーキを拡大して示す平面断面図である。
【図3】図1における電動式ドラムブレーキを拡大して示す側面断面図である。
【図4】図3におけるシュー拡張アクチュエータを拡大して示す部分断面側面図である。
【図5】図1のコンピュータのROMに記憶されているブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】上記ROMに記憶されている摩擦材μ推定ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】上記実施形態におけるF−T特性を示すグラフである。
【図8】上記実施形態におけるI−T特性を示すグラフである。
【図9】上記実施形態の構成を概念的に示す系統図である。
【図10】上記実施形態において非ブレーキ操作時に車速Vがブレーキの作動によって低下させられる様子を示すグラフである。
【図11】本発明の第2実施形態である電動式ドラムブレーキを含む電動式ブレーキ装置の全体構成を示す系統図である。
【図12】図11におけるコントローラのコンピュータのROMに記憶されているブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図13】本発明の第3実施形態である電動式ドラムブレーキを示す側面図である。
【図14】図13におけるA−A断面図である。
【図15】図13におけるB−B断面図である。
【図16】本発明の第4実施形態である電動式ドラムブレーキの駆動機構を示す断面図である。
【符号の説明】
30 モータ
32,504 電動式ドラムブレーキ
40 ブレーキペダル
42 パーキングペダル
50,402 コントローラ
204 ドラム
210a,210b ブレーキシュー
216a,216b ブレーキライニング
230,500 レバー
284 パーキングコントロール
320 バッテリ
240 主ブレーキケーブル
242 パーキングブレーキケーブル
408 超音波モータ
410 DCモータ
412 非常ブレーキペダル
414 非常ブレーキコントロール
416 非常ブレーキケーブル
452,502 駆動機構
460,504 入力部材
462 てこ
468 出力部材

Claims (4)

  1. 内周面に摩擦面を備え、車輪と共に回転するドラムと、
    車体に回転不能に取り付けられたバッキングプレートと、
    そのバッキングプレートに相対移動可能に取り付けられた一対のブレーキシューに保持され、前記摩擦面に押し付けられて前記ドラムの回転を抑制する一対のブレーキラニングと、
    第一ブレーキ操作部材の操作に基づき、電力によって駆動されるモータと、
    回動により前記一対のブレーキラニングを前記摩擦面に押し付ける回動部材と、
    その回動部材に前記モータの駆動力を伝達する力伝達機構と
    を含む電動式ブレーキであって、
    前記モータが、前記バッキングプレートに固定されるとともに、前記回動部材に、直接、2つの可撓性を有する中継部材が連結され、前記力伝達機構が、それら2つの中継部材のうちの一方を介して前記モータの駆動力を前記回動部材に伝達する構造を有するものであり、当該電動式ブレーキが、前記2つの中継部材のうちの他方を介して前記第一ブレーキ操作部材とは別の第二ブレーキ操作部材の操作による引張力を前記回動部材に付与する力付与機構を含み、かつ、前記第一ブレーキ操作部材が、運転者によって、車両を減速および停止させるために操作される部材であり、前記第二ブレーキ操作部材が、運転者によって、車両を停止状態に保つために操作される部材であることを特徴とする電動式ブレーキ。
  2. 前記2つの中継部材が、それぞれ、フレキシブルなワイヤで構成されており、前記力伝達機構が、前記モータの駆動力を前記回動部材に引張力として伝達するものであり、かつ、前記一方の中継部材の一端部が、前記モータの回転軸の回転運動を出力部材の直線運動に変換する運動変換機構の前記出力部材に固定された請求項1に記載の電動式ブレーキ。
  3. 当該電動式ブレーキが、前記回動部材の回動により前記一対のブレーキシューを駆動する駆動機構であって、前記回動部材の回動ストロークを拡大して前記一対のブレーキシューに伝達するものを含む請求項1または2に記載の電動式ブレーキ。
  4. 前記駆動機構が、(a)前記回動部材と連動する入力部材と、(b)前記一対のブレーキシューと連動する出力部材と、(c)前記入力部材の作動力を前記出力部材に、入力部材の作動ストロークを拡大した作動ストロークが出力部材に生じるように伝達するてことを含む請求項3に記載の電動式ブレーキ。
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