JP3885383B2 - ブレーキシステム - Google Patents

ブレーキシステム Download PDF

Info

Publication number
JP3885383B2
JP3885383B2 JP28447698A JP28447698A JP3885383B2 JP 3885383 B2 JP3885383 B2 JP 3885383B2 JP 28447698 A JP28447698 A JP 28447698A JP 28447698 A JP28447698 A JP 28447698A JP 3885383 B2 JP3885383 B2 JP 3885383B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
brake
piston
electric
manual
force
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP28447698A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2000095082A (ja
Inventor
康徳 吉野
健次 白井
貴之 山本
悟 丹羽
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP28447698A priority Critical patent/JP3885383B2/ja
Publication of JP2000095082A publication Critical patent/JP2000095082A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3885383B2 publication Critical patent/JP3885383B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Regulating Braking Force (AREA)
  • Braking Arrangements (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気ブレーキを備えたブレーキシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
PCT国際公開明細書WO96/03301には、電気ブレーキを備えたブレーキシステムの一従来例が記載されている。この従来のブレーキシステムにおいては、常用ブレーキとして、ブレーキ操作部材の操作状態を表す操作情報に基づき、モータを駆動源として流体圧を使用しないで摩擦材により車輪を制動する電気ブレーキが設けられている。この電気ブレーキは一般に、(a) 車輪と共に回転する回転体と、(b) その回転体に押圧されてその回転体の回転を抑制する摩擦材と、(c) 電源と、(d) その電源から供給される電力により駆動されるモータと、(e) そのモータの駆動力により摩擦材を回転体に押圧する押圧装置とを含むように構成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および発明の効果】
この従来のブレーキシステムにおいては、常用ブレーキの他に非常ブレーキが設けられてはいない。そのため、常用ブレーキである電気ブレーキが何らかの理由で故障すると、運転者は車両を制動できない。例えば、電源が故障したり、電源とモータとを互いに接続する電線が断絶したり短絡したりした場合には、運転者は車両を制動できないのである。
さらに、その従来のブレーキシステムでは、電気ブレーキが正常であっても、電気ブレーキに電力を供給すべき電源が電気ブレーキから遮断されている場合には、運転者は車両を制動できない。
【0004】
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであり、その課題は、電気ブレーキの作動時でも運転者が車両を制動できるブレーキシステムを提供することにある。
【0005】
この課題は下記態様のブレーキシステムによって解決される。なお、以下の説明において、本発明の各態様を、それぞれに項番号を付して請求項と同じ形式で記載する。各項に記載の特徴を組み合わせて採用することの可能性を明示するためであり、ここに記載されていない組合せを採用することの可能性を排除したり、ここに記載されていない特徴を採用することの可能性を排除するものではない。
【0006】
(1) ブレーキ操作部材と、
(a)モータを駆動源として流体圧を使用しないで摩擦材を車輪と共に回転する回転体に押圧することにより電気的に前記車輪を制動する電動式ブレーキと、(b) 前記ブレーキ操作部材の操作状態を表す操作情報に基づき前記モータを制御することにより、前記電動式ブレーキに前記ブレーキ操作部材の操作状態に応じた制動力を発生させる電子制御ユニットとを含む電気ブレーキと、
前記ブレーキ操作部材を駆動源として摩擦材を前記車輪と共に回転する回転体に押圧することにより機械的に前記車輪を制動するマニュアルブレーキと、
そのマニュアルブレーキと前記ブレーキ操作部材との間に設けられ、そのブレーキ操作部材の操作力または操作ストロークにより機械的に切り換わり、前記電動式ブレーキの不作動時にはブレーキ操作部材の操作力を前記マニュアルブレーキに伝達する状態となり、電動式ブレーキの作動時にはブレーキ操作部材の操作力を前記マニュアルブレーキに伝達しない状態となるマニュアルブレーキ制御装置と
を含み、かつ、前記マニュアルブレーキ制御装置が、前記ブレーキ操作部材と前記マニュアルブレーキとの間に設けられた相対変位可能な2部材であって、それらの相対変位が許容される状態では前記ブレーキ操作部材の操作力をマニュアルブレーキに伝達せず、それらの相対変位が許容されない状態でブレーキ操作部材の操作力をマニュアルブレーキに伝達する2部材を含むことを特徴とするブレーキシステム〔請求項1〕。
このブレーキシステムにおいては、常用ブレーキとして電気ブレーキが設けられるとともに、非常ブレーキとして、ブレーキ操作部材を駆動源として摩擦材により車輪を制動するマニュアルブレーキが設けられている。すなわち、このブレーキシステムには、ブレーキ操作部材および電気ブレーキを主体とする電気ブレーキ系統と、ブレーキ操作部材,マニュアルブレーキ制御装置およびマニュアルブレーキを主体とするマニュアルブレーキ系統とが設けられているのである。したがって、このブレーキシステムによれば、電気ブレーキの不作動時に運転者はマニュアルブレーキにより、操作力に応じた大きさの制動力を車輪に発生させることによって車両を制動でき、その結果、ブレーキシステムの耐故障性および/または使い勝手が向上する。
しかも、マニュアルブレーキ制御装置が、ブレーキ操作部材の操作力または操作ストロークにより機械的に切り換わり、電動式ブレーキの不作動時にはブレーキ操作部材の操作力を前記マニュアルブレーキに伝達する状態となり、電動式ブレーキの作動時にはブレーキ操作部材の操作力を前記マニュアルブレーキに伝達しない状態となるものとされており、電気制御系統を含まないため、一層耐故障性の高いものとなっている。
特に、マニュアルブレーキ制御装置を、互いに相対変位可能な2部材を含むものとすれば、電気ブレーキの不作動時にはマニュアルブレーキが作動し、電気ブレーキの作動時にはマニュアルブレーキが不作動となるブレーキシステムを容易に構成することができる。
電気ブレーキとマニュアルブレーキとが互いに異なる複数個の車輪に設けられる場合には、電気ブレーキが故障すると、その電気ブレーキが設けられている車輪については、路面との間に摩擦力を発生させることができず、路面の摩擦係数を有効に利用した車両制動が実現されない。これに対して、本項に記載のブレーキシステムにおいては、電気ブレーキとマニュアルブレーキとが同じ車輪に関して設けられている。したがって、このブレーキシステムによれば、電気ブレーキの故障時に、その電気ブレーキが設けられている車輪と路面との間に摩擦力を発生させることができるため、路面の摩擦係数を有効に利用した車両制動が実現される。
このブレーキシステムにおいて「マニュアルブレーキ」および「マニュアルブレーキ制御装置」はそれぞれ、流体圧を使用しない形式としたり、使用する形式とすることができる。
また、このブレーキシステムにおいて「操作情報」には例えば、ブレーキ操作部材の操作力の大きさを表すものや、操作ストロークの長さを表すものがある。
また、このブレーキシステムにおいて「摩擦材」および「回転体」は、電気ブレーキとマニュアルブレーキとに別々に設けたり、両者に共通に設けることができる。
また、ここに「電気ブレーキの不作動時」には、電気ブレーキの故障が原因で電気ブレーキが作動しない場合や、電気ブレーキの故障ではなく電源が遮断されていることが原因で電気ブレーキが作動しない場合が含まれる。
(2) 前記マニュアルブレーキ制御装置が、前記電気ブレーキの作動時に前記マニュアルブレーキが予定外に作動することを防止する予定外作動防止装置を含む(1)項に記載のブレーキシステム。
前項に記載のブレーキシステムにおいては、マニュアルブレーキが電気ブレーキの不作動時にのみ作動し、作動時には作動しないことが望ましい。それら電気ブレーキおよびマニュアルブレーキは同じ車輪に関して設けられているため、作動時にもマニュアルブレーキを作動させたのでは、その作動時に、予定より大きな制動力が車輪に発生してしまうことになるからである。そこで、本項に記載のブレーキシステムにおいては、予定外作動防止装置により、電気ブレーキの作動時にマニュアルブレーキが予定外に作動することが防止される。したがって、このブレーキシステムによれば、電気ブレーキの作動時に、予定より大きな制動力が車輪に発生することが防止される。
(3) 前記マニュアルブレーキ制御装置が、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが基準値を超えた場合に前記2部材の相対変位が許容されない状態となるものである(1)または(2)項に記載のブレーキシステム〔請求項2〕。
(4) 前記マニュアルブレーキが流体圧を使用しない機械式ブレーキであり、前記2部材の一方が、ハウジングに軸方向に摺動可能に嵌合されたピストンであり、他方がそのピストンの軸線と直角に立体交差する回動軸線のまわりに回動可能に設けられ、フレキシブルなケーブルにより前記マニュアルブレーキに接続されたレバーである(1)ないし(3)項のいずれかに記載のブレーキシステム〔請求項3〕。
(5) 前記2部材が、ハウジングに軸方向に摺動可能に保持され、前記ブレーキ操作部材と機械的に連動する第1ピストンと、その第1ピストンと軸方向に相対移動可能に前記ハウジングに保持された第2ピストンとである(1)ないし(3)項のいずれかに記載のブレーキシステム〔請求項4〕。
(6) 前記マニュアルブレーキ制御装置が、
前記ハウジング内において前記第1ピストンと前記第2ピストンの間に形成された制御液室と、
その制御液室とリザーバとをつなぐ液通路に設けられ、制御液室とリザーバとを連通させて制御液室の容積変化を許容する状態と、制御液室とリザーバとを遮断して制御液室の容積変化を阻止する状態とに切り換え可能な流通制御装置と
を含む(5)項に記載のブレーキシステム。
(7) 前記摩擦材が、前記電気ブレーキとマニュアルブレーキとに共通に設けられている(1)ないし(6)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
(8) 前記電気ブレーキが、さらに、(a) 前記モータに電力を供給する電源と、(b) 前記モータの駆動力により前記摩擦材を電気ブレーキの回転体に押圧する押圧装置とを含む(1)ないし(7)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
(9) 前記マニュアルブレーキが、さらに、前記ブレーキ操作部材と機械的に連動してそのブレーキ操作部材の操作力を前記摩擦材に伝達する操作力伝達部材を含む(1)ないし (8)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
(10) 前記マニュアルブレーキが、流体圧を使用しない機械ブレーキである(1)ないし(9)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
このブレーキシステムによれば、マニュアルブレーキが機械ブレーキとされ、それにより、マニュアルブレーキが電気に依存しない上に、流体の漏れ等の心配がなくなるため、マニュアルブレーキ系統の信頼性が向上する。
(11) 前記マニュアルブレーキ制御装置が、流体圧を使用しない機械式である(10)項に記載のブレーキシステム〔請求項〕。
このブレーキシステムによれば、マニュアルブレーキのみならずマニュアルブレーキ制御装置も、電気に依存しない上に、流体の漏れ等の心配がなくなるため、マニュアルブレーキ系統の信頼性が一層向上する。
(12) 前記摩擦材が、前記電気ブレーキとマニュアルブレーキとに共通に設けられており、前記マニュアルブレーキ制御装置が、そのマニュアルブレーキ制御装置が前記電気ブレーキによる前記摩擦材の作動を阻害することを防止する電気ブレーキ作動阻害防止装置を含む(1)ないし(11)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
摩擦材が電気ブレーキとマニュアルブレーキとに共通に設けられるブレーキシステムにおいては、摩擦材が、モータに連携させられるとともに、マニュアルブレーキ制御装置を介してブレーキ操作部材に連携させられるため、何ら対策を講じないと、電気ブレーキにより摩擦材が作動させられる際、その摩擦材の作動がマニュアルブレーキ制御装置によって阻害されてしまう。そこで、本項に記載のブレーキシステムにおいては、電気ブレーキ作動阻害防止装置により、マニュアルブレーキ制御装置が電気ブレーキによる摩擦材の作動を阻害することが防止される。したがって、このブレーキシステムによれば、摩擦材が電気ブレーキとマニュアルブレーキとに共通に設けられるにもかかわらず、電気ブレーキの正常作動が確保される。
(13) 前記摩擦材が、前記電気ブレーキとマニュアルブレーキとに共通に設けられており、前記電気ブレーキが、その電気ブレーキが前記マニュアルブレーキによる前記摩擦材の作動を阻害することを防止するマニュアルブレーキ作動阻害防止装置を含む(1)ないし(12)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
このブレーキシステムにおいては、マニュアルブレーキ作動阻害防止装置により、電気ブレーキがマニュアルブレーキによる摩擦材の作動を阻害することが防止される。したがって、このブレーキシステムによれば、摩擦材が電気ブレーキとマニュアルブレーキとに共通に設けられるにもかかわらず、マニュアルブレーキの正常作動が確保される。
(14) 前記マニュアルブレーキ制御装置が、前記ブレーキ操作部材の操作力または操作ストロークにより機械的に、操作力を前記マニュアルブレーキを伝達する状態と伝達しない状態とに切り換わる機械式である(1)ないし(13)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
このブレーキシステムによれば、マニュアルブレーキのみならずマニュアルブレーキ制御装置も電気に依存しない機械式とされるため、電気ブレーキの故障が車両の主要な電気系統の故障に起因する場合でも、車両の制動が確保される。
(15) さらに、前記電気ブレーキの作動時に、前記ブレーキ操作部材にそれの操作力に応じた操作ストロークを付与する操作ストローク付与機構を含む(1)ないし(14)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
前記操作情報としてブレーキ操作部材の操作力の大きさを選び、電気ブレーキの作動をその操作情報に基づいて行うこととした場合には、ブレーキ操作部材に操作ストロークを付与することが不可欠ではない。一方、運転者は、ブレーキ操作部材に関して、操作力が増加すればそれに応じて操作ストロークが増加する場合に、ブレーキ操作フィーリングが良好であると感じるのが一般的である。そこで、本項に記載のブレーキシステムにおいては、電気ブレーキの作動時に、ブレーキ操作部材にそれの操作力に応じた操作ストロークが付与される。したがって、このブレーキシステムによれば、電気ブレーキの作動時に、従来の液圧式ブレーキシステムにおけると同等に良好なブレーキ操作フィーリングが得られる。
(16) 前記マニュアルブレーキ制御装置が、前記2部材に伝達された前記操作力を機械的に倍力して前記マニュアルブレーキに伝達する倍力機構を含む(1)ないし(15)項のいずれかに記載のブレーキシステム〔請求項〕。
このブレーキシステムによれば、電気ブレーキの不作動時にマニュアルブレーキにより、小さな操作力でも大きな制動力を車輪に発生可能となる。
(17) 前記マニュアルブレーキが、それの前記摩擦材にフレキシブルなケーブルが直接にまたは間接に連結されるとともに、そのケーブルの引張力により摩擦材が前記回転体に接近する向きに駆動される機械式ブレーキであり、前記マニュアルブレーキ制御装置が、(a) 前記第2ピストンの軸線のまわりに回転させられることにより、前記ケーブルを巻き取り、それにより、そのケーブルに引張力を付与する回転部材と、(b) 前記第2ピストンの直線運動を前記回転部材の回転運動に変換する運動変換機構とを含む(5)ないし(8)項,(12)ないし(16)項のいずれかに記載のブレーキシステム〔請求項〕。
このブレーキシステムによれば、ブレーキ操作部材の操作力をマニュアルブレーキに伝達する力伝達系を構成する複数個の可動部材を効率よく配置可能となる。その結果、マニュアルブレーキ制御装置の構造簡単化および小形軽量化を容易に図り得、ひいては、マニュアルブレーキ制御装置の車両への搭載し易いも容易に向上させ得る。しかも、マニュアルブレーキが流体圧を使用しない機械式ブレーキとされているため、電気ブレーキの不作動時には、電気系統は勿論、流体圧系統も含まない機械式装置により車両が制動されることとなり、耐故障性が特に高いブレーキシステムが得られる。
(18) 前記運動変換機構が、前記第2ピストンまたはそれと一体的に直線運動する部材が前記回転部材またはそれと一体的に回転する部材に螺合されたねじ機構を含む(17)項に記載のブレーキシステム。
このブレーキシステムによれば、運動変換機構としてねじ機構を採用するため、運動変換機構の小形化を容易に図り得る。
このブレーキシステムにおいて「ねじ機構」は倍力作用をなすように設計可能であり、この態様によれば、ブレーキ操作部材の操作力を機械的に倍力してマニュアルブレーキに伝達可能となり、操作力の割りに大きな作動力をマニュアルブレーキによって発生させ得る。すなわち、この態様においては、「ねじ機構」が前記(14)項に記載の「倍力機構」の一例を構成しているのである。
(19) 前記ねじ機構が、前記第2ピストンが前記回転部材に複数個のボールを介して螺合されたボールねじ機構を含む(18)項に記載のブレーキシステム。
(20) 前記マニュアルブレーキ制御装置が、さらに、(a) ハウジングと、(b) そのハウジングと前記回転部材とをその回転部材の軸線まわりに相対回転可能に連結する連結器と、(c) その連結器を前記ハウジングと前記回転部材とに、それらハウジングと回転部材との、その回転部材の軸線と平行な第1方向における相対変位は阻止し、その軸線と交差する第2方向における相対変位は許容する状態で取り付ける取付部とを含む(17)ないし(19)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
前記(17)ないし(19)項のいずれかに記載のブレーキシステムを実施する際には一般に、回転部材が、マニュアルブレーキ制御装置のハウジングに、ボールベアリング等、ハウジングと回転部材とをその回転部材の軸線まわりに相対回転可能に連結する連結器を介して取り付けられる。そして、この態様においては、ハウジングに回転部材および連結器を取り付ける際、それら部品の製造ばらつきにもかかわらず、連結器に予定外の力が作用しないようにすることが大切である。そのため、連結器と回転部材との取付けはそれらの相対変位が阻止されるように行われる一方、連結器とハウジングとの取付けはそれらの相対変位が回転部材の軸線と平行な第1方向にも交差する第2方向にも、多少許容されるように行われる態様が考えられる。しかし、この態様においては、連結器とハウジングとの取付けがそれらの相対変位が第1方向に許容されるように行われているため、マニュアルブレーキ制御装置の作動時に、ブレーキ操作部材の操作力が第2ピストンを経て回転部材に、相対変位が許容されている方向と同じ第1方向において加えられると、連結器とハウジングとが第1方向に相対変位する。この相対変位によりそれら連結器とハウジングとが互いに当接すると、打音が発生したり、連結器およびハウジングに摩耗が発生するおそれがある。
これに対して、本項に記載のブレーキシステムにおいては、取付部により、連結器がハウジングと回転部材とに、それらハウジングと回転部材との第1方向における相対変位は阻止され、第2方向における相対変位は許容される状態で取り付けられる。したがって、このブレーキシステムによれば、マニュアルブレーキ制御装置における打音発生や摩耗発生を防止し得る。
このブレーキシステムにおいて、「取付部」は、連結器と回転部材とを相対変位不能に取り付ける一方、連結器とハウジングとを、それら連結器とハウジングとの第1方向における相対変位は阻止され、第2方向における相対変位は許容される状態で取り付ける態様とすることができる。さらに、「取付部」は、連結器とハウジングとを相対変位不能に取り付ける一方、連結器と回転部材とを、それら連結器と回転部材との第1方向における相対変位は阻止され、第2方向における相対変位は許容される状態で取り付ける態様とすることもできる。
(21) 前記取付部が、前記連結器を前記ハウジングと前記回転部材とに、連結器とハウジングとが前記第2方向においてすき間を隔てて互いに対向することと、連結器と回転部材とが第2方向においてすき間を隔てて互いに対向することとの少なくとも一方が実現されるように取り付けるものである(20)項に記載のブレーキシステム。
このブレーキシステムにおいては、取付部により、連結器とハウジングとが第2方向においてすき間を隔てて互いに対向することと、連結器と回転部材とが第2方向においてすき間を隔てて互いに対向することとの少なくとも一方が実現される。したがって、このブレーキシステムによれば、ハウジングと回転部材との第2方向における相対変位が許容される。
このブレーキシステムにおいて「取付部」は、ハウジングに一体に形成される形式としたり、ハウジングとは別の部材であってそのハウジングに固定されて使用される形式とすることができる。前者の形式を採用する場合には、マニュアルブレーキ制御装置の部品点数の節減が可能となり、また、後者の形式を採用する場合には、取付部をハウジングに一体に形成する場合に比較して取付部を設計する際の自由度が向上する。
このブレーキシステムにおいて「すき間」に弾性変形可能な部材を配置することが可能である。このようにすれば、ハウジングと回転部材とが第2方向にみだりに相対変位することを抑制し得る。
(22) 前記取付部が、前記連結器を前記ハウジングと前記回転部材とに、連結器とハウジングとが前記第1方向において実質的な接触状態で互いに対向することと、連結器と回転部材とが第1方向において実質的な接触状態で互いに対向することとの双方が実現されるように取り付けるものである(20)または(21)項に記載のブレーキシステム。
このブレーキシステムにおいては、取付部により、連結器とハウジングとが第1方向において実質的な接触状態で互いに対向することと、連結器と回転部材とが第1方向において実質的な接触状態で互いに対向することとの双方が実現される。したがって、このブレーキシステムによれば、ハウジングと回転部材との第1方向における相対変位が阻止される。
(23) 前記取付部が、
(a) 前記ハウジングに前記第2方向に延びる状態で形成された穴と、
(b) その穴に、前記第1方向においてすき間を実質的に有しないで嵌入される軸状部材と、
(c) 前記連結器の、前記ハウジングと前記第2方向において対向する面に形成された係合部であって、前記軸状部材が、第2方向にはすき間を有して嵌入される一方、前記第1方向にはすき間を実質的に有しないで嵌入されるものと
を含む(20)ないし(22)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
このブレーキシステムによれば、連結器とハウジングとを、第2方向においては相対変位可能であるが第1方向においては相対変位不能であるようにすることが、ハウジングの穴と軸状部材と連結器の係合部という簡単な構成により実現される。
このブレーキシステムにおいて「軸状部材」は例えば、安価なピンとしたり、着脱が容易なボルトとすることができる。
(24) 前記係合部が、前記連結器の、前記ハウジングと前記第2方向において対向する面に、前記回転部材の軸線を中心とする一円周に沿って延びる状態で形成された円環溝を含む(23)項に記載のブレーキシステム。
このブレーキシステムにおいては、軸状部材と係合されるべき係合部が、回転部材と同軸の円環溝とされているため、連結器に軸状部材を取り付ける際、連結器の第1方向における位置に関してさえ位置決め作業を行えば、連結器の、回転部材の軸線まわりの位置に関して位置決め作業を行うことは不要となる。したがって、このブレーキシステムによれば、連結器に軸状部材を取り付ける作業を容易にし得る。
(25) 前記連結器が、相対回転可能な2部材が転動体を介して互いに連結されるとともに、それら2部材が前記ハウジングと前記回転部材とにそれぞれ対向させられるベアリングを含む(20)ないし(24)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
このブレーキシステムにおいて「ベアリング」は、種々の転動体を採用することができる。よって、「ベアリング」は例えば、ボールを転動体とするボールベアリングとしたり、ローラを転動体とするローラベアリングとすることができる。また、「ベアリング」は、種々の荷重支持方式を採用することができる。よって、「ベアリング」は例えば、主にラジアル方向の荷重を受けるラジアルベアリングとしたり、ラジアル方向の荷重とスラスト方向の荷重との双方を受けるラジアルスラストベアリングとすることができる。
(26) 前記マニュアルブレーキ制御装置が、前記電気ブレーキの不作動時には前記2部材の相対変位を禁止し、それにより、前記マニュアルブレーキを作動させる状態となり、一方、電気ブレーキの作動時には2部材の相対変位を許可し、それにより、マニュアルブレーキを作動させない状態となる相対変位制御装置であって、前記ブレーキ操作部材の非操作時であるか操作時であるかを問わず、2部材の相対変位を許可する状態から禁止する状態へ移行し得るものを含む(1)ないし(25)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
ブレーキ操作部材の非操作時にのみ、2部材の相対変位の許可状態から禁止状態への移行を行い、それにより、マニュアルブレーキ不作動の状態から作動状態への移行を行い得る場合には、ブレーキ操作部材の操作時に、マニュアルブレーキ不作動の状態から作動状態への移行が必要となっても、それを行うことができない。すなわち、ブレーキ操作に基づく電気ブレーキの作動中に電気ブレーキが故障しても、直ちにはマニュアルブレーキの作動を開始させることができないのである。これに対して、本項に記載のブレーキシステムにおいては、ブレーキ操作部材の非操作時であるか操作時であるかを問わず、2部材の相対変位を許可する状態から禁止する状態への移行を行い、それにより、マニュアルブレーキ不作動の状態から作動状態への移行を行い得る。すなわち、電気ブレーキの作動中に電気ブレーキが故障すれば、ブレーキ操作部材が非操作位置に戻ることを待つことなく、マニュアルブレーキの作動を開始させることができるのである。したがって、このブレーキシステムによれば、電気ブレーキに代えてマニュアルブレーキを作動させることが必要となった場合には、その時期を問わず、マニュアルブレーキの作動開始を迅速に行い得、その結果、マニュアルブレーキの使い勝手が向上する。
(27) 前記相対変位制御装置が、(a) 前記2部材の一方である第1部材にそれと一体的に移動可能に設けられ、2部材の相対変位の方向に並んだ複数個の第1係合部と、(b) 前記2部材の他方である第2部材にそれと一体的に移動可能に設けられ、前記複数個の第1係合部のいずれかを選択するとともに、その選択第1係合部に対する係合および離脱が可能な第2係合部と、(c) その第2係合部を前記選択第1係合部に係合させることにより、前記2部材の相対変位を禁止する一方、第2係合部を選択第1係合部から離脱させることにより、2部材の相対変位を許可する第2係合部駆動装置とを含む(26)項に記載のブレーキシステム。
ここに「複数個の第1係合部」は例えば、第1部材の表面にその第1部材の延びる方向に沿って並んだ複数個の凹みとすることができ、また、「第2係合部」は例えば、それら複数個の凹みのうち選択されたものに係合する突起とすることができる。
また、「第2係合部駆動装置」は、第2部材にそれと一体的に移動するように取り付けられる形式としたり、固定部材に取り付けられる形式とすることができる。後者の形式を採用する場合には、第2係合部駆動装置と第2係合部との相対移動にもかかわらずそれら第2係合部駆動装置と第2係合部との間における力の伝達を実現する力伝達部材をそれら第2係合部駆動装置と第2係合部との間に設けることが望ましい。
(28) 前記第2係合部駆動装置が、前記第2係合部を前記選択第1係合部に弾性的に押し付けることにより、第2係合部を選択第1係合部に係合させるものであり、前記相対変位制御装置が、さらに、前記第2係合部が前記選択第1係合部に押し付けられている状態で、前記マニュアルブレーキの摩擦材が前記回転体に接近する向きに前記2部材を相対変位させようとする力がそれら2部材の少なくとも一方に作用した場合には、2部材の相対変位が禁止され、一方、マニュアルブレーキの摩擦材が回転体から離間する向きに2部材を相対変位させようとする力がそれら2部材の少なくとも一方に作用した場合には、2部材の相対変位が許可されるようにそれら2部材の相対変位を制御する機構を含む(27)項に記載のブレーキシステム。
このブレーキシステムによれば、マニュアルブレーキの作動状態でブレーキ操作が解除されれば、2部材のうちマニュアルブレーキの側に位置するものの戻りを待つことなく、ブレーキ操作部材が迅速に初期位置に戻ることが可能となる。
(29) 前記車輪が4個、車両の前後左右にそれぞれ設けられており、前記電気ブレーキが複数個、それら4個の車輪にそれぞれ設けられており、前記マニュアルブレーキが複数個、前記4個の車輪のうち車両の前側と後側との少なくとも一方において左右にそれぞれ設けられた少なくとも一対の左右輪にそれぞれ設けられており、前記マニュアルブレーキ制御装置が、前記4個の車輪のうちの2個において電気ブレーキが故障した場合に、それら2個の車輪が、4個の車輪のうち車両の左側と右側とのいずれか一方において前後にそれぞれ設けられた一対の前後輪であるときには、前記マニュアルブレーキの作動を許可するものである(1) ないし(28)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
4個の車輪のうちの2個において電気ブレーキが故障した場合には、それら2個の車輪が、4個の車輪のうち車両の左側と右側とのいずれか一方において前後にそれぞれ設けられた一対の前後輪である場合と、そうでない場合、すなわち、4個の車輪のうち車両の前側と後側とのいずれか一方において左右にそれぞれ設けられた一対の左右輪、または、車両において対角位置に配置された一対の対角輪である場合とがある。そして、一対の左右輪または一対の対角輪において電気ブレーキが故障した場合には、正常である電気ブレーキによって車両を制動しても、車両に適当でないヨーイングモーメントが生じることはないが、一対の前後輪において電気ブレーキが故障した場合には、適当でないヨーイングモーメントが生じてしまう。
これに対して、本項に記載のブレーキシステムにおいては、一対の前後輪において電気ブレーキが故障した場合には、少なくとも一対の左右輪においてマニュアルブレーキが作動させられることによって車両が制動され、一方、一対の前後輪ではない2個の車輪において電動ブレーキが故障した場合には、電気ブレーキによって車両が制動される。したがって、このブレーキシステムによれば、一対の前後輪において電気ブレーキが故障した場合に、車両制動によって車両に適当でないヨーイングモーメントが生じさせることがなくなり、車両の走行安定性を低下させることなく車両を制動可能となる。
なお、「電気ブレーキ」は、各輪に1個設けても、複数個設けてもよい。このことは、「マニュアルブレーキ」についても同様である。
(30) 前記マニュアルブレーキ制御装置が、前記4個の車輪のうちの2個において電気ブレーキが故障した場合に、それら2個の車輪が、4個の車輪のうち車両の左側と右側とのいずれか一方において前後にそれぞれ設けられた一対の前後輪でないときには、前記マニュアルブレーキが作動しないようにするものである(29)項に記載のブレーキシステム。
(31) ブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材の操作状態を表す操作情報に基づき、モータを駆動源として流体圧を使用しないで摩擦材を車輪と共に回転する回転体に押圧することにより、電気的に前記車輪を制動する電気ブレーキと、
前記ブレーキ操作部材を駆動源として摩擦材を前記車輪と共に回転する回転体に押圧することにより、機械的に前記車輪を制動するマニュアルブレーキと、
そのマニュアルブレーキと前記ブレーキ操作部材とを互いに機械的に連携させる連携装置であって、ブレーキ操作部材により機械的に、操作力または操作ストロークが基準値を超えた場合には操作力をマニュアルブレーキに伝達する状態となり、超えない場合には伝達しない状態となる連携装置と
を含むことを特徴とするブレーキシステム。
運転者は、希望する車体減速度を実現すべくブレーキ操作部材を操作したにもかかわらず、電気ブレーキが作動しない場合には、ブレーキ操作部材をさらに強く操作することになるため、操作力または操作ストロークが基準値を超えることとなる。基準値を超えた場合には、このブレーキシステムにおいては、ブレーキ操作部材によりマニュアルブレーキが作動させられ、それにより、車輪に制動力が発生する。したがって、このブレーキシステムによれば、電気ブレーキの不作動時に運転者はマニュアルブレーキにより車両を制動できる。
また、このブレーキシステムにおいては、マニュアルブレーキのみならず連携装置も電気に依存しない機械式とされるため、電気ブレーキの故障が車両の主要な電気系統の故障に起因する場合でも、車両の制動が確保される。
なお、このブレーキシステムにおいては、「連携装置」が前記(1) 項に記載の「マニュアルブレーキ制御装置」の一例を構成している。
また、ここに「基準値」は、電気ブレーキの作動状態とは無関係に決定される絶対値としたり、電気ブレーキの作動状態に応じて決定される相対値とすることができる。
また、前記(1) 項に記載のブレーキシステムに関する前述の補足説明は、本項に記載のブレーキシステムにおいても有効である。
(32) 前記摩擦材が、前記電気ブレーキとマニュアルブレーキとに共通に設けられており、前記連携装置が、
(a) 前記ブレーキ操作部材と機械的に連動する連動部材と、
(b) その連動部材と前記摩擦材とを互いに連結する連結機構であって、非操作位置から操作位置に向かう前記ブレーキ操作部材の操作に伴う連動部材の作動時にはその連動部材と共に摩擦材が前記マニュアルブレーキの回転体に向かって変位させられ、前記操作に伴う前記電気ブレーキの作動時にはその電気ブレーキにより摩擦材が電気ブレーキの回転体に向かう変位が連動部材から独立して行われるようにする連結機構と
を含む(31)項に記載のブレーキシステム。
前述のように、摩擦材が電気ブレーキとマニュアルブレーキとに共通に設けられるブレーキシステムにおいては、何ら対策を講じないと、電気ブレーキによる摩擦材の作動が連携装置によって阻害されてしまう。これに対して、本項に記載のブレーキシステムにおいては、連携装置が、ブレーキ操作部材と機械的に連動する連動部材と、その連動部材と摩擦材とを互いに連結する連結機構とを含むものとされ、かつ、その連結機構が、連動部材と摩擦材とを互いに、非操作位置から操作位置に向かうブレーキ操作部材の操作に伴う連動部材の作動時にはその連動部材と共に摩擦材がマニュアルブレーキの回転体に向かって変位させられ、非操作位置から操作位置に向かうブレーキ操作部材の操作に伴う電気ブレーキの作動時にはその電気ブレーキにより摩擦材が電気ブレーキの回転体に向かう変位が連動部材から独立して行われるようにするものとされている。したがって、このブレーキシステムによれば、電気ブレーキの作動時に、摩擦材が連携装置から独立して作動可能となり、よって、電気ブレーキによる摩擦材の作動が連携装置によって阻害されることが防止される。
このブレーキシステムにおいて「回転体」は、摩擦材と同様に、電気ブレーキとマニュアルブレーキとに共通に設けたり、摩擦材とは異なり、別々に設けることができる。
なお、このブレーキシステムにおいては、「連結機構」が前記(8) 項に記載の「電気ブレーキ作動阻害防止装置」の一例を構成している。
(33) 前記摩擦材が、前記電動式ブレーキとマニュアルブレーキとに共通に設けられており、前記連携装置が、
(a) ハウジングと、
(b) そのハウジングに摺動可能に嵌合されて前記ブレーキ操作部材と機械的に連動する第1ピストンと、
(c) その第1ピストンを、前記ブレーキ操作部材が操作位置から非操作位置に向かう向きに付勢する弾性部材と、
(d) 前記第1ピストンと同軸に、かつ、その第1ピストンと相対移動可能に前記ハウジングに摺動可能に嵌合された第2ピストンであって、第1ピストンの作動力または作動ストロークが基準値を超えない場合には第1ピストンにより作動させられず、超えた場合には第1ピストンにより作動させられる第2ピストンと、
(e) その第2ピストンにより回動させられるレバーと、
(f) そのレバーと前記摩擦材とを互いに連結する可撓性を有する第1連結部材であって、レバーの作動力を引張力として摩擦材にその摩擦材が前記マニュアルブレーキの回転体に接近する向きに伝達するもの
とを含む(31)または(32)項に記載のブレーキシステム〔請求項〕。
このブレーキシステムによれば、マニュアルブレーキのみならず連携装置も電力に依存しない機械式とされるため、電気ブレーキの故障が車両の主要な電気系統の故障に起因する場合でも、車両の制動が確保される。
また、このブレーキシステムにおいては、第1ピストンの作動力または作動ストロークが基準値を超えない場合には、第2ピストンが第1ピストンによって作動させられず、その結果、ブレーキ操作部材によりマニュアルブレーキが作動させられない。これに対して、第1ピストンの作動力または作動ストロークが基準値を超えた場合には、第2ピストンが第1ピストンによって作動させられ、その結果、ブレーキ操作部材によりマニュアルブレーキが作動させられる。したがって、電気ブレーキの不作動時に、操作力または操作ストロークが基準値を超えた場合には、第1ピストンの作動力または作動ストロークが基準値を超えるように当該ブレーキシステムを設計すれば、電気ブレーキの不作動時にマニュアルブレーキが作動させられ、それにより、車両の制動が確保される。
さらに、このブレーキシステムにおいては、互いに機械的に関連付けられるべき第1ピストンと第2ピストンとが同じハウジングに、しかも、同軸に配置されているため、第1ピストンの作動力または作動ストロークに応じた第2ピストンの選択的作動を制御するための機構の構造を容易に簡単化し得る。
このブレーキシステムにおいて「弾性部材」は、第1ピストンの作動ストロークに応じた反力を第1ピストンに付与することにより、これにより、結局、ブレーキ操作部材にそれの操作力に応じた操作ストロークが付与されることになる。すなわち、このブレーキシステムにおいては、「弾性部材」が「第1ピストン」と共同して、前記(15)項に記載の「操作ストローク付与機構」の一例を構成しているのである。
また、このブレーキシステムにおいて「可撓性を有する第1連結部材」は、剛体の連結部材より変形し易いものであればよく、後述の、フレキシブルなワイヤで構成したり、フレキシブルなロッドで構成したり、フレキシブルなリーフスプリングで構成することができる。
なお、このブレーキシステムにおいては、「レバー」が前項に記載の「連動部材」の一例を構成し、「連結部材」が「連結機構」の一例を構成している。
(34) 前記ハウジングが、車体に位置固定に取り付けられるべき固定部材であり、前記弾性部材が、前記ハウジングと第1ピストンとの間に設けられたものであり、前記第1ピストンが、それの作動ストロークが基準値を超えない場合には前記第2ピストンから離隔された位置にあって第2ピストンに係合せず、超えた場合には第2ピストンに接近して係合し、それにより、第2ピストンを作動させるものである(33)項に記載のブレーキシステム〔請求項〕。
(35) 前記連携装置が、前記操作力を倍力して前記マニュアルブレーキに伝達する倍力機構を含む(31)ないし(34)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
このブレーキシステムにおいて「倍力機構」は、機械式としたり、流体圧式とすることができる。機械式は例えば、レバーを、第2ピストンから入力される力が倍力されて摩擦材に出力されるように使用する形式とすることができる。流体圧式は例えば、第1ピストンを小径ピストン、第2ピストンを大径ピストンとするとともに、それら両ピストン間の空間を液室とする形式とすることができる。
(36) 前記電気ブレーキが、前記モータと前記摩擦材とを互いに連結する可撓性を有する第2連結部材であって、モータの駆動力を引張力として摩擦材にその摩擦材が電気ブレーキの回転体に接近する向きに伝達するものを含む(33)ないし(35)項のいずれかに記載のブレーキシステム〔請求項10〕。
このブレーキシステムにおいては、「第2連結部材」が前記(13)項に記載の「マニュアルブレーキ作動阻害防止装置」の一例を構成している。
また、「第2連結部材」は、前記(33)項に記載の「第1連結部材」と同様に解釈することができる。
(37) 前記連携装置が、さらに、前記電気ブレーキの不作動時には前記第2ピストンの作動を許可し、作動時には禁止する第2ピストン作動許可・禁止装置を含む(33)ないし(36)項のいずれかに記載のブレーキシステム〔請求項11〕。
このブレーキシステムによれば、第2ピストンを利用することにより、電気ブレーキの作動時にマニュアルブレーキが予定外に作動することが防止される。すなわち、このブレーキシステムにおいては、「第2ピストン作動許可・禁止装置」が前記(2) 項に記載の「予定外作動防止装置」の一例を構成しているのである。
このブレーキシステムにおいて「第2ピストン作動許可・禁止装置」は、第2ピストンの作動を機械的なストッパにより阻止するとともに、そのストッパを磁気力または流体圧により作動させる形式としたり、第2ピストンの作動をその作動位置に応じて容積が変化する液室のその容積変化を阻止することにより、第2ピストンの作動を阻止する形式とすることができる。
(38) 前記第2ピストン作動許可・禁止装置が、(a) 前記ハウジングと第2ピストンとの間に形成されてその第2ピストンの移動位置に応じて容積が変化する制御液室と、(b) 前記電気ブレーキの作動時には前記制御液室に対する作動液の流れを阻止する一方、不作動時には許可する流通制御装置とを含む(37)項に記載のブレーキシステム。
(39) 前記回転体がドラムであり、前記摩擦材がブレーキライニングである(1) ないし(38)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
(40) 前記回転体がディスクであり、前記摩擦材がブレーキパッドである(1) ないし(38)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
(41) さらに、前記ブレーキ操作部材に設けられ、そのブレーキ操作部材が操作位置から非操作位置に戻ることを許容する状態と、阻止する状態とに切り換わる状態切換装置を含む(1) ないし(40)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
このブレーキシステムにおいては、ブレーキ操作部材が操作位置から非操作位置に戻ることを許容する状態は、電気ブレーキまたはマニュアルブレーキを常用ブレーキとして使用し得る状態を意味し、一方、ブレーキ操作部材の戻りを阻止する状態は、電気ブレーキまたはマニュアルブレーキをパーキングブレーキとして使用し得る状態を意味する。したがって、このブレーキシステムにおいては、結局、状態切換装置により、電気ブレーキまたはマニュアルブレーキを常用ブレーキとして使用し得る状態と、パーキングブレーキとして使用し得る状態とに切り換えられることとなる。
よって、このブレーキシステムによれば、電気ブレーキまたはマニュアルブレーキを、常用ブレーキとしてのみならずパーキングブレーキとしても使用することが可能となる。特に、電気ブレーキの不作動時には、同じマニュアルブレーキを、常用ブレーキとしてのみならずパーキングブレーキとしても使用することが可能となる。さらに、このブレーキシステムによれば、常用ブレーキとパーキングブレーキとを同じブレーキ操作部材によって作動させることも可能となる。したがって、このブレーキシステムによれば、常用ブレーキとパーキングブレーキとを別々のブレーキとして構成する場合や、常用ブレーキとパーキングブレーキとに別々にブレーキ操作部材を設ける場合におけるより、ブレーキシステムの部品点数を少なくし得る。
(42) 前記状態切換装置が、(a) 前記ブレーキ操作部材が操作位置から非操作位置に戻ることを選択的に阻止する選択的阻止装置と、(b) その選択的阻止装置を作動させるために運転者により操作される操作部材とを含む(41)項に記載のブレーキシステム。
このブレーキシステムにおいては、運転者による操作部材の操作状態に基づき、選択的阻止装置により、ブレーキ操作部材が操作位置から非操作位置に戻ることが選択的に阻止され、その阻止状態においては、電気ブレーキまたはマニュアルブレーキが作動状態に維持され、その結果、車両が停止状態に維持される。
(43) 前記状態切換装置が、前記電気ブレーキの作動時には、前記ブレーキ操作部材が操作位置から非操作位置に戻ることを許容する状態から阻止する状態に移行しないものである(41)または(42)項に記載のブレーキシステム。
前記(41)または(42)項に記載のブレーキシステムは、状態切換装置が、電気ブレーキの作動時であるか否かを問わず、ブレーキ操作部材の戻りを許容する状態から阻止する状態に移行するように実施することが可能である。しかし、車両のパーキングは、車両電源を使用せずに行うことが望ましい。これに対して、本項に記載のブレーキシステムにおいては、電気ブレーキの作動時には、ブレーキ操作部材の戻りを許容する状態から阻止する状態に移行することが阻止される。したがって、このブレーキシステムによれば、車両のパーキングが電気ブレーキによってではなくマニュアルブレーキによって行われることが保証されることとなり、よって、車両電源を使用した車両のパーキングが回避される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0008】
図1には、本発明の第1実施形態であるブレーキシステムの全体構成が示されている。このブレーキシステムは、左右前輪FL,FRと左右後輪RL,RRとを備えた4輪車両に設けられている。この車両は、原動機としてのエンジン10(内燃機関)と、駆動力伝達装置としてのオートマチックトランスミッション(以下、「A/T」と略称する)12とを備えており、それらエンジン10とA/T12とにより、左右前輪と左右後輪との少なくとも一方である駆動車輪が駆動され、それにより、車両が駆動される。
【0009】
左右前輪FL,FRには超音波モータ(以下、単に「モータ」という)20を駆動源とするとともに流体圧を使用しない電動式ディスクブレーキ22が設けられている。一方、左右後輪RL,RRには、常用ブレーキとして、DCモータ(以下、単に「モータ」という)30を駆動源とするとともに流体圧を使用しない電動式ドラムブレーキ32が設けられる一方、非常ブレーキとして、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル34を駆動源とするとともに流体圧を使用しない機械式ドラムブレーキ36が設けられている。同じ各後輪に電動式ドラムブレーキ32と機械式ドラムブレーキ36とが設けられているのである。ただし、摩擦材としてのブレーキライニングと回転体としてのドラムとはそれぞれ、それら電動式ドラムブレーキ32と機械式ドラムブレーキ36との間で共通に設けられている。そして、本実施形態においては、電動式ドラムブレーキ32が「電気ブレーキ」の一例を構成し、機械式ドラムブレーキ36が「マニュアルブレーキ」の一例を構成している。
【0010】
この車両には、運転者により操作される部材がいくつか設けられている。そのいくつかの操作部材には、主ブレーキ操作部材としての前記ブレーキペダル34と、パーキングブレーキ操作部材としてのパーキングペダル42と、加速操作部材としてのアクセルペダル44と、ステアリングホイール46とがある。
【0011】
ブレーキペダル34が操作されれば、電動式ディスクブレーキ22と電動式ドラムブレーキ32と機械式ドラムブレーキ36との少なくとも一つにより、車両が制動される。具体的には、(a) 電動式ディスクブレーキ22も電動式ドラムブレーキ32も正常である場合には、それら両ブレーキ22,32により車両が制動され、(b) 電動式ディスクブレーキ22は故障し、電動式ドラムブレーキ32は正常である場合には、電動式ドラムブレーキ32のみにより車両が制動され、(c) 電動式ディスクブレーキ22は正常であり、電動式ドラムブレーキ32は故障した場合には、電動式ディスクブレーキ22と機械式ドラムブレーキ36とにより車両が制動され、(e) 電動式ディスクブレーキ22も電動式ドラムブレーキ32も故障した場合(後述の電源および電子制御ユニット(以下、「ECU」と略称する)50が故障した場合を含む)には、機械式ドラムブレーキ36のみにより車両が制動される。
【0012】
これに対して、パーキングペダル42が操作されれば、左右前輪の電動式ディスクブレーキ22により車両が駐車される。電動式ディスクブレーキ22は超音波モータ20の静止保持トルクを利用して車両を停止させる。また、アクセルペダル44が操作されれば、エンジン10の駆動力が増加させられ、それにより、車両が駆動される。ステアリングホイール46が回転操作されれば、それに応じて操舵車輪が図示しない操舵装置によって操舵される。
【0013】
図2には、左右前輪用の電動式ディスクブレーキ22の詳細が示されている。ただし、図には、右前輪用の電動式ディスクブレーキ22のみが代表的に平面断面図で示されている。
【0014】
この電動式ディスクブレーキ22は、図示しない車体に取り付けられた固定部材としてのマウンティングブラケット100と、両側に摩擦面102を備えて車輪と共に回転するディスク104とを備えている。マウンティングブラケット100は、(a) 一対のブレーキパッド106a,106bをディスク104を両側から挟む位置においてディスク104の回転軸線に沿って移動可能に支持する部分と、(b) ディスク104との接触時に各ブレーキパッド106a,106bに発生する摩擦力を受ける部分(受け部材)とを備えている。図において矢印Xは、車体前進時にディスク104が回転するディスク回転方向を示している。
【0015】
一対のブレーキパッド106a,106bのうち車体外側(図において右側)のアウタパッド106aは、ディスク104との接触時にディスク104との連れ回りが実質的に阻止される状態でマウンティングブラケット100に支持されている。これに対して、車体内側(図において左側)のインナパッド106bは、アウタパッド106aとは異なり、ディスク104との接触時にディスク104との連れ回りが積極的に許容される状態でマウンティングブラケット100に支持されている。図において矢印Yは、インナパッド106bの連れ回り方向を示している。
【0016】
ただし、インナパッド106bの連れ回りは、常に許容されるのではなく、ディスク104との間に発生した摩擦力が第1設定値より小さい状態では阻止され、第1設定値以上になった状態で許容されるようになっている。このような連れ回り制御を実現するため、本実施形態においては、インナパッド106bの前端部110が、弾性部材としてのスプリング112を介してマウンティングブラケット100に係合させられている。インナパッド106bの摩擦力が第1設定値より小さい状態では、スプリング112が弾性変形せずにインナパッド106bの連れ回りが阻止され、第1設定値以上となった状態でスプリング112が弾性変形してインナパッド106bの連れ回りが許容されるのである。また、本実施形態においては、インナパッド106bの連れ回り量が第2設定値となったときにマウンティングブラケット100に当接するストッパ114が設けられている。これにより、インナパッド106bの連れ回り限度が規制され、ひいては、後述のセルフサーボ効果の過大化が防止される。
【0017】
電動式ディスクブレーキ22はさらに、ディスク104の回転軸線方向には移動可能、ディスク104の回転方向には移動不能なキャリパボデー120を備えている。キャリパボデー120は、ディスク104の回転軸線に平行に延びる姿勢で車体に取り付けられた図示しない複数本のピンに摺動可能に嵌合されている。キャリパボデー120は、ディスク104を跨き、一対のブレーキパッド106a,106bを背後から挟む姿勢で車体に取り付けられている。キャリパボデー120は、(a) アウタパッド106aに背後から係合するリアクション部126と、(b) インナパッド106bに背後において近接する押圧部128と、(c) それらリアクション部126と押圧部128とを互いに連結する連結部130とを含むように構成されている。
【0018】
押圧部128においては、モータ20が運動変換機構としてのボールねじ機構132を介して押圧部材134に同軸に連結されている。押圧部材134は押圧部128により、押圧部材134の軸線回りに回転不能かつその軸線方向に移動可能に支持されている。したがって、モータ20の回転軸136が回転すればその回転運動がボールねじ機構132によって押圧部材134の直線運動に変換される。それにより、押圧部材134がそれの軸線に沿って前後に移動させられ、その移動によってインナパッド106b、ひいてはアウタパッド106aに押圧力が付与され、それにより、一対のブレーキパッド106a,106bがディスク104に押圧される。
【0019】
アウタパッド106aに関しては、裏板140の板厚がディスク回転方向Xにおいて均一とされているが、インナパッド106bに関しては、それの連れ回り方向Yにおいて後側(車体において後側)から前側(車体において前側)に進むにつれて板厚が漸減するようにされている。インナパッド106bの裏板140の背面が、ディスク104の摩擦面102に対する斜面142とされ、押圧部材134の前端面がその斜面142においてインナパッド106bと接触させられているのである。さらに、その斜面142と押圧部材134の前端面とはそれらの面に沿って相対移動可能とされている。したがって、インナパッド106bの連れ回りが行われる状態では、インナパッド106bがディスク104と押圧部材134との間においてくさびとして機能し、電動式ディスクブレーキ22のセルフサーボ効果が実現される。なお、本実施形態においては、押圧部材134の軸線が斜面142と直角とされている。
【0020】
本実施形態においては、押圧部材134の前端面において複数のボール144(ローラ等でも可)が押圧部材134の軸線回りの一円周に沿ってほぼ等間隔で保持されるとともに、各ボール144が転動可能に保持されている。インナパッド106bの裏板140と押圧部材134とがスラストベアリング146により互いに接触させられているのであり、それらインナパッド106bと押圧部材134との間の摩擦が低減されている。
【0021】
次にこの電動式ディスクブレーキ22の作動を説明する。
【0022】
運転者によりブレーキペダル34が操作され、それに伴ってモータ20が回転させられて押圧部材134が非作動位置から前進させられれば、一対のブレーキパッド106a,106bがディスク104に押圧され、それにより、各ブレーキパッド106a,106bとディスク104との間に摩擦力が発生し、車輪が制動される。
【0023】
インナパッド106bの摩擦力が第1設定値より低く、スプリング112の設定荷重に打ち勝つことができない状態では、スプリング112によってインナパッド106bの連れ回りが阻止され、それにより、セルフサーボ効果の発生が阻止される。したがって、電動式ディスクブレーキ22の効き当初,弱いブレーキ操作時等であるためにインナパッド106bの摩擦力が小さい状態では、セルフサーボ効果を伴わないで車輪が制動される。
【0024】
これに対して、インナパッド106bの摩擦力が第1設定値以上となり、スプリング112の設定荷重に打ち勝つことができる状態となれば、スプリング112によってインナパッド106bの連れ回りが許容される。インナパッド106bが連れ回れば、それに伴って斜面142が一体的に移動し、その結果、ディスク104の摩擦面102と斜面142との距離が増加する。それにより、インナパッド106bがディスク104と押圧部材134とにより板厚方向に強く圧縮され、その結果、インナパッド106bが大きな力でディスク104に押圧される。したがって、ブレーキペダル34が強く(例えば、車体に0.3ないし0.6G程度の減速度が発生する程度に)操作されたためにインナパッド106bの摩擦力が大きくなった状態では、インナパッド106bがディスク104と押圧部材134との間においてくさびとして機能し、その結果、セルフサーボ効果を伴って車輪が制動される。
【0025】
インナパッド106bの摩擦力がさらに増加してストッパ114がマウンティングブラケット100と当接すれば、インナパッド106bの更なる連れ回りが阻止され、それにより、セルフサーボ効果の過大化が阻止される。
【0026】
図3には、左右後輪用の電動式ドラムブレーキ32の詳細が示されている。ただし、図には、右後輪用の電動式ドラムブレーキ32のみが代表的に側面図で示されている。
【0027】
この電動式ドラムブレーキ32は、図示しない車体に取り付けられた非回転部材としての、ほぼ円板状を成すバッキングプレート200と、内周面に摩擦面202を備えて車輪と共に回転するドラム204とを備えている。バッキングプレート200の一直径方向に隔たった2箇所には、それぞれアンカ部材としてのアンカピン206と中継リンクとしてのアジャスタ208とが設けられている。アンカピン206はバッキングプレート200に位置固定に取り付けられている。一方、アジャスタ208はフローティング式とされている。それらアンカピン206とアジャスタ208との間には、各々円弧状を成す一対のブレーキシュー210a,210bがドラム204の内周面に対面するように取り付けられている。一対のブレーキシュー210a,210bは、シューホールドダウン装置212a,212bによってバッキングプレート200にそれの面に沿って移動可能に取り付けられている。なお、バッキングプレート200の中央に設けられた貫通穴には、図示しないアクスルシャフトが回転可能に突出して設けられるようになっている。
【0028】
一対のブレーキシュー210a,210bは、一端部同士がアジャスタ208により相互に接近は不能、隔離は可能に連結される一方、各他端部がアンカピン206と当接させられており、それにより、各端部の回りに回動可能に支持されている。一対のブレーキシュー210a,210bの一端部同士は、アジャスタスプリング214によりアジャスタ208を介して互いに接近する向きに付勢されている。一方、一対のブレーキシュー210a,210bの各他端部は各シューリターンスプリング215a,215bによりアンカピン206に向かって付勢されている。各ブレーキシュー210a,210bの外周面にブレーキライニング216a,216bが保持され、それら一対のブレーキライニング216a,216bがドラム204の内周面に接触させられることにより、それらブレーキライニング216a,216bとドラム204との間に摩擦力が発生する。なお、アジャスタ208は、一対のブレーキライニング216a,216bとドラム204との隙間を、車体組付前および車両停止中には人間の力により、車両走行中には一対のブレーキシュー210a,210bの摩耗に応じて自動的に調整する。
【0029】
各ブレーキシュー210a,210bはリム220とウェブ222とから構成されており、一対のブレーキシュー210a,210bの一方のウェブ222には、レバー230がドラム204の回転軸線と交差する方向に回動可能に取り付けられている。ウェブ222にレバー支持部材としてのピン232が位置固定に取り付けられ、そのピン232にレバー230の一端部が回動可能に連結されているのである。このレバー230と他方のブレーキシュー210bとの互いに対向する部分の切欠きには、力伝達部材としてのストラット236の両端が係合させられている。このストラット236はその長さをねじ機構により調節するアジャスト機能を備えており、これにより、一対のブレーキシュー210a,210bとドラム204との隙間を車体組付前および車体停止中に人間の力により調節可能となっている。
【0030】
以上の説明から明らかなように、この電動式ドラムブレーキ32は、車体の前進時にも後退時にも、いずれのブレーキシュー210a,210bにもセルフサーボ効果が発生するデュオサーボ型なのである。なお、本実施形態においては、レバー230が、一対のブレーキシュー210a,210bのうち車体前進時にセカンダリシューとして作用するブレーキシュー210aに取り付けられているが、プライマリシューとして作用するブレーキシュー210bに取り付けることが可能である。
【0031】
レバー230の他端部(自由端部)には常用ブレーキ用ケーブル240の一端部が連結されている。この常用ブレーキ用ケーブル240は、複数本のワイヤをより合わせて構成されており、フレキシブルである。また、この常用ブレーキ用ケーブル240は、バッキングプレート200に取り付けられたシュー拡張アクチュエータ250により駆動される。シュー拡張アクチュエータ250は、図4に拡大して示すように、モータ30の回転軸に減速機252の入力軸が連結され、その減速機252の出力軸に運動変換機構としてのボールねじ機構254の入力部材が連結されて構成されており、そのボールねじ機構254の出力部材に常用ブレーキ用ケーブル240の他端部が連結されている。ボールねじ機構254は、モータ30の回転運動を直線運動に変換する機構である。図において符号256および258は共にブラケットを示し、また、符号260および262は共に、各ブラケット256,258をバッキングプレート200へ取り付けるための取付けボルトを示している。
【0032】
ボールねじ機構254は、入力部材としてのおねじ264に出力部材としてのナット266が図示しない複数個のボールを介して螺合されて構成されている。ナット266は固定部材としてのハウジング267に回転不能かつ軸方向移動可能に嵌合されている。それにより、おねじ264の回転運動がナット266の直線運動に変換される。ナット266の両端部のうちおねじ264の側とは反対側の端部に出力シャフト268が同軸に取り付けられている。それらおねじ264,ナット266および出力シャフト268の相互の摺動部へのダストの侵入が、ハウジング267および伸縮可能なダストブーツ270により阻止されている。
【0033】
出力シャフト268と常用ブレーキ用ケーブル240の他端部との結合は次のような構成により行われる。すなわち、出力シャフト268の両端部のうちボールねじ機構254の側とは反対側の端部にケーブル取付け用おねじ272が形成される一方、常用ブレーキ用ケーブル240の他端部にケーブル取付け用ナット274が結合されている。そのケーブル取付け用ナット274がケーブル取付け用おねじ272に螺合され、そのケーブル取付け用おねじ272に回り止め用ナット276が螺合されるとともに、その回り止め用ナット276がケーブル取付け用ナット274に押し付けられることにより、ケーブル取付け用ナット274の緩みが防止されている。
【0034】
以上のように構成されたシュー拡張アクチュエータ250は、ブレーキペダル34の操作時に常用ブレーキ用ケーブル240に引張力を付与し、それにより、レバー230がそれの他端部がブレーキシュー210bから離隔される向きに回動させられ、その結果、ストラット236により一対のブレーキシュー210a,210bが拡張される。
【0035】
この電動式ドラムブレーキ32は、一対のブレーキシュー210a,210bをそれに発生するセルフサーボ効果に打ち勝って収縮させるのに効果的なシュー収縮機構を備えている。シュー収縮機構は、本実施形態においては、図3に示すように、レバー230とバッキングプレート200との間に張り渡された常用ブレーキ用リターンスプリング280とされている。この常用ブレーキ用リターンスプリング280は、常用ブレーキ用ケーブル240と同軸に張り渡されるとともに、一端部がレバー230の他端部に、他端部がシュー拡張アクチュエータ250のうちの固定部分(例えば、ハウジング,ブラケット等)にそれぞれ係合させられている。したがって、ブレーキペダル34の操作の解除時に、シュー拡張アクチュエータ250が初期位置に向かって戻されれば、レバー230は常用ブレーキ用リターンスプリング280の圧縮力によって初期位置に向かって回動させられる。ただし、この電動式ドラムブレーキ32にそのようなシュー収縮機構を追加することは不可欠なことではなく、例えば、既存のスプリングであるアジャスタスプリング214やシューリターンスプリング215a,215bの弾性力を増加させることによって同じ目的を達成することは可能である。
【0036】
以上、電動式ドラムブレーキ32を説明したが、次に、機械式ドラムブレーキ36を説明する。
【0037】
機械式ドラムブレーキ36においては、電動式ドラムブレーキ32の複数の構成要素のうち常用ブレーキ用ケーブル240とシュー拡張アクチュエータ250と常用ブレーキ用リターンスプリング280とを除く構成要素が電動式ドラムブレーキ32と共用される。そして、機械式ドラムブレーキ36においては、それら常用ブレーキ用ケーブル240とシュー拡張アクチュエータ250と常用ブレーキ用リターンスプリング280とに代えて、非常ブレーキ用ケーブル282とそれと同軸の非常ブレーキ用リターンスプリング284とが使用される。レバー230の他端部に常用ブレーキ用ケーブル240の一端部と非常ブレーキ用ケーブル282の一端部とが連結されるのであり、その結果、機械式ドラムブレーキ36の作動時にも、レバー230の回動により一対のブレーキライニング216a,216bがドラム204に押圧されることにより、車輪の回転が抑制される。非常ブレーキ用ケーブル282も、複数本のワイヤをより合わせて構成されており、フレキシブルである。また、非常ブレーキ用ケーブル282は、図1に示すように、車体に取り回して取り付けられたアウタケーシング286により案内されている。
【0038】
非常ブレーキ用ケーブル282は、左後輪の機械式ドラムブレーキ36と右後輪の機械式ドラムブレーキ36とにそれぞれ設けられており、それら2本の非常ブレーキ用ケーブル282の他端部は、図1に示すように、マニュアルブレーキ制御装置300を介してブレーキペダル34に機械的に連携させられている。
【0039】
図5には、そのマニュアルブレーキ制御装置300が拡大して示されるとともにブレーキペダル装置302も併せて示されている。ブレーキペダル装置302は、車体に位置固定に取り付けられたペダルブラケット304を備えている。このペダルブラケット304は、ブレーキペダル34をそれの基端部(回動支持点)において、車両左右方向に延びる一軸線回りに回動可能に支持している。ブレーキペダル34の非操作位置がストッパ306により規定される一方、ブレーキペダル34がリターンスプリング308によりストッパ304に向かって付勢されている。ブレーキペダル34はクレビス310(回動連結機構の一例)を介して、車両前後方向に移動可能なプッシュロッド312の後端部(図において右側の端部)に相対回動可能に係合させられており、それにより、ブレーキペダル34の回動がプッシュロッド312の移動に変換される。
【0040】
マニュアルブレーキ制御装置300は、車体に位置固定に取り付けられたハウジング314を備えている。このハウジング314には第1ピストン316と第2ピストン318とが互いに同軸に、かつ車体前後方向に摺動可能に嵌合されている。第1ピストン316は第2ピストン318より車体後側に配置されている。それら両ピストン316,318は相対移動が可能とされている。第1ピストン316の後端部(図において右側の端部)にプッシュロッド312の前端部(図において左側の端部)が係合させられている。ブレーキペダル34の操作力Fがプッシュロッド312により第1ピストン316に、その第1ピストン316が前進する向きに(図において左方に)入力されるようになっており、それにより、第1ピストン316がブレーキペダル34と機械的に連動させられる。第1ピストン316とハウジング314との間には弾性部材としてのスプリング320が設けられている。このスプリング320は、第1ピストン316をプッシュロッド312に接近する向き、すなわち、ブレーキペダル34が非操作位置に向かう向きに常時付勢する。したがって、電動式ドラムブレーキ32の正常時に、ブレーキペダル34が操作されれば、その操作力Fに応じた操作ストロークがブレーキペダル34に付与されるため、電動式ドラムブレーキ32の作動時に、従来の液圧式ブレーキシステムにおけると同等に良好なブレーキ操作フィーリングが得られる。すなわち、本実施形態においては、第1ピストン316とスプリング320とが互いに共同して操作ストローク付与機構321を構成しているのである。
【0041】
第1ピストン316からは係合突起322(係合部)が第2ピストン318に向かって同軸に延び出させられている。第2ピストン318の後退端位置はストッパ324により規定されるが、その後退端位置、すなわち、両ピストン316,318間の隙間が、ブレーキペダル34が非操作位置(図示の位置)にある状態で係合突起322が第2ピストン318に係合せず、操作力Fが基準値F0 を超えたときに第1ピストン316が第2ピストン318に係合するように設計されている。その基準値F0 は例えば、図6にグラフで示すように、電動式ディスクブレーキ22も電動式ドラムブレーキ32も正常である状態で、普通では発生しない程度に高い減速度、例えば1.2Gが車体に発生するときの操作力Fの大きさに設定することができる。万が一、電動式ディスクブレーキ22も電動式ドラムブレーキ32も正常である状態で、操作力Fがそのように設定された基準値F0 を超えた後には、後に詳述するように、第2ピストン318の作動により機械式ドラムブレーキ36の作動も同時に行われるため、同図のグラフに示すように、車体減速度の勾配が増加することになる。
【0042】
図5に示すように、第2ピストン318は、レバー装置326を介して左右後輪用の2本の非常ブレーキ用ケーブル282の他端部に連結されている。
【0043】
レバー装置326は、レバー328と、車体に位置固定に取り付けられたレバーブラケット330とを備えている。レバーブラケット330は、レバー328をそれの基端部(支点)において、第2ピストン318の軸線を含む一平面内で回動可能に支持している。レバー328は、その中間部(力点)においてクレビス332を介して第2ピストン318の前端部に係合させられる一方、リターンスプリング334により第2ピストン318に向かって常時付勢されている。結局、第2ピストン318はそのリターンスプリング334により後退端位置に常時付勢されることになる。レバー328の自由端部(作用点)はクレビス336を介して左右後輪用の2本の非常ブレーキ用ケーブル282の他端部に連結されている。したがって、第2ピストン318が前進させられれば(図において左方に移動させられれば)、レバー328が第2ピストン318により回動させられ(図において時計回りに回動させられ)、その結果、2本の非常ブレーキ用ケーブル282が図において左方に引っ張られてアウタケーシング286から引き出される。このとき、第2ピストン318のストロークがレバー328により拡大されたストロークで非常ブレーキ用ケーブル282が駆動されることになる。なお、図において符号338は、非常ブレーキ用ケーブル282のアウタケーシング286を固定するために車体に取り付けられているケーブル固定用ブラケットを示している。
【0044】
電動式ドラムブレーキ32の正常時には、ブレーキペダル34が操作されれば、図3に示すように、シュー拡張アクチュエータ250により常用ブレーキ用ケーブル240に引張力が付与され、それにより、レバー230が一対のブレーキシュー210a,210bが拡張する向き(以下、単に「シュー拡張方向」という)に回動させられる。このとき、非常ブレーキ用ケーブル282は、前述のように可撓性を有するため、撓ませられる。したがって、本実施形態においては、電動式ドラムブレーキ32によるブレーキシュー210a,210bの作動がマニュアルブレーキ制御装置300により阻害されることが防止される。
【0045】
また、電動式ドラムブレーキ32の故障時には、ブレーキペダル34が操作されれば、ブレーキペダル34により非常ブレーキ用ケーブル282に引張力が付与され、それにより、レバー230がシュー拡張方向に回動させられる。このとき、常用ブレーキ用ケーブル240は、前述のように、非常ブレーキ用ケーブル282と同様に可撓性を有するため、撓ませられる。したがって、本実施形態においては、機械式ドラムブレーキ36によるブレーキシュー210a,210bの作動が電動式ドラムブレーキ32により阻害されることも防止される。
【0046】
以上要するに、本実施形態においては、同じレバー230に連結されて互いに異なる時期に作用させられる2つのケーブル240,282が共に変形可能であるため、一方のケーブルの作用が他方のケーブルによって阻害されることがない。
【0047】
以上、このブレーキシステムのハードウェア構成を説明したが、次にソフトウェア構成を説明する。
【0048】
図1に示すように、ECU50は、CPU340,ROM342およびRAM344を含むコンピュータ346を主体として構成されている。このECU50の入力側にはいくつかのセンサおよびスイッチが接続されている。そのいくつかのセンサおよびスイッチには、操作力センサ348,ブレーキペダルスイッチ350,パーキングペダルスイッチ351,アクセルペダルスイッチ352,アクセルペダル操作量センサ353,舵角センサ354,ヨーレイトセンサ355,前後加速度センサ356,横加速度センサ358,4輪分の車輪速センサ360,4輪分のモータ回転位置センサ362および4輪分のモータ電流センサ364がある。
【0049】
操作力センサ348は、ブレーキペダル34の操作力Fを検出し、その大きさを規定する信号を出力する。ブレーキペダルスイッチ350は、主ブレーキ操作センサの一例であり、ブレーキペダル34の非操作時にはOFF信号(第1信号)、操作時にはON信号(第2信号)を出力する。パーキングペダルスイッチ351は、パーキングブレーキ操作センサの一例であり、パーキングペダル42の非操作時にはOFF信号(第1信号)、操作時にはON信号(第2信号)を出力する。アクセルペダルスイッチ352は、加速操作センサの一例であり、アクセルペダル44の非操作時にはOFF信号(第1信号)、操作時にはON信号(第2信号)を出力する。アクセルペダル操作量センサ353は、加速操作量センサの一例であり、アクセルペダル44の操作量を検出し、その操作量を規定する信号を出力する。舵角センサ354は、車両旋回量センサの一例であり、ステアリングホイール46の回転操作角を検出し、その大きさを規定する信号を出力する。ヨーレイトセンサ355は、車両のヨーレイトを検出し、それを規定する信号を出力する。前後加速度センサ356は、車体の前後方向における減速度GFRを検出し、その高さを規定する信号を出力する。横加速度センサ358は、車体の横方向における減速度GLRを検出し、その高さを規定する信号を出力する。各車輪速センサ360は、各輪の車輪速を検出し、その大きさを規定する信号を出力する。各モータ回転位置センサ362は、各輪のモータ20,30の回転位置を検出し、その回転位置を規定する信号を出力する。各モータ電流センサ364は、各輪のモータ20,30のコイルに実際に供給された電流を検出し、その実供給電流値を規定する信号を出力する。
【0050】
一方、ECU50の出力側には、第1および第2ドライバ366,368が接続されている。第1ドライバ366は、電源としての第1バッテリ370と左右前輪の電動式ディスクブレーキ22のモータ20との間に設けられている。一方、第2ドライバ368は、電源としての第2バッテリ372と左右後輪の電動式ドラムブレーキ32のモータ30との間に設けられている。ブレーキペダル34の操作時には、ECU50から各ドライバ366,368に指令が供給され、その指令に応じて各ドライバ366,368が電流を各バッテリ370,372から各モータ20,30に供給する。
【0051】
本実施形態においては、電源として主バッテリ374も設けられている。この主バッテリ374は、第1および第2バッテリ370,372から独立している。そして、この主バッテリ374により、車両の電気部品のうちモータ20,30を除くものが作動させられる。したがって、ECU50は、第1および第2バッテリ370,372によってではなく、主バッテリ374により作動させられることになる。ただし、主バッテリ374と第1バッテリ370とを共通化したり、主バッテリ374と第2バッテリ372とを共通化したり、主バッテリ374と第1および第2バッテリ370,372を共通化することが可能である。
【0052】
さらに、ECU50の出力側には、エンジン10の図示しないエンジン出力制御装置(スロットル制御装置,燃料供給制御装置,点火時期制御装置等)と、A/T12の図示しない変速制御装置(変速ソレノイド等を含む)とが接続されている。ECU50は、車両駆動時に、駆動車輪のスピンを抑制すべく、それらエンジン出力制御装置および変速制御装置に駆動力を抑制する信号を出力する。すなわち、ECU50は、トラクション制御も実行するようになっているのである。
【0053】
さらにまた、ECU50の出力側には、ブレーキ警告器としてのブレーキ警告ランプ376と、摩耗警告器としての摩耗警告ランプ378とが設けられている。ブレーキ警告ランプ376は、電動式ディスクブレーキ22または電動式ドラムブレーキ32に電気的な故障が発生したときに点灯されて故障発生の事実を運転者に警告する。これに対して、摩耗警告ランプ378は、各輪毎に設けられて各輪の摩擦材の摩耗量が規定値を超えたと推定されたときに点灯されて摩耗量過大化の事実を運転者に警告する。なお、ブレーキ警告器は、運転者に視覚的に警告するブレーキ警告ランプ376に代えて、聴覚的に警告するブレーキ警告ブザーとしたり、両者を併用することができる。
【0054】
コンピュータ346のROM342には、ブレーキ制御ルーチン,ブレーキ警告ルーチンおよびパーキング制御ルーチンを始めとする各種ルーチンが記憶されている。
【0055】
ブレーキ制御ルーチンは、各種のブレーキ制御を実行する。各種のブレーキ制御には、基本制御,アンチロック制御,トラクション制御および車両安定性制御(以下、「VSC」という)がある。「基本制御」は、操作力センサ348,ブレーキペダルスイッチ350,モータ回転位置センサ362およびモータ電流センサ364からの出力信号に基づき、車両の制動力前後配分を考慮するとともに、モータ回転位置およびモータ電流のそれぞれの実際値を監視しつつ、操作力Fに対応する車体減速度が実現されるようにモータ20,30を制御することである。「アンチロック制御」は、ブレーキペダルスイッチ350,車輪速センサ360,モータ回転位置センサ362およびモータ電流センサ364からの出力信号に基づき、車両制動時に各輪のロック傾向が過大にならないように各モータ20,30により各輪の制動トルクを制御することである。「トラクション制御」は、アクセルペダルスイッチ352,アクセルペダル操作量センサ353,車輪速センサ360,モータ回転位置センサ362およびモータ電流センサ364からの出力信号に基づき、車両駆動時に駆動車輪のスピン傾向が過大にならないように各モータ20,30により各駆動車輪の駆動トルクを制御することである。「VSC」は、舵角センサ354,ヨーレイトセンサ355,横加速度センサ358,車輪速センサ360,モータ回転位置センサ362およびモータ電流センサ364からの出力信号に基づき、車両のドリフトアウト傾向およびスピン傾向が過大にならないように左右輪間の制動力差により車両のヨーモーメントを制御することである。
【0056】
以下、各ルーチンの内容を具体的に説明する。
【0057】
ブレーキ制御ルーチンは図7にフローチャートで表されている。本ルーチンは車両のイグニションスイッチがONに操作されている間、繰り返し実行される。本ルーチンの各回の実行時にはまず、ステップS1(以下、単に「S1」で表す。他のステップについても同じとする)において、ブレーキペダルスイッチ350(図において、「ブレーキペダルSW」で表す。他のスイッチについても同じとする)がONであるか否か、すなわち、ブレーキ操作時であるか否かが判定される。ONであれば判定がYESとなり、S2において、基本制御が行われる。その後、S3において、アンチロック制御が必要であるか否か、すなわち、車輪に過大なロック傾向が発生したか否かが判定される。今回はその必要がないと仮定すれば判定がNOとなり、本ルーチンの一回の実行が直ちに終了するが、その必要があると仮定すれば判定がYESとなり、S4において、アンチロック制御が実行される。続いて、S5において、そのアンチロック制御の継続的実行が不要となったか否かが判定される。不要とならない限り判定がNOとなってS4に戻る。不要となれば判定がYESとなり、本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0058】
これに対して、ブレーキペダルスイッチ350がOFFである場合には、S1の判定がNOとなり、S6において、トラクション制御が必要であるか否か、すなわち、駆動車輪に過大なスピン傾向が発生したか否かが判定される。今回はその必要があると仮定すれば判定がYESとなり、S7において、トラクション制御が実行される。続いて、S8において、そのトラクション制御の継続的実行が不要となったか否かが判定される。不要とならない限り判定がNOとなってS7に戻る。不要となれば判定がYESとなり、本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0059】
また、ブレーキペダルスイッチ350がOFFであり、かつ、トラクション制御が必要でない場合には、S1の判定がNO、S6の判定もNOとなり、S9において、VSCが必要であるか否か、すなわち、車両に過大なドリフトアウト傾向またはスピン傾向が発生したか否かが判定される。今回はその必要があると仮定すれば判定がYESとなり、S10において、VSCが実行される。続いて、S11において、そのVSCの継続的実行が不要となったか否かが判定される。不要とならない限り判定がNOとなってS10に戻る。不要となれば判定がYESとなり、本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0060】
ブレーキ警告ルーチンは図8にフローチャートで表されている。本ルーチンも車両のイグニションスイッチがONに操作されている間、繰り返し実行される。本ルーチンの各回の実行時にはまず、S21において、電動式ディスクブレーキ22または電動式ドラムブレーキ32(以下、それらを「電気ブレーキ」と総称する)が電気的に故障したか否かが判定される。電気ブレーキに関係する電気系統(第1および第2ドライバ366,368,第1および第2バッテリ370,372,モータ20,30,それらを相互に接続する電線を含む)が故障したか否かが判定されるのである。故障したならば判定がYESとなり、S22において、ブレーキ警告ランプ376が点灯させられる。これに対して、故障しないならば判定がNOとなり、S22がスキップされ、それにより、ブレーキ警告ランプ376が消灯状態とされる。
【0061】
その後、S23において、各輪毎に電気ブレーキ22,32の摩擦材(ブレーキパッド106およびブレーキライニング216)の摩耗量が推定される。摩耗量は例えば、車両制動時における操作力Fとモータ回転位置との関係に基づいて推定することができる。モータ回転位置は摩擦材の摩耗量と車輪の制動トルクとに応じて変化する一方、ブレーキ制御においては、操作力Fに応じた高さの車体減速度すなわち車輪制動トルクが発生するようにモータ20,30が制御され、よって、車輪制動トルクと操作力Fとが互いに対応すると考えることができ、その結果、操作力Fが同じであるにもかかわらずモータ回転位置が摩擦材を回転体に接近させる向きにずれていれば、摩擦材が摩耗していることが分かり、また、モータ回転位置の実際値の正規値からのずれ量は摩擦材の摩耗量に応じて変化するからである。続いて、S24において、各輪毎に推定された摩耗量が規定値より大きいか否かが判定される。規定値より大きいと仮定すれば判定がYESとなり、S25において、該当する車輪に対応する摩耗警告ランプ378が点灯させられる。これに対して、摩耗量が規定値より大きくないと推定された車輪については、判定がNOとなり、S25がスキップされ、それにより、その車輪に対応する摩耗警告ランプ378が消灯状態とされる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0062】
パーキング制御ルーチンは図9にフローチャートで表されている。本ルーチンは車両のイグニションスイッチがONに操作されているか否かを問わず、繰り返し実行される。本ルーチンの各回の実行時にはまず、S41において、パーキングペダルスイッチ351がOFFからONに変化したか否か、すなわち、パーキングブレーキ操作の開始時であるか否かが判定される。今回はOFFからONに変化したと仮定すれば判定がYESとなり、S42において、左右前輪の電動式ディスクブレーキ22(図において、単に「前輪ブレーキ」で表す)のモータ20がそれを正回転させる向き(ブレーキパッド106をディスク104に接近させる向き)にONされる。その後、S43において、モータ回転位置センサ362からの出力信号に基づき、ブレーキパッド106がディスク104を押圧する押圧位置(例えば、押圧し始める位置)に到達したか否かが判定される。その押圧位置に到達しない限り判定がNOとなってS42に戻るが、押圧位置に到達すれば判定がYESとなり、S44に移行する。このS44においては、モータ20がOFFされる。その結果、モータ20がそれの静止保持トルクを利用してブレーキパッド106を押圧位置に保持することになる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0063】
これに対して、パーキングペダルスイッチ351がOFFからONに変化しない場合には、S41の判定がNOとなり、S45において、パーキングペダルスイッチ351がONからOFFに変化したか否か、すなわち、パーキングブレーキ操作の終了時であるか否かが判定される。ONからOFFに変化したと仮定すれば判定がYESとなり、S46において、左右前輪の電動式ディスクブレーキ22のモータ20がそれを逆回転させる向き(ブレーキパッド106をディスク104から離隔する向き)にONされる。その後、S47において、モータ回転位置センサ362からの出力信号に基づき、ブレーキパッド106が初期位置に到達したか否かが判定される。初期位置に到達しない限り判定がNOとなってS46に戻るが、初期位置に到達すれば判定がYESとなり、S44に移行する。
【0064】
また、パーキングペダルスイッチ351がOFFからONに変化した時でもONからOFFに変化した時でもない時、すなわち、パーキングブレーキスイッチ351がOFFし続けているかまたはONし続けている時には、S41の判定もS45の判定もNOとなり、直ちに本ルーチンの一回の実行が終了し、その結果、ブレーキパッド106の位置が保持される。
【0065】
なお付言すれば、本実施形態においては、ブレーキの効きに関し、電動式ドラムブレーキ32と機械式ドラムブレーキ36とが同等となるように設計されている。電動式ドラムブレーキ32が単独で作動する場合に実現されるブレーキの効きと、機械式ドラムブレーキ36が単独で作動する場合に実現されるブレーキの効きとが同じレベルとなるように設計されているのである。このことを示すのが図10のグラフである。このグラフにおいては、横軸に操作力F、縦軸にレバー回動量が取られている。レバー回動量は、図3に示すレバー230の回動量を意味するものであり、一方、車体減速度は、そのレバー回動量に応じて増加することから、結局、レバー回動量は、車体減速度に応じて増加することとなる。
【0066】
これに対して、図11には、ブレーキの効きを、電動式ドラムブレーキ32に関して機械式ドラムブレーキ36に関するより強くした場合の一例がグラフで示されている。ブレーキの効きの関係をこのように設定した場合には、電動式ドラムブレーキ32の正常時に、操作力Fの大小を問わず、操作力Fによって非常ブレーキ用ケーブル282を引っ張っても、レバー回動量は変化せず、よって、車体減速度も変化しない。同図に示す関係を採用する場合には、電動式ドラムブレーキ32の正常時に、レバー回動量がその電動式ドラムブレーキ32の作動状態に応じて一義的に決まり、機械式ドラムブレーキ36はそのレバー回動量に影響を及ぼすことはないのである。
【0067】
ただし、電動式ドラムブレーキ32の正常時に、アンチロック制御等が行われれば、レバー回動量の実際値が図示の値(電動式ドラムブレーキ32が単独で作動した場合の値)から減少する場合があり、そして、その実際値が、同図に示す機械式ドラムブレーキ36の場合の値(機械式ドラムブレーキ36が単独で作動した場合の値)より減少しようとする場合がある。この場合には、機械式ドラムブレーキ36の存在により、レバー回動量がその要求通りには減少せず、よって、アンチロック制御等が予定通りには実行されなくなる。したがって、たとえ同図に示すようにブレーキの効きの関係を設定した場合でも、電動式ドラムブレーキ32の正常時には、非常ブレーキ用ケーブル282を引っ張らないことが望ましい。
【0068】
もっとも、同図に示すように、両ブレーキ32,36間におけるブレーキの効きの差が操作力Fが増加するにつれて増加することに着目すれば、電動式ドラムブレーキ32の正常時に非常ブレーキ用ケーブル282の引張を許容する一方で、その引張が開始されるときの操作力Fの大きさを、1.2G(図6参照)という高い車体減速度に対応する値より小さく設定した場合であっても、電動式ドラムブレーキ32の正常時に非常ブレーキ用ケーブル282の引張を完全に禁止する場合とほぼ同等の効果を得ることができる場合もあると考えられる。
【0069】
また、同図に示すようにブレーキの効きの関係を設定する場合、機械式ドラムブレーキ36が単独で作動した場合のレバー回動量の値は例えば、そのレバー回動量により実現される車体減速度の高さが、バキュームブースタを備えた従来の液圧式ブレーキシステムにおいて、そのバキュームブースタの負圧室に負圧が全く発生しなくなったときにそのブレーキシステムにより実現される車体減速度を下回らないように設定することが望ましい。
【0070】
さらにまた付言すれば、本実施形態においては、互いに独立な第1および第2バッテリ370,372が左右の前輪対と左右の後輪対とに関してそれぞれ設けられているが、例えば、それら4輪のうち対角位置にある2つの車輪対に関して第1および第2バッテリ370,372をそれぞれ設けることもできる。
【0071】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、第2ピストン318を第1ピストン316に対して相対移動可能に設けるとともに、その第2ピストン318を、操作力Fが基準値を超えないうちは第1ピストン316が係合しないようにした構成が「予定外作動防止装置」の一例を構成し、非常ブレーキ用ケーブル282が「電気ブレーキ作動阻害防止装置」の一例および「第1連結部材」の一例を構成し、常用ブレーキ用ケーブル240が「マニュアルブレーキ作動阻害防止装置」の一例および「第2連結部材」の一例を構成し、マニュアルブレーキ制御装置300が「連携装置」の一例を構成し、スプリング320が「弾性部材」の一例を構成しているのである。
【0072】
本実施形態によれば、電動式ドラムブレーキ32の故障時、例えば、第2バッテリ372の充電が不十分である時や、電動式ドラムブレーキ32に使用されている電線が切断されてしまった時に、運転者は機械式ドラムブレーキ36により車両を制動できるという効果が得られるが、さらに、次のような効果も得られる。すなわち、電動式ドラムブレーキ32は、車両のイグニションスイッチがONであれば作動可能であるが、OFFであれば作動不能であるのが普通である。一方、イグニションスイッチのOFF状態で車両を走行させ、その走行状態で車両を制動することが必要になる場合がある。例えば、車両の電気系統は正常であるがエンジンまたは操舵系に異常が発生した場合には、その車両が作業車により適当な場所まで牽引される場合があるが、その牽引中に車両を制動させることが必要となる場合があり、一方、牽引中は一般にイグニションスイッチがOFFにされるからである。そして、本実施形態によれば、運転者はイグニションスイッチがOFFでも車両を制動できるため、従来のブレーキシステムと同様に、車両牽引中にも車両を制動できる。
【0073】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多いため、共通の要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0074】
図12に示すように、本実施形態のマニュアルブレーキ制御装置388においては、さらに、第2ピストン318が後退端位置(非作動位置)から前進したことを検出する手段としての第2ピストン作動スイッチ390が設けられている。この第2ピストン作動スイッチ390は、近接スイッチであり、ハウジング314に、第2ピストン318が後退端位置から少し前進したときにその第2ピストン318に最も近づく位置において取り付けられている。
【0075】
本実施形態におけるECU50のROM342には、さらに、異常作動防止ルーチンが記憶されている。本実施形態においては、第1実施形態におけると同様に、電動式ドラムブレーキ32の正常時には第1ピストン316が第2ピストン318に係合せず、機械式ドラムブレーキ36が作動しないように設計されているが、ブレーキペダル34が異常に強く操作された場合には、第1ピストン316が予定外に第2ピストン318に係合してしまう可能性がある。一方、電動式ドラムブレーキ32の正常時に第1ピストン316が第2ピストン318に係合すると、電動式ドラムブレーキ32のみならず機械式ドラムブレーキ36も作動させられてしまい、電動式ドラムブレーキ32による車輪制動力の自動制御、すなわち、アンチロック制御,トラクション制御およびVSCに異常を来す可能性がある。例えば、その自動制御中に車輪制動力を低下させることが必要となったために電動式ドラムブレーキ32がブレーキライニング216a,216bがドラム204から離隔されるように作動しても、機械式ドラムブレーキ36がブレーキライニング216a,216bがドラム204に接近するように作動する限り、ブレーキライニング216a,216bがドラム204から離隔されず、よって、車輪制動力を予定通りに低下させることができないのである。そこで、異常作動防止ルーチンは、電動式ドラムブレーキ32の正常時に第2ピストン318が作動を開始したならば、アンチロック制御,トラクション制御およびVSCを禁止するように設計されている。
【0076】
この異常作動防止ルーチンが図13にフローチャートで表されている。まず、S61において、電動式ドラムブレーキ32が正常であるか否かが判定される。この判定は図8のS21におけると同様に行われ、このことは、電気ブレーキに関する後述の同様の判定についても同様である。電動式ドラムブレーキ32が正常でなければS62において制御禁止フラグがOFFされる。制御禁止フラグは、OFFでアンチロック制御,トラクション制御およびVSCを許可することを意味し、ONで禁止することを意味するフラグである。これに対して、電動式ドラムブレーキ32が正常であれば、S61の判定がYESとなり、S63において、第2ピストン作動スイッチ390がONであるか否か、第2ピストン318が作動位置にあるか否かが判定される。ONでなければ判定がNOとなり、S62において、制御禁止フラグがOFFされ、また、ONであれば判定がYESとなり、S64において、制御禁止フラグがONされる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0077】
図14には、ROM342に記憶されているブレーキ制御ルーチンがフローチャートで表されている。本ルーチンは第1実施形態におけるものに対して2つのステップS1a,S2aが追加されている。それらステップは上記制御禁止フラグを監視するとともに、そのフラグを考慮してブレーキ制御を行うために設けられている。
【0078】
S1aは、S1とS6との間に設けられ、制御禁止フラグがONであるか否かを判定し、ONであれば判定がYESとなってS6〜S11、すなわち、トラクション制御およびVSCを実行するステップをスキップさせ、一方、OFFであれば判定がNOとなってS6〜S11の実行を許可する。これに対して、S2aは、S2とS3との間に設けられ、制御禁止フラグがONであるか否かを判定し、ONであれば判定がYESとなってS3〜S5、すなわち、アンチロック制御を実行するステップをスキップさせ、一方、OFFであれば判定がNOとなってS3〜S5の実行を許可する。
【0079】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、第2ピストン作動スイッチ390と、ECU50のうち図13のS61〜S64ならびに図14のS1aおよびS2aを実行する部分とが互いに共同して「電気ブレーキ作動阻害防止装置」の一例を構成しているのである。
【0080】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多いため、共通の要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0081】
図15に示すように、本実施形態のマニュアルブレーキ制御装置406においては、第2ピストン作動許可・禁止装置408が設けられている。本実施形態においては、第2ピストン318がハウジング314に実質的に気密かつ摺動可能に嵌合されている。それにより、第2ピストン318の前方において第2ピストン318と固定部材としてのハウジング314との共同により制御液室410が形成されている。制御液室410の容積は第2ピストン318の移動位置に応じて変化し、具体的には、第2ピストン318の前進時には減少する一方、後退時には増加する。図において符号412,414はシールを示している。
【0082】
制御液室410は、作動液を蓄積するリザーバ416と液通路418により接続されており、その液通路418の途中にソレノイドバルブ420が設けられている。このソレノイドバルブ420は、ソレノイドのON/OFF状態に応じて閉状態と開状態とに切り換わり、具体的には、ソレノイドのOFF状態(非励磁状態)では閉状態、ON状態(励磁状態)では開状態に切り換わる。閉状態では、制御液室410とリザーバ416との間における作動液の双方向の流れが阻止され、それにより、制御液室410の容積変化が阻止され、その結果、第2ピストン318の作動が禁止される。これに対して、開状態では、制御液室410とリザーバ416との間における作動液の双方向の流れが許容され、それにより、制御液室410の容積変化が許容され、その結果、第2ピストン318の作動が許可される。
【0083】
本実施形態のECU50のROM342にはさらに、第2ピストン作動許可・禁止ルーチンが記憶されている。この第2ピストン作動許可・禁止ルーチンは、電動式ドラムブレーキ32が故障しているか否かに応じてソレノイドバルブ420を制御することにより、第2ピストン318の作動許可・禁止状態を制御するものである。
【0084】
この第2ピストン作動許可・禁止ルーチンは図16にフローチャートで表されている。まず、S81において、電動式ドラムブレーキ32が故障しているか否かが判定される。故障していなければ判定がNOとなり、S82において、ソレノイドバルブ420のソレノイドにそれをOFFにするための信号が出力される。それにより、ソレノイドバルブ420が閉状態とされ、制御液室410の容積変化が阻止され、ひいては、第2ピストン318の作動が禁止される。その結果、電動式ドラムブレーキ32の正常時に第2ピストン318が予定外に作動して機械式ドラムブレーキ36を予定外に作動させることが防止される。これに対して、電動式ドラムブレーキ32が故障していればS81の判定がYESとなり、S83において、ソレノイドバルブ420のソレノイドにそれをONにするための信号が出力される。それにより、ソレノイドバルブ420が開状態とされ、制御液室410の容積変化が許容され、ひいては、第2ピストン318の作動が許可される。その結果、電動式ドラムブレーキ32の故障時に第2ピストン318が作動して機械式ドラムブレーキ36が作動することが許可される。いずれの場合にも、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0085】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、制御液室410と、リザーバ416と、液通路418と、ソレノイドバルブ420と、ECUのうち図16のS81〜S83を実行する部分とが互いに共同して第2ピストン作動許可・禁止装置408を構成しているのである。また、その第2ピストン作動許可・禁止装置408と、第2ピストン318を第1ピストン316に対して相対移動可能に設けるとともに、その第2ピストン318を、操作力Fが基準値を超えないうちは第1ピストン316が係合しないようにした構成とがそれぞれ「予定外作動防止装置」の一例を構成しているのである。
【0086】
次に、本発明の第4実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多いため、共通の要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0087】
図17に示すように、本実施形態のマニュアルブレーキ制御装置430においては、第2ピストン作動許可・禁止装置432が設けられている。本実施形態においては、第1および第2ピストン316,318がハウジング314に実質的に気密かつ摺動可能に嵌合されている。図において符号434,436,438はいずれもシールを示している。両ピストン316,318がハウジング314に嵌合される結果、第1ピストン316の前方と第2ピストン318の前方とにそれぞれ第1制御液室440と第2制御液室442とが形成されている。第1制御液室440は、第1ピストン316と可動部材としての第2ピストン318との間に設けられ、一方、第2制御液室442は、第2ピストン318と固定部材としてのハウジング314との間に設けられている。なお、本実施形態においては、第1実施形態のストッパ324が省略されてスプリング320の前端部が直接に第2ピストン318に係合させられている。また、第1実施形態の係合突起322も省略されている。
【0088】
第1および第2制御液室440,442はそれぞれ第1および第2液通路444,446により、作動液を蓄積するリザーバ448に接続されている。第2制御液室442の容積は、先の第2実施形態におけると同様に、第2ピストン318の前進・後退に応じて減少・増加する。したがって、第2制御液室442とリザーバ448との間における作動液の双方向の流れを阻止すれば、第2ピストン318の作動が禁止される。これに対して、第1制御液室440の容積は、第1ピストン316の移動位置のみならず第2ピストン318の移動位置によっても変化する。第1ピストン316が第2ピストン318に相対的に接近すれば容積が減少する一方、相対的に離隔すれば容積が増加するのである。したがって、第1制御液室440とリザーバ448との間における作動液の双方向の流れを阻止すれば、両ピストン316,318の相対移動が阻止され、その結果、それら両ピストン316,318が互いに一体的に作動する状態が実現され、これに対して、その作動液の双方向の流れを許容すれば、第1ピストン316が単独で作動して第2ピストン318に接近する状態が許容される。
【0089】
第1および第2液通路444,446の途中にはそれぞれ第1および第2ソレノイドバルブ450,452が設けられている。第1ソレノイドバルブ450は、ソレノイドのOFF状態で閉状態、ON状態で開状態に切り換わる。一方、第2ソレノイドバルブ452は、ソレノイドのOFF状態で開状態、ON状態で閉状態に切り換わる。
【0090】
本実施形態のECU50のROM342にはさらに、第2ピストン作動許可・禁止ルーチンが記憶されている。この第2ピストン作動許可・禁止ルーチンは、電動式ドラムブレーキ32が故障しているか否かに応じて両ソレノイドバルブ450,452を制御することにより、両ピストン316,318の作動許可・禁止状態を制御するものである。
【0091】
この第2ピストン作動許可・禁止ルーチンは図18にフローチャートで表されている。まず、S101において、電動式ドラムブレーキ32が故障しているか否かが判定される。故障していなければ判定がNOとなり、S102において、両ソレノイドバルブ450,452のソレノイドにそれをONにするための信号が出力される。それにより、第1ソレノイドバルブ450は開状態、第2ソレノイドバルブ452は閉状態とされる。この状態においては、第1制御液室440の容積変化が許容されるため、第1ピストン316が第2ピストン318に相対的に接近・離隔することが許容され、また、第2制御液室442の容積変化が阻止されるため、第2ピストン318の作動が禁止される。その結果、電動式ドラムブレーキ32の正常時には、機械式ドラムブレーキ36の予定外作動が防止されるとともに、ブレーキペダル34の操作ストロークの変化が許容されてペダル操作フィーリングが硬すぎるものになることが防止される。
【0092】
これに対して、電動式ドラムブレーキ32が故障していればS101の判定がYESとなり、S103において、両ソレノイドバルブ450,452のソレノイドにそれをOFFするための信号が出力される。それにより、第1ソレノイドバルブ450は閉状態、第2ソレノイドバルブ452は開状態とされる。この状態においては、第1制御液室440の容積変化が阻止されるため、第1ピストン316が第2ピストン318と一体的に作動させられ、また、第2制御液室442の容積変化が許容されるため、第2ピストン318の作動が許可される。その結果、電動式ドラムブレーキ32の故障時には、第2ピストン318が第1ピストン316によって作動させられて機械式ドラムブレーキ36が作動させられる。
【0093】
なお付言すれば、本実施形態においては、第1実施形態におけるとは異なり、第2ピストン318がストッパ324を使用しないとともに、第2ピストン318がスプリング320を受けるようになっているが、第1実施形態におけると同様にしてストッパ324を設けるとともに、そのストッパ324がスプリング320を受けるようにしてもよい。
【0094】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、第1および第2制御液室440,442,第1および第2液通路444,446,リザーバ448ならびに第1および第2ソレノイドバルブ450,452と、ECU50のうち図18のS101〜S103を実行する部分とが互いに共同して第2ピストン作動許可・禁止装置432を構成し、その第2ピストン作動許可・禁止装置432と、第2ピストン318を第1ピストン316に対して相対移動可能に設けるとともに、その第2ピストン318を、第1ピストン316からの作動力を常時受けるようにした構成とがそれぞれ「予定外作動防止装置」の一例を構成しているのである。
【0095】
次に、本発明の第5実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多いため、共通の要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0096】
図19に示すように、本実施形態のマニュアルブレーキ制御装置468においては、第1実施形態におけるとは異なり、第1ピストン316と第2ピストン318との間に第1スプリング470が設けられるとともに、第2ピストン318がその第1スプリング470を受けるようになっている。この第1スプリング470により、ブレーキペダル34の操作フィーリングが従来の液圧式ブレーキシステムにおけると同等のものとして実現される。
【0097】
また、本実施形態においては、第1スプリング470の他に、第2ピストン318とハウジング314との間に第2スプリング472も設けられている。この第2スプリング472は、第1スプリング470から作用する弾性力により第2ピストン318が作動するタイミングを制御するために設けられている。電動式ドラムブレーキ32の正常時には、第2ピストン318が第1ピストン316によって作動せず、一方、電動式ドラムブレーキ32の故障時には、運転者がブレーキペダル34を正常時におけるより強く操作し、その結果、第1スプリング470の弾性力が正常時におけるより大きくなったときにはじめて第2スプリング472が圧縮させられ、それにより、第2ピストン318が作動し、その結果、機械式ドラムブレーキ36が作動するようになっているのである。
【0098】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、第2ピストン318を第1ピストン316に対して相対移動可能に設けるとともに、その第2ピストン318を、第1ピストン316からの作動力を常時受けるようにした構成と、第2ピストン318に弾性力を、第1ピストン316の作動力が基準値を超えないうちは第2ピストン318が作動しないように付与するスプリング472とが互いに共同して「予定外作動防止装置」の一例を構成しているのである。
【0099】
次に、本発明の第6実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多いため、共通の要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0100】
図20に示すように、本実施形態のマニュアルブレーキ制御装置488においては、第2ピストン318がハウジング314に実質的に気密かつ摺動可能に嵌合されるとともに、この第2ピストン318の前方において第3ピストン490が実質的に気密かつ摺動可能に嵌合されている。図において符号492,494は共にシールを示している。それらピストン318,490がハウジング314に摺動可能に嵌合される結果、それらピストン318,490の間に液室496が形成されている。
【0101】
第3ピストン490は第2ピストン318より大径とされている。また、両ピストン318,490は液室496内の作動液により力を相互に伝達するようになっている。そのため、第3ピストン490には、第2ピストン318の作動力が倍力されて伝達される。したがって、本実施形態によれば、電動式ドラムブレーキ32の故障時に、操作力Fが倍力されて機械式ドラムブレーキ36に伝達されるため、故障時でありながら、小さい操作力Fにより大きな車輪制動力を発生させ得る。
【0102】
次に、本発明の第7実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多いため、共通の要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0103】
図21に示すように、本実施形態のマニュアルブレーキ制御装置504においては、第1実施形態におけるとは異なり、第2ピストン318が省略されており、よって、操作力Fが基準値を超えたならば、係合突起322が直接にレバー328に係合するようになっている。また、レバー装置506は、第1実施形態におけるレバー装置326と基本的な構造は共通するが、本実施形態においては、クレビス332に代えて、レバー328に対して位置固定の係合部508が設けられており、レバー328をその係合部508を介して係合突起322に係合させるようになっている。また、本実施形態においては、レバー328の初期位置を規定するストッパ510が設けられている。なお、ストッパ510は、図示のように、ハウジング314から独立して設けてもよいが、ハウジング314に一体的に形成してもよい。
【0104】
次に、本発明の第8実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第7実施形態(図21)と共通する要素が多いため、共通の要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0105】
第7実施形態のマニュアルブレーキ制御装置504においては、レバー装置506が、レバー328に支点(クレビス330),力点(係合部508)および作用点(クレビス336)がそれらの順に設定された形式とされ、それにより、力点の変位量すなわち第1ピストン316の作動ストロークが拡大されて作用点すなわち非常ブレーキ用ケーブル282に伝達されるようになっている。これに対して、本実施形態のマニュアルブレーキ制御装置528においては、図22に示すように、レバー装置530が、レバー328に支点(クレビス330),作用点(クレビス336)および力点(係合部508)がそれらの順に設定された形式とされ、それにより、力点に作用する力すなわち第1ピストン316の作動力が拡大されて作用点すなわち非常ブレーキ用ケーブル282に伝達されるようになっている。したがって、本実施形態によれば、電動式ドラムブレーキ32の故障時に、操作力Fが倍力されて機械式ドラムブレーキ36に伝達されるため、故障時でありながら、小さい操作力Fにより大きな車輪制動力を発生させ得る。
【0106】
次に、本発明の第9実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第7実施形態(図21)と共通する要素が多いため、共通の要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0107】
第7実施形態においては、電動式ドラムブレーキ32の故障時であっても、操作力Fが過大となると、第1ピストン316によってレバー装置506が作動させられてしまう。これに対して、本実施形態のマニュアルブレーキ制御装置548においては、図23に示すように、レバー328の作動を許可・禁止するレバー作動許可・禁止装置550が設けられている。
【0108】
このレバー作動許可・禁止装置550においては、ストッパピン552がソレノイドの磁気力により、ハウジング314と係合部508とに同時に係合する係合位置と、少なくとも係合部508から離脱される離脱位置とに切り換わる。このレバー作動許可・禁止装置550は、図24に示すように、(a) ストッパピン552をそれの軸線方向に摺動可能に嵌合するハウジング556と、(b) ストッパピン552を離脱位置に向かって付勢するスプリング558と、(c) ON状態で磁気力を発生させ、その磁気力によってストッパピン552をスプリング558の弾性力に抗して係合位置に向かって付勢するソレノイド560とを備えている。図の(a) は、ストッパピン552が、ハウジング314と係合部508とにそれぞれ直径方向に形成された係合穴562,564から離脱した離脱位置にある状態を示し、一方、図の(b) は、それら係合穴562,564に同時に係合した係合位置にある状態を示している。
【0109】
本実施形態のECU50のROM342にはさらに、レバー作動許可・禁止ルーチンが記憶されている。このレバー作動許可・禁止ルーチンは、電動式ドラムブレーキ32が故障しているか否かに応じてソレノイド560を制御することにより、レバー328の作動許可・禁止状態を制御するものである。
【0110】
このレバー作動許可・禁止ルーチンは図25にフローチャートで表されている。まず、S121において、電動式ドラムブレーキ32が故障しているか否かが判定される。故障していなければ判定がNOとなり、S122において、ソレノイド560にそれをONにするための信号が出力される。それにより、ソレノイドバルブ560が励磁状態とされる。この状態においては、ストッパピン552が係合位置に位置させられるため、第1ピストン316によるレバー328の作動が禁止される。その結果、電動式ドラムブレーキ32の正常時には、機械式ドラムブレーキ36の予定外作動が防止される。
【0111】
これに対して、電動式ドラムブレーキ32が故障していればS121の判定がYESとなり、S123において、ソレノイド560にそれをOFFするための信号が出力される。それにより、ソレノイド560が消磁状態とされる。この状態においては、ストッパピン552が離脱位置に位置させられるため、第1ピストン316によるレバー328の作動が許可される。その結果、電動式ドラムブレーキ32の故障時には、レバー328が第1ピストン316によって作動させられて機械式ドラムブレーキ36が作動させられる。
【0112】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ストッパピン552,ハウジング556,スプリング558およびソレノイド560と、ECU50のうち図25のS121〜S123を実行する部分とが互いに共同してレバー作動許可・禁止装置550を構成し、そのレバー作動許可・禁止装置550と、レバー328の係合部508を、操作力Fが基準値を超えないうちは第1ピストン316が係合しないように設けた構成とがそれぞれ「予定外作動防止装置」の一例を構成しているのである。
【0113】
次に、本発明の第10実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多いため、共通の要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0114】
第1実施形態においては、ブレーキペダル装置302とレバー装置326との間に操作ストローク付与機構321が配置されているが、本実施形態においては、図26に示すように、操作ストローク付与機構580がマニュアルブレーキ制御装置581のレバー装置582に関してブレーキペダル装置302とは反対側に配置されている。
【0115】
マニュアルブレーキ制御装置581においては、プッシュロッド312がレバー装置582を貫通して車体前方に延びており、操作ストローク付与機構580はそのプッシュロッド312と同軸にかつそれの先端部に常時係合する状態で配置されている。操作ストローク付与機構580は、車体に位置固定に取り付けられた有底のハウジング584を備えており、そのハウジング584にピストン586が摺動可能に嵌合されている。ハウジング584の底部とピストン586との間にスプリング588が配設され、そのスプリング588により、ブレーキペダル34を操作する運転者にブレーキペダル34からの反力を付与するとともに、ブレーキペダル34に操作力Fに応じた操作ストロークが付与されるようになっている。
【0116】
レバー装置582は、レバー590を備え、そのレバー590は一端部においてレバーブラケット591により車体に、プッシュロッド312の軸線を含む一平面内で回動可能に取り付けられ、他端部において非常ブレーキ用ケーブル282に連結されている。レバー装置582はさらに、レバー590の非作用位置に規定するストッパ592と、レバー590を非作用位置に向かって付勢するリターンスプリング594とを備えている。
【0117】
プッシュロッド312はレバー590とそれの中間部において連携させられているが、それらプッシュロッド312とレバー590との係合・離脱がソレノイドの磁気力によって制御される。そのために設けられているのがレバー作動許可・禁止装置596である。
【0118】
このレバー作動許可・禁止装置596は、図27に示すように、レバー590の中間部に位置固定に取り付けられたハウジング598を備えている。このハウジング598には、ストッパピン600がそれの軸線方向に摺動可能に嵌合されている。一方、レバー590にはプッシュロッド312が、そのストッパピン600に近接する位置において摺動可能に嵌合されている。プッシュロッド312の軸線とストッパピン600の軸線とは互いに直角とされている。プッシュロッド312のうちストッパピン600の先端部に対向する部分には、そのストッパピン600の先端部が係合可能な係合凹部602が形成されている。レバー作動許可・禁止装置596はさらに、(a) ストッパピン600を係合凹部602に係合する向きに付勢するスプリング604と、(b) そのスプリング604の弾性力に抗してストッパピン600を係合凹部602から離脱する向きに付勢する磁気力を発生させるソレノイド606とを備えている。したがって、ソレノイド606のOFF状態では、図の(a) に示すように、スプリング604によりストッパピン600が係合凹部602に係合させられ、その結果、レバー590がプッシュロッド312と一体的に作動させられる。一方、ソレノイド606のON状態では、図の(b) に示すように、そのソレノイド606の磁気力によりスプリング604の弾性力に抗してストッパピン600が係合凹部602から離脱させられ、その結果、プッシュロッド312によりレバー590が作動させられることが禁止される。
【0119】
本実施形態のECU50のROM342にはさらに、レバー作動許可・禁止ルーチンが記憶されている。このレバー作動許可・禁止ルーチンは、電動式ドラムブレーキ32が故障しているか否かに応じてソレノイド606を制御することにより、レバー590の作動許可・禁止状態を制御するものである。
【0120】
このレバー作動許可・禁止ルーチンは図28にフローチャートで表されている。まず、S141において、電動式ドラムブレーキ32が故障しているか否かが判定される。故障していなければ判定がNOとなり、S142において、ソレノイド606にそれをONにするための信号が出力される。それにより、ソレノイド606が励磁状態とされる。この状態においては、ストッパピン600が係合凹部602から離脱する離脱位置(図27の(b) )に位置させられるため、プッシュロッド312によるレバー590の作動が禁止される。その結果、電動式ドラムブレーキ32の正常時には、機械式ドラムブレーキ36の予定外作動が防止される。
【0121】
これに対して、電動式ドラムブレーキ32が故障していればS141の判定がYESとなり、S143において、ソレノイド606にそれをOFFするための信号が出力される。それにより、ソレノイド606が消磁状態とされる。この状態においては、ストッパピン600が係合凹部602に係合する係合位置(図27の(a) )に位置させられるため、プッシュロッド312によるレバー590の作動が許可される。その結果、電動式ドラムブレーキ32の故障時には、レバー590が作動させられて機械式ドラムブレーキ36が作動させられる。
【0122】
ROM342には、さらに、ソレノイド異常チェックルーチンが記憶されている。このソレノイド異常チェックルーチンは、ソレノイド606の異常の有無をチェックし、異常がある場合にはその事実をブレーキ警告ランプ376を介して運転者に警告するルーチンである。
【0123】
このソレノイド異常チェックルーチンが図29にフローチャートで表されている。まず、S161において、電動式ドラムブレーキ32が正常であるか否か、すなわち、本来であればソレノイド606がON状態にあるはずであるか否かが判定される。故障していれば判定がNOとなり、直ちに本ルーチンの一回の実行が終了する。これに対して、正常であれば判定がYESとなり、S162において、操作力センサ348により操作力Fが検出され、続いて、S163において、前後加速度センサ356により車体前後加速度GFRが検出される。その後、S164において、ブレーキの効きのレベルが車体前後加速度GFRを操作力Fで割り算することによって推定されるとともに、その推定されたレベルが基準値より高いか否かが判定される。ブレーキの効きのレベルが基準値より高い場合には、判定がYESとなり、S165において、ブレーキ警告ランプ376が点灯させられる。ブレーキの効きのレベルが基準値より高いということは、電動式ドラムブレーキ32の正常時にその電動式ドラムブレーキ32のみならず機械式ドラムブレーキ36も作動させられている可能性が強いからである。これに対して、ブレーキの効きのレベルが基準値より高くはない場合には、S164の判定がNOとなり、S165がスキップされ、それにより、ブレーキ警告ランプ376が消灯させられる。いずれの場合にも、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0124】
なお付言すれば、S162においては、操作力Fが検出されるようになっているが、これに代えてブレーキペダル34の操作ストロークを検出してもよい。操作ストロークは操作力Fに関連して変化する物理量であるからである。
【0125】
さらに付言すれば、本実施形態においては、ソレノイド606の電源が、電動式ドラムブレーキ32と共通の電源である第2バッテリ372とされているが、第2バッテリ372から独立した電源、すなわち、第2バッテリ372の影響を受けない電源とすることができる。そのような電源には例えば、主バッテリ374がある。また、車両に互いに独立に搭載されている複数の電源(例えば、第1および第2バッテリ370,372)のうち機能が正常であるものが自動的に選択されて、その選択された電源がソレノイド606の電源とされるようにすることもできる。
【0126】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ストッパピン552,ハウジング556,スプリング558およびソレノイド560と、ECU50のうち図28のS141〜S143を実行する部分とが互いに共同してレバー作動許可・禁止装置550を構成し、そのレバー作動許可・禁止装置550が「予定外作動防止装置」の一例を構成しているのである。
【0127】
なお付言すれば、本実施形態においては、電動式ドラムブレーキ32の故障時には、車両におけるすべての電源が正常に機能しなくなる可能性が高いことを考慮し、レバー作動許可・禁止装置596は、ソレノイド606に磁気力が発生しない状態で、スプリング604の弾性力を利用することにより、操作力Fによる機械式ドラムブレーキ36の作動を許可する形式とされている。ただし、レバー作動許可・禁止装置596は、電動式ドラムブレーキ32の故障時に、ソレノイド606の磁気力を利用することにより、操作力Fによる機械式ドラムブレーキ36の作動を許可する形式とすることもできる。なお、この形式のレバー作動許可・禁止装置596においては、第2バッテリ372とは別の電源によりソレノイド606の異常チェックおよび励磁を行うことが必要となる。
【0128】
次に、本発明の第11実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第10実施形態(図26)と共通する要素が多いため、共通の要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0129】
第10実施形態においては、電動式ドラムブレーキ32の正常時には、ブレーキ操作の有無を問わず、ソレノイド606がONされるようになっている。これに対して、本実施形態においては、電動式ドラムブレーキ32の正常時には、ブレーキ操作が行われている間に限り、ソレノイド606がONされ、それにより、無駄な電力消費が回避されるようになっている。
【0130】
図30には、本実施形態におけるレバー作動許可・禁止ルーチンがフローチャートで表されている。まず、S181において、電動式ドラムブレーキ32が故障しているか否かが判定される。故障していなければ判定がNOとなり、S182において、ブレーキペダルスイッチ350がONであるか否かが判定される。ONであれば判定がYESとなり、S183において、ソレノイド606にそれをONにするための信号が出力される。それにより、ソレノイドバルブ606が励磁状態とされ、ストッパピン600が離脱位置に位置させられる。
【0131】
これに対して、電動式ドラムブレーキ32が正常であり、かつ、ブレーキペダルスイッチ350がOFFである場合には、S181の判定はNO、S182の判定もNOとなり、また、電動式ドラムブレーキ32が故障している場合には、S181の判定がYESとなる。そして、いずれの場合にも、S184において、ソレノイド606にそれをOFFするための信号が出力される。それにより、ソレノイド606が消磁状態とされる。この状態においては、ストッパピン600が係合凹部602に係合する係合位置に位置させられる。
【0132】
以上の説明から明らかなように、ハウジング598,ストッパピン600,スプリング604およびソレノイド606と、ECU50のうち図30のS181〜S184を実行する部分とが互いに共同してレバー作動許可・禁止装置596を構成し、そのレバー作動許可・禁止装置596が「予定外作動防止装置」の一例を構成しているのである。
【0133】
次に、本発明の第12実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第10実施形態(図26)と共通する要素が多いため、共通の要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0134】
第10実施形態においては、先の他の実施形態におけると同様に、レバー590の力点がプッシュロッド312と同軸の直線上に設定されているが、本実施形態のマニュアルブレーキ制御装置618においては、図31に示すように、係合部620がプッシュロッド312の軸線から半径方向に外れた位置においてプッシュロッド312と一体的に移動可能に設けられる一方、レバー622に係合部624が形成され、レバー622はそれの係合部624においてプッシュロッド312の係合部620から力を受けるようになっている。レバー622は、プッシュロッド312の下方において垂直に、かつ、それの延長線がプッシュロッド312の軸線と交差するように配置されている。また、係合部624はレバー622の上端部に一体的に取り付けられており、レバー622はそれの下端部において車体にレバーブラケット626により回動可能に連結されている。レバー622はそれの中間部においてクレビス336を介して非常ブレーキ用ケーブル282に連結されており、よって、レバー622は係合部624が係合部620から受ける力を倍力して非常ブレーキ用ケーブル282に伝達することになる。
【0135】
係合部620,624の間には、プッシュロッド312の軸方向に平行な方向において隙間が設けられており、操作力Fによりプッシュロッド312が初期位置から前進させられても、その隙間が消滅しない限り、両係合部620,624が互いに当接せず、レバー622が作動させられないようになっている。
【0136】
次に、本発明の第13実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第12実施形態と共通する要素が多いため、共通の要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0137】
第12実施形態のマニュアルブレーキ制御装置618においては、レバー622がそれの軸線(延長した部分を含む)がプッシュロッド312の軸線と直角に交差するように配置されているが、本実施形態のマニュアルブレーキ制御装置638においては、図32に示すように、レバー640がプッシュロッド312と立体交差するように配置されている。プッシュロッド312と一体的に移動する係合部642は、プッシュロッド312からレバー640の係合部644に向かって延びている。レバー640は、一端部において車体にレバーブラケット646により回動可能に連結される一方、他端部においてクレビス336を介して非常ブレーキ用ケーブル282に連結されている。係合部644はレバー640の中間部に設けられており、よって、レバー640は係合部642の変位量すなわちプッシュロッド312の作動ストロークを拡大して非常ブレーキ用ケーブル282に伝達することになる。
【0138】
次に、本発明の第14実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0139】
第1実施形態においては、機械式ドラムブレーキ36の作動許可時に、ブレーキペダル34の操作力Fがレバー装置326を経て非常ブレーキ用ケーブル282に引張力として伝達されるようになっている。これに対して、本実施形態においては、ボールねじ機構を経て伝達されるようになっている。
【0140】
図33には、ブレーキペダル装置302とマニュアルブレーキ制御装置700と非常ブレーキ用ケーブル282とが示されている。マニュアルブレーキ制御装置700は、共に筒状を成す第1ハウジング702と第2ハウジング704とを備えている。第1ハウジング702は底部706を有するとともに、その底部706の外面にフランジ708が形成されている。第1ハウジング702は、そのフランジ708において図示しないダッシュパネルに取り付けられる。第2ハウジング704はその第1ハウジング702にそれの開口部710において、第1ハウジング702と同軸に、複数本のボルト711により固定されている。
【0141】
第1ハウジング702には、それと同軸に段付状のシリンダボア712が形成され、そのシリンダボア712に段付状の第1ピストン714が軸方向に摺動可能に嵌合されている。第1ピストン714は、それの小径部716においてプッシュロッド312の先端部に直接に係合させられる一方、それの大径部718においてスプリング720を介して第2ハウジング704の外面722に係合させられている。スプリング720は第1ピストン714を常時、プッシュロッド312に接近する向きに付勢しており、第1ピストン714の肩面724が第1ハウジング702の肩面726に当接することにより、その接近限度が規定されている。第1ピストン714の大径部718の外周面には、それの軸線方向に延びる溝728が形成されている。第1ハウジング702の壁部にはボルト730が貫通させられて固定され、そのボルト730の先端部がシリンダボア712内の空間に臨まされている。ボルト730の先端部は、溝728に緩く嵌入させられており、それにより、第1ピストン714の軸方向移動は許容されるが、軸線回りの回転は阻止される。それらボルト730と溝728との位置関係が図34に正面図で示されている。それらボルト730と溝728とにより、第1ピストン714の回転防止機構が構成されているのである。
【0142】
図33に示すように、第1ピストン714の中央にはシリンダボア734が同軸に形成されており、そのシリンダボア734に、第1ピストン714より小径かつ段付状の第2ピストン736が軸方向に摺動可能に嵌合されている。第2ピストン736は第1ハウジング702内から第2ハウジング704の壁部738を貫通して第2ハウジング704内に延びている。第2ピストン736の小径部740は第1ハウジング702内、大径部742は第2ハウジング704内にそれぞれ位置させられている。第2ピストン736と第2ハウジング704との少なくとも一方には、第2ピストン736の軸方向移動は許容するが、軸線回りの回転は阻止する機構(図示しない。例えば、スプライン嵌合部)が設けられている。
【0143】
第2ピストン736の大径部742の先端部は、第2ハウジング704の内面744にスプリング746を介して係合させられている。スプリング746は第2ピストン736を常時、第1ピストン714に接近する向きに付勢しているが、第2ピストン736の肩面748が第2ハウジング704の内面750に当接することにより、その接近限度が規定されている。
【0144】
第2ハウジング704内には、筒状の回転部材754が第2ピストン736と同軸に設けられている。回転部材754はそれの軸方向に隔たった一対のベアリング756,758によって回転可能に支持されている。回転部材754の内周面は第2ピストン736の大径部742の外周面と隙間を隔てて対向させられており、その隙間内にボールねじ機構760が配設されている。ボールねじ機構760は、よく知られているように、大径部742の軸方向運動を回転部材754の回転運動に変換する機構である。具体的には、ボールねじ機構760は、シャフトとしての大径部742が複数個のボール762を介してナット764に螺合された構造を有している。ナット764は回転部材754に一体的に回転可能に固定されている。
【0145】
したがって、第1ピストン714から第2ピストン736に前進力が付与され、それにより、第2ピストン736が図示の原位置から前進(スプリング746が圧縮する向きに移動)すれば、回転部材754が回転させられる。これに対して、第1ピストン714から第2ピストン736に前進力が付与されなくなると、第2ピストン736はスプリング746の弾性力によって後退させられる。この際、回転部材754が逆回転させられる。
【0146】
第2ハウジング704の壁部768には回転部材754の外周面に対向する位置において、アウタケーシング286の先端部が貫通させられて固定され、その先端部から非常ブレーキ用ケーブル282が延び出させられている。非常ブレーキ用ケーブル282の先端部(図示しない)は回転部材754に固定されており、回転部材754が正方向に回転させられれば、非常ブレーキ用ケーブル282が回転部材754(ドラム)に巻き付けられ、それにより、非常ブレーキ用ケーブル282に引張力が付与される。図35には、それら非常ブレーキ用ケーブル282と回転部材754との位置関係が正面図で示されている。非常ブレーキ用ケーブル282に付与された引張力により機械式ドラムブレーキ36が作動させられる。これに対して、回転部材754が逆方向に回転させられれば、非常ブレーキ用ケーブル282の引張力が弱められ、その結果、機械式ドラムブレーキ36の作動力が減少させられる。
【0147】
図33に示すように、第1ピストン714は常に、プッシュロッド312と共に前進するが、第2ピストン736は、第1ピストン714と一緒に前進する状態と第1ピストン714が前進しても前進しない状態とに切り換えられる。その切換えを行うためにストッパピン770が設けられている。第1ピストン714の壁部の一部には、第1ピストン714の直径方向に貫通する穴772が形成されており、その穴772にストッパピン770がそれの軸方向に摺動可能に嵌合されているのである。ストッパピン770は常時、第1ピストン714と一体的に移動する。
【0148】
ストッパピン770は、第1ピストン714の一直径方向において、それの先端部がシリンダボア734の内周面から突出する位置と、突出しない位置とに移動させられる。その移動は駆動装置776により行われる。駆動装置776は、第1ピストン714に固定の駆動装置ハウジング778と、その駆動装置ハウジング778に軸方向摺動可能に嵌合されたプランジャ780とを備えている。駆動装置ハウジング778と第1ピストン714との位置関係が図34に正面図で示されている。プランジャ780はストッパピン770を同軸に保持している。駆動装置776は、さらに、ソレノイド782,コア784およびスプリング786を備えている。スプリング786は、プランジャ780を常時、ストッパピン770がシリンダボア734内の空間に突出する位置に向かって付勢する。ソレノイド782が励磁されて磁気力が発生させられれば、プランジャ780がスプリング786の弾性力に抗してコア784に吸引されることにより、ストッパピン770が図示の突出位置から後退させられて(図において上方に移動させられて)シリンダボア734の内周面から退避させられる。
【0149】
図33に示すように、第1ハウジング702には、駆動装置776を覆うカバー788が固定されている。図36には、それら第1ハウジング702,駆動装置776およびカバー788の位置関係が斜視図で示されている。図33に示すように、カバー788には、第1ピストン714の移動に伴う駆動装置776の移動を許容するための空間が形成されている。カバー788には、外部との接続のためのコネクタ790が設けられ、そのコネクタ790とソレノイド782のターミナル791とを互いに接続するワイヤ792が十分な可撓性と十分な長さとを付与されていて、駆動装置776の移動によってワイヤ792が断線することがないようにされている。
【0150】
駆動装置776は、ソレノイド782がOFFである通常状態で、ストッパピン770をシリンダボア734内に突出させる。そのため、通常状態では、第1ピストン714が前進しようとすれば、その前進力がストッパピン770を介して第2ピストン736に伝達され、その結果、第1ピストン714が第2ピストン736と一緒に前進させられる。第2ピストン736が前進させられれば、それの運動がボールねじ機構760によって回転運動に変換され、結局、回転部材754の回転によって非常ブレーキ用ケーブル282が巻き取られる。これに対して、ソレノイド782のON状態では、ストッパピン770がシリンダボア734内の空間から退避させられるため、第1ピストン714は単独で前進可能となる。このとき、第1ピストン714には、スプリング720の弾性力が付与され、その結果、ブレーキペダル34に反力が付与される。ブレーキペダル34に反力がそれの操作ストロークに応じて付与されるようになっているのである。
【0151】
ECU50のROM342には、図37にフローチャートで表されているブレーキ切換制御ルーチンが記憶され、そのルーチンがCPU340により実行されることにより、ソレノイド782のON/OFF状態が制御される。
【0152】
本ルーチンは、右後輪RRと左後輪RLとに関して順にかつ繰返し実行される。主バッテリ374は、車両のイグニションスイッチがONであるかOFFであるかを問わず、ECU50に電力を供給する。そして、本ルーチンは、イグニションスイッチがONであるかOFFであるか否かを問わず、繰返し実行される。
【0153】
本ルーチンの各回の実行時には、まず、S191において、電気ブレーキである左右後輪用の電動式ドラムブレーキ32の少なくとも一方が故障しているか否かが判定される。電動式ドラムブレーキ32およびそれに関連する電気系統に断線または短絡が発生していれば、電動式ドラムブレーキ32が故障していると判定される。また、図示しないバッテリ電圧センサにより第2バッテリ372(左右後輪用の電動式ドラムブレーキ32のモータ30に電力を供給する電源)の電圧が検出され、その検出されたバッテリ電圧が基準値以下である場合、すなわち、バッテリ電圧が不足している場合にも、電動式ドラムブレーキ32が故障していると判定される。今回は、故障していると仮定すれば、判定がYESとなり、S192において、RAM344に設けられた故障フラグであって、0で、左右後輪のいずれにおいても電動式ドラムブレーキ32が故障していないことを示し、1で、左右後輪の少なくとも一方において電動式ドラムブレーキ32が故障していることを示すフラグが1にされる。これに対して、今回は、故障していないと仮定すれば、S191の判定がNOとなり、S193において、故障フラグが0とされる。いずれの場合にも、その後、S194に移行する。
【0154】
このS194においては、ブレーキペダルスイッチ350(図において「ブレーキペダルSW」で表す。)がOFFであるか否かが判定される。今回はOFFであると仮定すれば、判定がYESとなり、S195において、ソレノイド782がOFFにされ、それにより、ストッパピン770が第2ピストン736に係合することが許容される。それにより、第1ピストン714が第2ピストン736と一緒に前進することが強制され、その結果、左右後輪用の機械式ドラムブレーキ36の作動が許可される。電気ブレーキではなくマニュアルブレーキが選択されるのである。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。したがって、このブレーキシステムによれば、イグニションスイッチのOFF時には、運転者がブレーキペダル34を踏み込めば、電動式ドラムブレーキ32が故障しているか否かを問わず、左右後輪用の機械式ドラムブレーキ36によって車両が制動される。
【0155】
これに対して、今回は、ブレーキペダルスイッチ350がONであると仮定すれば、S194の判定がNOとなり、S196において、故障フラグが1であるか否かが判定される。左右後輪の少なくとも一方において電動式ドラムブレーキ32が故障していると判定されたか否かが判定されるのである。今回は、故障フラグが1であると仮定すれば、判定がYESとなり、S195に移行し、マニュアルブレーキが選択される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。したがって、このブレーキシステムによれば、イグニションスイッチのON時であり、かつ、電動式ドラムブレーキ32が故障している場合には、運転者がブレーキペダル34を踏み込めば、機械式ドラムブレーキ36によって車両が制動される。
【0156】
これに対して、今回は、故障フラグが0であると仮定すれば、S196の判定がNOとなり、S197において、ソレノイド782がONにされ、それにより、ストッパピン770が第2ピストン736に係合しない状態とされる。それにより、第1ピストン714が単独で前進可能とされ、その結果、左右後輪用の機械式ドラムブレーキ36の作動が禁止される。マニュアルブレーキではなく電気ブレーキが選択されるのである。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。したがって、このブレーキシステムによれば、イグニションスイッチのON時であり、かつ、電動式ドラムブレーキ32が故障していない場合には、運転者がブレーキペダル34を踏み込めば、電動式ドラムブレーキ32によって車両が制動される。
【0157】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ボールねじ機構が「運動変換機構」の一例を構成しているのである。
【0158】
次に、本発明の第15実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第14実施形態と共通する要素が多く、異なるのは第2ピストンのみであるため、その第2ピストンのみを詳細に説明し、他の要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0159】
第14実施形態においては、第1ピストン714が初期位置(後退端位置)にあるときに限り、ストッパピン770が第2ピストン736に係合可能となっている。これに対して、本実施形態においては、第1ピストン714が初期位置から前進した位置においても、ストッパピン770が第2ピストンに係合可能となっている。
【0160】
図38には、本実施形態における第2ピストン810がストッパピン770等と共に示されている。第2ピストン810の外周面のうち、その第2ピストン810が第1ピストン714と相対移動する際にストッパピン770と対向しつつ通過する部分に、そのストッパピン770が係合すべき係合溝812が複数個形成されている。それら複数個の係合溝812は、第2ピストン810の軸線に沿って等間隔で並んで形成されている。各係合溝812は、各々、第2ピストン810の直径方向(図において紙面に直角な方向)に延びる一対の側面814,816と底面818とを備えている。それら一対の側面814,816のうち、第2ピストン810の後側(図において右側)を向いた側面814は、第2ピストン810の軸線と直角な面でストッパピン770の前側と係合する部分とされ、一方、前側(図において左側)を向いた側面816は、第2ピストン810の軸線と90°より小さい角度で傾斜した斜面でストッパピン770の後側と係合する部分とされている。
【0161】
したがって、ストッパピン770がいずれかの係合溝812に係合させられている状態で、第1ピストン714が前進しようとすれば、その前進力がストッパピン770を介して第2ピストン810に伝達され、その結果、第1ピストン714が第2ピストン810と一緒に前進させられる。
【0162】
その結果、本実施形態によれば、電動式ドラムブレーキ32の作動中にその電動式ドラムブレーキ32が故障したためにソレノイド782がOFFにされれば、ストッパピン770がいずれかの係合溝812に係合する。そのため、以後、ブレーキペダル34がさらに深く踏み込まれれば、第2ピストン810が第1ピストン714と一体的に前進する。その結果、回転部材754が正方向に回転させられ、それにより、機械式ドラムブレーキ36が電動式ドラムブレーキ32に代えて作動させられる。
【0163】
ストッパピン770がいずれかの係合溝812に係合させられている状態で、第1ピストン714が後退しようとすれば、斜面である側面816からストッパピン770に、ストッパピン770を第2ピストン810から離間させる向きの力が付与される。一方、ストッパピン770はスプリング786によって係合溝812に係合する向きに付勢されている。ストッパピン770は後退可能とされているのである。そのため、斜面である側面816からストッパピン770に作用する力のうちそのストッパピン770の軸方向における成分がスプリング786の弾性力に打ち勝つに至れば、ストッパピン770がスプリング786の弾性力に抗して後退させられる。その結果、ストッパピン770の先端部が、第2ピストン810の外周面のうち、互いに隣接した2個の係合溝812によって挟まれたランド部820を通過することが許容される。したがって、本実施形態においては、ストッパピン770がいずれかの係合溝812に係合させられている状態で、第1ピストン714が後退しようとすれば、ソレノイド782をONにしてストッパピン770を強制的に第2ピストン810から退避させることなく、ストッパピン770が自動的に退避させられる。その結果、第1ピストン714は、第2ピストン810の後退を待つことなく単独で後退可能となり、ブレーキペダル34の戻りが第2ピストン810の遅い戻りによって阻害されることが防止される。なお、同図において二点鎖線は、初期位置にあるストッパピン770を示している。
【0164】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、第1ピストン714および第2ピストン810が「相対変位可能な2部材」の一例を構成し、また、ストッパピン770,穴772,駆動装置776および係合溝812が互いに共同して「相対変位制御装置」の一例を構成しているのである。
【0165】
次に、本発明の第16実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第14実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0166】
本実施形態においては、第2ピストンのうちストッパピンに係合される部分の構造と、駆動装置776の取付構造と、駆動装置776とストッパピンとの間における力の伝達を行う構造とにつき、第14実施形態と相違しており、他の構造については共通している。
【0167】
図39には、本実施形態におけるマニュアルブレーキ制御装置840が示されている。そのマニュアルブレーキ制御装置840における第2ピストン842には、第15実施形態におけると同様に、第2ピストン842と同軸に複数個の係合溝812が並んで形成されている。本実施形態においても、ストッパピン770がスプリング786により、係合溝812に第2ピストン842の軸線と直角な方向に弾性的に押し付けられるようになっており、係合溝812とスプリング786との共同作用により、第1ピストン714が前進する際にはそれの前進力を第2ピストン842に伝達するが、後退する際にはそれの後退力を伝達しない一方向力伝達構造とされている。ただし、第15実施形態においては、第1ピストン714の初期位置では、ストッパピン770が第2ピストン842の後端部(図において右側の端部)に係合させられるようになっているが、本実施形態においては、複数個の係合溝812のいずれかに係合させられるようになっている。
【0168】
第14実施形態においては、駆動装置ハウジング778が第1ピストン714に固定され、第1ピストン714と一緒に移動させられるようになっている。これに対して、本実施形態においては、駆動装置ハウジング778が第1ハウジング702に固定され、第1ピストン714とは無関係に位置固定とされている。
【0169】
本実施形態においては、位置固定である駆動装置776と、第1ピストン714と一体的に移動するストッパピン770との間において力の伝達を実現するために、ストッパピン770の後端部に力伝達部材844が一体に形成されている。力伝達部材844は、第1ピストン714の軸線と平行に延びる接触面848を備えている。その接触面848は、プランジャ780に保持されてそれと一体的に移動する駆動部材850の先端部が摺動させられるものを備えている。力伝達部材844と駆動部材850とは、相互に分離可能とされている。そのため、ソレノイド782が励磁されてプランジャ780および駆動部材850がコア784に吸引される際に、力伝達部材844がそれらプランジャ780等と一体的に移動することを可能にすることが必要である。そして、本実施形態においては、その目的を達するために、力伝達部材844(ストッパピン770でも可。)と第1ピストン714との間に、力伝達部材844を常時、ストッパピン770が第2ピストン842から離間する向きに付勢するスプリング786が設けられている。
【0170】
本実施形態においては、上述のように、駆動装置776が位置固定とされている。したがって、その駆動装置776を覆うカバー854については、第14実施形態におけるとは異なり、駆動装置776の移動距離に見合った空間を確保することが不要となる。よって、本実施形態によれば、カバー854の小形化が可能となり、ひいては、マニュアルブレーキ制御装置840の小形化も可能になる。
【0171】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、第1ピストン714および第2ピストン842が「相対変位可能な2部材」の一例を構成し、また、ストッパピン770,穴772,駆動装置776,係合溝812および力伝達部材844が互いに共同して「相対変位制御装置」の一例を構成しているのである。
【0172】
次に、本発明の第17実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第14実施形態とハードウェア構成はほぼ共通し、異なるのは主にソフトウェア構成のみであるため、主にソフトウェア構成のみについて詳細に説明し、ハードウェア構成については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0173】
図40には、本実施形態のハードウェア構成が簡略化されて示されている。本実施形態においては、第1実施形態におけると同様に、左右前輪FL,FR用の電動式ディスクブレーキ22と、左右後輪RL,RR用の電動式ドラムブレーキ32および機械式ドラムブレーキ36とを備えている。機械式ドラムブレーキ36には、マニュアルブレーキ制御装置700を介してブレーキペダル34が機械的に連携させられている。電動式ディスクブレーキ22のモータ20と電動式ドラムブレーキ32のモータ30とは、ドライバ870(第1ドライバ366と第2ドライバ368とを含む)を介してECU880に接続されている。ECU880は、ECU50と同様に、コンピュータ346を主体として構成されている。ECU880には、ブレーキペダルスイッチ350,操作力センサ348等が接続されている。また、ECU880には、警告器882(ブレーキ警告ランプ376と摩耗警告ランプ378とを含む)も接続されている。さらに、ECU880には、制動力センサ884が接続されている。制動力センサ884は、各輪毎に設けられ、各輪の実制動力を直接にまたは間接に検出するセンサである。制動力センサ884は例えば、モータ20,30によりブレーキ摩擦材(ブレーキパッド106,ブレーキライニング216)が加圧される加圧力を検出する加圧力センサとすることができる。なお、以下、左右前輪FL,FR用の電動式ディスクブレーキ22と左右後輪RL,RR用の電動式ドラムブレーキ32とを、「電気ブレーキ」と総称し、また、左右後輪RL,RR用の電動式ドラムブレーキ36を、「マニュアルブレーキ」と総称する。
【0174】
本実施形態においては、電気ブレーキおよびマニュアルブレーキの制御が、4輪のうち電気ブレーキが故障したものの数および位置に応じて変化する規則に従って行われるようになっている。図41には、その規則が概略的に示され、図42には、具体的に示されている。ただし、図42には、1輪のみにおいて電気ブレーキが故障した場合と、2輪のみにおいて故障した場合とがそれぞれ、故障モードが1輪故障および2輪故障である場合として示されているが、他の故障モードについては図示が省略されている。また、同図において、「FR輪」,「FL輪」,「RR輪」および「RL輪」はそれぞれ、図43に示すように、車両において前右,前左,後右および後左に位置する車輪を意味している。また、同図において、「○」は、電気ブレーキが正常である車輪であることを意味し、「×」は、電気ブレーキが故障している車輪であることを意味している。以下、それら図41および図42を参照しつつブレーキ制御の内容を、1輪のみにおいて電気ブレーキが故障した場合、2輪のみにおいて故障した場合、3輪のみにおいて故障した場合、および4輪すべてにおいて故障した場合について順に説明する。
【0175】
(1) 1輪のみにおいて電気ブレーキが故障した場合
この場合、残りの3輪において、電気ブレーキを用いたブレーキ制御を行う方式と、残りの3輪のうちの2輪において、電気ブレーキを用いたブレーキ制御を行う方式とのいずれかを採用し得る。
【0176】
▲1▼ 残りの3輪において、電気ブレーキを用いたブレーキ制御を行う方式を採用した場合
この場合、残りの3輪の各々に関する目標車輪制動力を、4輪すべてにおいて電気ブレーキが正常である場合と同じ値に設定したのでは、ブレーキ制御によって車両に不適当なヨーイングモーメントが生じてしまう。そこで、本実施形態においては、目標車輪制動力が残りの3輪に、それら3輪のブレーキ制御によって車両に不適当なヨーイングモーメントが生じないように配分される。残りの3輪の各々に関する目標車輪制動力が、4輪すべてにおいて電気ブレーキが正常である場合における目標車輪制動力(標準値)に対して修正されるのである。
【0177】
▲2▼ 残りの3輪のうちの2輪において、電気ブレーキを用いたブレーキ制御を行う方式を採用した場合
この場合、図42において▲1▼で示すように、電気ブレーキが故障している車輪(以下、単に「故障車輪」という。)がFR輪であれば、車両において対角位置にあるFL輪とRR輪とにおいて電気ブレーキが制御される。また、同図において▲2▼で示すように、故障車輪がFL輪であれば、車両において対角位置にあるFR輪とRL輪とにおいて電気ブレーキが制御される。また、同図において▲3▼で示すように、故障車輪がRR輪であれば、Fr2輪、すなわち、FR輪とFL輪とにおいて電気ブレーキが制御される。また、同図において▲4▼で示すように、故障車輪がRL輪であれば、同様に、Fr2輪において電気ブレーキが制御される。
【0178】
なお、故障車輪がRR輪またはRL輪であるときには、上記とは異なり、車両において対角位置にある2輪において電気ブレーキを制御してもよい。しかし、車輪制動力は一般に、前輪において後輪におけるより大きいという事実に着目し、かつ、より効果的に車両を制動する観点から、本実施形態においては、故障車輪がRR輪またはRL輪であるときには、Fr2輪において電気ブレーキが制御されるようになっている。
【0179】
(2) 2輪のみにおいて電気ブレーキが故障した場合
▲1▼ 故障車輪がFR輪とFL輪とである場合
この場合、Rr2輪、すなわち、RR輪とRL輪とにおいて電気ブレーキが制御される。
▲2▼ 故障車輪がFL輪とRR輪とである場合
この場合、FR輪とRL輪とにおいて電気ブレーキが制御される。
▲3▼ 故障車輪がFR輪とRL輪とである場合
この場合、FL輪とRR輪とにおいて電気ブレーキが制御される。
▲4▼ 故障車輪がRR輪とRL輪とである場合
この場合、Fr2輪、すなわち、FR輪とFL輪とにおいて電気ブレーキが制御される。
▲5▼ 故障車輪がFL輪とRL輪とである場合
この場合、電気ブレーキが正常である車輪が、車両において右側にのみ存在し、偏っている。そのため、それにもかかわらず正常である車輪において電気ブレーキを作動させたのでは、車両に不適当なヨーイングモーメントが生じてしまう。そこで、本実施形態においては、Rr2輪においてマニュアルブレーキが作動させられる。車両において左側と右側とに1個ずつ存在する機械式ドラムブレーキ36が作動させられ、それにより、車両に不適当なヨーイングモーメントが生じることが防止されるのである。
▲6▼ 故障車輪がFR輪とRR輪とである場合
この場合、電気ブレーキが正常である車輪が、車両において左側にのみ存在し、偏っている。そのため、それにもかかわらず正常である車輪において電気ブレーキを作動させたのでは、車両に不適当なヨーイングモーメントが生じてしまう。そこで、本実施形態においては、上記▲5▼におけると同様に、Rr2輪においてマニュアルブレーキが作動させられる。
【0180】
(3) 3輪のみにおいて電気ブレーキが故障した場合
この場合、電気ブレーキが正常である車輪が、車両において片側にのみ存在し、偏っている。そのため、それにもかかわらず正常である車輪において電気ブレーキを作動させたのでは、車両に不適当なヨーイングモーメントが生じてしまう。そこで、本実施形態においては、上記(2) ▲5▼および▲6▼におけると同様に、Rr2輪においてマニュアルブレーキが作動させられる。
【0181】
(4) 4輪すべてにおいて電気ブレーキが故障した場合
この場合、電気ブレーキが正常である車輪が存在しない。そこで、本実施形態においては、Rr2輪においてマニュアルブレーキが作動させられる。
【0182】
図44および図45には、以上説明したブレーキ制御を実行するためにECU880のCPU340により実行されるブレーキ故障判定ルーチンおよびブレーキ制御ルーチンがそれぞれフローチャートで表されている。それらルーチンはいずれも、ECU880のROM342に記憶されている。
【0183】
ブレーキ故障判定ルーチンにおいては、電気ブレーキへの入力とそれからの出力とが正規に対応しない場合に電気ブレーキが故障していると判定される。具体的には、ブレーキ操作時に電気ブレーキによる車輪制動力が0であれば、電気ブレーキが故障していると判定される。
【0184】
ブレーキ故障判定ルーチンは4輪について順にかつ繰返し実行される。各回の実行時には、まず、S201において、ブレーキペダルスイッチ350がONであるか否かが判定される。今回は、OFFであると仮定すれば、判定がNOとなり、直ちに本ルーチンの一回の実行が終了する。これに対して、今回は、ブレーキペダルスイッチ350がONであると仮定すると、S201の判定がYESとなり、S202において、制動力センサ884の出力値が0であるか否か、すなわち、実車輪制動力(または実加圧力)が0であるか否かが判定される。ブレーキ操作時であるにもかかわらず実車輪制動力が0であるか否かが判定されるのである。今回は、制動力センサ884の出力値が0であると仮定すれば、判定がYESとなり、S203において、電気ブレーキが故障しているという理由から、故障フラグが1とされる。故障フラグは、各輪毎に設けられていて、0で各輪において電気ブレーキが故障していないことを示し、1で故障していることを示すフラグである。また、故障フラグは、車両の電源投入(イグニションスイッチがON)に伴って0に初期化されている。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0185】
これに対して、今回は、制動力センサ884の出力値が0ではないと仮定すれば、S202の判定がNOとなり、S204において、電気ブレーキが故障してはいないという理由から、故障フラグが0とされる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0186】
以上、ブレーキ故障判定ルーチンを説明したが、以下、ブレーキ制御ルーチンを説明する。
【0187】
ブレーキ制御ルーチンは、4輪全体に関して繰返し実行される。各回の実行時には、まず、S210において、4輪分の故障フラグに基づき、4輪の中に故障車輪があるか否かが判定される。今回は、故障車輪がないと仮定すれば、判定がNOとなり、S211において、ソレノイド782がONにされ、それにより、マニュアルブレーキの作動が禁止されて電気ブレーキが選択される。その後、S212において、操作力センサ348により検出された操作力等に基づき、4輪分の電気ブレーキに対して通常制御が行われる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0188】
これに対して、今回は、故障車輪があると仮定すれば、S210の判定がYESとなり、S213において、故障車輪が1個のみであるか否かが判定される。今回は、1個のみであると仮定すれば、判定がYESとなり、S214において、1輪故障時制御が行われる。前述のように、残りの3輪またはそのうちの2輪において電気ブレーキが制御されるのである。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0189】
また、今回は、故障車輪が2個のみであると仮定すれば、S210の判定はYES、S213の判定はNOとなり、S215において、故障車輪が2個のみであるか否かが判定される。今回は、2個のみであると仮定されているから、判定がYESとなり、S216において、故障車輪が車両右側の前後2輪または車両左側の前後2輪であるか否かが判定される。今回は、そうではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S217において、2輪故障時制御が行われる。前述のように、電気ブレーキが正常である2輪において電気ブレーキが制御されるのである。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0190】
また、今回は、故障車輪が車両右側の前後2輪または車両左側の前後2輪であると仮定すれば、S216の判定がYESとなり、S218において、ソレノイド782がOFFにされ、それにより、マニュアルブレーキの作動が許可され、その結果、マニュアルブレーキによって車両が制動される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0191】
また、今回は、故障車輪が3個または4個であると仮定すれば、S215の判定がNOとなり、S218において、上記の場合におけると同様にして、マニュアルブレーキによって車両が制動される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0192】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ECU880のうち図44のブレーキ故障判定ルーチンおよび図45のブレーキ制御ルーチンを実行する部分が、故障車輪の数および位置に応じてブレーキの制御内容が変更されるようにマニュアルブレーキ制御装置700を制御するコントローラを構成しているのである。
【0193】
次に、本発明の第18実施形態を説明する。ただし、本実施形態は第14実施形態と、ボールねじ機構をマニュアルブレーキ制御装置に取り付ける構成についてのみ異なり、他の構成については共通であるため、その異なる構成についてのみ詳細に説明し、共通する構成については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0194】
第14実施形態においては、図33に示すように、ボールねじ機構760の回転部材754が第2ハウジング704に、2つのベアリング756,758を介して回転可能に取り付けられている。それらベアリング756,758は共に、内輪と外輪とが転動体としてのボールを介して相対回転可能に連結された構成とされている。一方、それらベアリング756,758においてはいずれも、第2ハウジング704および回転部材754の製造ばらつきにもかかわらず、ボールに荷重が予定外に加えられないようにすることが望ましい。そのため、この第14実施形態においては、それらベアリング756,758が共に、内輪において回転部材754に実質的なすき間を有することなく取り付けられる一方、外輪において第2ハウジング704にわずかなすき間を有して取り付けられている。それにより、内輪と回転部材754とは相対変位不能とされる一方、外輪と第2ハウジング704とは相対変位が多少許容されている。すなわち、内輪と回転部材754とについては、回転,径方向移動および軸方向移動が厳格に阻止される一方、外輪と第2ハウジング704とについては、回転,径方向移動および軸方向移動が厳格には阻止されるようにはなっていないのである。そのため、この第14実施形態においては、機械式ドラムブレーキ36の作動許可時に、ブレーキペダル34の操作力がボールねじ機構760の大径部742(直線運動部材の一例)に入力されると、回転部材754が第2ハウジング704に対して軸方向に移動してしまい、打音が発生するという問題や、第2ハウジング704と外輪とに摩耗が発生するという問題が生ずるおそれがあった。
【0195】
これに対して、本実施形態においては、図46に示すように、第2ハウジング704に形状変更が加えられた第2ハウジング890と回転部材754とを相対回転可能に連結する2つのベアリング900,902が、第2ハウジング890と回転部材754との、その回転部材754の軸線と平行な第1方向における相対変位は阻止し、その軸線と交差する第2方向における相対変位は許容する状態で、第2ハウジング890と回転部材754とに取り付けられている。以下、その取付部の構成をさらに具体的に説明する。
【0196】
2つのベアリング900,902は共に、図47に取り出して拡大して示すように、前記ベアリング756,758と同様に、外輪904と内輪906とがボール907を介して相対回転可能に連結されたボールベアリングである。それらベアリング900,902は共に、それの内輪906において回転部材754の段付部908に圧入されている。その結果、内輪906と回転部材754とは、相対的な回転,径方向移動および軸方向移動がいずれも阻止されている。これに対して、外輪904と第2ハウジング890の内周面909とは、回転部材754の径方向と平行な第2方向においてすき間を隔てて互いに対向させられている。
【0197】
外輪904には、それと同軸な円環溝910が形成されている。円環溝910は、図48に示すように、一円周に沿って延びる状態で形成されている。これに対して、第2ハウジング890には、図47に示すように、各ベアリング900,902に取付位置に対向する位置において、回転部材754の径方向(第2方向の一例)に延びる貫通穴912が複数個形成されている。これら複数個の貫通穴912に複数本のピン913がそれぞれ圧入されている。第2ハウジング890に複数本のピン913が、回転部材754の径方向にも軸方向にも移動不能に取り付けられているのである。
【0198】
円環溝910の両側面間の距離は、ピン913の直径よりわずかに大きく設定されている。また、円環溝910の深さは、ピン913が第2ハウジング890に正規に取り付けられた状態で、円環溝910の底部914とピン913の先端部916との間にすき間が実質的に残るように設定されている。このすき間は例えば、1mm以下とすることができ、また、0.5mm以下とすることができる。それらの寸法設定により、2つのベアリング900,902が、第2ハウジング890と回転部材754との、その回転部材754の軸線と平行な第1方向における相対変位は阻止され、その軸線と交差する第2方向における相対変位は許容される状態で、第2ハウジング890と回転部材754とに取り付けられることになる。
【0199】
図49には、ボールねじ機構760を第2ハウジング890に組み付ける様子が示されている。以下、その様子を説明する。
【0200】
まず、2つのベアリング900,902が回転部材754に圧入される。次に、ボールねじ機構760がベアリング900,902と一緒に、第2ハウジング890内に挿入される。第2ハウジング890は有底の円筒状部材であり、ボールねじ機構760はその第2ハウジング890の開口部から挿入される。この際スプリング746も一緒に挿入される。
【0201】
第2ハウジング890の底部918の内壁面920には位置決め部922が、その第2ハウジング890の開口部に向かって形成されている。この位置決め部922は、2つのベアリング900,902のうち先に第2ハウジング890内に挿入されるもの(底部により近いもの)であるベアリング900の外輪904の外側端面(他方のベアリング902の側とは反対側の端面)と当接させられるものである。この位置決め部922により、ボールねじ機構760が第2ハウジング890内に挿入される限度位置が規定される。また、その当接状態においては、外輪904の円環溝910が、第2ハウジング890の貫通穴912に正対し、これにより、ベアリング900,902が第2ハウジング890に対して位置決めされることになる。
【0202】
その後、第2ハウジング890の複数個の貫通穴912に複数本のピン913がそれぞれ圧入される。ところで、第2ハウジング890と第1ハウジング702とは、共に有底円筒状を成していて、それらの開口部においてプレート926を挟んだ状態で互いに対向させられている。そのプレート926には、2つのベアリング900,902のうちそのプレート926に近いものであるベアリング902の外輪904の外側端面(他方のベアリング900の側とは反対側の端面)にすき間を隔てて対向する移動阻止部930が形成されている。移動阻止部930は、万一、ピン913によりベアリング900,902の軸方向移動を阻止することができない事態が生じたとしても、その外輪904が当接することにより、異常な軸方向移動を阻止する機能を有する。そして、ピン913の圧入終了後、第1ハウジング702が第2ハウジング890に、プレート926を挟んだ状態で、結合部材としてのボルト711(図46参照)により、強固に結合される。
【0203】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ベアリング900,902がそれぞれ「連結器」を構成し、円環溝910と貫通穴912とピン913とが互いに共同して「取付部」を構成しているのである。また、貫通穴912が「穴」を構成し、ピン913が「軸状部材」を構成し、円環溝910が「係合部」を構成しているのである。
【0204】
以上、本実施形態におけるマニュアルブレーキ制御装置の構成および組付け方法を説明したが、マニュアルブレーキ制御装置は種々の変形を加えた態様で実施することが可能である。
【0205】
例えば、本実施形態においては、各ベアリング900,902毎にピン913が複数本使用されるようになっているが、各ベアリング900,902毎に1本のみ使用するようにすることが可能である。
【0206】
また、本実施形態においては、ピン913が、ボルトにおける如き頭部を有しない形状とされているが、貫通穴912に圧入されるべき軸部と、それより大径の頭部とが一体的に形成された構成とすることも可能である。この場合、頭部が第2ハウジング890の外周面に当接するまでピン913を第2ハウジング890に押し込んだときに、ピン913が正規の取付位置となるように設計することができる。
【0207】
さらに、本実施形態においては、軸状部材としてピン913が使用されているが、貫通穴912にねじを切った上で、そのねじに螺合するボルトをピン913に代えて使用することも可能である。この場合、ボルトを貫通穴912に、そのボルトの頭部が第2ハウジング890の外周面に接触するまでねじ込むことにより、ボルトの軸方向位置決めを行うことができる。この態様によれば、ボールねじ機構760を第2ハウジング890に組み付けた後、第2ハウジング890から取り外すことが必要になった場合、ボルトはピン913の場合より簡単に取り外し可能であるため、マニュアルブレーキ制御装置の修理し易さが向上する。
【0208】
次に、本発明の第19実施形態について説明する。ただし、本実施形態は、第18実施形態と2つのベアリングを第2ハウジングに取り付ける構成のみが異なり、他の構成については共通するため、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる構成のみについて詳細に説明する。
【0209】
第18実施形態においては、各ベアリング900,902が第2ハウジング890に対して軸方向に移動することがそれぞれピン913により阻止されている。これに対して、本実施形態においては、その軸方向移動がピン913を用いることなく阻止されている。
【0210】
具体的には、本実施形態は、図50に示すように、有底円筒状の第2ハウジング950とプレート954とを備えている。それら第2ハウジング950およびプレート954はそれぞれ、第18実施形態における第2ハウジング890およびプレート926と同様の機能を有している。その第2ハウジング950にねじ機構760の回転部材754が2つのベアリング960,962を介して回転可能に支持されている。それらベアリング960,962は、第18実施形態におけると同様に、外輪964と内輪966とがボール968を介して相対回転可能に連結されたボールベアリングとされている。
【0211】
第2ハウジング950には位置決め部956が、第2ハウジング950の開口部に対向する状態で形成されている。位置決め部956は、2つのベアリング960,962のうち第2ハウジング950の底部に近接して配置されるベアリング960の外輪964の外側端面(両端面のうち他方のベアリング962から遠い端面)に接触させられ、それにより、ベアリング960の軸方向位置を決定する。
【0212】
プレート954には位置決め部958が、第2ハウジング950の底部に対向する状態で形成されている。位置決め部958は、2つのベアリング960,962のうち第2ハウジング950の開口部に近接して配置されるベアリング962の外輪964の外側端面(両端面のうち他方のベアリング960から遠い端面)に接触させられ、それにより、ベアリング962の軸方向位置を決定する。
【0213】
回転部材754には、それらベアリング960,962の間において、筒状の位置決め部材970が同軸に配置されている。位置決め部材970の軸方向長さは、回転部材754に正規位置において装着された2つのベアリング960,962の内側端面間の距離よりわずかに短く設定されている。一方、それらベアリング960,962の外輪964は、それの径方向において、第2ハウジング950に円筒面として形成された内周面974にすき間を隔てて対向させられている。したがって、本実施形態においては、互いに対向する2つの位置決め部956,958と、それら位置決め部956,958の中間に位置する位置決め部材970との共同作用により、ベアリング960,962について個々に、軸方向移動が阻止される一方、径方向移動が許容される。
【0214】
位置決め部材970の外径寸法は、第2ハウジング950の内周面974にわずかなすき間を残して嵌合させられている。それにより、位置決め部材970がそれの径方向にみだりに動くことが防止されている。
【0215】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、第2ハウジング950が「ハウジング」を構成し、ベアリング960,962がそれぞれ「連結器」を構成し、位置決め部956,958および位置決め部材970が互いに共同して「取付部」を構成しているのである。
【0216】
次に、本発明の第20実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第18実施形態と共通する要素が多く、異なるのはパーキングブレーキに関する構成のみであるため、その構成について詳細に説明し、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0217】
図51に示すように、本実施形態は、第18実施形態におけると同様に、ブレーキペダル装置302とマニュアルブレーキ制御装置700とを備えている。ただし、ブレーキペダル装置302は、第18実施形態におけるとは異なり、ペダルロック機構990を備えている。ペダルロック機構990は、ブレーキペダル34が操作位置(踏込み位置)から非操作位置(非踏込み位置)に戻ることを許容する状態と、阻止する状態とに切り換わる。ペダルロック機構990は、従来のパーキングブレーキ操作装置におけると同様に、ラチェットポールと溝とを主体とするラチェット機構を採用することができる。この場合、ラチェットポールが溝に係合可能な状態と係合不能な状態とに切り換えるために、そのラチェットポールを人力を利用して機械的に作動させたり、ソレノイドの電磁力を利用して電磁的に作動させることができる。
【0218】
ペダルロック機構990には、操作部材992が設けられている。操作部材992は、ベダルロック機構990が機械式である場合には、運転者の力をペダルロック機構990に入力する力入力部材とされ、一方、ペダルロック機構990が電磁式である場合には、ソレノイドをON状態とOFF状態とに切り換える電気式なスイッチとされる。
【0219】
以上のように構成されたブレーキシステムにおいては、車両のイグニションスイッチのOFF状態、すなわち、電動式ドラムブレーキ32の非作動状態では、操作部材992が、ペダルロック機構990がブレーキペダル34の戻りを阻止する状態となるように操作された場合には、その後、ブレーキペダル34が非操作位置から操作位置に操作されると、その戻りが阻止される。そのため、左右後輪用の機械式ドラムブレーキ36が左右後輪のパーキングブレーキとして作動させられる。したがって、本実施形態においては、車両のパーキングが、左右後輪用の機械式ドラムブレーキ36と、超音波モータ20の静止保持トルクを利用した左右前輪用の電動式ディスクブレーキ22との双方によって行われることになる。ただし、電動式ディスクブレーキ22による作動は省略し、機械式ドラムブレーキ36の作動のみによって車両のパーキングを行うことが可能である。
【0220】
これに対して、電動式ドラムブレーキ32の作動状態では、操作部材992が上記のように操作されると、その戻りが阻止される。この点、電動式ドラムブレーキ32の作動状態におけると同様であるが、機械式ドラムブレーキ36ではなく電動式ドラムブレーキ32が左右後輪のパーキングブレーキとして作動させられる点で相違する。
【0221】
なお付言すれば、車両のイグニションスイッチがONであるかOFFであるかを問わず、運転者が操作部材992を操作することにより、車両をパーキングさせる意思表示を示した場合には、電動式ドラムブレーキ32を作動させないで機械式ドラムブレーキ36によって車両のパーキングが行われるように本実施形態を変更することが可能である。
【0222】
以上、本発明のいくつかの実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、それらの他にも、特許請求の範囲を逸脱することなく当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を施した形態で本発明を実施することができるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態であるブレーキシステムの全体構成を示す系統図である。
【図2】図1における電動式ディスクブレーキを拡大して示す平面断面図である。
【図3】図1における電動式ドラムブレーキと機械式ドラムブレーキとを拡大して示す側面断面図である。
【図4】図3におけるシュー拡張アクチュエータを拡大して示す部分断面側面図である。
【図5】図1におけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す側面断面図である。
【図6】図5における第2ピストンの作動開始時期を操作力Fおよび車体減速度との関係において示すグラフである。
【図7】図1におけるコンピュータのROMに記憶されているブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】上記ROMに記憶されているブレーキ警告ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】上記ROMに記憶されているパーキング制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】上記第1実施形態における電動式ドラムブレーキと機械式ドラムブレーキとに関してブレーキの効きの関係の一例を説明するためのグラフである。
【図11】上記ブレーキの効きの関係の別の例を説明するためのグラフである。
【図12】本発明の第2実施形態であるブレーキシステムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す側面断面図である。
【図13】その第2実施形態におけるコンピュータのROMに記憶されている異常作動防止ルーチンをしめすフローチャートである。
【図14】そのROMに記憶されているブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図15】本発明の第3実施形態であるブレーキシステムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す側面断面図である。
【図16】その第3実施形態におけるコンピュータのROMに記憶されている第2ピストン作動許可・禁止ルーチンを示すフローチャートである。
【図17】本発明の第4実施形態であるブレーキシステムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す側面断面図である。
【図18】その第4実施形態におけるコンピュータのROMに記憶されている第2ピストン作動許可・禁止ルーチンを示すフローチャートである。
【図19】本発明の第5実施形態であるブレーキシステムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す側面断面図である。
【図20】本発明の第6実施形態であるブレーキシステムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す側面断面図である。
【図21】本発明の第7実施形態であるブレーキシステムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す側面断面図である。
【図22】本発明の第8実施形態であるブレーキシステムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す側面断面図である。
【図23】本発明の第9実施形態であるブレーキシステムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す側面断面図である。
【図24】図23におけるレバー作動許可・禁止装置を拡大して示すとともに、その作動状態の変化を示す平面断面図である。
【図25】上記第9実施形態のコンピュータのROMに記憶されているレバー作動許可・禁止ルーチンを示すフローチャートである。
【図26】本発明の第10実施形態であるブレーキシステムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す側面断面図である。
【図27】図26におけるレバー作動許可・禁止装置を拡大して示すとともに、その作動状態の変化を示す平面断面図である。
【図28】上記第10実施形態のコンピュータのROMに記憶されているレバー作動許可・禁止ルーチンを示すフローチャートである。
【図29】そのROMに記憶されているソレノイド異常チェックルーチンを示すフローチャートである。
【図30】本発明の第11実施形態であるブレーキシステムにおけるコンピュータのROMに記憶されているレバー作動許可・禁止ルーチンを示すフローチャートである。
【図31】本発明の第12実施形態であるブレーキシステムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す側面断面図である。
【図32】本発明の第13実施形態であるブレーキシステムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す側面断面図である。
【図33】本発明の第14実施形態であるブレーキシステムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す側面断面図である。
【図34】そのマニュアルブレーキ制御装置における第1ピストンと第2ピストンとの連携を説明するための正面断面図である。
【図35】そのマニュアルブレーキ制御装置において非常ブレーキ用ケーブルが回転部材によって巻き取られる様子を説明するための正面断面図である。
【図36】そのマニュアルブレーキ制御装置における第1ハウジングと駆動装置とカバーとが相互に組み付けられる様子を説明するための斜視図である。
【図37】その駆動装置におけるソレノイドを制御するためのブレーキ切換制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図38】本発明の第15実施形態であるブレーキシステムにおけるマニュアルブレーキ制御装置における第1ピストンと第2ピストンとの連携を説明するための側面断面図である。
【図39】本発明の第16実施形態であるブレーキシステムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す側面断面図である。
【図40】本発明の第17実施形態であるブレーキシステムの全体構成を示す系統図である。
【図41】図40におけるECUによるブレーキ制御の内容を故障モードとの関係において表形式で示す図である。
【図42】そのブレーキ制御の内容を故障モードが1輪故障である場合と2輪故障である場合とについてさらに詳細に表形式で示す図である。
【図43】図42におけるFR輪,FL輪,RR輪およびRL輪の車両上の位置を説明するための平面図である。
【図44】上記ECUのコンピュータにより実行されるブレーキ故障判定ルーチンを示すフローチャートである。
【図45】そのコンピュータにより実行されるブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図46】本発明の第18実施形態であるブレーキシステムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を示す側面断面図である。
【図47】そのマニュアルブレーキ制御装置におけるボールねじ機構が第2ハウジングに取り付けられる部分を拡大して示す側面断面図である。
【図48】そのボールねじ機構を回転部材に支持するベアリングを一部破断して示す斜視図である。
【図49】上記第2ハウジングにボールねじ機構が組み付けられる様子を説明するための側面断面図である。
【図50】本発明の第19実施形態であるブレーキシステムのマニュアルブレーキ制御装置においてベアリングが第2ハウジングに取り付けられる部分を示す側面断面図である。
【図51】本発明の第20実施形態であるブレーキシステムにおけるマニュアルブレーキ制御装置とブレーキペダル装置とを示す側面断面図である。
【符号の説明】
30 DCモータ
32 電動式ドラムブレーキ
34 ブレーキペダル
36 機械式ドラムブレーキ
50,880 電子制御ユニットECU
204 ドラム
216 ブレーキライニング
240 常用ブレーキ用ケーブル
250 シュー拡張アクチュエータ
282 非常ブレーキ用ケーブル
300,388,406,430,468,488,504,528,548,581,618,638,700,840 マニュアルブレーキ制御装置
302 ブレーキペダル装置
312 プッシュロッド
316,714 第1ピストン
318,736,810 第2ピストン
320 スプリング
326 レバー装置
328 レバー
370 第1バッテリ
372 第2バッテリ
374 主バッテリ
390 第2ピストン作動スイッチ
408,432 第2ピストン作動許可・禁止装置
410 制御液室
420 ソレノイドバルブ
440 第1制御液室
442 第2制御液室
450 第1ソレノイドバルブ
452 第2ソレノイドバルブ
550,596 レバー作動許可・禁止装置
580 操作ストローク付与機構
890,950 第2ハウジング
900,902,960,962 ベアリング
910 円環溝
912 貫通穴
913 ピン
956,958 位置決め部
970 位置決め部材

Claims (11)

  1. ブレーキ操作部材と、
    (a)モータを駆動源として流体圧を使用しないで摩擦材を車輪と共に回転する回転体に押圧することにより電気的に前記車輪を制動する電動式ブレーキと、(b) 前記ブレーキ操作部材の操作状態を表す操作情報に基づき前記モータを制御することにより、前記電動式ブレーキに前記ブレーキ操作部材の操作状態に応じた制動力を発生させる電子制御ユニットとを含む電気ブレーキと、
    前記ブレーキ操作部材を駆動源として摩擦材を前記車輪と共に回転する回転体に押圧することにより機械的に前記車輪を制動するマニュアルブレーキと、
    そのマニュアルブレーキと前記ブレーキ操作部材との間に設けられ、そのブレーキ操作部材の操作力または操作ストロークにより機械的に切り換わり、前記電動式ブレーキの不作動時にはブレーキ操作部材の操作力を前記マニュアルブレーキに伝達する状態となり、電動式ブレーキの作動時にはブレーキ操作部材の操作力を前記マニュアルブレーキに伝達しない状態となるマニュアルブレーキ制御装置と
    を含み、かつ、前記マニュアルブレーキ制御装置が、前記ブレーキ操作部材と前記マニュアルブレーキとの間に設けられた相対変位可能な2部材であって、それらの相対変位が許容される状態では前記ブレーキ操作部材の操作力をマニュアルブレーキに伝達せず、それらの相対変位が許容されない状態でブレーキ操作部材の操作力をマニュアルブレーキに伝達する2部材を含むことを特徴とするブレーキシステム。
  2. 前記マニュアルブレーキ制御装置が、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが基準値を超えた場合に前記2部材の相対変位が許容されない状態となるものである請求項1に記載のブレーキシステム。
  3. 前記マニュアルブレーキが流体圧を使用しない機械式ブレーキであり、前記2部材の一方が、ハウジングに軸方向に摺動可能に嵌合されたピストンであり、他方がそのピストンの軸線と直角に立体交差する回動軸線のまわりに回動可能に設けられ、フレキシブルなケーブルにより前記機械式ブレーキに接続されたレバーである請求項1または2に記載のブレーキシステム。
  4. 前記2部材が、ハウジングに軸方向に摺動可能に保持され、前記ブレーキ操作部材と機械的に連動する第1ピストンと、その第1ピストンと軸方向に相対移動可能に前記ハウジングに保持された第2ピストンとである請求項1または2に記載のブレーキシステム。
  5. 前記マニュアルブレーキ制御装置が、流体圧を使用しない機械式である請求項1ないしのいずれかに記載のブレーキシステム。
  6. 前記マニュアルブレーキ制御装置が、前記2部材に伝達された前記操作力を機械的に倍力して前記マニュアルブレーキに伝達する倍力機構を含む請求項1ないしのいずれかに記載のブレーキシステム。
  7. 前記マニュアルブレーキが、それの前記摩擦材にフレキシブルなケーブルが直接にまたは間接に連結されるとともに、そのケーブルの引張力により摩擦材が前記回転体に接近する向きに駆動される機械式ブレーキであり、前記マニュアルブレーキ制御装置が、
    前記第2ピストンの軸線のまわりに回転させられることにより、前記ケーブルを巻き取り、それにより、そのケーブルに引張力を付与する回転部材と、
    前記第2ピストンの直線運動を前記回転部材の回転運動に変換する運動変換機構と
    を含む請求項4またはのいずれかに記載のブレーキシステム。
  8. 前記摩擦材が、前記電動式ブレーキとマニュアルブレーキとに共通に設けられており、前記マニュアルブレーキ制御装置が、
    ハウジングと、
    そのハウジングに摺動可能に嵌合されて前記ブレーキ操作部材と機械的に連動する第1ピストンと、
    その第1ピストンを、前記ブレーキ操作部材が操作位置から非操作位置に向かう向きに付勢する弾性部材と、
    前記第1ピストンと同軸に、かつ、その第1ピストンと相対移動可能に前記ハウジングに摺動可能に嵌合された第2ピストンであって、第1ピストンの作動力または作動ストロークが基準値を超えない場合には第1ピストンにより作動させられず、超えた場合には第1ピストンにより作動させられる第2ピストンと、
    その第2ピストンにより回動させられるレバーと、
    そのレバーと前記摩擦材とを互いに連結する可撓性を有する第1連結部材であって、レバーの作動力を引張力として摩擦材にその摩擦材が前記マニュアルブレーキの回転体に接近する向きに伝達するものと
    を含む請求項1に記載のブレーキシステム。
  9. 前記ハウジングが、車体に位置固定に取り付けられるべき固定部材であり、前記弾性部材が、前記ハウジングと第1ピストンとの間に設けられたものであり、前記第1ピストンが、それの作動ストロークが基準値を超えない場合には前記第2ピストンから離隔された位置にあって第2ピストンに係合せず、超えた場合には第2ピストンに接近して係合し、それにより、第2ピストンを作動させるものである請求項に記載のブレーキシステム。
  10. 前記電気ブレーキが、前記モータと前記摩擦材とを互いに連結する可撓性を有する第2連結部材であって、モータの駆動力を引張力として摩擦材にその摩擦材が電気ブレーキの回転体に接近する向きに伝達するものを含む請求項8または9に記載のブレーキシステム。
  11. 前記マニュアルブレーキ制御装置が、さらに、前記電気ブレーキの不作動時には前記第2ピストンの作動を許可し、作動時には禁止する第2ピストン作動許可・禁止装置を含む請求項8ないし10のいずれかに記載のブレーキシステム。
JP28447698A 1997-10-07 1998-10-06 ブレーキシステム Expired - Fee Related JP3885383B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP28447698A JP3885383B2 (ja) 1997-10-07 1998-10-06 ブレーキシステム

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP27448797 1997-10-07
JP9-274487 1998-07-21
JP20564398 1998-07-21
JP10-205643 1998-07-21
JP28447698A JP3885383B2 (ja) 1997-10-07 1998-10-06 ブレーキシステム

Related Child Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006129619A Division JP2006256614A (ja) 1997-10-07 2006-05-08 ブレーキシステム
JP2006129632A Division JP2006206051A (ja) 1997-10-07 2006-05-08 ブレーキシステム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2000095082A JP2000095082A (ja) 2000-04-04
JP3885383B2 true JP3885383B2 (ja) 2007-02-21

Family

ID=27328523

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP28447698A Expired - Fee Related JP3885383B2 (ja) 1997-10-07 1998-10-06 ブレーキシステム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3885383B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20120064857A (ko) * 2010-12-10 2012-06-20 현대모비스 주식회사 페달감 개선을 위한 차량의 제동장치 및 그 제어방법

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4507397B2 (ja) * 2000-12-01 2010-07-21 株式会社デンソー ロック状態検出装置
JP4506121B2 (ja) * 2003-07-25 2010-07-21 トヨタ自動車株式会社 車輌の制動力制御装置
KR101024743B1 (ko) * 2008-12-11 2011-03-24 현대모비스 주식회사 비상 차량 정지를 위한 안전 제동 장치 및 이를 이용한 차량 제동 장치
FR2946306B1 (fr) * 2009-06-05 2012-11-30 Bosch Gmbh Robert Systeme de freins a maitre-cylindre, decouple de la pedale de frein et servofrein hydraulique
JP2012006440A (ja) * 2010-06-23 2012-01-12 Toyota Motor Corp ブレーキシステム
KR101350057B1 (ko) 2013-02-18 2014-01-15 주식회사 만도 전자식 브레이크의 페일 세이프 장치

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20120064857A (ko) * 2010-12-10 2012-06-20 현대모비스 주식회사 페달감 개선을 위한 차량의 제동장치 및 그 제어방법
KR101672037B1 (ko) * 2010-12-10 2016-11-02 현대모비스 주식회사 페달감 개선을 위한 차량의 제동장치의 제어방법

Also Published As

Publication number Publication date
JP2000095082A (ja) 2000-04-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11014543B2 (en) Vehicle brake system having plunger power source
US6270172B1 (en) Electrically operated braking system having a device for operating electric motor of brake to obtain relationship between motor power and braking torque
US10351117B2 (en) Brake unit
US7188710B2 (en) Hydraulic brake actuator comprising electrically actuable lock for park brake
US9387837B2 (en) Brake device
JPH11148522A (ja) 電動式ブレーキおよび電動式ブレーキシステム
KR20050057421A (ko) 유압 차량 브레이크
CN101332812A (zh) 采用电磁机构实施附加功能的单马达电动楔式制动器系统
WO2019133964A1 (en) Vehicle brake system and method of determining leakage thereof
JP3885383B2 (ja) ブレーキシステム
WO2019108927A1 (en) Vehicle brake system having a brake pedal unit
JP4576866B2 (ja) 車両用ブレーキシステム
CN105835857A (zh) 具有柔性冗余机构的车用线控制动装置
WO2015146963A1 (ja) 電動式ブレーキシステム、電動式ブレーキシステムを搭載した車両、及び電動式ブレーキシステムの制御方法
KR20060133580A (ko) 차량용 잠금 장치를 갖춘 유압 브레이크 및 유압브레이크의 작동 방법
JP2006206051A (ja) ブレーキシステム
US11964641B2 (en) Electronic parking brake
US20230012601A1 (en) Electronic parking brake
US20230018281A1 (en) Method of controlling an electronic parking brake
JP2006256614A (ja) ブレーキシステム
JP6745739B2 (ja) ブレーキシステム
JP4109741B2 (ja) 電動式ブレーキ
JP4222348B2 (ja) 電気式ブレーキ異常判定方法
JP3911807B2 (ja) ブレーキシステム
JP4240055B2 (ja) 電動式ブレーキ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040412

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20050516

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050524

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050725

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060307

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060508

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20061031

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20061113

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101201

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111201

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121201

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131201

Year of fee payment: 7

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees