JP2000095082A - ブレーキシステム - Google Patents

ブレーキシステム

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JP2000095082A
JP2000095082A JP10284476A JP28447698A JP2000095082A JP 2000095082 A JP2000095082 A JP 2000095082A JP 10284476 A JP10284476 A JP 10284476A JP 28447698 A JP28447698 A JP 28447698A JP 2000095082 A JP2000095082 A JP 2000095082A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】モータを駆動源として摩擦材により車輪を制動
する電気ブレーキを備えたブレーキシステムにおいて、
電気ブレーキの故障時にも運転者が車両を制動できるよ
うにする。 【解決手段】常用ブレーキとして電動式ドラムブレーキ
32が設けられている車輪に非常ブレーキとして機械式
ドラムブレーキ36を設け、かつ、その機械式ドラムブ
レーキ36をマニュアルブレーキ制御装置300を介し
てブレーキペダル34に連携させるとともに、そのマニ
ュアルブレーキ制御装置300を、電動式ドラムブレー
キ32の故障時には機械式ドラムブレーキ36の作動を
許可し、正常時には禁止するものとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気ブレーキを備
えたブレーキシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】PCT国際公開明細書WO96/033
01には、電気ブレーキを備えたブレーキシステムの一
従来例が記載されている。この従来のブレーキシステム
においては、常用ブレーキとして、ブレーキ操作部材の
操作状態を表す操作情報に基づき、モータを駆動源とし
て流体圧を使用しないで摩擦材により車輪を制動する電
気ブレーキが設けられている。この電気ブレーキは一般
に、(a) 車輪と共に回転する回転体と、(b) その回転体
に押圧されてその回転体の回転を抑制する摩擦材と、
(c) 電源と、(d) その電源から供給される電力により駆
動されるモータと、(e) そのモータの駆動力により摩擦
材を回転体に押圧する押圧装置とを含むように構成され
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および発
明の効果】この従来のブレーキシステムにおいては、常
用ブレーキの他に非常ブレーキが設けられてはいない。
そのため、常用ブレーキである電気ブレーキが何らかの
理由で故障すると、運転者は車両を制動できない。例え
ば、電源が故障したり、電源とモータとを互いに接続す
る電線が断絶したり短絡したりした場合には、運転者は
車両を制動できないのである。さらに、その従来のブレ
ーキシステムでは、電気ブレーキが正常であっても、電
気ブレーキに電力を供給すべき電源が電気ブレーキから
遮断されている場合には、運転者は車両を制動できな
い。
【0004】本発明は、以上の事情を背景としてなされ
たものであり、その課題は、電気ブレーキの非作動時で
も運転者が車両を制動できるブレーキシステムを提供す
ることにある。
【0005】この課題は下記態様のブレーキシステムに
よって解決される。なお、以下の説明において、本発明
の各態様を、それぞれに項番号を付して請求項と同じ形
式で記載する。各項に記載の特徴を組み合わせて採用す
ることの可能性を明示するためであり、ここに記載され
ていない組合せを採用することの可能性を排除したり、
ここに記載されていない特徴を採用することの可能性を
排除するものではない。
【0006】(1) ブレーキ操作部材と、そのブレーキ操
作部材の操作状態を表す操作情報に基づき、モータを駆
動源として流体圧を使用しないで摩擦材を車輪と共に回
転する回転体に押圧することにより、電気的に前記車輪
を制動する電気ブレーキと、前記ブレーキ操作部材を駆
動源として摩擦材を前記車輪と共に回転する回転体に押
圧することにより、機械的に前記車輪を制動するマニュ
アルブレーキと、そのマニュアルブレーキと前記ブレー
キ操作部材との間に設けられ、前記電気ブレーキの非作
動時にはマニュアルブレーキの作動を許可し、作動時に
は禁止するマニュアルブレーキ制御装置とを含むことを
特徴とするブレーキシステム〔請求項1〕。このブレー
キシステムにおいては、常用ブレーキとして電気ブレー
キが設けられるとともに、非常ブレーキとして、ブレー
キ操作部材を駆動源として摩擦材により車輪を制動する
マニュアルブレーキが設けられている。すなわち、この
ブレーキシステムには、ブレーキ操作部材および電気ブ
レーキを主体とする電気ブレーキ系統と、ブレーキ操作
部材,マニュアルブレーキ制御装置およびマニュアルブ
レーキを主体とするマニュアルブレーキ系統とが設けら
れているのである。したがって、このブレーキシステム
によれば、電気ブレーキの非作動時に運転者はマニュア
ルブレーキにより、操作力に応じた大きさの制動力を車
輪に発生させることによって車両を制動でき、その結
果、ブレーキシステムの耐故障性および/または使い勝
手が向上する。電気ブレーキとマニュアルブレーキとが
互いに異なる複数個の車輪に設けられる場合には、電気
ブレーキが故障すると、その電気ブレーキが設けられて
いる車輪については、路面との間に摩擦力を発生させる
ことができず、路面の摩擦係数を有効に利用した車両制
動が実現されない。これに対して、本項に記載のブレー
キシステムにおいては、電気ブレーキとマニュアルブレ
ーキとが同じ車輪に関して設けられている。したがっ
て、このブレーキシステムによれば、電気ブレーキの故
障時に、その電気ブレーキが設けられている車輪と路面
との間に摩擦力を発生させることができるため、路面の
摩擦係数を有効に利用した車両制動が実現される。この
ブレーキシステムにおいて「マニュアルブレーキ」およ
び「マニュアルブレーキ制御装置」はそれぞれ、流体圧
を使用しない形式としたり、使用する形式とすることが
できる。また、このブレーキシステムにおいて「操作情
報」には例えば、ブレーキ操作部材の操作力の大きさを
表すものや、操作ストロークの長さを表すものがある。
また、このブレーキシステムにおいて「摩擦材」および
「回転体」は、電気ブレーキとマニュアルブレーキとに
別々に設けたり、両者に共通に設けることができる。ま
た、ここに「電気ブレーキの非作動時」には、電気ブレ
ーキの故障が原因で電気ブレーキが作動させられない場
合や、電気ブレーキの故障ではなく電源が遮断されてい
ることが原因で電気ブレーキが作動させられない場合が
含まれる。 (2) 前記マニュアルブレーキ制御装置が、前記電気ブレ
ーキの作動時に前記マニュアルブレーキが予定外に作動
することを防止する予定外作動防止装置を含む(1) 項に
記載のブレーキシステム〔請求項2〕。前項に記載のブ
レーキシステムにおいては、マニュアルブレーキが電気
ブレーキの非作動時にのみ作動し、作動時には作動しな
いことが望ましい。それら電気ブレーキおよびマニュア
ルブレーキは同じ車輪に関して設けられているため、作
動時にもマニュアルブレーキを作動させたのでは、その
作動時に、予定より大きな制動力が車輪に発生してしま
うことになるからである。そこで、本項に記載のブレー
キシステムにおいては、予定外作動防止装置により、電
気ブレーキの作動時にマニュアルブレーキが予定外に作
動することが防止される。したがって、このブレーキシ
ステムによれば、電気ブレーキの作動時に、予定より大
きな制動力が車輪に発生することが防止される。 (3) 前記摩擦材が、前記電気ブレーキとマニュアルブレ
ーキとに共通に設けられている(1) または(2) 項に記載
のブレーキシステム。 (4) 前記電気ブレーキが、さらに、(a) 前記モータに電
力を供給する電源と、(b) 前記モータの駆動力により前
記摩擦材を電気ブレーキの回転体に押圧する押圧装置と
を含む(1) ないし(3) 項のいずれかに記載のブレーキシ
ステム。 (5) 前記マニュアルブレーキが、さらに、前記ブレーキ
操作部材と機械的に連動してそのブレーキ操作部材の操
作力を前記摩擦材に伝達する操作力伝達部材を含む(1)
ないし(4) 項のいずれかに記載のブレーキシステム。 (6) 前記マニュアルブレーキが、流体圧を使用しない機
械ブレーキである(1)ないし(5) 項のいずれかに記載の
ブレーキシステム。このブレーキシステムによれば、マ
ニュアルブレーキが機械ブレーキとされ、それにより、
マニュアルブレーキが電気に依存しない上に、流体の漏
れ等の心配がなくなるため、マニュアルブレーキ系統の
信頼性が向上する。 (7) 前記マニュアルブレーキ制御装置が、流体圧を使用
しないものである(6)項に記載のブレーキシステム。こ
のブレーキシステムによれば、マニュアルブレーキのみ
ならずマニュアルブレーキ制御装置も、電気に依存しな
い上に、流体の漏れ等の心配がなくなるため、マニュア
ルブレーキ系統の信頼性が一層向上する。 (8) 前記摩擦材が、前記電気ブレーキとマニュアルブレ
ーキとに共通に設けられており、前記マニュアルブレー
キ制御装置が、そのマニュアルブレーキ制御装置が前記
電気ブレーキによる前記摩擦材の作動を阻害することを
防止する電気ブレーキ作動阻害防止装置を含む(1) ない
し(7) 項のいずれかに記載のブレーキシステム〔請求項
3〕。摩擦材が電気ブレーキとマニュアルブレーキとに
共通に設けられるブレーキシステムにおいては、摩擦材
が、モータに連携させられるとともに、マニュアルブレ
ーキ制御装置を介してブレーキ操作部材に連携させられ
るため、何ら対策を講じないと、電気ブレーキにより摩
擦材が作動させられる際、その摩擦材の作動がマニュア
ルブレーキ制御装置によって阻害されてしまう。そこ
で、本項に記載のブレーキシステムにおいては、電気ブ
レーキ作動阻害防止装置により、マニュアルブレーキ制
御装置が電気ブレーキによる摩擦材の作動を阻害するこ
とが防止される。したがって、このブレーキシステムに
よれば、摩擦材が電気ブレーキとマニュアルブレーキと
に共通に設けられるにもかかわらず、電気ブレーキの正
常作動が確保される。 (9) 前記摩擦材が、前記電気ブレーキとマニュアルブレ
ーキとに共通に設けられており、前記電気ブレーキが、
その電気ブレーキが前記マニュアルブレーキによる前記
摩擦材の作動を阻害することを防止するマニュアルブレ
ーキ作動阻害防止装置を含む(1) ないし(8) 項のいずれ
かに記載のブレーキシステム〔請求項4〕。このブレー
キシステムにおいては、マニュアルブレーキ作動阻害防
止装置により、電気ブレーキがマニュアルブレーキによ
る摩擦材の作動を阻害することが防止される。したがっ
て、このブレーキシステムによれば、摩擦材が電気ブレ
ーキとマニュアルブレーキとに共通に設けられるにもか
かわらず、マニュアルブレーキの正常作動が確保され
る。 (10)前記マニュアルブレーキ制御装置が、前記ブレーキ
操作部材の操作力または操作ストロークにより機械的
に、操作力を前記マニュアルブレーキを伝達する状態と
伝達しない状態とに切り換わる機械式である(1) ないし
(9) 項のいずれかに記載のブレーキシステム。このブレ
ーキシステムによれば、マニュアルブレーキのみならず
マニュアルブレーキ制御装置も電気に依存しない機械式
とされるため、電気ブレーキの故障が車両の主要な電気
系統の故障に起因する場合でも、車両の制動が確保され
る。 (11)前記マニュアルブレーキ制御装置が、(a) 前記電気
ブレーキの故障を電気的に検出する故障検出手段と、
(b) 当該マニュアルブレーキ制御装置を前記マニュアル
ブレーキの作動を許可する許可状態と禁止する禁止状態
とに電磁的に切り換える電磁的切換装置と、(c) 前記故
障検出手段により電気ブレーキの故障が検出された場合
に、前記電磁的切換装置を、当該マニュアルブレーキ制
御装置が禁止状態から許可状態に切り換わるように制御
する切換装置制御手段とを含む電気式である(1) ないし
(9) 項のいずれかに記載のブレーキシステム。 (12)前記マニュアルブレーキ制御装置が、(a) 前記電気
ブレーキの正常作動を検出する正常作動検出手段と、
(b) 当該マニュアルブレーキ制御装置を前記マニュアル
ブレーキの作動を許可する許可状態と禁止する禁止状態
とに電磁的に切り換える電磁的切換装置と、(c) 前記正
常作動検出手段により電動ブレーキの正常作動が検出さ
れた場合に、前記電磁的切換装置を、当該マニュアルブ
レーキ制御装置が許可状態から禁止状態に切り換わるよ
うに制御する切換装置制御手段とを含む電気式である
(1) ないし(9) 項のいずれかに記載のブレーキシステ
ム。このブレーキシステムにおいては、電気ブレーキが
故障した場合には、ブレーキ操作時に電気ブレーキの正
常作動が検出されることはないため、マニュアルブレー
キが作動させられる。また、電気ブレーキは正常である
が、電気ブレーキに電力を供給すべき電源が電気ブレー
キから遮断されているために電気ブレーキが正常作動を
行い得ない場合にも、電気ブレーキの正常作動が検出さ
れない。そして、この場合にも、マニュアルブレーキが
作動させられる。したがって、このブレーキシステムに
よれば、電源が電気ブレーキから遮断されている場合で
も、マニュアルブレーキを作動可能となり、運転者は従
来の液圧ブレーキ装置におけると同等な使い勝手を享受
できる。 (13)さらに、前記電気ブレーキの作動時に、前記ブレー
キ操作部材にそれの操作力に応じた操作ストロークを付
与する操作ストローク付与機構を含む(1) ないし(12)項
のいずれかに記載のブレーキシステム。前記操作情報と
してブレーキ操作部材の操作力の大きさを選び、電気ブ
レーキの作動をその操作情報に基づいて行うこととした
場合には、ブレーキ操作部材に操作ストロークを付与す
ることが不可欠ではない。一方、運転者は、ブレーキ操
作部材に関して、操作力が増加すればそれに応じて操作
ストロークが増加する場合に、ブレーキ操作フィーリン
グが良好であると感じるのが一般的である。そこで、本
項に記載のブレーキシステムにおいては、電気ブレーキ
の作動時に、ブレーキ操作部材にそれの操作力に応じた
操作ストロークが付与される。したがって、このブレー
キシステムによれば、電気ブレーキの作動時に、従来の
液圧式ブレーキシステムにおけると同等に良好なブレー
キ操作フィーリングが得られる。 (14)前記マニュアルブレーキ制御装置が、前記操作力を
倍力して前記マニュアルブレーキに伝達する倍力機構を
含む(1) ないし(13)項のいずれかに記載のブレーキシス
テム。このブレーキシステムによれば、電気ブレーキの
非作動時にマニュアルブレーキにより、小さな操作力で
も大きな制動力を車輪に発生可能となる。 (15)前記マニュアルブレーキが、それの前記摩擦材にフ
レキシブルなケーブルが直接にまたは間接に連結される
とともに、そのケーブルの引張力により摩擦材が前記回
転体に接近する向きに駆動されるものであり、前記マニ
ュアルブレーキ制御装置が、(a) 前記ブレーキ操作部材
の操作力により一軸線方向に直線運動させられる直線運
動部材と、(b) その直線運動部材と同軸な軸線まわりに
回転させられることにより、前記ケーブルを巻き取り、
それにより、そのケーブルに引張力を付与する回転部材
と、(c) 前記直線運動部材の直線運動を前記回転部材の
回転運動に変換する運動変換機構とを含む(1) ないし(1
4)項のいずれかに記載のブレーキシステム〔請求項
5〕。このブレーキシステムによれば、ブレーキ操作部
材の操作力をマニュアルブレーキに伝達する力伝達系を
構成する複数個の可動部材を効率よく配置可能となる。
その結果、マニュアルブレーキ制御装置の構造簡単化お
よび小形軽量化を容易に図り得、ひいては、マニュアル
ブレーキ制御装置の車両への搭載し易いも容易に向上さ
せ得る。 (16)前記運動変換機構が、前記直線運動部材またはそれ
と一体的に直線運動する部材が前記回転部材またはそれ
と一体的に回転する部材に螺合されたねじ機構を含む(1
5)項に記載のブレーキシステム。このブレーキシステム
によれば、運動変換機構としてねじ機構を採用するた
め、運動変換機構の小形化を容易に図り得る。このブレ
ーキシステムにおいて「ねじ機構」は倍力作用をなすよ
うに設計可能であり、この態様によれば、ブレーキ操作
部材の操作力を倍力してマニュアルブレーキに伝達可能
となり、操作力の割りに大きな作動力をマニュアルブレ
ーキによって発生させ得る。すなわち、この態様におい
ては、「ねじ機構」が前記(14)項に記載の「倍力機構」
の一例を構成しているのである。 (17)前記ねじ機構が、前記直線運動部材が前記回転部材
に複数個のボールを介して螺合されたボールねじ機構を
含む(16)項に記載のブレーキシステム。 (18)前記マニュアルブレーキ制御装置が、さらに、(a)
ハウジングと、(b) そのハウジングと前記回転部材とを
その回転部材の軸線まわりに相対回転可能に連結する連
結器と、(c) その連結器を前記ハウジングと前記回転部
材とに、それらハウジングと回転部材との、その回転部
材の軸線と平行な第1方向における相対変位は阻止し、
その軸線と交差する第2方向における相対変位は許容す
る状態で取り付ける取付部とを含む(15)ないし(17)項の
いずれかに記載のブレーキシステム〔請求項6〕。前記
(15)ないし(17)項のいずれかに記載のブレーキシステム
を実施する際には一般に、回転部材が、マニュアルブレ
ーキ制御装置のハウジングに、ボールベアリング等、ハ
ウジングと回転部材とをその回転部材の軸線まわりに相
対回転可能に連結する連結器を介して取り付けられる。
そして、この態様においては、ハウジングに回転部材お
よび連結器を取り付ける際、それら部品の製造ばらつき
にもかかわらず、連結器に予定外の力が作用しないよう
にすることが大切である。そのため、連結器と回転部材
との取付けはそれらの相対変位が阻止されるように行わ
れる一方、連結器とハウジングとの取付けはそれらの相
対変位が回転部材の軸線と平行な第1方向にも交差する
第2方向にも、多少許容されるように行われる態様が考
えられる。しかし、この態様においては、連結器とハウ
ジングとの取付けがそれらの相対変位が第1方向に許容
されるように行われているため、マニュアルブレーキ制
御装置の作動時に、ブレーキ操作部材の操作力が直線運
動部材を経て回転部材に、相対変位が許容されている方
向と同じ第1方向において加えられると、連結器とハウ
ジングとが第1方向に相対変位する。この相対変位によ
りそれら連結器とハウジングとが互いに当接すると、打
音が発生したり、連結器およびハウジングに摩耗が発生
するおそれがある。これに対して、本項に記載のブレー
キシステムにおいては、取付部により、連結器がハウジ
ングと回転部材とに、それらハウジングと回転部材との
第1方向における相対変位は阻止され、第2方向におけ
る相対変位は許容される状態で取り付けられる。したが
って、このブレーキシステムによれば、マニュアルブレ
ーキ制御装置における打音発生や摩耗発生を防止し得
る。このブレーキシステムにおいて、「取付部」は、連
結器と回転部材とを相対変位不能に取り付ける一方、連
結器とハウジングとを、それら連結器とハウジングとの
第1方向における相対変位は阻止され、第2方向におけ
る相対変位は許容される状態で取り付ける態様とするこ
とができる。さらに、「取付部」は、連結器とハウジン
グとを相対変位不能に取り付ける一方、連結器と回転部
材とを、それら連結器と回転部材との第1方向における
相対変位は阻止され、第2方向における相対変位は許容
される状態で取り付ける態様とすることもできる。 (19)前記取付部が、前記連結器を前記ハウジングと前記
回転部材とに、連結器とハウジングとが前記第2方向に
おいてすき間を隔てて互いに対向することと、連結器と
回転部材とが第2方向においてすき間を隔てて互いに対
向することとの少なくとも一方が実現されるように取り
付けるものである(18)項に記載のブレーキシステム。こ
のブレーキシステムにおいては、取付部により、連結器
とハウジングとが第2方向においてすき間を隔てて互い
に対向することと、連結器と回転部材とが第2方向にお
いてすき間を隔てて互いに対向することとの少なくとも
一方が実現される。したがって、このブレーキシステム
によれば、ハウジングと回転部材との第2方向における
相対変位が許容される。このブレーキシステムにおいて
「取付部」は、ハウジングに一体に形成される形式とし
たり、ハウジングとは別の部材であってそのハウジング
に固定されて使用される形式とすることができる。前者
の形式を採用する場合には、マニュアルブレーキ制御装
置の部品点数の節減が可能となり、また、後者の形式を
採用する場合には、取付部をハウジングに一体に形成す
る場合に比較して取付部を設計する際の自由度が向上す
る。このブレーキシステムにおいて「すき間」に弾性変
形可能な部材を配置することが可能である。このように
すれば、ハウジングと回転部材とが第2方向にみだりに
相対変位することを抑制し得る。 (20)前記取付部が、前記連結器を前記ハウジングと前記
回転部材とに、連結器とハウジングとが前記第1方向に
おいて実質的な接触状態で互いに対向することと、連結
器と回転部材とが第1方向において実質的な接触状態で
互いに対向することとの双方が実現されるように取り付
けるものである(18)または(19)項に記載のブレーキシス
テム。このブレーキシステムにおいては、取付部によ
り、連結器とハウジングとが第1方向において実質的な
接触状態で互いに対向することと、連結器と回転部材と
が第1方向において実質的な接触状態で互いに対向する
こととの双方が実現される。したがって、このブレーキ
システムによれば、ハウジングと回転部材との第1方向
における相対変位が阻止される。 (21)前記取付部が、(a) 前記ハウジングに前記第2方向
に延びる状態で形成された穴と、(b) その穴に、前記第
1方向においてすき間を実質的に有しないで嵌入される
軸状部材と、(c) 前記連結器の、前記ハウジングと前記
第2方向において対向する面に形成された係合部であっ
て、前記軸状部材が、第2方向にはすき間を有して嵌入
される一方、前記第1方向にはすき間を実質的に有しな
いで嵌入されるものとを含む(18)ないし(20)項のいずれ
かに記載のブレーキシステム〔請求項7〕。このブレー
キシステムによれば、連結器とハウジングとを、第2方
向においては相対変位可能であるが第1方向においては
相対変位不能であるようにすることが、ハウジングの穴
と軸状部材と連結器の係合部という簡単な構成により実
現される。このブレーキシステムにおいて「軸状部材」
は例えば、安価なピンとしたり、着脱が容易なボルトと
することができる。 (22)前記係合部が、前記連結器の、前記ハウジングと前
記第2方向において対向する面に、前記回転部材の軸線
を中心とする一円周に沿って延びる状態で形成された円
環溝を含む(21)項に記載のブレーキシステム。このブレ
ーキシステムにおいては、軸状部材と係合されるべき係
合部が、回転部材と同軸の円環溝とされているため、連
結器に軸状部材を取り付ける際、連結器の第1方向にお
ける位置に関してさえ位置決め作業を行えば、連結器
の、回転部材の軸線まわりの位置に関して位置決め作業
を行うことは不要となる。したがって、このブレーキシ
ステムによれば、連結器に軸状部材を取り付ける作業を
容易にし得る。 (23)前記連結器が、相対回転可能な2部材が転動体を介
して互いに連結されるとともに、それら2部材が前記ハ
ウジングと前記回転部材とにそれぞれ対向させられるベ
アリングを含む(18)ないし(22)項のいずれかに記載のブ
レーキシステム。このブレーキシステムにおいて「ベア
リング」は、種々の転動体を採用することができる。よ
って、「ベアリング」は例えば、ボールを転動体とする
ボールベアリングとしたり、ローラを転動体とするロー
ラベアリングとすることができる。また、「ベアリン
グ」は、種々の荷重支持方式を採用することができる。
よって、「ベアリング」は例えば、主にラジアル方向の
荷重を受けるラジアルベアリングとしたり、ラジアル方
向の荷重とスラスト方向の荷重との双方を受けるラジア
ルスラストベアリングとすることができる。 (24)前記マニュアルブレーキ制御装置が、(a) 前記ブレ
ーキ操作部材と前記マニュアルブレーキとの間に設けら
れた相対変位可能な2部材であって、相対変位が禁止さ
れる状態でブレーキ操作部材の操作力をマニュアルブレ
ーキに伝達するものと、(b) 前記電気ブレーキの非作動
時には前記2部材の相対変位を禁止し、それにより、前
記マニュアルブレーキの作動を許可する許可状態とな
り、一方、電気ブレーキの作動時には2部材の相対変位
を許可し、それにより、マニュアルブレーキの作動を禁
止する禁止状態となる相対変位制御装置であって、前記
ブレーキ操作部材の非操作時であるか操作時であるかを
問わず、2部材の相対変位を許可する状態から禁止する
状態へ移行し得るものとを含む(1) ないし(23)項のいず
れかに記載のブレーキシステム〔請求項8〕。ブレーキ
操作部材の非操作時にのみ、2部材の相対変位の許可状
態から禁止状態への移行を行い、それにより、マニュア
ルブレーキ作動の禁止状態から許可状態への移行を行い
得る場合には、ブレーキ操作部材の操作時に、マニュア
ルブレーキ作動の禁止状態から許可状態への移行が必要
となっても、それを行うことができない。すなわち、ブ
レーキ操作に基づく電気ブレーキの作動中に電気ブレー
キが故障しても、直ちにはマニュアルブレーキの作動を
開始させることができないのである。これに対して、本
項に記載のブレーキシステムにおいては、ブレーキ操作
部材の非操作時であるか操作時であるかを問わず、2部
材の相対変位を許可する状態から禁止する状態への移行
を行い、それにより、マニュアルブレーキ作動の禁止状
態から許可状態への移行を行い得る。すなわち、電気ブ
レーキの作動中に電気ブレーキが故障すれば、ブレーキ
操作部材が非操作位置に戻ることを待つことなく、マニ
ュアルブレーキの作動を開始させることができるのであ
る。したがって、このブレーキシステムによれば、電気
ブレーキに代えてマニュアルブレーキを作動させること
が必要となった場合には、その時期を問わず、マニュア
ルブレーキの作動開始を迅速に行い得、その結果、マニ
ュアルブレーキの使い勝手が向上する。 (25)前記相対変位制御装置が、(a) 前記2部材の一方で
ある第1部材にそれと一体的に移動可能に設けられ、2
部材の相対変位の方向に並んだ複数個の第1係合部と、
(b) 前記2部材の他方である第2部材にそれと一体的に
移動可能に設けられ、前記複数個の第1係合部のいずれ
かを選択するとともに、その選択第1係合部に対する係
合および離脱が可能な第2係合部と、(c) その第2係合
部を前記選択第1係合部に係合させることにより、前記
2部材の相対変位を禁止する一方、第2係合部を選択第
1係合部から離脱させることにより、2部材の相対変位
を許可する第2係合部駆動装置とを含む(24)項に記載の
ブレーキシステム。ここに「複数個の第1係合部」は例
えば、第1部材の表面にその第1部材の延びる方向に沿
って並んだ複数個の凹みとすることができ、また、「第
2係合部」は例えば、それら複数個の凹みのうち選択さ
れたものに係合する突起とすることができる。また、
「第2係合部駆動装置」は、第2部材にそれと一体的に
移動するように取り付けられる形式としたり、固定部材
に取り付けられる形式とすることができる。後者の形式
を採用する場合には、第2係合部駆動装置と第2係合部
との相対移動にもかかわらずそれら第2係合部駆動装置
と第2係合部との間における力の伝達を実現する力伝達
部材をそれら第2係合部駆動装置と第2係合部との間に
設けることが望ましい。 (26)前記第2係合部駆動装置が、前記第2係合部を前記
選択第1係合部に弾性的に押し付けることにより、第2
係合部を選択第1係合部に係合させるものであり、前記
相対変位制御装置が、さらに、前記第2係合部が前記選
択第1係合部に押し付けられている状態で、前記マニュ
アルブレーキの摩擦材が前記回転体に接近する向きに前
記2部材を相対変位させようとする力がそれら2部材の
少なくとも一方に作用した場合には、2部材の相対変位
が禁止され、一方、マニュアルブレーキの摩擦材が回転
体から離間する向きに2部材を相対変位させようとする
力がそれら2部材の少なくとも一方に作用した場合に
は、2部材の相対変位が許可されるようにそれら2部材
の相対変位を制御する機構を含む(25)項に記載のブレー
キシステム。このブレーキシステムによれば、マニュア
ルブレーキの作動状態でブレーキ操作が解除されれば、
2部材のうちマニュアルブレーキの側に位置するものの
戻りを待つことなく、ブレーキ操作部材が迅速に初期位
置に戻ることが可能となる。 (27)前記車輪が4個、車両の前後左右にそれぞれ設けら
れており、前記電気ブレーキが複数個、それら4個の車
輪にそれぞれ設けられており、前記マニュアルブレーキ
が複数個、前記4個の車輪のうち車両の前側と後側との
少なくとも一方において左右にそれぞれ設けられた少な
くとも一対の左右輪にそれぞれ設けられており、前記マ
ニュアルブレーキ制御装置が、前記4個の車輪のうちの
2個において電気ブレーキが故障した場合に、それら2
個の車輪が、4個の車輪のうち車両の左側と右側とのい
ずれか一方において前後にそれぞれ設けられた一対の前
後輪であるときには、前記マニュアルブレーキの作動を
許可するものである(1) ないし(26)項のいずれかに記載
のブレーキシステム〔請求項9〕。4個の車輪のうちの
2個において電気ブレーキが故障した場合には、それら
2個の車輪が、4個の車輪のうち車両の左側と右側との
いずれか一方において前後にそれぞれ設けられた一対の
前後輪である場合と、そうでない場合、すなわち、4個
の車輪のうち車両の前側と後側とのいずれか一方におい
て左右にそれぞれ設けられた一対の左右輪、または、車
両において対角位置に配置された一対の対角輪である場
合とがある。そして、一対の左右輪または一対の対角輪
において電気ブレーキが故障した場合には、正常である
電気ブレーキによって車両を制動しても、車両に適当で
ないヨーイングモーメントが生じることはないが、一対
の前後輪において電気ブレーキが故障した場合には、適
当でないヨーイングモーメントが生じてしまう。これに
対して、本項に記載のブレーキシステムにおいては、一
対の前後輪において電気ブレーキが故障した場合には、
少なくとも一対の左右輪においてマニュアルブレーキが
作動させられることによって車両が制動され、一方、一
対の前後輪ではない2個の車輪において電動ブレーキが
故障した場合には、電気ブレーキによって車両が制動さ
れる。したがって、このブレーキシステムによれば、一
対の前後輪において電気ブレーキが故障した場合に、車
両制動によって車両に適当でないヨーイングモーメント
が生じさせることがなくなり、車両の走行安定性を低下
させることなく車両を制動可能となる。なお、「電気ブ
レーキ」は、各輪に1個設けても、複数個設けてもよ
い。このことは、「マニュアルブレーキ」についても同
様である。 (28)前記マニュアルブレーキ制御装置が、前記4個の車
輪のうちの2個において電気ブレーキが故障した場合
に、それら2個の車輪が、4個の車輪のうち車両の左側
と右側とのいずれか一方において前後にそれぞれ設けら
れた一対の前後輪でないときには、前記マニュアルブレ
ーキの作動を禁止するものである(27)項に記載のブレー
キシステム (29)ブレーキ操作部材と、そのブレーキ操作部材の操作
状態を表す操作情報に基づき、モータを駆動源として流
体圧を使用しないで摩擦材を車輪と共に回転する回転体
に押圧することにより、電気的に前記車輪を制動する電
気ブレーキと、前記ブレーキ操作部材を駆動源として摩
擦材を前記車輪と共に回転する回転体に押圧することに
より、機械的に前記車輪を制動するマニュアルブレーキ
と、そのマニュアルブレーキと前記ブレーキ操作部材と
を互いに機械的に連携させる連携装置であって、ブレー
キ操作部材により機械的に、操作力または操作ストロー
クが基準値を超えた場合には操作力をマニュアルブレー
キに伝達する状態となり、超えない場合には伝達しない
状態となる連携装置とを含むことを特徴とするブレーキ
システム〔請求項10〕。運転者は、希望する車体減速
度を実現すべくブレーキ操作部材を操作したにもかかわ
らず、電気ブレーキが作動しない場合には、ブレーキ操
作部材をさらに強く操作することになるため、操作力ま
たは操作ストロークが基準値を超えることとなる。基準
値を超えた場合には、このブレーキシステムにおいて
は、ブレーキ操作部材によりマニュアルブレーキが作動
させられ、それにより、車輪に制動力が発生する。した
がって、このブレーキシステムによれば、電気ブレーキ
の非作動時に運転者はマニュアルブレーキにより車両を
制動できる。また、このブレーキシステムにおいては、
マニュアルブレーキのみならず連携装置も電気に依存し
ない機械式とされるため、電気ブレーキの故障が車両の
主要な電気系統の故障に起因する場合でも、車両の制動
が確保される。なお、このブレーキシステムにおいて
は、「連携装置」が前記(1) 項に記載の「マニュアルブ
レーキ制御装置」の一例を構成している。また、ここに
「基準値」は、電気ブレーキの作動状態とは無関係に決
定される絶対値としたり、電気ブレーキの作動状態に応
じて決定される相対値とすることができる。また、前記
(1) 項に記載のブレーキシステムに関する前述の補足説
明は、本項に記載のブレーキシステムにおいても有効で
ある。 (30)前記摩擦材が、前記電気ブレーキとマニュアルブレ
ーキとに共通に設けられており、前記連携装置が、(a)
前記ブレーキ操作部材と機械的に連動する連動部材と、
(b) その連動部材と前記摩擦材とを互いに連結する連結
機構であって、非操作位置から操作位置に向かう前記ブ
レーキ操作部材の操作に伴う連動部材の作動時にはその
連動部材と共に摩擦材が前記マニュアルブレーキの回転
体に向かって変位させられ、前記操作に伴う前記電気ブ
レーキの作動時にはその電気ブレーキにより摩擦材が電
気ブレーキの回転体に向かう変位が連動部材から独立し
て行われるようにする連結機構とを含む(29)項に記載の
ブレーキシステム。前述のように、摩擦材が電気ブレー
キとマニュアルブレーキとに共通に設けられるブレーキ
システムにおいては、何ら対策を講じないと、電気ブレ
ーキによる摩擦材の作動が連携装置によって阻害されて
しまう。これに対して、本項に記載のブレーキシステム
においては、連携装置が、ブレーキ操作部材と機械的に
連動する連動部材と、その連動部材と摩擦材とを互いに
連結する連結機構とを含むものとされ、かつ、その連結
機構が、連動部材と摩擦材とを互いに、非操作位置から
操作位置に向かうブレーキ操作部材の操作に伴う連動部
材の作動時にはその連動部材と共に摩擦材がマニュアル
ブレーキの回転体に向かって変位させられ、非操作位置
から操作位置に向かうブレーキ操作部材の操作に伴う電
気ブレーキの作動時にはその電気ブレーキにより摩擦材
が電気ブレーキの回転体に向かう変位が連動部材から独
立して行われるようにするものとされている。したがっ
て、このブレーキシステムによれば、電気ブレーキの作
動時に、摩擦材が連携装置から独立して作動可能とな
り、よって、電気ブレーキによる摩擦材の作動が連携装
置によって阻害されることが防止される。このブレーキ
システムにおいて「回転体」は、摩擦材と同様に、電気
ブレーキとマニュアルブレーキとに共通に設けたり、摩
擦材とは異なり、別々に設けることができる。なお、こ
のブレーキシステムにおいては、「連結機構」が前記
(8) 項に記載の「電気ブレーキ作動阻害防止装置」の一
例を構成している。 (31)前記連携装置が、(a) ハウジングと、(b) そのハウ
ジングに摺動可能に嵌合されて前記ブレーキ操作部材と
機械的に連動する第1ピストンと、(c) その第1ピスト
ンを、前記ブレーキ操作部材が操作位置から非操作位置
に向かう向きに付勢する弾性部材と、(d) 前記第1ピス
トンと同軸に、かつ、その第1ピストンと相対移動可能
に前記ハウジングに摺動可能に嵌合された第2ピストン
であって、第1ピストンの作動力または作動ストローク
が基準値を超えない場合には第1ピストンにより作動さ
せられず、超えた場合には第1ピストンにより作動させ
られる第2ピストンと、(e) その第2ピストンにより回
動させられるレバーと、(f) そのレバーと前記摩擦材と
を互いに連結する可撓性を有する第1連結部材であっ
て、レバーの作動力を引張力として摩擦材にその摩擦材
が前記マニュアルブレーキの回転体に接近する向きに伝
達するものとを含む(29)または(30)項に記載のブレーキ
システム〔請求項11〕。このブレーキシステムによれ
ば、マニュアルブレーキのみならず連携装置も電力に依
存しない機械式とされるため、電気ブレーキの故障が車
両の主要な電気系統の故障に起因する場合でも、車両の
制動が確保される。また、このブレーキシステムにおい
ては、第1ピストンの作動力または作動ストロークが基
準値を超えない場合には、第2ピストンが第1ピストン
によって作動させられず、その結果、ブレーキ操作部材
によりマニュアルブレーキが作動させられない。これに
対して、第1ピストンの作動力または作動ストロークが
基準値を超えた場合には、第2ピストンが第1ピストン
によって作動させられ、その結果、ブレーキ操作部材に
よりマニュアルブレーキが作動させられる。したがっ
て、電気ブレーキの非作動時に、操作力または操作スト
ロークが基準値を超えた場合には、第1ピストンの作動
力または作動ストロークが基準値を超えるように当該ブ
レーキシステムを設計すれば、電気ブレーキの非作動時
にマニュアルブレーキが作動させられ、それにより、車
両の制動が確保される。さらに、このブレーキシステム
においては、互いに機械的に関連付けられるべき第1ピ
ストンと第2ピストンとが同じハウジングに、しかも、
同軸に配置されているため、第1ピストンの作動力また
は作動ストロークに応じた第2ピストンの選択的作動を
制御するための機構の構造を容易に簡単化し得る。この
ブレーキシステムにおいて「弾性部材」は、第1ピスト
ンの作動ストロークに応じた反力を第1ピストンに付与
することにより、これにより、結局、ブレーキ操作部材
にそれの操作力に応じた操作ストロークが付与されるこ
とになる。すなわち、このブレーキシステムにおいて
は、「弾性部材」が「第1ピストン」と共同して、前記
(13)項に記載の「操作ストローク付与機構」の一例を構
成しているのである。また、このブレーキシステムにお
いて「可撓性を有する第1連結部材」は、剛体の連結部
材より変形し易いものであればよく、後述の、フレキシ
ブルなワイヤで構成したり、フレキシブルなロッドで構
成したり、フレキシブルなリーフスプリングで構成する
ことができる。なお、このブレーキシステムにおいて
は、「レバー」が前項に記載の「連動部材」の一例を構
成し、「連結部材」が「連結機構」の一例を構成してい
る。 (32)前記ハウジングが、車体に位置固定に取り付けられ
るべき固定部材であり、前記弾性部材が、前記ハウジン
グと第1ピストンとの間に設けられたものであり、前記
第1ピストンが、それの作動ストロークが基準値を超え
ない場合には前記第2ピストンから離隔された位置にあ
って第2ピストンに係合せず、超えた場合には第2ピス
トンに接近して係合し、それにより、第2ピストンを作
動させるものである(31)項に記載のブレーキシステム。 (33)前記連携装置が、前記操作力を倍力して前記マニュ
アルブレーキに伝達する倍力機構を含む(29)ないし(32)
項のいずれかに記載のブレーキシステム。このブレーキ
システムにおいて「倍力機構」は、機械式としたり、流
体圧式とすることができる。機械式は例えば、レバー
を、第2ピストンから入力される力が倍力されて摩擦材
に出力されるように使用する形式とすることができる。
流体圧式は例えば、第1ピストンを小径ピストン、第2
ピストンを大径ピストンとするとともに、それら両ピス
トン間の空間を液室とする形式とすることができる。 (34)前記電気ブレーキが、前記モータと前記摩擦材とを
互いに連結する可撓性を有する第2連結部材であって、
モータの駆動力を引張力として摩擦材にその摩擦材が電
気ブレーキの回転体に接近する向きに伝達するものを含
む(31)ないし(33)項のいずれかに記載のブレーキシステ
ム〔請求項12〕。このブレーキシステムにおいては、
「第2連結部材」が前記(9) 項に記載の「マニュアルブ
レーキ作動阻害防止装置」の一例を構成している。ま
た、「第2連結部材」は、前記(31)項に記載の「第1連
結部材」と同様に解釈することができる。 (35)前記連携装置が、さらに、前記電気ブレーキの非作
動時には前記第2ピストンの作動を許可し、作動時には
禁止する第2ピストン作動許可・禁止装置を含む(31)な
いし(34)項のいずれかに記載のブレーキシステム〔請求
項13〕。このブレーキシステムによれば、第2ピスト
ンを利用することにより、電気ブレーキの作動時にマニ
ュアルブレーキが予定外に作動することが防止される。
すなわち、このブレーキシステムにおいては、「第2ピ
ストン作動許可・禁止装置」が前記(2) 項に記載の「予
定外作動防止装置」の一例を構成しているのである。こ
のブレーキシステムにおいて「第2ピストン作動許可・
禁止装置」は、第2ピストンの作動を機械的なストッパ
により阻止するとともに、そのストッパを磁気力または
流体圧により作動させる形式としたり、第2ピストンの
作動をその作動位置に応じて容積が変化する液室のその
容積変化を阻止することにより、第2ピストンの作動を
阻止する形式とすることができる。 (36)前記第2ピストン作動許可・禁止装置が、(a) 前記
ハウジングと第2ピストンとの間に形成されてその第2
ピストンの移動位置に応じて容積が変化する制御液室
と、(b) 前記電気ブレーキの作動時には前記制御液室に
対する作動液の流れを阻止する一方、非作動時には許可
する流通制御装置とを含む(35)項に記載のブレーキシス
テム。 (37)前記回転体がドラムであり、前記摩擦材がブレーキ
ライニングである(1)ないし(36)項のいずれかに記載の
ブレーキシステム。 (38)前記回転体がディスクであり、前記摩擦材がブレー
キパッドである(1) ないし(36)項のいずれかに記載のブ
レーキシステム。 (39)さらに、前記ブレーキ操作部材に設けられ、そのブ
レーキ操作部材が操作位置から非操作位置に戻ることを
許容する状態と、阻止する状態とに切り換わる状態切換
装置を含む(1) ないし(38)項のいずれかに記載のブレー
キシステム。このブレーキシステムにおいては、ブレー
キ操作部材が操作位置から非操作位置に戻ることを許容
する状態は、電気ブレーキまたはマニュアルブレーキを
常用ブレーキとして使用し得る状態を意味し、一方、ブ
レーキ操作部材の戻りを阻止する状態は、電気ブレーキ
またはマニュアルブレーキをパーキングブレーキとして
使用し得る状態を意味する。したがって、このブレーキ
システムにおいては、結局、状態切換装置により、電気
ブレーキまたはマニュアルブレーキを常用ブレーキとし
て使用し得る状態と、パーキングブレーキとして使用し
得る状態とに切り換えられることとなる。よって、この
ブレーキシステムによれば、電気ブレーキまたはマニュ
アルブレーキを、常用ブレーキとしてのみならずパーキ
ングブレーキとしても使用することが可能となる。特
に、電気ブレーキの非作動時には、同じマニュアルブレ
ーキを、常用ブレーキとしてのみならずパーキングブレ
ーキとしても使用することが可能となる。さらに、この
ブレーキシステムによれば、常用ブレーキとパーキング
ブレーキとを同じブレーキ操作部材によって作動させる
ことも可能となる。したがって、このブレーキシステム
によれば、常用ブレーキとパーキングブレーキとを別々
のブレーキとして構成する場合や、常用ブレーキとパー
キングブレーキとに別々にブレーキ操作部材を設ける場
合におけるより、ブレーキシステムの部品点数を少なく
し得る。 (40)前記状態切換装置が、(a) 前記ブレーキ操作部材が
操作位置から非操作位置に戻ることを選択的に阻止する
選択的阻止装置と、(b) その選択的阻止装置を作動させ
るために運転者により操作される操作部材とを含む(39)
項に記載のブレーキシステム。このブレーキシステムに
おいては、運転者による操作部材の操作状態に基づき、
選択的阻止装置により、ブレーキ操作部材が操作位置か
ら非操作位置に戻ることが選択的に阻止され、その阻止
状態においては、電気ブレーキまたはマニュアルブレー
キが作動状態に維持され、その結果、車両が停止状態に
維持される。 (41)前記状態切換装置が、前記電気ブレーキの作動時に
は、前記ブレーキ操作部材が操作位置から非操作位置に
戻ることを許容する状態から阻止する状態に移行しない
ものである(39)または(40)項に記載のブレーキシステ
ム。前記(39)または(40)項に記載のブレーキシステム
は、状態切換装置が、電気ブレーキの作動時であるか否
かを問わず、ブレーキ操作部材の戻りを許容する状態か
ら阻止する状態に移行するように実施することが可能で
ある。しかし、車両のパーキングは、車両電源を使用せ
ずに行うことが望ましい。これに対して、本項に記載の
ブレーキシステムにおいては、電気ブレーキの作動時に
は、ブレーキ操作部材の戻りを許容する状態から阻止す
る状態に移行することが阻止される。したがって、この
ブレーキシステムによれば、車両のパーキングが電気ブ
レーキによってではなくマニュアルブレーキによって行
われることが保証されることとなり、よって、車両電源
を使用した車両のパーキングが回避される。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明のさらに具体的な実
施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0008】図1には、本発明の第1実施形態であるブ
レーキシステムの全体構成が示されている。このブレー
キシステムは、左右前輪FL,FRと左右後輪RL,R
Rとを備えた4輪車両に設けられている。この車両は、
原動機としてのエンジン10(内燃機関)と、駆動力伝
達装置としてのオートマチックトランスミッション(以
下、「A/T」と略称する)12とを備えており、それ
らエンジン10とA/T12とにより、左右前輪と左右
後輪との少なくとも一方である駆動車輪が駆動され、そ
れにより、車両が駆動される。
【0009】左右前輪FL,FRには超音波モータ(以
下、単に「モータ」という)20を駆動源とするととも
に流体圧を使用しない電動式ディスクブレーキ22が設
けられている。一方、左右後輪RL,RRには、常用ブ
レーキとして、DCモータ(以下、単に「モータ」とい
う)30を駆動源とするとともに流体圧を使用しない電
動式ドラムブレーキ32が設けられる一方、非常ブレー
キとして、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル3
4を駆動源とするとともに流体圧を使用しない機械式ド
ラムブレーキ36が設けられている。同じ各後輪に電動
式ドラムブレーキ32と機械式ドラムブレーキ36とが
設けられているのである。ただし、摩擦材としてのブレ
ーキライニングと回転体としてのドラムとはそれぞれ、
それら電動式ドラムブレーキ32と機械式ドラムブレー
キ36との間で共通に設けられている。そして、本実施
形態においては、電動式ドラムブレーキ32が「電気ブ
レーキ」の一例を構成し、機械式ドラムブレーキ36が
「マニュアルブレーキ」の一例を構成している。
【0010】この車両には、運転者により操作される部
材がいくつか設けられている。そのいくつかの操作部材
には、主ブレーキ操作部材としての前記ブレーキペダル
34と、パーキングブレーキ操作部材としてのパーキン
グペダル42と、加速操作部材としてのアクセルペダル
44と、ステアリングホイール46とがある。
【0011】ブレーキペダル34が操作されれば、電動
式ディスクブレーキ22と電動式ドラムブレーキ32と
機械式ドラムブレーキ36との少なくとも一つにより、
車両が制動される。具体的には、(a) 電動式ディスクブ
レーキ22も電動式ドラムブレーキ32も正常である場
合には、それら両ブレーキ22,32により車両が制動
され、(b) 電動式ディスクブレーキ22は故障し、電動
式ドラムブレーキ32は正常である場合には、電動式ド
ラムブレーキ32のみにより車両が制動され、(c) 電動
式ディスクブレーキ22は正常であり、電動式ドラムブ
レーキ32は故障した場合には、電動式ディスクブレー
キ22と機械式ドラムブレーキ36とにより車両が制動
され、(e) 電動式ディスクブレーキ22も電動式ドラム
ブレーキ32も故障した場合(後述の電源および電子制
御ユニット(以下、「ECU」と略称する)50が故障
した場合を含む)には、機械式ドラムブレーキ36のみ
により車両が制動される。
【0012】これに対して、パーキングペダル42が操
作されれば、左右前輪の電動式ディスクブレーキ22に
より車両が駐車される。電動式ディスクブレーキ22は
超音波モータ20の静止保持トルクを利用して車両を停
止させる。また、アクセルペダル44が操作されれば、
エンジン10の駆動力が増加させられ、それにより、車
両が駆動される。ステアリングホイール46が回転操作
されれば、それに応じて操舵車輪が図示しない操舵装置
によって操舵される。
【0013】図2には、左右前輪用の電動式ディスクブ
レーキ22の詳細が示されている。ただし、図には、右
前輪用の電動式ディスクブレーキ22のみが代表的に平
面断面図で示されている。
【0014】この電動式ディスクブレーキ22は、図示
しない車体に取り付けられた固定部材としてのマウンテ
ィングブラケット100と、両側に摩擦面102を備え
て車輪と共に回転するディスク104とを備えている。
マウンティングブラケット100は、(a) 一対のブレー
キパッド106a,106bをディスク104を両側か
ら挟む位置においてディスク104の回転軸線に沿って
移動可能に支持する部分と、(b) ディスク104との接
触時に各ブレーキパッド106a,106bに発生する
摩擦力を受ける部分(受け部材)とを備えている。図に
おいて矢印Xは、車体前進時にディスク104が回転す
るディスク回転方向を示している。
【0015】一対のブレーキパッド106a,106b
のうち車体外側(図において右側)のアウタパッド10
6aは、ディスク104との接触時にディスク104と
の連れ回りが実質的に阻止される状態でマウンティング
ブラケット100に支持されている。これに対して、車
体内側(図において左側)のインナパッド106bは、
アウタパッド106aとは異なり、ディスク104との
接触時にディスク104との連れ回りが積極的に許容さ
れる状態でマウンティングブラケット100に支持され
ている。図において矢印Yは、インナパッド106bの
連れ回り方向を示している。
【0016】ただし、インナパッド106bの連れ回り
は、常に許容されるのではなく、ディスク104との間
に発生した摩擦力が第1設定値より小さい状態では阻止
され、第1設定値以上になった状態で許容されるように
なっている。このような連れ回り制御を実現するため、
本実施形態においては、インナパッド106bの前端部
110が、弾性部材としてのスプリング112を介して
マウンティングブラケット100に係合させられてい
る。インナパッド106bの摩擦力が第1設定値より小
さい状態では、スプリング112が弾性変形せずにイン
ナパッド106bの連れ回りが阻止され、第1設定値以
上となった状態でスプリング112が弾性変形してイン
ナパッド106bの連れ回りが許容されるのである。ま
た、本実施形態においては、インナパッド106bの連
れ回り量が第2設定値となったときにマウンティングブ
ラケット100に当接するストッパ114が設けられて
いる。これにより、インナパッド106bの連れ回り限
度が規制され、ひいては、後述のセルフサーボ効果の過
大化が防止される。
【0017】電動式ディスクブレーキ22はさらに、デ
ィスク104の回転軸線方向には移動可能、ディスク1
04の回転方向には移動不能なキャリパボデー120を
備えている。キャリパボデー120は、ディスク104
の回転軸線に平行に延びる姿勢で車体に取り付けられた
図示しない複数本のピンに摺動可能に嵌合されている。
キャリパボデー120は、ディスク104を跨き、一対
のブレーキパッド106a,106bを背後から挟む姿
勢で車体に取り付けられている。キャリパボデー120
は、(a) アウタパッド106aに背後から係合するリア
クション部126と、(b) インナパッド106bに背後
において近接する押圧部128と、(c)それらリアクシ
ョン部126と押圧部128とを互いに連結する連結部
130とを含むように構成されている。
【0018】押圧部128においては、モータ20が運
動変換機構としてのボールねじ機構132を介して押圧
部材134に同軸に連結されている。押圧部材134は
押圧部128により、押圧部材134の軸線回りに回転
不能かつその軸線方向に移動可能に支持されている。し
たがって、モータ20の回転軸136が回転すればその
回転運動がボールねじ機構132によって押圧部材13
4の直線運動に変換される。それにより、押圧部材13
4がそれの軸線に沿って前後に移動させられ、その移動
によってインナパッド106b、ひいてはアウタパッド
106aに押圧力が付与され、それにより、一対のブレ
ーキパッド106a,106bがディスク104に押圧
される。
【0019】アウタパッド106aに関しては、裏板1
40の板厚がディスク回転方向Xにおいて均一とされて
いるが、インナパッド106bに関しては、それの連れ
回り方向Yにおいて後側(車体において後側)から前側
(車体において前側)に進むにつれて板厚が漸減するよ
うにされている。インナパッド106bの裏板140の
背面が、ディスク104の摩擦面102に対する斜面1
42とされ、押圧部材134の前端面がその斜面142
においてインナパッド106bと接触させられているの
である。さらに、その斜面142と押圧部材134の前
端面とはそれらの面に沿って相対移動可能とされてい
る。したがって、インナパッド106bの連れ回りが行
われる状態では、インナパッド106bがディスク10
4と押圧部材134との間においてくさびとして機能
し、電動式ディスクブレーキ22のセルフサーボ効果が
実現される。なお、本実施形態においては、押圧部材1
34の軸線が斜面142と直角とされている。
【0020】本実施形態においては、押圧部材134の
前端面において複数のボール144(ローラ等でも可)
が押圧部材134の軸線回りの一円周に沿ってほぼ等間
隔で保持されるとともに、各ボール144が転動可能に
保持されている。インナパッド106bの裏板140と
押圧部材134とがスラストベアリング146により互
いに接触させられているのであり、それらインナパッド
106bと押圧部材134との間の摩擦が低減されてい
る。
【0021】次にこの電動式ディスクブレーキ22の作
動を説明する。
【0022】運転者によりブレーキペダル34が操作さ
れ、それに伴ってモータ20が回転させられて押圧部材
134が非作動位置から前進させられれば、一対のブレ
ーキパッド106a,106bがディスク104に押圧
され、それにより、各ブレーキパッド106a,106
bとディスク104との間に摩擦力が発生し、車輪が制
動される。
【0023】インナパッド106bの摩擦力が第1設定
値より低く、スプリング112の設定荷重に打ち勝つこ
とができない状態では、スプリング112によってイン
ナパッド106bの連れ回りが阻止され、それにより、
セルフサーボ効果の発生が阻止される。したがって、電
動式ディスクブレーキ22の効き当初,弱いブレーキ操
作時等であるためにインナパッド106bの摩擦力が小
さい状態では、セルフサーボ効果を伴わないで車輪が制
動される。
【0024】これに対して、インナパッド106bの摩
擦力が第1設定値以上となり、スプリング112の設定
荷重に打ち勝つことができる状態となれば、スプリング
112によってインナパッド106bの連れ回りが許容
される。インナパッド106bが連れ回れば、それに伴
って斜面142が一体的に移動し、その結果、ディスク
104の摩擦面102と斜面142との距離が増加す
る。それにより、インナパッド106bがディスク10
4と押圧部材134とにより板厚方向に強く圧縮され、
その結果、インナパッド106bが大きな力でディスク
104に押圧される。したがって、ブレーキペダル34
が強く(例えば、車体に0.3ないし0.6G程度の減
速度が発生する程度に)操作されたためにインナパッド
106bの摩擦力が大きくなった状態では、インナパッ
ド106bがディスク104と押圧部材134との間に
おいてくさびとして機能し、その結果、セルフサーボ効
果を伴って車輪が制動される。
【0025】インナパッド106bの摩擦力がさらに増
加してストッパ114がマウンティングブラケット10
0と当接すれば、インナパッド106bの更なる連れ回
りが阻止され、それにより、セルフサーボ効果の過大化
が阻止される。
【0026】図3には、左右後輪用の電動式ドラムブレ
ーキ32の詳細が示されている。ただし、図には、右後
輪用の電動式ドラムブレーキ32のみが代表的に側面図
で示されている。
【0027】この電動式ドラムブレーキ32は、図示し
ない車体に取り付けられた非回転部材としての、ほぼ円
板状を成すバッキングプレート200と、内周面に摩擦
面202を備えて車輪と共に回転するドラム204とを
備えている。バッキングプレート200の一直径方向に
隔たった2箇所には、それぞれアンカ部材としてのアン
カピン206と中継リンクとしてのアジャスタ208と
が設けられている。アンカピン206はバッキングプレ
ート200に位置固定に取り付けられている。一方、ア
ジャスタ208はフローティング式とされている。それ
らアンカピン206とアジャスタ208との間には、各
々円弧状を成す一対のブレーキシュー210a,210
bがドラム204の内周面に対面するように取り付けら
れている。一対のブレーキシュー210a,210b
は、シューホールドダウン装置212a,212bによ
ってバッキングプレート200にそれの面に沿って移動
可能に取り付けられている。なお、バッキングプレート
200の中央に設けられた貫通穴には、図示しないアク
スルシャフトが回転可能に突出して設けられるようにな
っている。
【0028】一対のブレーキシュー210a,210b
は、一端部同士がアジャスタ208により相互に接近は
不能、隔離は可能に連結される一方、各他端部がアンカ
ピン206と当接させられており、それにより、各端部
の回りに回動可能に支持されている。一対のブレーキシ
ュー210a,210bの一端部同士は、アジャスタス
プリング214によりアジャスタ208を介して互いに
接近する向きに付勢されている。一方、一対のブレーキ
シュー210a,210bの各他端部は各シューリター
ンスプリング215a,215bによりアンカピン20
6に向かって付勢されている。各ブレーキシュー210
a,210bの外周面にブレーキライニング216a,
216bが保持され、それら一対のブレーキライニング
216a,216bがドラム204の内周面に接触させ
られることにより、それらブレーキライニング216
a,216bとドラム204との間に摩擦力が発生す
る。なお、アジャスタ208は、一対のブレーキライニ
ング216a,216bとドラム204との隙間を、車
体組付前および車両停止中には人間の力により、車両走
行中には一対のブレーキシュー210a,210bの摩
耗に応じて自動的に調整する。
【0029】各ブレーキシュー210a,210bはリ
ム220とウェブ222とから構成されており、一対の
ブレーキシュー210a,210bの一方のウェブ22
2には、レバー230がドラム204の回転軸線と交差
する方向に回動可能に取り付けられている。ウェブ22
2にレバー支持部材としてのピン232が位置固定に取
り付けられ、そのピン232にレバー230の一端部が
回動可能に連結されているのである。このレバー230
と他方のブレーキシュー210bとの互いに対向する部
分の切欠きには、力伝達部材としてのストラット236
の両端が係合させられている。このストラット236は
その長さをねじ機構により調節するアジャスト機能を備
えており、これにより、一対のブレーキシュー210
a,210bとドラム204との隙間を車体組付前およ
び車体停止中に人間の力により調節可能となっている。
【0030】以上の説明から明らかなように、この電動
式ドラムブレーキ32は、車体の前進時にも後退時に
も、いずれのブレーキシュー210a,210bにもセ
ルフサーボ効果が発生するデュオサーボ型なのである。
なお、本実施形態においては、レバー230が、一対の
ブレーキシュー210a,210bのうち車体前進時に
セカンダリシューとして作用するブレーキシュー210
aに取り付けられているが、プライマリシューとして作
用するブレーキシュー210bに取り付けることが可能
である。
【0031】レバー230の他端部(自由端部)には常
用ブレーキ用ケーブル240の一端部が連結されてい
る。この常用ブレーキ用ケーブル240は、複数本のワ
イヤをより合わせて構成されており、フレキシブルであ
る。また、この常用ブレーキ用ケーブル240は、バッ
キングプレート200に取り付けられたシュー拡張アク
チュエータ250により駆動される。シュー拡張アクチ
ュエータ250は、図4に拡大して示すように、モータ
30の回転軸に減速機252の入力軸が連結され、その
減速機252の出力軸に運動変換機構としてのボールね
じ機構254の入力部材が連結されて構成されており、
そのボールねじ機構254の出力部材に常用ブレーキ用
ケーブル240の他端部が連結されている。ボールねじ
機構254は、モータ30の回転運動を直線運動に変換
する機構である。図において符号256および258は
共にブラケットを示し、また、符号260および262
は共に、各ブラケット256,258をバッキングプレ
ート200へ取り付けるための取付けボルトを示してい
る。
【0032】ボールねじ機構254は、入力部材として
のおねじ264に出力部材としてのナット266が図示
しない複数個のボールを介して螺合されて構成されてい
る。ナット266は固定部材としてのハウジング267
に回転不能かつ軸方向移動可能に嵌合されている。それ
により、おねじ264の回転運動がナット266の直線
運動に変換される。ナット266の両端部のうちおねじ
264の側とは反対側の端部に出力シャフト268が同
軸に取り付けられている。それらおねじ264,ナット
266および出力シャフト268の相互の摺動部へのダ
ストの侵入が、ハウジング267および伸縮可能なダス
トブーツ270により阻止されている。
【0033】出力シャフト268と常用ブレーキ用ケー
ブル240の他端部との結合は次のような構成により行
われる。すなわち、出力シャフト268の両端部のうち
ボールねじ機構254の側とは反対側の端部にケーブル
取付け用おねじ272が形成される一方、常用ブレーキ
用ケーブル240の他端部にケーブル取付け用ナット2
74が結合されている。そのケーブル取付け用ナット2
74がケーブル取付け用おねじ272に螺合され、その
ケーブル取付け用おねじ272に回り止め用ナット27
6が螺合されるとともに、その回り止め用ナット276
がケーブル取付け用ナット274に押し付けられること
により、ケーブル取付け用ナット274の緩みが防止さ
れている。
【0034】以上のように構成されたシュー拡張アクチ
ュエータ250は、ブレーキペダル34の操作時に常用
ブレーキ用ケーブル240に引張力を付与し、それによ
り、レバー230がそれの他端部がブレーキシュー21
0bから離隔される向きに回動させられ、その結果、ス
トラット236により一対のブレーキシュー210a,
210bが拡張される。
【0035】この電動式ドラムブレーキ32は、一対の
ブレーキシュー210a,210bをそれに発生するセ
ルフサーボ効果に打ち勝って収縮させるのに効果的なシ
ュー収縮機構を備えている。シュー収縮機構は、本実施
形態においては、図3に示すように、レバー230とバ
ッキングプレート200との間に張り渡された常用ブレ
ーキ用リターンスプリング280とされている。この常
用ブレーキ用リターンスプリング280は、常用ブレー
キ用ケーブル240と同軸に張り渡されるとともに、一
端部がレバー230の他端部に、他端部がシュー拡張ア
クチュエータ250のうちの固定部分(例えば、ハウジ
ング,ブラケット等)にそれぞれ係合させられている。
したがって、ブレーキペダル34の操作の解除時に、シ
ュー拡張アクチュエータ250が初期位置に向かって戻
されれば、レバー230は常用ブレーキ用リターンスプ
リング280の圧縮力によって初期位置に向かって回動
させられる。ただし、この電動式ドラムブレーキ32に
そのようなシュー収縮機構を追加することは不可欠なこ
とではなく、例えば、既存のスプリングであるアジャス
タスプリング214やシューリターンスプリング215
a,215bの弾性力を増加させることによって同じ目
的を達成することは可能である。
【0036】以上、電動式ドラムブレーキ32を説明し
たが、次に、機械式ドラムブレーキ36を説明する。
【0037】機械式ドラムブレーキ36においては、電
動式ドラムブレーキ32の複数の構成要素のうち常用ブ
レーキ用ケーブル240とシュー拡張アクチュエータ2
50と常用ブレーキ用リターンスプリング280とを除
く構成要素が電動式ドラムブレーキ32と共用される。
そして、機械式ドラムブレーキ36においては、それら
常用ブレーキ用ケーブル240とシュー拡張アクチュエ
ータ250と常用ブレーキ用リターンスプリング280
とに代えて、非常ブレーキ用ケーブル282とそれと同
軸の非常ブレーキ用リターンスプリング284とが使用
される。レバー230の他端部に常用ブレーキ用ケーブ
ル240の一端部と非常ブレーキ用ケーブル282の一
端部とが連結されるのであり、その結果、機械式ドラム
ブレーキ36の作動時にも、レバー230の回動により
一対のブレーキライニング216a,216bがドラム
204に押圧されることにより、車輪の回転が抑制され
る。非常ブレーキ用ケーブル282も、複数本のワイヤ
をより合わせて構成されており、フレキシブルである。
また、非常ブレーキ用ケーブル282は、図1に示すよ
うに、車体に取り回して取り付けられたアウタケーシン
グ286により案内されている。
【0038】非常ブレーキ用ケーブル282は、左後輪
の機械式ドラムブレーキ36と右後輪の機械式ドラムブ
レーキ36とにそれぞれ設けられており、それら2本の
非常ブレーキ用ケーブル282の他端部は、図1に示す
ように、マニュアルブレーキ制御装置300を介してブ
レーキペダル34に機械的に連携させられている。
【0039】図5には、そのマニュアルブレーキ制御装
置300が拡大して示されるとともにブレーキペダル装
置302も併せて示されている。ブレーキペダル装置3
02は、車体に位置固定に取り付けられたペダルブラケ
ット304を備えている。このペダルブラケット304
は、ブレーキペダル34をそれの基端部(回動支持点)
において、車両左右方向に延びる一軸線回りに回動可能
に支持している。ブレーキペダル34の非操作位置がス
トッパ306により規定される一方、ブレーキペダル3
4がリターンスプリング308によりストッパ304に
向かって付勢されている。ブレーキペダル34はクレビ
ス310(回動連結機構の一例)を介して、車両前後方
向に移動可能なプッシュロッド312の後端部(図にお
いて右側の端部)に相対回動可能に係合させられてお
り、それにより、ブレーキペダル34の回動がプッシュ
ロッド312の移動に変換される。
【0040】マニュアルブレーキ制御装置300は、車
体に位置固定に取り付けられたハウジング314を備え
ている。このハウジング314には第1ピストン316
と第2ピストン318とが互いに同軸に、かつ車体前後
方向に摺動可能に嵌合されている。第1ピストン316
は第2ピストン318より車体後側に配置されている。
それら両ピストン316,318は相対移動が可能とさ
れている。第1ピストン316の後端部(図において右
側の端部)にプッシュロッド312の前端部(図におい
て左側の端部)が係合させられている。ブレーキペダル
34の操作力Fがプッシュロッド312により第1ピス
トン316に、その第1ピストン316が前進する向き
に(図において左方に)入力されるようになっており、
それにより、第1ピストン316がブレーキペダル34
と機械的に連動させられる。第1ピストン316とハウ
ジング314との間には弾性部材としてのスプリング3
20が設けられている。このスプリング320は、第1
ピストン316をプッシュロッド312に接近する向
き、すなわち、ブレーキペダル34が非操作位置に向か
う向きに常時付勢する。したがって、電動式ドラムブレ
ーキ32の正常時に、ブレーキペダル34が操作されれ
ば、その操作力Fに応じた操作ストロークがブレーキペ
ダル34に付与されるため、電動式ドラムブレーキ32
の作動時に、従来の液圧式ブレーキシステムにおけると
同等に良好なブレーキ操作フィーリングが得られる。す
なわち、本実施形態においては、第1ピストン316と
スプリング320とが互いに共同して操作ストローク付
与機構321を構成しているのである。
【0041】第1ピストン316からは係合突起322
(係合部)が第2ピストン318に向かって同軸に延び
出させられている。第2ピストン318の後退端位置は
ストッパ324により規定されるが、その後退端位置、
すなわち、両ピストン316,318間の隙間が、ブレ
ーキペダル34が非操作位置(図示の位置)にある状態
で係合突起322が第2ピストン318に係合せず、操
作力Fが基準値F0 を超えたときに第1ピストン316
が第2ピストン318に係合するように設計されてい
る。その基準値F0 は例えば、図6にグラフで示すよう
に、電動式ディスクブレーキ22も電動式ドラムブレー
キ32も正常である状態で、普通では発生しない程度に
高い減速度、例えば1.2Gが車体に発生するときの操
作力Fの大きさに設定することができる。万が一、電動
式ディスクブレーキ22も電動式ドラムブレーキ32も
正常である状態で、操作力Fがそのように設定された基
準値F0 を超えた後には、後に詳述するように、第2ピ
ストン318の作動により機械式ドラムブレーキ36の
作動も同時に行われるため、同図のグラフに示すよう
に、車体減速度の勾配が増加することになる。
【0042】図5に示すように、第2ピストン318
は、レバー装置326を介して左右後輪用の2本の非常
ブレーキ用ケーブル282の他端部に連結されている。
【0043】レバー装置326は、レバー328と、車
体に位置固定に取り付けられたレバーブラケット330
とを備えている。レバーブラケット330は、レバー3
28をそれの基端部(支点)において、第2ピストン3
18の軸線を含む一平面内で回動可能に支持している。
レバー328は、その中間部(力点)においてクレビス
332を介して第2ピストン318の前端部に係合させ
られる一方、リターンスプリング334により第2ピス
トン318に向かって常時付勢されている。結局、第2
ピストン318はそのリターンスプリング334により
後退端位置に常時付勢されることになる。レバー328
の自由端部(作用点)はクレビス336を介して左右後
輪用の2本の非常ブレーキ用ケーブル282の他端部に
連結されている。したがって、第2ピストン318が前
進させられれば(図において左方に移動させられれ
ば)、レバー328が第2ピストン318により回動さ
せられ(図において時計回りに回動させられ)、その結
果、2本の非常ブレーキ用ケーブル282が図において
左方に引っ張られてアウタケーシング286から引き出
される。このとき、第2ピストン318のストロークが
レバー328により拡大されたストロークで非常ブレー
キ用ケーブル282が駆動されることになる。なお、図
において符号338は、非常ブレーキ用ケーブル282
のアウタケーシング286を固定するために車体に取り
付けられているケーブル固定用ブラケットを示してい
る。
【0044】電動式ドラムブレーキ32の正常時には、
ブレーキペダル34が操作されれば、図3に示すよう
に、シュー拡張アクチュエータ250により常用ブレー
キ用ケーブル240に引張力が付与され、それにより、
レバー230が一対のブレーキシュー210a,210
bが拡張する向き(以下、単に「シュー拡張方向」とい
う)に回動させられる。このとき、非常ブレーキ用ケー
ブル282は、前述のように可撓性を有するため、撓ま
せられる。したがって、本実施形態においては、電動式
ドラムブレーキ32によるブレーキシュー210a,2
10bの作動がマニュアルブレーキ制御装置300によ
り阻害されることが防止される。
【0045】また、電動式ドラムブレーキ32の故障時
には、ブレーキペダル34が操作されれば、ブレーキペ
ダル34により非常ブレーキ用ケーブル282に引張力
が付与され、それにより、レバー230がシュー拡張方
向に回動させられる。このとき、常用ブレーキ用ケーブ
ル240は、前述のように、非常ブレーキ用ケーブル2
82と同様に可撓性を有するため、撓ませられる。した
がって、本実施形態においては、機械式ドラムブレーキ
36によるブレーキシュー210a,210bの作動が
電動式ドラムブレーキ32により阻害されることも防止
される。
【0046】以上要するに、本実施形態においては、同
じレバー230に連結されて互いに異なる時期に作用さ
せられる2つのケーブル240,282が共に変形可能
であるため、一方のケーブルの作用が他方のケーブルに
よって阻害されることがない。
【0047】以上、このブレーキシステムのハードウェ
ア構成を説明したが、次にソフトウェア構成を説明す
る。
【0048】図1に示すように、ECU50は、CPU
340,ROM342およびRAM344を含むコンピ
ュータ346を主体として構成されている。このECU
50の入力側にはいくつかのセンサおよびスイッチが接
続されている。そのいくつかのセンサおよびスイッチに
は、操作力センサ348,ブレーキペダルスイッチ35
0,パーキングペダルスイッチ351,アクセルペダル
スイッチ352,アクセルペダル操作量センサ353,
舵角センサ354,ヨーレイトセンサ355,前後加速
度センサ356,横加速度センサ358,4輪分の車輪
速センサ360,4輪分のモータ回転位置センサ362
および4輪分のモータ電流センサ364がある。
【0049】操作力センサ348は、ブレーキペダル3
4の操作力Fを検出し、その大きさを規定する信号を出
力する。ブレーキペダルスイッチ350は、主ブレーキ
操作センサの一例であり、ブレーキペダル34の非操作
時にはOFF信号(第1信号)、操作時にはON信号
(第2信号)を出力する。パーキングペダルスイッチ3
51は、パーキングブレーキ操作センサの一例であり、
パーキングペダル42の非操作時にはOFF信号(第1
信号)、操作時にはON信号(第2信号)を出力する。
アクセルペダルスイッチ352は、加速操作センサの一
例であり、アクセルペダル44の非操作時にはOFF信
号(第1信号)、操作時にはON信号(第2信号)を出
力する。アクセルペダル操作量センサ353は、加速操
作量センサの一例であり、アクセルペダル44の操作量
を検出し、その操作量を規定する信号を出力する。舵角
センサ354は、車両旋回量センサの一例であり、ステ
アリングホイール46の回転操作角を検出し、その大き
さを規定する信号を出力する。ヨーレイトセンサ355
は、車両のヨーレイトを検出し、それを規定する信号を
出力する。前後加速度センサ356は、車体の前後方向
における減速度GFRを検出し、その高さを規定する信号
を出力する。横加速度センサ358は、車体の横方向に
おける減速度GLRを検出し、その高さを規定する信号を
出力する。各車輪速センサ360は、各輪の車輪速を検
出し、その大きさを規定する信号を出力する。各モータ
回転位置センサ362は、各輪のモータ20,30の回
転位置を検出し、その回転位置を規定する信号を出力す
る。各モータ電流センサ364は、各輪のモータ20,
30のコイルに実際に供給された電流を検出し、その実
供給電流値を規定する信号を出力する。
【0050】一方、ECU50の出力側には、第1およ
び第2ドライバ366,368が接続されている。第1
ドライバ366は、電源としての第1バッテリ370と
左右前輪の電動式ディスクブレーキ22のモータ20と
の間に設けられている。一方、第2ドライバ368は、
電源としての第2バッテリ372と左右後輪の電動式ド
ラムブレーキ32のモータ30との間に設けられてい
る。ブレーキペダル34の操作時には、ECU50から
各ドライバ366,368に指令が供給され、その指令
に応じて各ドライバ366,368が電流を各バッテリ
370,372から各モータ20,30に供給する。
【0051】本実施形態においては、電源として主バッ
テリ374も設けられている。この主バッテリ374
は、第1および第2バッテリ370,372から独立し
ている。そして、この主バッテリ374により、車両の
電気部品のうちモータ20,30を除くものが作動させ
られる。したがって、ECU50は、第1および第2バ
ッテリ370,372によってではなく、主バッテリ3
74により作動させられることになる。ただし、主バッ
テリ374と第1バッテリ370とを共通化したり、主
バッテリ374と第2バッテリ372とを共通化した
り、主バッテリ374と第1および第2バッテリ37
0,372を共通化することが可能である。
【0052】さらに、ECU50の出力側には、エンジ
ン10の図示しないエンジン出力制御装置(スロットル
制御装置,燃料供給制御装置,点火時期制御装置等)
と、A/T12の図示しない変速制御装置(変速ソレノ
イド等を含む)とが接続されている。ECU50は、車
両駆動時に、駆動車輪のスピンを抑制すべく、それらエ
ンジン出力制御装置および変速制御装置に駆動力を抑制
する信号を出力する。すなわち、ECU50は、トラク
ション制御も実行するようになっているのである。
【0053】さらにまた、ECU50の出力側には、ブ
レーキ警告器としてのブレーキ警告ランプ376と、摩
耗警告器としての摩耗警告ランプ378とが設けられて
いる。ブレーキ警告ランプ376は、電動式ディスクブ
レーキ22または電動式ドラムブレーキ32に電気的な
故障が発生したときに点灯されて故障発生の事実を運転
者に警告する。これに対して、摩耗警告ランプ378
は、各輪毎に設けられて各輪の摩擦材の摩耗量が規定値
を超えたと推定されたときに点灯されて摩耗量過大化の
事実を運転者に警告する。なお、ブレーキ警告器は、運
転者に視覚的に警告するブレーキ警告ランプ376に代
えて、聴覚的に警告するブレーキ警告ブザーとしたり、
両者を併用することができる。
【0054】コンピュータ346のROM342には、
ブレーキ制御ルーチン,ブレーキ警告ルーチンおよびパ
ーキング制御ルーチンを始めとする各種ルーチンが記憶
されている。
【0055】ブレーキ制御ルーチンは、各種のブレーキ
制御を実行する。各種のブレーキ制御には、基本制御,
アンチロック制御,トラクション制御および車両安定性
制御(以下、「VSC」という)がある。「基本制御」
は、操作力センサ348,ブレーキペダルスイッチ35
0,モータ回転位置センサ362およびモータ電流セン
サ364からの出力信号に基づき、車両の制動力前後配
分を考慮するとともに、モータ回転位置およびモータ電
流のそれぞれの実際値を監視しつつ、操作力Fに対応す
る車体減速度が実現されるようにモータ20,30を制
御することである。「アンチロック制御」は、ブレーキ
ペダルスイッチ350,車輪速センサ360,モータ回
転位置センサ362およびモータ電流センサ364から
の出力信号に基づき、車両制動時に各輪のロック傾向が
過大にならないように各モータ20,30により各輪の
制動トルクを制御することである。「トラクション制
御」は、アクセルペダルスイッチ352,アクセルペダ
ル操作量センサ353,車輪速センサ360,モータ回
転位置センサ362およびモータ電流センサ364から
の出力信号に基づき、車両駆動時に駆動車輪のスピン傾
向が過大にならないように各モータ20,30により各
駆動車輪の駆動トルクを制御することである。「VS
C」は、舵角センサ354,ヨーレイトセンサ355,
横加速度センサ358,車輪速センサ360,モータ回
転位置センサ362およびモータ電流センサ364から
の出力信号に基づき、車両のドリフトアウト傾向および
スピン傾向が過大にならないように左右輪間の制動力差
により車両のヨーモーメントを制御することである。
【0056】以下、各ルーチンの内容を具体的に説明す
る。
【0057】ブレーキ制御ルーチンは図7にフローチャ
ートで表されている。本ルーチンは車両のイグニション
スイッチがONに操作されている間、繰り返し実行され
る。本ルーチンの各回の実行時にはまず、ステップS1
(以下、単に「S1」で表す。他のステップについても
同じとする)において、ブレーキペダルスイッチ350
(図において、「ブレーキペダルSW」で表す。他のス
イッチについても同じとする)がONであるか否か、す
なわち、ブレーキ操作時であるか否かが判定される。O
Nであれば判定がYESとなり、S2において、基本制
御が行われる。その後、S3において、アンチロック制
御が必要であるか否か、すなわち、車輪に過大なロック
傾向が発生したか否かが判定される。今回はその必要が
ないと仮定すれば判定がNOとなり、本ルーチンの一回
の実行が直ちに終了するが、その必要があると仮定すれ
ば判定がYESとなり、S4において、アンチロック制
御が実行される。続いて、S5において、そのアンチロ
ック制御の継続的実行が不要となったか否かが判定され
る。不要とならない限り判定がNOとなってS4に戻
る。不要となれば判定がYESとなり、本ルーチンの一
回の実行が終了する。
【0058】これに対して、ブレーキペダルスイッチ3
50がOFFである場合には、S1の判定がNOとな
り、S6において、トラクション制御が必要であるか否
か、すなわち、駆動車輪に過大なスピン傾向が発生した
か否かが判定される。今回はその必要があると仮定すれ
ば判定がYESとなり、S7において、トラクション制
御が実行される。続いて、S8において、そのトラクシ
ョン制御の継続的実行が不要となったか否かが判定され
る。不要とならない限り判定がNOとなってS7に戻
る。不要となれば判定がYESとなり、本ルーチンの一
回の実行が終了する。
【0059】また、ブレーキペダルスイッチ350がO
FFであり、かつ、トラクション制御が必要でない場合
には、S1の判定がNO、S6の判定もNOとなり、S
9において、VSCが必要であるか否か、すなわち、車
両に過大なドリフトアウト傾向またはスピン傾向が発生
したか否かが判定される。今回はその必要があると仮定
すれば判定がYESとなり、S10において、VSCが
実行される。続いて、S11において、そのVSCの継
続的実行が不要となったか否かが判定される。不要とな
らない限り判定がNOとなってS10に戻る。不要とな
れば判定がYESとなり、本ルーチンの一回の実行が終
了する。
【0060】ブレーキ警告ルーチンは図8にフローチャ
ートで表されている。本ルーチンも車両のイグニション
スイッチがONに操作されている間、繰り返し実行され
る。本ルーチンの各回の実行時にはまず、S21におい
て、電動式ディスクブレーキ22または電動式ドラムブ
レーキ32(以下、それらを「電気ブレーキ」と総称す
る)が電気的に故障したか否かが判定される。電気ブレ
ーキに関係する電気系統(第1および第2ドライバ36
6,368,第1および第2バッテリ370,372,
モータ20,30,それらを相互に接続する電線を含
む)が故障したか否かが判定されるのである。故障した
ならば判定がYESとなり、S22において、ブレーキ
警告ランプ376が点灯させられる。これに対して、故
障しないならば判定がNOとなり、S22がスキップさ
れ、それにより、ブレーキ警告ランプ376が消灯状態
とされる。
【0061】その後、S23において、各輪毎に電気ブ
レーキ22,32の摩擦材(ブレーキパッド106およ
びブレーキライニング216)の摩耗量が推定される。
摩耗量は例えば、車両制動時における操作力Fとモータ
回転位置との関係に基づいて推定することができる。モ
ータ回転位置は摩擦材の摩耗量と車輪の制動トルクとに
応じて変化する一方、ブレーキ制御においては、操作力
Fに応じた高さの車体減速度すなわち車輪制動トルクが
発生するようにモータ20,30が制御され、よって、
車輪制動トルクと操作力Fとが互いに対応すると考える
ことができ、その結果、操作力Fが同じであるにもかか
わらずモータ回転位置が摩擦材を回転体に接近させる向
きにずれていれば、摩擦材が摩耗していることが分か
り、また、モータ回転位置の実際値の正規値からのずれ
量は摩擦材の摩耗量に応じて変化するからである。続い
て、S24において、各輪毎に推定された摩耗量が規定
値より大きいか否かが判定される。規定値より大きいと
仮定すれば判定がYESとなり、S25において、該当
する車輪に対応する摩耗警告ランプ378が点灯させら
れる。これに対して、摩耗量が規定値より大きくないと
推定された車輪については、判定がNOとなり、S25
がスキップされ、それにより、その車輪に対応する摩耗
警告ランプ378が消灯状態とされる。以上で本ルーチ
ンの一回の実行が終了する。
【0062】パーキング制御ルーチンは図9にフローチ
ャートで表されている。本ルーチンは車両のイグニショ
ンスイッチがONに操作されているか否かを問わず、繰
り返し実行される。本ルーチンの各回の実行時にはま
ず、S41において、パーキングペダルスイッチ351
がOFFからONに変化したか否か、すなわち、パーキ
ングブレーキ操作の開始時であるか否かが判定される。
今回はOFFからONに変化したと仮定すれば判定がY
ESとなり、S42において、左右前輪の電動式ディス
クブレーキ22(図において、単に「前輪ブレーキ」で
表す)のモータ20がそれを正回転させる向き(ブレー
キパッド106をディスク104に接近させる向き)に
ONされる。その後、S43において、モータ回転位置
センサ362からの出力信号に基づき、ブレーキパッド
106がディスク104を押圧する押圧位置(例えば、
押圧し始める位置)に到達したか否かが判定される。そ
の押圧位置に到達しない限り判定がNOとなってS42
に戻るが、押圧位置に到達すれば判定がYESとなり、
S44に移行する。このS44においては、モータ20
がOFFされる。その結果、モータ20がそれの静止保
持トルクを利用してブレーキパッド106を押圧位置に
保持することになる。以上で本ルーチンの一回の実行が
終了する。
【0063】これに対して、パーキングペダルスイッチ
351がOFFからONに変化しない場合には、S41
の判定がNOとなり、S45において、パーキングペダ
ルスイッチ351がONからOFFに変化したか否か、
すなわち、パーキングブレーキ操作の終了時であるか否
かが判定される。ONからOFFに変化したと仮定すれ
ば判定がYESとなり、S46において、左右前輪の電
動式ディスクブレーキ22のモータ20がそれを逆回転
させる向き(ブレーキパッド106をディスク104か
ら離隔する向き)にONされる。その後、S47におい
て、モータ回転位置センサ362からの出力信号に基づ
き、ブレーキパッド106が初期位置に到達したか否か
が判定される。初期位置に到達しない限り判定がNOと
なってS46に戻るが、初期位置に到達すれば判定がY
ESとなり、S44に移行する。
【0064】また、パーキングペダルスイッチ351が
OFFからONに変化した時でもONからOFFに変化
した時でもない時、すなわち、パーキングブレーキスイ
ッチ351がOFFし続けているかまたはONし続けて
いる時には、S41の判定もS45の判定もNOとな
り、直ちに本ルーチンの一回の実行が終了し、その結
果、ブレーキパッド106の位置が保持される。
【0065】なお付言すれば、本実施形態においては、
ブレーキの効きに関し、電動式ドラムブレーキ32と機
械式ドラムブレーキ36とが同等となるように設計され
ている。電動式ドラムブレーキ32が単独で作動する場
合に実現されるブレーキの効きと、機械式ドラムブレー
キ36が単独で作動する場合に実現されるブレーキの効
きとが同じレベルとなるように設計されているのであ
る。このことを示すのが図10のグラフである。このグ
ラフにおいては、横軸に操作力F、縦軸にレバー回動量
が取られている。レバー回動量は、図3に示すレバー2
30の回動量を意味するものであり、一方、車体減速度
は、そのレバー回動量に応じて増加することから、結
局、レバー回動量は、車体減速度に応じて増加すること
となる。
【0066】これに対して、図11には、ブレーキの効
きを、電動式ドラムブレーキ32に関して機械式ドラム
ブレーキ36に関するより強くした場合の一例がグラフ
で示されている。ブレーキの効きの関係をこのように設
定した場合には、電動式ドラムブレーキ32の正常時
に、操作力Fの大小を問わず、操作力Fによって非常ブ
レーキ用ケーブル282を引っ張っても、レバー回動量
は変化せず、よって、車体減速度も変化しない。同図に
示す関係を採用する場合には、電動式ドラムブレーキ3
2の正常時に、レバー回動量がその電動式ドラムブレー
キ32の作動状態に応じて一義的に決まり、機械式ドラ
ムブレーキ36はそのレバー回動量に影響を及ぼすこと
はないのである。
【0067】ただし、電動式ドラムブレーキ32の正常
時に、アンチロック制御等が行われれば、レバー回動量
の実際値が図示の値(電動式ドラムブレーキ32が単独
で作動した場合の値)から減少する場合があり、そし
て、その実際値が、同図に示す機械式ドラムブレーキ3
6の場合の値(機械式ドラムブレーキ36が単独で作動
した場合の値)より減少しようとする場合がある。この
場合には、機械式ドラムブレーキ36の存在により、レ
バー回動量がその要求通りには減少せず、よって、アン
チロック制御等が予定通りには実行されなくなる。した
がって、たとえ同図に示すようにブレーキの効きの関係
を設定した場合でも、電動式ドラムブレーキ32の正常
時には、非常ブレーキ用ケーブル282を引っ張らない
ことが望ましい。
【0068】もっとも、同図に示すように、両ブレーキ
32,36間におけるブレーキの効きの差が操作力Fが
増加するにつれて増加することに着目すれば、電動式ド
ラムブレーキ32の正常時に非常ブレーキ用ケーブル2
82の引張を許容する一方で、その引張が開始されると
きの操作力Fの大きさを、1.2G(図6参照)という
高い車体減速度に対応する値より小さく設定した場合で
あっても、電動式ドラムブレーキ32の正常時に非常ブ
レーキ用ケーブル282の引張を完全に禁止する場合と
ほぼ同等の効果を得ることができる場合もあると考えら
れる。
【0069】また、同図に示すようにブレーキの効きの
関係を設定する場合、機械式ドラムブレーキ36が単独
で作動した場合のレバー回動量の値は例えば、そのレバ
ー回動量により実現される車体減速度の高さが、バキュ
ームブースタを備えた従来の液圧式ブレーキシステムに
おいて、そのバキュームブースタの負圧室に負圧が全く
発生しなくなったときにそのブレーキシステムにより実
現される車体減速度を下回らないように設定することが
望ましい。
【0070】さらにまた付言すれば、本実施形態におい
ては、互いに独立な第1および第2バッテリ370,3
72が左右の前輪対と左右の後輪対とに関してそれぞれ
設けられているが、例えば、それら4輪のうち対角位置
にある2つの車輪対に関して第1および第2バッテリ3
70,372をそれぞれ設けることもできる。
【0071】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、第2ピストン318を第1ピストン31
6に対して相対移動可能に設けるとともに、その第2ピ
ストン318を、操作力Fが基準値を超えないうちは第
1ピストン316が係合しないようにした構成が「予定
外作動防止装置」の一例を構成し、非常ブレーキ用ケー
ブル282が「電気ブレーキ作動阻害防止装置」の一例
および「第1連結部材」の一例を構成し、常用ブレーキ
用ケーブル240が「マニュアルブレーキ作動阻害防止
装置」の一例および「第2連結部材」の一例を構成し、
マニュアルブレーキ制御装置300が「連携装置」の一
例を構成し、スプリング320が「弾性部材」の一例を
構成しているのである。
【0072】本実施形態によれば、電動式ドラムブレー
キ32の故障時、例えば、第2バッテリ372の充電が
不十分である時や、電動式ドラムブレーキ32に使用さ
れている電線が切断されてしまった時に、運転者は機械
式ドラムブレーキ36により車両を制動できるという効
果が得られるが、さらに、次のような効果も得られる。
すなわち、電動式ドラムブレーキ32は、車両のイグニ
ションスイッチがONであれば作動可能であるが、OF
Fであれば作動不能であるのが普通である。一方、イグ
ニションスイッチのOFF状態で車両を走行させ、その
走行状態で車両を制動することが必要になる場合があ
る。例えば、車両の電気系統は正常であるがエンジンま
たは操舵系に異常が発生した場合には、その車両が作業
車により適当な場所まで牽引される場合があるが、その
牽引中に車両を制動させることが必要となる場合があ
り、一方、牽引中は一般にイグニションスイッチがOF
Fにされるからである。そして、本実施形態によれば、
運転者はイグニションスイッチがOFFでも車両を制動
できるため、従来のブレーキシステムと同様に、車両牽
引中にも車両を制動できる。
【0073】次に、本発明の第2実施形態を説明する。
ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多
いため、共通の要素については同一の符号を使用するこ
とによって詳細な説明を省略し、異なる要素についての
み詳細に説明する。
【0074】図12に示すように、本実施形態のマニュ
アルブレーキ制御装置388においては、さらに、第2
ピストン318が後退端位置(非作動位置)から前進し
たことを検出する手段としての第2ピストン作動スイッ
チ390が設けられている。この第2ピストン作動スイ
ッチ390は、近接スイッチであり、ハウジング314
に、第2ピストン318が後退端位置から少し前進した
ときにその第2ピストン318に最も近づく位置におい
て取り付けられている。
【0075】本実施形態におけるECU50のROM3
42には、さらに、異常作動防止ルーチンが記憶されて
いる。本実施形態においては、第1実施形態におけると
同様に、電動式ドラムブレーキ32の正常時には第1ピ
ストン316が第2ピストン318に係合せず、機械式
ドラムブレーキ36が作動しないように設計されている
が、ブレーキペダル34が異常に強く操作された場合に
は、第1ピストン316が予定外に第2ピストン318
に係合してしまう可能性がある。一方、電動式ドラムブ
レーキ32の正常時に第1ピストン316が第2ピスト
ン318に係合すると、電動式ドラムブレーキ32のみ
ならず機械式ドラムブレーキ36も作動させられてしま
い、電動式ドラムブレーキ32による車輪制動力の自動
制御、すなわち、アンチロック制御,トラクション制御
およびVSCに異常を来す可能性がある。例えば、その
自動制御中に車輪制動力を低下させることが必要となっ
たために電動式ドラムブレーキ32がブレーキライニン
グ216a,216bがドラム204から離隔されるよ
うに作動しても、機械式ドラムブレーキ36がブレーキ
ライニング216a,216bがドラム204に接近す
るように作動する限り、ブレーキライニング216a,
216bがドラム204から離隔されず、よって、車輪
制動力を予定通りに低下させることができないのであ
る。そこで、異常作動防止ルーチンは、電動式ドラムブ
レーキ32の正常時に第2ピストン318が作動を開始
したならば、アンチロック制御,トラクション制御およ
びVSCを禁止するように設計されている。
【0076】この異常作動防止ルーチンが図13にフロ
ーチャートで表されている。まず、S61において、電
動式ドラムブレーキ32が正常であるか否かが判定され
る。この判定は図8のS21におけると同様に行われ、
このことは、電気ブレーキに関する後述の同様の判定に
ついても同様である。電動式ドラムブレーキ32が正常
でなければS62において制御禁止フラグがOFFされ
る。制御禁止フラグは、OFFでアンチロック制御,ト
ラクション制御およびVSCを許可することを意味し、
ONで禁止することを意味するフラグである。これに対
して、電動式ドラムブレーキ32が正常であれば、S6
1の判定がYESとなり、S63において、第2ピスト
ン作動スイッチ390がONであるか否か、第2ピスト
ン318が作動位置にあるか否かが判定される。ONで
なければ判定がNOとなり、S62において、制御禁止
フラグがOFFされ、また、ONであれば判定がYES
となり、S64において、制御禁止フラグがONされ
る。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0077】図14には、ROM342に記憶されてい
るブレーキ制御ルーチンがフローチャートで表されてい
る。本ルーチンは第1実施形態におけるものに対して2
つのステップS1a,S2aが追加されている。それら
ステップは上記制御禁止フラグを監視するとともに、そ
のフラグを考慮してブレーキ制御を行うために設けられ
ている。
【0078】S1aは、S1とS6との間に設けられ、
制御禁止フラグがONであるか否かを判定し、ONであ
れば判定がYESとなってS6〜S11、すなわち、ト
ラクション制御およびVSCを実行するステップをスキ
ップさせ、一方、OFFであれば判定がNOとなってS
6〜S11の実行を許可する。これに対して、S2a
は、S2とS3との間に設けられ、制御禁止フラグがO
Nであるか否かを判定し、ONであれば判定がYESと
なってS3〜S5、すなわち、アンチロック制御を実行
するステップをスキップさせ、一方、OFFであれば判
定がNOとなってS3〜S5の実行を許可する。
【0079】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、第2ピストン作動スイッチ390と、E
CU50のうち図13のS61〜S64ならびに図14
のS1aおよびS2aを実行する部分とが互いに共同し
て「電気ブレーキ作動阻害防止装置」の一例を構成して
いるのである。
【0080】次に、本発明の第3実施形態を説明する。
ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多
いため、共通の要素については同一の符号を使用するこ
とによって詳細な説明を省略し、異なる要素についての
み詳細に説明する。
【0081】図15に示すように、本実施形態のマニュ
アルブレーキ制御装置406においては、第2ピストン
作動許可・禁止装置408が設けられている。本実施形
態においては、第2ピストン318がハウジング314
に実質的に気密かつ摺動可能に嵌合されている。それに
より、第2ピストン318の前方において第2ピストン
318と固定部材としてのハウジング314との共同に
より制御液室410が形成されている。制御液室410
の容積は第2ピストン318の移動位置に応じて変化
し、具体的には、第2ピストン318の前進時には減少
する一方、後退時には増加する。図において符号41
2,414はシールを示している。
【0082】制御液室410は、作動液を蓄積するリザ
ーバ416と液通路418により接続されており、その
液通路418の途中にソレノイドバルブ420が設けら
れている。このソレノイドバルブ420は、ソレノイド
のON/OFF状態に応じて閉状態と開状態とに切り換
わり、具体的には、ソレノイドのOFF状態(非励磁状
態)では閉状態、ON状態(励磁状態)では開状態に切
り換わる。閉状態では、制御液室410とリザーバ41
6との間における作動液の双方向の流れが阻止され、そ
れにより、制御液室410の容積変化が阻止され、その
結果、第2ピストン318の作動が禁止される。これに
対して、開状態では、制御液室410とリザーバ416
との間における作動液の双方向の流れが許容され、それ
により、制御液室410の容積変化が許容され、その結
果、第2ピストン318の作動が許可される。
【0083】本実施形態のECU50のROM342に
はさらに、第2ピストン作動許可・禁止ルーチンが記憶
されている。この第2ピストン作動許可・禁止ルーチン
は、電動式ドラムブレーキ32が故障しているか否かに
応じてソレノイドバルブ420を制御することにより、
第2ピストン318の作動許可・禁止状態を制御するも
のである。
【0084】この第2ピストン作動許可・禁止ルーチン
は図16にフローチャートで表されている。まず、S8
1において、電動式ドラムブレーキ32が故障している
か否かが判定される。故障していなければ判定がNOと
なり、S82において、ソレノイドバルブ420のソレ
ノイドにそれをOFFにするための信号が出力される。
それにより、ソレノイドバルブ420が閉状態とされ、
制御液室410の容積変化が阻止され、ひいては、第2
ピストン318の作動が禁止される。その結果、電動式
ドラムブレーキ32の正常時に第2ピストン318が予
定外に作動して機械式ドラムブレーキ36を予定外に作
動させることが防止される。これに対して、電動式ドラ
ムブレーキ32が故障していればS81の判定がYES
となり、S83において、ソレノイドバルブ420のソ
レノイドにそれをONにするための信号が出力される。
それにより、ソレノイドバルブ420が開状態とされ、
制御液室410の容積変化が許容され、ひいては、第2
ピストン318の作動が許可される。その結果、電動式
ドラムブレーキ32の故障時に第2ピストン318が作
動して機械式ドラムブレーキ36が作動することが許可
される。いずれの場合にも、以上で本ルーチンの一回の
実行が終了する。
【0085】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、制御液室410と、リザーバ416と、
液通路418と、ソレノイドバルブ420と、ECUの
うち図16のS81〜S83を実行する部分とが互いに
共同して第2ピストン作動許可・禁止装置408を構成
しているのである。また、その第2ピストン作動許可・
禁止装置408と、第2ピストン318を第1ピストン
316に対して相対移動可能に設けるとともに、その第
2ピストン318を、操作力Fが基準値を超えないうち
は第1ピストン316が係合しないようにした構成とが
それぞれ「予定外作動防止装置」の一例を構成している
のである。
【0086】次に、本発明の第4実施形態を説明する。
ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多
いため、共通の要素については同一の符号を使用するこ
とによって詳細な説明を省略し、異なる要素についての
み詳細に説明する。
【0087】図17に示すように、本実施形態のマニュ
アルブレーキ制御装置430においては、第2ピストン
作動許可・禁止装置432が設けられている。本実施形
態においては、第1および第2ピストン316,318
がハウジング314に実質的に気密かつ摺動可能に嵌合
されている。図において符号434,436,438は
いずれもシールを示している。両ピストン316,31
8がハウジング314に嵌合される結果、第1ピストン
316の前方と第2ピストン318の前方とにそれぞれ
第1制御液室440と第2制御液室442とが形成され
ている。第1制御液室440は、第1ピストン316と
可動部材としての第2ピストン318との間に設けら
れ、一方、第2制御液室442は、第2ピストン318
と固定部材としてのハウジング314との間に設けられ
ている。なお、本実施形態においては、第1実施形態の
ストッパ324が省略されてスプリング320の前端部
が直接に第2ピストン318に係合させられている。ま
た、第1実施形態の係合突起322も省略されている。
【0088】第1および第2制御液室440,442は
それぞれ第1および第2液通路444,446により、
作動液を蓄積するリザーバ448に接続されている。第
2制御液室442の容積は、先の第2実施形態における
と同様に、第2ピストン318の前進・後退に応じて減
少・増加する。したがって、第2制御液室442とリザ
ーバ448との間における作動液の双方向の流れを阻止
すれば、第2ピストン318の作動が禁止される。これ
に対して、第1制御液室440の容積は、第1ピストン
316の移動位置のみならず第2ピストン318の移動
位置によっても変化する。第1ピストン316が第2ピ
ストン318に相対的に接近すれば容積が減少する一
方、相対的に離隔すれば容積が増加するのである。した
がって、第1制御液室440とリザーバ448との間に
おける作動液の双方向の流れを阻止すれば、両ピストン
316,318の相対移動が阻止され、その結果、それ
ら両ピストン316,318が互いに一体的に作動する
状態が実現され、これに対して、その作動液の双方向の
流れを許容すれば、第1ピストン316が単独で作動し
て第2ピストン318に接近する状態が許容される。
【0089】第1および第2液通路444,446の途
中にはそれぞれ第1および第2ソレノイドバルブ45
0,452が設けられている。第1ソレノイドバルブ4
50は、ソレノイドのOFF状態で閉状態、ON状態で
開状態に切り換わる。一方、第2ソレノイドバルブ45
2は、ソレノイドのOFF状態で開状態、ON状態で閉
状態に切り換わる。
【0090】本実施形態のECU50のROM342に
はさらに、第2ピストン作動許可・禁止ルーチンが記憶
されている。この第2ピストン作動許可・禁止ルーチン
は、電動式ドラムブレーキ32が故障しているか否かに
応じて両ソレノイドバルブ450,452を制御するこ
とにより、両ピストン316,318の作動許可・禁止
状態を制御するものである。
【0091】この第2ピストン作動許可・禁止ルーチン
は図18にフローチャートで表されている。まず、S1
01において、電動式ドラムブレーキ32が故障してい
るか否かが判定される。故障していなければ判定がNO
となり、S102において、両ソレノイドバルブ45
0,452のソレノイドにそれをONにするための信号
が出力される。それにより、第1ソレノイドバルブ45
0は開状態、第2ソレノイドバルブ452は閉状態とさ
れる。この状態においては、第1制御液室440の容積
変化が許容されるため、第1ピストン316が第2ピス
トン318に相対的に接近・離隔することが許容され、
また、第2制御液室442の容積変化が阻止されるた
め、第2ピストン318の作動が禁止される。その結
果、電動式ドラムブレーキ32の正常時には、機械式ド
ラムブレーキ36の予定外作動が防止されるとともに、
ブレーキペダル34の操作ストロークの変化が許容され
てペダル操作フィーリングが硬すぎるものになることが
防止される。
【0092】これに対して、電動式ドラムブレーキ32
が故障していればS101の判定がYESとなり、S1
03において、両ソレノイドバルブ450,452のソ
レノイドにそれをOFFするための信号が出力される。
それにより、第1ソレノイドバルブ450は閉状態、第
2ソレノイドバルブ452は開状態とされる。この状態
においては、第1制御液室440の容積変化が阻止され
るため、第1ピストン316が第2ピストン318と一
体的に作動させられ、また、第2制御液室442の容積
変化が許容されるため、第2ピストン318の作動が許
可される。その結果、電動式ドラムブレーキ32の故障
時には、第2ピストン318が第1ピストン316によ
って作動させられて機械式ドラムブレーキ36が作動さ
せられる。
【0093】なお付言すれば、本実施形態においては、
第1実施形態におけるとは異なり、第2ピストン318
がストッパ324を使用しないとともに、第2ピストン
318がスプリング320を受けるようになっている
が、第1実施形態におけると同様にしてストッパ324
を設けるとともに、そのストッパ324がスプリング3
20を受けるようにしてもよい。
【0094】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、第1および第2制御液室440,44
2,第1および第2液通路444,446,リザーバ4
48ならびに第1および第2ソレノイドバルブ450,
452と、ECU50のうち図18のS101〜S10
3を実行する部分とが互いに共同して第2ピストン作動
許可・禁止装置432を構成し、その第2ピストン作動
許可・禁止装置432と、第2ピストン318を第1ピ
ストン316に対して相対移動可能に設けるとともに、
その第2ピストン318を、第1ピストン316からの
作動力を常時受けるようにした構成とがそれぞれ「予定
外作動防止装置」の一例を構成しているのである。
【0095】次に、本発明の第5実施形態を説明する。
ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多
いため、共通の要素については同一の符号を使用するこ
とによって詳細な説明を省略し、異なる要素についての
み詳細に説明する。
【0096】図19に示すように、本実施形態のマニュ
アルブレーキ制御装置468においては、第1実施形態
におけるとは異なり、第1ピストン316と第2ピスト
ン318との間に第1スプリング470が設けられると
ともに、第2ピストン318がその第1スプリング47
0を受けるようになっている。この第1スプリング47
0により、ブレーキペダル34の操作フィーリングが従
来の液圧式ブレーキシステムにおけると同等のものとし
て実現される。
【0097】また、本実施形態においては、第1スプリ
ング470の他に、第2ピストン318とハウジング3
14との間に第2スプリング472も設けられている。
この第2スプリング472は、第1スプリング470か
ら作用する弾性力により第2ピストン318が作動する
タイミングを制御するために設けられている。電動式ド
ラムブレーキ32の正常時には、第2ピストン318が
第1ピストン316によって作動せず、一方、電動式ド
ラムブレーキ32の故障時には、運転者がブレーキペダ
ル34を正常時におけるより強く操作し、その結果、第
1スプリング470の弾性力が正常時におけるより大き
くなったときにはじめて第2スプリング472が圧縮さ
せられ、それにより、第2ピストン318が作動し、そ
の結果、機械式ドラムブレーキ36が作動するようにな
っているのである。
【0098】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、第2ピストン318を第1ピストン31
6に対して相対移動可能に設けるとともに、その第2ピ
ストン318を、第1ピストン316からの作動力を常
時受けるようにした構成と、第2ピストン318に弾性
力を、第1ピストン316の作動力が基準値を超えない
うちは第2ピストン318が作動しないように付与する
スプリング472とが互いに共同して「予定外作動防止
装置」の一例を構成しているのである。
【0099】次に、本発明の第6実施形態を説明する。
ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多
いため、共通の要素については同一の符号を使用するこ
とによって詳細な説明を省略し、異なる要素についての
み詳細に説明する。
【0100】図20に示すように、本実施形態のマニュ
アルブレーキ制御装置488においては、第2ピストン
318がハウジング314に実質的に気密かつ摺動可能
に嵌合されるとともに、この第2ピストン318の前方
において第3ピストン490が実質的に気密かつ摺動可
能に嵌合されている。図において符号492,494は
共にシールを示している。それらピストン318,49
0がハウジング314に摺動可能に嵌合される結果、そ
れらピストン318,490の間に液室496が形成さ
れている。
【0101】第3ピストン490は第2ピストン318
より大径とされている。また、両ピストン318,49
0は液室496内の作動液により力を相互に伝達するよ
うになっている。そのため、第3ピストン490には、
第2ピストン318の作動力が倍力されて伝達される。
したがって、本実施形態によれば、電動式ドラムブレー
キ32の故障時に、操作力Fが倍力されて機械式ドラム
ブレーキ36に伝達されるため、故障時でありながら、
小さい操作力Fにより大きな車輪制動力を発生させ得
る。
【0102】次に、本発明の第7実施形態を説明する。
ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素が多
いため、共通の要素については同一の符号を使用するこ
とによって詳細な説明を省略し、異なる要素についての
み詳細に説明する。
【0103】図21に示すように、本実施形態のマニュ
アルブレーキ制御装置504においては、第1実施形態
におけるとは異なり、第2ピストン318が省略されて
おり、よって、操作力Fが基準値を超えたならば、係合
突起322が直接にレバー328に係合するようになっ
ている。また、レバー装置506は、第1実施形態にお
けるレバー装置326と基本的な構造は共通するが、本
実施形態においては、クレビス332に代えて、レバー
328に対して位置固定の係合部508が設けられてお
り、レバー328をその係合部508を介して係合突起
322に係合させるようになっている。また、本実施形
態においては、レバー328の初期位置を規定するスト
ッパ510が設けられている。なお、ストッパ510
は、図示のように、ハウジング314から独立して設け
てもよいが、ハウジング314に一体的に形成してもよ
い。
【0104】次に、本発明の第8実施形態を説明する。
ただし、本実施形態は第7実施形態(図21)と共通す
る要素が多いため、共通の要素については同一の符号を
使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素
についてのみ詳細に説明する。
【0105】第7実施形態のマニュアルブレーキ制御装
置504においては、レバー装置506が、レバー32
8に支点(クレビス330),力点(係合部508)お
よび作用点(クレビス336)がそれらの順に設定され
た形式とされ、それにより、力点の変位量すなわち第1
ピストン316の作動ストロークが拡大されて作用点す
なわち非常ブレーキ用ケーブル282に伝達されるよう
になっている。これに対して、本実施形態のマニュアル
ブレーキ制御装置528においては、図22に示すよう
に、レバー装置530が、レバー328に支点(クレビ
ス330),作用点(クレビス336)および力点(係
合部508)がそれらの順に設定された形式とされ、そ
れにより、力点に作用する力すなわち第1ピストン31
6の作動力が拡大されて作用点すなわち非常ブレーキ用
ケーブル282に伝達されるようになっている。したが
って、本実施形態によれば、電動式ドラムブレーキ32
の故障時に、操作力Fが倍力されて機械式ドラムブレー
キ36に伝達されるため、故障時でありながら、小さい
操作力Fにより大きな車輪制動力を発生させ得る。
【0106】次に、本発明の第9実施形態を説明する。
ただし、本実施形態は第7実施形態(図21)と共通す
る要素が多いため、共通の要素については同一の符号を
使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素
についてのみ詳細に説明する。
【0107】第7実施形態においては、電動式ドラムブ
レーキ32の故障時であっても、操作力Fが過大となる
と、第1ピストン316によってレバー装置506が作
動させられてしまう。これに対して、本実施形態のマニ
ュアルブレーキ制御装置548においては、図23に示
すように、レバー328の作動を許可・禁止するレバー
作動許可・禁止装置550が設けられている。
【0108】このレバー作動許可・禁止装置550にお
いては、ストッパピン552がソレノイドの磁気力によ
り、ハウジング314と係合部508とに同時に係合す
る係合位置と、少なくとも係合部508から離脱される
離脱位置とに切り換わる。このレバー作動許可・禁止装
置550は、図24に示すように、(a) ストッパピン5
52をそれの軸線方向に摺動可能に嵌合するハウジング
556と、(b) ストッパピン552を離脱位置に向かっ
て付勢するスプリング558と、(c) ON状態で磁気力
を発生させ、その磁気力によってストッパピン552を
スプリング558の弾性力に抗して係合位置に向かって
付勢するソレノイド560とを備えている。図の(a)
は、ストッパピン552が、ハウジング314と係合部
508とにそれぞれ直径方向に形成された係合穴56
2,564から離脱した離脱位置にある状態を示し、一
方、図の(b) は、それら係合穴562,564に同時に
係合した係合位置にある状態を示している。
【0109】本実施形態のECU50のROM342に
はさらに、レバー作動許可・禁止ルーチンが記憶されて
いる。このレバー作動許可・禁止ルーチンは、電動式ド
ラムブレーキ32が故障しているか否かに応じてソレノ
イド560を制御することにより、レバー328の作動
許可・禁止状態を制御するものである。
【0110】このレバー作動許可・禁止ルーチンは図2
5にフローチャートで表されている。まず、S121に
おいて、電動式ドラムブレーキ32が故障しているか否
かが判定される。故障していなければ判定がNOとな
り、S122において、ソレノイド560にそれをON
にするための信号が出力される。それにより、ソレノイ
ドバルブ560が励磁状態とされる。この状態において
は、ストッパピン552が係合位置に位置させられるた
め、第1ピストン316によるレバー328の作動が禁
止される。その結果、電動式ドラムブレーキ32の正常
時には、機械式ドラムブレーキ36の予定外作動が防止
される。
【0111】これに対して、電動式ドラムブレーキ32
が故障していればS121の判定がYESとなり、S1
23において、ソレノイド560にそれをOFFするた
めの信号が出力される。それにより、ソレノイド560
が消磁状態とされる。この状態においては、ストッパピ
ン552が離脱位置に位置させられるため、第1ピスト
ン316によるレバー328の作動が許可される。その
結果、電動式ドラムブレーキ32の故障時には、レバー
328が第1ピストン316によって作動させられて機
械式ドラムブレーキ36が作動させられる。
【0112】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、ストッパピン552,ハウジング55
6,スプリング558およびソレノイド560と、EC
U50のうち図25のS121〜S123を実行する部
分とが互いに共同してレバー作動許可・禁止装置550
を構成し、そのレバー作動許可・禁止装置550と、レ
バー328の係合部508を、操作力Fが基準値を超え
ないうちは第1ピストン316が係合しないように設け
た構成とがそれぞれ「予定外作動防止装置」の一例を構
成しているのである。
【0113】次に、本発明の第10実施形態を説明す
る。ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素
が多いため、共通の要素については同一の符号を使用す
ることによって詳細な説明を省略し、異なる要素につい
てのみ詳細に説明する。
【0114】第1実施形態においては、ブレーキペダル
装置302とレバー装置326との間に操作ストローク
付与機構321が配置されているが、本実施形態におい
ては、図26に示すように、操作ストローク付与機構5
80がマニュアルブレーキ制御装置581のレバー装置
582に関してブレーキペダル装置302とは反対側に
配置されている。
【0115】マニュアルブレーキ制御装置581におい
ては、プッシュロッド312がレバー装置582を貫通
して車体前方に延びており、操作ストローク付与機構5
80はそのプッシュロッド312と同軸にかつそれの先
端部に常時係合する状態で配置されている。操作ストロ
ーク付与機構580は、車体に位置固定に取り付けられ
た有底のハウジング584を備えており、そのハウジン
グ584にピストン586が摺動可能に嵌合されてい
る。ハウジング584の底部とピストン586との間に
スプリング588が配設され、そのスプリング588に
より、ブレーキペダル34を操作する運転者にブレーキ
ペダル34からの反力を付与するとともに、ブレーキペ
ダル34に操作力Fに応じた操作ストロークが付与され
るようになっている。
【0116】レバー装置582は、レバー590を備
え、そのレバー590は一端部においてレバーブラケッ
ト591により車体に、プッシュロッド312の軸線を
含む一平面内で回動可能に取り付けられ、他端部におい
て非常ブレーキ用ケーブル282に連結されている。レ
バー装置582はさらに、レバー590の非作用位置に
規定するストッパ592と、レバー590を非作用位置
に向かって付勢するリターンスプリング594とを備え
ている。
【0117】プッシュロッド312はレバー590とそ
れの中間部において連携させられているが、それらプッ
シュロッド312とレバー590との係合・離脱がソレ
ノイドの磁気力によって制御される。そのために設けら
れているのがレバー作動許可・禁止装置596である。
【0118】このレバー作動許可・禁止装置596は、
図27に示すように、レバー590の中間部に位置固定
に取り付けられたハウジング598を備えている。この
ハウジング598には、ストッパピン600がそれの軸
線方向に摺動可能に嵌合されている。一方、レバー59
0にはプッシュロッド312が、そのストッパピン60
0に近接する位置において摺動可能に嵌合されている。
プッシュロッド312の軸線とストッパピン600の軸
線とは互いに直角とされている。プッシュロッド312
のうちストッパピン600の先端部に対向する部分に
は、そのストッパピン600の先端部が係合可能な係合
凹部602が形成されている。レバー作動許可・禁止装
置596はさらに、(a) ストッパピン600を係合凹部
602に係合する向きに付勢するスプリング604と、
(b) そのスプリング604の弾性力に抗してストッパピ
ン600を係合凹部602から離脱する向きに付勢する
磁気力を発生させるソレノイド606とを備えている。
したがって、ソレノイド606のOFF状態では、図の
(a) に示すように、スプリング604によりストッパピ
ン600が係合凹部602に係合させられ、その結果、
レバー590がプッシュロッド312と一体的に作動さ
せられる。一方、ソレノイド606のON状態では、図
の(b) に示すように、そのソレノイド606の磁気力に
よりスプリング604の弾性力に抗してストッパピン6
00が係合凹部602から離脱させられ、その結果、プ
ッシュロッド312によりレバー590が作動させられ
ることが禁止される。
【0119】本実施形態のECU50のROM342に
はさらに、レバー作動許可・禁止ルーチンが記憶されて
いる。このレバー作動許可・禁止ルーチンは、電動式ド
ラムブレーキ32が故障しているか否かに応じてソレノ
イド606を制御することにより、レバー590の作動
許可・禁止状態を制御するものである。
【0120】このレバー作動許可・禁止ルーチンは図2
8にフローチャートで表されている。まず、S141に
おいて、電動式ドラムブレーキ32が故障しているか否
かが判定される。故障していなければ判定がNOとな
り、S142において、ソレノイド606にそれをON
にするための信号が出力される。それにより、ソレノイ
ド606が励磁状態とされる。この状態においては、ス
トッパピン600が係合凹部602から離脱する離脱位
置(図27の(b) )に位置させられるため、プッシュロ
ッド312によるレバー590の作動が禁止される。そ
の結果、電動式ドラムブレーキ32の正常時には、機械
式ドラムブレーキ36の予定外作動が防止される。
【0121】これに対して、電動式ドラムブレーキ32
が故障していればS141の判定がYESとなり、S1
43において、ソレノイド606にそれをOFFするた
めの信号が出力される。それにより、ソレノイド606
が消磁状態とされる。この状態においては、ストッパピ
ン600が係合凹部602に係合する係合位置(図27
の(a) )に位置させられるため、プッシュロッド312
によるレバー590の作動が許可される。その結果、電
動式ドラムブレーキ32の故障時には、レバー590が
作動させられて機械式ドラムブレーキ36が作動させら
れる。
【0122】ROM342には、さらに、ソレノイド異
常チェックルーチンが記憶されている。このソレノイド
異常チェックルーチンは、ソレノイド606の異常の有
無をチェックし、異常がある場合にはその事実をブレー
キ警告ランプ376を介して運転者に警告するルーチン
である。
【0123】このソレノイド異常チェックルーチンが図
29にフローチャートで表されている。まず、S161
において、電動式ドラムブレーキ32が正常であるか否
か、すなわち、本来であればソレノイド606がON状
態にあるはずであるか否かが判定される。故障していれ
ば判定がNOとなり、直ちに本ルーチンの一回の実行が
終了する。これに対して、正常であれば判定がYESと
なり、S162において、操作力センサ348により操
作力Fが検出され、続いて、S163において、前後加
速度センサ356により車体前後加速度GFRが検出され
る。その後、S164において、ブレーキの効きのレベ
ルが車体前後加速度GFRを操作力Fで割り算することに
よって推定されるとともに、その推定されたレベルが基
準値より高いか否かが判定される。ブレーキの効きのレ
ベルが基準値より高い場合には、判定がYESとなり、
S165において、ブレーキ警告ランプ376が点灯さ
せられる。ブレーキの効きのレベルが基準値より高いと
いうことは、電動式ドラムブレーキ32の正常時にその
電動式ドラムブレーキ32のみならず機械式ドラムブレ
ーキ36も作動させられている可能性が強いからであ
る。これに対して、ブレーキの効きのレベルが基準値よ
り高くはない場合には、S164の判定がNOとなり、
S165がスキップされ、それにより、ブレーキ警告ラ
ンプ376が消灯させられる。いずれの場合にも、以上
で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0124】なお付言すれば、S162においては、操
作力Fが検出されるようになっているが、これに代えて
ブレーキペダル34の操作ストロークを検出してもよ
い。操作ストロークは操作力Fに関連して変化する物理
量であるからである。
【0125】さらに付言すれば、本実施形態において
は、ソレノイド606の電源が、電動式ドラムブレーキ
32と共通の電源である第2バッテリ372とされてい
るが、第2バッテリ372から独立した電源、すなわ
ち、第2バッテリ372の影響を受けない電源とするこ
とができる。そのような電源には例えば、主バッテリ3
74がある。また、車両に互いに独立に搭載されている
複数の電源(例えば、第1および第2バッテリ370,
372)のうち機能が正常であるものが自動的に選択さ
れて、その選択された電源がソレノイド606の電源と
されるようにすることもできる。
【0126】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、ストッパピン552,ハウジング55
6,スプリング558およびソレノイド560と、EC
U50のうち図28のS141〜S143を実行する部
分とが互いに共同してレバー作動許可・禁止装置550
を構成し、そのレバー作動許可・禁止装置550が「予
定外作動防止装置」の一例を構成しているのである。
【0127】なお付言すれば、本実施形態においては、
電動式ドラムブレーキ32の故障時には、車両における
すべての電源が正常に機能しなくなる可能性が高いこと
を考慮し、レバー作動許可・禁止装置596は、ソレノ
イド606に磁気力が発生しない状態で、スプリング6
04の弾性力を利用することにより、操作力Fによる機
械式ドラムブレーキ36の作動を許可する形式とされて
いる。ただし、レバー作動許可・禁止装置596は、電
動式ドラムブレーキ32の故障時に、ソレノイド606
の磁気力を利用することにより、操作力Fによる機械式
ドラムブレーキ36の作動を許可する形式とすることも
できる。なお、この形式のレバー作動許可・禁止装置5
96においては、第2バッテリ372とは別の電源によ
りソレノイド606の異常チェックおよび励磁を行うこ
とが必要となる。
【0128】次に、本発明の第11実施形態を説明す
る。ただし、本実施形態は第10実施形態(図26)と
共通する要素が多いため、共通の要素については同一の
符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異な
る要素についてのみ詳細に説明する。
【0129】第10実施形態においては、電動式ドラム
ブレーキ32の正常時には、ブレーキ操作の有無を問わ
ず、ソレノイド606がONされるようになっている。
これに対して、本実施形態においては、電動式ドラムブ
レーキ32の正常時には、ブレーキ操作が行われている
間に限り、ソレノイド606がONされ、それにより、
無駄な電力消費が回避されるようになっている。
【0130】図30には、本実施形態におけるレバー作
動許可・禁止ルーチンがフローチャートで表されてい
る。まず、S181において、電動式ドラムブレーキ3
2が故障しているか否かが判定される。故障していなけ
れば判定がNOとなり、S182において、ブレーキペ
ダルスイッチ350がONであるか否かが判定される。
ONであれば判定がYESとなり、S183において、
ソレノイド606にそれをONにするための信号が出力
される。それにより、ソレノイドバルブ606が励磁状
態とされ、ストッパピン600が離脱位置に位置させら
れる。
【0131】これに対して、電動式ドラムブレーキ32
が正常であり、かつ、ブレーキペダルスイッチ350が
OFFである場合には、S181の判定はNO、S18
2の判定もNOとなり、また、電動式ドラムブレーキ3
2が故障している場合には、S181の判定がYESと
なる。そして、いずれの場合にも、S184において、
ソレノイド606にそれをOFFするための信号が出力
される。それにより、ソレノイド606が消磁状態とさ
れる。この状態においては、ストッパピン600が係合
凹部602に係合する係合位置に位置させられる。
【0132】以上の説明から明らかなように、ハウジン
グ598,ストッパピン600,スプリング604およ
びソレノイド606と、ECU50のうち図30のS1
81〜S184を実行する部分とが互いに共同してレバ
ー作動許可・禁止装置596を構成し、そのレバー作動
許可・禁止装置596が「予定外作動防止装置」の一例
を構成しているのである。
【0133】次に、本発明の第12実施形態を説明す
る。ただし、本実施形態は第10実施形態(図26)と
共通する要素が多いため、共通の要素については同一の
符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異な
る要素についてのみ詳細に説明する。
【0134】第10実施形態においては、先の他の実施
形態におけると同様に、レバー590の力点がプッシュ
ロッド312と同軸の直線上に設定されているが、本実
施形態のマニュアルブレーキ制御装置618において
は、図31に示すように、係合部620がプッシュロッ
ド312の軸線から半径方向に外れた位置においてプッ
シュロッド312と一体的に移動可能に設けられる一
方、レバー622に係合部624が形成され、レバー6
22はそれの係合部624においてプッシュロッド31
2の係合部620から力を受けるようになっている。レ
バー622は、プッシュロッド312の下方において垂
直に、かつ、それの延長線がプッシュロッド312の軸
線と交差するように配置されている。また、係合部62
4はレバー622の上端部に一体的に取り付けられてお
り、レバー622はそれの下端部において車体にレバー
ブラケット626により回動可能に連結されている。レ
バー622はそれの中間部においてクレビス336を介
して非常ブレーキ用ケーブル282に連結されており、
よって、レバー622は係合部624が係合部620か
ら受ける力を倍力して非常ブレーキ用ケーブル282に
伝達することになる。
【0135】係合部620,624の間には、プッシュ
ロッド312の軸方向に平行な方向において隙間が設け
られており、操作力Fによりプッシュロッド312が初
期位置から前進させられても、その隙間が消滅しない限
り、両係合部620,624が互いに当接せず、レバー
622が作動させられないようになっている。
【0136】次に、本発明の第13実施形態を説明す
る。ただし、本実施形態は第12実施形態と共通する要
素が多いため、共通の要素については同一の符号を使用
することによって詳細な説明を省略し、異なる要素につ
いてのみ詳細に説明する。
【0137】第12実施形態のマニュアルブレーキ制御
装置618においては、レバー622がそれの軸線(延
長した部分を含む)がプッシュロッド312の軸線と直
角に交差するように配置されているが、本実施形態のマ
ニュアルブレーキ制御装置638においては、図32に
示すように、レバー640がプッシュロッド312と立
体交差するように配置されている。プッシュロッド31
2と一体的に移動する係合部642は、プッシュロッド
312からレバー640の係合部644に向かって延び
ている。レバー640は、一端部において車体にレバー
ブラケット646により回動可能に連結される一方、他
端部においてクレビス336を介して非常ブレーキ用ケ
ーブル282に連結されている。係合部644はレバー
640の中間部に設けられており、よって、レバー64
0は係合部642の変位量すなわちプッシュロッド31
2の作動ストロークを拡大して非常ブレーキ用ケーブル
282に伝達することになる。
【0138】次に、本発明の第14実施形態を説明す
る。ただし、本実施形態は第1実施形態と共通する要素
が多いため、共通する要素については同一の符号を使用
することによって詳細な説明を省略し、異なる要素につ
いてのみ詳細に説明する。
【0139】第1実施形態においては、機械式ドラムブ
レーキ36の作動許可時に、ブレーキペダル34の操作
力Fがレバー装置326を経て非常ブレーキ用ケーブル
282に引張力として伝達されるようになっている。こ
れに対して、本実施形態においては、ボールねじ機構を
経て伝達されるようになっている。
【0140】図33には、ブレーキペダル装置302と
マニュアルブレーキ制御装置700と非常ブレーキ用ケ
ーブル282とが示されている。マニュアルブレーキ制
御装置700は、共に筒状を成す第1ハウジング702
と第2ハウジング704とを備えている。第1ハウジン
グ702は底部706を有するとともに、その底部70
6の外面にフランジ708が形成されている。第1ハウ
ジング702は、そのフランジ708において図示しな
いダッシュパネルに取り付けられる。第2ハウジング7
04はその第1ハウジング702にそれの開口部710
において、第1ハウジング702と同軸に、複数本のボ
ルト711により固定されている。
【0141】第1ハウジング702には、それと同軸に
段付状のシリンダボア712が形成され、そのシリンダ
ボア712に段付状の第1ピストン714が軸方向に摺
動可能に嵌合されている。第1ピストン714は、それ
の小径部716においてプッシュロッド312の先端部
に直接に係合させられる一方、それの大径部718にお
いてスプリング720を介して第2ハウジング704の
外面722に係合させられている。スプリング720は
第1ピストン714を常時、プッシュロッド312に接
近する向きに付勢しており、第1ピストン714の肩面
724が第1ハウジング702の肩面726に当接する
ことにより、その接近限度が規定されている。第1ピス
トン714の大径部718の外周面には、それの軸線方
向に延びる溝728が形成されている。第1ハウジング
702の壁部にはボルト730が貫通させられて固定さ
れ、そのボルト730の先端部がシリンダボア712内
の空間に臨まされている。ボルト730の先端部は、溝
728に緩く嵌入させられており、それにより、第1ピ
ストン714の軸方向移動は許容されるが、軸線回りの
回転は阻止される。それらボルト730と溝728との
位置関係が図34に正面図で示されている。それらボル
ト730と溝728とにより、第1ピストン714の回
転防止機構が構成されているのである。
【0142】図33に示すように、第1ピストン714
の中央にはシリンダボア734が同軸に形成されてお
り、そのシリンダボア734に、第1ピストン714よ
り小径かつ段付状の第2ピストン736が軸方向に摺動
可能に嵌合されている。第2ピストン736は第1ハウ
ジング702内から第2ハウジング704の壁部738
を貫通して第2ハウジング704内に延びている。第2
ピストン736の小径部740は第1ハウジング702
内、大径部742は第2ハウジング704内にそれぞれ
位置させられている。第2ピストン736と第2ハウジ
ング704との少なくとも一方には、第2ピストン73
6の軸方向移動は許容するが、軸線回りの回転は阻止す
る機構(図示しない。例えば、スプライン嵌合部)が設
けられている。
【0143】第2ピストン736の大径部742の先端
部は、第2ハウジング704の内面744にスプリング
746を介して係合させられている。スプリング746
は第2ピストン736を常時、第1ピストン714に接
近する向きに付勢しているが、第2ピストン736の肩
面748が第2ハウジング704の内面750に当接す
ることにより、その接近限度が規定されている。
【0144】第2ハウジング704内には、筒状の回転
部材754が第2ピストン736と同軸に設けられてい
る。回転部材754はそれの軸方向に隔たった一対のベ
アリング756,758によって回転可能に支持されて
いる。回転部材754の内周面は第2ピストン736の
大径部742の外周面と隙間を隔てて対向させられてお
り、その隙間内にボールねじ機構760が配設されてい
る。ボールねじ機構760は、よく知られているよう
に、大径部742の軸方向運動を回転部材754の回転
運動に変換する機構である。具体的には、ボールねじ機
構760は、シャフトとしての大径部742が複数個の
ボール762を介してナット764に螺合された構造を
有している。ナット764は回転部材754に一体的に
回転可能に固定されている。
【0145】したがって、第1ピストン714から第2
ピストン736に前進力が付与され、それにより、第2
ピストン736が図示の原位置から前進(スプリング7
46が圧縮する向きに移動)すれば、回転部材754が
回転させられる。これに対して、第1ピストン714か
ら第2ピストン736に前進力が付与されなくなると、
第2ピストン736はスプリング746の弾性力によっ
て後退させられる。この際、回転部材754が逆回転さ
せられる。
【0146】第2ハウジング704の壁部768には回
転部材754の外周面に対向する位置において、アウタ
ケーシング286の先端部が貫通させられて固定され、
その先端部から非常ブレーキ用ケーブル282が延び出
させられている。非常ブレーキ用ケーブル282の先端
部(図示しない)は回転部材754に固定されており、
回転部材754が正方向に回転させられれば、非常ブレ
ーキ用ケーブル282が回転部材754(ドラム)に巻
き付けられ、それにより、非常ブレーキ用ケーブル28
2に引張力が付与される。図35には、それら非常ブレ
ーキ用ケーブル282と回転部材754との位置関係が
正面図で示されている。非常ブレーキ用ケーブル282
に付与された引張力により機械式ドラムブレーキ36が
作動させられる。これに対して、回転部材754が逆方
向に回転させられれば、非常ブレーキ用ケーブル282
の引張力が弱められ、その結果、機械式ドラムブレーキ
36の作動力が減少させられる。
【0147】図33に示すように、第1ピストン714
は常に、プッシュロッド312と共に前進するが、第2
ピストン736は、第1ピストン714と一緒に前進す
る状態と第1ピストン714が前進しても前進しない状
態とに切り換えられる。その切換えを行うためにストッ
パピン770が設けられている。第1ピストン714の
壁部の一部には、第1ピストン714の直径方向に貫通
する穴772が形成されており、その穴772にストッ
パピン770がそれの軸方向に摺動可能に嵌合されてい
るのである。ストッパピン770は常時、第1ピストン
714と一体的に移動する。
【0148】ストッパピン770は、第1ピストン71
4の一直径方向において、それの先端部がシリンダボア
734の内周面から突出する位置と、突出しない位置と
に移動させられる。その移動は駆動装置776により行
われる。駆動装置776は、第1ピストン714に固定
の駆動装置ハウジング778と、その駆動装置ハウジン
グ778に軸方向摺動可能に嵌合されたプランジャ78
0とを備えている。駆動装置ハウジング778と第1ピ
ストン714との位置関係が図34に正面図で示されて
いる。プランジャ780はストッパピン770を同軸に
保持している。駆動装置776は、さらに、ソレノイド
782,コア784およびスプリング786を備えてい
る。スプリング786は、プランジャ780を常時、ス
トッパピン770がシリンダボア734内の空間に突出
する位置に向かって付勢する。ソレノイド782が励磁
されて磁気力が発生させられれば、プランジャ780が
スプリング786の弾性力に抗してコア784に吸引さ
れることにより、ストッパピン770が図示の突出位置
から後退させられて(図において上方に移動させられ
て)シリンダボア734の内周面から退避させられる。
【0149】図33に示すように、第1ハウジング70
2には、駆動装置776を覆うカバー788が固定され
ている。図36には、それら第1ハウジング702,駆
動装置776およびカバー788の位置関係が斜視図で
示されている。図33に示すように、カバー788に
は、第1ピストン714の移動に伴う駆動装置776の
移動を許容するための空間が形成されている。カバー7
88には、外部との接続のためのコネクタ790が設け
られ、そのコネクタ790とソレノイド782のターミ
ナル791とを互いに接続するワイヤ792が十分な可
撓性と十分な長さとを付与されていて、駆動装置776
の移動によってワイヤ792が断線することがないよう
にされている。
【0150】駆動装置776は、ソレノイド782がO
FFである通常状態で、ストッパピン770をシリンダ
ボア734内に突出させる。そのため、通常状態では、
第1ピストン714が前進しようとすれば、その前進力
がストッパピン770を介して第2ピストン736に伝
達され、その結果、第1ピストン714が第2ピストン
736と一緒に前進させられる。第2ピストン736が
前進させられれば、それの運動がボールねじ機構760
によって回転運動に変換され、結局、回転部材754の
回転によって非常ブレーキ用ケーブル282が巻き取ら
れる。これに対して、ソレノイド782のON状態で
は、ストッパピン770がシリンダボア734内の空間
から退避させられるため、第1ピストン714は単独で
前進可能となる。このとき、第1ピストン714には、
スプリング720の弾性力が付与され、その結果、ブレ
ーキペダル34に反力が付与される。ブレーキペダル3
4に反力がそれの操作ストロークに応じて付与されるよ
うになっているのである。
【0151】ECU50のROM342には、図37に
フローチャートで表されているブレーキ切換制御ルーチ
ンが記憶され、そのルーチンがCPU340により実行
されることにより、ソレノイド782のON/OFF状
態が制御される。
【0152】本ルーチンは、右後輪RRと左後輪RLと
に関して順にかつ繰返し実行される。主バッテリ374
は、車両のイグニションスイッチがONであるかOFF
であるかを問わず、ECU50に電力を供給する。そし
て、本ルーチンは、イグニションスイッチがONである
かOFFであるか否かを問わず、繰返し実行される。
【0153】本ルーチンの各回の実行時には、まず、S
191において、電気ブレーキである左右後輪用の電動
式ドラムブレーキ32の少なくとも一方が故障している
か否かが判定される。電動式ドラムブレーキ32および
それに関連する電気系統に断線または短絡が発生してい
れば、電動式ドラムブレーキ32が故障していると判定
される。また、図示しないバッテリ電圧センサにより第
2バッテリ372(左右後輪用の電動式ドラムブレーキ
32のモータ30に電力を供給する電源)の電圧が検出
され、その検出されたバッテリ電圧が基準値以下である
場合、すなわち、バッテリ電圧が不足している場合に
も、電動式ドラムブレーキ32が故障していると判定さ
れる。今回は、故障していると仮定すれば、判定がYE
Sとなり、S192において、RAM344に設けられ
た故障フラグであって、0で、左右後輪のいずれにおい
ても電動式ドラムブレーキ32が故障していないことを
示し、1で、左右後輪の少なくとも一方において電動式
ドラムブレーキ32が故障していることを示すフラグが
1にされる。これに対して、今回は、故障していないと
仮定すれば、S191の判定がNOとなり、S193に
おいて、故障フラグが0とされる。いずれの場合にも、
その後、S194に移行する。
【0154】このS194においては、ブレーキペダル
スイッチ350(図において「ブレーキペダルSW」で
表す。)がOFFであるか否かが判定される。今回はO
FFであると仮定すれば、判定がYESとなり、S19
5において、ソレノイド782がOFFにされ、それに
より、ストッパピン770が第2ピストン736に係合
することが許容される。それにより、第1ピストン71
4が第2ピストン736と一緒に前進することが強制さ
れ、その結果、左右後輪用の機械式ドラムブレーキ36
の作動が許可される。電気ブレーキではなくマニュアル
ブレーキが選択されるのである。以上で本ルーチンの一
回の実行が終了する。したがって、このブレーキシステ
ムによれば、イグニションスイッチのOFF時には、運
転者がブレーキペダル34を踏み込めば、電動式ドラム
ブレーキ32が故障しているか否かを問わず、左右後輪
用の機械式ドラムブレーキ36によって車両が制動され
る。
【0155】これに対して、今回は、ブレーキペダルス
イッチ350がONであると仮定すれば、S194の判
定がNOとなり、S196において、故障フラグが1で
あるか否かが判定される。左右後輪の少なくとも一方に
おいて電動式ドラムブレーキ32が故障していると判定
されたか否かが判定されるのである。今回は、故障フラ
グが1であると仮定すれば、判定がYESとなり、S1
95に移行し、マニュアルブレーキが選択される。以上
で本ルーチンの一回の実行が終了する。したがって、こ
のブレーキシステムによれば、イグニションスイッチの
ON時であり、かつ、電動式ドラムブレーキ32が故障
している場合には、運転者がブレーキペダル34を踏み
込めば、機械式ドラムブレーキ36によって車両が制動
される。
【0156】これに対して、今回は、故障フラグが0で
あると仮定すれば、S196の判定がNOとなり、S1
97において、ソレノイド782がONにされ、それに
より、ストッパピン770が第2ピストン736に係合
しない状態とされる。それにより、第1ピストン714
が単独で前進可能とされ、その結果、左右後輪用の機械
式ドラムブレーキ36の作動が禁止される。マニュアル
ブレーキではなく電気ブレーキが選択されるのである。
以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。したがっ
て、このブレーキシステムによれば、イグニションスイ
ッチのON時であり、かつ、電動式ドラムブレーキ32
が故障していない場合には、運転者がブレーキペダル3
4を踏み込めば、電動式ドラムブレーキ32によって車
両が制動される。
【0157】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、ボールねじ機構が「運動変換機構」の一
例を構成しているのである。
【0158】次に、本発明の第15実施形態を説明す
る。ただし、本実施形態は、第14実施形態と共通する
要素が多く、異なるのは第2ピストンのみであるため、
その第2ピストンのみを詳細に説明し、他の要素につい
ては同一の符号を使用することによって詳細な説明を省
略する。
【0159】第14実施形態においては、第1ピストン
714が初期位置(後退端位置)にあるときに限り、ス
トッパピン770が第2ピストン736に係合可能とな
っている。これに対して、本実施形態においては、第1
ピストン714が初期位置から前進した位置において
も、ストッパピン770が第2ピストンに係合可能とな
っている。
【0160】図38には、本実施形態における第2ピス
トン810がストッパピン770等と共に示されてい
る。第2ピストン810の外周面のうち、その第2ピス
トン810が第1ピストン714と相対移動する際にス
トッパピン770と対向しつつ通過する部分に、そのス
トッパピン770が係合すべき係合溝812が複数個形
成されている。それら複数個の係合溝812は、第2ピ
ストン810の軸線に沿って等間隔で並んで形成されて
いる。各係合溝812は、各々、第2ピストン810の
直径方向(図において紙面に直角な方向)に延びる一対
の側面814,816と底面818とを備えている。そ
れら一対の側面814,816のうち、第2ピストン8
10の後側(図において右側)を向いた側面814は、
第2ピストン810の軸線と直角な面でストッパピン7
70の前側と係合する部分とされ、一方、前側(図にお
いて左側)を向いた側面816は、第2ピストン810
の軸線と90°より小さい角度で傾斜した斜面でストッ
パピン770の後側と係合する部分とされている。
【0161】したがって、ストッパピン770がいずれ
かの係合溝812に係合させられている状態で、第1ピ
ストン714が前進しようとすれば、その前進力がスト
ッパピン770を介して第2ピストン810に伝達さ
れ、その結果、第1ピストン714が第2ピストン81
0と一緒に前進させられる。
【0162】その結果、本実施形態によれば、電動式ド
ラムブレーキ32の作動中にその電動式ドラムブレーキ
32が故障したためにソレノイド782がOFFにされ
れば、ストッパピン770がいずれかの係合溝812に
係合する。そのため、以後、ブレーキペダル34がさら
に深く踏み込まれれば、第2ピストン810が第1ピス
トン714と一体的に前進する。その結果、回転部材7
54が正方向に回転させられ、それにより、機械式ドラ
ムブレーキ36が電動式ドラムブレーキ32に代えて作
動させられる。
【0163】ストッパピン770がいずれかの係合溝8
12に係合させられている状態で、第1ピストン714
が後退しようとすれば、斜面である側面816からスト
ッパピン770に、ストッパピン770を第2ピストン
810から離間させる向きの力が付与される。一方、ス
トッパピン770はスプリング786によって係合溝8
12に係合する向きに付勢されている。ストッパピン7
70は後退可能とされているのである。そのため、斜面
である側面816からストッパピン770に作用する力
のうちそのストッパピン770の軸方向における成分が
スプリング786の弾性力に打ち勝つに至れば、ストッ
パピン770がスプリング786の弾性力に抗して後退
させられる。その結果、ストッパピン770の先端部
が、第2ピストン810の外周面のうち、互いに隣接し
た2個の係合溝812によって挟まれたランド部820
を通過することが許容される。したがって、本実施形態
においては、ストッパピン770がいずれかの係合溝8
12に係合させられている状態で、第1ピストン714
が後退しようとすれば、ソレノイド782をONにして
ストッパピン770を強制的に第2ピストン810から
退避させることなく、ストッパピン770が自動的に退
避させられる。その結果、第1ピストン714は、第2
ピストン810の後退を待つことなく単独で後退可能と
なり、ブレーキペダル34の戻りが第2ピストン810
の遅い戻りによって阻害されることが防止される。な
お、同図において二点鎖線は、初期位置にあるストッパ
ピン770を示している。
【0164】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、第1ピストン714および第2ピストン
810が「相対変位可能な2部材」の一例を構成し、ま
た、ストッパピン770,穴772,駆動装置776お
よび係合溝812が互いに共同して「相対変位制御装
置」の一例を構成しているのである。
【0165】次に、本発明の第16実施形態を説明す
る。ただし、本実施形態は第14実施形態と共通する要
素が多いため、共通する要素については同一の符号を使
用することによって詳細な説明を省略する。
【0166】本実施形態においては、第2ピストンのう
ちストッパピンに係合される部分の構造と、駆動装置7
76の取付構造と、駆動装置776とストッパピンとの
間における力の伝達を行う構造とにつき、第14実施形
態と相違しており、他の構造については共通している。
【0167】図39には、本実施形態におけるマニュア
ルブレーキ制御装置840が示されている。そのマニュ
アルブレーキ制御装置840における第2ピストン84
2には、第15実施形態におけると同様に、第2ピスト
ン842と同軸に複数個の係合溝812が並んで形成さ
れている。本実施形態においても、ストッパピン770
がスプリング786により、係合溝812に第2ピスト
ン842の軸線と直角な方向に弾性的に押し付けられる
ようになっており、係合溝812とスプリング786と
の共同作用により、第1ピストン714が前進する際に
はそれの前進力を第2ピストン842に伝達するが、後
退する際にはそれの後退力を伝達しない一方向力伝達構
造とされている。ただし、第15実施形態においては、
第1ピストン714の初期位置では、ストッパピン77
0が第2ピストン842の後端部(図において右側の端
部)に係合させられるようになっているが、本実施形態
においては、複数個の係合溝812のいずれかに係合さ
せられるようになっている。
【0168】第14実施形態においては、駆動装置ハウ
ジング778が第1ピストン714に固定され、第1ピ
ストン714と一緒に移動させられるようになってい
る。これに対して、本実施形態においては、駆動装置ハ
ウジング778が第1ハウジング702に固定され、第
1ピストン714とは無関係に位置固定とされている。
【0169】本実施形態においては、位置固定である駆
動装置776と、第1ピストン714と一体的に移動す
るストッパピン770との間において力の伝達を実現す
るために、ストッパピン770の後端部に力伝達部材8
44が一体に形成されている。力伝達部材844は、第
1ピストン714の軸線と平行に延びる接触面848を
備えている。その接触面848は、プランジャ780に
保持されてそれと一体的に移動する駆動部材850の先
端部が摺動させられるものを備えている。力伝達部材8
44と駆動部材850とは、相互に分離可能とされてい
る。そのため、ソレノイド782が励磁されてプランジ
ャ780および駆動部材850がコア784に吸引され
る際に、力伝達部材844がそれらプランジャ780等
と一体的に移動することを可能にすることが必要であ
る。そして、本実施形態においては、その目的を達する
ために、力伝達部材844(ストッパピン770でも
可。)と第1ピストン714との間に、力伝達部材84
4を常時、ストッパピン770が第2ピストン842か
ら離間する向きに付勢するスプリング786が設けられ
ている。
【0170】本実施形態においては、上述のように、駆
動装置776が位置固定とされている。したがって、そ
の駆動装置776を覆うカバー854については、第1
4実施形態におけるとは異なり、駆動装置776の移動
距離に見合った空間を確保することが不要となる。よっ
て、本実施形態によれば、カバー854の小形化が可能
となり、ひいては、マニュアルブレーキ制御装置840
の小形化も可能になる。
【0171】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、第1ピストン714および第2ピストン
842が「相対変位可能な2部材」の一例を構成し、ま
た、ストッパピン770,穴772,駆動装置776,
係合溝812および力伝達部材844が互いに共同して
「相対変位制御装置」の一例を構成しているのである。
【0172】次に、本発明の第17実施形態を説明す
る。ただし、本実施形態は第14実施形態とハードウェ
ア構成はほぼ共通し、異なるのは主にソフトウェア構成
のみであるため、主にソフトウェア構成のみについて詳
細に説明し、ハードウェア構成については同一の符号を
使用することによって詳細な説明を省略する。
【0173】図40には、本実施形態のハードウェア構
成が簡略化されて示されている。本実施形態において
は、第1実施形態におけると同様に、左右前輪FL,F
R用の電動式ディスクブレーキ22と、左右後輪RL,
RR用の電動式ドラムブレーキ32および機械式ドラム
ブレーキ36とを備えている。機械式ドラムブレーキ3
6には、マニュアルブレーキ制御装置700を介してブ
レーキペダル34が機械的に連携させられている。電動
式ディスクブレーキ22のモータ20と電動式ドラムブ
レーキ32のモータ30とは、ドライバ870(第1ド
ライバ366と第2ドライバ368とを含む)を介して
ECU880に接続されている。ECU880は、EC
U50と同様に、コンピュータ346を主体として構成
されている。ECU880には、ブレーキペダルスイッ
チ350,操作力センサ348等が接続されている。ま
た、ECU880には、警告器882(ブレーキ警告ラ
ンプ376と摩耗警告ランプ378とを含む)も接続さ
れている。さらに、ECU880には、制動力センサ8
84が接続されている。制動力センサ884は、各輪毎
に設けられ、各輪の実制動力を直接にまたは間接に検出
するセンサである。制動力センサ884は例えば、モー
タ20,30によりブレーキ摩擦材(ブレーキパッド1
06,ブレーキライニング216)が加圧される加圧力
を検出する加圧力センサとすることができる。なお、以
下、左右前輪FL,FR用の電動式ディスクブレーキ2
2と左右後輪RL,RR用の電動式ドラムブレーキ32
とを、「電気ブレーキ」と総称し、また、左右後輪R
L,RR用の電動式ドラムブレーキ36を、「マニュア
ルブレーキ」と総称する。
【0174】本実施形態においては、電気ブレーキおよ
びマニュアルブレーキの制御が、4輪のうち電気ブレー
キが故障したものの数および位置に応じて変化する規則
に従って行われるようになっている。図41には、その
規則が概略的に示され、図42には、具体的に示されて
いる。ただし、図42には、1輪のみにおいて電気ブレ
ーキが故障した場合と、2輪のみにおいて故障した場合
とがそれぞれ、故障モードが1輪故障および2輪故障で
ある場合として示されているが、他の故障モードについ
ては図示が省略されている。また、同図において、「F
R輪」,「FL輪」,「RR輪」および「RL輪」はそ
れぞれ、図43に示すように、車両において前右,前
左,後右および後左に位置する車輪を意味している。ま
た、同図において、「○」は、電気ブレーキが正常であ
る車輪であることを意味し、「×」は、電気ブレーキが
故障している車輪であることを意味している。以下、そ
れら図41および図42を参照しつつブレーキ制御の内
容を、1輪のみにおいて電気ブレーキが故障した場合、
2輪のみにおいて故障した場合、3輪のみにおいて故障
した場合、および4輪すべてにおいて故障した場合につ
いて順に説明する。
【0175】(1) 1輪のみにおいて電気ブレーキが故障
した場合 この場合、残りの3輪において、電気ブレーキを用いた
ブレーキ制御を行う方式と、残りの3輪のうちの2輪に
おいて、電気ブレーキを用いたブレーキ制御を行う方式
とのいずれかを採用し得る。
【0176】 残りの3輪において、電気ブレーキを
用いたブレーキ制御を行う方式を採用した場合 この場合、残りの3輪の各々に関する目標車輪制動力
を、4輪すべてにおいて電気ブレーキが正常である場合
と同じ値に設定したのでは、ブレーキ制御によって車両
に不適当なヨーイングモーメントが生じてしまう。そこ
で、本実施形態においては、目標車輪制動力が残りの3
輪に、それら3輪のブレーキ制御によって車両に不適当
なヨーイングモーメントが生じないように配分される。
残りの3輪の各々に関する目標車輪制動力が、4輪すべ
てにおいて電気ブレーキが正常である場合における目標
車輪制動力(標準値)に対して修正されるのである。
【0177】 残りの3輪のうちの2輪において、電
気ブレーキを用いたブレーキ制御を行う方式を採用した
場合 この場合、図42においてで示すように、電気ブレー
キが故障している車輪(以下、単に「故障車輪」とい
う。)がFR輪であれば、車両において対角位置にある
FL輪とRR輪とにおいて電気ブレーキが制御される。
また、同図においてで示すように、故障車輪がFL輪
であれば、車両において対角位置にあるFR輪とRL輪
とにおいて電気ブレーキが制御される。また、同図にお
いてで示すように、故障車輪がRR輪であれば、Fr
2輪、すなわち、FR輪とFL輪とにおいて電気ブレー
キが制御される。また、同図においてで示すように、
故障車輪がRL輪であれば、同様に、Fr2輪において
電気ブレーキが制御される。
【0178】なお、故障車輪がRR輪またはRL輪であ
るときには、上記とは異なり、車両において対角位置に
ある2輪において電気ブレーキを制御してもよい。しか
し、車輪制動力は一般に、前輪において後輪におけるよ
り大きいという事実に着目し、かつ、より効果的に車両
を制動する観点から、本実施形態においては、故障車輪
がRR輪またはRL輪であるときには、Fr2輪におい
て電気ブレーキが制御されるようになっている。
【0179】(2) 2輪のみにおいて電気ブレーキが故障
した場合 故障車輪がFR輪とFL輪とである場合 この場合、Rr2輪、すなわち、RR輪とRL輪とにお
いて電気ブレーキが制御される。 故障車輪がFL輪とRR輪とである場合 この場合、FR輪とRL輪とにおいて電気ブレーキが制
御される。 故障車輪がFR輪とRL輪とである場合 この場合、FL輪とRR輪とにおいて電気ブレーキが制
御される。 故障車輪がRR輪とRL輪とである場合 この場合、Fr2輪、すなわち、FR輪とFL輪とにお
いて電気ブレーキが制御される。 故障車輪がFL輪とRL輪とである場合 この場合、電気ブレーキが正常である車輪が、車両にお
いて右側にのみ存在し、偏っている。そのため、それに
もかかわらず正常である車輪において電気ブレーキを作
動させたのでは、車両に不適当なヨーイングモーメント
が生じてしまう。そこで、本実施形態においては、Rr
2輪においてマニュアルブレーキが作動させられる。車
両において左側と右側とに1個ずつ存在する機械式ドラ
ムブレーキ36が作動させられ、それにより、車両に不
適当なヨーイングモーメントが生じることが防止される
のである。 故障車輪がFR輪とRR輪とである場合 この場合、電気ブレーキが正常である車輪が、車両にお
いて左側にのみ存在し、偏っている。そのため、それに
もかかわらず正常である車輪において電気ブレーキを作
動させたのでは、車両に不適当なヨーイングモーメント
が生じてしまう。そこで、本実施形態においては、上記
におけると同様に、Rr2輪においてマニュアルブレ
ーキが作動させられる。
【0180】(3) 3輪のみにおいて電気ブレーキが故障
した場合 この場合、電気ブレーキが正常である車輪が、車両にお
いて片側にのみ存在し、偏っている。そのため、それに
もかかわらず正常である車輪において電気ブレーキを作
動させたのでは、車両に不適当なヨーイングモーメント
が生じてしまう。そこで、本実施形態においては、上記
(2) およびにおけると同様に、Rr2輪においてマ
ニュアルブレーキが作動させられる。
【0181】(4) 4輪すべてにおいて電気ブレーキが故
障した場合 この場合、電気ブレーキが正常である車輪が存在しな
い。そこで、本実施形態においては、Rr2輪において
マニュアルブレーキが作動させられる。
【0182】図44および図45には、以上説明したブ
レーキ制御を実行するためにECU880のCPU34
0により実行されるブレーキ故障判定ルーチンおよびブ
レーキ制御ルーチンがそれぞれフローチャートで表され
ている。それらルーチンはいずれも、ECU880のR
OM342に記憶されている。
【0183】ブレーキ故障判定ルーチンにおいては、電
気ブレーキへの入力とそれからの出力とが正規に対応し
ない場合に電気ブレーキが故障していると判定される。
具体的には、ブレーキ操作時に電気ブレーキによる車輪
制動力が0であれば、電気ブレーキが故障していると判
定される。
【0184】ブレーキ故障判定ルーチンは4輪について
順にかつ繰返し実行される。各回の実行時には、まず、
S201において、ブレーキペダルスイッチ350がO
Nであるか否かが判定される。今回は、OFFであると
仮定すれば、判定がNOとなり、直ちに本ルーチンの一
回の実行が終了する。これに対して、今回は、ブレーキ
ペダルスイッチ350がONであると仮定すると、S2
01の判定がYESとなり、S202において、制動力
センサ884の出力値が0であるか否か、すなわち、実
車輪制動力(または実加圧力)が0であるか否かが判定
される。ブレーキ操作時であるにもかかわらず実車輪制
動力が0であるか否かが判定されるのである。今回は、
制動力センサ884の出力値が0であると仮定すれば、
判定がYESとなり、S203において、電気ブレーキ
が故障しているという理由から、故障フラグが1とされ
る。故障フラグは、各輪毎に設けられていて、0で各輪
において電気ブレーキが故障していないことを示し、1
で故障していることを示すフラグである。また、故障フ
ラグは、車両の電源投入(イグニションスイッチがO
N)に伴って0に初期化されている。以上で本ルーチン
の一回の実行が終了する。
【0185】これに対して、今回は、制動力センサ88
4の出力値が0ではないと仮定すれば、S202の判定
がNOとなり、S204において、電気ブレーキが故障
してはいないという理由から、故障フラグが0とされ
る。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0186】以上、ブレーキ故障判定ルーチンを説明し
たが、以下、ブレーキ制御ルーチンを説明する。
【0187】ブレーキ制御ルーチンは、4輪全体に関し
て繰返し実行される。各回の実行時には、まず、S21
0において、4輪分の故障フラグに基づき、4輪の中に
故障車輪があるか否かが判定される。今回は、故障車輪
がないと仮定すれば、判定がNOとなり、S211にお
いて、ソレノイド782がONにされ、それにより、マ
ニュアルブレーキの作動が禁止されて電気ブレーキが選
択される。その後、S212において、操作力センサ3
48により検出された操作力等に基づき、4輪分の電気
ブレーキに対して通常制御が行われる。以上で本ルーチ
ンの一回の実行が終了する。
【0188】これに対して、今回は、故障車輪があると
仮定すれば、S210の判定がYESとなり、S213
において、故障車輪が1個のみであるか否かが判定され
る。今回は、1個のみであると仮定すれば、判定がYE
Sとなり、S214において、1輪故障時制御が行われ
る。前述のように、残りの3輪またはそのうちの2輪に
おいて電気ブレーキが制御されるのである。以上で本ル
ーチンの一回の実行が終了する。
【0189】また、今回は、故障車輪が2個のみである
と仮定すれば、S210の判定はYES、S213の判
定はNOとなり、S215において、故障車輪が2個の
みであるか否かが判定される。今回は、2個のみである
と仮定されているから、判定がYESとなり、S216
において、故障車輪が車両右側の前後2輪または車両左
側の前後2輪であるか否かが判定される。今回は、そう
ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S217に
おいて、2輪故障時制御が行われる。前述のように、電
気ブレーキが正常である2輪において電気ブレーキが制
御されるのである。以上で本ルーチンの一回の実行が終
了する。
【0190】また、今回は、故障車輪が車両右側の前後
2輪または車両左側の前後2輪であると仮定すれば、S
216の判定がYESとなり、S218において、ソレ
ノイド782がOFFにされ、それにより、マニュアル
ブレーキの作動が許可され、その結果、マニュアルブレ
ーキによって車両が制動される。以上で本ルーチンの一
回の実行が終了する。
【0191】また、今回は、故障車輪が3個または4個
であると仮定すれば、S215の判定がNOとなり、S
218において、上記の場合におけると同様にして、マ
ニュアルブレーキによって車両が制動される。以上で本
ルーチンの一回の実行が終了する。
【0192】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、ECU880のうち図44のブレーキ故
障判定ルーチンおよび図45のブレーキ制御ルーチンを
実行する部分が、故障車輪の数および位置に応じてブレ
ーキの制御内容が変更されるようにマニュアルブレーキ
制御装置700を制御するコントローラを構成している
のである。
【0193】次に、本発明の第18実施形態を説明す
る。ただし、本実施形態は第14実施形態と、ボールね
じ機構をマニュアルブレーキ制御装置に取り付ける構成
についてのみ異なり、他の構成については共通であるた
め、その異なる構成についてのみ詳細に説明し、共通す
る構成については同一の符号を使用することによって詳
細な説明を省略する。
【0194】第14実施形態においては、図33に示す
ように、ボールねじ機構760の回転部材754が第2
ハウジング704に、2つのベアリング756,758
を介して回転可能に取り付けられている。それらベアリ
ング756,758は共に、内輪と外輪とが転動体とし
てのボールを介して相対回転可能に連結された構成とさ
れている。一方、それらベアリング756,758にお
いてはいずれも、第2ハウジング704および回転部材
754の製造ばらつきにもかかわらず、ボールに荷重が
予定外に加えられないようにすることが望ましい。その
ため、この第14実施形態においては、それらベアリン
グ756,758が共に、内輪において回転部材754
に実質的なすき間を有することなく取り付けられる一
方、外輪において第2ハウジング704にわずかなすき
間を有して取り付けられている。それにより、内輪と回
転部材754とは相対変位不能とされる一方、外輪と第
2ハウジング704とは相対変位が多少許容されてい
る。すなわち、内輪と回転部材754とについては、回
転,径方向移動および軸方向移動が厳格に阻止される一
方、外輪と第2ハウジング704とについては、回転,
径方向移動および軸方向移動が厳格には阻止されるよう
にはなっていないのである。そのため、この第14実施
形態においては、機械式ドラムブレーキ36の作動許可
時に、ブレーキペダル34の操作力がボールねじ機構7
60の大径部742(直線運動部材の一例)に入力され
ると、回転部材754が第2ハウジング704に対して
軸方向に移動してしまい、打音が発生するという問題
や、第2ハウジング704と外輪とに摩耗が発生すると
いう問題が生ずるおそれがあった。
【0195】これに対して、本実施形態においては、図
46に示すように、第2ハウジング704に形状変更が
加えられた第2ハウジング890と回転部材754とを
相対回転可能に連結する2つのベアリング900,90
2が、第2ハウジング890と回転部材754との、そ
の回転部材754の軸線と平行な第1方向における相対
変位は阻止し、その軸線と交差する第2方向における相
対変位は許容する状態で、第2ハウジング890と回転
部材754とに取り付けられている。以下、その取付部
の構成をさらに具体的に説明する。
【0196】2つのベアリング900,902は共に、
図47に取り出して拡大して示すように、前記ベアリン
グ756,758と同様に、外輪904と内輪906と
がボール907を介して相対回転可能に連結されたボー
ルベアリングである。それらベアリング900,902
は共に、それの内輪906において回転部材754の段
付部908に圧入されている。その結果、内輪906と
回転部材754とは、相対的な回転,径方向移動および
軸方向移動がいずれも阻止されている。これに対して、
外輪904と第2ハウジング890の内周面909と
は、回転部材754の径方向と平行な第2方向において
すき間を隔てて互いに対向させられている。
【0197】外輪904には、それと同軸な円環溝91
0が形成されている。円環溝910は、図48に示すよ
うに、一円周に沿って延びる状態で形成されている。こ
れに対して、第2ハウジング890には、図47に示す
ように、各ベアリング900,902に取付位置に対向
する位置において、回転部材754の径方向(第2方向
の一例)に延びる貫通穴912が複数個形成されてい
る。これら複数個の貫通穴912に複数本のピン913
がそれぞれ圧入されている。第2ハウジング890に複
数本のピン913が、回転部材754の径方向にも軸方
向にも移動不能に取り付けられているのである。
【0198】円環溝910の両側面間の距離は、ピン9
13の直径よりわずかに大きく設定されている。また、
円環溝910の深さは、ピン913が第2ハウジング8
90に正規に取り付けられた状態で、円環溝910の底
部914とピン913の先端部916との間にすき間が
実質的に残るように設定されている。このすき間は例え
ば、1mm以下とすることができ、また、0.5mm以
下とすることができる。それらの寸法設定により、2つ
のベアリング900,902が、第2ハウジング890
と回転部材754との、その回転部材754の軸線と平
行な第1方向における相対変位は阻止され、その軸線と
交差する第2方向における相対変位は許容される状態
で、第2ハウジング890と回転部材754とに取り付
けられることになる。
【0199】図49には、ボールねじ機構760を第2
ハウジング890に組み付ける様子が示されている。以
下、その様子を説明する。
【0200】まず、2つのベアリング900,902が
回転部材754に圧入される。次に、ボールねじ機構7
60がベアリング900,902と一緒に、第2ハウジ
ング890内に挿入される。第2ハウジング890は有
底の円筒状部材であり、ボールねじ機構760はその第
2ハウジング890の開口部から挿入される。この際ス
プリング746も一緒に挿入される。
【0201】第2ハウジング890の底部918の内壁
面920には位置決め部922が、その第2ハウジング
890の開口部に向かって形成されている。この位置決
め部922は、2つのベアリング900,902のうち
先に第2ハウジング890内に挿入されるもの(底部に
より近いもの)であるベアリング900の外輪904の
外側端面(他方のベアリング902の側とは反対側の端
面)と当接させられるものである。この位置決め部92
2により、ボールねじ機構760が第2ハウジング89
0内に挿入される限度位置が規定される。また、その当
接状態においては、外輪904の円環溝910が、第2
ハウジング890の貫通穴912に正対し、これによ
り、ベアリング900,902が第2ハウジング890
に対して位置決めされることになる。
【0202】その後、第2ハウジング890の複数個の
貫通穴912に複数本のピン913がそれぞれ圧入され
る。ところで、第2ハウジング890と第1ハウジング
702とは、共に有底円筒状を成していて、それらの開
口部においてプレート926を挟んだ状態で互いに対向
させられている。そのプレート926には、2つのベア
リング900,902のうちそのプレート926に近い
ものであるベアリング902の外輪904の外側端面
(他方のベアリング900の側とは反対側の端面)にす
き間を隔てて対向する移動阻止部930が形成されてい
る。移動阻止部930は、万一、ピン913によりベア
リング900,902の軸方向移動を阻止することがで
きない事態が生じたとしても、その外輪904が当接す
ることにより、異常な軸方向移動を阻止する機能を有す
る。そして、ピン913の圧入終了後、第1ハウジング
702が第2ハウジング890に、プレート926を挟
んだ状態で、結合部材としてのボルト711(図46参
照)により、強固に結合される。
【0203】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、ベアリング900,902がそれぞれ
「連結器」を構成し、円環溝910と貫通穴912とピ
ン913とが互いに共同して「取付部」を構成している
のである。また、貫通穴912が「穴」を構成し、ピン
913が「軸状部材」を構成し、円環溝910が「係合
部」を構成しているのである。
【0204】以上、本実施形態におけるマニュアルブレ
ーキ制御装置の構成および組付け方法を説明したが、マ
ニュアルブレーキ制御装置は種々の変形を加えた態様で
実施することが可能である。
【0205】例えば、本実施形態においては、各ベアリ
ング900,902毎にピン913が複数本使用される
ようになっているが、各ベアリング900,902毎に
1本のみ使用するようにすることが可能である。
【0206】また、本実施形態においては、ピン913
が、ボルトにおける如き頭部を有しない形状とされてい
るが、貫通穴912に圧入されるべき軸部と、それより
大径の頭部とが一体的に形成された構成とすることも可
能である。この場合、頭部が第2ハウジング890の外
周面に当接するまでピン913を第2ハウジング890
に押し込んだときに、ピン913が正規の取付位置とな
るように設計することができる。
【0207】さらに、本実施形態においては、軸状部材
としてピン913が使用されているが、貫通穴912に
ねじを切った上で、そのねじに螺合するボルトをピン9
13に代えて使用することも可能である。この場合、ボ
ルトを貫通穴912に、そのボルトの頭部が第2ハウジ
ング890の外周面に接触するまでねじ込むことによ
り、ボルトの軸方向位置決めを行うことができる。この
態様によれば、ボールねじ機構760を第2ハウジング
890に組み付けた後、第2ハウジング890から取り
外すことが必要になった場合、ボルトはピン913の場
合より簡単に取り外し可能であるため、マニュアルブレ
ーキ制御装置の修理し易さが向上する。
【0208】次に、本発明の第19実施形態について説
明する。ただし、本実施形態は、第18実施形態と2つ
のベアリングを第2ハウジングに取り付ける構成のみが
異なり、他の構成については共通するため、共通する要
素については同一の符号を使用することによって詳細な
説明を省略し、異なる構成のみについて詳細に説明す
る。
【0209】第18実施形態においては、各ベアリング
900,902が第2ハウジング890に対して軸方向
に移動することがそれぞれピン913により阻止されて
いる。これに対して、本実施形態においては、その軸方
向移動がピン913を用いることなく阻止されている。
【0210】具体的には、本実施形態は、図50に示す
ように、有底円筒状の第2ハウジング950とプレート
954とを備えている。それら第2ハウジング950お
よびプレート954はそれぞれ、第18実施形態におけ
る第2ハウジング890およびプレート926と同様の
機能を有している。その第2ハウジング950にねじ機
構760の回転部材754が2つのベアリング960,
962を介して回転可能に支持されている。それらベア
リング960,962は、第18実施形態におけると同
様に、外輪964と内輪966とがボール968を介し
て相対回転可能に連結されたボールベアリングとされて
いる。
【0211】第2ハウジング950には位置決め部95
6が、第2ハウジング950の開口部に対向する状態で
形成されている。位置決め部956は、2つのベアリン
グ960,962のうち第2ハウジング950の底部に
近接して配置されるベアリング960の外輪964の外
側端面(両端面のうち他方のベアリング962から遠い
端面)に接触させられ、それにより、ベアリング960
の軸方向位置を決定する。
【0212】プレート954には位置決め部958が、
第2ハウジング950の底部に対向する状態で形成され
ている。位置決め部958は、2つのベアリング96
0,962のうち第2ハウジング950の開口部に近接
して配置されるベアリング962の外輪964の外側端
面(両端面のうち他方のベアリング960から遠い端
面)に接触させられ、それにより、ベアリング962の
軸方向位置を決定する。
【0213】回転部材754には、それらベアリング9
60,962の間において、筒状の位置決め部材970
が同軸に配置されている。位置決め部材970の軸方向
長さは、回転部材754に正規位置において装着された
2つのベアリング960,962の内側端面間の距離よ
りわずかに短く設定されている。一方、それらベアリン
グ960,962の外輪964は、それの径方向におい
て、第2ハウジング950に円筒面として形成された内
周面974にすき間を隔てて対向させられている。した
がって、本実施形態においては、互いに対向する2つの
位置決め部956,958と、それら位置決め部95
6,958の中間に位置する位置決め部材970との共
同作用により、ベアリング960,962について個々
に、軸方向移動が阻止される一方、径方向移動が許容さ
れる。
【0214】位置決め部材970の外径寸法は、第2ハ
ウジング950の内周面974にわずかなすき間を残し
て嵌合させられている。それにより、位置決め部材97
0がそれの径方向にみだりに動くことが防止されてい
る。
【0215】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、第2ハウジング950が「ハウジング」
を構成し、ベアリング960,962がそれぞれ「連結
器」を構成し、位置決め部956,958および位置決
め部材970が互いに共同して「取付部」を構成してい
るのである。
【0216】次に、本発明の第20実施形態を説明す
る。ただし、本実施形態は、第18実施形態と共通する
要素が多く、異なるのはパーキングブレーキに関する構
成のみであるため、その構成について詳細に説明し、共
通する要素については同一の符号を使用することによっ
て詳細な説明を省略する。
【0217】図51に示すように、本実施形態は、第1
8実施形態におけると同様に、ブレーキペダル装置30
2とマニュアルブレーキ制御装置700とを備えてい
る。ただし、ブレーキペダル装置302は、第18実施
形態におけるとは異なり、ペダルロック機構990を備
えている。ペダルロック機構990は、ブレーキペダル
34が操作位置(踏込み位置)から非操作位置(非踏込
み位置)に戻ることを許容する状態と、阻止する状態と
に切り換わる。ペダルロック機構990は、従来のパー
キングブレーキ操作装置におけると同様に、ラチェット
ポールと溝とを主体とするラチェット機構を採用するこ
とができる。この場合、ラチェットポールが溝に係合可
能な状態と係合不能な状態とに切り換えるために、その
ラチェットポールを人力を利用して機械的に作動させた
り、ソレノイドの電磁力を利用して電磁的に作動させる
ことができる。
【0218】ペダルロック機構990には、操作部材9
92が設けられている。操作部材992は、ベダルロッ
ク機構990が機械式である場合には、運転者の力をペ
ダルロック機構990に入力する力入力部材とされ、一
方、ペダルロック機構990が電磁式である場合には、
ソレノイドをON状態とOFF状態とに切り換える電気
式なスイッチとされる。
【0219】以上のように構成されたブレーキシステム
においては、車両のイグニションスイッチのOFF状
態、すなわち、電動式ドラムブレーキ32の非作動状態
では、操作部材992が、ペダルロック機構990がブ
レーキペダル34の戻りを阻止する状態となるように操
作された場合には、その後、ブレーキペダル34が非操
作位置から操作位置に操作されると、その戻りが阻止さ
れる。そのため、左右後輪用の機械式ドラムブレーキ3
6が左右後輪のパーキングブレーキとして作動させられ
る。したがって、本実施形態においては、車両のパーキ
ングが、左右後輪用の機械式ドラムブレーキ36と、超
音波モータ20の静止保持トルクを利用した左右前輪用
の電動式ディスクブレーキ22との双方によって行われ
ることになる。ただし、電動式ディスクブレーキ22に
よる作動は省略し、機械式ドラムブレーキ36の作動の
みによって車両のパーキングを行うことが可能である。
【0220】これに対して、電動式ドラムブレーキ32
の作動状態では、操作部材992が上記のように操作さ
れると、その戻りが阻止される。この点、電動式ドラム
ブレーキ32の非作動状態におけると同様であるが、機
械式ドラムブレーキ36ではなく電動式ドラムブレーキ
32が左右後輪のパーキングブレーキとして作動させら
れる点で相違する。
【0221】なお付言すれば、車両のイグニションスイ
ッチがONであるかOFFであるかを問わず、運転者が
操作部材992を操作することにより、車両をパーキン
グさせる意思表示を示した場合には、電動式ドラムブレ
ーキ32を作動させないで機械式ドラムブレーキ36に
よって車両のパーキングが行われるように本実施形態を
変更することが可能である。
【0222】以上、本発明のいくつかの実施形態を図面
に基づいて詳細に説明したが、それらの他にも、特許請
求の範囲を逸脱することなく当業者の知識に基づいて種
々の変形,改良を施した形態で本発明を実施することが
できるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態であるブレーキシステム
の全体構成を示す系統図である。
【図2】図1における電動式ディスクブレーキを拡大し
て示す平面断面図である。
【図3】図1における電動式ドラムブレーキと機械式ド
ラムブレーキとを拡大して示す側面断面図である。
【図4】図3におけるシュー拡張アクチュエータを拡大
して示す部分断面側面図である。
【図5】図1におけるマニュアルブレーキ制御装置を拡
大して示す側面断面図である。
【図6】図5における第2ピストンの作動開始時期を操
作力Fおよび車体減速度との関係において示すグラフで
ある。
【図7】図1におけるコンピュータのROMに記憶され
ているブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートであ
る。
【図8】上記ROMに記憶されているブレーキ警告ルー
チンを示すフローチャートである。
【図9】上記ROMに記憶されているパーキング制御ル
ーチンを示すフローチャートである。
【図10】上記第1実施形態における電動式ドラムブレ
ーキと機械式ドラムブレーキとに関してブレーキの効き
の関係の一例を説明するためのグラフである。
【図11】上記ブレーキの効きの関係の別の例を説明す
るためのグラフである。
【図12】本発明の第2実施形態であるブレーキシステ
ムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す
側面断面図である。
【図13】その第2実施形態におけるコンピュータのR
OMに記憶されている異常作動防止ルーチンをしめすフ
ローチャートである。
【図14】そのROMに記憶されているブレーキ制御ル
ーチンを示すフローチャートである。
【図15】本発明の第3実施形態であるブレーキシステ
ムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す
側面断面図である。
【図16】その第3実施形態におけるコンピュータのR
OMに記憶されている第2ピストン作動許可・禁止ルー
チンを示すフローチャートである。
【図17】本発明の第4実施形態であるブレーキシステ
ムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す
側面断面図である。
【図18】その第4実施形態におけるコンピュータのR
OMに記憶されている第2ピストン作動許可・禁止ルー
チンを示すフローチャートである。
【図19】本発明の第5実施形態であるブレーキシステ
ムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す
側面断面図である。
【図20】本発明の第6実施形態であるブレーキシステ
ムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す
側面断面図である。
【図21】本発明の第7実施形態であるブレーキシステ
ムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す
側面断面図である。
【図22】本発明の第8実施形態であるブレーキシステ
ムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す
側面断面図である。
【図23】本発明の第9実施形態であるブレーキシステ
ムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示す
側面断面図である。
【図24】図23におけるレバー作動許可・禁止装置を
拡大して示すとともに、その作動状態の変化を示す平面
断面図である。
【図25】上記第9実施形態のコンピュータのROMに
記憶されているレバー作動許可・禁止ルーチンを示すフ
ローチャートである。
【図26】本発明の第10実施形態であるブレーキシス
テムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示
す側面断面図である。
【図27】図26におけるレバー作動許可・禁止装置を
拡大して示すとともに、その作動状態の変化を示す平面
断面図である。
【図28】上記第10実施形態のコンピュータのROM
に記憶されているレバー作動許可・禁止ルーチンを示す
フローチャートである。
【図29】そのROMに記憶されているソレノイド異常
チェックルーチンを示すフローチャートである。
【図30】本発明の第11実施形態であるブレーキシス
テムにおけるコンピュータのROMに記憶されているレ
バー作動許可・禁止ルーチンを示すフローチャートであ
る。
【図31】本発明の第12実施形態であるブレーキシス
テムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示
す側面断面図である。
【図32】本発明の第13実施形態であるブレーキシス
テムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示
す側面断面図である。
【図33】本発明の第14実施形態であるブレーキシス
テムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示
す側面断面図である。
【図34】そのマニュアルブレーキ制御装置における第
1ピストンと第2ピストンとの連携を説明するための正
面断面図である。
【図35】そのマニュアルブレーキ制御装置において非
常ブレーキ用ケーブルが回転部材によって巻き取られる
様子を説明するための正面断面図である。
【図36】そのマニュアルブレーキ制御装置における第
1ハウジングと駆動装置とカバーとが相互に組み付けら
れる様子を説明するための斜視図である。
【図37】その駆動装置におけるソレノイドを制御する
ためのブレーキ切換制御ルーチンを示すフローチャート
である。
【図38】本発明の第15実施形態であるブレーキシス
テムにおけるマニュアルブレーキ制御装置における第1
ピストンと第2ピストンとの連携を説明するための側面
断面図である。
【図39】本発明の第16実施形態であるブレーキシス
テムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を拡大して示
す側面断面図である。
【図40】本発明の第17実施形態であるブレーキシス
テムの全体構成を示す系統図である。
【図41】図40におけるECUによるブレーキ制御の
内容を故障モードとの関係において表形式で示す図であ
る。
【図42】そのブレーキ制御の内容を故障モードが1輪
故障である場合と2輪故障である場合とについてさらに
詳細に表形式で示す図である。
【図43】図42におけるFR輪,FL輪,RR輪およ
びRL輪の車両上の位置を説明するための平面図であ
る。
【図44】上記ECUのコンピュータにより実行される
ブレーキ故障判定ルーチンを示すフローチャートであ
る。
【図45】そのコンピュータにより実行されるブレーキ
制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図46】本発明の第18実施形態であるブレーキシス
テムにおけるマニュアルブレーキ制御装置を示す側面断
面図である。
【図47】そのマニュアルブレーキ制御装置におけるボ
ールねじ機構が第2ハウジングに取り付けられる部分を
拡大して示す側面断面図である。
【図48】そのボールねじ機構を回転部材に支持するベ
アリングを一部破断して示す斜視図である。
【図49】上記第2ハウジングにボールねじ機構が組み
付けられる様子を説明するための側面断面図である。
【図50】本発明の第19実施形態であるブレーキシス
テムのマニュアルブレーキ制御装置においてベアリング
が第2ハウジングに取り付けられる部分を示す側面断面
図である。
【図51】本発明の第20実施形態であるブレーキシス
テムにおけるマニュアルブレーキ制御装置とブレーキペ
ダル装置とを示す側面断面図である。
【符号の説明】
30 DCモータ 32 電動式ドラムブレーキ 34 ブレーキペダル 36 機械式ドラムブレーキ 50,880 電子制御ユニットECU 204 ドラム 216 ブレーキライニング 240 常用ブレーキ用ケーブル 250 シュー拡張アクチュエータ 282 非常ブレーキ用ケーブル 300,388,406,430,468,488,5
04,528,548,581,618,638,70
0,840 マニュアルブレーキ制御装置 302 ブレーキペダル装置 312 プッシュロッド 316,714 第1ピストン 318,736,810 第2ピストン 320 スプリング 326 レバー装置 328 レバー 370 第1バッテリ 372 第2バッテリ 374 主バッテリ 390 第2ピストン作動スイッチ 408,432 第2ピストン作動許可・禁止装置 410 制御液室 420 ソレノイドバルブ 440 第1制御液室 442 第2制御液室 450 第1ソレノイドバルブ 452 第2ソレノイドバルブ 550,596 レバー作動許可・禁止装置 580 操作ストローク付与機構 890,950 第2ハウジング 900,902,960,962 ベアリング 910 円環溝 912 貫通穴 913 ピン 956,958 位置決め部 970 位置決め部材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 貴之 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 丹羽 悟 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 Fターム(参考) 3D046 BB01 CC01 CC06 EE01 HH02 LL14 MM04 MM13 3J058 AA29 AA30 AA37 AA78 AA79 AA87 BA13 BA60 CC08 CC15 CC63 CC66 CC67 CD24 CD27 DB29 FA01

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ブレーキ操作部材と、 そのブレーキ操作部材の操作状態を表す操作情報に基づ
    き、モータを駆動源として流体圧を使用しないで摩擦材
    を車輪と共に回転する回転体に押圧することにより、電
    気的に前記車輪を制動する電気ブレーキと、 前記ブレーキ操作部材を駆動源として摩擦材を前記車輪
    と共に回転する回転体に押圧することにより、機械的に
    前記車輪を制動するマニュアルブレーキと、 そのマニュアルブレーキと前記ブレーキ操作部材との間
    に設けられ、前記電気ブレーキの非作動時にはマニュア
    ルブレーキの作動を許可し、作動時には禁止するマニュ
    アルブレーキ制御装置とを含むことを特徴とするブレー
    キシステム。
  2. 【請求項2】前記マニュアルブレーキ制御装置が、前記
    電気ブレーキの作動時に前記マニュアルブレーキが予定
    外に作動することを防止する予定外作動防止装置を含む
    請求項1に記載のブレーキシステム。
  3. 【請求項3】前記摩擦材が、前記電気ブレーキとマニュ
    アルブレーキとに共通に設けられており、前記マニュア
    ルブレーキ制御装置が、そのマニュアルブレーキ制御装
    置が前記電気ブレーキによる前記摩擦材の作動を阻害す
    ることを防止する電気ブレーキ作動阻害防止装置を含む
    請求項1または2に記載のブレーキシステム。
  4. 【請求項4】前記摩擦材が、前記電気ブレーキとマニュ
    アルブレーキとに共通に設けられており、前記電気ブレ
    ーキが、その電気ブレーキが前記マニュアルブレーキに
    よる前記摩擦材の作動を阻害することを防止するマニュ
    アルブレーキ作動阻害防止装置を含む請求項1ないし3
    のいずれかに記載のブレーキシステム。
  5. 【請求項5】前記マニュアルブレーキが、それの前記摩
    擦材にフレキシブルなケーブルが直接にまたは間接に連
    結されるとともに、そのケーブルの引張力により摩擦材
    が前記回転体に接近する向きに駆動されるものであり、
    前記マニュアルブレーキ制御装置が、(a) 前記ブレーキ
    操作部材の操作力により一軸線方向に直線運動させられ
    る直線運動部材と、(b) その直線運動部材と同軸な軸線
    まわりに回転させられることにより、前記ケーブルを巻
    き取り、それにより、そのケーブルに引張力を付与する
    回転部材と、(c) 前記直線運動部材の直線運動を前記回
    転部材の回転運動に変換する運動変換機構とを含む請求
    項1ないし4のいずれかに記載のブレーキシステム。
  6. 【請求項6】前記マニュアルブレーキ制御装置が、さら
    に、(a) ハウジングと、(b) そのハウジングと前記回転
    部材とをその回転部材の軸線まわりに相対回転可能に連
    結する連結器と、(c) その連結器を前記ハウジングと前
    記回転部材とに、それらハウジングと回転部材との、そ
    の回転部材の軸線と平行な第1方向における相対変位は
    阻止し、その軸線と交差する第2方向における相対変位
    は許容する状態で取り付ける取付部とを含む請求項5に
    記載のブレーキシステム。
  7. 【請求項7】前記取付部が、 (a) 前記ハウジングに前記第2方向に延びる状態で形成
    された穴と、 (b) その穴に、前記第1方向においてすき間を実質的に
    有しないで嵌入される軸状部材と、 (c) 前記連結器の、前記ハウジングと前記第2方向にお
    いて対向する面に形成された係合部であって、前記軸状
    部材が、第2方向にはすき間を有して嵌入される一方、
    前記第1方向にはすき間を実質的に有しないで嵌入され
    るものとを含む請求項6に記載のブレーキシステム。
  8. 【請求項8】前記マニュアルブレーキ制御装置が、(a)
    前記ブレーキ操作部材と前記マニュアルブレーキとの間
    に設けられた相対変位可能な2部材であって、相対変位
    が禁止される状態でブレーキ操作部材の操作力をマニュ
    アルブレーキに伝達するものと、(b) 前記電気ブレーキ
    の非作動時には前記2部材の相対変位を禁止し、それに
    より、前記マニュアルブレーキの作動を許可する許可状
    態となり、一方、電気ブレーキの作動時には2部材の相
    対変位を許可し、それにより、マニュアルブレーキの作
    動を禁止する禁止状態となる相対変位制御装置であっ
    て、前記ブレーキ操作部材の非操作時であるか操作時で
    あるかを問わず、2部材の相対変位を許可する状態から
    禁止する状態へ移行し得るものとを含む請求項1ないし
    7のいずれかに記載のブレーキシステム。
  9. 【請求項9】前記車輪が4個、車両の前後左右にそれぞ
    れ設けられており、前記電気ブレーキが複数個、それら
    4個の車輪にそれぞれ設けられており、前記マニュアル
    ブレーキが複数個、前記4個の車輪のうち車両の前側と
    後側との少なくとも一方において左右にそれぞれ設けら
    れた少なくとも一対の左右輪にそれぞれ設けられてお
    り、前記マニュアルブレーキ制御装置が、前記4個の車
    輪のうちの2個において電気ブレーキが故障した場合
    に、それら2個の車輪が、4個の車輪のうち車両の左側
    と右側とのいずれか一方において前後にそれぞれ設けら
    れた一対の前後輪であるときには、前記マニュアルブレ
    ーキの作動を許可するものである請求項1ないし8のい
    ずれかに記載のブレーキシステム。
  10. 【請求項10】ブレーキ操作部材と、 そのブレーキ操作部材の操作状態を表す操作情報に基づ
    き、モータを駆動源として流体圧を使用しないで摩擦材
    を車輪と共に回転する回転体に押圧することにより、電
    気的に前記車輪を制動する電気ブレーキと、 前記ブレーキ操作部材を駆動源として摩擦材を車輪と共
    に回転する回転体に押圧することにより、機械的に前記
    車輪を制動するマニュアルブレーキと、 そのマニュアルブレーキと前記ブレーキ操作部材とを互
    いに機械的に連携させる連携装置であって、ブレーキ操
    作部材により機械的に、そのブレーキ操作部材の操作力
    または操作ストロークが基準値を超えた場合には操作力
    をマニュアルブレーキに伝達する状態となり、超えない
    場合には伝達しない状態となる連携装置とを含むことを
    特徴とするブレーキシステム。
  11. 【請求項11】前記摩擦材が、前記電気ブレーキとマニ
    ュアルブレーキとに共通に設けられており、前記連携装
    置が、 (a) ハウジングと、 (b) そのハウジングに摺動可能に嵌合されて前記ブレー
    キ操作部材と機械的に連動する第1ピストンと、 (c) その第1ピストンを、前記ブレーキ操作部材が操作
    位置から非操作位置に向かう向きに付勢する弾性部材
    と、 (d) 前記第1ピストンと同軸に、かつ、その第1ピスト
    ンと相対移動可能に前記ハウジングに摺動可能に嵌合さ
    れた第2ピストンであって、第1ピストンの作動力また
    は作動ストロークが基準値を超えない場合には第1ピス
    トンにより作動させられず、超えた場合には第1ピスト
    ンにより作動させられる第2ピストンと、 (e) その第2ピストンにより回動させられるレバーと、 (f) そのレバーと前記摩擦材とを互いに連結する可撓性
    を有する第1連結部材であって、レバーの作動力を引張
    力として摩擦材にその摩擦材が前記マニュアルブレーキ
    の回転体に接近する向きに伝達するものとを含む請求項
    10に記載のブレーキシステム。
  12. 【請求項12】前記電気ブレーキが、前記モータと前記
    摩擦材とを互いに連結する可撓性を有する第2連結部材
    であって、モータの駆動力を引張力として摩擦材にその
    摩擦材が電気ブレーキの回転体に接近する向きに伝達す
    るものを含む請求項11に記載のブレーキシステム。
  13. 【請求項13】前記連携装置が、さらに、前記電気ブレ
    ーキの非作動時には前記第2ピストンの作動を許可し、
    作動時には禁止する第2ピストン作動許可・禁止装置を
    含む請求項11または12に記載のブレーキシステム。
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