JP4291824B2 - 動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法 - Google Patents

動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法に関する。
従来、この種の動力出力装置としては、遊星歯車機構にエンジンとモータMG1と駆動軸とを接続すると共に駆動軸にモータMG2を接続し、モータMG1,MG2と電力のやりとりが可能なバッテリを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、装置に要求される要求パワーに基づいて効率のよい運転ポイントでエンジンを運転することにより、装置全体のエネルギ効率の向上を図っている。
特開平10−98805号公報
ところで、こうした動力出力装置は、車両などの限られたスペースに配置されることを考えるとできる限り小型であることが好ましいものの、運転者の要求にはできる限り対処することが望まれる。また、こうした動力出力装置では、バッテリへの過大な電力の入出力を抑制することも課題の一つとして考えられる。したがって、エンジンやモータMG1,MG2をより適正に制御することが必要とされる。
本発明の動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びにその制御方法は、内燃機関をより適正に運転することを目的の一つとする。また、本発明の動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びにその制御方法は、蓄電手段に過大な電力が入力されるのを抑制することを目的の一つとする。
本発明の動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明の動力出力装置は、
駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
内燃機関と、
該内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され電力と動力の入出力を伴って前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を前記駆動軸に出力する電力動力入出力手段と、
前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、
前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、
装置に要求される要求パワーを設定する要求動力設定手段と、
前記電力動力入出力手段から出力している駆動力と前記内燃機関の回転数と前記内燃機関および前記電力動力入出力手段からなる系のイナーシャとに基づいて前記内燃機関から出力している推定パワーを演算する推定動力演算手段と、
前記駆動軸に出力される駆動軸パワーと前記蓄電手段の入力制限と前記推定された推定パワーとに基づいて前記内燃機関から出力可能な上限パワーを設定する上限パワー設定手段と、
前記設定された要求パワーを前記設定された上限パワーによって制限して前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定する目標パワー設定手段と、
前記設定された目標パワーが所定の制約をもって前記内燃機関から出力されると共に前記要求パワーに基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の動力出力装置では、電力動力入出力手段から出力している駆動力と内燃機関の回転数と内燃機関および電力動力入出力手段からなる系のイナーシャとに基づいて内燃機関から出力している推定パワーを演算すると共に演算した推定パワーと駆動軸に出力される駆動軸パワーと蓄電手段の入力制限とに基づいて内燃機関から出力可能な上限パワーを設定し、設定した上限パワーによって装置に要求される要求パワーを制限して内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、設定した目標パワーが所定の制約をもって内燃機関から出力されると共に要求パワーに基づく駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御する。即ち、内燃機関および電力動力入出力手段からなる系のイナーシャを考慮して演算した推定パワーと駆動軸パワーと蓄電手段の入力制限とに基づいて上限パワーを設定し、設定した上限パワーによって要求パワーを制限して内燃機関から出力すべき目標パワーを設定するのである。これにより、イナーシャを考慮しないものに比して目標パワーをより適正に設定することができ、内燃機関をより適正な範囲内で運転することができる。また、蓄電手段への過大な電力の入力も抑制することができる。もとより、要求パワーに基づく駆動力を駆動軸に出力することができる。ここで、「駆動軸パワー」には、駆動軸に現在出力している現在パワーや駆動軸に要求される駆動軸要求パワーなどが含まれる。
こうした本発明の動力出力装置において、前記推定動力演算手段は、前記内燃機関および前記電力動力入出力手段からなる系の慣性モーメントと前記内燃機関の回転数の時間微分との積に基づいて前記内燃機関および前記電力動力入出力手段からなる系のイナーシャを演算する手段であるものとすることもできる。こうすれば、内燃機関および電力動力入出力手段からなる系のイナーシャをより適正に演算することができる。
また、本発明の動力出力装置において、前記推定動力演算手段は、前記内燃機関が始動されてからの時間に基づいて反映率を設定し、前記電力動力入出力手段から出力している駆動力と前記内燃機関の回転数と前記内燃機関および前記電力動力入出力手段からなる系のイナーシャに該設定した反映率を乗じたものとに基づいて前記推定パワーを演算する手段であるものとすることもできる。この場合、前記推定動力演算手段は、前記内燃機関が始動されてから所定時間が経過しているときには第1の所定値を前記反映率として設定し、前記内燃機関が始動されてから前記所定時間が経過していないときには前記第1の所定値より小さい第2の所定値を前記反映率として設定するものとすることもできる。内燃機関が始動された直後は内燃機関のフリクションが大きく内燃機関の回転が不安定となっていることがあるが、こうすれば、内燃機関の回転が不安定なときに、回転変動に伴う系のイナーシャが過剰に加味されて推定パワーが演算されてしまうのを抑制することができる。この結果、内燃機関が始動されてから所定時間が経過しているか否かに応じて推定パワーをより適正に演算することができる。
さらに、本発明の動力出力想定において、前記内燃機関の温度である機関温度を検出する機関温度検出手段を備え、前記推定動力演算手段は、前記検出された機関温度に基づいて反映率を設定し、前記電力動力入出力手段から出力している駆動力と前記内燃機関の回転数と前記内燃機関および前記電力動力入出力手段からなる系のイナーシャに該設定した反映率を乗じたものとに基づいて前記推定パワーを演算する手段であるものとすることもできる。この場合、前記推定動力演算手段は、前記検出された機関温度が低いほど小さくなる傾向に前記反映率を設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、内燃機関の温度が低いときに、内燃機関のフリクションが大きくなることによってフリクションに基づく回転変動に伴う系のイナーシャが過剰に加味されて推定パワーが演算されてしまうのを抑制することができる。この結果、機関温度に応じて推定パワーをより適正に演算することができる。
あるいは、本発明の動力出力装置において、前記上限パワー設定手段は、前記駆動軸に出力される駆動軸パワーと前記蓄電手段の入力制限とに基づいて仮上限パワーを設定し、該設定した仮上限パワーと前記推定された推定パワーとに基づいて前記上限パワーを設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、上限パワーをより適正に設定することができる。この場合、前記上限パワー設定手段は、前記駆動軸に出力される駆動軸パワーと前記蓄電手段の入力制限との差として前記仮上限パワーを設定し、該設定した仮上限パワーと前記推定された推定パワーとの差に基づくフィードバック項を前記仮上限パワーに加えて前記上限パワーを設定する手段であるものとすることもできる。
本発明の動力出力装置において、前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と第3の軸との3軸に接続され該3軸のうちいずれか2軸に入出力した動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記第3の軸に動力を入出力可能な発電機とを備える手段であるものとすることもできるし、前記内燃機関の出力軸に取り付けられた第1の回転子と前記駆動軸に取り付けられた第2の回転子とを備え、該第1の回転子と該第2の回転子との電磁作用による電力の入出力を伴って前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を前記駆動軸に出力する対回転子電動機であるものとすることもできる。
本発明の自動車は、上述のいずれかの態様の本発明の動力出力装置、即ち、基本的には、内燃機関と、該内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され電力と動力の入出力を伴って前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を前記駆動軸に出力する電力動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、装置に要求される要求パワーを設定する要求動力設定手段と、前記電力動力入出力手段から出力している駆動力と前記内燃機関の回転数と前記内燃機関および前記電力動力入出力手段からなる系のイナーシャとに基づいて前記内燃機関から出力している推定パワーを演算する推定動力演算手段と、前記駆動軸に出力される駆動軸パワーと前記蓄電手段の入力制限と前記推定された推定パワーとに基づいて前記内燃機関から出力可能な上限パワーを設定する上限パワー設定手段と、前記設定された要求パワーを前記設定された上限パワーによって制限して前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定する目標パワー設定手段と、前記設定された目標パワーが所定の制約をもって前記内燃機関から出力されると共に前記要求パワーに基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する制御手段と、を備える動力出力装置を搭載し、車軸が前記駆動軸に連結されてなることを要旨とする。
この本発明の自動車は、上述のいずれかの態様の本発明の動力出力装置を搭載するから、本発明の動力出力装置が奏する効果、例えば、内燃機関をより適正に運転することができる効果や装置に要求される要求パワーに基づく駆動力を駆動軸に出力することができる効果などと同様の効果を奏することができる。
本発明の動力出力装置の制御方法は、
内燃機関と、該内燃機関の出力軸と駆動軸とに接続され電力と動力の入出力を伴って前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を前記駆動軸に出力する電力動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備える動力出力装置の制御方法であって、
(a)装置に要求される要求パワーを設定し、
(b)前記電力動力入出力手段から出力している駆動力と前記内燃機関の回転数と前記内燃機関および前記電力動力入出力手段からなる系のイナーシャとに基づいて前記内燃機関から出力している推定パワーを演算し、
(c)前記駆動軸に出力される駆動軸パワーと前記蓄電手段の入力制限と前記推定された推定パワーとに基づいて前記内燃機関から出力可能な上限パワーを設定し、
(d)前記設定された要求パワーを前記設定された上限パワーによって制限して前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、
(e)前記設定された目標パワーが所定の制約をもって前記内燃機関から出力されると共に前記要求パワーに基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する
ことを要旨とする。
この本発明の動力出力装置の制御方法によれば、電力動力入出力手段から出力している駆動力と内燃機関の回転数と内燃機関および電力動力入出力手段からなる系のイナーシャとに基づいて内燃機関から出力している推定パワーを演算すると共に演算した推定パワーと駆動軸に出力される駆動軸パワーと蓄電手段の入力制限とに基づいて内燃機関から出力可能な上限パワーを設定し、設定した上限パワーによって装置に要求される要求パワーを制限して内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、設定した目標パワーが所定の制約をもって内燃機関から出力されると共に要求パワーに基づく駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御する。即ち、内燃機関および電力動力入出力手段からなる系のイナーシャを考慮して演算した推定パワーと駆動軸パワーと蓄電手段の入力制限とに基づいて上限パワーを設定し、設定した上限パワーによって要求パワーを制限して内燃機関から出力すべき目標パワーを設定するのである。これにより、イナーシャを考慮しないものに比して目標パワーをより適正に設定することができ、内燃機関をより適正な範囲内で運転することができる。また、蓄電手段への過大な電力の入力も抑制することができる。もとより、要求パワーに基づく駆動力を駆動軸に出力することができる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例としての動力出力装置を搭載するハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、減速ギヤ35を介して動力分配統合機構30に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、クランクシャフト26のクランク角を検出するクランク角センサ23などエンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構37,デファレンシャルギヤ38を介して駆動輪39a,39bに出力される。
モータMG1およびモータMG2は、共に発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2の一方で発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2から生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1とモータMG2とにより電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、共にモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、回転位置検出センサ43,44から入力した信号に基づいて図示しない回転数算出ルーチンによりモータMG1,MG2の回転子の回転数Nm1,Nm2を計算している。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)も演算している。
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量に対応したアクセル開度Accを検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。なお、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
次に、こうして構成されたハイブリッド自動車20の動作について説明する。図2は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、数msec毎)に実行される。
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,エンジン22の回転数Ne,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50が充放電すべき充放電要求パワーPb*,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなどのデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neは、クランク角センサ23により検出されるクランクシャフト26のクランク角に基づいて計算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されるモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて計算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、充放電要求パワーPb*は、バッテリ50の残容量(SOC)などに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbと残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*とエンジン22に要求される要求パワーP*とを設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図3に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求パワーP*は、要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が充放電すべき充放電要求パワーPb*との和により設定するものとした。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除することにより求めたり、車速Vに換算計数kを乗じることにより求めたりすることができる。
続いて、モータMG1の慣性係数Im1とエンジン22の慣性係数Ieと動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いてエンジン22からみたエンジン22とモータMG1とからなる慣性系の慣性モーメントIを次式(1)により計算すると共に計算した慣性モーメントIにエンジン22の回転数Neの時間微分、例えば今回入力されたエンジン22の回転数Neと前回入力されたエンジン22の回転数(前回Ne)との差をこのルーチンの実行間隔t1で除したもの((Ne−前回Ne)/t1)を乗じることによりエンジン22およびモータMG1からなる系のイナーシャTiを式(2)により計算し(ステップS120)、計算した系のイナーシャTiと前回このルーチンが実行されたときに後述するステップS190で計算されたモータMG1のトルク指令(前回Tm1*)と動力分配統合機構30のギヤ比ρとエンジン22の回転数Neとを用いてエンジン22から実際に出力しているパワーとしての推定パワーPeestを式(3)により計算する(ステップS130)。したがって、推定パワーPeestは、イナーシャTiを考慮しないものに比して、エンジン22の回転数Neが大きくなるときには大きくなり、エンジン22の回転数Neが小さくなるときには小さくなる。このようにエンジン22およびモータMG1からなる系のイナーシャTiを考慮することにより、推定パワーPeestをイナーシャTiを考慮しないものに比してより適正に計算することができる。
Figure 0004291824
次に、前回このルーチンが実行されたときに設定された要求トルク(前回Tr*)にリングギヤ軸32aの回転数Nr(=Nm2/Gr)を乗じることにより駆動軸としてのリングギヤ軸32aに現在出力しているパワーとしての現在パワーPrを次式(4)により計算し(ステップS140)、計算した現在パワーPrからバッテリ50の入力制限Winを減じることにより仮上限パワーPemaxtmpを式(5)により計算し(ステップS150)、計算した仮上限パワーPemaxtmpとステップS130で計算した推定パワーPeestとを用いてエンジン22から出力可能なパワーの上限としての上限パワーPemaxを式(6)により計算し(ステップS160)、計算した上限パワーPemaxによってステップS110で設定した要求パワーP*を制限してエンジン22から出力すべき目標パワーPe*を設定する(ステップS170)。ここで、式(6)は、フィードバック制御における関係式であり、式(6)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項における「k2」は積分項のゲインである。即ち、式(6)は、仮上限パワーPemaxtmpと推定パワーPeestとの差に基づくフィードバック項を仮上限パワーPemaxtmpに加えることにより上限パワーPemaxを計算する式となる。いま、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに比較的大きなパワーが要求されてエンジン22の回転数Neが大きくなる場合を考える。この場合、イナーシャTiを考慮しないものに比して、前述したように推定パワーPeestは大きくなるから、上限パワーPemaxは小さくなる。したがって、エンジン22から出力すべき目標パワーPe*はイナーシャTiを考慮しないものに比してより制限されることになる。これにより、エンジン22をより適正な範囲内で運転することができる。また、上限パワーPemaxを計算する際にバッテリ50の入力制限Winを考慮することにより、バッテリ50に過大な電力が入力されるのを抑制することができる。一方、エンジン22の回転数Neが小さくなる場合には、イナーシャTiを考慮しないものに比して上限パワーPemaxは大きくなるが、この場合、回転数Neが大きくなる場合に比して要求パワーP*は大きくないと考えられ、それほど問題とはならない。
Figure 0004291824
こうして目標パワーPe*を設定すると、設定した目標パワーPe*に基づいてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS180)。この設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと目標パワーPe*とに基づいて目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定することにより行なわれる。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*および目標トルクTe*を設定する様子を図4に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと目標パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定すると、設定した目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Nr(Nm2/Gr)と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて次式(7)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と現在の回転数Nm1とに基づいて式(8)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算する(ステップS190)。ここで、式(7)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図5に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(7)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。なお、R軸上の2つの太線矢印は、エンジン22を目標回転数Ne*および目標トルクTe*の運転ポイントで定常運転したときにエンジン22から出力されるトルクTe*がリングギヤ軸32aに伝達されるトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2*が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。また、式(8)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(8)中、右辺第2項の「k3」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k4」は積分項のゲインである。
Figure 0004291824
モータMG1の目標回転数Nm1*とトルク指令Tm1*とを計算すると、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと計算したモータMG1のトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tmax,Tminを次式(9)および式(10)により計算すると共に(ステップS200)、要求トルクTr*とトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いてモータMG2から出力すべきトルクとしての仮モータトルクTm2tmpを式(11)により計算し(ステップS210)、計算した仮モータトルクTm2tmpをトルク制限Tmax,Tminで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS220)。このようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定することにより、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力する要求トルクTr*を、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で制限したトルクとして設定することができる。なお、式(11)は、前述した図5の共線図から容易に導き出すことができる。
Figure 0004291824
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とについてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS230)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における燃料噴射制御や点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、エンジン22およびモータMG1からなる系のイナーシャTiを考慮してエンジン22から出力している推定パワーPeestを計算するから、系のイナーシャTiを考慮しないものに比して推定パワーPeestをより適正に計算することができる。また、こうして計算した推定パワーPeestを用いてエンジン22から出力可能なパワーの上限としての上限パワーPemaxを計算し、これによって要求パワーP*を制限してエンジン22から出力すべき目標パワーPe*を設定するから、エンジン22の回転数Neが大きくなる場合にはイナーシャTiを考慮しないものに比して目標パワーPe*はより制限されることになり、エンジン22をより適正な範囲内で運転することができる。しかも、上限パワーPemaxを計算する際には、バッテリ50の入力制限Winも考慮しているから、バッテリ50への過大な電力の入力も抑制することができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22およびモータMG1からなる系のイナーシャTiを計算するのに、エンジン22およびモータMG1からなる系の慣性モーメントIにエンジン22の回転数Neの時間微分を乗じることにより計算するものとしたが、エンジン22の回転数Neに代えてエンジン22の回転角速度を用いるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、前回設定された要求トルク(前回Tr*)にリングギヤ軸32aの回転数Nr(=Nm2/Gr)を乗じることにより駆動軸としてのリングギヤ軸32aに現在出力している現在パワーPrを計算すると共に計算した現在パワーPrとバッテリ50の入力制限Winとに基づいて仮上限パワーPemaxtmpを設定するものとしたが、今回設定された要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じることにより駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求される駆動軸要求パワーPr*を計算すると共に計算した駆動軸要求パワーPr*とバッテリ50の入力制限Winとに基づいて仮上限パワーPemaxtmpを設定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに現在出力している現在パワーPrとバッテリ50の入力制限Winとに基づいて仮上限パワーPemaxtmpを設定すると共に設定した仮上限パワーPemaxtmpとエンジン22から出力している推定パワーPeestとに基づいて上限パワーPemaxを設定するものとしたが、仮上限パワーPemaxtmpを設定することなく、現在パワーPrとバッテリ50の入力制限Winと推定パワーPeestとに基づいて直接的に上限パワーPemaxを設定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22およびモータMG1からなる系のイナーシャTiをそのまま用いて推定パワーPeestを設定するものとしたが、エンジン22が始動されてから所定時間が経過しているか否かやエンジン22を冷却する冷却水の温度などに基づいて反映率αを設定すると共にこの反映率αを系のイナーシャTiに乗じたものを用いて推定パワーPeestを設定するものとしてもよい。この構成について第2実施例として以下に説明する。
図6は、本発明の第2実施例としての動力出力装置を搭載するハイブリッド自動車20Bの構成の概略を示す構成図である。第2実施例のハイブリッド自動車20Bは、エンジン22を冷却する冷却水の温度である冷却水温Twを検出してエンジンECU24に入力する温度センサ23bを備える点や、指示に基づいて計時するタイマ78をハイブリッド用電子制御ユニット70が備える点を除いて図1に例示した第1実施例のハイブリッド自動車20と同一のハード構成をしている。したがって、重複した説明を回避するため、第2実施例のハイブリッド自動車20Bのハード構成のうち第1実施例のハイブリッド自動車20と同一のハード構成については、第1実施例のハイブリッド自動車20のハード構成と同一の符号を付した。
第2実施例のハイブリッド自動車20Bでは、図2の駆動制御ルーチンに代えて図7の駆動制御ルーチンを実行する。以下、図2のルーチンと異なる処理を中心に第2実施例のハイブリッド自動車20Bの動作について説明する。なお、図7のルーチンのうち図2のルーチンと同一の処理については同一のステップ番号を付した。
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、アクセル開度Accや車速V,エンジン回転数Ne,モータ回転数Nm1,Nm2,バッテリ50が充放電すべき充放電要求パワーPb*,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなどに加えて冷却水温Twを入力し(ステップS100b)、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて前述の図3の要求トルク設定用マップを用いて要求トルクTr*を設定すると共に設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nr(=Nm2/Gr)を乗じたものと充放電要求パワーPb*との和により要求パワーP*を設定する(ステップS110)。ここで、冷却水温Twは、温度センサ23bにより検出されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。
続いて、設定した要求パワーP*を閾値Prefと比較する(ステップS112)。ここで、閾値Prefは、エンジン22を効率よく運転可能なパワーの下限値などに設定され、エンジン22の特性などにより定められる。目標パワーPe*が閾値Pref以上のときには、エンジン22が運転されているか否かを判定し(ステップS114)、エンジン22が運転されていないと判定されたときには、エンジン22を始動すると共に(ステップS116)、タイマ78をスタートさせる(ステップS118)。一方、エンジン22が運転されていると判定されたときには、ステップS116,S118の処理を行なわない。
そして、モータMG1の慣性係数Im1とエンジン22の慣性係数Ieと動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いてエンジン22からみたエンジン22およびモータMG1からなる慣性系の慣性モーメントIを前述の式(1)により計算すると共に計算した慣性モーメントIにエンジン22の回転数Neの時間微分を乗じることによりエンジン22およびモータMG1からなる系のイナーシャTiを式(2)により計算し(ステップS120)、エンジン22が始動されてから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS122)。ここで、所定時間は、エンジン22が始動されてからエンジン22の回転が安定するまでの時間として設定され、エンジン22の特性などにより定められる。また、エンジン22が始動されてから所定時間が経過したか否かの判定は、エンジン22が始動されたときにスタートされたタイマ78の値を用いて行なうことができる。
そして、エンジン22が始動されてから所定時間が経過しているか否かと冷却水温Twとに基づいて反映率αを設定し(ステップS124,S126)、設定した反映率αをエンジン22およびモータMG1からなる系のイナーシャTiに乗じたものと前回のモータMG1のトルク指令(前回Tm1*)と動力分配統合機構30のギヤ比ρとエンジン22の回転数Neとを用いて次式(12)によりエンジン22から実際に出力しているパワーとしての推定パワーPeestを計算し(ステップS130)、ステップS140以降の処理を実行する。ここで、反映率αは、実施例では、エンジン22が始動されてから所定時間が経過しているか否かと冷却水温Twと反映率αとの関係を予め実験などに基づいて定めて反映率設定用マップとしてROM74に記憶しておき、エンジン22が始動されてから所定時間が経過しているか否かと冷却水温Twとが与えられると記憶したマップから対応する反映率αを導出して設定するものとした。反映率設定用マップの一例を図8に示す。反映率αは、図示するように、エンジン22が始動されてから所定時間が経過しているときには冷却水温Twが低いほど値1以下の正の所定値α1から値0に向けて小さくなる傾向に設定され、エンジン22が始動されてから所定時間が経過していないときには冷却水温Twが低いほど所定値α1より小さい正の所定値α2から値0に向けて小さくなる傾向に設定されるものとした。ここで、所定値α1,α2は、エンジン22の特性などに基づいて設定される。いま、エンジン22が始動された直後を考える。このときには、始動されてから所定時間が経過しているときに比してエンジン22や動力分配統合機構30などを潤滑する潤滑オイルの粘性などに基づくフリクションが大きく、エンジン22の回転が不安定となっていることがある。このとき、こうしたフリクションの大きさに拘わらずに一定の反映率α(例えば、所定値α1)をイナーシャTiに乗じたものを用いて推定パワーPeestを計算すると、不安定な回転の変動に伴うイナーシャTiの影響が推定パワーPeestや目標パワーPe*を設定する際に過剰に加味されてしまい、目標パワーPe*が変動することによってエンジン22の回転を充分に安定させることができず、エンジン22を効率のよい運転ポイントで運転することができないことによる燃費の悪化や回転変動に伴うノイズの発生などを招くことがある。しかも、第2実施例では、第1実施例と同様にモータMG1,MG2がバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動されるよう制御するため、エンジン22の回転を充分に安定させることができないと、モータMG1,MG2の駆動状態が不安定となり、モータMG2からリングギヤ軸32aに出力されるトルクが不安定となることによってドライバビリティの悪化を招くことがある。一方、エンジン22が始動された直後に、始動されてから所定時間が経過しているときよりも小さな反映率αを用いれば、イナーシャTiの影響が推定パワーPeestや目標パワーPe*を設定する際に過剰に加味されるのを抑制することができ、推定パワーPeestや目標パワーPe*をより適正に設定することができる。この結果、目標パワーPe*の変動が抑制されてエンジン22の回転を充分に安定させることができ、燃費の悪化やノイズの発生などを抑制することができる。また、ドライバビリティの悪化を抑制することもできる。次に、エンジン22が冷えているときを考える。このときには、前述の潤滑オイルの粘性が比較的大きくなることによってフリクションが比較的大きくなるため、冷却水温Twに拘わらず所定値α1または所定値α2を反映率αとして設定すると、大きなフリクションに基づくエンジン22の回転変動に伴うイナーシャTiの影響が推定パワーPeestや目標パワーPe*を設定する際に過剰に加味されてしまうことがある。一方、冷却水温Twが比較的低いときに反映率αを小さくすることにより、イナーシャTiの影響が推定パワーPeestや目標パワーPe*を設定する際に過剰に加味されるのを抑制することができ、推定パワーPeestや目標パワーPe*をより適正に設定することができる。
Figure 0004291824
ステップS112で要求パワーP*が閾値Pref未満のときには、エンジン22が停止されるようエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*に共に値0を設定すると共に(ステップS240)、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定し(ステップS250)、ステップS200以降の処理を実行する。値0の目標回転数Ne*および目標トルクTe*を受信したエンジンECU24は、エンジン22が運転されているときにはエンジン22を停止し、エンジン22が停止されているときには、その状態を継続する。
以上説明した第2実施例のハイブリッド自動車20Bによれば、エンジン22が始動されてから所定時間が経過しているか否かおよび冷却水温Twに基づいて反映率αを設定すると共に設定した反映率αをイナーシャTiに乗じたものを用いて推定パワーPeestを計算するから、エンジン22の状態に応じて推定パワーPeestをより適正に計算することができる。もとより、第1実施例のハイブリッド自動車20と同様に、推定パワーPeestを用いてエンジン22から出力可能なパワーの上限としての上限パワーPemaxを計算し、これによって要求パワーP*を制限してエンジン22から出力すべき目標パワーPe*を設定するから、エンジン22の回転数Neが大きくなる場合にはイナーシャTiを考慮しないものに比して目標パワーPe*はより制限されることになり、エンジン22をより適正な範囲内で運転することができる。しかも、上限パワーPemaxを計算する際には、バッテリ50の入力制限Winも考慮しているから、バッテリ50への過大な電力の入力も抑制することができる。
第2実施例のハイブリッド自動車20Bでは、図8の反映率設定用マップに示したように、エンジン22が始動されてから所定時間が経過したか否かおよび冷却水温Twに基づいて反映率αを設定するものとしたが、冷却水温Twに拘わらずにエンジン22が始動されてから所定時間が経過したか否かだけに基づいて反映率αを設定するものとしてもよいし、冷却水温Twだけに基づいて反映率αを設定するものとしてもよい。また、エンジン22が始動されてから所定時間が経過したか否かに代えてエンジン22が始動されてからの時間に基づいて反映率αを設定するものとしてもよい。この場合の反映率設定用マップの一例を図9に示す。図中、「t」は、エンジン22が始動されたときに計時が開始されるタイマ78の値を示し、「0」,「t1」,「t2」,「t3」はエンジン22が始動されてからの時間を示し、「t3」は前述の所定時間に相当するものとする。反映率αは、例えば、図示するように、エンジン22が始動されてから所定時間が経過していないときには時間の経過に伴って反映率αが大きくなる傾向に設定され、エンジン22が始動されてから所定時間が経過した以降は時間の経過に拘わらずに設定されるものとすることができる。即ち、エンジン22が始動されてから回転が安定していくのに伴って反映率αを大きくしていき、回転が安定した後には所定の反映率αを用いるものとすることができる。
第1実施例や第2実施例のハイブリッド自動車20,20Bでは、モータMG2の動力を駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図10の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪39a,39bが接続された車軸)とは異なる車軸(図10における駆動輪39c,39dに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
第1実施例や第2実施例のハイブリッド自動車20,20Bでは、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪39a,39bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図11の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪39a,39bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
実施例では、エンジン22と動力分配統合機構30とモータMG1,MG2とバッテリ50とハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える動力出力装置を搭載するハイブリッド自動車20として説明したが、こうした動力出力装置を自動車以外の他の車両や船舶,航空機などに搭載するものとしてもよいし、動力出力装置の形態としてもよい。また、動力出力装置の制御方法の形態としてもよい。
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。 ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。 要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。 エンジン22の動作ラインと目標回転数Ne*および目標トルクTe*を設定する様子を示す説明図である。 動力分配統合機構30の回転要素を力学的に説明するための共線図の一例を示す説明図である。 第2実施例のハイブリッド自動車20Bの構成の概略を示す構成図である。 第2実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。 反映率設定用マップの一例を示す説明図である。 変形例の反映率設定用マップの一例を示す説明図である。 変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。 変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
符号の説明
20,20B,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、23 クランク角センサ、23b 温度センサ、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、31a サンギヤ軸、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、37 ギヤ機構、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b,39c,39d 駆動輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、48 回転軸、50 バッテリ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、78 タイマ、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ、234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。

Claims (12)

  1. 駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
    内燃機関と、
    該内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され電力と動力の入出力を伴って前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を前記駆動軸に出力する電力動力入出力手段と、
    前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、
    前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、
    装置に要求される要求パワーを設定する要求動力設定手段と、
    前記電力動力入出力手段から出力している駆動力と前記内燃機関の回転数と前記内燃機関および前記電力動力入出力手段からなる系のイナーシャとに基づいて前記内燃機関から出力している推定パワーを演算する推定動力演算手段と、
    前記駆動軸に出力される駆動軸パワーと前記蓄電手段の入力制限と前記推定された推定パワーとに基づいて前記内燃機関から出力可能な上限パワーを設定する上限パワー設定手段と、
    前記設定された要求パワーを前記設定された上限パワーによって制限して前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定する目標パワー設定手段と、
    前記設定された目標パワーが所定の制約をもって前記内燃機関から出力されると共に前記要求パワーに基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する制御手段と、
    を備える動力出力装置。
  2. 前記推定動力演算手段は、前記内燃機関および前記電力動力入出力手段からなる系の慣性モーメントと前記内燃機関の回転数の時間微分との積に基づいて前記内燃機関および前記電力動力入出力手段からなる系のイナーシャを演算する手段である請求項1記載の動力出力装置。
  3. 前記推定動力演算手段は、前記内燃機関が始動されてからの時間に基づいて反映率を設定し、前記電力動力入出力手段から出力している駆動力と前記内燃機関の回転数と前記内燃機関および前記電力動力入出力手段からなる系のイナーシャに該設定した反映率を乗じたものとに基づいて前記推定パワーを演算する手段である請求項1または2記載の動力出力装置。
  4. 前記推定動力演算手段は、前記内燃機関が始動されてから所定時間が経過しているときには第1の所定値を前記反映率として設定し、前記内燃機関が始動されてから前記所定時間が経過していないときには前記第1の所定値より小さい第2の所定値を前記反映率として設定する手段である請求項3記載の動力出力装置。
  5. 請求項1または2記載の動力出力装置であって、
    前記内燃機関の温度である機関温度を検出する機関温度検出手段を備え、
    前記推定動力演算手段は、前記検出された機関温度に基づいて反映率を設定し、前記電力動力入出力手段から出力している駆動力と前記内燃機関の回転数と前記内燃機関および前記電力動力入出力手段からなる系のイナーシャに該設定した反映率を乗じたものとに基づいて前記推定パワーを演算する手段である
    動力出力装置。
  6. 前記推定動力演算手段は、前記検出された機関温度が低いほど小さくなる傾向に前記反映率を設定する手段である請求項5記載の動力出力装置。
  7. 前記上限パワー設定手段は、前記駆動軸に出力される駆動軸パワーと前記蓄電手段の入力制限とに基づいて仮上限パワーを設定し、該設定した仮上限パワーと前記推定された推定パワーとに基づいて前記上限パワーを設定する手段である請求項1ないし6いずれか記載の動力出力装置。
  8. 前記上限パワー設定手段は、前記駆動軸に出力される駆動軸パワーと前記蓄電手段の入力制限との差として前記仮上限パワーを設定し、該設定した仮上限パワーと前記推定された推定パワーとの差に基づくフィードバック項を前記仮上限パワーに加えて前記上限パワーを設定する手段である請求項7記載の動力出力装置。
  9. 前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と第3の軸との3軸に接続され該3軸のうちいずれか2軸に入出力した動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記第3の軸に動力を入出力可能な発電機とを備える手段である請求項1ないし8いずれか記載の動力出力装置。
  10. 前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸に取り付けられた第1の回転子と前記駆動軸に取り付けられた第2の回転子とを備え、該第1の回転子と該第2の回転子との電磁作用による電力の入出力を伴って前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を前記駆動軸に出力する対回転子電動機である請求項1ないし8いずれか記載の動力出力装置。
  11. 請求項1ないし10いずれか記載の動力出力装置を搭載し、車軸が前記駆動軸に連結されてなる自動車。
  12. 内燃機関と、該内燃機関の出力軸と駆動軸とに接続され電力と動力の入出力を伴って前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を前記駆動軸に出力する電力動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備える動力出力装置の制御方法であって、
    (a)装置に要求される要求パワーを設定し、
    (b)前記電力動力入出力手段から出力している駆動力と前記内燃機関の回転数と前記内燃機関および前記電力動力入出力手段からなる系のイナーシャとに基づいて前記内燃機関から出力している推定パワーを演算し、
    (c)前記駆動軸に出力される駆動軸パワーと前記蓄電手段の入力制限と前記推定された推定パワーとに基づいて前記内燃機関から出力可能な上限パワーを設定し、
    (d)前記設定された要求パワーを前記設定された上限パワーによって制限して前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、
    (e)前記設定された目標パワーが所定の制約をもって前記内燃機関から出力されると共に前記要求パワーに基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する
    動力出力装置の制御方法。
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