JP4291478B2 - 抗i型アレルギー作用を有する植物精油組成物およびその組成物を有効成分とするi型アレルギーの予防および/または治療剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗I型アレルギー作用を有する植物精油組成物および上記精油組成物を有効成分とするI型アレルギーの予防又は治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、アレルギー性疾患は増加の一途をたどっている。アレルギー性疾患はアレルギー反応が関与する疾患の総称であり、アレルギー反応は、本来生体防御を目的とするはずの免疫応答が結果としてむしろ生体に危害を及ぼすものである場合の免疫反応をいう。アレルギー反応は、どのような機序で生体に危害を与えるかによってR.R.A.CoombsとP.G.GellとによりI〜IV型の4つの型に分けられている。
【0003】
すなわち、I型はIgE抗体と抗原との反応によりマスト細胞からヒスタミン、セロトニンやロイコトリエン等が放出されることによるもので、末梢血管拡張によるショック、平滑筋収縮による呼吸困難その他の反応がもたらされる。II型は細胞や組織に向けられた抗体がその細胞や組織を補体やK細胞、マクロファージなどの作用を介して障害するものである。III型は抗原と抗体の結合物である免疫複合体が組織に沈着し、それに好中球等が反応して起こす組織障害である。I〜III型反応による異常はすべて抗体によるアレルギー反応であり、抗原侵入から比較的短時間で症状が出るので、即時型アレルギーともいわれる。これらのうち、I型反応はアナフィラキシーと呼ばれる。
【0004】
IV型はT細胞の反応によるものであり、T細胞がリンホカインを放出して起こす組織反応またはT細胞による細胞の破壊によって生じる。抗原の侵入から反応が最大になるまで一両日を要するので遅延型アレルギーともいわれる。
生体においては、非自己の物質はすべて抗原として作用する可能性があるが、I型アレルギーの病因的抗原としては、吸入性抗原と食餌性抗原の2つがあることが知られている。吸入性抗原としては、ダニやちりなどに代表されるハウスダスト、スギ花粉やイネ科植物などの花粉、またはカビ類等が挙げられ、食餌性抗原としては卵白、牛乳、落花生、ソバまたはサバ等が挙げられる。
【0005】
こうした物質が抗原として作用し、抗原抗体反応が生じると脱顆粒現象が起こり、ヒスタミン、セロトニン(5-HT)、SRS-A(slow reactive substance of anaphylaxis;遅発反応物質)、ECF(eosinophyl chemotactic factor;好酸球走化因子)、NCE(neutrophyl chemotactic factor;好中球走化因子)、PAF(platelet activating factor;血小板活性化因子)などの化学伝達物質が遊離される。その結果、血管透過性の亢進、平滑筋の攣縮、粘液腺の分泌亢進が起こる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
I型アレルギーのうち、生体にとっての異物自体、あるいはそれをハプテンとする免疫原に対する特異的IgE抗体が産生され、マスト細胞や好塩基球に付着した特異的IgE抗体が、抗原決定基を有する物質(惹起原)で橋渡しされることによって刺激を受けた細胞が種々の化学伝達物質を放出して、血圧下降などの末梢循環障害、頻脈(血管迷走神経で徐脈になる)、気管支攣縮徴候としての呼吸困難、全身性蕁麻疹、全身性紅潮、血管浮腫などの全徴候または一部の徴候を呈するものをアナフィラキシーという。重症なものほど、原因負荷後に、低血圧、呼吸困難など生命をおびやかす症状の発現が早く、抗原の侵入経路によって、症状の発現の有無や広がりに差が生ずる。
【0007】
例えば、惹起源は、健常皮膚に接触しても何らの症状も惹起されないが、粘膜、注射の刺し口、手術後の創傷などに接触すると、激烈な反応が惹起されることがある。免疫原と惹起原とは必ずしも同じではないので、I型アレルギーの予防のためにはその発症を予知することが前提となるが、予知は一般に難しい。
一般に、アレルギー性疾患の治療は、その発症機序に応じて、テルフェナジンやジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン薬、ナファゾリンなどの交感神経刺激薬、テルブタリンなどのβ−刺激薬、キサンチン誘導体などの抗アレルギー薬、グルココルチコイドなどのステロイド薬、ノスカピンなどの鎮咳薬、マスト細胞の脱顆粒を阻止する作用を有する薬剤および抗炎症薬等を投与することによって行われる。
【0008】
しかし、アレルギーは慢性かつ難治性であるために投薬による有害作用が生じるなど、臨床的にも問題があった。また、こうした薬剤は、経口剤、静注または筋注用の注射剤、吸入剤、外用剤その他の各種剤型で投与されるが、ある種の抗ヒスタミン剤には催奇形性があり、ステロイド剤では様々な副作用があるので投薬量が制限される等といった使用上の問題点もある。また、5-HTに対してはリゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)などが拮抗作用を示すことが知られているが、LSDには依存性があり、精神障害などの有害作用をもたらすという問題がある。
さらに、マスト細胞や好塩基球がロイコトリエン類、特に炎症に寄与するとされているロイコトリエンC4(以下、LTC4という)やロイコトリエンD4(以下、LTD4という)を合成する際に作用する阻害剤などは知られておらず、I型アレルギーの予防や治療が難しいという問題点があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者らは、以上のような問題を解決すべく研究を重ねた結果、特定の植物から得られる精油を組み合わせることによって抗I型アレルギー作用、抗ロイコトリエン作用及び抗セロトニン作用が発揮されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、シネオール系ユーカリ油、ラベンダー油、ローズマリー油、及びオレンジ油及びネロリ油の組合せ、又は、シネオール系ユーカリ油、ラベンダー油、ローズマリー油及びグレープフルーツ油の組み合わせのいずれかを含む抗I型アレルギー治療用植物精油組成物である。
ここで、上記組成物は、上記組成物の総重量に対し、42重量%のシネオール系ユーカリ油、25重量%のラベンダー油、5重量%のローズマリー油、22重量%のオレンジ油、および5重量%のネロリ油を含むものであることが好ましい。
また、抗I型アレルギー作用とは、ヒスタミン、5-HTの肥満細胞などからの遊離、およびロイコトリエンC4またはD4の産生の抑制をいう。
【0010】
本発明の抗I型アレルギー治療用植物精油組成物はまた、組成物の総重量に対し、23〜61重量%のシネオール系ユーカリ油、20〜30重量%のラベンダー油またはラバンジン油、1〜10重量%のローズマリー油、17〜27重量%のオレンジ油またはグレープフルーツ油、および1〜10重量%のネロリ油からなる抗I型アレルギー作用を有する植物精油組成物であることが好ましい。そして、上記組成物は、上記組成物の総重量に対し、42重量%のシネオール系ユーカリ油、25重量%のラベンダー油、5重量%のローズマリー油および27重量%のグレープフルーツ油を含むものであることが、さらに好ましい。
別の本発明の抗I型アレルギー治療用植物精油組成物は、シネオール系ユーカリ油と、ラベンダー油と、ローズマリー油と、オレンジ油及びネロリ油の組合せ、又はオレンジ油及びネロリ油の組合せに代えてグレープフルーツ油とを含み、抗ヒスタミン作用、ロイコトリエン産生抑制作用及びセロトニン遊離抑制作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用を有するものであることが好ましい。
【0011】
ここで、上記組成物は、上記組成物の総重量に対し、23〜61重量%のシネオール系ユーカリ油、20〜30重量%のラベンダー油またはラバンジン油、1〜10重量%のローズマリー油、18〜37重量%のグレープフルーツ油からなる抗I型アレルギー作用を有するものであることが好ましい。そして、上記組成物の総重量に対し、42重量%のシネオール系ユーカリ油、25重量%のラベンダー油、5重量%のローズマリー油および27重量%のグレープフルーツ油を含むものであることが、さらに好ましい。
本発明はまた、上述した植物精油組成物と、精油組成物吸着剤と、遊離水分除去剤と、精油組成物脱着調節剤と、発熱剤と、熱伝導防止剤と、吸収促進剤と、シート形成用基剤とを含む抗ヒスタミン剤である。
本発明はさらに、上述した植物精油組成物と、精油組成物吸着剤と、遊離水分除去剤と、精油組成物脱着調節剤と、発熱剤と、熱伝導防止剤と、吸収促進剤と、シート形成用基剤とを含むロイコトリエン産生抑制剤である。
本発明はさらにまた、上述した植物精油組成物と、精油組成物吸着剤と、遊離水分除去剤と、精油組成物脱着調節剤と、発熱剤と、熱伝導防止剤と、吸収促進剤と、シート形成用基剤とを含むセロトニン抑制剤である。
ここで、精油組成物吸着剤と、遊離水分除去剤と、精油組成物脱着調節剤と、発熱剤と、熱伝導防止剤と、吸収促進剤と、シート形成用基剤は、上述した通りである。
【0012】
本発明のI型アレルギーの予防および/または治療剤は、上記の抗I型アレルギー作用を有する植物精油組成物と、精油組成物吸着剤と、遊離水分除去剤と、精油組成物脱着調節剤と、発熱剤と、熱伝導防止剤と、吸収促進剤と、シート形成用基剤とをさらに含むものであることが好ましい。
ここで、上記精油組成物吸着剤はケン化価98.0〜98.5のポリビニルアルコール系高分子吸水性樹脂であり、前記シート形成用基剤はケン化価88.0±2.0のポリビニルアルコール系高分子吸水性樹脂であり、前記遊離水分除去剤はアクリル系高分子吸水性樹脂であることが好ましい。また、上記の精油組成物脱着調節剤は活性炭であり、前記発熱剤はゼオライトであり、前記熱伝導防止剤は多糖類化合物であり、前記吸収促進剤はモノテルペンであることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
I型アレルギーは、生体にとっての異物自体またはそれをハプテンとする免疫原に対して特異的なIgEが産生されることによって始まる。IgEはマスト細胞(肥満細胞)や好塩基球に付着し、これらの特異的抗IgE抗体が、抗原決定基を有する惹起原で橋渡しされることによって、マスト細胞や好塩基球が刺激を受け、様々な化学伝達物質を放出することによって起こる。放出される化学伝達物質としては、マスト細胞の脱顆粒によって顆粒中に貯蔵されていたヒスタミン、血小板活性化因子、ヘパリン、セロトニンなど、およびプロスタグランジンやロイコトリエンなどの脂質過酸化物、好塩基球の顆粒から放出されるヒスタミンやヘパリンなどが挙げられる。
【0014】
本発明の植物精油組成物が有する抗I型アレルギー作用は、マスト細胞や好塩基球を安定化し、あるいは放出された化学伝達物質を修飾したり、これら化学物質の受容体と拮抗してシグナル伝達を遮断するといった作用によって、I型アレルギーの発症を抑制および/または阻害するものである。したがって、本明細書中でいう抗I型アレルギー作用には、細胞の安定化、ヒスタミン受容体の遮断などを初めとする抗I型アレルギー作用、およびロイコトリエンなどのアレルギーメディエーターの不活化、産生阻害ならびにこれらと機能的に拮抗すること等が含まれる。
【0015】
本発明において使用する植物精油は、上述のとおり、少なくとも1種以上のフトモモ科植物から得られる精油、少なくとも2種以上のシソ科植物から得られる精油、および少なくとも1種以上のミカン科植物から得られる精油である。
フトモモ科植物から得られる精油としては、フトモモ科に属するユーカリ樹(Eucalyptus globulus Labill.(Blue gum), Eucalyptus dives Schauer Type, Eucalyptus macarthuri H. Deane et J. H. Maiden, Eucalyptus citriodora Hook)から得られる精油、具体的には、これらのユーカリから得られるユーカリ油を使用することが好ましい。
【0016】
ユーカリ油は上記のようなユーカリ樹から得られる精油の総称であるが、タスマニア原産で、北米、メキシコ、アフリカ、および南部スペインなどを主産地とするEucalyptus globulus Labill.(Blue gum)から得られるシネオール系ユーカリ油;オーストラリアのニューサウスウェールズ、ビクトリア地方を主産地とするEucalyptus dives Schauer Typeから得られるピペリトン、フェランドレン系ユーカリ油;オーストラリアのニューサウスウェールズ南部を主産地とするEucalyptus macarthuri H. Deane et J. H. Maidenから得られる酢酸ゲラニル系ユーカリ油;およびオーストラリアのクインズランド、南アフリカ、ブラジル、ジャバ、インドなどを主産地とするEucalyptus citriodora Hookから得られるシトロネラール系ユーカリ油とに大別される。
【0017】
シネオール系ユーカリ油は、Eucalyptus globulus Labill.の葉を水蒸気蒸留して得ることができ、成分としては、シネオール(70〜80%)、α−ピネン、カンフェン、ピノカルベオール、ピノカルボン、ミルテノール、ベルベノン、カルボン、オイデスモールおよびC4〜C6の脂肪族アルデヒドなどを含有する。
酢酸ゲラニル系ユーカリ油は、Eucalyptus macarthuri H. Deane et J. H. Maidenの葉および小枝の水蒸気蒸留によって得ることができ、成分としては、酢酸ゲラニル(約70%前後)、ゲラニオール(約3%)、オイデスモール(約16%)、その他脂肪族アルデヒドなどを含む。
【0018】
シトロネラール系ユーカリ油は、Eucalyptus citriodora Hookの葉および小枝の水蒸気蒸留によって得ることができ、成分としては、d-またはl-シトロネラール(65〜80%)、d-またはl-シトロネロール(15〜20%)、フェランドレン、シネオール、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、イソプレゴールなどを含有する。
本発明においては、上記フトモモ科植物から得られる精油が、シネオール系ユーカリ油、酢酸ゲラニル系ユーカリ油およびシトロネラール系ユーカリ油からなる群から選ばれるものであることが、抗LTD4作用を有するシトロネラール、抗LTC4作用を有するシネオール、ゲラニオール、酢酸ボルニル、オイデスモールといった各成分を含有することから好ましい。
【0019】
ここで、抗LTD4作用とは、アラキドン酸がリポキシゲナーゼによって5-HPETE(5-ヒドロペルオキシエイコサペンエン酸)となり、ついでLTA4となった後に、さらに還元型グルタチオンの存在下で代謝されてLTC4を経てLTD4となる経路(図1)のうち、LTA4からLTC4への代謝を抑制または阻害する作用をいう。したがって、本明細書でいう抗LTD4作用には、LTC4の産生を抑制する作用(抗LTC4作用)も含まれる。
これらの精油に含まれる各種成分のうち、ベルベノン、カルボンおよびオイデスモールは抗H1-ヒスタミン作用を、また、ゲラニオールは抗H2-ヒスタミン作用を有するために、これらのユーカリ油を使用することが好ましい。
【0020】
ヒスタミンにはH1、H2およびH3という3つの受容体があることが知られており、これらのうち、H1受容体は気管支、胃、腸管などの平滑筋に高密度に存在し、これらの収縮に関与する。I型アレルギーに関与するのもH1受容体である。H1受容体を刺激するとホスホリパーゼC活性化によるホスファチジルイノシトール代謝亢進を引き起こし、その結果生じる細胞内Ca2+濃度の増加が上記生理反応を引き起こすと考えられる。
一方、H2受容体は胃の壁細胞に高密度に存在し、胃酸分泌および心拍数増加作用に関与する。GTP結合タンパクを介してアデニル酸シクラーゼを活性化し、その結果増加するc-AMPが細胞応答に関与する。また、H3受容体は中枢神経系で神経伝達物質の可能性の示唆されているヒスタミン生合成と放出の負の自己調節に関与する。
【0021】
こうした作用を有する3つの受容体のうち、気管支などの筋収縮作用等を抑制または阻害する作用を、H1-抗ヒスタミン作用という。ヒスタミンによる胃液分泌促進および心拍数増加作用抑制または阻害する作用を、H2-抗ヒスタミン作用という。また、ヒスタミン生合成と放出の負の自己調節を抑制もしくは阻害する作用をH3-抗ヒスタミン作用という。
上述したユーカリ油の中でも、シネオール系ユーカリ油を使用すると、ここに含まれる複数の成分が、肥満細胞や好塩基球から放出されたヒスタミン自体の骨格構造を変化させることなくその機能を発揮させないように修飾し、その結果、修飾されたヒスタミンはヒスタミンレセプターに結合はするものの、結合によってシグナルを発さず、血管透過性亢進その他の上記のようなヒスタミンによって惹起される作用が抑えられるという利点がある。
【0022】
これらのユーカリ油は、上記のものを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合には、シネオール系ユーカリ油を必須成分として使用することが上記の理由から好ましく、その場合には、シネオール系ユーカリ油をユーカリ油全量に対して50〜60重量%とすれば、一層高い抗LTC4効果が発揮される。
シソ科植物から得られる精油とは、シソ科に属するタチジャコウソウ(Thymus vulgaris L.)、チクマハッカ、イヌハッカ(Nepeta cataria L.)、ハッカ(Menta arvensis, Menta piperita var. vulgaris L.)、マンネンロウ(Rosmarinus officinalis L.)、ラバンジン(Lavandula hybrida Reverch)、ラベンダー(Lavandula officinalis Chaix.)などの植物から得られる精油をいう。
【0023】
具体的には、タイム油、チクマハッカ油、イヌハッカ油、和種ハッカ油、ペパーミント油、ローズマリー油、ラバンジン油、及びラベンダー油が挙げられる。本発明においては、ラベンダー油、ラバンジン油及びローズマリー油を使用することが抗I型アレルギー効果を発揮する成分、具体的には、抗LT作用を有する成分であるシネオール、シトロネラールおよび酢酸ボルニルや抗セロトニン作用を有する成分である酢酸リナリルなどを含有する点で好ましい。
ローズマリー油は、スペイン、ユーゴスラビア、チュニジア、フランス、イタリアなどを産地とするマンネンロウ(Rosmarinus officinalis L.)の花、葉または全草の水蒸気蒸留によって得られる。成分としては、ボルネオール、酢酸ボルニル、カンファー、シネオール、その他のテルペン化合物などを含む。
【0024】
ラバンジン油は、南フランスを産地とするラバンジン(Lavandula hybrida Reverch)の花の水蒸気蒸留で得られる。成分としては、リナロール、酢酸リナリル、リナロールオキシド、シネオール、d-カンファー、d-ラバンジュロールなどを含有する。
ラベンダー油は、フランス、イタリア、ハンガリー、旧ソ連南部、イギリス、北アメリカ、オーストラリアおよび北海道を主産地とし、ラベンダー(Lavandula officinalis Chaix.)の花を水蒸気蒸留して得られる。成分としては、リナロール(10〜20%)、酢酸リナリル(30〜60%)、ラバンジュロール、酢酸ラバンジュリル、3−オクタノール、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、シネオール、シトロネラールなどの多数の成分を含有する。
【0025】
上記のように、ラベンダー油、ラバンジン油およびローズマリー油には、リナロール、酢酸リナリル、ラバンジュロール、酢酸ラバンジュリル、ボルネオール、酢酸ボルニル、カリオフィレン、シトロネラールなどの成分が含まれる。後述する実施例における検討の結果、シトロネラールには抗LTD4作用があり、酢酸ボルニルには抗LTC4作用があることが明らかになった。
したがって、抗LTD4作用および抗LTC4作用を発揮させるためには、ラベンダー油、ラバンジン油またはローズマリー油を使用することが好ましい。特に、ラベンダー油とローズマリー油とを併用すると、上述した複数の成分が作用してロイコトリエンC4およびD4の産生が抑制されるばかりでなく、他の成分が肥満細胞などから放出されたヒスタミンを、その骨格構造を変化させることなく機能を発揮させないように修飾するため、ヒスタミンが受容体に結合した後にシグナルが発しなくなるという点で好ましい。この結果、血管透過性亢進その他のヒスタミンによって惹起される作用が抑えられることになる。
【0026】
ミカン科精油とは、ミカン科に属するスイートオレンジ(Citrus sinensis Osbeck var. brasiliensis Tanaka)、グレープフルーツ(Citrus paradisi Macfayden)、ダイダイ(Citrus aurantium L. var. subsp. amara Engel)、レモン(Citrus limone (L.) Burum f.)といった植物から得られる精油の総称である。具体的には、オレンジ油、グレープフルーツ油、ネロリ油およびレモン油等が挙げられる。
オレンジ油は、カリフォルニア、フロリダ、スペイン、ブラジル、イタリア、および日本など世界各地で広く栽培されているスイートオレンジ(Citrus sinensis Osbeck var. brasiliensis Tanaka)の果実をそのまま圧搾して果汁と精油とを分離して得ることができる。成分としては、d-リモネン、シトラール、n-デシルアルデヒド、d-リナロール、d-テルピネオール、n-ノニルアルコールなどを含有し、d-リモネンが90%以上を占める。
【0027】
グレープフルーツ油は、カリフォルニア、フロリダ、テキサス、イスラエルおよびブラジルなどを主産地とするグレープフルーツ(Citrus paradisi Macfayden)の果皮を機械圧搾して精油を得るか、葉および小枝を水蒸気蒸留してグレープフルーツペチグレン油を得る。成分としては、d-リモネンを90%以上含むが、この精油特有の成分であるヌートカトンを含み、さらに、オクチルアルデヒド、シトラール、ゲラニオールおよびその酢酸エステルなどをも含む。本発明においては、p-メンテンチオールを比較的多量に含有することから、カリフォルニア産のグレープフルーツから得られる精油を使用することが好ましい。
【0028】
ネロリ油は、フランス、イタリア、スペイン、モロッコ、およびアルジェリアなどを主産地とするダイダイ(Citrus aurantium L. subsp. amara Engel)の花を水蒸気蒸留して得ることができる。また、溶剤抽出により、橙花コンクリートを得ることができ、これをアルコール処理すると約50%のアブソリュートが得られる。
成分としては、1−リナロールと酢酸リナリルを合わせて約35〜40%、α−テルピネオール、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ネロリドール(数%)、その他α−ピネン、ジペンテン、カンフェン、オシメンなどのテルペン類、および含窒素化合物としてアンスラニル酸メチル、およびインドールなどを含む。また、コンクリートには、精油、ジャスモン、ベンツアルデヒドなどが存在する。
【0029】
レモン油は、カリフォルニア、シシリー、カラブリア、スペイン、およびブラジルを主産地とし、その他日本でも栽培されているレモン(Citrus limone (L.))の果皮の圧搾により得られる。成分としては、d-リモネン、シトラール、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、リナロール、ゲラニオール、その他各種のテルペノイドが含まれる。
【0030】
本発明において、上記ミカン科植物から得られる精油として、オレンジ油、ネロリ油、およびグレープフルーツ油からなる群から選ばれる精油を使用すると、これらに含まれるゲラニオールにより、ヒスタミンおよびLTC4の産生が抑制される。また、リモネンによってH2受容体と結合できないようにヒスタミンが不活化され、バレンセンやヌートカトンによってリポキシゲナーゼの活性が抑制される。さらに、酢酸リナリルおよびアンスラニル酸メチルには抗セロトニン作用がある。このため、グレープフルーツ油を単独で使用するか、またはネロリ油とオレンジ油もしくはネロリ油とレモン油とを混合して使用することが望ましい。このようなミカン科植物から得られる精油を併用することによって、上述したようなこれらに含まれる複数の成分がヒスタミン、セロトニン、ロイコトリエンなどの生理活性物質を修飾し、不活化する。このため、修飾された上記の各物質が受容体と結合しても受容体からのシグナルの発生が抑えられ、血管透過性の亢進などが抑制される。また、ロイコトリエンC4およびD4の産生も抑制される。
【0031】
本発明の植物精油組成物は、シネオール系ユーカリ油、ラベンダー油、ローズマリー油、オレンジ油、およびネロリ油を含むものであることが好ましく、それら各精油の組成物中の含量は、組成物の総重量に対して、シネオール系ユーカリ油が23〜61重量%、ラベンダー油が20〜30重量%、ローズマリー油が1〜10重量%、オレンジ油が17〜27重量%、およびネロリ油が1〜10重量%である。
【0032】
シネオール系ユーカリ油の含量が23%重量未満では抗I型アレルギー作用が十分に発揮されず、逆に61重量%を超えると複雑な機構で発生するアレルギー作用に対する原因治療とならず、治療効果が落ちるという問題が生じる。ラベンダー油の含量が20重量%未満では、シネオール系ユーカリの場合と同様に抗I型アレルギー作用が減少し、逆に30重量%を超えると逆効果となるという問題が生じる。また、ローズマリー油の含量は1重量%未満ではラベンダー油との相乗効果はなく、10重量%を越えた場合にもラベンダー油との相乗効果が発揮されないという問題が生じる。さらに、オレンジ油の含量が17重量%未満では抗I型アレルギー作用が不十分となり、27重量%を超えると抗I型アレルギー作用が強すぎて逆効果が生じる。ネロリ油の含量が1重量%未満の場合および10重量%を超えた場合もオレンジ油の場合と同様の問題が生じる。
【0033】
もっとも好ましくは、組成物の総重量に対して、シネオール系ユーカリ油が約43重量%、ラベンダー油が約25重量%、ローズマリー油が約5重量%、オレンジ油が約22重量%、ネロリ油が約5重量%である。このような成分比とすると、哺乳動物における抗I型アレルギー作用が最大となる。
本発明はまた、上述した抗I型アレルギー作用を有する精油組成物を有効成分とするI型アレルギーの予防および/または治療剤である。本発明のI型アレルギーの予防および/または治療剤は、上記の抗I型アレルギー作用を有する精油組成物と、精油組成物吸着剤と、遊離水分除去剤と、精油組成物脱着調節剤と、発熱剤と、熱伝導防止剤と、吸収促進剤と、シート形成用基剤とを含む。
【0034】
ここで、精油組成物吸着剤とは、上記の抗I型アレルギー作用を有する精油組成物の吸着担体となるものをいい、ケン化価が98.0〜98.5のポリビニルアルコール(PVA)系吸水性樹脂であることが好ましい。ケン化価が98.0未満では精油と接触したときに担体表面がゲル化し、吸着担体としての機能を失うが、ケン化価が98.0〜98.5であればゲル化せずに安定した吸着担体としての機能を維持できることによる。具体的には、信越ポバールC-17GPやポバール(A)(信越化学工業(株)製)などを挙げることができ、信越ポバールC-17GPまたはポバール(A)を使用することが好ましい。
【0035】
シート形成用基剤とは、上記のI型アレルギー予防および/または治療用組成物をシート状にする基剤となるものをいい、ケン化価が約88.0であるゴーセランL-0301(日本合成化学(株)製)などを使用することが低温(約180℃)における接着性が良いことから好ましい。高温(約230℃以上)で接着すると、樹脂が溶解して樹脂同士の間の隙間が塞がれてしまうため、上述の精油組成物の脱着の面で問題が生じる。
遊離水分除去剤とは、本発明のI型アレルギーの予防および/または治療剤を適用した部位の皮膚表面に存在する水分を除去するものをいい、アクリル系吸水性樹脂であることが好ましい。こうしたアクリル系吸水樹脂は、乾燥樹脂体積の400〜800倍の吸水容積を有するものが好ましく、具体的には、サンフレッシュ(三洋化成(株))やアクアキープ(住友精化(株)製)などを挙げることができる。
球状粒子であるアクアキープよりも、破砕状のサンフレッシュの方が接着性が良いことからサンフレッシュを使用することが好ましい。
【0036】
精油組成物脱着調節剤とは、上述した抗I型アレルギー作用を有する精油組成物を吸着して表面に膜が形成された精油組成物吸着剤の表面を覆い、吸着された精油組成物の脱着を調節する多孔性物質をいう。具体的には、種々の分子を吸着する各種の活性炭を挙げることができる。
活性炭は、表面積が200〜800m2/gのものを使用すると、活性炭に吸着される精油量が少なくなり脱着がされやすいことから好ましく、400〜800m2/gのものを使用することがさらに好ましい。この範囲の表面積を有する活性炭であれば、各種の市販品を使用することができ、具体的には、カヤマックス(日本化薬(株))などを挙げることができる。吸着面積が小さい(例えば、カヤマックスでは400m2/g)こと、およびコストの面から、カヤマックスを使用することが好ましい。
【0037】
発熱剤とは、空気中の水分を吸着して吸着熱を出す物質をいう。このときに発生する熱エネルギーを利用して、吸着担体に吸着された精油組成物の脱着が行われる。具体的には、ゼオライトを挙げることができる。
発熱剤であるゼオライトは、孔径が0.1〜0.8nmのものを用いることが精油の脱着能のための熱エネルギーを供給する上で好ましく、0.3〜0.4nmのものを用いることがさらに好ましい。このような孔径のゼオライトであれば市販品を使用することができ、具体的には、ゼオラム(東ソー(株)製)等を挙げることができる。
【0038】
熱伝導防止剤とは、上記の遊離水分除去剤に吸着された遊離水分によって急激に発生する熱の伝導を防止することができる化合物をいう。具体的には、キトサン、セルロースその他の多糖類化合物を挙げることができる。キトサンを使用すると、製剤中に色素を含有する場合には、キトサンをこれら色素の担体とすることができるという利点がある。キトサンに代えて、上述のような熱の伝導を防止するセルロース等を使用することもできる。
【0039】
吸収促進剤とは、皮膚から上記I型アレルギー予防および/または治療剤中に含まれる精油または精油成分の吸収を促進するように作用するモノテルペン化合物をいう。具体的には、L−メントール等を挙げることができ、市販品を使用してもよい。これらのうち、L−メントールを使用すると、投与部位の精油吸着面(本発明の治療剤を使用する場合には、2cm×4cm)の皮膚表面に存在する残存遊離水分を気化させて除き、皮膚を乾燥させて精油が吸収されやすい環境がつくられるという利点がある。
【0040】
本発明のI型アレルギーの予防および/または治療剤は、上記の精油または精油成分を上述した組合せに従い、所定の量で、常法に従って混合して得た組成物と、上記の精油組成物吸着剤と、遊離水分除去剤と、精油組成物脱着調節剤と、発熱剤と、熱伝導防止剤と、吸収促進剤と、シート形成用基剤とを以下のように混合して製造することができる。ここでは、シネオール系ユーカリ油と、ラベンダー油と、ローズマリー油と、オレンジ油と、ネロリ油とを使用する場合を例にとって説明する。
【0041】
まず、上記の各精油を所定量ずつ秤量し、これらを混合して精油組成物を調製する。ついでPVAと混合し、PVAの表面に精油によって表面膜を形成させた後に、活性炭を加えて精油膜の表面を覆い、炭素被覆粒子を形成する。上記の精油は、これらのうちの1種類をPVAと混合し、次に別の精油をここに添加して混合するという操作を繰り返しながらPVA表面上で混合してもよい。この場合には、すべての精油を1種類ずつ順番にPVAと混合し、PVAの表面で混合して精油による表面膜を形成させた後に、活性炭を加えてこの膜の表面を覆い、炭素被覆粒子を形成する。
一方、秤量したメントールを別のPVAと混合し、上記精油の場合と同様にPVAの表面を覆った後に活性炭を加え、炭素被覆粒子を形成する。
【0042】
これら2種類の炭素被覆粒子を混合し、さらに上記の熱伝導防止剤、シート形成用基剤等と混合して圧着用シートの上にのせ、熱をかけてシートの両面を被覆する。このシートを、例えば、適当な大きさに裁断した不織布等の2枚のシート状素材ではさみ、これらシート状素材の4辺をヒートシールし、本発明のI型アレルギー予防および/または治療剤1ピースを調製する。
【0043】
圧着用シートとしては、化繊紙(坪量18〜20g)を使用することが好ましく、化繊紙を使用すると上述した炭素被覆粒子の圧着率がよいという利点がある。また、上記のシート状素材は、紙、織布または不織布からなる群から選ばれるものであることが好ましく、上記の抗I型アレルギー作用を有する精油組成物に含まれる精油成分が揮発して気体分子となったときに、これらが透過しやすいものである点で、不織布であることがさらに好ましい。
【0044】
本発明のI型アレルギーの予防および/または治療剤は、脂溶性の高い低分子化合物を成分として含むことから、非経口投与ルートで使用する剤形とすることが好ましく、経皮吸収剤とすることにより、速やかに有効成分を体内に移行させることが可能となる。経皮ルートから有効成分が吸収されると、吸収の程度は薬物の構造や物理化学的性質に依存するものの、経口ルートまたは経皮以外の非経口ルートからの吸収と比較して、薬物のリンパ移行性が高いからである。
経皮吸収された薬物は、表皮の角質層を通過し、表皮下結合組織の乳頭層内にある毛細血管、毛細リンパ管に至る経路と付属器官の皮脂腺とを通り、血管やリンパ管に至る経路を介して、赤血球の膜の表面および疎水性代謝物をキャリアーとして毛細血管、毛細リンパ管から全身循環系に運ばれ、標的部位に静電的、疎水的相互作用によって引き付けられて薬理作用を発現する。
【0045】
また、本発明のI型アレルギーの予防および/または治療剤は、上述のようにして製造したシート状の経皮吸収剤1ピースを、首の後ろにある大椎、または腰にある腎愈に当たるように衣類に留めつけて投与する。例えば、上記の経皮吸収剤を、シャツの衿回りの後ろ中央部の内側に両面テープなどで留めつけ、大椎に接触するようにする。こうすると、気化した本発明の植物精油組成物が不織布の繊維の間を通って皮膚と接触し、皮脂層を経由して体内に吸収され、血管やリンパ管へと移行する。動物に投与する場合でも、首輪の内側に留めつけたり、または包帯に留めつけて背部や腹部の所望の部位に接触させることによって適宜投与することができる。上記経皮吸収剤の最外層の二辺に両面テープ等を適当な幅と長さで取り付けると、衣類に対して容易に留めつけることができる。
【0046】
上記の経皮吸収剤は、一定の効果を持続させるために、1〜3日ごとに交換して使用する。また、上述したように、投与はシート状の薬剤を皮膚と接触させることによって行うために、衣類の内側に、また動物では首輪の内側に留めつけてある本発明のI型アレルギーの予防および/または治療剤をはずすことにより、簡単に投与を中止することができる。
また、本発明のI型アレルギーの予防および/または治療剤は天然物由来の精油から製造され、体内に移行するのはこれらの精油成分のみであることから、特に重篤な副作用も見られていない。
【0047】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)I型アレルギー予防および/または治療剤HAL-01並びにHAL-02の製造
(1)主剤の調製
HAL-01の主剤は、下記の表1に示す各精油成分を表1に示す量で、また、HAL-02の主剤は、下記の表2に示す各精油成分を表2に示す量で後述するように混合してそれぞれ製造した。ここで使用した各精油成分はすべて小川香料(株)から購入した。なお、表1および表2に示す量は、各々HAL-01およびHAL-02の各製剤1ピース当たりで使用する量である。下記に示す各精油をそれぞれ化学天秤を用いて秤量した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
(2)HAL-01およびHAL-02の製造
信越ポバールC-17GP(信越化学工業(株)製)、ゴーセラン(日本合成化学(株))、サンフレッシュ(三洋化成工業(株)製)、ゼオラム(東ソー(株)製)、キトサン(甲陽ケミカル(株)製)、カヤマックス(日本化薬(株)製)、L-メントール(小川香料(株))を購入し、下記表3に示す量になるよう化学天秤を用いて秤量した。なお、表3に示す量は、HAL-01およびHAL-02の1ピースの製造に使用する量である。
【0052】
【表3】
【0053】
上記(1)で秤量した各精油を、表3に示す量の信越ポバールC-17GPと1種類ずつ混合し、樹脂表面に精油の油膜を形成させ、ついで、油膜を形成した樹脂と表3に示す量の活性炭とを混合し、活性炭を油膜の表面に吸着させて炭素で被覆した。
【0054】
これとは別に、ゴーセラン、サンフレッシュ、ゼオラム、およびキトサンを混合し、基剤とする。炭素で被覆した植物精油組成物と上記の基剤とを混合し、縦27cm×横18cm×厚さ1.5mmの大きさの金型内に均一になるように広げて180℃で30秒間加熱して基剤を軟化させてシート状に成形し、2×4cmのピースに切断した。
上記ようにして得た各ピースを約4cm×約7cm大の不織布に挟み、ついで同じ大きさの化繊紙2枚に挟み、さらにその外側を同じ大きさのコットン2枚で挟んで4辺すべてを同時に熱圧着し、HAL-01およびHAL-02の各製剤を製造した。
【0055】
(実施例2)動物における抗ヒスタミン作用の検討
(2−1)実験動物
8〜10週齢のSPFのSD系ラット(雄、体重280±20g)を、三協ラボサービス(株)より購入し、室温23±2℃、湿度60±5%、12時間点灯のSPF条件下で1週間馴化飼育した。
HAL-01の抗ヒスタミン効果を検討するために、表4に示すようにヒスタミンを10ng〜10μg/0.1mL/部位で投与することとし、対照群および薬物投与群として、1群20匹ずつ、8群に分けた。
【0056】
(2−2)動物におけるHAL-01による抗ヒスタミン作用の検討
ヒスタミン二塩酸塩は半井化学(株)より、エバンスブルーは、和光純薬(株)よりそれぞれ購入した。エバンスブルーは生理食塩水に溶解して2.5%溶液として調製した。
実施例1で示したように調製したHAL-01の両側の縁部分に接着剤ボンドをつけて、薬剤投与群の各ラットの背面頚部に装着した。対照群のラットの背部には何も装着しなかった。
【0057】
HAL-01装着群および対照群のラットを、室温23±2℃、湿度60±5%に制御した室内に一晩放置した。この後、各ラットの背部の毛をバリカンで10×7cmの大きさになるよう刈った。
2.5%エバンスブルー生理食塩水溶液1mLを尾静脈より注入し、直後に段階希釈したヒスタミン二塩酸塩0.1mLを麻酔下で、背骨を中心として左右対称になるようにを左右4箇所、27Gの二段針をつけたシリンジで皮内接種した。
両群のラットの背部に現れる青斑の大きさを血管透過性亢進の指標とし、青斑の大きさをHAL-01装着群と非装着群(対照群)について比較検討した。ヒスタミン投与3時間後にラットに麻酔薬を過剰投与して致死させ、このときに現れた青斑の直径をノギスで測定し、面積を求めて青斑の大きさとした。結果を表4および図2に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
表4中、各群の青斑の大きさの実測値を上段に、また、処理群の青斑の大きさの実測値を中段に、そして対照群の青斑の大きさを100%としたときの処理群のそれの大きさを下段にそれぞれ示した。
対照群と処理群(薬物投与群)とでヒスタミン接種によって形成された青斑の面積を比較すると、いずれのヒスタミン濃度においてもHAL-01を装着したラットで形成された青斑の方が対照群のそれよりも有意に小さかった(p<0.01)。また、使用したヒスタミンの濃度の中では、1.0μg/部位に対する抗ヒスタミン効果が最も高かった。
【0060】
個体別にデータを検討してみると、ややばらつきが認められることから、体重等の条件が影響していることが示唆された。また、各群のラットの全身状態への影響を観察したところ、処理群(HAL-01装着ラット)の行動がいずれのヒスタミン濃度においても緩慢になった。
処理群のラットでは、上述のように青斑の大きさも小さく、血管透過性の亢進作用が抑えられ、また、中枢抑制作用も見られたことから、HAL-01にはヒスタミンのH1遮断作用があることが推察された。
【0061】
(実施例3)
動物における抗ロイコトリエンC4(LTC4)作用の検討(1)実験動物8〜10週齢のSPFのSD系ラット(雄、体重280±20g)を、三協ラボサービス(株)より購入し、室温23±2℃、湿度60±5%、12時間点灯のSPF条件下で1週間馴化飼育した。HAL-02の抗LTC4効果を検討するために、表5に示すようにLTC4を1pg〜100pg/0.1mL/部位で投与することとし、対照群および薬物投与群として、1群20匹ずつ、8群に分けた。
【0062】
(2)動物におけるHAL-02の抗LTC4作用の検討
LTC4はシグマ(株)より、エバンスブルーは、和光純薬(株)よりそれぞれ購入した。エバンスブルーは生理食塩水に溶解して2.5%溶液として調製した。
実施例1で示したように調製したHAL-02の両側縁部分に接着剤ボンドをつけて、薬剤投与群の各ラットの背面頚部に装着した。対照群のラットの背部には何も装着しなかった。
【0063】
実施例2と同様に、室温23±2℃、湿度60±5%に制御した室内に両群のラットを一晩放置した。各ラットの背部の毛をバリカンで刈ったのち、2.5%エバンスブルー生理食塩水溶液を尾静脈より注入し、直後に背骨を中心として左右対称になるように1pg〜100pg/0.1mL/部位の量でLTC4を左右4箇所ずつ27Gの二段針をつけたシリンジで0.1mLずつ麻酔下に皮内接種した。
【0064】
両群のラットの背部に現れる青斑の大きさを血管透過性亢進の指標とし、青斑の大きさをHAL-01装着群と非装着群(対照群)について比較検討した。LTC4投与3時間後、過剰量の麻酔薬を投与してラットを致死せ、このときに現れた青斑の直径をノギスで測定し、面積を求めて青斑の大きさとした。結果を表5および図3に示す。表5中、各群に付した数字は、LTC4の用量を表す。
【0065】
【表5】
【0066】
表5中、対照群の青斑の大きさの実測値を上段に、また、処理群の青斑の大きさの実測値を中段に、そして対照群の青斑の大きさを100%としたときの処理群のそれの大きさを下段にそれぞれ示した。
対照群と処理群(薬物投与群)とでLTC4接種によって形成された青斑の面積を比較すると、いずれのLTC4濃度においてもHAL-02を装着したラットで形成された青斑の方が対照群のそれよりも小さかった。また、使用したLTC4の濃度の中では、100pg/部位に対する抗LTC4効果が最も高かった。
【0067】
(実施例4)動物におけるHAL-02の抗セロトニン作用の検討
8〜10週齢のSPFのSDラットは実施例1と同様に三協ラボサービス(株)より購入して、同様の条件の下で1週間馴化飼育した。
セロトニンは、シグマ(株)から購入した。また、エバンスブルーは実施例2で用いたのと同じものを、同様に調製して使用した。
実施例2で示したように調製したHAL-02の両短縁側に接着剤(ボンド)をつけ、薬剤投与群のラットの背面頚部に装着した。対照群のラットには何も装着しなかった。
【0068】
両群のラットを、温度を23±2℃、湿度を60±5%に制御した室内に一晩放置した。実施例2と同様に、この後、各ラットの背部の毛をバリカンで刈った。2.5%エバンスブルー生理食塩水溶液を尾静脈より注入し、直後に段階希釈したセロトニン水溶液0.1mLを麻酔下で、背骨を中心として左右対称になるように4箇所ずつ27Gの二段針で皮内接種した。両群のラットの背部に現れる青斑の大きさを血管透過性亢進の指標とし、青斑の大きさをHAL-02装着群と非装着群(対照群)について比較検討した。セロトニン投与3時間後に、ラットを安楽死させ、このときに現れた青斑の直径をノギスで測定し、面積を求めて青斑の大きさとした。結果を表6および図4に示す。
【0069】
【表6】
【0070】
表6中、対照群の青斑の大きさの実測値を上段に、また、処理群の青斑の大きさの実測値を中段に、そして対照群の青斑の大きさを100%としたときの処理群の青斑の大きさを下段に示した。
各群のラットの全身状態への影響を観察したところ、処理群(HAL-02装着ラット)の行動がいずれのセロトニン濃度においても緩慢になった。
処理群のラットにおける青斑の大きさは、対象群のそれの約50〜70%であり、血管透過性の亢進および中枢抑制作用も見られた。このことから、HAL-02にはLTC4およびセロトニンの抑制作用があることが推察された。
【0071】
【発明の効果】
本発明の植物精油組成物を用いると、薬効の高いI型アレルギーの予防および/または治療剤を製造することができる。また、本発明のI型アレルギーの予防および/または治療剤を用いることによって、副作用もなく、ヒスタミンのH1を遮断することができ、さらにLTC4およびセロトニンの代謝を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 アラキドン酸の代謝系路の一部を示す図である。
【図2】 ヒスタミンの投与量とHAL-01の青斑形成抑制効果の関係を示す図である。
【図3】 LTC4の投与量とHAL-02による青斑形成抑制効果の関係を示す図である。
【図4】 セロトニンの投与量とHAL-02による青斑形成抑制効果の関係を示す図である。
Claims (10)
- シネオール系ユーカリ油、ラベンダー油、ローズマリー油、及びオレンジ油及びネロリ油の組合せ、又は、シネオール系ユーカリ油、ラベンダー油、ローズマリー油及びグレープフルーツ油の組み合わせのいずれかを含む抗I型アレルギー治療用植物精油組成物。
- 組成物の総重量に対し、42重量%のシネオール系ユーカリ油、25重量%のラベンダー油、5重量%のローズマリー油、22重量%のオレンジ油、および5重量%のネロリ油を含む、請求項1に記載の抗I型アレルギー治療用植物精油組成物。
- 組成物の総重量に対し、42重量%のシネオール系ユーカリ油、25重量%のラベンダー油、5重量%のローズマリー油および27重量%のグレープフルーツ油を含む、請求項1に記載の抗I型アレルギー治療用植物精油組成物。
- 抗ヒスタミン作用、ロイコトリエン産生抑制作用及びセロトニン遊離抑制作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の抗I型アレルギー治療用植物精油組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の抗I型アレルギー治療用植物精油組成物を有効成分とするI型アレルギーの予防および/または治療剤。
- 精油組成物吸着剤と、遊離水分除去剤と、精油組成物脱着調節剤と、発熱剤と、熱伝導防止剤と、吸収促進剤と、シート形成用基剤とをさらに含む、請求項5に記載のI型アレルギーの予防および/または治療剤。
- 前記精油組成物吸着剤はケン化価98.0〜98.5のポリビニルアルコール系高分子吸水性樹脂であり;前記シート形成用基剤はケン化価88.0±2.0のポリビニルアルコール系高分子吸水性樹脂であり;前記遊離水分除去剤はアクリル系高分子吸水性樹脂であり;前記精油組成物脱着調節剤は活性炭であり;前記発熱剤はゼオライトであり、前記熱伝導防止剤は多糖類化合物であり;前記吸収促進剤はモノテルペンである請求項6に記載のI型アレルギーの予防および/または治療剤。
- 請求項4に記載の抗I型アレルギー治療用植物精油組成物と、精油組成物吸着剤と、遊離水分除去剤と、精油組成物脱着調節剤と、発熱剤と、熱伝導防止剤と、吸収促進剤と、シート形成用基剤とを含む抗ヒスタミン剤。
- 請求項4に記載の抗I型アレルギー治療用植物精油組成物と、精油組成物吸着剤と、遊離水分除去剤と、精油組成物脱着調節剤と、発熱剤と、熱伝導防止剤と、吸収促進剤と、シート形成用基剤とを含む抗ロイコトリエン剤。
- 請求項4に記載の抗I型アレルギー治療用植物精油組成物と、精油組成物吸着剤と、遊離水分除去剤と、精油組成物脱着調節剤と、発熱剤と、熱伝導防止剤と、吸収促進剤と、シート形成用基剤とを含む抗セロトニン剤。
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