JP4290908B2 - 硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は家具、建具、家電品、住宅機器等の表面化粧用に使用される化粧紙又は化粧シート、包装等に使用される紙/フィルム貼合紙、アルミ/紙貼合紙、紙、プラスチック、アルミ、ガラス等の表面に塗布して加熱処理することにより耐摩耗性、耐擦傷性、耐溶剤性、耐薬品性及び耐候性に優れた艶有/艶消塗膜等を形成することができる熱硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、化粧紙又は化粧シートの表面保護のためにアクリルポリオール系樹脂にイソシアネート系硬化剤を併用して硬化させたウレタン系トップコート剤、又はアミノアルキッド系樹脂等に有機酸系触媒を併用して硬化させたメラミン系トップコート剤、そのほかにはジアリルフタレート系樹脂や不飽和ポリエステル系樹脂に過酸化物系触媒を併用して硬化させたDAP系トップコート剤やポリエステル系トップコート剤が長年にわたって使用されている。又、容器包装等の表面保護には内容物による劣化を防止する目的でラッカータイプのコート層が設けられている。これらのトップコート剤は完全硬化塗膜とすることにより、或いは内容物に耐性を持つ樹脂を適宜選定することにより、耐候性、耐水性、耐磨耗性及び耐薬品性等に優れた保護性能を有する化粧紙又は化粧シート又は包装材料が提供されている。
【0003】
このような表面保護コート層のうち反応性基による硬化反応を利用したものは、ポリマー中の残存(遊離)ヒドロキシル基やカルボキシル基を、イソシアネート化合物又はメラミン樹脂と反応させて架橋させるタイプのものや、過酸化物系触媒を用いてラジカル的に架橋させることにより硬化塗膜を得るタイプのものがある。又、ラッカータイプのコート層としては、例えば、耐油性、離型性等を有するポリアミド樹脂系、MMA(メチルメタクリレート)を主成分とするメタクリル樹脂系のコート材などを適宜使い分けて使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらイソシアネート系硬化剤を併用するコート剤は反応速度が遅く、40℃〜80℃の雰囲気中で数日間熟成させる必要があり、コーティング直後には全く諸耐性を示さない。又、メラミン系硬化剤を使用するコート剤では、反応速度は速く、焼付け直後に十分な諸耐性を示す。しかし、メラミン樹脂の硬化に伴い発生するホルムアルデヒドは塗膜、又はその化粧紙中に残存し、それを使用した家具等から除々に遊離することによりシックハウス症候群等の弊害をもたらす問題がある。過酸化物系触媒を使用するコート剤は反応速度が極めて速く、得られる塗膜も諸耐性に優れている。しかし、反応が速すぎるため、印刷に際しての粘度等の制御が難しく、均一な印刷物を安定的に生産することは極めて困難である。ラッカータイプのコート剤は、焼付け、熟成の必要は無いが、内容物にあわせて樹脂タイプを選定しなければならず極めて煩雑である。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点を解消するためになされたものであり、本発明の目的は低温で焼付けが可能で、印刷後に熟成する必要が無く、印刷直後に耐溶剤性、耐薬品性等の諸耐性が発現し、又硬化時にホルムアルデヒド等の有害ガスを発生しない硬化システムを有し、諸耐性を有することから基材によって使い分けする必要がなく、室温では極めて安定であり、長時間にわたる印刷加工工程においても安定的に生産することができるトップコート剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、縮合によって自己架橋するモノマーとしてアルコキシメチル(メタ)アクリルアマイド(自己縮合成分)と、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアマイド等の活性水素を含有するモノマーの少なくとも1種と(メタ)アクリレートを分子中に含有してなる自己架橋性重合体を硬化性樹脂として含有する熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤を使用せずに加熱により容易に硬化し、耐溶剤性、耐薬品性等の諸耐性を有する優れた塗膜を形成し得ることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、(1)一般式 CH2=CR1CONHCH2OR2で表されるアルコキシメチル(メタ)アクリルアミド、(2)一般式 CH2=CR1COOCH2CH2OHで表される2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び一般式 CH2=CR1CONH2で表される(メタ)アクリルアミドから選ばれる少なくとも1種、及び(3)一般式 CH2=CCH3COOR2で表されるメタクリレートの少なくとも1種を共重合してなる自己架橋性樹脂とワックス及び/又はシリコーンを含有し、更に、(イ)一般式 CH2=CR1COOCH2CH2OHで表される2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、一般式 CH2=CR1COOCH2CH2NH2で表されるアミノエチル(メタ)アクリレート及び一般式 CH2=CR1COOHで表される(メタ)アクリル酸から選ばれる少なくとも1種と、(ロ)一般式 CH2=CCH3COOR2で表されるメタクリレート(上記式中のR1は水素原子又はメチル基を、R2は炭素数が1〜4のアルキル基を表す。)及びスチレンの少なくとも1種を共重合してなる樹脂を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0008】
【発明の実施の態様】
次に本発明を詳細に説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂成分として縮合によって自己架橋するモノマーを構成成分として含有する自己架橋性重合体を使用することが特徴である。
本発明の自己架橋性重合体を構成する自己架橋性モノマーは、下記の一般式〔1〕で表されるアルコキシメチル(メタ)アクリルアミドと、このモノマーと縮合反応して架橋を形成する成分である活性水素を有する下記の一般式〔2〕で表される2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び一般式〔3〕で表される(メタ)アクリルアミドから選ばれる少なくとも1種である。
【0009】
CH2=CR1CONHCH2OR2 〔1〕
CH2=CR1COOCH2CH2OH 〔2〕
CH2=CR1CONH2 〔3〕
(上記式中のR1は水素原子又はメチル基を、R2は炭素数が1〜4のアルキル基を表す。)
【0010】
上記一般式〔1〕で表されるアルコキシメチル(メタ)アクリルアミドは、具体的には、メトキシメチルアクリルアミド、エトキシメチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、メトキシメチルメタクリルアミド、エトキシメチルメタクリルアミド、ブトキシメチルメタクリルアミドである。このモノマーのアルコキシメチル基は反応性に富み、以下に説明するモノマーの活性水素原子と反応して架橋を形成するために必要な成分である。
【0011】
上記一般式〔2〕で表される2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートは、重合体に、紙、金属、ガラス、セラミックス、プラスチック等に対して優れた接着性を賦与する成分である。又、このモノマーの末端ヒドロキシル基の水素原子は反応性が高く、アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドのアルコキシメチル基と反応し易く、熱や紫外線によってこれらの基は縮合反応を生じ、重合体は容易に自己架橋する。
【0012】
上記一般式〔3〕で表される(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミド及びメタクリルアミドであり、アルコキシメチル基と縮合反応しやすいアミド基の水素原子を有しており、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート同様、アルコキシメチルアクリルアミドのアルコキシメチル基と縮合反応し、架橋を形成する。
【0013】
従って、本発明の自己架橋性重合体には、アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドと共に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドの少なくともいずれか一方が重合体構成成分として含まれていることが重合体が自己架橋性を有する上で必要である。
【0014】
本発明の自己架橋性重合体を構成する他のモノマーはメタクリレート(メタクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数は1〜4))であり、具体的にはメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートである。このモノマーは、重合体に高い硬度や耐熱性等、即ち、グラビア印刷時の乾燥性や耐ブロッキング性を付与する成分である。
【0015】
本発明の自己架橋性重合体は、その構成成分である(1)アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド、(2)2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種、及び(3)メタクリレートの割合は特に限定されないが、自己架橋性及び形成される被膜の諸耐性を考慮すれば、好ましくは、(1)が1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%、(2)が10〜80重量%、更に好ましくは20〜50重量%、(3)が10〜80重量%、更に好ましくは20〜60重量%である。
【0016】
本発明の自己架橋性重合体は、上記モノマーを共重合することにより得られるが、重合方法は、特に限定されない。得られる重合体の使用形態(溶液として使用する)から溶液重合(ラジカル重合)が好ましい。尚、本発明においては、必要により、本発明の主旨が損なわれない範囲で上記のモノマーと共重合可能なモノマーを更に共重合させることができる。重合に用いる有機溶剤は、モノマー及び生成重合体を溶解する溶剤であれば特に限定されない。又、ラジカル重合開始剤も特に限定されず、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、フェニルアゾトリフェニルメタン等のアゾビス系重合開始剤、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキシド、コハク酸パーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート等の有機過酸化物重合開始剤等が挙げられる。
【0017】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記の自己架橋性重合体を硬化性樹脂成分とし、ワックス及び/又はシリコーンを配合しているものである。
ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、テフロンワックス、カルナウバワックス、木蝋、ステアリン酸アマイド、エルシル酸アマイド、オレイン酸アマイド、ステアリン酸ビスアマイド、ステアリン酸アルミ、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられ、これらは1種又は2種以上で使用される。
シリコーンとしては、例えば、従来公知のシリコンオイルやシランカップリング剤、エチルシリケート、プロピルシリケート、ブチルシリケート等のシリコンアルコキシド〔Si(OR)4:Rは炭素数が1〜4程度のアルキル基〕及びそれらの加水分解物等が挙げられ、これらは1種又は2種以上で使用される。
ワックス及び/又はシリコーンの使用割合は特に限定されないが、通常、自己架橋性重合体に対して1〜10重量%である。少なすぎると被膜の表面保護性能が不充分となり、多すぎると被膜表面がはじき現象等を起こしたり、被膜が不透明となる場合がある。
【0018】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要により顔料、抗菌・防黴剤、脱臭剤等の各種添加剤を必要量含有させることができる。添加剤は特に限定されない。顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、ベントナイト、アルミシリケート、硫酸バリウム、酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄等が挙げられる。抗菌・防黴剤としては、例えば、銀ゼオライト等の無機金属系、第四アンモニウム系、キトサン等の天然物系、イミダゾール系、チアゾール系、ヨード系、ブロム系、ニトリル系、フェノール系、ハロアルキルチオ系、ピリジン系、トリアジン系、両性界面活性剤系、ピグアナイド系等のものが挙げられる。脱臭剤としては、例えば、活性炭等の物理吸着系、多価カルボン酸、グリオキザール、硫酸亜鉛等の化学吸着系等が挙げられる。これらの添加剤は1種又は2種以上で使用される。
【0019】
本発明の自己架橋性重合体は、酸の共存下で加熱すると、縮合反応がさらに促進され、熱硬化性を高めることができる。又、ホルムアルデヒドを発生させず活性水素と反応して架橋するイソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、アジリジン系硬化剤などを併用し架橋密度を更に高めることも可能である。酸としては、例えば、パラトルエンスルホン酸等の有機酸類、硝酸等の無機酸類等が用いられる。
【0020】
本発明においては、自己架橋性重合体と共に、(イ)2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸)から選ばれる少なくとも1種と、(ロ)(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数は1〜4程度)及びスチレンの少なくとも1種を共重合してなる樹脂を併用することで被膜の硬度、耐熱性や光沢等を向上させることができる。この重合体は活性水素を有しているので自己架橋性重合体と架橋を形成することができる。
【0021】
好ましい重合体は上記の(イ)の2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸と(ロ)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体であり、重量平均分子量(GPCで測定。標準ポリスチレン換算)が10,000〜200,000、水酸基価が20〜250、酸価が2〜40、ガラス転移温度(計算値)が40〜90℃となるようにこれらのモノマーで構成した共重合体である。この共重合体は、自己架橋性重合体に対して、通常、1〜50重量%の範囲で使用される。
この共重合体に加えて耐熱性を有するセルロース系樹脂、ケトン系樹脂、及び石油系樹脂の少なくとも1種の樹脂を使用することにより被膜の耐熱性、耐ブロッキング性や光沢が改善される。耐熱性を有する樹脂は、自己架橋性重合体に対して1〜20重量%の範囲で使用することが好ましい。
【0022】
本発明の硬化性樹脂組成物は、以上に説明した硬化性樹脂成分である自己架橋性重合体及びその他の成分を含む固形分が10〜50重量%程度の溶液として使用される。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、相互に縮合反応することにより自己架橋するアルコキシメチル(メタ)アクリレートと、活性水素を有する2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及び/又は(メタ)アクリルアミドを構成成分として含む共重合体を硬化性樹脂成分として使用することから、例えば100℃以下の低温でも、重合体側鎖のアルコキシメチル基が、活性水素を有する側鎖であるヒドロキシル基又はアミド基と縮合反応して架橋結合を形成する。このため、有機溶剤に不溶性の硬化皮膜を形成することができる。
【0023】
【実施例】
次に実施例、参考例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下の文中の部及び%は重量基準である。
【0024】
参考例1
窒素ガス導入管を有するフラスコに、表1に示す単量体、重合開始剤及び酢酸ブチルを仕込み、窒素ガス雰囲気下に80℃で8時間攪拌しながら重合した。重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用いた。
【0025】
【0026】
生成した淡黄色の重合体溶液を更に酢酸エチルで希釈し、30%濃度の溶液とした。この溶液の20℃の粘度は1000mPa・sであった。
この溶液100部にシリカ5部、シリコンオイル1部を分散混合し、酢酸エチル、イソプロピルアルコールで希釈して粘度100mPa・sに調整し(コート剤A)、グラビア印刷を行った。グラビアシリンダーは100Line/inchの彫刻版を用いた。グラビア印刷は坪量30g/m2の一般紙に硝化綿系インキ(THインキ:大日精化社製)で柄印刷を行った印刷物上に上記条件でコート剤Aをグラビア印刷し、150℃で10秒間乾燥した。このコートした印刷物をメチルエチルケトンを含ませた綿で20回ラビングしたが印刷面の劣化は見られなかった。このことはコート剤Aによる被膜が架橋構造を有していることを示している。
【0027】
実施例1
参考例1のモノマー組成を表2に示すように変更する以外は、参考例1と同様にして重合し、自己架橋性重合体を得た。
【0028】
【0029】
得られた重合体50部に対し、別途合成したアクリルポリオールを50部混合した。
このアクリルポリオールは、メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ブチルメタクリレート/メタクリル酸よりなり、水酸基価が200、酸価が10、重量平均分子量(GPCで測定)が20,000、ガラス転移温度(計算値:上記各構成モノマーのホモポリマーのガラス転移温度と各モノマーの重量分率から計算)が80℃の共重合体である。ここで水酸基価及び酸価は、いずれも重合体固形分当たりの値である。
【0030】
この溶液100部に粒経10μmのアルミナ粒子を10部、シランカップリング剤(信越化学工業社製 KBM−602)1部、エチルシリケート(テトラエトキシシラン)1部を分散混合し、酢酸エチル、イソプロピルアルコールで希釈して粘度を100mPa・sに調整した(コート剤B)。コート剤Bを用いてグラビア印刷を行った。グラビアシリンダーは100Line/inchの彫刻版を用いた。グラビア印刷は、厚さが25μmのポリエステルフィルムにウレタン系インキ(NB500インキ:大日精化社製)で柄印刷を行った印刷物に、上記条件でコート剤Bを印刷し、100℃で10秒間乾燥した。その後、40℃で2日間熟成を行った。この印刷物をメチルエチルケトンを含ませた綿で50回ラビングしたが印刷面の劣化はなかった。このことはコート剤Bのコート被膜が架橋構造を有していることを示すものである。
【0031】
比較例1
窒素ガス導入管を有するフラスコに、表3に示すモノマー、重合開始剤及び酢酸ブチルを仕込み、80℃で3時間攪拌しながら窒素ガス雰囲気下に重合した。重合開始剤としては、AIBNを用いた。
【0032】
生成した淡黄色の重合体溶液を酢酸エチルで希釈して濃度30%の溶液とした。この溶液の20℃の粘度は800mPa・sであった。
この溶液100部にシリカ5部、シリコンオイル1部を分散混合し、酢酸エチル、イソプロピルアルコールで希釈して粘度を100mPa・sに調整した(コート剤C)。コート剤Cを用いてグラビア印刷を行った。グラビアシリンダーは100Line/inchの彫刻版を用いた。グラビア印刷は、坪量30g/m2の一般紙に硝化綿系インキ(THインキ:大日精化工業社製)で柄印刷を行った印刷物に、上記条件でコート剤Cをグラビア印刷した。150℃で30秒間乾燥し、40℃で2日間熟成した。この印刷物をメチルエチルケトンを含ませた綿で20回ラビングしたところ印刷面は容易に溶解した。従ってこのことはコート剤Cのコート被膜は架橋構造を有していないことを示すものである。
【0033】
〔コート被膜の性能試験〕
参考例1、実施例1及び比較例1の各コート剤のそれぞれを、シナ合板に貼着した木目印刷した一般紙(坪量30g/m2)に3〜4g/m2(乾燥基準)となるように塗布し、下記の条件で焼付けした。木目印刷は印刷版としてグラビアシリンダー100Line/inchの彫刻版(10秒、Zahn Cup#4)を用いてグラビア印刷により行った。
焼付け条件
コート剤A(参考例1):150℃で10秒
コート剤B(実施例1):100℃で10秒、更に40℃で2日間熟成
コート剤C(比較例1):150℃で30秒、更に40℃で2日間熟成
下記の方法で各コート被膜の性能を評価し、結果を表3に示した。表3の結果から本発明の硬化性樹脂組成物を用いることにより諸特性に優れたコート被膜が形成されることが分かる。
【0034】
(試験方法)
(1)摩耗C試験
JAS規格に基づき、CS−17摩耗輪使用して試験。柄が半分取れた時点の摩耗輪回転数を摩耗値とする。
合格基準は摩耗値200以上。
(2)耐セロハンテープ性
24mm幅のセロハンテープにて同一個所を付着・剥離を繰り返し、柄がとれ始めた回数を測定する。
(3)碁盤目試験
コート面に1mm幅の格子の切り目を作り、セロハンテープを付着させ、剥離したときの剥離されずに残っている格子の数を数える。
【0035】
(4)耐メチルエチルケトン(MEK)性試験
荷重200Gでラビングテスター(太平理化工業社製ラビングテスター)で擦り、塗布された皮膜が劣化するまでの回数(往復)を測定する。
(5)耐アルカリ試験
JAS規格に基づき試験。1%炭酸ナトリウム水をコート面に滴下した後、時計皿で滴下部を覆い、6時間経過後水洗し、更に24時間放置後の滴下部の汚染の程度を5段階法で評価する。
5:汚染なし 4:極僅かの汚染 3:若干の汚染 2:かなりの汚染
1:著しい汚染
(6)耐酸試験
JAS規格に基づき試験。5%酢酸水溶液をコート面に滴した後、時計皿で滴下部を覆い、6時間経過後に水洗し、更に24時間放置した後の滴下部の汚染の程度を5段階法(同上)で評価する。
【0036】
(7)汚染A試験
JAS規格に基づき試験。黒マジック、赤クレヨン、青インキでコート面に10mm幅の線を引き、4時間後イソプロピルアルコール(IPA)にて拭き取り汚染の程度を5段階法で評価する。
(8)汚染B試験
JAS規格に基づき試験。黒マジック、赤クレヨンでコート面に10mm幅の線を引き、2時間後にIPAにて拭き取り汚染の程度を5段階法で評価する。
(9)透明性
目視で判定する。
【0037】
【0038】
【発明の効果】
以上の本発明によれば、耐摩耗性、基材との接着性、耐溶剤性、耐アルカリ・酸性、耐汚染性等の諸耐性を有し、透明性に優れたコート被膜が形成される硬化性樹脂組成物が提供される。
Claims (1)
- (1)一般式 CH2=CR1CONHCH2OR2で表されるアルコキシメチル(メタ)アクリルアミド、(2)一般式 CH2=CR1COOCH2CH2OHで表される2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び一般式 CH2=CR1CONH2で表される(メタ)アクリルアミドから選ばれる少なくとも1種、及び(3)一般式 CH2=CCH3COOR2 で表されるメタクリレートの少なくとも1種を共重合してなる自己架橋性樹脂と、ワックス及び/又はシリコーンを含有し、更に、(イ)一般式 CH2=CR1COOCH2CH2OHで表される2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、一般式 CH2=CR1COOCH2CH2NH2で表されるアミノエチル(メタ)アクリレート及び一般式 CH2=CR1COOHで表される(メタ)アクリル酸から選ばれる少なくとも1種と、(ロ)一般式 CH2=CCH3COOR2で表されるメタクリレート(上記式中のR1は水素原子又はメチル基を、R2は炭素数が1〜4のアルキル基を表す。)及びスチレンの少なくとも1種を共重合してなる樹脂を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
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