JP3815899B2 - カチオン性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は乾燥することによって強靱な被膜を形成することが可能な、架橋性カチオン性樹脂組成物に関する。本発明の樹脂組成物を用いることによって、耐水性および耐溶剤性に優れ、透明で均一な被膜を形成することができる。このため本発明の樹脂組成物は、塗布型の帯電防止剤、インクジェット記録用の耐水化剤、その他各種コーティング材として有用である。
【0002】
【従来の技術】
カチオン性共重合体を、塗布型の帯電防止剤やインクジェット記録用の耐水化剤として使用することが広く知られている。例えば、特開平6−25447号公報には、特定の構造を持つカチオン化剤を用いてカチオン化された4級アンモニウム塩型の共重合体からなる帯電防止剤が開示されている。また、特公平7−45257号公報には、特定の構造を持つカチオン化剤を用いてカチオン化された4級アンモニウム塩型の共重合体からなるインクジェット記録用の耐水化剤等が開示されている。しかしながら、これらの共重合体は一般に親水性ポリマーであるため、形成される被膜の耐水性や、アセトンやアルコール等の親水性溶剤に対する耐溶剤性が悪く、長期間安定した帯電防止性を維持することが難しい。
【0003】
そこで様々な手法により被膜の耐水性および耐溶剤性を改善することが検討されている。架橋による不溶化によって被膜の耐水性と耐溶剤性を向上させようとしたものとして、特開平8−142496号公報および特開平8−267904号公報に、インク定着層をエポキシ系架橋剤を用いて架橋させたインクジェット用記録シートが開示されている。また、特開平10−35090号公報には、カルボキシル基と4級アンモニウム塩基を含有する共重合体をオキサゾリン基を有する化合物で架橋したインクジェット記録シート用耐水化剤組成物が開示されている。さらに、特開平9−52433号公報には、紫外線硬化樹脂を配合し、紫外線照射をしてインク受容層を架橋させたインクジェット記録シートが開示されている。また、特開平9−268260号公報には、紫外線硬化型の第4級アンモニウム塩からなる帯電防止剤が開示されている。
【0004】
しかしながら、エポキシ系架橋剤を用いる場合には、可使時間の関係から塗工液を2液系にする必要があり、なおかつ架橋硬化をさせるために長時間加温させる必要がある。またオキサゾリン基を架橋剤として用いた場合には、硬化させるために高温で加熱させる必要があるため、熱に弱い基材を用いることができないという欠点がある。さらに、紫外線硬化樹脂を用いた場合には紫外線照射装置が別途必要となるだけでなく、硬化速度の関係上操業性を上げることが難しく、生産性に劣るという欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの従来技術の問題点を解消した新しいカチオン性樹脂組成物を提供することを解決すべき課題とした。すなわち本発明は、1液で使用可能で長期間の保存安定性に優れ、かつ、高温による長時間の加熱乾燥や、紫外線照射装置などの特別な設備を必要とせずに、透明性、造膜性、耐水性および耐溶剤性に優れた被膜を形成することができるカチオン性樹脂組成物を提供することを課題とした。
【0006】
【課題を解決するための手段】
これらの課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、本発明者らは多官能ヒドラジン化合物を架橋剤として用いたカチオン性樹脂組成物が耐水性、耐溶剤性に優れた被膜を形成することを見いだし本発明を完成させた。すなわち本発明は、1つ以上のアルデヒド基またはケトン基を有する単量体単位(a)およびカチオン性単量体単位(b)を構成単位として含むカチオン性共重合体(A);分子内に2つ以上のヒドラジノ基を有するヒドラジン化合物(B);および親水性溶媒(C)を含有し、前記カチオン性単量体単位(b)が下記式(I)で表される構造を有することを特徴とするカチオン性樹脂組成物を提供するものである。
【0007】
【化2】
【0008】
式中、Aは酸素原子またはNHを表し、R1 は水素原子またはメチル基を表し、R2 は炭素数2〜4の無置換のアルキレン基を表し、R3 およびR4 はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、R5は−CH2 CH(OH)CH2 −を表し、R6 およびR7 はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、R8 は炭素数1〜10のアルキル基またはベンジル基を表し、X- は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンまたはアルキル硫酸イオンを表し、nは1〜3の整数を表す。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下において本発明のカチオン性樹脂組成物の各成分および作用について詳細に説明する。
【0010】
カチオン性共重合体(A)
本発明のカチオン性樹脂組成物の必須成分であるカチオン性共重合体(A)は、1つ以上のアルデヒド基またはケトン基を有する単量体単位(a)およびカチオン性単量体単位(b)を構成単位として含むものである。アルデヒド基とケトン基を両方とも有するものであってもよい。また、カチオン性共重合体(A)を構成する単量体単位(a)は、すべて同一であっても異なっていてもよい。
【0011】
1つ以上のアルデヒド基またはケトン基を有する単量体単位(a)は、アルデヒド基またはケトン基とラジカル重合性不飽和基を有する単量体を共重合させることによって形成することができる。そのような単量体として、(メタ)アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートなどを例示することができる。これらの中でも、特に(メタ)アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートを用いて共重合するのが好ましい。共重合に際しては、これらの単量体のうちの1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」の表記は、アクリル酸またはメタアクリル酸を意味する。
【0012】
カチオン性共重合体(A)を構成するカチオン性単量体単位(b)は、すべて同一であっても異なっていてもよい。
【0013】
カチオン性単量体単位(b)は、上記式(I)で表される構造を有するものである。式(I)において、Aは酸素原子またはNHを表し、R1 は水素原子またはメチル基を表し、R2 は炭素数2〜4の無置換のアルキレン基を表し、R3 およびR4 はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、R5は−CH2 CH(OH)CH2 −を表し、R6 およびR7 はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、R8 は炭素数1〜10のアルキル基またはベンジル基を表し、X- は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンまたはアルキル硫酸イオンを表し、nは1〜3の整数を表す。
【0015】
R3 、R4 、R6 およびR7がとりうる炭素数1〜4のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基を例示することができる。
R8 がとりうる炭素数1〜10のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロペンチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基などを例示することができる。また、R8 がとりうるアリールアルキル基として、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基などを例示することができ、中でもベンジル基が好ましい。
X- は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンまたはアルキル硫酸イオンである。
【0016】
カチオン性単量体単位(b)は、分子内にカチオン性基とラジカル重合性不飽和基を有する単量体を共重合させるか、あるいは分子内にカチオン変性可能な置換基とラジカル重合性不飽和基を有する単量体を共重合させた後にカチオン変性することによって形成することができる。カチオン性単量体単位(b)を形成しうる単量体として、アリルアミン、N−アルキルアリルアミン、ジアリルアミン、N,N−ジアルキルビニルアニリン、N,N−ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの酸中和物または第4級アンモニウム塩であって、上記一般式(I)で表される構造を有するものを例示することができる。共重合に際しては、これらの単量体のうちの1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
分子内にカチオン変性可能な置換基とラジカル重合性不飽和基を有する単量体を用いて共重合させた場合は、共重合後にカチオン変性する。カチオン変性は通常用いられている方法のいずれかにより行う。例えば、塩酸などの酸化合物で中和する方法や、ジアルキル硫酸、ハロゲン化アルキルなどで4級アンモニウム塩化する方法を用いることができる。4級化剤としては、メチルクロライド、ブチルクロライド、ベンジルクロライド等のハロゲン化アルキル;ジメチル硫酸、ジエチル硫酸などのジアルキル硫酸エステル;3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド;モノクロロ酢酸エチルなどを用いることができる。
【0018】
本発明で使用するラジカル共重合体(A)は、1つ以上のアルデヒド基またはケトン基を有する単量体単位(a)およびカチオン性単量体単位(b)以外の単量体単位を含んでいるものであってもよい。(a)、(b)以外の単量体単位は、本発明が目的とするアルデヒド基またはケトン基とヒドラジノ基の架橋反応を阻害するものでなければ、その構造は特に限定されない。(a)、(b)以外の単量体単位は、すべて同一であっても異なっていてもよい。
【0019】
(a)、(b)以外の単量体単位は、ラジカル重合性不飽和基を有する単量体を単量体単位(a)、(b)を形成しうる単量体とともに共重合することによって形成することができる。そのような単量体として、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの炭素数が1〜18の脂環式アルキルを含むアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸などのα、β−不飽和カルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、2−メチレングルタル酸のなどのα、β−不飽和ジカルボン酸;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの末端にヒドロキシ基を含有する(メタ)アクリレート;酢酸ビニルプロピオン、酢酸ビニルなどのビニルエステル;オルガノポリシロキサン基を有するシリコンマクロモノマー;(メタ)アクリルアミド、N−アルキロールアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;ハロゲン化ビニルなどを使用することができる。また必要に応じてアリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートのような分子内に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有する架橋性単量体を共重合させることもできる。共重合に際しては、これらの単量体のうちの1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
カチオン性共重合体(A)中の単量体単位(a)の含有量は1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%である。また、単量体単位(b)の含有量は5〜99重量%、好ましくは15〜98重量%である。特に単量体単位(b)として式(I)で表される単量体単位を15〜98重量%含有するのが好ましい。単量体単位(a)および(b)以外の単量体単位の含有量は0〜94重量%、好ましくは0〜83重量%である。
【0021】
単量体単位(a)の含有量が1重量%未満であると、カチオン性共重合体(A)中のアルデヒド基またはケトン基の含有量が少な過ぎるため、カチオン性共重合体(A)とヒドラジン化合物(B)の架橋密度が低くなって、耐水性等の被膜物性の充分な改善効果が得られなくなる傾向にある。また、単量体単位(a)の含有量が30重量%を越えると、相対的に単量体単位(b)が少なくなるため、目的とする用途のために必要とする諸性能が得られなくなる傾向にある。
【0022】
カチオン性共重合体(A)のガラス転移温度は、本発明のカチオン性樹脂組成物の用途によって異なるが、−30℃〜100℃であるのが好ましく、0〜60℃であるのがより好ましい。なお、本明細書において「ガラス転移温度」は、下記の計算式により算出される値を意味する。
【数1】
(式中、Tgはカチオン性共重合体(A)のガラス転移温度(K)、iは単量体の種類、mは単量体の総数、Tg(i)は単量体iのガラス転移温度、W(i)は単量体iの重量分率を示す)
【0023】
カチオン性共重合体(A)の製造方法は特に制限されず、既知の方法のいずれかを用いて製造することができる。
好ましい製造方法は、後述する親水性溶媒(C)中でラジカル重合開始剤を用いて溶液重合することによって製造する方法である。重合に用いる溶媒は、1種類であっても、2種類以上の混合溶媒であってもよい。
【0024】
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等のアゾ系開始剤や、ベンゾイルパーオキシド、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキシド等の過酸化物などを用いることができる。重合開始剤の使用量は、重合性単量体100重量部に対して0.05〜10重量部、好ましくは0.2〜3重量部である。また、分子量を調整するために、必要に応じてラウリルメルカプタンやオクチルメルカプタンなどの連鎖移動剤を添加して重合することも可能である。重合温度は特に限定されないが、好ましくは40℃〜120℃、特に好ましくは60℃〜100℃である。得られるカチオン性共重合体の分子量は、3,000〜500,000の範囲内であるのが好ましく、10,000〜200,000の範囲内であるのが特に好ましい。
【0025】
ヒドラジン化合物(B)
本発明のカチオン性樹脂組成物の必須成分であるヒドラジン化合物(B)は、分子内に2つ以上のヒドラジノ基を有する化合物である。具体的には、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジドなどの2官能性のヒドラジン化合物;ブタントリカルボヒドラジド、トリメリット酸トリヒドラジドのような3官能性のヒドラジン化合物などを用いることができる。中でも、3官能性以上のヒドラジン化合物を用いるのが好ましく、ブタントリカルボヒドラジドを用いるのが水溶性や架橋効果の点から特に好ましい。
本発明のカチオン性重合体組成物には、カチオン性共重合体中のアルデヒド基またはケトン基1モルに対してヒドラジノ基が0.2〜3モル、好ましくは0.4〜2モル、更に好ましくは0.8〜1.2モルの割合で配合される。ヒドラジン化合物(B)の配合割合は少なくても過剰でも、乾燥被膜の耐水性と耐溶剤性が低下する。
【0026】
親水性溶媒(C)
本発明のカチオン性樹脂組成物の必須成分である親水性溶媒の種類は、特に制限されない。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;プロビレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;水などを用いることができる。これらの親水性溶媒は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0027】
親水性溶媒(C)は、カチオン性共重合体(A)の共重合時の溶媒として使用するのが好ましい。共重合時の溶媒として使用すれば、共重合後に溶媒を除去せずに本発明のカチオン性樹脂組成物の調製に利用できるので便利である。親水性溶媒(C)をカチオン性共重合体(A)の共重合時の溶媒として用いる場合には、特にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテルまたは水を用いるのが好ましい。
【0028】
その他の任意成分
本発明のカチオン性樹脂組成物には、カチオン性共重合体(A)、ヒドラジン化合物(B)および親水性溶媒(C)の他に、目的とする用途に応じて様々な成分を添加することができる。例えば顔料、シリカなどの無機充填剤、消泡剤、防腐剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤などを添加することができる。これらは、本発明の目的とする帯電防止性や成膜性などの効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0029】
カチオン性樹脂組成物の作用
本発明のカチオン性樹脂組成物は、カチオン性共重合体(A)、ヒドラジン化合物(B)、親水性溶媒(C)およびその他の任意成分を混合することによって調製することができる。混合の順序および条件は特に制限されない。配合比は、親水性溶媒(C)100重量部に対して、カチオン性共重合体(A)とヒドラジン化合物(B)を合計で1〜100重量部にするのが好ましく、5〜30重量部にするのがより好ましい。
本発明のカチオン性樹脂組成物は、常温で乾燥することによってカチオン性共重合体(A)のアルデヒド基またはケトン基と、ヒドラジン化合物(B)のヒドラジノ基が架橋反応を起こす(常温架橋性)。この反応によって、両者の間に架橋が形成され、強靱で耐水性、耐溶剤性に優れた被膜になる。また、アルデヒド基またはケトン基とヒドラジノ基の架橋反応は脱水反応であるため、溶液状態であるうちは反応は進行せず、基材上に塗工、乾燥され被膜を形成することにより架橋が進行する。そのために、本発明の水性樹脂組成物は1液でありながら長期にわたって充分な保存安定性を有する。
【0030】
【実施例】
以下に製造例、実施例および比較例を記載して、本発明をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。なお、以下に記載される「部」および「%」は、特に記載のない限り「重量部」および「重量%」である。
【0033】
(製造例2)カチオン性共重合体の製造2
(a)ポリマー重合
攪拌装置、還流冷却管および窒素導入管を備えたフラスコに、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMMA)85部、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)5部、メチルメタクリレート(MMA)10部、溶媒としてイソプロピルアルコール270部、触媒としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)2部を入れ、反応系内を窒素雰囲気化に置換し、30分間で80℃まで昇温して重合を開始した。2時間後、AIBNを0.3部追加してさらに3時間重合した。
【0034】
(b)カチオン変性
いったん室温まで冷却後、フラスコに、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの60%水溶液180部を入れた滴下漏斗を装着し、100℃に加熱した。カチオン化剤を約2時間かけて少しづつ滴下しながら加えた。その後、イソプロピルアルコールを留去すると同時に、最終的に固形分濃度が40%となるように徐々に蒸留水を加えながら5時間反応させた。その後さらに7時間加熱して反応させた。淡黄色透明の溶液状のカチオン性共重合体A−6が得られた。
同様にして表2に記載される組成を有するカチオン性共重合体A−7、A−8およびB−3を製造した。
【0035】
【表2】
【0036】
(実施例5〜7および比較例3〜4)
カチオン性樹脂組成物を調製して、インクジェット記録シート用の耐水化剤としての評価を行った。
(1)カチオン性樹脂組成物の調製100mlのサンプル瓶に、ポリビニルアルコール10%水溶液((株)クラレ製:ポバールPVA117)90g、製造例2で製造した溶液状のカチオン性共重合体A−6を固形分で1.0g、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)の10%水溶液を0.25g(カチオン性共重合体のアルデヒド基またはケトン基に対してADHのヒドラジノ基のモル比が1.0になる量)を入れ、固形分10%の水溶液となるように蒸留水を添加して、実施例5のカチオン性樹脂組成物を調製した。カチオン性共重合体およびヒドラジン化合物の種類を表3に示すように変えて、実施例6〜7および比較例3〜4のカチオン性樹脂組成物を同様にして調製した。
【0037】
(2)記録シートの作成
調製した各カチオン性樹脂組成物をペイントシェーカーで10分間攪拌分散した後、バーコーター(No.40)でポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み100μm)に塗工し、80℃の乾燥機内で5分間乾燥した。その後、23℃/湿度65%の恒温室に48時間放置した。
(3)テストサンプル印字
作成した各記録シートに、インクジェットプリンター(キャノン(株)製:BJC−600J)を用いてブラック、シアン、マゼンダ、イエローの各色を2cm×2cmでベタ印字を行った。
【0038】
(4)耐水性評価
印字された試験片を常温で蒸留水に30秒間浸漬し、乾燥後に印字部分のインクの残存度を以下の基準にしたがって目視で評価した。
◎:インクのにじみ、流れがみられない。
○:わずかにインクのにじみ、流れがみられるが実用上問題ないレベル。
△:インクがにじむ、または一部が流れる。
×:インクが完全に流れ落ちる。
同様にしてインク受容層の耐水性を以下の基準にしたがって目視で評価した。
◎:被膜の膨潤、溶出がみられない。
○:被膜の膨潤、溶出がみられるが実用上問題ないレベル。
△:被膜の一部が流れる。
×:被膜が溶出し、流れ落ちる。
【0039】
(5)印字濃度の測定
印字された試験片の各色の光学濃度(O.D)を、光学濃度計(マクベス社製:RD920)にて測定した。
耐水性評価と印字濃度測定の結果を表3に示す。
【0040】
【表3】
【0044】
【発明の効果】
本発明のカチオン性樹脂組成物は、乾燥することによってカチオン性共重合体(A)中のアルデヒド基またはケトン基とヒドラジン化合物(B)のヒドラジノ基が架橋して強靱な被膜を形成する。形成された被膜は透明で均一であり、かつ被膜の耐水性、耐溶剤性に優れている。したがって、本発明のカチオン性樹脂組成物は、塗布型の帯電防止剤、インクジェット記録用の耐水化剤、その他各種コーティング材として有用である。
Claims (5)
- 1つ以上のアルデヒド基またはケトン基を有する単量体単位(a)およびカチオン性単量体単位(b)を構成単位として含むカチオン性共重合体(A);分子内に2つ以上のヒドラジノ基を有するヒドラジン化合物(B);および親水性溶媒(C)を含有し、前記カチオン性単量体単位(b)が下記式(I)で表される構造を有することを特徴とするカチオン性樹脂組成物。
- 前記カチオン性共重合体(A)中に式(I)で表される構造を有するカチオン性単量体単位が15〜98重量%含まれていることを特徴とする請求項1に記載のカチオン性樹脂組成物。
- 前記ヒドラジン化合物(B)が分子内に3つ以上のヒドラジノ基を有することを特徴とする請求項1または2に記載のカチオン性樹脂組成物。
- 前記ヒドラジン化合物(B)がブタントリカルボヒドラジドである請求項3に記載のカチオン性樹脂組成物。
- 基材上に請求項1〜4のいずれかに記載のカチオン性樹脂組成物を塗布し乾燥させてなる被膜を有するインクジェット記録シート。
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