JP4290437B2 - 除電装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はイオン化装置(イオナイザ)等、正または負に帯電している帯電体の電荷を除電するための除電装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶製造ライン等において、対象物が帯電しているとほこり等が付着して製品が不良品となることがあり、また、コンベア等により物体を搬送している場合には、小さい対象物が帯電することにより製品同士が吸引されて接触してしまい、生産ラインが停止してしまうことがある。このため、静電気の発生を抑制する必要がある個所には、限られたスペースに多数の除電装置が配置される。
【0003】
静電気は対象物に蓄積されている正または負の電荷により生ずるものであり、静電気に起因する対象物の帯電電位はアースを基準電位として、対象物の表面電位を測定することにより決定されている。除電の原理は、このような対象物に蓄積されている電荷をアースに流し込むか、または蓄積されている電荷とは反対の極性のイオンを吹き付けて帯電電位を中和することにより、対象物、すなわち帯電体に蓄積されている電荷をゼロに近づけるものである。
【0004】
除電装置は、上記の原理に従って対象物が正または負に帯電した状態から除電する。コロナ放電式の除電装置は、放電用の電極針に高圧電源からの直流高電圧または交流高電圧を印加してコロナ放電を生じさせる。図1に示す直流型の除電装置では、針状の放電電極1から接地電極46に向かってコロナ放電を生じさせると、放電電極1の周辺に存在する空気がイオン化され、プラスまたはマイナスのイオンを発生させる。イオン化した空気を帯電した対象物に搬送する方法には、対象物とイオンと間に発生するクーロン力によって搬送される方法や、ファンなどの送風手段によって搬送する方法、あるいは外部より圧縮空気を供給しその空気流によって搬送する方法などがある。このようにして搬送されたプラスイオンやマイナスイオンで対象物の帯電電位が中和されることにより、対象物に蓄積されている帯電電荷はゼロに近づき、除電される。
【0005】
除電装置で発生されて空気中を流れるプラス、またはマイナスのイオン流は、高電圧電源とアース間の電流として考えることができる。すなわち、高電圧電源からアースに向かって流れる電流はマイナスのイオン流に相当し、アースから高電圧発生部に向かって流れる電流はプラスのイオン流に相当している。このようなイオン流と電流との相互関係により、除電装置から発生しているプラス、マイナスのイオン量が同数であれば中和されて電流はゼロとなる。したがって、除電装置は発生されるイオン量のバランスを維持することで正しく除電を実行できる。
【0006】
このような除電装置には、例えば図2に示す特許文献1のようなファン7を備えるファン型あるいはブロア型の除電装置がある。このタイプの除電装置は、内蔵したファン7によりイオンを対象物に向かって搬送し、広範囲に除電することができる。
【0007】
【特許文献1】
米国特許6137670号
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
除電装置が利用される使用環境の省スペース化に伴って、近年は除電装置自体の小型化、薄型化の要望と共に、対象物と除電装置との距離が近くても使用可能な除電装置が求められている。しかしながら、除電装置を対象物と近距離で使用すると、放電電極で生じる電界によって対象物に電荷が誘導されるおそれがあるという問題がある。特に放電電極の先端で強い電界が発生するため、除電装置の配置スペースが殆どなく、除電装置と除電対象物が近接して配置されるような場合においては、この電界の作用で対象物の表面に電荷が誘電され、除電目的の除電装置によって帯電されるという事態が生じる。
【0009】
また、除電装置の薄型化によってファンの送風能力が低下し、放電電極で発生されるイオンを対象物に搬送できず、ファンを駆動するモータの電源線や装置内部の電子部品などで吸収されて除電に寄与しないイオンが増加するという問題もある。特にイオンが除電に寄与せずファンモータの電源線を介してアースに流れると、イオンバランスが悪化する傾向がある。
【0010】
さらに、近距離ではファンの風速分布が十分に広がらないため、除電可能範囲が狭くなるという問題もある。さらにまた、ファンから発生する微少な塵が対象物を汚染する可能性も指摘されている。
【0011】
本発明は、このような除電装置の薄型化に際して起こる問題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、高い除電性能を実現しながら装置の薄型化が可能な除電装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の除電装置は、空気に高電圧を印加して電離させ、イオンを発生させるための少なくとも一の放電電極(1)と、前記放電電極(1)に電力を供給するための高圧電源部(2)と、電離したイオンを飛翔させるためのファン(7)とを備える除電装置であって、前記除電装置は、ケース開口部(5)を設けたケース(6)と、前記ケース開口部(5)に設けられたファン(7)と、前記ファン(7)前面において前記ケース開口部(5)をガードするため、線状あるいは平板状のガード条(25a)を複数一体成型されて格子状のパターンにより形成された網状に設けられたガード部(25)と、前記ケース開口部(5)に突出するように対向して配置された少なくとも一の放電電極(1)と、前記放電電極(1)に電力を供給する高圧トランス(2A)と、を備えてなり、前記ケース開口部(5)をガードする前記ガード部(25)において、各放電電極(1)の先端部分に重なる位置に、前記格子状のパターンとは異なるパターンに形成された導電性の電界遮断部(24)が連結されてなることを特徴とする。
【0013】
また、本願発明発明の請求項2の除電装置は、請求項1に加えて、前記電界遮断部(24)は前記ケース開口部(5)と略同心円の環状であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項2の除電装置は、請求項1に加えて、前記ガード部25は、線状あるいは平板状のガード条25aを複数一体成型されて格子状のパターンにより形成されており、前記電界遮断部24は前記ケース開口部5と略同心円の環状であることを特徴とする。
【0015】
【0016】
さらに、本発明の請求項3の除電装置は、請求項1または2に加えて、前記電界遮断部24を、前記高圧トランス2Aの2次側の接地側端子に接続してなることを特徴とする。
【0017】
この構成によって電界遮断部24で吸収されるイオンに影響されることなく、イオンバランスの計測を正確に行える。
【0018】
さらにまた、本発明の請求項4の除電装置は、請求項1から3のいずれかに加えて、前記ファン7は、ファン部26に備えられており、前記ファン部26は、ファン部ケース27と、ファン部ケース27に回転自在に支承された前記ファン7と、前記ファン7の送風を前記ファン部ケース27の外部に送出するために前記ファン部ケース27に開口されたファン開口部28と、前記ファン7を回転させるためのモータ29と、前記モータ29に電力を供給するためのモータ電源線30とを備えており、略円形のケース開口部5に設けられた放電電極1の取り付け位置は、モータ電源線30の位置と重ならない位置に配置されることを特徴とする。
【0019】
この構成によって、放電電極1で発生したイオンがファン部26のモータ電源線30から取り込まれる量を低減できる。放電電極1とモータ電源線30が離間するように配置すれば、モータ29の電源線から吸収されるイオンも少なくなり、除電に寄与しないイオンの量を低減することができる。
【0020】
さらにまた、本発明の請求項5の除電装置は、請求項1から4のいずれかに加えて、略円形のケース開口部5に設けられた前記放電電極1の取り付け位置は、ケース開口部5の円の最上部を0°とするとき、0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、315°以外の位置に配置されることを特徴とする。
【0021】
この構成によって、除電に寄与しないイオンの量を低減して除電能力を向上すると共に、装置の小型化に貢献できる。四隅と十字の位置と避けて放電電極1を配置することで、モータ電源線30との重なりを避け、さらに放電電極1を保持するユニットのサイズを大きくすることなく、除電能力の維持と装置の小型化が両立される。
【0022】
さらにまた、本発明の請求項6の除電装置は、請求項1から4のいずれかに加えて、略円形のケース開口部5に設けられた前記放電電極1の取り付け位置は、ケース開口部5の円の最上部を0°とするとき、5°〜40°、50°〜85°、95°〜130°、140°〜175°、185°〜220°、230°〜265°、275°〜310°、320°〜355°の少なくともいずれかの位置に配置されることを特徴とする。
【0023】
この構成によって、上記と同様にファン部26のモータ電源線30からイオンが取り込まれる量を低減でき、同時に装置の小型化に貢献できる。
【0024】
さらにまた、本発明の請求項7の除電装置は、請求項4から6のいずれかに加えて、前記モータ29の電源をアースから絶縁することを特徴とする。
【0025】
この構成によって、ファン7を駆動するモータ29の電源線に吸収されたイオンがアースに流れ込むのを防止し、イオンバランスの悪化を抑制する。
【0026】
さらにまた、本発明の請求項8の除電装置は、請求項4から7のいずれかに加えて、前記モータ電源線30に絶縁材31を被覆することを特徴とする。
【0027】
この構成によって、ファン部26のモータ電源線30からのイオンの吸収を電気的に遮断できる。例えばモータ電源線30に電気絶縁性のシールを貼付する。
【0028】
さらにまた、本発明の請求項9の除電装置は、請求項4から8のいずれかに加えて、前記ファン部26の両側面には、ファン部26の厚さよりも薄く形成された段差部34が設けられ、この段差部34を直接または間接にネジで固定することでファン部26をケース6に固定してなることを特徴とする。
【0029】
この構成によって、ファン部26の固定のために使用するネジのネジ頭が突出して除電装置の厚さが大きくなることを防止でき、装置の薄型化に貢献できる。
【0030】
さらにまた、本発明の請求項10の除電装置は、請求項4から8のいずれかに加えて、前記ファン部26の両側面には、側面に開口する凹部35が設けられ、凹部35に狭着板36を挿入して狭着板36をネジ止めすることによりファン部26をケース6に固定してなることを特徴とする。
【0031】
この構成によって、ファン部26の固定のために使用するネジのネジ頭が突出して除電装置の厚さが大きくなることを防止でき、装置の薄型化に貢献できる。
【0032】
さらにまた、本発明の請求項11の除電装置は、請求項1から10のいずれかに加えて、除電装置は、前記放電電極1を除電装置から脱着可能な除電装置用脱着ユニット20に設けてなり、前記除電装置用脱着ユニット20は、通気口3を開口する支持体4と、前記通気口3に突出するように前記支持体4に設けられた少なくとも一の放電電極1と、前記放電電極1に電力を供給する高圧電源部2とを備え、除電装置用脱着ユニット20を除電装置に装着した際、前記支持体44の通気口3と前記ケース開口部5とが略一致するよう構成されてなり、除電装置はさらに、前記除電装置用脱着ユニット20を保持するために前記ケース6に設けられた保持部8を備え、前記保持部は弾性部材で前記除電装置用脱着ユニット20を狭着して保持することを特徴とする。
【0033】
この構成によって、放電電極1を容易に交換することができ、メンテナンス作業を容易にできる。
【0034】
さらにまた、本発明の請求項12の除電装置は、請求項11に加えて、前記保持部を、前記高圧トランス2Aの2次側の接地側端子に接続してなることを特徴とする。
【0035】
この構成によって保持部で吸収されるイオンに影響されることなく、イオンバランスの計測を正確に行える。
【0036】
さらにまた、本発明の請求項13の除電装置は、請求項11または12に加えて、除電装置は、前記保持部8に導電体を設けており、前記導電体に前記除電装置用脱着ユニット20から外部へ流れる漏れ電流を検出可能な電流検出部10を備えてなることを特徴とする。
【0037】
この構成によって、漏れ電流の流れる経路を導電体である保持部8に集中させることができ、さらに漏れ電流の検出を可能として異常放電を停止することで、安全性を高めることができる。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための除電装置を例示するものであって、本発明は除電装置を以下のものに特定しない。
【0051】
また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0052】
以下、本発明の実施の形態として除電装置をファンを備えるイオン化装置に適用する例を説明する。ただ、本発明はオゾンを発生させるオゾナイザにも利用可能である。また、高圧電源として交流電源、直流電源のいずれを利用するタイプにも適用可能である。
【0053】
図3および図4に本発明の一実施の形態に係る除電装置用脱着ユニットの斜視図を、図5に除電装置用脱着ユニットを除電装置本体21に装着する状態を示す斜視図を、図6に除電装置用脱着ユニットを除電装置本体21に装着した除電装置をそれぞれ示す。これらの図に示すように、放電電極1や高圧電源部2を含む除電装置用脱着ユニット20を除電装置本体21から脱着可能としており、これによって摩耗した放電電極1などを容易に交換することができる。
【0054】
[除電装置用脱着ユニット20]
図3は、除電装置用脱着ユニット20を斜め上方から見た斜視図、図4は斜め下方から見た斜視図である。これらの図に示す除電装置用脱着ユニット20は、矩形型で略平板状の支持体4の中央に略円形の通気口3を開口している。支持体4はプラスチックや樹脂などで形成される。通気口3を構成する中空円筒の内面である内壁9には、通気口3の開口中心に向かって突出するように設けられた4つの放電電極1を備える。放電電極1は内壁9に直接固定する他、放電電極1を脱着可能に保持する電極保持部を内壁9に固定することで、電極のみを交換可能とすることもできる。
【0055】
除電装置用脱着ユニット20の大きさは、除電装置本体21とほぼ同じか若干小さい面積として、除電装置本体21の保持部8に挿入できる大きさおよび形状に形成される。除電装置用脱着ユニット20を除電装置本体21に装着すると、除電装置用脱着ユニット20の通気口3と、除電装置本体21のケース開口部5とがほぼ一致するように、通気口3の大きさおよび位置は設計されている。
【0056】
除電装置用脱着ユニット20の後端は、図3および図4に示すように下方に突出して高圧電源部2を収納する高圧電源収納部16を設けている。ユニットの装着方向に対して後端側に高圧電源収納部16を設けることで、ほぼ一定の厚さの薄い部分から除電装置本体21に挿入して、後端の厚くなった部分は最後に除電装置本体21のケース6に収納されるように構成できるので、挿入や脱着のしやすい形状にでき、また除電装置本体21に必要なユニットの挿入スペースを小さくでき、ケース6内部を効率的に利用できる。
【0057】
高圧電源部2は、電源電圧を所定の電圧に昇圧する高圧トランス2Aが利用できる。図7の断面図に示すように、高圧電源収納部16に収納される高圧電源部2は、高圧電線17によって放電電極1と接続されている。この図に示す高圧電源部2はプラス側、マイナス側の端子が分離された2枚の回路基板で構成されている。この除電装置用脱着ユニット20は高圧電源部2を内蔵しているため、高圧電源部2用の回路もユニット内に内蔵でき、これによって高電圧を外部すなわち除電装置本体21と通電する必要がなく、高電圧用のコネクタを設ける必要もない。
【0058】
[絶縁部材47]
放電電極1は針状の先鋭な金属で構成された電極針であり、図8に示すように、先端部分を除いて絶縁部材47で被覆されている。これによって、電極の先端部分以外からの放電を防止し、安定した放電を得ることができる。
【0059】
除電装置は、針状の放電電極1以外の部分からの放電を抑制することで、放電を安定化させて安定した除電能力を得ることができる。例えば図1において接地電極46と放電電極1が平行に配置されている場合、図9に示すように放電電極1の先端以外の部分でも放電することがある。コロナ放電は、電界が不均一な部分で発生する。コロナ放電は放電電極1の先端で最も発生しやすいが、電極の加工痕といった表面が滑らかではない部分でも発生することがある。放電は放電電極1の先端部分において、放電電極1同士の間で行うべきであり、先端以外の側面などにおける放電は本来の放電を阻害し望ましくない。
【0060】
この問題を解決するためには、放電電極1の形状を円筒状と円錐状を組み合わせたシャープな形状とせず、図10のように境界部分を滑らかにした曲面を備える形状に成形する方法が挙げられる。例えば、放電電極1の加工後、電解研磨などで表面を滑らかにする。ただ、この方法では図9の放電電極1よりも加工に手間とコストがかかる。図9の放電電極1は旋盤で円錐状に加工でき形成が容易である一方、図10の放電電極1ではさらに工数を要するからである。
【0061】
そこで、本実施の形態では、図11に示すように放電電極1の先端部を残し、絶縁部材47で放電電極1を被覆している。この方法では、放電電極1を特別な形状に加工する必要がなく、従来の放電電極を用いることができ、安価に実現できる。特に、既存の除電装置に対しても容易に絶縁部材47を付加して適用できるという利点もある。
【0062】
絶縁部材47には樹脂やセラミック等が利用できる。絶縁部材47は、例えば図11に示すように、中空の略円筒状に形成した絶縁チューブとして放電電極1の円柱状部分の側面を被覆する。絶縁チューブの外形は円錐状や角柱状、プリズム状に形成してもよい。好ましくは、図12に示すように放電電極1の円柱部分に加えて、円柱部分から円錐部分への境目部分も絶縁部材47で被覆する。絶縁部材47は、樹脂やセラミック製の円筒を放電電極1の上から被せる、半円筒状に形成して両側面から狭着する、あるいは樹脂で放電電極1と一体成型する等の方法で放電電極1を被覆する。放電電極1の先端以外を樹脂やセラミックスなどの絶縁部材47で覆うことで、針先以外からの放電を防げ、安定した放電を得られる。放電は電界の不均一な部分で発生するため、放電電極1で絶縁部材47に覆われていない部分は、針先の先端の尖り以外は平滑な表面とすることが好ましい。上述のように絶縁部材47で被覆することにより放電が安定するので、除電速度の向上やイオンバランスの改善が得られる。
【0063】
図7の断面図に示すように、放電電極1はプラス用、マイナス用に分けられ、それぞれが高圧電源部2のプラス側、マイナス側と高圧電線17で接続されている。高圧電線17は配線後、充填材18でモールドされる。放電電極1には高圧電線17を介して高圧電源部2の出力電圧が供給されて、コロナ放電を行い、電極の先端からプラスとマイナスのイオンを発生する。
【0064】
なお、本発明の除電装置においてはプラス、マイナスのイオンを発生させる構成はこれに限らず、例えば正負の高圧電源部に細線等の長尺状物や突起部を有する部材等の電極手段を取り付けてイオン発生部とすることもできる。
【0065】
[コネクタ]
図4に示すように、高圧電源収納部16の一方の側面には、除電装置本体21のスライド部材12でスライドをロックするための切り欠き19が形成されている。さらに、反対側の側面には、除電装置本体21の本体コネクタ14と接続するためのユニットコネクタ15を設けている。図4に示すユニットコネクタ15は、除電装置用脱着ユニット20の挿入方向に向かって対向するように除電装置用脱着ユニット20の下面に突出する接点プレートである。接点プレートは複数の接点を露出させた接点を備える平板であり、除電装置用脱着ユニット20を除電装置本体21に装着した際、除電装置本体21の本体コネクタ14と接触して電気的に接続可能な位置および形状に構成される。図5においては、除電装置用脱着ユニット20の高圧電源収納部16を設けた側の端部に接点プレートを設けている。
【0066】
このコネクタは、放電用の高電圧を印加するものでなく、放電の制御用の通電端子であるから、低電圧用の接点が利用でき、簡単な構成で安価に実現できる。しかも、除電装置用脱着ユニット20と除電装置本体21との接続が低電圧であるため、接点部分の信頼性も向上する。
【0067】
一方、除電装置本体21側には図5に示すようにスプリングコネクタを使用する。スプリングコネクタはスプリングの作用によって先端が付勢されて突出するので、接点プレートに押圧して接触し、確実に電気的接続が実現される。特に、図5に示す除電装置用脱着ユニット20は保持部8に案内されてスライド式に除電装置本体21に挿入して装着される構成としている。このとき、スプリングコネクタを除電装置用脱着ユニット20の挿入方向に向かって突出する姿勢に設ける。これによって、除電装置用脱着ユニット20の挿入方向と、本体コネクタ14のスプリングコネクタを圧縮する方向とが一致するので、除電装置用脱着ユニット20を挿入するとスプリングコネクタが正面から圧縮されて接点プレートに押圧し、確実な電気接続が得られる。また、除電装置用脱着ユニット20の挿入動作によって、除電装置用脱着ユニット20の装着と除電装置本体21との電気接続を同時に行うことができる。
【0068】
また、交換可能な除電装置用脱着ユニット20に備えるユニットコネクタ15には安価な接点プレートを使用し、一方除電装置本体21に備える本体コネクタ14にはスプリングコネクタを使用することで、交換部品側のコネクタに安価な接点を採用することとなり、コスト削減に一層貢献できる。
【0069】
なおスプリングコネクタは、図5に示すように中空の円筒状支持部から突出する円柱状の金属接点とする他、先端を湾曲させた板バネなど、他の弾性部材で構成することもできる。また、接点プレートも平板状に限られず、例えば接触部分を若干突出させてもよい。
【0070】
さらにまた、コネクタ同士が係合するような構成としてもよい。例えば図13(a)に示すように、本体コネクタ14を突出する雄型端子48とし、図13(b)に示すようにユニットコネクタ15を、雄型端子48の両面あるいは周囲から狭着する雌型端子49の組み合わせとすることも可能である。また、両者を入れ替えて、本体コネクタ14に雌型端子を、ユニットコネクタ15に雄型端子を利用することも可能であることは言うまでもない。
【0071】
[除電装置本体21]
除電装置用脱着ユニット20は、図5に示すようにスライド式に除電装置本体21に脱着される。除電装置用脱着ユニット20を除電装置本体21に装着した除電装置を図6に示す。除電装置本体21は、ケース6で構成され、ケース6内部にファン7と、ファン7を回転させるためのモータ29と除電装置用脱着ユニット20を保持する保持部8とを備えている。
【0072】
ケース6はプラスチック製で、上ケース6Aと下ケース6Bに2分割されている。上ケース6Aおよび下ケース6Bはそれぞれ中央に略円形のケース開口部5を開口している。それぞれのケース開口部5には、メッシュパターンの格子が設けられており、異物が開口部から挿入されて回転するファン7で破損する事態を防止する。メッシュパターンは上ケース6Aと下ケース6Bで異なるが、同じパターンとしてもよい。メッシュパターンは、矩形状の格子とする他、同心円状や放射状、渦巻き状のパターンなど様々なパターンを適宜採用する。
【0073】
ケース6内部にはモータ29で回転するファン7が固定されている。ファン7は放電によってイオン化された空気を除電対象物に向かって搬送する。ファンの回転軸45はケース開口部5の中心と略一致するように配置される。モータ29は電動モータで、外部から電力を得て回転する。
【0074】
[保持部8]
図5は説明のため、除電装置本体21の上ケース6Aを外して保持部8が確認できる状態を示している。図5に示す保持部8は、断面コ字状に形成されたレール状のガイドである。保持部8は除電装置用脱着ユニット20の挿入方向に沿って、ユニットの側面で保持するよう、コ字状の開口面を対向するようにケース6内部の左右に対称に設けられる。コ字状に開口したガイドに除電装置用脱着ユニット20の端部を挿入し、ユニットを摺動自在に保持する。保持部8は、金属や導電性プラスチックなどの導電性を有する導電体で構成される。あるいは、保持部8自体は絶縁部材で構成し、そのコ字状の内面に折曲した金属板などの導電体を設ける構成としてもよい。本明細書において、保持部に導電体を設けるとは、保持部自体を導電体で構成することと、別体の導電体を付加することを含む意味で使用する。また、保持部は板バネのような弾性変形する部材を備えており、コ字状の開口面に挿入された除電装置用脱着ユニットを弾性変形部材で弾性的に押圧して保持する。
【0075】
導電性を備える保持部は高圧電源部を構成する高圧トランス2Aの2次側の接地側端子に接続されている。高圧トランス2Aは、後述する図17に図示される。これによって、放電電極1から外部への漏れ電流を誘導して捕捉することができる。すなわち、放電の漏れ電流が放電電極1から外部に伝わる際、放電電極1に近接して配置された導電体である保持部8に電流が向かう傾向があるため、保持部8で漏れ電流が捕捉される。
【0076】
さらに、図14に示すように、保持部と高圧トランス2Aの2次側の接地側端子の間に、漏れ電流を検出するための電流検出部10を設けることもできる。電流検知部10は、検流計や抵抗などが利用できる。抵抗を利用する場合は抵抗の両端の電圧を測定して電流値を算出する。保持部8に流れる電流を電流検出部10で検出することで、除電に寄与しない漏れ電流を確実に検出する。また、電流検出部10が所定値以上の漏れ電流を検出すると、異常と判断して電源供給を停止し、異常な放電がそれ以上発生しないようにしてもよい。
【0077】
一般に除電装置は絶縁体であるプラスチックや樹脂製ケースなどで構成されているため、意図しない放電がどのような経路で伝わるかを特定し難い。しかしながら、意図的に導電体を配置することによって、漏れ電流の経路をある程度固定化し、装置を保護することができる。さらに電流が集中しやすい部分を電流検出部10でモニタすることによって漏れ電流検出の信頼性を高め、ユニット式として交換可能とすることによって、保守やメンテナンスを容易にすることができる。このように、本発明の実施の形態に係る除電装置および除電装置用脱着ユニット20は、異常放電等によるトラブルの未然防止およびトラブル発生時の修理を容易にして、取り扱いの優れた除電装置および除電装置用脱着ユニット20が実現される。
【0078】
また、電流検出部10が所定値以上の電流を検出した場合に、異常と判断して警告を発する、あるいは放電を中止するように構成してもよい。例えば大電流が保持部8に流入したと検出された場合は、異常放電が発生していると考えられるので、このような場合に自動的に放電を中止させることで安全性を確保できる。
【0079】
以上の構成によって、意図しない放電や漏れ電流を検出して安全性を高めると共に、結露などにより汚染が生じた場合は部品の交換を容易に行えるようにして、除電装置を使う上での利便性を向上させている。図14に示すように、沿面放電は電極間あるいは電極と装置外部との間で発生する。電極間の沿面放電については、除電装置用脱着ユニット20に放電電極1のみならず、放電電極1の保持部8やこれを配置する内壁9といった放電電極1近傍や電極間の沿面放電が発生する領域を含めることで、沿面放電が発生した部分を丸ごと交換可能としている。ユニットの交換はユニットを脱着するだけで済むため、極めて簡単かつ速やかに行えるので、万一沿面放電が発生しても修理や復旧は容易である。
【0080】
一方、電極から外部に向かう放電については、ユニットを保持する保持部8を導電体とすることで、導電体によって漏れ電流を保持し、他の部分への放電を防止できる。さらにこの電流を検出して放電を停止する構成とすれば、安全性も確保できる。さらにまた、導電体の保持部8を交換可能としてもよい。
【0081】
またこの構成は、放電電極1のメンテナンスにも極めて有効である。放電を繰り返すことにより、放電電極1の先端には絶縁物質が析出するため、定期的に先端を清掃する必要がある。また長期間の使用によって放電電極1の先端が摩耗すると、電極自体を交換しなければならない。従来は電極は機器の内部に装着されていたため、清掃や脱着が困難であった。本発明によれば、放電電極1を設けた除電装置用脱着ユニット20ごと除電装置本体21から分離して容易に電極を清掃、交換することができる。
【0082】
[スライド部材12]
図5に示すように、除電装置本体21は一方の側面にスライド部材12を設けている。図15は、除電装置本体21に除電装置用脱着ユニット20を装着した状態を下方から見た斜視図である。スライド部材12は、除電装置本体21に除電装置用脱着ユニット20を装着した状態で抜け落ちないようにロックする。スライド部材12は、図において上下にスライド可能な状態で除電装置本体21に保持されている。またスライド部材12の上端には、除電装置本体21の内側に突出してロック片12aが一体成型されている。
【0083】
上述のように除電装置用脱着ユニット20には切り欠き19が設けられており、切り欠き19の大きさおよび位置は、除電装置本体21に除電装置用脱着ユニット20を装着した状態でロック片12aが丁度挿入されるように設計される。この構成によって、除電装置用脱着ユニット20を挿入する際には一旦スライド部材12を下方にスライドさせ、除電装置用脱着ユニット20を挿入後、スライド部材12を押し上げてロック片12aを除電装置用脱着ユニット20の切り欠き19に挿入し、ロック状態として除電装置用脱着ユニット20が固定される。除電装置用脱着ユニット20を除電装置本体21から抜く際は、スライド部材12を下方にスライドさせてロック状態を解除する。このように、除電装置用脱着ユニット20の挿入方向とほぼ直交する方向にロック片12aを挿入することでロック状態が強固なものとなり、意図しない抜けが確実に防止される。加えて、図15に示すようにスライド部材12の位置がロック位置にあることが外部から確認できるので、目視によってもロック状態を確認できる。
【0084】
スライド部材12は上方の「ロック位置」で係止されるよう、弾性変形する係止片を設けてもよい。また下方にスライドさせてロック状態を解除する位置を「ロック解除位置」として、同じく弾性変形する係止片を設けてもよい。
【0085】
また、スライド部材12がロック位置にあることを電気的に検出するロック検出部13を設けてもよい。ロック検出部13は、スライド部材12のロック状態に連動してON/OFFを切り替えるよう構成される。例えば図16に示すように、ロック検出部13を傾斜したバネを押圧してONとなるプッシュ式スイッチとする。一方のスライド部材12は、除電装置本体21の内部側に、水平に突出した検出片12bを一体成型している。スライド部材12の上下によって検出片12bの先端がロック検出部13の板バネ表面を摺動して、ロック位置である上方にスライドされたときロック検出部13がONになり、ロックを解除するよう下方にスライドされたとき検出片12bは板バネの押圧を解除してロック検出部13がOFFとなる。またロック状態を表示するパイロットランプを除電装置本体21に設けてもよい。パイロットランプロック検出部13がONのとき点灯し、OFFのとき消灯する構成や、ONのとき緑色、OFFのとき赤色に点灯する構成とすることができる。あるいは、OFFに切り替えられたときにユーザに警告を促す警告音など何らかのメッセージを発する構成としてもよい。
【0086】
これによってスライド部材12のロック位置が機械的のみならず電気的にも確実に検出され、ロック位置による目視とロックスイッチによる電気的な確認によって除電装置用脱着ユニット20の意図しない抜け落ちを二重に確認できる。さらにロック検出部13がロック位置にないと除電装置が動作しないように構成すれば、意図せず除電装置用脱着ユニット20が抜けたときに除電装置が動作しないので、除電装置用脱着ユニット20の装着不良による事故を回避できる。
【0087】
例えばロック検出部13を除電装置の電源スイッチや高圧原電のスイッチと連動させてもよい。ユーザが誤って除電装置の電源スイッチをONにしたままで除電装置用脱着ユニット20の着脱を行なおうとした場合でも、ユーザがスライド部材12のロック状態を解除するとロック検出部13がOFFに切り替わって高圧電源部2がOFFされる。これによって、除電装置用脱着ユニット20の脱着を安全に行うことが可能となる。
【0088】
図4に示す除電装置用脱着ユニット20は、一方の側面でスライド部材12をロックすると共に、他方の側面で除電装置本体21と電気的に接続するコネクタを備えており、これらの部材を離間して設けることで高圧電源収納部16の限られたスペースを効率的に利用し、一カ所に部材が集中して装置が複雑化、大型化する事態や、可動部分が隣接することによる接触不良といった機械的なトラブルを回避している。ただ、スライド部材12やコネクタといった部材の配置は、上記の例に限られず、例えばコネクタを高圧電源収納部16の中央部や、除電装置用脱着ユニット20の先端に配置したり、またスライド部材12を両側面に複数設けるといった様々な形態が適宜利用できる。
【0089】
[装着検出部11]
さらに除電装置本体21は、図5に示すように、除電装置用脱着ユニット20の装着状態を検出する装着検出部11を備えることもできる。装着検出部11は除電装置用脱着ユニット20の装着時にON、分離時にOFFとなるよう自動的に切り替えられる。装着検出部11は、除電装置用脱着ユニット20を装着した時点でスイッチが機械的にONとなるスイッチが利用できる。例えば装着検出部11を押しボタン式のスイッチとし、除電装置用脱着ユニット20が除電装置本体21に挿入されると除電装置用脱着ユニット20の先端でスイッチが押されてONに切り替えられ、装着状態であることが検出される。また分離するとスイッチが解放されてOFFとなり、装着が解かれたことが検出される。この構成によって、除電装置用脱着ユニット20の装着状態を検出することができ、除電装置用脱着ユニット20の意図せぬ抜け落ちを防止できる。
【0090】
また、ON/OFFを検出する手段はこの構成に限られず、例えば、イオンが発生していることを検出し、これによって除電装置がON状態であることを判断する構成としてもよい。
【0091】
以上の除電装置用脱着ユニット20は、以下のようにして除電装置本体21に装着され使用される。
(1)除電装置本体21のスライド部材12を下方の「ロック解除位置」に位置させる。
【0092】
(2)除電装置用脱着ユニット20の端部を、除電装置本体21の保持部8の開口面に挿入し、除電装置用脱着ユニット20を保持部8に沿ってスライドさせながら除電装置本体21のケース6奥まで押し込む。除電装置用脱着ユニット20がケース6の奥まで正しく挿入されると、ケース6の奥に設けられた装着検出部11にユニットの先端が当接してONに切り替える。また除電装置本体21に設けられた本体コネクタ14のスプリングコネクタ先端が除電装置用脱着ユニット20のユニットコネクタ15に押圧されて電気的に接続される。
【0093】
(3)ケース6の側面に設けられたスライド部材12を上方にスライドさせて、「ロック位置」とする。このとき、スライド部材12のロック片12aが押し上げられて除電装置用脱着ユニット20の切り欠き19に挿入され、除電装置用脱着ユニット20がロック状態に固定される。さらに、ロック検出部13がONとなり、ロック状態が電気的に確認できる。ロック検出部13がONであるとき、除電装置は使用可能となる。放電電極1に高電圧を印加してコロナ放電を発生させ、電極近傍の空気を電離してプラス、マイナスのイオンを発生させるとともに、電離したイオンがファン7の回転によって搬送され、対象物の除電が行われる。
【0094】
(4)除電装置用脱着ユニット20を除電装置本体21から分離する際は、上記と逆にスライド部材12を「ロック位置」から「ロック解除位置」にスライドさせる。これによってロック検出部13がOFFとなり、高電圧が供給されなくなり、安全に取り外しができる。またロック片12aが切り欠き19から抜かれるので、ロック状態が解除されてユニットをケース6から抜き取ることが可能となる。これによって、安全にユニットの脱着が実現される。
【0095】
[イオンバランスの制御]
図17に、除電装置の回路図の一例を示す。帯電体に対する除電は、帯電している極性とは逆極性のイオンを吹き付けることにより行われる。このときのイオンの流れはアースを基準電位として形成されているので、除電装置で形成されているプラス、またはマイナスのイオンのいずれかの極性のイオンの発生量が他方の極性のイオンの発生量よりも多いときには、イオンバランスが悪くなり対象物を逆に帯電させることとなる。
【0096】
図17に示すように、高圧電源部2を構成する高圧トランス2Aから流れ出た電流は、放電電極1で放電されてイオンとなり、大きく分けて3つの経路を通過して高圧トランス2Aに戻る。すなわち、(1)逆極性の放電電極1に吸収される。(2)除電装置内部の構造部品、電子基板を通過する。(3)除電装置から外部に放出され、有効な除電に寄与する。(3)の電流はアース線を通って除電装置に戻る電流である。そこで図17の除電装置は、高圧トランス2Aの2次側とアースの間を電流検出抵抗Rで接続し、ここを流れる電流を検出することでイオンのバランスを計測している。イオンの流れはアースを基準電位として形成されているので、発生されるプラスまたはマイナスのイオンのいずれかの発生量が他方よりも多いときには、その差の値は電流検出抵抗Rで検出される電流の大きさに比例する。このため、電流検出抵抗Rに流れる電流の大きさと方向を測定することにより、除電装置からはプラス、またはマイナスのいずれの極性のイオンがどれだけの量多く発生しているかが判定できる。よって電流検出抵抗Rを流れる電流に基づいて回路をフィードバック制御することにより、イオンバランスを維持することができる。上記の例においては、プラスイオンの発生量を固定し、電流検出抵抗Rで検出される電流に基づいてマイナスイオンの発生量を調整することで、イオンバランスを維持するよう制御している。もちろん、プラスイオンの発生量でもって、あるいはプラス、マイナス双方のイオンでもってイオンバランスを調整することも可能であることはいうまでもない。
【0097】
[電界遮断部24]
除電装置の放電電極1には高電圧が印加されるため、周囲に電界を生じる。除電対象物が近距離にある場合はこの電界によって電荷を誘導してしまう。電界の遮蔽には金属の網などが有効であるが、遮蔽面積が大きくなると除電能力が低下してしまう。そこで本発明者らは最小の遮蔽面積で電荷の誘導が小さくする方法を鋭意研究した結果、放電電極1の先端部分のみを電界遮断部24で遮蔽することにより、除電能力の低下を最低限に抑えつつ、電荷の誘導を十分に抑制できることを見出した。
【0098】
図18に、本発明の一実施の形態に係る除電装置の平面図を示す。この図に示す除電装置は、中央部に略円形のケース開口部5を設けたケース6と、ケース6内部で回転自在に支承されたファン7と、ファン7前面においてケース開口部5をガードするガード部25と、開口部において突出するように略十字に配置された4つの放電電極1とを備える。
【0099】
[ガード部25]
ガード部25は網状にケース開口部5を覆って、ユーザが誤って指などを挿入したり、ファン7に吸い込まれた異物がファン7に接触しないように保護する。ガード部25は金属製で導電性を有し、線状あるいは平板状のガード条25aを複数一体成型して、格子状のパターンを形成している。またガード条25aは、ケース開口部5と略同心円の環状に形成された環状ガード24Aを含んでおり、同じく一体成型している。環状ガード24Aは、その円周上に放電電極1の先端部分が位置するように設計されている。これによって、環状ガード24Aは導電性の電界遮断部24を構成し、放電電極1から電界が外部に漏れて対象物に電荷を誘導しないよう効果的に防止する。特に放電電極1の先端部分で強い電界が生じるので、この部分に重なるように電界遮断部24である環状ガード24Aを配置する。放電電極1は円筒状の通気口3の内壁で、それぞれが中心に向かって突出するように設けられているので、各放電電極1の先端部分の軌跡も同心円の円周となる。よって電界遮断部24を所定の半径の環状に形成すれば、放電電極1の数や固定場所に拘わらず容易に放電電極1の先端部分と重なるように位置決めできる。
【0100】
ガード部25は高圧トランス2Aの2次側の接地側端子に接続されている。電界遮断部24を接地することで、放電電極1と対象物の間を効果的に遮断できるが、一方で電界遮断部24やガード部25で吸収されるイオンは除電に寄与しないため、イオンバランスの測定には考慮すべきでない。そこで電流検出抵抗Rを介さずに高圧トランス2Aの2次側接地端子に接続することで、正しくイオンバランスが計測できるようにしている。
【0101】
なお、電界遮断部24の形状は環状に限られず、例えば正方形状に形成して四隅が放電電極1の先端部分と重なるように構成してもよい。また格子状のガードの内、水平あるいは垂直に複数設けられた線条ガードを放電電極1の先端部分と一致させるようにしてもよい。
【0102】
さらに、図18の実施の形態では環状ガード24Aをガード部25で一体成型しているが、電界遮断部24は別部材で設けてもよい。例えば金属製の環状ガードを別部材として、ガード部に溶接、あるいは電気的接続を得られるように固定したり、あるいは高圧トランス2Aの2次側の接地側端子に接続してもよい。電界遮断部を別部材とすることで、既存の除電装置にも電界遮断部を容易に付加できるようになり、放電電極1の先端部分に重なるように電界遮断部を配置することによって既存の除電設備においても電界遮断効果を得られる。
【0103】
さらにまた、除電装置用脱着ユニット20を保持する保持部8も、高圧トランス2Aの2次側の接地側端子に接続する。これによって、この部分で吸収されて除電に貢献しないイオンは電流検出抵抗Rを流れず、イオンバランスの計測を正確に行える。
【0104】
[ファン部26]
ファン7を備えるファン部26の構成を図19(a)に示す。ファン部26は、ファン部ケース27と、ファン部ケース27に回転自在に支承されたファン7と、ファン7の送風をファン部ケース27の外部に送出するためにファン部ケース27に開口されたファン開口部28と、ファン7を回転させるためのモータ29と、モータ29に電力を供給するためのモータ電源線30とを備える。モータ29は後述する図27に示すように、電磁石とコイルの作用によってファン7のロータを回転軸45を中心に回転させる。回転軸45のシャフトは、ベアリング37を介してファン部ケース27のハウジングに支承されている。
【0105】
放電電極1で発生されるイオンは、すべてが外部に放出されず、一部は除電装置内部で構成部品や電子基板などに吸収される。本発明者らが研究した結果、除電装置の小型化すると、小型化によって放電電極1とファン7を駆動するモータ29の電源線との距離が縮まるため、放電したイオンの内、モータ29の電源線に流れ込む割合が増加することが判明した。この除電装置の制御方法では、除電に寄与しないイオンが電源線からアースに流れるとイオンバランスが悪化する特性を持っている。このため、モータ29の電源線を介してアースに流れる電流を最小にする必要がある。そこで、本実施の形態では、放電電極1の取り付け位置をモータ電源線30の位置が重ならないようにしてこれらの間に距離を設け、無効なイオンのモータ電源線30への流入を低減している。具体的には、放電電極1を設けるケース開口部5において、開口部を構成する円の最上部を0°とするとき、0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、315°以外の位置に配置する。
【0106】
図19(a)〜(c)にモータ電源線30および放電電極1の一般的な配置例を示す。軸流ファンを駆動するモータ電源線30は、一般的には図19(a)に示すように、配置スペースの関係上ファン部26の四隅のいずれかに配置されることが多い。したがって、例えば4つの放電電極1を十字状に配置する場合、図19(b)に示すように除電装置の四隅に相当する角度である45°、135°、225°、315°に放電電極1を配置すると、いずれかの放電電極1がモータ電源線30と重なることになり、この部分でイオンの吸収が顕著になる。そこで、これら付近の位置を避けて放電電極1を配置することで、モータ電源線30との重なりを回避してイオンの吸収量を低減できる。
【0107】
一方で四隅からできる離れた十字の位置、すなわち水平と鉛直に相当する0°、90°、180°、270°付近に放電電極1を配置すると、今度は図19(c)に示すように放電電極1を保持するスペースが必要となり、除電装置のサイズが縦横に大きくなるという問題がある。スペースの関係からは、放電電極1を図19(b)に示すように四隅付近に配置することが好ましいが、上述の通り四隅ではモータ電源線30が配置されているため、この部分で吸収されるイオンの量が多くなり、除電能力が低下する。そこで、十字でも四隅でもない位置に放電電極1を配置することで、除電能力の維持と装置の小型化を両立させることができる。
【0108】
以上から、放電電極1の取り付け位置は、ケース開口部5の円の最上部を0°とするとき、0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、315°近辺を10°ほど避けて、5°〜40°、50°〜85°、95°〜130°、140°〜175°、185°〜220°、230°〜265°、275°〜310°、320°〜355°のいずれかの位置とする。例えば4つの電極を配置するのであれば、10°〜35°、55°〜80°、100°〜125°、145°〜170°、190°〜215°、235°〜260°、280°〜305°、325°〜350°にそれぞれ配置する。図18の例では、31°、121°、211°、301°付近に配置している。
【0109】
また、ファン7を駆動するモータ29の電源はアースから絶縁されている。これによって、モータ29の電源線に吸収されたイオンがアースに流れ込みイオンバランスが悪化するのを防止できる。
【0110】
さらにこの実施の形態では、図20に示すようにモータ電源線30を絶縁材31で被覆することで、モータ電源線30からのイオンの吸収を電気的に遮断している。絶縁材31には、電気絶縁性のシールなどが利用でき、シールを貼付することで簡単にモータ電源線30を絶縁できる。
【0111】
[ファン部26の固定方法]
ファン型除電装置の厚みは、ファン部26、放電電極1および放電電極1を保持する構造、除電装置のケース6の厚みによって決定する。よって除電装置を薄型化するには、これらの部分を改良する必要がある。ファン部26は図22および図23に示すように、ファン部26側面の段差部34を狭着板36でケース6に狭着して固定されている。
【0112】
従来、ファン部26は図21(a)に示すように、ファン部ケース27の四隅に開口されたネジ穴32にボルト33を挿通してネジ止めにより固定されていた。この方法では、図21(b)に示すようにボルト33の頭(ネジ頭)の厚さがデッドスペースとなり、除電装置の薄型化の妨げとなる。
【0113】
そこで、本実施の形態では図22に示すようにファン部ケース27の両側面に段差部34を設けて、ネジ頭で除電装置が厚くならないようにしている。図22は本実施の形態に係る除電装置でのファン部26の固定方法を示す断面図を、図23は除電装置の下ケース6Bを外した状態でファン部26の固定状態を下から見た底面図をそれぞれ示す。図22(a)では、ファン部26の左右側面側に開口する凹部35を設け、図において凹部35が構成されるファン部ケース27の厚さを薄くして段差部34としている。凹部35はファン部26の側面全体で溝状に延長された形状で、ファン部ケース27と一体成型により設けられる。ただ、凹部35はネジ止めする箇所のみに凹部35を設ける構成としてもよい。例えば左右2カ所ずつ、計4カ所に凹部35を設け、各部でネジ止めして固定する。なお、これらの段差部34は両側面のみならず前後面に設けてもよく、また部分的に凹部35を設ける場合は3つ以下、または5つ以上設けることもできる。例えば一端をフックなどで係止して、他端のみをネジ止めする構成とすれば段差部34は一カ所でもよい。
【0114】
凹部35に狭着板36を挿入し、狭着板36をネジでネジ止めする。狭着板36はネジ貫通穴を設けた円形あるいは矩形状のプレートで、ワッシャなどが利用できる。図23の例では、ファン部ケース27の左右側面で2カ所ずつ、計4カ所で凹部35に狭着板36を挿入し、ファン部ケース27自体にネジを挿入するのでなく狭着板36を介してネジで除電装置のケース6に固定する。ネジでケース6を貫通しないため、ネジ頭がケース6表面で突出せず、除電装置の薄型化に貢献できる。
【0115】
また段差部34の構成は図22(a)に示す構造に限られず、例えば図22(b)、図22(c)の構成なども利用できる。図22(b)の構成では、ファン部ケース27の上面からネジ頭よりも深い凹部35を形成して、この部分にネジ穴を開口することによってネジ頭の突出を防いでいる。また図22(c)の構成では、ファン部ケース27の側面を断面L字状に成形し、L字状の段差を同じくネジ頭よりも大きくすることでネジ頭の突出を防止している。図22(b)、(c)の構成では、狭着板を使用しなくてもよい。あるいは、凹部を設けることなくネジ頭の突出しないフラットなネジ、例えばグラブネジなどを使用してもよい。また、段差部34は左右あるいは前後で同じ構造とすることが好ましいが、図22に示すような構造を適宜組み合わせてもよい。
【0116】
ファン型除電装置の厚さを決定する放電電極1および放電電極1を保持する構造については、上述の通り除電装置用脱着ユニット20として放電電極1および放電電極保持構造を一体化している。除電装置の放電電極1は放電によって先端に異物が析出したり摩耗するため、定期的な清掃や交換が必要である。このため従来の除電装置は、個々の放電電極1をコネクタなどの保持構造で保持して脱着可能としていた。また交換など保守作業の度毎に除電装置のケース6を開く必要があるため、簡単に分解できるよう蝶番や樹脂の爪どうしの勘合構造などが用いられていた。しかしながら、これらの構造は複雑で、このような脱着構造の採用によって除電装置が大型化してしまうという問題があった。そこで本実施の形態では、放電電極1を備える部材をユニット化し、交換のための構造を除電装置用脱着ユニット20の脱着機構に集約することで小型化を実現した。
【0117】
また、除電装置のケース6については、薄型化する一方で、図24に示すようにケース開口部5の吸気側をガードするガード部25の中央を隆起させている。図24は、ケース6の断面図および斜視図を示している。ファン7の吸気能力は、ファン7と吸気口の位置が近いと低下することが知られている。ケース6を薄型化すると、ケース開口部5からファン7が外気を吸気する際、吸気口とファン7の距離が近くなり吸気能力が著しく低下する。そこで、図24に示すようにケース開口部5を覆うガード部25の中央部を隆起させて吸気口とファン7との距離を離すことで、装置自体の厚さを維持したまま吸気能力を向上させている。
【0118】
また、中央部を隆起させることで、上方からの応力に対する強度が向上され、ガード部25の剛性が強化されるという効果も得られる。これによって、ユーザが誤ってガード部25を指などで押圧しても、ガード部25が変形し難くなり、変形によってファン7の回転部分に接触して干渉するといった事故を防止でき、ファン7自体やファン7の回転が保護される。さらに、網状のガード部25の隙間から指などが挿入されても、ファン7との距離があるため、指を傷つける事故を防止でき安全性の向上にも繋がる。このように、ケース6背面の吸気口の中央を盛り上げる構造とすることで、ファン7の吸気能力を高めてイオンを広範囲に搬送することができると共に、耐衝撃性も向上される。
【0119】
さらにまた、排気側においてケース開口部5の口径をファン開口部28よりも小さく構成してもよい。図25に、本発明の他の実施の形態に係る除電装置のケース開口部5とファン開口部28の関係を示す。排気側の口径を小さくすることによって、図25に示すように、ファン7からの風速分布が拡大され、イオンをより広範囲に搬送して除電範囲を拡大することができる。
【0120】
[ベアリング37]
さらに上記実施の形態は、発塵量を抑制できる構成としている。ファン式の除電装置の発塵源として、放電による放電電極1の摩耗と、ファン7の可動部であるベアリング37からの発塵が主に原因と考えられる。本発明者らが評価試験を行った結果、ベアリング37からの発塵が圧倒的に多いことが判明した。ベアリング37からの発塵については、潤滑材として使用されるグリスが粉塵となり発塵すると考えられる。
【0121】
図26にベアリング37の内部構造の概略断面図を示す。図26(a)はベアリング37の横断面図を、図26(b)は図26(a)のB−B線における縦断面図を、図26(c)は図26(a)のC−C線における縦断面図を、それぞれ示している。これらの図に示すように、ベアリング37は、複数のボール38と、ボール38を位置決めして保持するリテーナ(保持器)39を備え、ボール38を介在させる内輪と外輪が各ボール38と点で接触しながら相対的に回転可能に保持されている。リテーナ39は、図26(b)に示すように片面からボール38を保持しており、図において上面は開口されている。ベアリングによっては、開口面にシールを貼付したり、あるいは両面をリテーナで保持するタイプも存在する。リテーナ39に保持されるボール38の表面には、グリスなどの潤滑剤が塗布されている。ベアリング37が回転すると、ベアリング内のグリスが飛散することによって発塵が生じる。ベアリング37の発塵量を調べた結果、リテーナ39側、すなわち図26(b)において下面からはほとんど発塵しないことが判明した。これは、リテーナ39によって外部とグリスを塗布したボール38とが分離されているためと考えられる。
【0122】
そこで本実施の形態では、リテーナ39を片面に備えるベアリング37を2つ組み合わせ、配置を工夫することで発塵量を低減できることを見出した。図27〜図29に、ファン7の回転軸45にベアリング37を配置した状態を示す。図27は、ベアリング37A、37Bを並べて配置し、いずれのベアリング37もファン部26内部側にリテーナ39が位置する向きとし、ファン部26表面側に位置するベアリング37Bのリテーナ39を設けない面には、ベアリング閉塞部42を貼付してベアリング37の開口面が外部に表出しないように閉塞している。ベアリング閉塞部42にはシールなど、ビニル製や紙製などで貼付面に接着材を塗布したものが利用できる。このような構成において発塵量を調べるために、図30のような構成において、密閉された容器43に、試料としてファン部26を載置し、ファン7を定格電圧にて動作させた状態で粒径0.3μm〜5μmの発塵量をパーティクルカウンタ44で測定する試験を行った。測定の手順は以下の通りである。
【0123】
(1)ファン部26を容器43に入れた状態で、容器43内にクリーンエアを0.5l/minで導入し、容器43内のパーティクルを除去する。ファン7の電源をOFFにした状態で計測を行ない、容器43内のバックグラウンドの発塵量が3個以下であることを確認する。
(2)容器43を密閉し、密閉した容器43とパーティクルカウンタ44を図30のように接続する。
(3)ファン7を定格電圧にて運転開始し、同時にパーティクルカウンタ44にて計測を開始する。
(4)パーティクルカウンタ44は密閉容器43内から0.5l/minの気体を吸引し、吸引気体中のパーティクル数を計測する。吸引した気体はパーティクルカウンタ44内部のフィルタにて濾過され、パーティクルを含まないクリーンエアの状態で容器に還流される。
(5)1分間に計測したパーティクル数を積算し、1分間あたりの発塵量と定義する。
(6)この測定を繰り返し30回行い、その平均値を求める。
【0124】
以上のようにしてベアリング37の配置の組み合わせを変えて発塵量を測定した結果、以下の表1〜2のようになった。表1は、図27において、ベアリング37Bを図27に示すように表面側にシール、ベアリング37対向面側にリテーナ39が位置するように配置した状態で、ベアリング37Aの向きを変えて発塵量の測定を行った。表1において、○はベアリング37Aが図27に示すように内部側にリテーナ39、ベアリング37対向面側に開放面が位置するように配置した例を示し、×は図27と逆に内部側に開放面、ベアリング37対向面側にリテーナ39が位置するように配置した例を示している。表1のデータを判りやすくするために、○・×に配置されたベアリング37Aのそれぞれの発塵量の分布を示したものが表2である。表1および表2から発塵量の平均を計算すると、○の配置で16.96個/分、×の配置で39.70個/分となり、○の配置を採用することで約42%に発塵量を低減できた。以上のように、ベアリング37Aは図27に示すような配置、すなわちリテーナ39を設けない開放面をベアリング37対向面とし、リテーナ39を設けた面をベアリング37外側(ファン部26の内部側)とする配置とすることで、発塵量を抑制できる。
【0125】
【表1】
Figure 0004290437
【0126】
【表2】
Figure 0004290437
【0127】
一方、表3は図27において、ベアリング37Aの向きは図のように配置し、ベアリング37Bの向きを変えて発塵量を測定した結果を示す。表3において、ベアリング37Bを、ベアリング37Aとの対向面にリテーナ39を、ファン部26の表面側に開放部をシールで閉塞した面を、それぞれ向くように配置した例を×、図27と逆に、ベアリング37対向面に開放面を、ファン部26表面側にリテーナ39とシールを設けた面をそれぞれ配置した例を○と表示している。表3を判りやすくするために、上記と同様に×、○それぞれのベアリング37Bの発塵量の分布を表4に示している。この結果から平均を求めると、×の配置では16.95個/分、○の配置では31.5個/分となり、約54%に発塵量を低減できた。このことから、図27に示す配置、すなわちベアリング37対向面にリテーナ39が、ファン部26表面側にシールが位置するように配置する構成が、最も発塵量が少ないことが明らかとなった。なお、これらの実験は本実施の形態の構成における比較試験であって、従来技術との対比試験ではない。例えばベアリング37の開放面をファン部26表面側としたり、シールを貼付しない構成においては、さらに発塵量は多くなると予想される。
【0128】
【表3】
Figure 0004290437
【0129】
【表4】
Figure 0004290437
【0130】
以上から、リテーナ39がファン部26内部側となるようにベアリング37を並べて配置すると共に、ファン部26表面側をシールで閉塞する構成によって効果的に発塵量を抑制できることが判明した。
【0131】
ただ、本発明はこの構成に限定されるものでなく、例えば図28に示すようにリテーナ39が両端面に配置される構成としてもよい。リテーナ39がファン部26表面側に位置しており、ベアリングの対向面で閉塞された空間は外気と接していないため、この部分でグリスから発塵しても外部に放出されず、発塵量が抑制されると思われるからである。この場合はシールを貼付しなくともよい。
【0132】
また図29に示すように、両面をリテーナ39で閉塞してボール38を挟み込む2ピース構造のベアリング37Cも利用できる。好ましくは、図27の構成において左側のベアリング37Aに変わって2ピース構造のベアリング37Cを使用する。これによって、ベアリングの対向面で閉塞された空間においてもグリスからの発塵量を抑制して、全体の発塵量を確実に抑止できる。ただ、図27の構成において右側のベアリング37Bに変わって2ピース構造のベアリング37Cを使用してもよく、この場合はシールを貼付しなくともよい。あるいは、両方のベアリングに2ピース構造のベアリング37Cを使用する、あるいはまた一のベアリング37Cでファン7を支承する構成としてもよい。
【0133】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、除電対象物と除電装置との距離が近距離でも使用可能な除電装置が実現される。それは、本発明の除電装置が、放電電極に重なるように電界遮断部を配置することで、放電電極から発する電界によって対象物に誘電することを防止しているからである。
【0134】
また、放電電極から発生したイオンの内、除電に利用されない量を低減することで、有効なイオンを増やし除電能力を改善している。それは、本発明の除電装置が、放電電極の配置構成を改善することによって、発生したイオンがモータ電源線などで吸収され難くしているからである。特に、除電装置を小型化、薄型化すると放電電極がモータ電源線に近接するため、除電に寄与しない無効なイオンが多くなってしまう。そこで本発明では放電電極の取り付け位置がモータ電源線の位置と重ならないように配置してこれらの距離を離すと共に、除電装置自体のサイズが大きくならないように水平、鉛直の配置を避けることで、除電性能の向上と装置の小型化を両立させている。このように本発明によれば、除電装置を小型化、薄型化しても除電能力を低下させることなく、高品質の除電性能を発揮することができる除電装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】直流型の除電装置における電極の配置を示す概略図である。
【図2】従来の除電装置の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る除電装置用脱着ユニットを斜め上方から見た斜視図である。
【図4】図3の除電装置用脱着ユニットを斜め下方から見た斜視図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る除電装置用脱着ユニットを除電装置本体に装着する状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る除電装置用脱着ユニットを除電装置本体に装着した除電装置を示す斜視図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る除電装置用脱着ユニットを示す断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る除電装置の放電電極を絶縁部材で被覆する状態を示す斜視図である。
【図9】放電電極の先端以外の部分で放電が発生する様子を示す概略図である。
【図10】放電電極の外形を曲面状に構成する例を示す概略図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係る除電装置の放電電極を絶縁部材で被覆する状態を示す断面図である。
【図12】本発明の他の実施の形態に係る除電装置の放電電極を絶縁部材で被覆する状態を示す断面図である。
【図13】本発明の他の実施の形態に係る除電装置のコネクタを示す斜視図である。
【図14】本発明の一実施の形態に係る除電装置で沿面放電が発生した場合の経路を示す概略図である。
【図15】図6の除電装置においてスライド部材を示す斜視図である。
【図16】スライド部材がロック検出部を切り替える状態を示す概略図である。
【図17】本発明の一実施の形態に係る除電装置の回路図である。
【図18】本発明の一実施の形態に係る除電装置の平面図である。
【図19】モータ電源線および放電電極の一般的な配置例を示す概略図である。
【図20】モータ電源線を絶縁材で被覆する状態を示す平面図である。
【図21】従来のファン部の固定方法を示す平面図および正面図である。
【図22】本発明の一実施の形態に係る除電装置でファン部の固定方法を示す断面図である。
【図23】本発明の一実施の形態に係る除電装置の下ケースを外した状態でのファン部の固定状態を示す底面図である。
【図24】本発明の一実施の形態に係る除電装置のケースを示す断面図および斜視図である。
【図25】本発明の他の実施の形態に係る除電装置のケース開口部とファン開口部を示す概略断面図である。
【図26】ベアリングの内部構造の示す概略断面図である。
【図27】本発明の一実施の形態に係るベアリングの配置状態を示す概略断面図である。
【図28】本発明の他の実施の形態に係るベアリングの配置状態を示す概略断面図である。
【図29】本発明の他の実施の形態に係るベアリングの配置状態を示す概略断面図である。
【図30】ベアリングの発塵量を試験した装置の概要を示す概略図である。
【符号の説明】
1・・・放電電極
2・・・高圧電源部
2A・・・高圧トランス
3・・・通気口
4・・・支持体
5・・・ケース開口部
6・・・ケース
6A・・・上ケース
6B・・・下ケース
7・・・ファン
8・・・保持部
9・・・内壁
10・・・電流検出部
11・・・装着検出部
12・・・スライド部材
12a・・・ロック片
12b・・・検出片
13・・・ロック検出部
14・・・本体コネクタ
15・・・ユニットコネクタ
16・・・高圧電源収納部
17・・・高圧電線
18・・・充填材
19・・・切り欠き
20・・・除電装置用脱着ユニット
21・・・除電装置本体
22・・・プラッタ
23・・・電極針
24・・・電界遮断部
24A・・・環状ガード
25・・・ガード部
25a・・・ガード条
26・・・ファン部
27・・・ファン部ケース
28・・・ファン開口部
29・・・モータ
30・・・モータ電源線
31・・・絶縁材
32・・・ネジ穴
33・・・ボルト
34・・・段差部
35・・・凹部
36・・・狭着板
37、37A、37B、37C・・・ベアリング
38・・・ボール
39・・・リテーナ
40・・・内輪
41・・・外輪
42・・・ベアリング閉塞部
43・・・容器
44・・・パーティクルカウンタ
45・・・ファンの回転軸
46・・・接地電極
47・・・絶縁部材
48・・・雄型端子
49・・・雌型端子
R・・・電流検出抵抗

Claims (13)

  1. 空気に高電圧を印加して電離させ、イオンを発生させるための少なくとも一の放電電極(1)と、前記放電電極(1)に電力を供給するための高圧電源部(2)と、電離したイオンを飛翔させるためのファン(7)とを備える除電装置であって、
    前記除電装置は、
    ケース開口部(5)を設けたケース(6)と、
    前記ケース開口部(5)に設けられたファン(7)と、
    前記ファン(7)前面において前記ケース開口部(5)をガードするため、線状あるいは平板状のガード条(25a)を複数一体成型されて格子状のパターンにより形成された網状に設けられたガード部(25)と、
    前記ケース開口部(5)に突出するように対向して配置された少なくとも一の放電電極(1)と、
    前記放電電極(1)に電力を供給する高圧トランス(2A)と、
    を備えてなり、
    前記ケース開口部(5)をガードする前記ガード部(25)において、各放電電極(1)の先端部分に重なる位置に、前記格子状のパターンとは異なるパターンに形成された導電性の電界遮断部(24)が連結されてなることを特徴とする除電装置。
  2. 前記電界遮断部(24)は前記ケース開口部(5)と略同心円の環状であることを特徴とする請求項1に記載の除電装置。
  3. 前記電界遮断部(24)を、前記高圧トランス(2A)の2次側の接地側端子に接続してなることを特徴とする請求項1または2に記載の除電装置。
  4. 前記ファン(7)は、ファン部(26)に備えられており、前記ファン部(26)は、
    ファン部ケース(27)と、
    ファン部ケース(27)に回転自在に支承された前記ファン(7)と、
    前記ファン(7)の送風を前記ファン部ケース(27)の外部に送出するために前記ファン部ケース(27)に開口されたファン開口部(28)と、
    前記ファン(7)を回転させるためのモータ(29)と、
    前記モータ(29)に電力を供給するためのモータ電源線(30)と、
    を備えており、
    略円形のケース開口部(5)に設けられた放電電極(1)の取り付け位置は、モータ電源線(30)の位置と重ならない位置に配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一に記載の除電装置。
  5. 略円形のケース開口部(5)に設けられた前記放電電極(1)の取り付け位置は、ケース開口部(5)の円の最上部を0°とするとき、0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、315°以外の位置に配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一に記載の除電装置。
  6. 略円形のケース開口部(5)に設けられた前記放電電極(1)の取り付け位置は、ケース開口部(5)の円の最上部を0°とするとき、5°〜40°、50°〜85°、95°〜130°、140°〜175°、185°〜220°、230°〜265°、275°〜310°、320°〜355°の少なくともいずれかの位置に配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一に記載の除電装置。
  7. 前記モータ(29)の電源をアースから絶縁することを特徴とする請求項4から6のいずれか一に記載の除電装置。
  8. 前記モータ電源線(30)に絶縁材(31)を被覆することを特徴とする請求項4から7のいずれか一に記載の除電装置。
  9. 前記ファン部(26)の両側面には、ファン部(26)の厚さよりも薄く形成された段差部(34)が設けられ、この段差部(34)を直接または間接にネジで固定することでファン部(26)をケース(6)に固定してなることを特徴とする請求項4から8のいずれか一に記載の除電装置。
  10. 前記ファン部(26)の両側面には、側面に開口する凹部(35)が設けられ、凹部(35)に狭着板(36)を挿入して狭着板(36)をネジ止めすることによりファン部(26)をケース(6)に固定してなることを特徴とする請求項4から8のいずれか一に記載の除電装置。
  11. 除電装置は、前記放電電極(1)を除電装置から脱着可能な除電装置用脱着ユニット(20)に設けてなり、前記除電装置用脱着ユニット(20)は、
    通気口(3)を開口する支持体(4)と、
    前記通気口(3)に突出するように前記支持体(4)に設けられた少なくとも一の放電電極(1)と、
    前記放電電極(1)に電力を供給する高圧電源部(2)と、
    を備え、
    除電装置用脱着ユニット(20)を除電装置に装着した際、前記支持体(4)の通気口(3)と前記ケース開口部(5)とが略一致するよう構成されてなり、
    除電装置はさらに、前記除電装置用脱着ユニット(20)を保持するために前記ケース(6)に設けられた保持部(8)を備え、
    前記保持部は弾性部材で前記除電装置用脱着ユニット(20)を狭着して保持することを特徴とする請求項1から10のいずれか一に記載の除電装置。
  12. 前記保持部を、前記高圧トランス(2A)の2次側の接地側端子に接続してなることを特徴とする請求項11に記載の除電装置。
  13. 除電装置は、前記保持部(8)に導電体を設けており、前記導電体に前記除電装置用脱着ユニット(20)から外部へ流れる漏れ電流を検出可能な電流検出部(10)を備えてなることを特徴とする請求項11または12に記載の除電装置。
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