JP5937918B2 - イオン発生装置およびこれを備えた除電装置 - Google Patents

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Description

本発明は、正イオンと負イオンとを発生させるイオン発生装置と、そのイオンによって帯電している対象物の帯電を除去する除電装置に関する。
イオン発生装置を用いる対象技術分野とその応用分野(装置)は多岐にわたっている。主に産業用では、電子写真帯電装置、空気の消毒、殺菌又は脱臭装置、電気集塵装置、オゾンの発生装置、静電塗装装置などが挙げられ、例えば、液晶表示装置や半導体装置の製造工程等においては、クリーンルーム内における静電気障害を防止するために除電装置として用いられている。
除電装置は、コロナ放電により周囲の空気分子を電離させ、生成した正負のイオンを帯電した対象物に照射することで除電を行う。正負のイオンの放出量がどちらかに偏ると、かえって対象物を帯電させてしまうことがあるため、正負のイオンが等しくなるようにバランスが調整されている。
昨今は、除電装置が利用される使用環境の省スペース化に伴って、除電装置を対象物に近接させた状態でも使用できることが求められている。しかし、除電装置を対象物に近接させると、放電電極に生じる電界により対象物が帯電してしまう問題がある。
そこで、特許文献1の除電装置90は、図7に示すように、イオンを発生させるための少なくとも一の放電電極91と、イオンを飛翔させるためのファン92と、ファン部に開口されたケース開口部93を設けたケース94と、ケース開口部93をガードするガード条95aを網状に設けたガード部95とを備えており、これによりガード部95を各放電電極91に重なるように配置して電界遮断部を形成し、放電電極91の電界による対象物の帯電を防止している。
また、特許文献2は、スポット的にイオンを吹き付けるノズル開口に金属網のグリッドを設けたイオナイザにおいて、グリッドの網目の空間率SRを35%以上で65%以下の範囲に設定することにより、イオンバランスに加え、除電能力の低下を防止している。
特許4290437号(平成21年4月10日登録) 特開2008−41345号(平成20年2月21日公開)
しかしながら、特許文献1の除電装置90では、電界を遮断するガード部95の面積をどの程度にすればよいか開示しておらず、電界遮断部を大きくし過ぎると、除電時間が長くなって除電能力が低下する問題があった。
また、特許文献2のイオナイザは、スポット状のノズル開口におけるグリッドの空間率SRを最適化したものであり、比較的小さい対象物ではイオンバランスを改善することができるが、対象物が大きいものに対して複数の放電電極からイオンを放出するような除電装置に対しては、必ずしも特許文献2の空間率SRが最適とはならず、除電能力が低下してイオンバランスがとれなくなる問題があった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の放電電極を備えた除電装置において、近接使用時における除電速度とイオンバランスを確保することができ、優れた除電性能を備えた除電装置を提供することである。
本発明のイオン発生装置は、正または負のイオンをそれぞれ生成する複数の放電電極と、放電電極から生成されたイオンを外部に送風するファンと、イオンの送風口に配置された金属網を備え、金属網は、第1の網目部と、第1の網目部より網目が広い第2の網目部を有し、放電電極は、投影した状態において、第1の網目部に位置することを特徴とする。
また、放電電極は、投影した状態において、第1の網目部の線部に重なるように位置することを特徴とする。
また、放電電極は、針状電極であることを特徴とする。
また、針状電極の先端部は、投影した状態において、第1の網目部の線部に重なるように位置することを特徴とする。
また、針状電極の先端部は、投影した状態において、第1の網目部の交点に重なるように位置することを特徴とする。
また、放電電極は線状に配置され、金属網は第1の網目部と第2の網目部が放電電極の配置に合わせて交互に配置されていることを特徴とする。
また、ファンは、クロスフローファンであることを特徴としている。
また、除電装置は、上記いずれかのイオン発生装置を備えたことを特徴としている。
本発明によれば、複数の放電電極を備えた除電装置において、近接使用時における除電速度と正負イオン量のバランスを確保することができ、優れた除電性能を備えた除電装置を提供することができる。
本発明の除電装置を説明するための模式図である。 除電装置の構成と除電性能の測定条件を示す上面図である。 除電装置に設けられる金属網の種類を示す模式図である。 図3に示した各種金属網のイオンバランスと除電時間のグラフである。 金属網の第1の網目部N1と第2の網目部N2を示す模式図である。 図5に示した各種金属網のイオンバランスと除電時間のグラフである。 特許文献1の除電装置示す模式図である。
以下、本発明の実施例について図1から図6を用いて詳細に説明する。実施例として、本発明のイオン発生装置を具体化した除電装置を示す。なお、各実施例はあくまで一例として示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
図1は、本発明の除電装置100を説明するための模式図である。本発明の除電装置100は、図1に示すように、放電電極10として、正イオンを生成する針状電極10aと負イオンを生成する針状電極10bを有する放電ユニット11と、放電ユニット11に高電圧を供給する高電圧回路12と、放電ユニット11と高電圧回路12を制御する制御回路13とを備えている。
また、放電ユニット11で生成した正負イオンを被除電物に向けて送風するためのファン14と、放電ユニット11のイオンの送風口に設けられた金属網15を備えている。
図1では、除電装置100の除電性能を測定するための構成を一緒に示しており、被除電物の代わりに、チャージプレート80と、チャージプレート80の電位を測定する表面電位計81を配置している。チャージプレート80は、TRECK社製の製品であり、150×150mmの矩形金属プレートが重ねられ、20pFの静電容量を有するものである。
除電装置100の除電性能は、イオンバランスと除電時間を測定して評価している。イオンバランスは、チャージプレート80を、一旦、接地して表面電位を0Vにしたあと、除電装置100のイオン風を所定位置に配置したチャージプレート80に当てて、表面電位計81でその帯電量を測定して求めている。また、除電時間は、チャージプレート80を、1kVから100Vに除電する時間と、−1kVから−100Vに除電する時間とを測定し、両者の平均値を除電時間として求めている。
図2は、除電装置100について、除電性能の測定方法を示した上面図である。図2に示すように、除電性能の測定は、除電装置100から、50mm、100mm、300mm離れた距離にチャージプレート80を配置し、×印で示す送風口の幅方向である9点(0mm、±50mm、±100mm、±150mm、±200mm)に、チャージプレート80の中心を移動し、面内のばらつきも含めてイオンバランスと除電時間を測定した。
図2において、除電装置100の構造を詳細に説明すると、放電ユニット11には、放電電極10として、正イオンを生成する針状電極10aと、負イオンを生成する針状電極10bが一対となって設けられている。針状電極10a、10bには、生成するイオンと同極性の高電圧パルスが印加されるDC方式が用いられるが、極性を一定時間毎に切り替えて駆動することにより、1つの針状電極10から正負のイオンを交互に生成するAC方式を用いることも可能である。放電ユニット11は、複数個用いることにより、イオン全体の放出量を増加させ、除電面積を大きくすることができ、そのような場合は除電装置100の送風口の幅方向に並べて配置される。
放電ユニット11の後方には、生成した正負イオンを被除電物に向けて放出するためのファン14が配置され、イオンが放出される放電ユニット11の前方には、針状電極10から離間して金属網15が配置されている。ファン14は、例えば、並置される放電ユニット11に合わせて幅広の空気流を生成するクロスフローファンが適している。
金属網15は、例えば、複数の導線が互いに交差して形成された網目部を有し、針状電極10a、10bの先端と網目部を構成する導線が、イオンの放出方向に投影して重なるように配置されている。これにより、針状電極10a、10bに生じる電界が金属網15の導線によって遮蔽されて外部に漏れなくなるとともに、針状電極10a、10bから放出された正負イオンは、金属網15の網目部を通過して被除電物に照射させることができる。なお、金属網15は、グランド電位に接続せずに電気的に浮かした状態で用いることにより、放出されたイオンが金属網15に吸収されて減少することを防止できる。
図3は、網目部の大きさが異なるA、B、Cの金属網15を、放電電極10側から見た模式図である。金属網15は、網目部をアルミなどの導電性を有する導線15a、15bを用いて、横方向の導線15aと縦方向の導線15bを網目状に組合せて形成した空間部を有している。金属網15の材料は、上記アルミ以外にも銅などの導電率が小さい材料を用いることができる。
図3に示すように、Aの金属網15に対して、BやCの金属網15は、横方向の導線15aまたは縦方向の導線15bを追加・間引くことにより網目部の大きさを変更している。金属網15の網目部の大きさは、網目部の空間断面積の比率から求める空間率SRで定義することができる。
空間率SRは、一枡当たりの(線径を除く空間断面積)÷(線径を含む空間断面積)×100で算出する。図3のAの金属網15において、導線15a、15bの線径を0.7mmにして、導線15a、15bの間隔を7.0mmにすると、上記計算式からAの金属網15の空間率SRは82%となる。同様に、Bの金属網15は、Aの金属網15の横方向と縦方向に導線15a、15bを追加して、間隔を半分に狭くすることにより、空間率SRを67%としたものである。また、C金属網15は、Aの金属網15の導線15bを間引きして、横方向の間隔を4倍に広げることにより、空間率SRを89%としたものである。
図4は、網目部の大きさを示す空間率SRが異なるAからCの3種類の金属網15について、50〜300mmの距離で除電性能を測定し、各距離におけるイオンバランスと除電時間をグラフ化したものである。なお、イオンバランスは上述した9点の測定値の平均値を示している。
図4に示すように、50〜100mmの近距離で使用したとき、空間率SRが67%と比較的小さいBの金属網15は、イオンバランスが−5.3V〜−11.1Vと最も大きくずれて充分に除電できないことがわかった。また、空間率SRが89%と比較的大きいCの金属網15も、50mmの近接した距離ではイオンバランスが−6.2Vと大きくずれて充分に除電できないことがわかった。空間率SRが82%であるAの金属網15は、50〜100mmの近距離でイオンバランスが−3.2Vと小さめであるが未だ改善を要するレベルであった。
除電時間については、空間率SRが小さくなるとイオンが通過し難くなるため、Bの金属網15がAの金属網15やCの金属網15に比べて、除電時間が0.1〜0.2秒程度増加した。
図4に示すように、イオンバランスは、除電装置100からの距離が離れるほど0Vに近づいて良好となる。これは、距離が離れるほど正負のイオンが撹拌されてイオンバランスが安定することが考えられる。このため、イオンバランスが比較的に良好であったAの金属網15において、針状電極10から離れた網目部の空間率SRを大きくすることにより、針状電極10から離れた網目部を通過して放出されるイオン量を増やすことを検討した。
図5は、全体が均等に形成された第1の網目部N1が設けられたAの金属網15と、第1の網目部N1および第1の網目部より網目が広い第2の網目部N2が設けられたDの金属網15を示している。第1の網目部N1は、具体的にはAおよびDの金属網15のどちらも空間率SRが82%であり、Dの金属網15の第2の網目部N2の空間率SRは88%となるように形成されている。
そして、針状電極10の先端に対して第1の網目部N1の交点を一致させて配置した場合(A、D)と、針状電極10の先端に対して第1の網目部N1の交点をずらせて配置した場合(A2、D2)について、50〜300mmの距離で除電性能を調べた。
図6は、除電性能として、所定距離におけるイオンバランスと除電時間をグラフ化したものである。図6に示すように、50mm、100mmの近距離におけるイオンバランスは、金属網15の網目部全体が同じ空間率SRになっているもの(A、A2)よりも、針状電極10から離れた部分に、空間率SRが大きい第2の網目部N2を設けたもの(D、D2)の方がイオンバランスを改善できることがわかった。
また、金属網15の交点と針状電極10の先端のずれに対して、第2の網目部N2の空間率SRを大きくしたもの(D2)は、網目部が均等に設けられたもの(A2)よりも、イオンバランスの劣化が少ないことがわかった。
すなわち、針状電極10から離れた部分に、第1の網目部N1より網目が広くなった第2の網目部N2を有することにより、第2の網目部N2を通過するイオンの放出量が増加するので、イオンバランスを改善することができる。また、イオンの放出量が増加することにより、針状電極10の先端と網目部の線部が重なる限り、針状電極10の先端と網目部の交点が多少ずれたとしてもイオンバランスの劣化を抑えることができるので、除電装置100を容易に製造することができる。
勿論、針状電極10の先端と金属網15の交点とを重なるように配置することにより、針状電極10から電界が外部に漏れて被除電物に電荷が誘導されことがなくなり、除電性能を効果的に高めることができる。
以上のことから、本発明のイオン発生装置は、正または負のイオンをそれぞれ生成する複数の放電電極10と、放電電極10から生成されたイオンを外部に送風するファン14と、イオンの送風口に配置された金属網15を備え、金属網15は、第1の網目部N1と、第1の網目部N1より網目が広い第2の網目部N2を有し、放電電極10は投影した状態において第1の網目部N1に位置することで、除電装置として用いたときに、近接使用時におけるイオンバランスの改善と除電時間の短縮を図り、除電能力の高い除電装置を実現することができる。
10 針状電極
11 高電圧パルス発生回路
12 高電圧回路
13 制御回路
14 ファン
15 金属網
80 チャージプレート
81 表面電位計
100除電装置
N1 第1の網目部
N2 第2の網目部

Claims (8)

  1. 正または負のイオンをそれぞれ生成する複数の放電電極と、
    前記放電電極から生成されたイオンを外部に送風するファンと、
    前記イオンの送風口に配置された金属網を備えたイオン発生装置であって、
    前記金属網は、第1の網目部と、前記第1の網目部より網目が広い第2の網目部を有し、
    前記放電電極は、投影した状態において、前記第1の網目部に位置することを特徴とするイオン発生装置。
  2. 前記放電電極は、投影した状態において、前記第1の網目部の線部に重なるように位置することを特徴とする請求項1記載のイオン発生装置。
  3. 前記放電電極は、針状電極であることを特徴とする請求項2記載のイオン発生装置。
  4. 前記針状電極の先端部は、投影した状態において、前記第1の網目部の線部に重なるように位置することを特徴とする請求項3記載のイオン発生装置。
  5. 前記針状電極の先端部は、投影した状態において、前記第1の網目部の交点に重なるように位置することを特徴とする請求項4記載のイオン発生装置。
  6. 前記放電電極は線状に配置され、前記金属網は前記第1の網目部と前記第2の網目部が前記放電電極の配置に合わせて交互に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のイオン発生装置。
  7. 前記ファンは、クロスフローファンであることを特徴とする請求項6記載のイオン発生装置。
  8. 請求項1から7のいずれかのイオン発生装置を備えたことを特徴とする除電装置。
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