JP4290263B2 - ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、高性能向けタイヤ用トレッドに好適な補強性を有し、特に湿潤路面での操縦安定性(ウェット性能)及びサーキット走行などでのチャンク性能(トレッド欠け性能)を共に向上させたゴム組成物、及びこのゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゴム用補強充填剤としては、カーボンブラックが多用されている。これは、カーボンブラックが他の充填剤に比べて、高い補強性と優れた耐摩耗性を付与しうるからである。
一方、近年の省エネルギーの社会的な要請に伴い、自動車の燃料消費節約を目的として、タイヤ用ゴムの低発熱化を図る場合、カーボンブラックの充填量減量、あるいは大粒径のカーボンブラックの使用が考えられるが、いずれの場合も、補強性,耐摩耗性,湿潤路面でのグリップ性が低下するのを免れないことが知られている。
【0003】
他方、タイヤトレッド用ゴム組成物にシリカを配合することにより、ウェット性能と転がり抵抗性能のバランスを改良した技術が開示されている(特開平3−252431号公報、特開平5−271477号公報)。しかしながら、本発明者らの検討によれば、シリカを用いることにより、特にサーキットなどの過酷な走行条件においては、タイヤのチャンク性能が低下することが明らかになった。近年、高性能向けタイヤにおいても、ウェット性能に対する要求が高く、シリカ比率(総補強用充填剤に対するシリカの割合)の増加が必要となってきている。しかしながら、シリカの比率を増加すると、前記したように、サーキット走行性能の確保を前提とする超高性能タイヤにおいては、チャンク性能が低下するのを免れず、一定比率以上のシリカをトレッドゴムに用いることができなかった。
【0004】
また、有機ケイ素化合物で表面を処置されたシリカを配合してなるゴム組成物を用いた空気入りタイヤが提案されているが(特開平8−245838号公報)、この場合、タイヤの耐摩耗性及び転がり抵抗の改良を目的としており、本発明とは異なるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、高性能向けタイヤ用トレッドに好適な補強性を有し、特に湿潤路面での操縦安定性(ウェット性能)及びサーキット走行などでのチャンク性能を共に向上させたゴム組成物、及びこのゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供することを目的とするものである
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、サーキット走行時のチャンク性は、ゴムの破壊エネルギーの大きさに比例しており、カーボンブラックに比べて補強性の低いシリカを用いることによって生じる破壊エネルギーの低さが、チャンク性能を悪化させる原因であることに着目し、特定のジエン系ゴムに対し、有機ケイ素化合物で表面処理した特定の性状を有する含水ケイ酸とカーボンブラックを、それぞれ所定の割合で配合することにより、ウェット性能及びチャンク性能が共に向上したゴム組成物が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)(A)共役ジエン化合物とビニル芳香族炭化水素化合物との共重合体、 (B) (イ) 有機ケイ素化合物1〜20重量%(対含水ケイ酸)で表面処理され、かつ関係式
0.95≧BET(2)/BET(1)≧0.6
1.1≧PO(2)/PO(1)≧0.9
300≧PO(2)≧100
300≧BET(2)≧125
(ただし、BET(1)及びBET(2)は、それぞれ表面処理前及び表面処理後の含水ケイ酸の窒素吸着比表面積(m2 /g)、PO(1)及びPO(2)は、それぞれ表面処理前及び表面処理後の含水ケイ酸の水銀圧入法比表面積(m2 /g)を示す。)
を満たす表面処理含水ケイ酸40〜100重量%と(ロ)カーボンブラック60〜0重量%からなる補強用充填剤、及び(C)シランカップリング剤を含有し、かつ(B)成分の含有量が、(A)成分100重量部あたり70〜110重量部であり、(C)成分の含有量が、(B)(イ)成分の表面処理含水ケイ酸に対し2〜15重量%であることを特徴とするゴム組成物、
(2)さらに、(A)成分100重量部当たり、(D)軟化剤35〜60重量部を含有する上記(1)のゴム組成物、及び
(3)上記(1)、(2)のゴム組成物をトレッドゴムに用いた空気入りタイヤを提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のゴム組成物においては、(A)ゴム成分として、共役ジエン化合物とビニル芳香族炭化水素化合物との共重合体が用いられる。本発明においては、この(A)成分の共重合体としては、ビニル芳香族炭化水素化合物単位32〜40重量%及びビニル結合成分15重量%以上を含有するものが好ましい。ビニル芳香族炭化水素化合物単位の含有量が32重量%未満ではグリップ性が低下するおそれがあり、40重量%を超えると耐摩耗性が低下する原因となる。グリップ性及び耐摩耗性などを考慮すると、この共重合体としては、特にビニル芳香族炭化水素化合物単位35〜40重量%及びビニル結合成分18〜25重量%を含有するものが好ましい。
【0009】
この(A)成分の共重合体としては、特にスチレン−ブタジエンゴム(SBR)が好適である。該スチレン−ブタジエンゴムは、乳化重合法,溶液重合法など、いかなる重合方法によって製造されたものも用いることができる。
また、本発明のゴム組成物においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、(A)成分として、前記共役ジエン化合物とビニル芳香族炭化水素化合物との共重合体の一部を、他のゴム、例えば天然ゴム,ポリイソプレン合成ゴム(IR),ポリブタジエンゴム(BR),アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR),クロロブロンゴム(CR),ブチルゴム(IIR)などで置換したものも用いることができる。
【0010】
本発明のゴム組成物においては、(B)成分の補強用充填剤として、(イ)有機ケイ素化合物で表面処理された含水ケイ酸単独,又はこの(イ)成分の表面処理含水ケイ酸と(ロ)カーボンブラックとを組み合わせたものが用いられる。
前記(イ)成分の表面処理含水ケイ酸としては、表面処理前の窒素吸着比表面積(m2 /g)をBET(1)、表面処理後の窒素吸着比表面積(m2 /g)をBET(2)とし、表面処理前の水銀圧入法比表面積(m2 /g)をPO(1)、表面処理後の水銀圧入法比表面積(m2 /g)をPO(2)とした場合、関係式
0.95≧BET(2)/BET(1)≧0.6
1.1≧PO(2)/PO(1)≧0.9
300≧PO(2)≧100
300≧BET(2)≧125
を満たすものを用いることが必要である。
【0011】
上記BET(2)/BET(1)の値が0.6未満では、表面処理後の含水ケイ酸の表面積が小さくなりすぎて、補強性が充分に発揮されず、一方0.95を超えると水分吸着量が多くなり、押出成形物の形状安定性及びゴム物性のバラツキの改良効果が充分に発揮されず、いずれも本発明の目的が達せられない。補強性,押出成形物の形状安定性,物性のバラツキなどを考慮すると、BET(2)/BET(1)の好ましい値は0.7〜0.9の範囲である。
また、含水ケイ酸の水銀圧入法比表面積(PO)はゴム物性と極めて相関が高く、表面処理により、このPOが変化すると、耐摩耗性,補強性,粘弾性などのゴム物性が変化する。したがって、本発明においては、PO(2)/PO(1)の値は0.9〜1.1の範囲にあることが必要であり、特に0.95〜1.05の範囲が好適である。
【0012】
さらに、PO(2)が100m2 /g未満あるいはBET(2)が125m2 /g未満では補強性が充分に発揮されず、またPO(2)あるいはBET(2)が300m2 /gを超えると含水ケイ酸同士の凝集力が大きくなり、分散性が悪化して、補強性が低下する。補強性,分散性などの面から、このPO(2)の好ましい範囲は120〜250m2 /gであり、BET(2)の好ましい範囲は130〜250m2 /gである。
また、この(イ)成分として用いられる表面処理含水ケイ酸は、直径1000Å以下の水銀圧入法細孔容積が1.1ミリリットル/g以上であり、温度25℃、相対湿度90%での平衡水分量が6重量%以下で、かつ温度25℃、相対湿度50%での平衡水分量と、温度25℃、相対湿度90%での平衡水分量との差が2.5重量%以下のものが好適である。
【0013】
温度25℃、相対湿度90%での平衡水分量が6重量%を超えると、押出工程において水分が揮発し、押出成形物中の空隙率が大きくなって、形状安定性が不充分となるおそれがある。押出成形物の形状安定性の面から、該平衡水分量は、特に5重量%以下が好適である。
また、温度25℃、相対湿度50%での平衡水分量と温度25℃、相対湿度90%での平衡水分量との差が2.5重量%を超えると、湿度によってゴム物性がばらつく原因となる。この平衡水分量の差は、ゴム物性のバラツキ低減の面から、特に2重量%以下が好適である。
【0014】
本発明においては、この(イ)成分の表面処理含水ケイ酸は、以下に示す有機ケイ素化合物を含水ケイ酸に対して1〜20重量%の割合で用いて、通常200℃、好ましくは250〜350℃の温度で含水ケイ酸の表面処理を行うことによって調製される。有機ケイ素化合物の使用量が1重量%未満では表面処理による補強性向上効果が充分に発揮されず、20重量%を超えるとシランカップリング剤が反応する含水ケイ酸のSi−OHサイトまで覆われるため、シランカップリング剤の効果の低減をもたらす。補強性向上効果及びシランカップリング剤の配合効果などを考慮すると、この有機ケイ素化合物の使用量は1〜5重量%の範囲が好ましい。なお、この有機ケイ素化合物の使用量は、処理する含水ケイ酸の表面積、すなわちSi−OHサイト数によって適宜選定することが好ましい。
この表面処理においては、有機ケイ素化合物として、例えばジメチルポリシロキサン,メチルハイドロジェンポリシロキサン,メチルフェニルポリシロキサンやアミノ変性,アルキル変性,フッ素変性,カルビノール変性,メルカプト変性,ポリエーテル変性,エポキシ変性,メタクリル変性等の各種変性シリコーンオイルなど、更には環状ジメチルシロキサン,トリメチルシラノール,トリメチルモノクロロシラン,ジメチルジメトキシシラン,ジフェニルジメトキシシラン,ヘキサメチルジシラン,デシルトリエトキシシランなどが用いられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、処理時にKOH,(CH3)4 NOH,(n−C4 9)4 POH等のアルカリ触媒や硫酸,塩酸などの酸触媒を用いることができる。
【0015】
本発明においては、この(イ)成分の表面処理含水ケイ酸は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、(ロ)成分のカーボンブラックは、製造方法によりチャンネルブラック,ファーネスブラック,アセチレンブラック及びサーマルブラックなどに分類されるが、いずれのものも用いることができる。
本発明においては、(B)成分の補強用充填剤として、(イ)成分の表面処理含水ケイ酸40〜100重量%と(ロ)カーボンブラック60〜0重量%とからなるものが用いられる。表面処理含水ケイ酸の配合比率が40重量%未満ではウエット性能が不充分となる。ウエット性能の面から、この(イ)成分と(ロ)成分の配合比率は、(イ)成分が50〜100重量%で、(ロ)成分が50〜0重量%の範囲が好ましく、特に(イ)成分が70〜95重量%で、(ロ)成分が30〜5重量%の範囲が好ましい。
【0016】
本発明においては、この(B)成分の補強用充填剤は、前記(A)成分100重量部当たり、70〜110重量部の範囲で配合される。この配合量が70重量部未満では湿潤及び乾燥路面でのグリップ性が低下し、110重量部を超えると耐摩耗性及びチャンク性が低下する。グリップ性,耐摩耗性及びチャンク性のバランスなどの面から、この(B)成分の配合量は70〜100重量部の範囲が好ましい。
本発明のゴム組成物において、前記(B)成分の中の表面処理含水ケイ酸の効果を、さらに向上させるために、(C)成分として、シランカップリング剤が配合される。このシランカップリング剤としては、従来公知のシランカップリング剤の中から任意のものを用いることができるが、特に一般式(I)
AmB3-mSi-X-Sa-X-SiAmB3-m・・(I)
(式中、AはCn2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子、Bは炭素数1〜3のアルキル基、Xは炭素数1〜9の飽和または不飽和アルキレン基あるいは炭素数7〜15のアリーレン基、mは1〜3の整数、aは1以上の整数で分布を有することもある。但し、mが1のときは二つのBは同じであっても異なっていてもよく、mが2又は3のときは二つ又は三つのAは同じであっても異なっていてもよい。)
で表される化合物、一般式(II)
AmB3-mSi-X-Y ・・・(II)
(式中、AはCn2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子、Bは炭素数1〜3のアルキル基、Xは炭素数1〜9の飽和または不飽和アルキレン基あるいは炭素数7〜15のアリーレン基、Yはメルカプト基,ビニル基,アミノ基,グリシドキシ基又はエポキシ基、mは1〜3の整数を示す。但し、mが1のときは二つのBは同じであっても異なっていてもよく、mが2又は3のときは二つ又は三つのAは同じであっても異なっていてもよい。)
で表される化合物、及び一般式(III)
AmB3-mSi-X-Sa-Z ・・・(III)
(式中、AはCn2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子、Bは炭素数1〜3のアルキル基、Xは炭素数1〜9の飽和または不飽和アルキレン基あるいは炭素数7〜15のアリーレン基、Zはベンゾチアゾリル基,N,N−ジメチルチオカルバモイル基又はメタクリロイル基、mは1〜3の整数、aは1以上の整数で分布を有することもある。但し、mが1のときは二つのBは同じであっても異なっていてもよく、mが2又は3のときは二つ又は三つのAは同じであっても異なっていてもよい。)
で表される化合物の中から選ばれた少なくとも一種を用いるのが好ましい。
【0017】
前記一般式(I)で表されるシランカップリング剤の例としては、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド,ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド,ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド,ビス(3−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド,ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド,ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド,ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィドなどが、一般式(II) で表されるシランカップリング剤の例としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン,3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン,ビニルトリエトキシシラン,ビニルトリメトキシシラン,3−アミノプロピルトリエトキシシラン,3−アミノプロピルトリメトキシシラン,3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン,γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが、一般式(III)で表されるシランカップリング剤の例としては、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルカルバモイルテトラスルフィド,3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド,3−トリメトキシシリルプロピルメタクリロイルモノスルフィドなどが、それぞれ挙げられる。
本発明においては、この(C)成分のシランカップリング剤は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、前記(B)(イ)成分の表面処理含水ケイ酸に対して2〜15重量%の範囲で選ばれる。この配合量が2重量%未満ではゴム組成物の粘度が著しく増加して作業性が悪くなり、15重量%を超えるとアルコールの発生による押し出し作業性が悪化する。本発明のゴム組成物においては、作業性などを向上させるために、所望により、さらに(D)成分として軟化剤を配合することができる。この軟化剤としては特に制限はなく、従来ゴム用軟化剤として慣用されているものの中から適宜選択して用いることができる。この軟化剤には、鉱物油系,植物油系,合成油系などがあり、鉱物油系としては、例えばナフテン系,パラフィン系などのプロセス油が挙げられ、植物油系としては、例えばひまし油,綿実油,あまに油,なたね油,大豆油,パーム油,ヤシ油,落花生油,木ろう,パインオイル,オリーブ油などが挙げられる。また、合成油系としては、例えばポリイソブチレン系オイルなどがある。
【0018】
これらの軟化剤は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、前記(A)成分100重量部当たり、通常35〜60重量部の範囲で選ばれる。この配合量が35重量部未満ではゴム組成物の粘度低減効果が充分に発揮されず、作業性が向上しにくく、60重量部を超えると耐摩耗性,チャンク性が悪化する原因となる。作業性,耐摩耗性,チャンク性などを考慮すると、この軟化剤の配合量は、40〜55重量部の範囲が好ましい。
本発明のゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤,加硫促進剤,老化防止剤,スコーチ防止剤,他の充填剤,亜鉛華,ステアリン酸などを含有させることができる。
そして、本発明のゴム組成物はタイヤのトレッドゴムに好適に用いられる。
本発明の空気入りタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて、上記のように各種薬品を含有させた本発明に係るゴム組成物が未加硫の段階でトレッド用部材に押出し加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
このようにして得られた本発明の空気入りタイヤは、特に湿潤路面での操縦安定性及びサーキット走行などでのチャンク性能に優れている。
【0019】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、タイヤの性能は、下記の要領に従い測定した。
(1)ウェット操縦安定性
湿潤路面のテストコースにおいて、実車評価を行い、駆動性,制動性,ハンドル応答性,操舵時のコントロール性をテストドライバーが評価するとともに、80km/hrの速度からの停止距離の結果を加味して、総合評価を行った。
比較例1を100とし、比較例1に比べてプロの評価ドライバーが差を認識できる場合に±5点を加え、プロの評価ドライバーが明確に差を認識できる場合に±10点を加え、指数表示した。数値が大きいほどウェット操縦安定性が優れていることを示す。
(2)チャンク性
テストコースにて、実車評価を行い、15Lap後のトレッド部の欠けを目視で評価し、走行後のチャンク性として評価した。
評価の結果は、比較例1の結果を100とし、指数表示した。数値が大きいほどチャンク性が優れること(欠けが少ない)を示す。
【0020】
実施例1〜及び比較例1〜
第1表に示す種類と量の各成分を含有すると共に、亜鉛華3.5重量部、ステアリン酸3.0重量部、老化防止剤6C(N−1,3−ジメチルブチル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン)1.0重量部、加硫促進剤DPG(ジフェニルグアニジン)0.6重量部、加硫促進剤NS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)1.0重量部及び加硫促進剤DM(ジベンゾチアジルジサルファイド)1.2重量部を含有するゴム組成物を調製した。
次に、この各ゴム組成物からなるトレッドゴムを備えたタイヤ(205/50R16)を試作し、それぞれ使用内圧0.2MPaにて、性能評価を行った。結果を第1表に示す。
【0021】
【表1】
Figure 0004290263
【0022】
【表2】
Figure 0004290263
【0023】
(注)
(1)SBR#1712:JSR社製、共重合体中のスチレン単位24重量%、ビニル結合単位18.9重量%、オイル含有量37.5重量部(ゴム成分100重量部に対して)
(2)SBR#0120:JSR社製、共重合体中のスチレン単位35重量%、ビニル結合単位18.9重量%、オイル含有量37.5重量部(ゴム成分100重量部に対して)
(3)SBR#0540:JSR社製、共重合体中のスチレン単位34.9重量%、ビニル結合単位42.5重量%、オイル含有量60.0重量部(ゴム成分100重量部に対して)
(4)カーボンブラックN110:東海カーボン社製、シースト9
(5)シリカAQ:日本シリカ社製
(6)表面処理シリカ1:シリカAQをシリコーンオイル(ジメチルシリコーンオイルKF96(信越化学工業社製))5重量%(対シリカ)で表面処理したもの
(7)表面処理シリカ2:シリカAQをシリコーンオイル(ジメチルシリコーンオイルKF96(信越化学工業社製))23重量%(対シリカ)で表面処理したもの
(8)シランカップリング剤:ビス(3−エトキシシリルプロピル)テトラサルファイド
(9)スチレン単位含有量、ビニル結合成分含有量:全SBR中の値である
(10)シリカ比率:シリカとカーボンブラックとの合計量に対するシリカの割合である
(11)総充填剤量:カーボンブラックとシリカとの合計量である
(12)総軟化剤量:ゴム成分中のオイルと添加軟化剤との合計量である
【0024】
第1表から分かるように、シリコーンオイル1〜20重量%で表面処理したシリカを配合することにより、走行時のチャンク性を悪化させることなく、ウェット操縦安定性を向上させることができる。
【0025】
【発明の効果】
本発明のゴム組成物は、高性能向けタイヤ用トレッドに好適な補強性を有し、特に湿潤路面での操縦安定性(ウェット性能)及びサーキット走行などでのチャンク性能を共に向上させたタイヤを与えることができる。

Claims (4)

  1. (A)共役ジエン化合物とビニル芳香族炭化水素化合物との共重合体、 (B)(イ) 有機ケイ素化合物1〜20重量%(対含水ケイ酸)で表面処理され、かつ関係式
    0.95≧BET(2)/BET(1)≧0.6
    1.1≧PO(2)/PO(1)≧0.9
    300≧PO(2)≧100
    300≧BET(2)≧125
    (ただし、BET(1)及びBET(2)は、それぞれ表面処理前及び表面処理後の含水ケイ酸の窒素吸着比表面積(m2 /g)、PO(1)及びPO(2)は、それぞれ表面処理前及び表面処理後の含水ケイ酸の水銀圧入法比表面積(m2/g)を示す。)
    を満たす表面処理含水ケイ酸40〜100重量%と(ロ)カーボンブラック60〜0重量%とからなる補強用充填剤、及び(C)シランカップリング剤を含有し、(B)成分の含有量が、(A)成分100重量部当たり70〜110重量部であり、(C)成分の含有量が、(B)(イ)成分の表面処理含水ケイ酸に対し2〜15重量%であり、(A)成分の全共重合体が、ビニル芳香族炭化水素化合物単位32〜40重量%及びビニル結合成分15重量%以上を含有し、かつ(A)成分100重量部当たり、(D)軟化剤35〜60重量部を含有するものであることを特徴とするゴム組成物。
  2. (C)成分のシランカップリング剤が、一般式(I)
    AmB3-mSi-X-Sa-X-SiAmB3-m・・(I)
    (式中、AはCn2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子、Bは炭素数1〜3のアルキル基、Xは炭素数1〜9の飽和または不飽和アルキレン基あるいは炭素数7〜15のアリーレン基、mは1〜3の整数、aは1以上の整数で分布を有することもある。但し、mが1のときは二つのBは同じであっても異なっていてもよく、mが2又は3のときは二つ又は三つのAは同じであっても異なっていてもよい。)
    で表される化合物、一般式(II)
    AmB3-mSi-X-Y ・・・(II)
    (式中、AはCn2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子、Bは炭素数1〜3のアルキル基、Xは炭素数1〜9の飽和または不飽和アルキレン基あるいは炭素数7〜15のアリーレン基、Yはメルカプト基,ビニル基,アミノ基,グリシドキシ基又はエポキシ基、mは1〜3の整数を示す。但し、mが1のときは二つのBは同じであっても異なっていてもよく、mが2又は3のときは二つ又は三つのAは同じであっても異なっていてもよい。)
    で表される化合物、及び一般式(III)
    AmB3-mSi-X-Sa-Z ・・・(III)
    (式中、AはCn2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子、Bは炭素数1〜3のアルキル基、Xは炭素数1〜9の飽和または不飽和アルキレン基あるいは炭素数7〜15のアリーレン基、Zはベンゾチアゾリル基,N,N−ジメチルチオカルバモイル基又はメタクリロイル基、mは1〜3の整数、aは1以上の整数で分布を有することもある。但し、mが1のときは二つのBは同じであっても異なっていてもよく、mが2又は3のときは二つ又は三つのAは同じであっても異なっていてもよい。)
    で表される化合物の中から選ばれた少なくとも一種である請求項1記載のゴム組成物。
  3. (A)成分の全共重合体が、ビニル芳香族炭化水素化合物単位35〜40重量%及びビニル結合成分18〜25重量%を含有するものである請求項1記載のゴム組成物。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載のゴム組成物をトレッドゴムに用いた空気入りタイヤ。
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