JP4288903B2 - ボールねじ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、送り装置等に用いられるエンドキャップ式のボールねじ装置に関し、特に高速送りに適したボールねじ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のボールねじ装置としては、例えば図10に示すものが知られている。このボールねじ装置1は、外周面に断面半円状のねじ溝2を有して軸方向に延びるねじ軸3に、内周面に断面半円状のねじ溝4を有するボールナット6が嵌合されている。ボールナット6は、ねじ軸3に嵌合されるナット本体6aと、該ナット本体6aの軸方向の両端部にねじ等を介して固定されたエンドキャップ6bとを備えている。
【0003】
ボールナット6のねじ溝4とねじ軸3のねじ溝2とは互いに対向して両者の間に螺旋状通路を形成しており、該螺旋状通路には転動体としての多数の鋼製ボール5が転動可能に装填されている。そして、ねじ軸3の回転により、ボールナット6がボール5の転動を介して直線移動するようになっている。
なお、ボールナット6が直線移動する際には、ボール5が両ねじ溝2,4で形成される螺旋状通路を転動しつつ移動するが、ボールナット6を継続して移動させていくためには、ボール5を無限循環させる必要がある。
【0004】
このため、ナット本体6a内に軸方向に貫通するボール循環穴8を形成すると共に、ナット本体6aの端面とエンドキャップ6bとの間に前記ボール循環穴8と前記両ねじ溝2,4間とを連通するボール循環R部7を形成し、このボール循環R部7と前記ボール循環穴8とによって、両ねじ溝2,4間を転動しつつ移動するボール5を無限に循環させるボール循環経路9を形成している。
【0005】
ボール循環R部7は、通常、図11に示すように、ナット本体6aの端面に形成されたガイド溝10と、エンドキャップ6bに設けられたガイド溝11とを互いに対向配置することにより、ボール5の循環路を形成しており、また、図12を参照して、エンドキャップ6bには両ねじ溝2,4間を転動しつつ移動するボール5を負荷圏ですくい上げてボール循環R部7に導くためのタング12がねじ軸3のねじ溝2に張り出して設けられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図13および図14に従来のエンドキャップ6bの詳細を示す。図から判るように、このエンドキャップ6bには、ボール5をすくい上げるタング12およびボール循環R部を7を構成する凹状のガイド溝11が形成されて3次元的な複雑な形状となっている。また、タング12とガイド溝11とは同時に加工することは難しいため、タング12の位置とガイド溝11の位置とのずれが発生しやすくなり、このずれがボール5のスムースな循環移動を阻害してボールねじ装置の作動の悪化や、騒音の増大を引き起こす可能性がある。
【0007】
また、エンドキャップ6bは、機械加工で複雑な形状のタング12やガイド溝11を形成するにはコスト高になることから、金属材料ではなく樹脂材料で成形するのが一般的であるが、成形品では金型が必要となるためボールねじの軸径やリードなど多くの仕様に柔軟に適応するのが困難であり、しかも、樹脂材料の場合は耐熱性、耐薬品性や軽度の衝突に対する対応が難しいという問題がある。
【0008】
さらに、ボール循環R部7では、両ねじ溝2,4間を転動しつつ移動するボール5を負荷圏ですくい上げる側と、ボール循環穴8にボール5を戻す側との二カ所でボール5の受け渡しをすることになるが、図11に示すように、エンドキャップ6b及びナット本体6aの端面の両方にボール5のガイド溝11,10がある場合、各ガイド溝11,10の加工精度が高くないと、各ガイド溝11,10を二カ所のボール受け渡し部において同時に段差無くうまく合わせることができない。
【0009】
このため、図13および図14に示すように、エンドキャップ6bおよびナット本体6aの端面に位置合わせ用の凹凸13を付けたりしているが、各ガイド溝11,10を二カ所のボール受け渡し部において同時に段差無くうまく合わせることができるか否かは結局はガイド溝11,10の加工精度に依存するため、この加工精度が悪いと、ボールねじ装置の作動の悪化や、騒音の増大につながる。
【0010】
本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、低コストで且つ簡単な構造のエンドキャップとすることができ、しかも、ねじ軸の軸径やリード等の多くの仕様にも柔軟に適応することができると共に、耐熱性、耐薬品性および軽度の衝突に対しても良好に対応することができ、さらには、良好な作動性を確保することができると共に、低騒音化を図ることができるボールねじ装置を提供することを目的とする。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、外周面に螺旋状のねじ溝を有するねじ軸と、該ねじ軸のねじ溝に対応するねじ溝を内周面に有して前記ねじ軸に遊嵌されるボールナットと、前記両ねじ溝間に転動可能に配置された多数のボールとを具備し、前記ボールナットは、軸方向に貫通するボール循環穴を有するナット本体と、該ナット本体の両端部にそれぞれ固定され、前記ナット本体の端面との間に前記ボール循環穴と前記両ねじ溝間とを連通するボール循環R部を形成するエンドキャップとを備えたボールねじ装置であって、
前記エンドキャップの前記ナット本体の端面に対向する側の断面形状を全周にわたって略同一にし、
前記ナット本体の前記エンドキャップと対向する端面側のみに設けられた前記ボールのガイド溝と、そのガイド溝を通る前記ボールの最外側に沿う前記エンドキャップの内面とによって前記ボール循環R部を構成し、前記エンドキャップの開口端側の内径が前記ナット本体のボール循環穴の最外径に一致することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記エンドキャップの前記ねじ軸が挿通する穴の内径をボール中心円径より小さく、且つ、前記ねじ軸の外径より大きくしたことを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、前記ナット本体の端面に設けられたガイド溝の深さを前記ボールの直径の40%以上としたことを特徴とする。請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記ねじ軸のねじ溝がゴシックアーチ溝とされ、且つ前記ねじ溝の直角断面形状において、該ねじ溝面と前記ねじ軸の外径面との間を両方の面に接するようにR面取りでつないだことを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項4において、前記ねじ軸のねじ溝の方向と該ねじ溝を前記ボールが軸外径側に競り上がる方向とのなす角度を5〜45°としたことを特徴とする。請求項6に係る発明は、請求項5において、前記R面取り部の曲率半径を前記ボールの半径の15〜45%にしたことを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態の一例であるボールねじ装置に用いられるエンドキャップの概略断面図、図2は図1の左側面図、図3は循環経路でのボールの拘束状態を説明するための説明的断面図、図4はボールがボール循環R部側にすくい上げられる状態を説明するための説明図であり、(a)は軸方向から見た図、(b)は(a)の軸線を横方向からリード角を傾けて見た図、図5〜図8は本発明の他の実施の形態を説明するための説明図、図9は図5のB位置付近の剥離状況を説明するための拡大写真である。なお、この実施の形態のボールねじ装置の基本的構成は、エンドキャップを除いて従来のボールねじ装置(図10)と略同一であるため、エンドキャップのみについて説明し、また、その他の部分については図10の符号を流用して説明する。
【0016】
図1〜図3を参照して、このエンドキャップ20は、従来と同様に、ナット本体6aの端面にねじ等を介して固定されるものであり、略有底短円筒状とされて底部中央にねじ軸3の挿通穴21が形成されている。挿通穴21の周囲は平坦面22とされており、エンドキャップ20の内面側(ナット本体6aとの対向面)において、平坦面22とエンドキャップ20の開口端(左端側)との間は碗状の曲面部23とされている。
【0017】
したがって、この実施の形態では、エンドキャップ20の内面にボール5のガイド溝やタングは形成されていない。これにより、エンドキャップ20のナット本体6aの端面に対向する側の面形状が全周にわたって同一とされている。なお、図1および図2では、ナット本体6aに取り付けるための取付穴およびシール部の図示は省略してある。
【0018】
曲面部23は、ボール循環R部7を通るボール5の最外側を結んだ曲面とされており、エンドキャップ20の開口端側の内径がナット本体6aのボール循環穴8の最外径ds(図10参照)に一致するようになっている。
そして、両ねじ溝2,4間からボール循環R部7に導かれたボール5は、図3に示すように、ナット本体6aの端面に形成されたガイド溝10と、エンドキャップ20の内面(平面)22,23との間で拘束されながらボール循環R部7を通過してボール循環穴8に戻される。ナット本体6a側のガイド溝10の深さはボール5の径の0.4倍以上あれば十分であるが、ボール循環穴8の付近では若干深くするのが好ましい。実用上、ナット本体6a側のガイド溝10の深さはボール5の径の0.4倍〜1.2倍まであればよい。
【0019】
なお、ボール循環R部7およびボール循環穴8はボール5の径に対してある程度のすきまを持って設計するのは言うまでもないが、通常、ボール5の径の1.25倍以下が適当である。
また、エンドキャップ20の挿通穴21の内径はボール中心円径dm(図10参照)より小さく、且つ、ねじ軸3の外径より大きくされており、エンドキャップ20の平坦面22はねじ軸3の軸線に対して直交する方向に沿って配置されている。但し、平坦面22は、リード角によってはすくい上げる角度(図8(b)に示されるリード角とα°傾いた面)と平行になるようにしてもよい。
【0020】
したがって、両ねじ溝2,4間を転動しつつ移動するボール5は、図4に示すように、その進行方向の先頭部が平坦面22(図では単に板部材として表示している。)に対してねじ軸3のリード角θを持って該平坦面22に当たり、その後、平坦面22を径方向外方にせり上がってねじ軸3の外径部まで一旦すくい上げられ、次いで、上述したようにボール循環R部7を通ってボール循環穴8に戻される。
【0021】
なお、平坦面22とボール5の進行方向とのなす角度は必ずしもリード角θにする必要はなく、リード角θとしない場合は、平坦面22はねじ軸3の直角面に対してある角度を持つことになる。また、挿通穴21の内径をボール中心円径dmより小さくできない場合は、従来と同様にタングをねじ溝2に張り出させて、ねじ軸3の外径部より内側でボール5をすくい上げるようにしてもよい。更に、エンドキャップ20に強度が必要な場合には、熱処理によって硬さの改善を図るようにしてもよく、また、ねじ軸3を転造軸としてもよい。
【0022】
このようにこの実施の形態では、タング12およびガイド溝11をなくした構造のエンドキャップ20としているので、従来のようにタング12とガイド溝12との位置ずれ等を考慮しなくて済み、この結果、ボール循環R部7内でのボール5のスムースな循環移動を確保することができ、ボールねじ装置の作動性の向上および低騒音化を図ることができる。
【0023】
また、エンドキャップ20のナット本体6aの端面に対向する側の面形状が全周にわたって同一とされ、且つ、タング12およびガイド溝11をなくした構造であるため、エンドキャップ20をナット本体6aの端面に固定する際に、該エンドキャップ20の周方向の位相、即ち、ナット本体6a側のガイド溝10との位置合わせを考慮しなくて済み、この結果、エンドキャップ20のナット本体6aの端面への取り付け作業の容易化を図ることができると共に、ボール循環経路9内に段差ができにくくなって、ボール通過音が抑制されて低騒音化を図ることができ、しかも、段差通過時のボール5へのダメージが少ないため、ボール5の長寿命化も期待することができる。
【0024】
更に、エンドキャップ20の構造を簡単なものにすることができることから、金属材料の機械加工品や成形品でも低コスト化を達成でき、しかも、材料の選択自由度が増すため、ねじ軸3の軸径やリードなど多くの仕様に柔軟に適応することができるととに、耐熱性および耐薬品性や軽度の衝突に対しても良好に対応することができる。
【0025】
更に、エンドキャップ20にはねじ軸3のねじ溝2に張り出すタング12がないため、該ねじ溝2を切り上げても組み立てが可能になってねじ軸2の外径部の端面を広くとることができ、この結果、中空冷却用の液体循環のためのオイルシールや、防塵用のシールをねじ軸3の外径面に当てて利用することが可能になると共に、工作機械向けのボールねじ装置等における支持軸受の肩を当てる面積(ねじ軸3の外径部の端面の面積)を広くとれるため、軸受のサイズアップにも対応することができる。
【0026】
更に、エンドキャップ式のボールねじ装置では、ねじ軸3のリード角が比較的大きいため、タング12を介してボール5をすくい上げる場合は、すくい上げられた後にボール循環R部7を経てボール循環穴8にボール5が入るまでの角度変化が大きく、換言すれば、3次元的に小さいRで曲げられながらボール5が通過することになる。
【0027】
このため、ボール5の運動ロスによりボールねじ装置の作動性が悪化する原因になるが、この実施の形態では、ボール5がエンドキャップ20の平坦面22に当たった後に該平坦面22を径方向外方にせり上がってねじ軸3の外径部まで一旦すくい上げられてから、ボール循環R部7を経てボール循環穴8に導入されるため、タング12を介してボール5をすくい上げる場合に比べて、ボール循環R部7のRを大きくとることができ、この結果、ボールねじ装置の作動性の向上を図ることができると共に、低騒音化にも貢献することができる。
【0028】
なお、本発明のボールねじ装置は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、通常、エンドキャップ式ボールねじ装置のねじ軸のねじ溝直角断面形状においては、ねじ溝面とねじ軸外径面との間の面取りがC面取りになっているが、図6に示すように、ねじ軸3のねじ溝2をゴシックアーチ溝とし、且つこのねじ溝2の直角断面形状において、該ねじ溝2面とねじ軸3の外径面との間を両方の面に接するようにR面取り30(後述するR面取り40との比較のために誇張して描いている)でつなぐことにより、ボールねじ装置の高速運転時における耐久性(耐荷重性)の向上を図ることができる。
【0029】
詳述すると、チューブ循環式のボールねじ装置では、高速化に対応するために、図5に示すように、ねじ溝直角断面形状において、該ねじ溝面とねじ軸の外径面との間をR面取り40でつなぎ、且つR面取り40のR寸法の大きさをできるだけ大きくしてねじ溝面側だけ接線で接続した形状が用いられている。これにより、ボールが負荷圏からねじ溝にぷつかる時の応力集中を防いでいる。
【0030】
また、本発明のエンドキャップ式ボールねじ装置と同様にボールがねじ軸の外径面を乗り越えるタイプのコマ式のボールねじ装置では、ねじ溝直角断面形状において、該ねじ溝面とねじ軸の外径面との間の面取りをR面取りとし、しかも、ねじ溝面およびねじ軸外径面の両方の面で接線でつなぐようにしている。
次に、上記実施の形態のエンドキャップ式ボールねじ装置において、ねじ軸3のねじ溝直角断面形状を図5(チューブ式ボールねじ装置)に示す形状、即ち、ねじ溝面とねじ軸の外径面との間をR面取り40でつなぎ、且つ該R面取り40をねじ溝面側だけ接線で接続した形状として低速から高速まで回転速度を変えて耐久試験を行った結果の一例をあげる。
【0031】
試験条件は次の通りである。
呼び番:NSKボールねじ40×40×1000−C5(ボール径7/32インチ)
予圧方式:オーバーサイズ予圧
回路数:2.5巻 2列
試験機名:日本精工株式会社製、ボールねじ耐久寿命試験機
予圧荷重:500N
試験荷重:アキシヤル荷重=なし
加減速度:2G
回転速度:1000min-1、2000min-1、5000min-1
ストローク:5 00mm
試験距離:2000km
潤滑グリース:アルバニアNo.2(昭和シェル石油)
低速1000min-1程度ではねじ軸に剥離は全く発生しない。2000min-1を超えるとねじ軸のねじ溝R面取り部40とねじ軸外径面との境部(図5のB側)の数箇所に剥離が発生する割合が増え、5000min-1の高速ではB側の略全域に剥離が発生した。
【0032】
このときの剥離の状況を図9に示す。このような剥離の原因は、ボール(鋼球)が循環する過程でねじ溝を競り上がるときに、図7に示すように、R面取り部40のねじ軸外径面側のエッジと点接触となり、面圧の上昇、すべり発生により、剥離が促進されるものと考えられる。
以上から、この試験では、R面取り部40が接線でつながれていないねじ軸外径面のB側だけで剥離が発生し、R面取り部40が接線でつながれているねじ溝面のA側には全く剥離の心配が無いことが判った。このことより、循環経路としてねじ軸外径面を使用した場合のねじ溝直角断面形状としては、図6に示すように、ねじ溝2面とねじ軸3の外径面との間を両方の面に接するようにR面取り30でつないだ溝形状が有効であることが判る。
【0033】
以上の内容は現在使用されているコマ式ボールねじ装置のねじ溝直角断面形状と同様にすればいいということであるが、このコマ式のR面取り場合、ねじ溝面とねじ軸の外径面との両方の面を接線でつなぐと、R寸法が小さくなってボールが小さなRで循環するようになり、作動性などの面で必ずしも良いとはいえない。また、R面取りのR寸法を大きくすると、負荷を受けるねじ溝部が小さくなり、負荷を受けた場合に、ボールとねじ溝の接触楕円がR面取り部と干渉して大荷重に対応できなくなるといった問題がある。
【0034】
図8にチューブ式(図8(a))、エンドキャップ式(図8(b))及びコマ式(図8(c))のそれぞれの循環方式のすくい上げ部付近のボールの動きを示した。図8(c)に示すコマ式の場合、負荷圏のボール数を増やすためには、無負荷圏のボール数をできるだけ少なくしなければならず、従って、急激にボールをすくい上げることになって、ボールは、図7に示すねじ溝直角断面形状を競り上がるのに近い状態となる。
【0035】
これに対し、本発明のエンドキャップ式ボールねじ装置の場合は、ボールをねじ溝からすくい上げる角度(ねじ軸のねじ溝の方向と該ねじ溝を前記ボールが軸外径側に競り上がる方向とのなす角度)α(図8(b)参照)を任意に設定できるので、R面取り30のR寸法とすくい上げる角度αを適当にとることで、実質的(三次元的)にR面取り30のR寸法を大きくとることができ、これにより、、高速性と耐荷重性の両立を図ることができる。即ち、すくい上げる角度αを任意にとってもナット本体6a側のボール循環穴8の位相調整するだけで、循環が成り立つためである。
【0036】
そして、この角度αがねじ溝方向に対して45°以下であれば、ねじ溝直角断面のR面取り部30の曲率半径がボール5の半径の1 5 〜45%と小さくても、ボール5が通過する見かけの面取りRは充分大きくとれるため、R面取り部30での剥離を防止できる。また、αが5°以上であれば、軸の外周に半周程度までで、ボールを軸溝から外径部までせり上げることができるので、提案するすくい上げを実現することができる。
【0037】
【発明の効果】
上記の説明から明らかなように、請求項1の発明によれば、低コストで且つ簡単な構造のエンドキャップとすることができ、しかも、ねじ軸の軸径やリード等の多くの仕様にも柔軟に適応することができると共に、耐熱性、耐薬品性および軽度の衝突に対しても良好に対応することができ、さらには、良好な作動性を確保することができると共に、低騒音化を図ることができるという効果が得られる。
【0038】
請求項2の発明では、請求項1の発明に加えて、ナット本体側のガイド溝との位置合わせを考慮しなくて済むため、エンドキャップのナット本体の端面への取り付け作業の容易化を図ることができると共に、ボール循環経路内に段差ができにくくなって、ボール通過音が抑制されて低騒音化を図ることができ、しかも、段差通過時のボールへのダメージが少ないため、ボールの長寿命化も期待することができるという効果が得られる。
【0039】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明に加えて、ねじ軸の外径部の端面を広くとることができるため、中空冷却用の液体循環のためのオイルシールや防塵用のシール等をねじ軸の外径面に当てて利用することが可能になると共に、工作機械向けのボールねじ装置等における支持軸受の肩を当てる面積を広くとれるため、軸受のサイズアップにも対応することができ、更には、タングを介してボールをすくい上げる場合に比べて、ボール循環R部のRを大きくとることができるため、ボールねじ装置の作動性の向上を図ることができると共に、低騒音化にも貢献することができるという効果が得られる。
【0040】
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれか一項の発明に加えて、ボール循環R部内でのボールの保持を良好なものにすることができるという効果が得られる。
請求項5〜7の発明では、請求項1〜3のいずれか一項の発明に加えて、ボールねじ装置の高速運転時における耐久性(耐荷重性)の向上を図ることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例であるボールねじ装置に用いられるエンドキャップの概略断面図である。
【図2】図1の左側面図である。
【図3】循環経路でのボールの拘束状態を説明するための説明的断面図である。
【図4】ボールがボール循環R部側にすくい上げられる状態を説明するための説明図であり、(a)は軸方向から見た図、(b)は(a)の軸線を横方向からリード角を傾けて見た図である。
【図5】チューブ循環式ボールねじ装置におけるねじ軸のねじ溝溝直角断面形状を示す図である。
【図6】本発明の他の実施の形態であるボールねじ装置のねじ軸のねじ溝直角断面形状を示す図である。
【図7】図5のねじ溝をボールが軸外径側に競り上がる様子を示す図である。
【図8】各循環方式におけるボールすくい上げ部付近のボールの動きを説明するための説明図であり、(a)はチューブ式、(b)はエンドキャップ式、(c)はコマ式である。
【図9】図5のB位置付近の剥離状況を説明するための拡大写真である。
【図10】従来のボールねじ装置を説明するための説明的断面図である。
【図11】従来のボール循環R部を説明するための説明的断面図である。
【図12】ボールがタングを介してボール循環R部側にすくい上げられる状態を説明するための説明図であり、(a)は横から見た図、(b)は(a)の上から見た図である。
【図13】従来のエンドキャップを示す図である。
【図14】図13の左側面図である。
【符号の説明】
2…ねじ溝
3…ねじ軸
4…ねじ溝
5…ボール
6…ボールナット
6a…ナット本体
7…ボール循環R部
8…ボール循環穴
10…ナット本体側のガイド溝
20…エンドキャップ
21…挿通穴
30…R面取り部
dm…ボール中心円径

Claims (6)

  1. 外周面に螺旋状のねじ溝を有するねじ軸と、該ねじ軸のねじ溝に対応するねじ溝を内周面に有して前記ねじ軸に遊嵌されるボールナットと、前記両ねじ溝間に転動可能に配置された多数のボールとを具備し、前記ボールナットは、軸方向に貫通するボール循環穴を有するナット本体と、該ナット本体の両端部にそれぞれ固定され、前記ナット本体の端面との間に前記ボール循環穴と前記両ねじ溝間とを連通するボール循環R部を形成するエンドキャップとを備えたボールねじ装置であって、
    前記エンドキャップの前記ナット本体の端面に対向する側の断面形状を全周にわたって略同一にし、
    前記ナット本体の前記エンドキャップと対向する端面側のみに設けられた前記ボールのガイド溝と、そのガイド溝を通る前記ボールの最外側に沿う前記エンドキャップの内面とによって前記ボール循環R部を構成し、前記エンドキャップの開口端側の内径が前記ナット本体のボール循環穴の最外径に一致することを特徴とするボールねじ装置。
  2. 前記エンドキャップの前記ねじ軸が挿通する穴の内径をボール中心円径より小さく、且つ、前記ねじ軸の外径より大きくしたことを特徴とする請求項1に記載のボールねじ装置。
  3. 前記ナット本体の端面に設けられたガイド溝の深さを前記ボールの直径の40%以上としたことを特徴とする請求項1又は2に記載のボールねじ装置。
  4. 前記ねじ軸のねじ溝がゴシックアーチ溝とされ、且つ前記ねじ溝の直角断面形状において、該ねじ溝面と前記ねじ軸の外径面との間を両方の面に接するようにR面取りでつないだことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のボールねじ装置。
  5. 前記ねじ軸のねじ溝の方向と該ねじ溝を前記ボールが軸外径側に競り上がる方向とのなす角度を5〜45°としたことを特徴とする請求項4に記載のボールねじ装置。
  6. 前記R面取り部の曲率半径を前記ボールの半径の15〜45%にしたことを特徴とする請求項5に記載のボールねじ装置。
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