JP4288633B2 - 超硬合金製複合ロール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄帯板、板材、線材、棒材などの鋼材の圧延に用いられ、靭性に優れる材料からなる内層材の外周に、炭化タングステン(WC)系超硬合金からなる外層材が金属接合された超硬合金製複合ロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
寸法精度の向上、表面疵の減少、表面光沢度の向上など圧延材に対する高品質化の要求に応えるために、耐摩耗性、耐肌荒れ性等に優れたWC系超硬合金が線材、棒鋼、平鋼などの圧延用ロールに適用されている。WC系超硬合金は公知のごとく、WCをCo、Ni、Feなどの金属元素で結合した焼結合金であり、WCの他にTi、Ta、Nbなどの炭化物を含有することもしばしばある。
【0003】
例えば、特公昭58−39906号には、WC−Co−Ni−CrのWC系超硬合金で構成した線材圧延用ロールが記載されている。この線材圧延用ロールは、超硬合金単体を焼結した小型のスリーブロールであり、靭性に優れた鋼製のロール軸材に0.1/1000程度の焼嵌め率で嵌合し、そのスリーブロールの側面を固定リング、スぺーサーリングなどにより押圧固定して機械的に組立てたものである。この種の超硬合金製スリーブロールの寸法は、外径が100〜500mm、回転軸方向の長さが10〜300mm程度の比較的短尺なものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記のような超硬合金製スリーブをロール軸材に嵌合したロールの場合、固定リング、スぺーサーリングなど多くの部材が必要で組立て構造が複雑であり、かつ高い組立て精度を要求されるので組立に係わる工数や費用がかかるという問題がある。また、ロール胴部長さに対して、超硬合金の占める部分つまり圧延に使用できる部分が半分以下であり効率的でない問題がある。
【0005】
さらに、超硬合金は熱伝導率が高いため、圧延使用時に超硬合金の温度が上昇しやすく、その熱が鋼製のロール軸材に伝わりやすく、ロール軸材が大きく膨張する。そこで、超硬合金の熱膨張係数は鋼より小さいので、超硬合金製スリーブには半径方向および軸方向に引張り応力が付与される。焼嵌め時の締め代が大きい場合、半径方向の引張り応力が高くなり過ぎると、超硬合金製スリーブの内面から割れを引き起こすおそれがある。また、逆にこのような割れを懸念するあまり焼嵌め時の締め代が小さい場合、圧延中に超硬合金製スリーブが滑るおそれがある。
【0006】
また、超硬合金単体では、焼結時に自重の影響により成形体に大きな変形が生じやすいため大型長尺のスリーブロールが製造できない問題がある。
【0007】
これらの問題を解決するものとして、例えば特願平8−158658号の超硬合金製複合ロールが提案されている。これは鋼材からなる内層材を形成するスリーブの外周に、周期律表のIVa〜VIa族元素の炭化物、窒化物および炭窒化物の硬質粒子の少なくとも1種または2種以上を60〜90重量%と、残部実質的にFe、Ni、Co、Cr、Mo及びWの少なくとも1種または2種以上の金属粉末とからなる混合粉末を焼結すると同時に拡散接合させた超硬合金製の外層材を有し、外層材表面に100MPa以上の円周方向の圧縮残留応力を付与した複合スリーブを、ロール軸材に嵌合固定したものである。
【0008】
このような超硬合金製複合ロールは、内層材の靭性が高いので、スリーブ全長を焼嵌めによりロール軸材に固定でき簡単な構造となる。また、ロール胴部長さの全表面を外層材で構成するため圧延に使用できる部分を拡大できる。そのため、ロール交換の頻度が少なくなり圧延の停止時間を短くすることができる。
【0009】
また、熱膨張係数の異なる内層材と外層材を金属接合することにより、外層材表面に圧縮残留応力を付与することができる。その結果、超硬合金単体ロールに比べ圧延時に発生するヒートクラックの進展を抑え、ロール改削量の軽減を図ることができる。また、圧延時に例えば1mm程度の大きなクラックが発生した場合でも、圧縮残留応力によりクラックの内部への進展を防ぐことができる。
【0010】
このように内層材の外周に超硬合金の外層材を金属接合させた超硬合金製複合ロールは多くの利点を有するが、外層材に圧縮残留応力を付与するとそれに概ね比例する大きさの半径方向引張り残留応力が生じるため、内層材と超硬合金の外層材との接合信頼性をさらに高める必要があり、本発明はこれに応えることを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の超硬合金製複合ロールは、靭性に優れる材料からなる内層材の外周に、炭化タングステン(WC)系超硬合金からなる外層材が金属接合された超硬合金製複合ロールにおいて、外層材の内側にWC粒子の含有量が外層材のそれより少ない、WC系超硬合金の中間層を少なくとも1層以上有し、内層材と中間層とが金属層を介してHIP処理により接合されて、JIS R1601に準拠した抗折試験において、内層材、金属層、中間層および外層材を含む境界接合部の抗折試験片の抗折強度が600MPa以上であることを特徴とする。
【0012】
本発明の超硬合金製複合ロールにおいて、外層材のWC粒子の含有量が60重量%以上であり、各々の中間層は内層材に近い内側ほどWC粒子の含有量が少ないことを特徴とする。外層材および中間層のWC粒子の平均粒径は10μm以下が好ましい。また、中間層はWCを除いたWおよび他元素を含む複炭化物粒子を10重量%以下に抑えることが望ましい。さらに、中間層全体の半径方向の厚みは外層材の半径方向の厚みより小さいほうがよい。
【0013】
金属層が炭化物非形成元素を主成分とする、なかでもCoまたはNiを50重量%以上含有することが望ましい。また、金属層の厚みが10〜1000μmであるのが望ましい。ただし、1000μmを超えても本発明の所定の抗折強度を満足していれば差し支えない。
【0014】
また、JIS R1601に準拠した抗折試験において、境界接合部を含む抗折試験片の抗折強度が600MPa以上であることを特徴とする。より好ましくは、800MPa以上である。
【0015】
また、内層材または外層材の接合面に凹凸を設けることがよく、その凹凸は高さが10μm以上、ピッチが10μm以上であることが好ましい。
【0016】
【作用】
超硬合金の外層材と内層材の中間にWC粒子の含有量が外層材のそれより少ない、WC系超硬合金の中間層を少なくとも1層以上設け、外層材から内層材に向かい傾斜的なWCの組成とする。つまり、熱膨張率、硬度、弾性係数の物性値が外層材から内層材に向けて連続的に変化する。その効果として、境界接合部の強度が向上し、境界接合部近傍でのロール円周・軸方向の尖頭残留応力が低減できる。
【0017】
超硬合金の外層材と炭素(C)を含有する鋼製などの内層材とを金属接合する際に、外層材から内層材へCの拡散が起こる。その結果、外層材と内層材の接合部近傍の超硬合金のWCが複炭化物(W、Co) 6 Cに変わる。この複炭化物は、WCと比べて脆く境界接合部の強度を下げる要因となる。そこで、境界接合部にCo、Niなどの炭化物非形成元素からなる金属層を設けることにより、前記のCの拡散を抑えることができ、Co、Niは超硬合金の外層材にも含まれる元素であるから、外層材との親和性が良く接合強度を高めることができる。金属層の厚みが10〜1000μmではその効果が十分にある。ただし、境界接合部全体に亘って金属層の厚みを均一にすることは難しく、一部の境界接合部では10μm未満になることもある。また、1000μmを超えても本発明の所定の抗折強度を得ることができる場合にはこの限りでない。
【0018】
内層材または外層材の外表面に、予め螺旋状のネジ加工などを施して凹凸を設けることにより、接合部の表面積が大きくなり、境界接合部の強度が向上するとともに、仮にその部分をき裂が伝播しても凹凸に沿ってき裂が分岐するため伝播を阻止したり遅くしたりする効果がある。この凹凸は、円周方向や回転軸方向に溝加工を施して形成してもよい。この凹凸は微細過ぎると効果が十分でなくなるので、凹凸の高さ(深さ)が10μm以上、隣り合う凹間もしくは凸間のピッチが10μm以上であることが好ましい。
【0019】
以上の構成により、超硬合金製複合ロールに表面圧縮応力を付与したときに発生する境界接合部の半径方向の残留応力に耐えることができ、また圧延使用時の境界接合部からの剥離に対する安全率を高めることができる。
【0020】
本発明の超硬合金製複合ロールにおいて、WC系超硬合金からなる外層材は圧延用途に応じて、WC粒子の含有量を60〜95重量%、WC粒子の平均粒径は1〜10μmの範囲で適宜設定する。外層材のロール軸方向長さ(ロール胴部長さ)が250mm以上であれば、圧延に使用できる部分が拡大できるので望ましい。また、内層材は靭性に優れる鋼材もしくは鋳鉄材が好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
外径300mm、内径180mm、長さ700mmの中空円筒状のSNCM439鋼製内層材を準備した。内層材の外周面を旋盤で螺旋状にネジ加工を施して、高さが約1mm、ピッチが約1mmの凹凸を設けた。また、金属層を形成させるために、内層材に設けた凹凸面にNiめっきを施した。
【0022】
また、各々平均粒径が6μmのWC粉末、1μmのCo粉末、1μmのNi粉末、1μmのCr粉末を用意し、重量%でWC85%、Co9.3%、Ni4.7%、Cr1%の割合で配合し、ボールミルで20時間湿式混合した後、乾燥し、超硬合金の素材となる混合粉末を準備した。これを外層材用の混合粉末とした。
【0023】
また、各々平均粒径が5μmのWC粉末、1μmのCo粉末を用意し、重量%でWC50%、Co50%の割合で配合し、ボールミルで20時間湿式混合した後、乾燥し、超硬合金の素材となる混合粉末を準備した。これを中間層用の混合粉末とした。
【0024】
次いで、前記の鋼製内層材の外周から約1.5mm離れた外側に、中間層形成用の環状の仕切り材を設ける。そして、仕切り材の外側に外層材用の混合粉末を充填し、仕切り材の内側(内層材の外面と仕切り材の内面との間に形成された空隙)に中間層用の混合粉末を充填した後、仕切り材を取り外し、キャンニングして、脱気処理、封着した後、1320℃、100MPa、2時間で熱間等方圧(HIP)処理を行った。その後、冷却しHIP炉から取り出した後、機械加工によりHIP処理用カプセルを除去し、所定寸法に仕上げ加工を施し本発明の超硬合金製複合ロールを得た。
【0025】
この超硬合金製複合ロールを超音波探傷法により検査をしたところ境界接合部からの反射はほぼ一定で溶着不良がないことを確認した。また、本発明ロールの端部よりリング状のテストピースを切り出し組識調査したところ、内層材の凹凸面にあたる境界接合部に約100μm厚みのNiを主成分とする金属層が形成されており、金属層中の複炭化物(W、Co) 6 Cは1面積%未満であった。また、内層材と金属層との間には約1.5mm厚みの中間層が形成されていた。
【0026】
また、境界接合部の強度を測定するために、JIS R1601に準拠した抗折試験を行った。ロール直径方向に、内層材、金属層、中間層および外層材を含む境界接合部の抗折試験片を切り出し試験をしたところ、抗折強度が平均で1220MPaであった。
【0027】
(比較例1)
比較例1として、内層材の外周面が平滑であり、金属層を形成させるNiめっきを内層材に施さないで、他は実施例1同様に中間層を形成させた超硬合金製複合ロールを作製した。比較例1のロールの端部よりリング状のテストピースを切り出し組識を鏡面研磨したところ、中間層内に外層材に含まれるWCとは色が異なり、かつ数10μmに成長した炭化物が確認された。村上氏液で腐食すると黒色になり組成の異なる複炭化物であることが判った。複炭化物は中間層内に10〜20面積%見られた。また、ロール直径方向に、内層材、中間層および外層材を含む境界接合部の抗折試験片を切り出し、JIS R1601に準拠して抗折試験を行ったところ、抗折強度が380MPaと低いものであった。
【0028】
(実施例2)
各々平均粒径が7μmのWC粉末、1μmのCo粉末、1μmのNi粉末、1μmのCr粉末を用意し、重量%でWC85%、Co9.3%、Ni4.7%、Cr1%の割合で配合し、ボールミルで20時間湿式混合した後、乾燥し、超硬合金の素材となる混合粉末を準備した。これを外層材用の混合粉末とした。
【0029】
そして、外層材用の混合粉末を冷間等方圧(CIP)により圧力1ton/cm2で圧粉成形し、外径430mm、内径300mm、長さ200mmの中空円筒状の圧粉成形体を得た。この圧粉成形体を真空炉で加熱し、800℃、1時間で仮焼結し、スリーブ状の仮焼結体を得た。同様に複数個のスリーブ状の仮焼結体を作製した。
【0030】
また、各々平均粒径が5μmのWC粉末、1μmのCo粉末を用意し、重量%でWC60%、Co40%の割合で配合し、ボールミルで20時間湿式混合した後、乾燥し、超硬合金の素材となる混合粉末を準備した。これを中間層用の混合粉末とした。
【0031】
次いで、外径300mm、内径180mm、長さ700mmの中空円筒状の鋼製内層材(重量%でC0.4%、Si0.2%、Mn0.8%、Ni1.8%、Cr0.6%、Mo0.3%を含有する鋼材)の外周に、内面に高さが約0.1mm、ピッチが約0.3mmの凹凸をネジ加工により設けた前記複数個のスリーブ状の仮焼結体を同軸的に長尺に積み重ねた状態でセットし、内層材の外面と積み重ねたスリーブ状の仮焼結体の内面との間に形成された空隙に前記の中間層用の混合粉末を充填した後、これをキャンニングして、脱気処理、封着した後、1300℃、100MPa、2時間でHIP処理を行った。その後、冷却しHIP炉から取り出した後、機械加工によりHIP処理用カプセルを除去し、内層材と複数個のスリーブ状の仮焼結体が複合一体化された本発明の超硬合金製複合ロールを得た。
【0032】
(実施例3)
実施例1と同様の手法により得られた本発明の超硬合金製複合ロールを、鋼からなるロール軸材の外周に焼嵌めて固定し、熱間線材圧延中間スタンド用ロールを作製した。従来から使用されているこの種のロールは、例えば超硬合金製スリーブ2個をロール軸材に焼嵌めた組立式ロールであり、圧延できる部分が約200〜250mmであった。これに対し、本発明のロールは圧延できる部分が500mmと拡大できた。その結果、ロール替えの頻度が従来の半分になった。また、境界接合部の強度が高いことから、外層材と内層材の収縮差により発生する半径方向の残留応力、焼嵌め応力に加えて、圧延時に発生する圧延応力、熱応力にも十分耐えることができた。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、内層材と超硬合金の外層材との接合信頼性を高めることができ、さらに苛酷な圧延用途にも適用拡大できる。
Claims (10)
- 靭性に優れる材料からなる内層材の外周に、炭化タングステン(WC)系超硬合金からなる外層材が金属接合された超硬合金製複合ロールにおいて、外層材の内側にWC粒子の含有量が外層材のそれより少ない、WC系超硬合金の中間層を少なくとも1層以上有し、内層材と中間層とが金属層を介してHIP処理により接合されて、JIS R1601に準拠した抗折試験において、内層材、金属層、中間層および外層材を含む境界接合部の抗折試験片の抗折強度が600MPa以上であることを特徴とする超硬合金製複合ロール。
- 外層材のWC粒子の含有量が60重量%以上であり、各々の中間層は内層材に近い内側ほどWC粒子の含有量が少ないことを特徴とする請求項1に記載の超硬合金製複合ロール。
- 外層材および中間層のWC粒子の平均粒径が10μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の超硬合金製複合ロール。
- 中間層はWCを除いたWおよび他元素を含む複炭化物粒子を10重量%以下含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の超硬合金製複合ロール。
- 中間層全体の半径方向の厚みが外層材のそれより小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の超硬合金製複合ロール。
- 金属層が炭化物非形成元素を主成分とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の超硬合金製複合ロール。
- 金属層がCoまたはNiを50重量%以上含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の超硬合金製複合ロール。
- 内層材または外層材の接合面に凹凸を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の超硬合金製複合ロール。
- 接合面の凹凸は高さが10μm以上、ピッチが10μm以上であることを特徴とする請求項8に記載の超硬合金製複合ロール。
- 外層材のロール軸方向長さが250mm以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の超硬合金製複合ロール。
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