JP4284802B2 - 4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、グリセリンとカーボネートから4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを製造する方法に関する。更に詳しくは、本発明は、グリセリンとカーボネートから4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを収率よく生成させ、そして、損失を抑えながら該化合物を回収して不純物含量の少ない高純度の目的物を得る方法に関する。
【0002】
4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンはポリヒドロキシウレタンの原料モノマーとして有用であり、その他、種々の機能性材料の原料や医農薬の中間体としての利用も期待できるものである。更に、この化合物自身及びその水酸基のアクリル酸エステル化誘導体などは耐酸性のコーティング剤としても利用される。
【0003】
【従来の技術】
グリセリンとカーボネートから4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを製造する方法としては、米国特許第5091543号明細書に、グリセリンとジアルキル(又はジアリール、ジアラルキル)カーボネートを、アルキルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、3級アミン、又は塩基性イオン交換樹脂の存在下で反応させる方法が開示されている。しかし、この方法では、目的物(4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)の損失(グリシドールへの分解)を抑えながら容易に(温和な条件で)目的物を回収できる方法は記載されておらず、高純度の目的物を効率よく得ることが困難であった。
【0004】
Synthesis(1992),(4),350−2には、グリセリンとジエチルカーボネートを苛性ソーダの存在下で反応させ、反応後にリン酸で反応液のpHを3に調整し、次いで、濃縮、結晶化、シリカゲルクロマトグラフィー、及び減圧乾燥を行って目的物を得る方法が開示されている。しかし、この方法は目的物の回収法が煩雑で工業的に好ましいものではなく、得られる目的物の純度も満足できるものではなかった。
【0005】
米国特許第2915529号明細書には、グリセリンとエチレンカーボネートをアルカリ化合物の存在下で反応させ、反応後に反応液のpHを2.5〜6に調整し、次いで、蒸留操作を0.1〜0.2mmHgという高減圧下で行って目的物を得る方法が開示されている。しかし、この方法も、目的物の損失を抑えながら温和な条件で容易に目的物を回収できるものではなく、高純度の目的物を効率よく得ることが困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、グリセリンとカーボネートから高純度の4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを容易に製造できる方法に関する。即ち、本発明は、グリセリンとカーボネートを反応させて4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを製造する方法において、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを高収率で生成させ、そして、損失を抑えながら該化合物を容易に(温和な条件で)回収して不純物含量の少ない高純度の目的物を効率よく得ることができる方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、(1)原料カーボネートとして、そのアルキル基の炭素数が1〜6であるジアルキルカーボネート又はそのアルキレン基の炭素数が2〜3であるアルキレンカーボネートを用い、グリセリンと該カーボネートを、塩基触媒の存在下、生成するアルキルアルコール又はアルキレングリコールを抜き出しながら反応させて、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを生成させ、(2)その反応液のpHを弱酸性に調整し、(3)薄膜式蒸発器を用いて加熱温度180〜220℃で蒸発操作を行って、そのpH調整液から4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを回収することを特徴とする4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造法により解決される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる原料カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート等のそのアルキル基の炭素数が1〜6であるジアルキルカーボネートや、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のそのアルキレン基の炭素数が2〜3であるアルキレンカーボネートが挙げられる。
【0009】
原料カーボネートの中では、前記ジアルキルカーボネートが好ましい。その中では、アルキル基の炭素数が1〜4であるジアルキルカーボネートが好ましいが、中でもジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートが更に好ましく、ジメチルカーボネートが特に好ましい。
【0010】
本発明で用いられるグリセリンは公知の方法で製造されたものであれば、特に制限されない。グリセリンと原料カーボネートの使用割合は、グリセリン1モルに対して、原料カーボネートが0.5〜5モル、更には1.0〜1.8モル、特に1.4〜1.6モルであることが好ましい。
【0011】
本発明で用いられる塩基触媒としては、塩基性のアリカリ金属化合物が好ましく挙げられる。塩基性のアリカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属の炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、アルカリ金属のアルコラート(ナトリウムメチラート、カリウムメチラート等の炭素数1〜4のアルカリ金属アルキルアルコラート、ナトリウムフェノラート、カリウムフェノラート等の炭素数6〜8のアルカリ金属アリールアルコラート)などが挙げられる。これらの中では、アルカリ金属の炭酸塩が好ましく、中でも炭酸カリウムが更に好ましい。
塩基触媒は、グリセリンに対して、0.001〜100モル%、更には0.05〜0.5モル%用いることが好ましい。
【0012】
なお、塩基触媒としては、生成するアルキルアルコール又はアルキレングリコールを抜き出す際に触媒自身が反応系外に抜き出されないものであれば、有機塩基も用いることができる。このような有機塩基として、例えば、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、スパルタイン等の3級アミンや、4−メチルアミノピリジン等のピリジン類などの、アルキルアルコール又はアルキレングリコールを抜き出す際に反応系外に抜き出されないものが、原料カーボネート(即ち、生成するアルキルアルコール又はアルキレングリコール)に対応して用いられる。
【0013】
グリセリンとカーボネートとの反応は、例えば、蒸留装置を備えた反応器に、グリセリン、原料カーボネート、及び塩基触媒を所定量入れ、必要に応じて反応液を全還流させた後、目的物と共に生成するアルキルアルコール又はアルキレングリコール(原料カーボネートに由来する)を蒸留により抜き出しながら行われる。このとき、反応温度は70〜180℃、更には70〜150℃、特に80〜120℃であることが好ましい。反応圧力は特に制限されず、通常は常圧で充分である。反応雰囲気は乾燥雰囲気であることが好ましい。
【0014】
前記反応は回分式又は連続式で行うことができる。そのとき、原料混合物(グリセリン、原料カーボネート、塩基触媒を含む)は、その少なくとも一成分が反応器に分割して供給されても連続して供給されても差し支えない。なお、原料カーボネートとして、ジメチルカーボネートを用いる場合、アルキルアルコール(メタノール)はジメチルカーボネートとの共沸混合物として除去されるので、必要に応じてジメチルカーボネートを反応器に補給してもよい。
【0015】
反応器に導入される原料混合物(グリセリン、原料カーボネート、塩基触媒を含む)中には水分が含有されるが、その水分濃度は、1000ppm以下、更には500ppm以下に制御されていることが好ましい。即ち、グリセリン、原料カーボネート、塩基触媒を含み、かつ水分濃度が1000ppm以下、更には500ppm以下である原料混合物を用いて、グリセリンと原料カーボネートを反応させることが好ましい。なお、原料混合物が反応器に分割又は連続して供給される場合も、原料混合物の少なくとも一成分が、反応器に導入された原料混合物中の水分濃度が前記範囲に制御されるように供給される。
【0016】
前記の水分濃度の制御は、乾燥(脱水)、蒸留などの方法で原料混合物から水分を除去することにより行われる。この処理は、水分濃度が好適な範囲となるならば、単独で行っても組合せて行ってもよく、原料混合物の成分について一成分ごとに行ってもよく、二成分と一成分を別個に行っても、原料混合物全体について行ってもよい。
【0017】
原料カーボネートやグリセリンの乾燥(脱水)は、モレキュラーシーブ、硫酸マグネシウム、ドライアライト等により行われ、塩基触媒の乾燥(脱水)は、加熱乾燥(乾燥ガス流通下又は減圧下)、減圧乾燥等により行われる。原料混合物全体を乾燥(脱水)する場合、アルコラート(特にアルカリ金属のアルコラート)を用いて行うこともできる。
【0018】
原料カーボネートやグリセリンから蒸留で水分を除去する場合、蒸留は常法により行われる。この蒸留では、水分を含む画分を除去できれば、前記反応や反応後の目的物の分離に支障がない限り、原料カーボネートやグリセリンは更に精製しなくてもよい。原料混合物から蒸留で水分を除去する場合、反応器中で反応前に蒸留を行ってもよい。原料カーボネートとして、ジメチルカーボネートを使用する場合、水はジメチルカーボネートとの共沸混合物として除去される。
【0019】
本発明では、前記のようにグリセリンと原料カーボネートを反応させて、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを生成させた後、その反応液のpHを弱酸性(pH3以上で7未満、好ましくはpH5.0〜6.0)に調整することが好ましい。このpH調整は、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、シュウ酸等の有機酸で行うことができ、0〜80℃、更には10〜50℃で、0.5〜1時間程度攪拌して行うことが好ましい。
【0020】
また、前記のpH調整は、反応液成分に不活性な有機溶媒を、反応液に対して100重量%以下、更には20〜60重量%の割合で添加して行うことが好ましい。この有機溶媒は反応液成分(グリセリン、原料カーボネート、塩基触媒、目的物)に不活性であれば特に制限されず、例えば、前記アルキルアルコールでもよい。アルキルアルコールを用いる場合、アルキルアルコールは前記反応で抜き出されたものと同じアルコールが好ましい。有機溶媒を添加する際の温度はpH調整の際と同様でよく、その温度で反応液に有機溶媒を添加して均一に攪拌し、引き続き攪拌下でpH調整することが好ましい。
【0021】
前記反応で生成した4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンは、pH調整終了後、そのpH調整液(pHを調整した反応液)から、蒸発装置を用いて蒸発操作を行うことにより回収される。蒸発装置としては、薄膜式(遠心式又は流下膜式)蒸発器が好ましい。この蒸発操作に当って、前記pH調整液は、アルキルアルコール又はアルキレングリコールを主体とする低沸物を低温(特に50〜100℃)で予め減圧留去して濃縮液としておいてもよい。
【0022】
前記蒸発装置による蒸発操作の際、加熱温度は180〜220℃であり、圧力は1.0〜30torr、更には1.0〜10torrであることが好ましい。なお、加熱媒体としては、スチーム、熱媒、電気ヒーター等があるが、特に制限はない。この蒸発操作により、目的の4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンは、蒸発装置のボトムから、不純物含量の少ない高純度品として得ることができる。得られるボトム液の蒸発操作を繰り返せば、更に高純度の目的物を得ることも可能である。また、蒸発装置の頂部から得られる留出液からも、同様の蒸発操作を行うことにより高純度の目的物を回収できる。
【0023】
このようにして目的の4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを得ることができるが、本発明では、(1)グリセリンとジメチルカーボネートを、アルカリ金属の炭酸塩の存在下、原料混合物の水分濃度を1000ppm以下として、生成するメタノールを抜き出しながら反応させて、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを生成させ、(2)その反応液にメタノールを添加して反応液のpHを弱酸性に調整し、(3)蒸発装置を用いて蒸発操作を行って、そのpH調整液から4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを回収することが特に好ましい。
【0024】
以上のようにして得られる本発明の4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンは、ガスクロマトグラフィー分析によれば、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンが97.0重量%以上、4−メトキシカルボニルオキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンが1.5重量%以下、グリセリンが1.5重量%以下の組成、特に、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンが98.0重量%以上、4−メトキシカルボニルオキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンが1.0重量%以下、グリセリンが1.0重量%以下の組成を有する、高純度の4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンである。
【0025】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
実施例1
蒸留装置を備えた内容積2L(リットル)の三つ口フラスコに、グリセリン644.7g、ジメチルカーボネート(水分濃度200ppm)945.8g、炭酸カリウム0.048gを入れ、乾燥雰囲気下、79〜90℃で2時間全還流させた。なお、フラスコ中の原料混合物(グリセリン、ジメチルカーボネート、炭酸カリウムを含む)中の水分濃度は300ppmであった。次いで、メタノール−ジメチルカーボネートの共沸混合物を抜き出しながら、8時間反応させた。この間、留出温度は最初は79℃程度であったが、徐々に上昇して106℃になった。その後、減圧で低沸点物を留去して反応を完結させた。得られた反応液の重量は874.7gであった。なお、水分濃度は微量水分測定装置(電量滴定法)により求めた。
【0026】
この反応液にメタノール437.0gを添加し、更に炭酸カリウムに対して1.1倍モルの硫酸を添加し、40℃で1時間攪拌した。得られた液のpHは5.5〜6.0の範囲であった。次いで、この液(pH調整液)から、5〜760torr、80〜100℃でメタノールを主体とする低沸物を留去して濃縮液を得た。得られた濃縮液の組成をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(以下、GYL−Cと称する)が95.2重量%、4−メトキシカルボニルオキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(以下、GYL−Mと称する)が1.05重量%、グリセリン(以下、GYLと称する)が1.62重量%であった。なお、GYL−Cの収率(グリセリン基準)は95.0%であった。
【0027】
次いで、伝熱面積0.032m2のガラス製薄膜式蒸発器と前記濃縮液を用い、外部温度205℃、圧力3torr、留出温度164℃、液供給量20ml/minで蒸発操作を行って、蒸発器ボトムから目的物(GYL−C)の高純度品を抜き出した。前記濃縮液80.7gから得られた高純度品47.9gの組成は、GYL−Cが98.3重量%、GYL−Mが1.0重量%、GLYが0.7重量%であった。なお、留出液32.9gの組成は、GYL−Cが92.8重量%、GYL−Mが1.7重量%、GLYが5.4重量%であった。
【0028】
実施例2
実施例1と同様の薄膜式蒸発器と実施例1で得られた濃縮液を用い、外部温度205℃、圧力1torr、留出温度161〜162℃、液供給量73ml/minで蒸発操作を行って、蒸発器ボトムから目的物(GYL−C)の高純度品を抜き出した。実施例1の濃縮液195.0gから得られた高純度品29.5gの組成は、GYL−Cが98.3重量%、GYL−Mが1.2重量%、GLYが0.5重量%であった。なお、留出液164.5gの組成は、GYL−Cが94.9重量%、GYL−Mが1.8重量%、GLYが2.9重量%であった。
【0029】
比較例1
ビグリュー型精留塔(15cm)を備えた内容積500mlの4つ口フラスコに実施例1の濃縮液403.0gを仕込み、液温140℃、圧力2torrで蒸留操作を開始した。蒸留開始時には、圧力2torr、留出温度150℃であったが、徐々に減圧度が低下した。このため、液温を180℃まで上げて、圧力4.5torr、留出温度180℃付近で目的物を留出させたが、更に減圧度が低下したので蒸留操作を中止した。
得られた留出液は247.1g、ボトム液は121.2gであり、34.7gの重量減少が見られた。ガスクロマトグラフィー分析より、全GYL−Cが21.7重量%減少し、全GLYが75.9重量%増加していた。
【0030】
実施例3
実施例1と同様の薄膜式蒸発器と実施例2で得られた高純度品を用い、外部温度180℃、圧力1〜2torr、留出温度156〜157℃、液供給量120ml/minで蒸発操作を行って、蒸発器ボトムから目的物(GYL−C)の更なる高純度品を回収した。実施例2の高純度品162.8gから得られた更なる高純度品129.0gの組成は、GYL−Cが98.5重量%、GYL−Mが1.0重量%、GLYが0.3重量%であった。なお、留出液34.0gの組成は、GYL−Cが85.2重量%、GYL−Mが1.6重量%、GLYが12.1重量%であった。
【0031】
実施例4
実施例1において、ジメチルカーボネート(水分濃度200ppm)量を882.8gに代え、メタノール添加量を256.0gに代えたほかは、実施例1と同様に操作して濃縮液を得た。得られた濃縮液の組成は、GYL−Cが89.1重量%、GYL−Mが0.4重量%、GLYが5.7重量%であった。なお、GYL−Cの収率は92.0%であった。
【0032】
実施例1と同様の薄膜式蒸発器と実施例4で得られた濃縮液を用い、外部温度205℃、圧力1torr、留出温度160℃、液供給量78ml/minで蒸発操作を行って、蒸発器ボトムから目的物(GYL−C)の高純度品を回収した。実施例4の濃縮液800.0gから得られた高純度品101.4gの組成は、GYL−Cが98.1重量%、GYL−Mが0.4重量%、GLYが1.4重量%であった。なお、留出液688.0gの組成は、GYL−Cが89.5重量%、GYL−Mが0.6重量%、GLYが9.7重量%であった。
【0033】
実施例5
実施例1と同様の薄膜式蒸発器と実施例4で得られた高純度品を用い、外部温度205℃、圧力1torr、留出温度163℃、液供給量75ml/minで蒸発操作を行って、蒸発器ボトムから目的物(GYL−C)の更なる高純度品を回収した。実施例4の高純度品100.8gから得られた更なる高純度品20.5gの組成は、GYL−Cが98.7重量%、GYL−Mが0.4重量%、GLYが0.9重量%であった。なお、留出液79.7gの組成は、GYL−Cが98.4重量%、GYL−Mが0.5重量%、GLYが1.0重量%であった。
【0034】
実施例6
実施例1と同様の薄膜式蒸発器と実施例4で得られた高純度品を用い、外部温度180℃、圧力1〜2torr、留出温度156〜157℃、液供給量170ml/minで蒸発操作を行って、蒸発器ボトムから目的物(GYL−C)の更なる高純度品を回収した。実施例4の高純度品693.0gから得られた更なる高純度品20.5gの組成は、GYL−Cが98.4重量%、GYL−Mが0.6重量%、GLYが1.0重量%であった。なお、留出液163.1gの組成は、GYL−Cが62.0重量%、GYL−Mが0.7重量%、GLYが35.6重量%であった。
【0035】
【発明の効果】
本発明により、グリセリンとカーボネートから高純度の4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを容易に製造することができる。
即ち、本発明により、グリセリンとカーボネートを反応させて4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを製造する方法において、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを高収率で生成させ、そして、損失を抑えながら該化合物を温和な条件で容易に回収して不純物含量の少ない高純度の目的物を効率よく得ることができる。特に、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンが97.0重量%以上、4−メトキシカルボニルオキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンが1.5重量%以下、グリセリンが1.5重量%以下、更には、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンが98.0重量%以上、4−メトキシカルボニルオキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンが1.0重量%以下、グリセリンが1.0重量%以下のガスクロマトグラフィー分析による組成を有する、高純度4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを効率よく得ることができる。
4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンは、例えば、その1個の水酸基を利用してイソシアナートと反応させたり、またアクリレートに誘導するなどして特殊樹脂の原料として利用されるが、従来、損失を抑えながら温和な条件で容易に目的物を得ようとすれば、得られる目的物の純度が低くなって未反応グリセリンが多く残存し、そのためにグリセリンの3個の水酸基がイソシアナートと反応して(即ち、純度的に3倍の不純物を含むと同等になり)、最終の樹脂自体の製造が容易でなかったり、或いは最終の樹脂物性に与える影響が極めて大きくなっていたのに対し、本発明の高純度品では、耐熱性、耐候性、強度等の物性に優れた樹脂を与えることができる。本発明で得られる高純度の4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンは樹脂原料として優れているものである。
Claims (6)
- (1)原料カーボネートとして、そのアルキル基の炭素数が1〜6であるジアルキルカーボネート又はそのアルキレン基の炭素数が2〜3であるアルキレンカーボネートを用い、グリセリンと該カーボネートを、塩基触媒の存在下、生成するアルキルアルコール又はアルキレングリコールを抜き出しながら反応させて、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを生成させ、(2)その反応液のpHを弱酸性に調整し、(3)薄膜式蒸発器を用いて加熱温度180〜220℃で蒸発操作を行って、そのpH調整液から4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを回収することを特徴とする4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造法。
- 塩基触媒がアルカリ金属の炭酸塩である、請求項1記載の4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造法。
- グリセリン、原料カーボネート、及び塩基触媒を含み、かつ水分濃度が1000ppm以下である原料混合物を用いて、グリセリンと該カーボネートを反応させる、請求項1記載の4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造法。
- 反応液のpHを3以上で7未満に調整する、請求項1記載の4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造法。
- 原料カーボネートがジメチルカーボネートである、請求項1記載の4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造法。
- ジメチルカーボネートをグリセリン1モルに対して0.5〜5モル使用する、請求項5記載の4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造法。
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