JP4282198B2 - 粒子線照射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粒子加速器から出射される粒子線の照射装置において、特に粒子線治療装置に用いられる照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、日本における死亡原因の約3分の1を占めるがんの治療方法として、陽子や重粒子を用いた粒子線治療法が注目されている。この方法は、加速器から出射された陽子ビーム、あるいは重粒子ビームをがん細胞に照射することで、正常細胞にほとんど影響を与えることなく、がん細胞のみを死滅させることができる。
【0003】
現在主として使用されている粒子線治療の照射方法は、ワブラ法や二重散乱体法などと呼ばれる2次元照射方法であるが、粒子線治療のさらに進んだ治療法として、スポットビームの照射位置を3次元的に走査することにより、より高精度にがん細胞の狙い撃ちを行う方法が提案され、一部実用化されている。
【0004】
この3次元照射法として代表的なものが、3次元スポットスキャニング法や3次元ラスタ法と呼ばれるものである。一般にスポットスキャニング法は、照射スポットを明確に区切り、照射停止中に照射位置の走査を行うものであり、またラスタ法は、照射スポットの区切りが明確でないという違いがある。
【0005】
これらの3次元照射方法によれば、照射領域を精度よく患部に合わせることが可能になり、従来の2次元的照射方法と比較して正常患部への被爆を抑制することができる。
【0006】
以下、3次元スポットスキャニング法によりがん治療を行うための3次元照射装置について図面を用いて説明する。
【0007】
図11は、治療室に配置された3次元スポットスキャニング用の3次元照射装置の概略構成図である。図11において、1は治療ベッドであり、2は3次元照射装置である。この3次元照射装置2は、スキャニング磁石3a,3b、線量モニタ4、位置モニタ5、リッジフィルタ6、レンジシフタ7、制御計算機8から構成されている。
【0008】
次に、図11で示した3次元照射装置の各機器の構成と機能を説明する。
【0009】
スキャニング磁石3a,3bは、スキャニング磁石に入射したスポットビームを体内患部内のビーム軸に対して垂直面上の点(X、Y)に走査する。
【0010】
レンジシフタ7は、体内患部内のビーム軸方向の位置(Z)を制御する。このレンジシフタ7は、厚さの異なる複数のアクリル板から構成されており、これらアクリル板を適宜組合せることによりレンジシフタを通過するビームエネルギー、すなわち体内レンジを段階的に変化させることができる。レンジシフタ7における体内レンジの制御は、一般的には一定間隔距離をもって切替えられる。
【0011】
単エネルギー粒子線ビームの体内深さ方向の線量分布は、体内レンジ近傍に非常にシャープなピーク(以下、ブラッグピークと呼ぶ)分布を持つため、リッジフィルタ6を用いて、レンジシフタによって切替えられる体内レンジの間隔距離に対応するように単エネルギーの粒子線ビームの体内レンジを拡大する。
【0012】
線量モニタ4は、体内に照射する線量を測定するためのものであり、位置モニタ5は、スキャニング磁石3a,3bにより走査されたビーム位置が正しい位置にあるかどうかを識別するためのものである。
【0013】
制御計算機8は、これら各機器の設定を制御するものである。
【0014】
これらの各照射機器を用いて、以下の方法により3次元照射が行われる。
【0015】
制御計算機8に保持された照射パターンテーブルには、スポット位置(Xi、Yi、Z)、照射線量(Di)が書込まれている。この照射パターンテーブルに基づきスポット照射が行われる。
【0016】
最深スライスの位置(Zi)に応じて粒子線ビームの入射エネルギーとレンジシフタ7におけるアクリル板厚が選ばれる。
【0017】
次に、最深スライスに対して、位置(Xi、Yi)[i=1〜n]が選ばれ、スキャニング磁石3a,3bによりこれらの位置(Xi、Yi)に照射される。スキャニング磁石3a,3bにおいて単エネルギーであった粒子線ビームは、リッジフィルタ6によって、体内レンジ分布がスライス幅に対応するようエネルギー分布が拡大されている。このスライス上の位置(Xi、Yi)の照射線量は線量モニタ4により監視され、予定線量(Di)の照射を検出するとビームが停止され、スキャニング磁石3a,3bによって照射位置が同じスライス上の次の位置(Xi+1、Yi+1)に変更される。
【0018】
このスライス内の点の照射がすべて終了すると、レンジシフタ7におけるアクリル厚が変更され、次のスライス(Zi+1)の照射が行われる。これをスライス毎に順次繰り返すことで3次元的に照射を行う。
【0019】
上述したように3次元照射において、照射パターンは患部形状および照射方向に応じて決められる。照射パターンの形成は治療計画と呼ばれ、たとえばX線CT撮影などの方法により患部を同定し、治療計画ソフトウェアを用いて執り行われる。この治療計画により各スポットにおける3次元照射位置(Xi、Yi、Zi)と照射線量(Di)があらかじめテーブル化され、制御計算機8に取り込まれる。
【0020】
制御計算機8では、3次元照射位置のうち、ビーム軸垂直方向位置(Xi、Yi)は磁石の電流値に、ビーム軸方向位置Zi、すなわち体内飛程はレンジシフタ厚に変換されて、各照射機器の制御を行う。
【0021】
以上のように体内患部に対して3次元的に照射を行うことにより、従来の2次元的照射方法と比較して、精度よく患部の形状並びに大きさに合致させて照射を行うことが可能になる。
【0022】
ところが、3次元スポットスキャニング法のような3次元的照射方法では、以下のような問題があった。
照射ビームは、ビーム軸方向位置Zi制御のためのレンジシフタにより散乱されるため、患部内のスポット位置におけるビーム径がレンジシフタの厚さに依存して変化してしまう。たとえば、患部の深部に照射する場合は、薄いレンジシフタを使用するために散乱の影響が小さくビーム径の広がりも小さいのに対して、患部の浅部に照射する場合は、厚いレンジシフタを使用するためビーム径の広がりが大きくなってしまう。
【0023】
しかし、現状の治療計画ソフトウェアは、簡単化のため、ビーム径は同一のものとして照射パターンを作成するように作られている。したがって、治療計画により形成された照射パターンにしたがって照射を行うと、計画したような一様性のある照射ができないという問題がある。また、ビーム径の変化を取り込んだ治療計画ソフトウェアの製作は、アルゴリズムが複雑なため、非常に困難である。
【0024】
一方、前述したように3次元的に一様な照射線量分布を形成するためには、各スポットにおけるビーム径は同一であることが望ましいが、ビーム軸に垂直な面におけるスポット同士の間隔よりビーム径が小さくなると、この面内の照射線量分布には凹凸が生じ、もはや均一な分布とはならない。
【0025】
この凹凸を避けるために、図12に示すようにスポット間隔に応じて、ある程度のビーム径を持つスポットビームを照射することが行われる。しかしながら、ビーム径の大きいスポットビームを照射すると、照射領域境界における線量分布の切れが悪くなり、本来照射する必要のない領域の組織まで被爆させ、正常組織にダメージを与えてしまうことになる。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来の3次元的照射方法では、レンジシフタによる散乱のため、患部内のスポット位置におけるビーム径がレンジシフタの厚さに依存して変化してしまい、計画したような一様性のある照射ができないという問題があった。
【0027】
さらに、ビーム径の大きいスポットビームを照射するために、照射領域境界における線量分布の切れが悪くなり、本来照射する必要のない領域の組織まで被爆させ、正常組織にダメージを与えてしまうという問題があった。
【0028】
本発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、患部内のスポット位置ごとにビーム径が調整できて照射領域にわたって一様化され、かつ、照射領域境界における線量の切れを良好にできる粒子線照射装置を提供することを目的とする。
【0029】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するため、次のような手段により粒子線照射方法と粒子線照射装置を構成する。
【0032】
請求項1に対応する発明は、粒子線スポットビームのエネルギーを複数に切替える機構と、前記粒子線の照射位置を切替える機構と、前記粒子線スポットビームのエネルギーと前記照射位置を被照射部位の形状並びに大きさに合致するように順次制御する制御計算機とを備えた3次元粒子線照射装置において、スポットビーム径を複数に切替え可能なビーム径調整機構と、前記エネルギー又は3次元照射位置のうちのビーム軸方向位置或いはエネルギー切替え機構の状態をパラメータの一つとして、スポットビーム径が同じになるように前記ビーム径調整機構を制御する機構とを設ける。
【0033】
請求項2に対応する発明は、粒子線スポットビームのエネルギーを複数に切替える機構と、前記粒子線の照射位置を切替える機構と、前記粒子線スポットビームのエネルギーと前記照射位置を被照射部位の形状並びに大きさに合致するように順次制御する制御計算機とを備えた3次元粒子線照射装置において、スポットビーム径を複数に切替え可能なビーム径調整機構と、予め照射領域が複数のグループに分けられ、かつ照射領域境界近傍にあるスポット位置がグループの一つとして設定され、前記照射領域境界近傍にあるスポット位置を照射するスポットビームの径を照射領域中央部位置のスポットを照射するスポットビームの径と比較して小さくなるように前記ビーム径調整機構を制御する機構とを設ける。
【0034】
請求項5に対応する発明は、請求項4に対応する発明の粒子線照射方法において、前記グループとして、照射領域境界近傍にあるスポット位置をグループの一つとして設定し、前記境界近傍スポットを照射するスポットビームの径を照射領域中央部位置のスポットと比較して小さくなるように制御して照射を行う。
【0035】
請求項6に対応する発明は、粒子線スポットビームのエネルギーと位置を順次制御して被照射部位の形状並びに大きさに合致するように3次元照射を行う粒子線照射方法において、照射領域を複数のグループに分け、同一グループ内にあるスポットから順次照射を行う。
【0036】
請求項3に対応する発明は、粒子線スポットビームのエネルギーを複数に切替える機構と、前記粒子線の照射位置を切替える機構と、前記粒子線スポットビームのエネルギーと前記照射位置を被照射部位の形状並びに大きさに合致するように順次制御する制御計算機と、スポットビーム径を複数に切替え可能なビーム径調整機構と、スラスト位置(Z)を含む3次元照射位置(X,Y,Z)と照射線量およびビーム径に関するデータからなり前記制御計算機に送られる照射パターンテーブルと、有する3次元粒子照射装置であって、前記照射パターンテーブルでは、スライス位置(Z)毎に照射領域が照射領域境界近傍とその他の領域とにグループ分けされ、同一グループ内ではビーム径を同一としかつ照射領域境界近傍グループのビーム径に比べてその他の領域グループのビーム径が小さく設定されてなり、さらに前記照射領域境界近傍のグループから、その他の領域グループにスポット照射位置が移行するとビーム径が変更するように前記ビーム径調整機構を制御する機構を有する。
【0046】
従って、上記のような発明によれば、ビーム径調整機構により、レンジシフタや体内における粒子線ビーム散乱の影響を除外し、3次元的な照射位置によらない同一なビーム径を簡単に得ることが可能になる。
【0047】
ここで、ビーム径調整機構の制御は、レンジシフタ厚か、レンジシフタ厚を与えるビーム軸方向照射位置あるいはエネルギー値をパラメータとして演算され、とり行われる。
【0048】
したがって、3次元的照射領域にわたって均一で精度よい照射が、簡単に行うことが可能になる。
【0049】
また、3次元照射テーブルのパラメータとして、照射線量、3次元照射位置の他に、スポット径を含んでおり、照射スポットごとにスポット径を変更して照射することが可能になる。このため、たとえば、境界近傍のスポット位置のビーム径を中央部のスポット位置に比べて小さくすることができる。
【0050】
よって、照射領域にわたって照射線量が均一、かつ、照射領域境界での照射線量の切れがよい照射が可能になり、正常組織への被爆を低減することができる。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0052】
図1は本発明の第1の実施の形態としてゴアを治療室に配置された3次元スポットスキャニング法用の3次元照射装置を示す概略構成図で、従来例で示した図11と同一部品には同一符号を付して説明する。
【0053】
図1において、1が治療ベッドであり、10が3次元照射装置である。3次元照射装置10は、スキャニング磁石3a,3b、線量モニタ4、位置モニタ5、リッジフィルタ6、レンジシフタ7、制御計算機8及び散乱体装置9から構成されている。
【0054】
次に、図1で示した3次元照射装置の各機器の構成と機能を説明する。
【0055】
上記スキャニング磁石3a,3bは、スキャニング磁石に入射したスポットビームを体内患部内のビーム軸に対して垂直面上の点(X、Y)に走査する。ここで、スキャニング磁石3aおよび3bは、それぞれビームをX方向に走査するX方向スキャニング磁石およびY方向に走査するY方向スキャニング磁石である。
【0056】
上記レンジシフタ7は、体内患部内のビーム軸方向の位置(Z)を制御するものである。このレンジシフタ7は、厚さの異なる複数枚のアクリル板から構成されており、これらアクリル板の組合せによりレンジシフタを通過するビームエネルギー、すなわち体内レンジを段階的に変化させるものである。
【0057】
上記リッジフィルタ6は、レンジシフタ7によって切替えられる体内レンジの間隔に対応するように単エネルギーの粒子線ビームの体内レンジを拡大するものである。
【0058】
上記散乱体装置9は、金、鉛、アルミニウム等の金属膜、あるいはポリイミド等の有機膜からなり、複数枚の厚さの異なる有機膜で構成されている。この散乱体装置9は、その材質および厚さを変更することにより、スポットビームの体内位置におけるスポット径を調整できるものである。
【0059】
上記制御計算機8は、これら各機器の設定を制御するものである。
【0060】
これらの各照射機器を用いて、以下の方法により3次元照射が行われる。
【0061】
いま、図示しない治療計画計算機から制御計算機8に送られてくる照射パターンテーブルには、スポット位置(Xi、Yi、Zi)、照射線量(Di)が書込まれているものとする。この照射パターンテーブルに基づきスポット照射が次のように行われる。
【0062】
まず、最深スライスの位置(Zi)に応じて粒子線ビームの入射エネルギーとレンジシフタ7におけるアクリル板厚が選ばれる。このとき、同時に散乱体装置9の膜の設定が行われる。次に、最深スライスに対して、位置(Xi、Yi)[i=1〜n]が選ばれ、スキャニング磁石3a,3bにより、これら位置(Xi、Yi)に照射される。リッジフィルタ6によって、単エネルギーであった粒子線ビームは、体内レンジ分布がスライス幅に対応するようにエネルギー分布が拡大されている。
【0063】
このスライス上の位置(Xi、Yi)の照射線量は線量モニタ4により監視され、予定線量(Di)の照射を検出するとビームが停止され、スキャニング磁石3a,3bによって照射位置が同じスライス上の次の位置(Xi+1、Yi+1)に変更される。このスライス内の点の照射がすべて終了すると、レンジシフタ7におけるアクリル厚と散乱体の膜設定が変更され、次のスライス(Zi+1)の照射が行われる。これをスライス毎に順次繰り返すことで3次元的に照射を行う。
【0064】
この3次元照射では、スライス位置(Zi)と散乱体の膜設定の対応は、どのスライス位置(Zi)においてもビーム径が同じになるように、予備実験あるいは計算により予め決められている。
【0065】
したがって、レンジシフタ7による散乱の影響および体内散乱の影響が取り除かれることになる。よって、ビーム径を同一のものとして照射パターンを作成された治療計画を用いても、計画通りに均一な照射が可能になる。つまり、がん細胞を効果的に死滅させ、正常細胞に対するダメージが低減され得る治療を行うことができるようになる。
【0066】
この実施の形態では、散乱体の膜設定は、スライス位置(Zi)をパラメータとして行っているが、体内へ入射するスポットビームのエネルギー調節機構であるレンジシフタ7の厚さをパラメータとして行ってもよい。また、治療前の段階で、例えば制御計算機8が治療計画データを受信した段階で、散乱体の膜設定値を求め、照射パターンを記したデータテーブル内に予め書き込んでおいてもよい。
【0067】
図2は本発明の第2の実施の形態として治療室に配置された3次元スポットスキャニング法用の3次元照射装置の概略構成図で、従来例で示した図11と同一部品には同一符号を付して説明する。
【0068】
図2において、1が治療ベッドであり、11が3次元照射装置である。3次元照射装置11は、スキャニング磁石3a,3b、線量モニタ4、位置モニタ5、リッジフィルタ6、レンジシフタ7、制御計算機8および収束電磁石12から構成されている。
【0069】
次に、図2で示した3次元照射装置の各機器の構成と機能を説明する。
【0070】
上記スキャニング磁石3a,3bは、スキャニング磁石に入射したスポットビームを体内患部内のビーム軸に対して垂直面上の点(X、Y)に走査する。
【0071】
上記レンジシフタ7は、体内患部内のビーム軸方向の位置(Z)を制御する。
【0072】
上記リッジフィルタ6は、レンジシフタ7によって切替えられる体内レンジの間隔に対応するように単エネルギーの粒子線ビームの体内レンジを拡大するものである。
【0073】
上記収束電磁石12は、コイル内の電流量を変更することにより磁束強度を変えることができ、スポットビームの体内位置におけるスポット径を調整することができる。
【0074】
制御計算機8は、これら各機器の設定を制御するものである。
【0075】
図2で示した各照射機器を用いて、以下の方法により3次元照射が行われる。
【0076】
いま、図示しない治療計画計算機から制御計算機8に送られてくる照射パターンテーブルには、スポット位置(Xi、Yi、Zi)、照射線量(Di)が書込まれているものとする。この照射パターンテーブルに基づきスポット照射が次のように行われる。
【0077】
まず、最深スライスの位置(Zi)に応じて粒子線ビームの入射エネルギーとレンジシフタ7におけるアクリル板厚が選ばれる。このとき、同時に収束電磁石12の電流値の設定が行われる。次に、最深スライスに対して、位置(Xi、Yi)[i=1〜n]が選ばれ、スキャニング磁石3a,3bによりこれら位置(Xi、Yi)に照射される。リッジフィルタ6によって、単エネルギーであった粒子線ビームは、体内レンジ分布がスライス幅に対応するようにエネルギー分布が拡大されている。
【0078】
このスライス上の位置(Xi、Yi)の照射線量は線量モニタ4により監視され、予定線量(Di)の照射を検出するとビームが停止され、スキャニング磁石3a,3bによって照射位置が同じスライス上の次の位置(Xi+1、Yi+1)に変更される。このスライス内の点の照射がすべて終了すると、レンジシフタ7におけるアクリル厚と収束電磁石12の電流値が変更され、次のスライス(Zi+1)の照射が行われる。これをスライス毎に順次繰り返すことで3次元的に照射を行う。
【0079】
この3次元照射では、スライス位置(Zi)と電磁石の電流値の対応は、どのスライス位置(Zi)においてもビーム径が同じになるように、予備実験あるいは計算により予め決められている。
【0080】
したがって、レンジシフタ7による散乱の影響および体内散乱の影響が取り除かれることになる。よって、ビーム径を同一のものとして照射パターンを作成された治療計画を用いても、計画通りに均一な照射が可能になる。つまり、がん細胞を効果的に死滅させ、正常細胞に対するダメージが低減されうる治療を行うことができるようになる。
【0081】
この実施例では、収束電磁石12の電流値設定は、スライス位置(Zi)をパラメータとして行っているが、体内へ入射するスポットビームのエネルギー調節機構であるレンジシフタ7の厚さをパラメータとして行ってもよい。また、治療前の段階で、例えば制御計算機が治療計画データを受信した段階で、電流設定値を求め、照射パターンを記したデータテーブル内に予め書き込んでおいてもよい。
【0082】
図3は本発明の第3の実施の形態として治療室に配置された3次元スポットスキャニング法用の3次元照射装置の概略構成図で、従来例で示した図11と同一部品には同一符号を付して説明する。
【0083】
図3において、1は治療ベッドであり、13は3次元照射装置である。3次元照射装置13は、スキャニング磁石3a,3b、線量モニタ4、位置モニタ5、リッジフィルタ6、制御計算機8および散乱体装置9から構成されている。
【0084】
図3で示した3次元照射装置の各機器の構成と機能は、図1における第1の実施の形態と同様なので、ここではその説明を省略する。ただし、図3で示した3次元照射装置13では、レンジシフタを備えておらず、スポットビームのエネルギーの変更は、照射装置13の上流に配置された図示しない加速器、またはビーム輸送系にてとり行われる。
【0085】
図3で示した各照射機器を用いて、以下の方法により3次元照射が行われる。
【0086】
いま、図示しない治療計画計算機から制御計算機8に送られてくる照射パターンテーブルには、スポット位置(Xi、Yi、Zi)、照射線量(Di)が書込まれているものとする。この照射パターンテーブルに基づきスポット照射が次のように行われる。
【0087】
まず、最深スライスの位置(Zi)に応じて粒子線ビームのエネルギーが選ばれ、エネルギーが調整された粒子線ビームが3次元照射装置に導入される。このとき、同時に散乱体装置9の膜の設定が行われる。次に、最深スライスに対して、位置(Xi、Yi)[i=1〜n]が選ばれ、スキャニング磁石3a,3bによりこれらの位置(Xi、Yi)に照射される。リッジフィルタ6によって、単エネルギーであった粒子線ビームは、体内レンジ分布がスライス幅に対応するようにエネルギー分布が拡大されている。
【0088】
このスライス上の位置(Xi、Yi)の照射線量は線量モニタ4により監視され、予定線量(Di)の照射を検出するとビームが停止され、スキャニング磁石3a,3bによって照射位置が同じスライス上の次の位置(Xi+1、Yi+1)に変更される。このスライス内の点の照射がすべて終了すると、制御計算機8はエネルギー変更命令を加速器またはビーム輸送系の制御装置に送信してビームエネルギーが変更され、また散乱体装置9の膜設定が変更されて、次のスライス(Zi+1)の照射が行われる。これをスライス毎に順次繰り返すことで3次元的に照射を行う。
【0089】
この3次元照射では、スライス位置(Zi)と散乱体装置9の膜設定の対応は、どのスライス位置(Zi)においてもビーム径が同じになるように、予備実験あるいは計算により予め決められている。
【0090】
ここで示したビーム径調整は、ビーム輸送系においてビーム径を調整する場合よりも簡単かつ短時間にでき、かつ体内散乱の影響の除去も行うことが可能である。よって、患者を固定する時間が短くなって患者の負担が低減されるとともに、治療計画通りに均一な照射が可能になる。
【0091】
この実施の形態では、散乱体装置9の膜設定は、スライス位置(Zi)をパラメータとして行っているが、体内へ入射するスポットビームのエネルギーをパラメータとして行ってもよい。また、治療前の段階で、例えば制御計算機8が治療計画データを受信した段階で、散乱体装置9の膜設定値を求め、照射パターンが書込まれたデータテーブル内に予め書込んでおいてもよい。
【0092】
図4は本発明の第4の実施の形態として治療室に配置された3次元スポットスキャニング法用の3次元照射装置の概略構成図で、従来例で示した図11と同一部品には同一符号を付して説明する。
【0093】
図4において、14が治療ベッドであり、15が3次元照射装置である。治療ベット14は図示しない駆動機構によりスポットビームの体内照射位置をX方向およびY方向に移動可能になっている。3次元照射装置15は、線量モニタ4、位置モニタ5、リッジフィルタ6、レンジシフタ7、制御計算機8および散乱体装置9から構成されている。
【0094】
図4で示した3次元照射装置の各機器の構成と機能は、図1における第1の実施例と同様なので、ここではその説明を省略する。ただし、図4で示した3次元照射装置15では、スキャニング磁石を備えておらず、スポットビームの体内照射位置の変更は、治療ベッド14に取り付けた駆動機構を用いて変更される。
【0095】
図4で示した各照射機器を用いて、以下の方法により3次元照射が行われる。
【0096】
いま、図示しない治療計画計算機から制御計算機8に送られてくる照射パターンテーブルには、スポット位置(Xi、Yi、Zi)、照射線量(Di)が書込まれているものとする。この照射パターンテーブルに基づきスポット照射が次のように行われる。
【0097】
まず、最深スライスの位置(Zi)に応じて粒子線ビームの入射エネルギーとレンジシフタ7におけるアクリル板厚が選ばれる。このとき、同時に散乱体装置9の膜の設定が行われる。次に、最深スライスに対して、位置(Xi、Yi)[i=1〜n]が選ばれ、治療ベッド14を図示しない駆動機構により移動させることにより、これらの位置(Xi、Yi)に照射される。3次元照射装置15の入口で単エネルギーであった粒子線ビームは、リッジフィルタ6によって、体内レンジ分布がスライス幅に対応するようエネルギー分布が拡大されている。
【0098】
このスライス上の位置(Xi、Yi)の照射線量は線量モニタ4により監視され、予定線量(Di)の照射を検出するとビームが停止され、治療ベッド14の移動によって照射位置が同じスライス上の次の位置(Xi+1、Yi+1)に変更される。このスライス内の点の照射がすべて終了すると、レンジシフタ7におけるアクリル厚と散乱体装置の膜設定が変更され、次のスライス(Zi+1)の照射が行われる。これをスライス毎に順次繰り返すことで3次元的に照射を行う。
【0099】
この3次元照射では、スライス位置(Zi)と散乱体装置の膜設定の対応は、どのスライス位置(Zi)においてもビーム径が同じになるように、予備実験あるいは計算により予め決められている。
【0100】
したがって、レンジシフタ7による散乱の影響および体内散乱の影響が取り除かれることになる。よって、ビーム径を同一のものとして照射パターンが作成された治療計画を用いても、計画通りに均一な照射が可能になる。つまり、がん細胞を効果的に死滅させ、正常細胞に対するダメージが低減され得る治療を行うことができる。
【0101】
この実施の形態では、散乱体装置9の膜設定は、スライス位置(Zi)をパラメータとして行っているが、体内へ入射するスポットビームのエネルギーをパラメータとして行ってもよい。また、治療前の段階で、例えば制御計算機が治療計画データを受信した段階で、散乱体装置の膜設定値を求め、照射パターンを記したデータテーブル内に予め書込んでおいてもよい。
【0102】
次に本発明の第5の実施の形態を説明するに、その装置構成は第1の実施の形態と同様なので、ここでは図1を用いて述べる。
【0103】
本実施の形態において、図示しない治療計画計算機から制御計算機8に送られてくる照射パターンテーブルには、スポット位置(Xi、Yi、Zi)、照射線量(Di)、さらにビーム径(Ri)が書込まれている。ここで、スポット位置は、治療計画の段階で、図5で示すように各スライス毎、すなわちZi毎に、照射領域境界近傍とその他の領域とにグループ分けされ、スポット位置がグループ毎に並べ替えられており、境界近傍のグループに入るスポットの径はその他のグループのスポットの径に比べて小さく設定されている。
【0104】
本発明において、以下の方法により3次元照射が次のように行われる。
【0105】
まず、最深スライスの位置(Zi)に応じて粒子線ビームの入射エネルギーとレンジシフタ7におけるアクリル板厚が選ばれる。このとき、照射パターンテーブルのビーム径(Ri)に対応して散乱体装置9の膜の設定が行われる。次に、最深スライス上における位置(Xi、Yi)のスポット照射が行われる。ここで、スポット位置(Xi、Yi)は、照射領域境界近傍と、照射領域中央面(以下その他の領域)とに分けられ、初めに照射領域境界近傍のグループに属するスポットから照射される。このグループにおいては、設定されるビーム径Riは同一である。
【0106】
このグループのスポット照射が終わると、他のグループのスポット位置に移り、ビーム径Riを変更した後照射が行われる。このスライス内の点の照射がすべて終了すると、レンジシフタ7におけるアクリル厚と散乱体装置の膜設定が変更され、次のスライス(Zi+1)の照射が行われる。これをスライス毎に順次繰り返すことで3次元的に照射を行う。
【0107】
この実施の形態においては、照射領域近傍境界のスポットの径が、他の領域に比べて小さくなるように制御されている。したがって、図6に示すように、照射領域境界における照射線量の切れをよくすることができる。
【0108】
したがって、照射領域境界周辺に対する被爆を低減でき、正常細胞のダメージを抑制することができる。
【0109】
さらに、照射領域境界近傍に位置するスポット位置のグループから順次照射することにより、ビーム径Riを変更する回数を少なくすることができ、散乱体装置9の膜変更に伴うデッドタイムを減少させることができる。
【0110】
したがって、治療時間が短縮でき、患者を治療ベッド、あるいは治療いすに長時間固定することに伴う苦痛を抑制することが可能になる。
【0111】
この実施の形態のように、照射パターンテーブルにビーム径をパラメータとして保持することにより、照射パターンの任意性を拡大でき、複雑な患部形状に対しても、均一かつ照射領域周辺の線量を低減する照射を実現することが可能になる。
【0112】
図6で示した照射領域は、患部中央部まで治療領域が存在する場合について示したが、患部によっては、中央部に正常細胞が存在する場合もある。このような場合には、照射領域周辺部の他に中央部の正常細胞との境界近傍についても、ビーム径の小さいビームを照射することにより正常細胞への被爆を低減することができる。
【0113】
この実施の形態では、ビーム径の調整を散乱体からなる調整機構により行っているが、その他収束電磁石からなるビーム径調整機構を配置して同様のビーム径を調整しながら照射を行うことにより、同様の効果を達成することが可能である。
【0114】
図7は本発明の第6の実施の形態として治療室に配置された粒子線照射装置の概略構成図で、従来例で示した図11と同一部品には同一符号を付して説明する。
【0115】
図7において、1は治療ベッドであり、16は粒子線照射装置である。粒子線照射装置16は、偏向磁石17a,17b、線量モニタ4、位置モニタ5、レンジシフタ7、制御計算機8および散乱体装置9から構成されている。
【0116】
次に、図7で示した3次元照射装置の各機器の構成と機能を説明する。
【0117】
上記偏向磁石17a,17bは、スキャニング磁石に入射したスポットビームを体内患部内のビーム軸に対して垂直面上の点(X、Y)にビームを偏向する。
【0118】
ここで、偏向磁石17aおよび17bは、それぞれビームをX方向に偏向するX方向偏向磁石およびY方向に偏向するY方向偏向磁石である。
【0119】
上記レンジシフタ7は、体内患部内のビーム軸方向の位置(Z)を制御する。このレンジシフタ7は、厚さの異なる複数枚のアクリル板から構成されており、これらのアクリル板を適宜組合わせることによりレンジシフタ7を通過するビームエネルギー、すなわち体内レンジを段階的に変化させることができる。
【0120】
上記散乱体装置9は、金、鉛、アルミニウム等の金属膜あるいはポリイミド等の有機膜からなり、複数枚の厚さの異なる有機膜で構成されている。この散乱体装置9における材質および厚さを変更することにより、スポットビームの体内位置におけるスポット径を調整することができる。
【0121】
上記制御計算機8は、これら各機器の設定を制御するものである。
【0122】
これらの各照射機器を用いて、以下の方法により粒子線照射が行われる。
【0123】
いま、制御計算機8には、患部の位置に応じたスポット位置(X、Y、Z)、患部形状に応じたビーム径(R)および照射線量(D)が書込まれているものとする。これらのパラメータに応じて、各機器の設定が次のように行われる。
【0124】
まず、ビーム軸方向位置(Z)に応じて粒子線ビームの入射エネルギーとレンジシフタ7におけるアクリル板厚が選ばれる。また、スポット位置(X、Y)に応じて偏向磁石17a,17bの設定が行われる。さらに、ビーム径(R)に応じて散乱体装置9の膜の設定が行われる。
【0125】
次に、ビームを照射し、予定線量(D)の照射を検出するとビームが停止され、治療を終了する。
【0126】
このように散乱体からなるビーム径調整装置を用いることにより、簡単にかつ精度よくビームサイズを患部形状に合わせることができ、小型(数センチ)の患部治療を複雑な制御系を使用せずに行うことが可能になる。
【0127】
なお、本実施の形態では、ビーム軸方向に照射領域の整形を行うリッジフィルタを用いていないが、整形の必要があればリッジフィルタを用いてもよい。
【0128】
また、粒子線照射装置に導入される粒子線エネルギーが、加速器側あるいはビーム輸送系で精度よく調整可能であれば、ビーム軸方向位置(Z)の設定は、上流側で行ってもよく、その時はレンジシフタは不要である。
【0129】
さらに、スポット位置(X、Y)の制御を偏向磁石を用いずに、駆動機構を備えた治療ベッドを用いてベットを移動させることで行ってもよい。
以上述べた実施の形態では、散乱体装置9を位置モニタ5とリッジフィルタ6の間に配置したが、他の場所に配置することも可能である。
【0130】
ところで、散乱体の膜による散乱の効果は、膜厚と患部からの距離の関数で表される。また、挿入する膜の材質により、異なる散乱の効果を示す。
【0131】
一般に、金属膜の場合にはエネルギー、すなわち飛程(レンジ)への影響を小さくできる上に、大きな散乱効果を得ることができる。
【0132】
本発明者等の炭素ビームにおける計算によると、例えば患部よりビーム上流40cmに置かれたレンジシフタに10cmのアクリル板が挿入したときと同様の散乱効果は、患部より50cmおよび200cm上流に置いたときのそれぞれ0.25cm、0.025cmの厚さの鉛膜により得られる。他のアクリル厚に対しては、違う厚さの鉛膜を挿入することで対応することができる。
【0133】
また、有機膜については膜厚が薄くても丈夫であり、取り扱いし易いという利点がある。有機膜では金属膜と比較して散乱効果が小さいが、患部より遠い位置に配置することで効果的にすることができる。本発明者等の計算によると、患部より40cm上流に置かれたレンジシフタに10cmのアクリル板が挿入したときと同等の散乱効果は、ビーム上流200cmの位置に置いた有機膜0.7cm厚により得ることができる。
【0134】
また、有機膜の取り扱いのしやすい点を生かして、有機膜表面に金属コーティングすることで、さらに散乱効果を高めることが可能である。
【0135】
図8は本発明の第7の実施の形態として治療室に配置された3次元スポットスキャニング法用の3次元照射装置の概略構成図で、従来例で示した図11と同一部品には同一符号を付して説明する。
【0136】
図8において、1が治療ベッドであり、18が3次元照射装置である。3次元照射装置18は、スキャニング磁石3a,3b、線量モニタ4、位置モニタ5、リッジフィルタ6、レンジシフタ7、制御計算機8および散乱体装置19、20、21から構成されている。
【0137】
上記散乱体装置19は、金属膜、あるいは有機膜からなり、複数枚の厚さの異なる有機膜で構成されている。また、散乱体装置20、21は、散乱体装置19と同様に構成されている。
【0138】
この実施の形態では、散乱効果が膜の材質、厚さ以外に患部からの距離によって変化することを利用している。同じ構成の散乱体装置であっても、患部から遠い距離に置かれた散乱体装置19によってビーム径は大きく拡大される。
【0139】
このように幾つかの散乱体装置を設け、その配置位置を変えることにより、ビーム径を拡大できる範囲を大きくすることができる。
【0140】
図9は本発明の第8の実施の形態におけるレンジシフタを示す概略構成図である。
【0141】
図9において、31a,31b,31c……は異なる厚さの例えばアクリル板、32a,32b,32c……は異なる厚さの例えば鉛からなる膜、33は外容器、34a,34b,34c……および35a,35b,35c……はエアシリンダである。
【0142】
この実施の形態では、以下のようにしてビーム径の調整がされる。すなわち、制御計算機からの制御入力信号により、指定された1つ以上のアクリル板31がエアシリンダ34によりビーム軸上に挿入される。このとき、選択されるアクリル板の組合わせに対応して、鉛膜32の組合わせが選ばれ、鉛膜がエアシリンダ35によりビーム軸上に挿入される。
【0143】
この場合、鉛はアクリルと比較して散乱効果が大きく、したがって薄い膜厚にてアクリル板によるビーム径変化の影響を調整することができる。
【0144】
図9に示した実施の形態では、ビーム調整機構がレンジシフタと一体化されているため、照射装置を大型化することなく配置することが可能になる。また、アクリル板と鉛膜の挿入を同一の入力信号ラインにより制御できるため、ケーブル配線などを少なくすることができる。
【0145】
図10は本発明の第9の実施形態におけるレンジシフタを示す概略構成図である。
【0146】
図10において、41a,41b,41c……は異なる厚さの例えばアクリル板、43は外容器、44a,44b,44c……はエアシリンダである。
【0147】
ここで、各アクリル板には例えば鉛からなる膜42a,42b,42c……のそれぞれが貼り付けられている。また、アクリル板に貼り付けられた鉛膜の厚さは、患部におけるビーム径が同一になるように選ばれている。
【0148】
この実施の形態では、以下のようにしてビーム径の調整がされる。すなわち、制御計算機からの制御入力信号により、指定された1つ以上のアクリル板41がエアシリンダ44によりビーム軸上に挿入される。このとき、アクリル板に取り付けられた鉛膜も同時にビーム軸上に挿入される。
【0149】
図10に示した実施の形態では、鉛膜がアクリル板に貼り付けられており、鉛膜用のエアシリンダを必要としないため、低コスト化および省スペース化を図ることができる。また、鉛膜がアクリル板に連動して出し入れされるため、制御機構を単純化、低コスト化することができる。
【0150】
以上述べた本発明の実施の形態においては、スポットスキャニング法における3次元照射装置および3次元照射方法について示したが、ラスタスキャニング法、その他のスポットビームを用いた3次元照射装置および3次元照射方法についても、同様にして均一照射および照射領域周辺の線量を低減する照射を実現することが可能である。
【0151】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、ビーム径調整機構により3次元的照射領域にわたって均一で精度よい照射が、簡単に行うことが可能になる。
【0152】
また、照射スポットごとにスポット径を変更して照射することができ、照射領域にわたって照射線量が均一、かつ照射領域境界での照射線量の切れのよい照射が可能になり、正常組織への被爆を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す3次元スポットスキャニング法用の3次元照射装置の概略構成図。
【図2】本発明の第2の実施の形態を示す3次元スポットスキャニング法用の3次元照射装置の概略構成図。
【図3】本発明の第3の実施の形態を示す3次元スポットスキャニング法用の3次元照射装置の概略構成図。
【図4】本発明の第4の実施の形態を示す3次元スポットスキャニング法用の3次元照射装置の概略構成図。
【図5】本発明の第5の実施の形態における照射スポットのグループ分けの一例を示す図。
【図6】同実施の形態における3次元スポットスキャニング照射によるあるスライス中の照射線量分布を示す図。
【図7】本発明の第6の実施の形態を示す3次元スポットスキャニング法用の3次元照射装置の概略構成図。
【図8】本発明の第7の実施の形態を示す3次元スポットスキャニング法用の3次元照射装置の概略構成図。
【図9】本発明の第8の実施の形態におけるレンジシフタを示す概略構成図。
【図10】本発明の第9の実施の形態におけるレンジシフタを示す概略構成図。
【図11】従来の3次元スポットスキャニング法用の3次元照射装置を示す概略構成図。
【図12】同装置における3次元スポットスキャニング照射によるあるスライス中の照射線量分布を示す図。
【符号の説明】
1、14…治療ベッド
2、10、11、13、15、18…3次元照射装置
3a,3b…スキャニング磁石
4…線量モニタ
5…位置モニタ
6…リッジフィルタ
7…レンジシフタ
8…制御計算機
9、19、20、21…散乱体装置
12…収束電磁石
16…粒子線照射装置
17a,17b…偏向磁石
31(31a,31b…)、41(41a,41b…)…アクリル板
32(32a,32b…)、42(42a,42b…)…鉛膜
33、43…外容器
34(32a,32b…)、35(35a,35b…)、44(44a,44b…)…シリンダ
Claims (3)
- 粒子線スポットビームのエネルギーを複数に切替える機構と、前記粒子線の照射位置を切替える機構と、前記粒子線スポットビームのエネルギーと前記照射位置を被照射部位の形状並びに大きさに合致するように順次制御する制御計算機とを備えた3次元粒子線照射装置において、
スポットビーム径を複数に切替え可能なビーム径調整機構と、
前記エネルギー又は3次元照射位置のうちのビーム軸方向位置或いはエネルギー切替え機構の状態をパラメータの一つとして、スポットビーム径が同じになるように前記ビーム径調整機構を制御する機構とを設けたことを特徴とする粒子線照射装置。 - 粒子線スポットビームのエネルギーを複数に切替える機構と、前記粒子線の照射位置を切替える機構と、前記粒子線スポットビームのエネルギーと前記照射位置を被照射部位の形状並びに大きさに合致するように順次制御する制御計算機とを備えた3次元粒子線照射装置において、
スポットビーム径を複数に切替え可能なビーム径調整機構と、
予め照射領域が複数のグループに分けられ、かつ照射領域境界近傍にあるスポット位置がグループの一つとして設定され、前記照射領域境界近傍にあるスポット位置を照射するスポットビームの径を照射領域中央部位置のスポットを照射するスポットビームの径と比較して小さくなるように前記ビーム径調整機構を制御する機構とを設けたことを特徴とする粒子線照射装置。 - 粒子線スポットビームのエネルギーを複数に切替える機構と、前記粒子線の照射位置を切替える機構と、前記粒子線スポットビームのエネルギーと前記照射位置を被照射部位の形状並びに大きさに合致するように順次制御する制御計算機と、スポットビーム径を複数に切替え可能なビーム径調整機構と、スラスト位置(Z)を含む3次元照射位置(X,Y,Z)と照射線量およびビーム径に関するデータからなり前記制御計算機に送られる照射パターンテーブルと、有する3次元粒子照射装置であって、
前記照射パターンテーブルでは、スライス位置(Z)毎に照射領域が照射領域境界近傍とその他の領域とにグループ分けされ、同一グループ内ではビーム径を同一としかつ照射領域境界近傍グループのビーム径に比べてその他の領域グループのビーム径が小さく設定されてなり、さらに
前記照射領域境界近傍のグループから、その他の領域グループにスポット照射位置が移行するとビーム径が変更するように前記ビーム径調整機構を制御する機構を有することを特徴とする粒子線照射装置。
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