JP4281763B2 - 無線通信システム - Google Patents

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Description

本発明は、IP電話端末等の無線通信端末が通信相手と通信しながら異なるネットワーク間を移動する際に、無線通信端末が接続されるアクセスポイント(基地局)を切換える無線通信システムに関する。
近年、無線通信システムは、IPネットワーク通信技術と移動通信技術の進展によって、複数のアクセスポイントのうち、一のアクセスポイントと無線LAN(Local Area Network)等を介して接続されたIP電話端末が、異なるサブネット間を移動する際に、信号受信レベルのより高いアクセスポイントにハンドオーバーすることで通信先端末との通信を継続できるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、ハンドオーバー処理について図21を参照して説明する。
図21は、IP電話端末502と通話先端末503とが所定のネットワーク回線Nを介して接続されてパケット通信(通話)を行うIP電話システム500を示している。例えば、IP電話端末502を所持するユーザが、A地点からB地点を通過してC地点へと移動する場合、第一のアクセスポイント501Aからの信号の受信レベルが次第に低下することとなる。
このとき、IP電話端末502は受信レベルが低下したことを検出すると、アクセスポイント501を切替る処理を行う。
具体的には、先ず、IP電話端末502は、プローブ要求を送信し、このプローブ要求に対して周辺のアクセスポイント501から送信されるプローブ応答の受信レベルを検出して、最も受信レベルの高いアクセスポイント(例えば、図1にあってはアクセスポイント501Bとする)をハンドオーバー先のアクセスポイント501とする。ハンドオーバー先のアクセスポイント501が決定すると、IP電話端末502は、アクセスポイント501Bとの間に無線リンクを確立させる。
次に、IP電話端末502は、DHCPサーバ(図示略)にアクセスして、新IPアドレスを取得する。これにより、例えば、IPアドレスが、「192.168.1.10」から「192.168.2.10」に変更されることとなる。続けて、IP電話端末502は、自身のIPアドレスが変更されたことを通話先端末503に通知するためのリクエストをSIPサーバ506に通知する。
SIPサーバ506にあっては、IP電話端末502からのリクエストを受信すると、このリクエストを通話先端末503に送信する。
通話先端末503にあっては、SIPサーバ506からのリクエストを受信すると、IP電話端末502のIPアドレスの変更対応処理を行うようになっている。
特開2005−6216号公報
ところで、ハンドオーバー処理は、上記のように、IP電話端末が受信レベルの低下を検出して、アクセスポイントを切替る必要性が生じたと判断した場合に行うようになっている。このため、IP電話端末がIPアドレスの再取得を行い、かつSIPサーバが新規に取得したIP電話端末のIPアドレスの変更処理を完了するまで、通話先端末との間で通信を行うことができず、通話が途切れてしまうこととなる。この通話が途切れてしまう時間が、例えば数秒以上にもなると、IP電話の商品価値が低下してしまうといった問題がある。
また、異なるサブネット間を端末が移動した場合であっても、IPアドレスを保持したまま通信先端末との通信を継続させる技術として、例えば、IETFのRFC2002及びRFC3220に規定される「モバイルIP」技術等も知られている。
しかしながら、このモバイルIPシステムは、高価であるため、コスト面で商品価値が低いといった問題がある。さらに、当該システムは、固定された「ホームエージェント」を介して情報の送受信を行うようになっているため、IP電話端末から「ホームエージェント」までの距離が遠くなると、即ち、IP電話端末と「ホームエージェント」との間にいくつものネットワークが介在することとなると、情報通信に無駄が多くなってしまい、また、「ホームエージェント」及びネットワークに対してより多大な負荷がかかることとなる。
そこで、本発明の課題は、基地局の切換えの際に情報通信が途絶える時間の短縮を図ることができる無線通信システムをより安価に実現することである。
請求項1に記載の発明は、
複数の異なるネットワークに接続される複数の基地局(例えば、図1のアクセスポイント1等)と、
前記複数の基地局のいずれかに無線接続されるIP電話機能を有する無線通信端末(例えば、図1のIP電話端末2等)とを備え、
前記複数の基地局の中で前記無線通信端末が接続する基地局を切換える無線通信システム(例えば、図1のIP電話システム100等)であって、
前記無線通信端末は、前記複数の基地局のいずれかに無線接続された際にDHCPサーバからIPアドレスを取得するIPアドレス取得手段と、特定の通信相手をIP電話の通話先として指定する指定手段(例えば、図2の通話先指定部23等)を備え、
前記複数の基地局は前記無線通信端末が送信する発呼要求を検知することにより前記指定手段により指定された通信相手と前記無線通信端末との通信を開始したことを検出し、前記無線通信端末が送信する切断要求を検知することにより前記通信相手と前記無線通信端末との通信が終了したことを検出する検出手段を備え、
前記複数の基地局のうち、前記指定手段により指定された通信相手と前記無線通信端末との通信を開始したことを前記検出手段により検出した基地局(以下、「基準基地局」という;例えば、図1のアクセスポイント1A等)は、
前記無線通信端末の接続先が当該基準基地局と異なる基地局(以下、「切換先基地局」という;例えば、図1のアクセスポイント1B等)に切換えられた場合に、前記無線通信端末と前記通信相手との通信が終了するまで前記通信相手から前記無線通信端末宛に送信される情報を前記切換先基地局に対して転送する基準基地局転送手段(例えば、図3のトンネリング処理部13等)を備え
前記無線通信端末は、接続する基地局をサブネットを越えて切り換える際に、その切り換えが発呼要求を送信する前である場合には即座にIPアドレスの再取得を行い、発呼要求を送信した後であった場合にはIPアドレスの再取得を即座には行わずに切断要求を送信した後にIPアドレスの再取得を行うことを特徴としている。
本発明によれば、ハンドオーバー後に切換先の基地局と同一のネットワークアドレスのIPアドレスの再取得を行う必要がなくなって、ハンドオーバー処理の高速化をより安価に実現することができる。
以下に、本発明について、図面を用いて具体的な態様を説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
[実施形態1]
図1は、本発明を適用した実施形態1の無線通信システムの好適な一例として例示するIP電話システム100の概略構成を模式的に示した図である。
実施形態1のIP電話システム(無線通信システム)100は、例えば、IP電話端末2がユーザ等により所持されて通話先端末3と通話しながらA地点(POS-A)からE地点(POS-E)へと異なるサブネット間を移動する場合に、当該IP電話端末2が無線接続されるアクセスポイント1を切換えるハンドオーバー処理を行うことで通話(通信)を途絶えさせることなく行うものである。
具体的には、IP電話システム100は、例えば、図1に示すように、複数のアクセスポイント(AP)1、…(図1にあっては、第一〜第三のアクセスポイント1A、1B、1C等)と、これらアクセスポイント1の何れかとIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.11規格等の無線LANを介して接続されパケット通信(詳細後述)を行うIP電話端末2と、アクセスポイント1と社内LAN等の所定のネットワーク回線Nを介して接続された通話先端末3と、IP電話端末2のIPアドレスの登録・変更、IP電話の呼接続処理等を行うSIP(Session Initiation Protocol)サーバ6等から構成されている。
先ず、IP電話端末2について図2を参照して詳細に説明する。図2は、IP電話端末2のブロック図である。
図2に示すように、IP電話端末2は、例えば、所定のIPアドレス(例えば、「IP:192.168.1.10」等)を用いてアクセスポイント1と無線通信を行う無線通信処理部21と、接続先やハンドオーバー(切換え)先のアクセスポイント1を特定するアクセスポイント特定部22と、通話先を指定する通話先指定部23と、これら各部を制御する制御部24等を備えている。
無線通信処理部21は、例えば、アクセスポイント1と信号の送受信を行うための送受信用アンテナ21aを備え、この送受信用アンテナ21aからアクセスポイント1のサブネットに応じた所定の識別子「ESSID」を用いて所定の周波数「CH」で信号を送受信するものである。
具体的には、無線通信処理部21は、例えば、当該IP電話端末2周辺の無線リンクを確立可能なアクセスポイント1を所定のタイミングで検索する場合に、サブネットを識別する全ての識別子「ESSID」及び周波数「CH」について送受信用アンテナ21aからプローブ要求を送信するようになっている。即ち、無線通信処理部21は、例えば、識別子を「ESSID1」、「ESSID2」、「ESSID3」等とするプローブ要求を送受信用アンテナ21aから送信するようになっている。
また、無線通信処理部21は、アクセスポイント特定部22により接続先として特定されたアクセスポイント1と無線リンクを確立する際には、送受信用アンテナ21aからアソシエーション要求を送信するようになっており、アクセスポイント1からのアソシエーション応答により当該アクセスポイント1とIP電話端末2との間で無線リンクが確立される。
さらに、無線通信処理部21は、無線リンクの確立後に、アクセスポイント1を介して図示しないDHCPサーバから当該アクセスポイント1が接続されるサブネットにおけるIPアドレスを取得して、当該IPアドレスを用いて無線通信を行うようになっている。
また、無線通信処理部21は、例えば、アクセスポイント特定部22によりハンドオーバー先のアクセスポイント1(例えば、第二及び第三のアクセスポイント1B、1C(後述)等)が特定された場合には、当該アクセスポイント1をハンドオーバー先とするハンドオーバー先情報を現に接続されているアクセスポイント1(例えば、第一のアクセスポイント1A(後述)等)に送信するようになっている。
さらに、無線通信処理部21は、アドレス取得手段として、例えば、通話終了後にハンドオーバー先のアクセスポイント1が接続されるネットワークと同一のネットワークアドレスを取得するようになっている。無線通信処理部21は、例えば、通話終了後に、このアクセスポイント1を介して図示しないDHCPサーバから当該アクセスポイント1が接続されるサブネットにおけるIPアドレスを取得するようになっている。
具体的には、無線通信処理部21は、例えば、当該IP電話端末2の操作部の通話終了ボタン(図示略)のユーザによる操作や、通話先端末3から送信された切断要求信号の受信に基づいて、通話の終了を判断して、当該アクセスポイント1が接続されるサブネットにおけるIPアドレスを取得するようになっている。
アクセスポイント特定部22は、例えば、無線通信処理部21から送信されたプローブ要求に対してアクセスポイント1から応答(プローブ応答)があった場合に、当該プローブ応答の受信レベルを検出して、最も受信レベルの高いアクセスポイント1を接続先やハンドオーバー先のアクセスポイント1として特定するものである。
即ち、アクセスポイント特定部22は、例えば、ハンドオーバー先を特定する場合に、アクセスポイント1から送信され送受信用アンテナ21aにより受信した信号の受信レベルを所定のタイミングで検出して、受信レベルが所定値以下となっているか否かを判定する。そして、受信レベルが所定値以下となっていると判定された場合には、アクセスポイント特定部22は、切換先特定手段として、無線通信処理部21から送信されるプローブ要求に対して周辺のアクセスポイント1から送信されるプローブ応答の受信レベルを検出して、最も受信レベルの高いアクセスポイント1をハンドオーバー先のアクセスポイント1として特定するようになっている。
通話先指定部23は、指定手段として、特定の通信相手を指定するものであり、例えば、通話先端末の電話番号(図示略)を指定することにより通話する相手を指定するようになっている。
制御部24は、例えば、図示は省略するが、CPU、RAM、ROM等から構成されて、各部を統括的に制御するものである。
以下に、アクセスポイント1について、図3〜図5を参照して詳細に説明する。
図3は、アクセスポイント1のブロック図である。
なお、以下の説明にあっては、複数のアクセスポイント1、…のうち、IP電話端末2が通話開始の際に無線リンクを確立していたものを「基準アクセスポイント」と言い、ハンドオーバー先のアクセスポイント1を「切換先アクセスポイント」と言うこととする。また、「切換先アクセスポイント」のうち、再度のハンドオーバーが行われる毎にハンドオーバー先となるものを「再切換先アクセスポイント」と言うこととする。
図1に示すように、複数のアクセスポイント(基地局)1、…は、例えば、所定の周波数(CH)でIP電話端末2と無線リンクを確立して通信を行うものであり、所定のゲートウェイ4及び有線LAN5を介して相互に通信自在に接続されている。具体的には、例えば、ネットワークアドレスを「192.168.1」とするIPアドレスのサブネット(識別子;「ESSID1」)に接続される第一のアクセスポイント1Aと、ネットワークアドレスを「192.168.2」とするIPアドレスのサブネット(識別子;「ESSID2」)に接続される第二のアクセスポイント1Bと、ネットワークアドレスを「192.168.3」とするIPアドレスのサブネット(識別子;「ESSID3」)に接続される第三のアクセスポイント1C等を備えている。
第一のアクセスポイント1Aは、例えば、IPアドレス「192.168.1.1」の第一のゲートウェイ4Aに接続され、IPアドレスを「192.168.1.2」としてサブネット内で無線通信を行うものである。また、第二のアクセスポイント1Bは、例えば、IPアドレス「192.168.2.1」の第二のゲートウェイ4Bに接続され、IPアドレスを「192.168.2.2」としてサブネット内で無線通信を行うものである。また、第三のアクセスポイント1Cは、IPアドレス「192.168.2.1」の第三のゲートウェイ4Cに接続され、IPアドレスを「192.168.3.3」としてサブネット内で無線通信を行うものである。
また、複数のアクセスポイント1、…は、例えば、IP電話端末2との通信可能範囲を「R」で表し、少なくとも隣接するアクセスポイント1どうしの通信可能範囲Rが重なり合うように所定間隔を空けて配設されている。
また、各アクセスポイント1は、例えば、図3に示すように、無線リンクが確立(無線接続)されたIP電話端末2と信号の送受信を行う端末通信部11と、他のアクセスポイント1と通信を行うアクセスポイント通信部12と、他のアクセスポイント1とのIPトンネリングの形成・解除を行うトンネリング処理部13と、これら各部を制御する制御部14等を備えている。
端末通信部11は、例えば、IP電話端末2との間で無線リンクを確立して通信を行うものであり、IP電話端末2と信号の送受信を行うための送受信用アンテナ11aを備えている。
即ち、端末通信部11は、例えば、無線リンクの確立に際し、IP電話端末2から所定の周波数で送信されるプローブ要求を送受信用アンテナ11aにより受信して、当該プローブ要求に含まれるESSID情報と当該アクセスポイント1のESSIDが一致する場合にプローブ応答を返信するようになっている。
また、ハンドオーバー後であって、IP電話端末2との間で無線リンクが確立されているアクセスポイント1の端末通信部11は、例えば、IP電話端末2からSIPサーバ6に対し、通話の切断要求が発せられると、即ち、IP電話端末2と通話先端末3との通話の終了を検出すると、端末通信部11は、取得指示送信手段として、例えば、IP電話端末2に対して当該アクセスポイント1が接続されるサブネットと同一のネットワークアドレスのIPアドレスの取得を指示するIPアドレス取得要求を送信するようになっている。
アクセスポイント通信部12は、例えば、有線LAN5に接続されて、当該有線LAN5に接続された複数のアクセスポイント1、…どうしで各種情報の送受信を行うためのものである。
具体的には、アクセスポイント通信部12は、第一の接続指示送信手段として、IP電話端末2が接続されるアクセスポイント1が切換えられる場合に、この切換先アクセスポイントに対して当該基準アクセスポイントとのIPトンネリングによる接続指示を送信するようになっている。即ち、基準アクセスポイント(例えば、第一のアクセスポイント1A)の端末通信部11は、IP電話端末2から送信されたハンドオーバー先情報を受信すると、切換先アクセスポイント(例えば、第二のアクセスポイント1B等)に対して当該基準アクセスポイントとのIPトンネリング開始要求を送信するようになっている。
また、切換先アクセスポイント(例えば、第二のアクセスポイント1B等)のアクセスポイント通信部12は、例えば、変更指示送信手段として、アクセスポイント1の再度のハンドオーバーが行われると、当該再切換先アクセスポイント(例えば、第三のアクセスポイント1C等)をトンネリングの新たな接続先とするIPトンネリング変更要求(変更指示)を基準アクセスポイント(例えば、第一のアクセスポイント1A等)に送信するようになっている。
ここで、切換先アクセスポイント(再度のハンドオーバー後にあっては、再切換先アクセスポイント)のアクセスポイント通信部12は、ハンドオーバーが行われる毎に、IPトンネリング変更要求を基準アクセスポイントに対して送信するようになっている。
また、ハンドオーバー後であって、IP電話端末2との間で無線リンクが確立されている切換先アクセスポイント(再切換先アクセスポイント)のアクセスポイント通信部12は、解除指示送信手段として、例えば、IP電話端末2と通話先端末3との通話が終了すると、基準アクセスポイントに対してIPトンネリングの解除を指示するIPトンネリング解除要求を送信するようになっている。
また、基準アクセスポイントのアクセスポイント通信部12は、第二の接続指示送信手段として、切換先アクセスポイント(再切換先アクセスポイント)のアクセスポイント通信部12から送信されるIPトンネリング変更要求を受信する毎に、再切換先アクセスポイントに対して当該基準アクセスポイントとのIPトンネリングによる接続指示を送信するようになっている。即ち、基準アクセスポイントは、例えば、トンネリング処理部13による切換先アクセスポイント(例えば、第二のアクセスポイント1B)とのIPトンネリングの解除後に、再切換先アクセスポイント(例えば、第三のアクセスポイント1C)に対して当該基準アクセスポイントとのIPトンネリング開始要求を送信するようになっている。
トンネリング処理部13は、例えば、他のアクセスポイント1との間でIPトンネリングを形成したり、当該IPトンネリングを解除して他のアクセスポイント1との間でのデータのパケット通信を制御するようになっている。
具体的には、切換先アクセスポイントのトンネリング処理部13は、トンネリング接続手段として、例えば、基準アクセスポイントから送信されたIPトンネリング開始要求(接続指示)のアクセスポイント通信部12による受信に基づいて、当該切換先アクセスポイントと基準アクセスポイントとをIPトンネリングによりデータ通信可能に接続するようになっている。そして、切換先アクセスポイント(再度のハンドオーバー後にあっては、再切換先アクセスポイント)のトンネリング処理部13は、切換先基地局転送手段(再切換先基地局転送手段)として、通話先端末3とIP電話端末2との通話が終了するまで、IP電話端末2から発信され受信したデータをIPトンネリングを介して基準アクセスポイントに転送するようになっている。
また、基準アクセスポイントのトンネリング処理部13は、基準基地局転送手段として、IP電話端末2と通話先端末3との通話が終了するまで、この通話先端末3からIP電話端末2に送信されるデータ、即ち、通話先端末3から切換先アクセスポイント(再度のハンドオーバー後にあっては、再切換先アクセスポイント(新たな切換先アクセスポイント))宛に送信されネットワーク回線Nを介して当該基準アクセスポイントにて受信したデータをIPトンネリングを介して切換先アクセスポイント(再切換先アクセスポイント)に対して転送するようになっている。
さらに、基準アクセスポイントのトンネリング処理部13は、トンネリング解除手段として、例えば、切換先アクセスポイント(再度のハンドオーバー後にあっては、再切換先アクセスポイント)からのIPトンネリング変更要求及び再切換先アクセスポイントからのIPトンネリング解除要求示のアクセスポイント通信部12による受信に基づいて、当該基準アクセスポイントと何れかの切換先アクセスポイントとの間を接続するIPトンネリングを解除するようになっている。
以下に、図4及び図5を参照してトンネリング処理に係るデータのパケット構造について説明する。
図4は、パケット通信にて送受信されるデータの一般的なパケット構造を模式的に示した図である。図5(a)は、一般的なIPトンネリングを介して送受信されるデータのパケット構造を模式的に示したものであり、図5(b)は、本実施形態のIPトンネリングを介して送受信されるデータのパケット構造を模式的に示した図である。
なお、図5(a)及び図5(b)にあっては、ヘッダ部分を簡略化して、「プロトコル番号」、「通信元IPアドレス」及び「通信先IPアドレス」を表している。
先ず、パケット通信される一般的なデータは、例えば、図4に示すように、IPパケットとして通信される「データ部」と、この「データ部」よりも前に付けられる「IPヘッダ部」等からなるパケット構造をなしている。
「IPヘッダ部」は、より具体的には、例えば、IPプロトコルのバージョンを表す「バージョン」と、IPヘッダ部分のサイズを表す「ヘッダ長」と、IPパケットの優先度などのTOSを表す「サービス・タイプ」と、IPパケット全体のサイズを表す「データグラム長」と、IPフラグメンテーションにおいて利用される、IPパケットを識別する数値を表す「ID」と、フラグメンテーションにおいてフラグ情報を表す「フラグ」及び「フラグメント・オフセット」と、IPパケットの寿命を表す「TTL」と、上位トランスポート層のネットワークプロトコルの種類を表す「プロトコル番号」と、ヘッダ部分のチェックサム「ヘッダ・チェックサム」と、「通信元端末IPアドレス」と、「通信先端末IPアドレス」と、付加的な機能情報を表す「オプション」等から構成されている。
これに対して、IPトンネリングを介してパケット通信されるデータは、例えば、図5(a)に示すように、一般的なデータのパケット構造におけるデータ全体を「データ部」として、このデータ全体(「データ部」)に「IPヘッダ部」(第一のヘッダ部)に相当するヘッダ部としての「第二のヘッダ部」が付けられた構造をなしている。
「第二のヘッダ部」は、例えば、「IPヘッダ部」と略同様の構成をなし、具体的には、図5(a)等に示すように、「プロトコル番号」、「通信元IPアドレス」、「通信先IPアドレス」等から構成されている。
そして、アクセスポイント1どうしがIPトンネリングにより接続されている場合、例えば、図5(b)に示すように、IP電話端末2から第二のアクセスポイント1B→IPトンネリング→第一のアクセスポイント1Aを経て通話先端末3にデータが送信される場合、通常パケットのIPヘッダ部の「通信元IPアドレス1」には「IP電話端末IPアドレス」が「通信先IPアドレス1」には「通話先端末IPアドレス」が付されるようになっている。
通信元側となる第二のアクセスポイント1Bのトンネリング処理部13は、例えば、「通信元IPアドレス2」に「第二のアクセスポイント1BのIPアドレス」が「通信先IPアドレス2」に「第一のアクセスポイント1AのIPアドレス」が付された第二ヘッダ部を通常パケットに付加する処理を行うようになっている。これにより、IP電話端末2から送信される第二のアクセスポイント1Bにて受信されたデータがIPトンネリングを介して第一のアクセスポイント1Aに送られるようになっている。
そして、通信先側の第一のアクセスポイント1Aのトンネリング処理部13は、例えば、第二のアクセスポイント1Bのトンネリング処理部13にて通常パケットに付加された第二のヘッダ部を取り除く処理を行うようになっている。これにより、第一のアクセスポイント1Aにて受信されたパケットがネットワーク回線Nを経由して通話先端末3に送信されるようになっている。
一方、通話先端末3から第一のアクセスポイント1A→IPトンネリング→第二のアクセスポイント1Bを経てIP電話端末2にデータが送信される場合、通常パケットの「通信元IPアドレス1」には「通話先端末IPアドレス」が「通信先IPアドレス1」には「IP電話端末IPアドレス」が付されるようになっている。
通信元側となる第一のアクセスポイント1Aのトンネリング処理部13は、例えば、「通信元IPアドレス2」に「第一のアクセスポイント1AのIPアドレス」が「通信先IPアドレス2」に「第二のアクセスポイント1BのIPアドレス」が付された第二ヘッダ部を通常パケットに付加する処理を行うようになっている。これにより、通話先端末3から送信される第一のアクセスポイント1Aにて受信されたデータがIPトンネリングを介して第二のアクセスポイント1Bに送られるようになっている。
そして、通信先側の第二のアクセスポイント1Bのトンネリング処理部13は、例えば、第一のアクセスポイント1Aのトンネリング処理部13にて通常パケットに付加された第一のヘッダ部を取り除く処理を行うようになっている。これにより、第二のアクセスポイント1Bにて受信されたデータがネットワーク回線Nを経由して通話先端末3に送信されるようになっている。
なお、音声データを運ぶ通常パケットの場合、例えば、UDP(User Datagram Protocol)タイプのプロトコルが使用され、当該プロトコル番号1として例えば、「17」が付されるようになっている。
また、IPトンネリングを通信されるパケットは、例えば、通常パケットと区別する上で、通常パケットでは不使用のプロトコル番号2として例えば、「4」等が使用されるようになっている。
制御部14は、例えば、図示は省略するが、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等から構成されて、各部を統括的に制御するものである。
通話先端末3については、詳細な説明は省略するが、IP電話端末2と通話可能なものであれば如何なる端末であっても良く、例えば、IP電話端末、一般電話端末、携帯電話端末等が挙げられる。
次に、IP電話システム100によるハンドオーバー処理について図6〜図10を参照して説明する。
ここで、図6及び図7は、ハンドオーバー処理に係る動作の一例を示す図である。また、図8〜図10は、図6及び図7のハンドオーバー処理におけるIP電話システム100の状態を模式的に示した図である。
なお、図6及び図7にあっては、アクセスポイント1とIP電話端末2との無線通信を「波線」で表し、アクセスポイント1どうし並びにアクセスポイント1と通話先端末3との有線通信を「実線」で表すものとする。
通話先端末3との通話の際に、先ず、IP電話端末2は、無線リンクを確立可能なアクセスポイント1の検索を全ての識別子「ESSID」及び周波数「CH」で行う。具体的には、IP電話端末2の電源が投入されると、無線通信処理部21は、送受信用アンテナ21aから所定の識別子「ESSID」のプローブ要求を所定の周波数「CH」で送信する。
そして、複数のアクセスポイント1、…にあっては、端末通信部11の送受信用アンテナ11aによりプローブ要求を受信すると、当該プローブ要求に含まれる識別子(例えば、「ESSID1」等)と一致する識別子のアクセスポイント1(例えば、識別子「ESSID1」の第一のアクセスポイント1A等)は、プローブ要求に対してプローブ応答を返信する。
IP電話端末2にあっては、送受信用アンテナ21aによりプローブ応答を受信すると、アクセスポイント特定部22は、プローブ応答の受信レベルを検出して、最も受信レベルの高いアクセスポイント1を接続先のアクセスポイント1(例えば、第一のアクセスポイント1A等)として特定する。そして、無線通信処理部21は、特定したアクセスポイント1と無線リンクを確立するために、送受信用アンテナ21aからアソシエーション要求を送信する。
そして、接続先となる第一のアクセスポイント1Aが、端末通信部11の送受信用アンテナ11aにより受信したアソシエーション要求に対してアソシエーション応答を返信することで、当該アクセスポイント1AとIP電話端末2との間で無線リンクが確立する(ステップS1;図6参照)。
続けて、IP電話端末2の無線通信処理部21は、例えば、DHCP取得要求を第一のアクセスポイント1Aを介してDHCPサーバ(図示略)に送信し、当該DHCPサーバから当該アクセスポイント1Aが接続されるサブネットにおけるIPアドレス「IP:192.168.1.10」を取得する(ステップS2)。
そして、IP電話端末2は、例えば、第一のアクセスポイント1Aを介してSIPサーバ6に登録要求(例えば、電話番号とIPアドレス等)を送信する(ステップS3)。
SIPサーバ6は、IP電話端末2からの登録要求を受信すると、当該登録要求に対して応答し(ステップS4)、IP電話端末2のIPアドレスと電話番号とを対応付けて登録する(ステップS5)。
なお、この時点では、未だ基準アクセスポイントは決定されていない。
また、その後IP電話端末2が移動して、アクセスポイント1からの信号の受信レベルが変化すると、最も受信レベルの高いアクセスポイント1と無線リンクを形成する。ここで、サブネットを越えて別のアクセスポイント1と無線リンクを形成した場合には、再度、DHCPサーバからのIPアドレスの取得、SIPサーバ6への登録が行われる。
その後、IP電話端末2の操作部の通話開始ボタン(図示略)がユーザにより操作されると、無線通信処理部21は、第一のアクセスポイント1Aを介してSIPサーバ6に発呼要求信号を送信する(ステップS6)。
ここで、第一のアクセスポイント1Aは、無線リンクが張られているIP電話端末2から送信される発呼要求信号を監視しており、この発呼要求信号を検出することにより、自身が基準アクセスポイントであること及び通話の開始を認識する(ステップS7)。
また、SIPサーバ6は、受信した発呼要求信号を通話先端末3に転送して(ステップS8)、発呼要求に対して通話先端末3から送信される発呼応答信号を受信すると、第一のアクセスポイント1Aを介してIP電話端末2に送信する(ステップS9)。
なお、第一のアクセスポイント1Aが発呼要求信号を監視する代わりに、例えば、IP電話端末2が、発呼要求信号を送信した際に、経由したアクセスポイント1Aに対して「基準アクセスポイントであること」を報知するような構成としても良い。
また、IP電話端末が発呼要求する代わりに、例えば、通話先端末3が発呼要求するようにしても良い。
そして、IP電話端末2は、SIPサーバ6を介して接続された通話先端末3との通話(通信)が開始され、当該通話先端末3との間で第一のアクセスポイント1Aを介してデータの送受信が行われる(ステップS10及びS11)。
なお具体的には、図示していないが、IP電話端末2は、通話先端末3の電話番号を含む発呼要求信号をSIPサーバ6に送信し、SIPサーバ6は、自身が所持する電話番号―IPアドレス対応表を元に通話先端末3のIPアドレスを検索し、検索された通話先端末3のIPアドレス宛てに、上記発呼要求を転送する。通話先端末3は、上記発呼要求を受け、通話先端末3の利用者が通話先端末3の通話開始ボタン等を押すと、発呼応答をSIPサーバ6を介してIP電話端末に返信する。
そして、IP電話端末2のアクセスポイント特定部22は、例えば、第一のアクセスポイント1Aから送信され送受信用アンテナ21aにより受信した信号の受信レベルを所定のタイミングで検出して、受信レベルが所定値以下となっているか否かを判定する。
ここで、IP電話端末2を所持するユーザが、A地点からB地点に移動すると(図8参照)、アクセスポイント特定部22により検出される第一のアクセスポイント1Aからの信号の受信レベルが次第に低下することとなる。そして、アクセスポイント特定部22により受信レベルが所定値以下となっていると判定された場合には、無線通信処理部21は、サブネットを識別する全ての識別子「ESSID」及び周波数「CH」について送受信用アンテナ21aからプローブ要求を送信してハンドオーバー先のアクセスポイント1を検索する。そして、当該プローブ要求に対して周辺のアクセスポイント1からプローブ応答があると、アクセスポイント特定部22は、当該プローブ応答の送受信用アンテナ21aによる受信レベルを検出して、最も受信レベルの高いアクセスポイント1をハンドオーバー先のアクセスポイント1(例えば、第二のアクセスポイント1B)として特定する。
その後、無線通信処理部21は、ハンドオーバー先のアクセスポイント1を規定するハンドオーバー先情報を送受信用アンテナ21aから第一のアクセスポイント1Aに対して送信する(ステップS12)。
第一のアクセスポイント1Aにあっては、IP電話端末2から送信されたハンドオーバー先情報を端末通信部11により受信すると、アクセスポイント通信部12は、ハンドオーバー先である第二のアクセスポイント1Bに対してIPトンネリング開始要求を送信する(ステップS13)。
第二のアクセスポイント1Bにあっては、第一のアクセスポイント1Aから送信されたIPトンネリング開始要求をアクセスポイント通信部12により受信すると、トンネリング処理部13は、当該第二のアクセスポイント1Bと第一のアクセスポイント1AとをIPトンネリングによりデータ通信可能に接続する(ステップS14)。
そして、IP電話端末2から第二のアクセスポイント1Bと同一の識別子「ESSID2」を用いて送信されたアソシエーション要求に対して、第二のアクセスポイント1Bがアソシエーション応答することにより、当該第二のアクセスポイント1BとIP電話端末2との間で無線リンクが確立する(ステップS15)。
これによって、IP電話端末2と通話先端末3との通話の際には、通話先端末3から送信される通信データは、第一のアクセスポイント1Aにより受信され、当該アクセスポイント1Aにて第二ヘッダ部が付加された後、IPトンネリングを通過して第二のアクセスポイント1Bへと送られ、当該アクセスポイント1Bにて第二ヘッダ部が取り除かれた後、ネットワーク回線Nを経由してIP電話端末2へと送信される(ステップS16)。一方、IP電話端末2から送信される通信データは、第二のアクセスポイント1Bにより受信され、当該アクセスポイント1Bにて第二ヘッダ部が付加された後、IPトンネリングを通過して第一のアクセスポイント1Aへと送られ、当該アクセスポイント1Aにて第二ヘッダ部が取り除かれた後、ネットワーク回線Nを経由して通話先端末3へと送信される(ステップS17)。
その後、IP電話端末2を所持するユーザが、C地点からD地点へと移動すると(図9参照)、アクセスポイント特定部22により検出されるIP電話端末2からの信号の受信レベルが次第に低下することとなる。
そして、上記とほぼ同様にして、アクセスポイント特定部22により再ハンドオーバー先のアクセスポイント1(例えば、第三のアクセスポイント1C等)が特定されると、無線通信処理部21は、再ハンドオーバー先のアクセスポイント1を規定するハンドオーバー先情報を送受信用アンテナ21aから第二のアクセスポイント1Bに対して送信する(ステップS18;図7参照)。
第二のアクセスポイント1Bにあっては、IP電話端末2から送信されたハンドオーバー先情報を端末通信部11により受信すると、アクセスポイント通信部12は、第一のアクセスポイント1Aに対して再ハンドオーバー先である第三のアクセスポイント1Cをトンネリングの新たな接続先とするIPトンネリング変更要求を送信する(ステップS19)。
第一のアクセスポイント1Aにあっては、第二のアクセスポイント1Bから送信されたIPトンネリング変更要求をアクセスポイント通信部12により受信すると、トンネリング処理部13は、当該第一のアクセスポイント1Aと第二のアクセスポイント1Bとの間を接続するIPトンネリングを解除する(ステップS20)。
続けて、アクセスポイント通信部12は、再ハンドオーバー先である第三のアクセスポイント1Cに対してIPトンネリング開始要求を送信する(ステップS21)。
第三のアクセスポイント1Cにあっては、第一のアクセスポイント1Aから送信されたIPトンネリング開始要求をアクセスポイント通信部12により受信すると、トンネリング処理部13は、当該第三のアクセスポイント1Cと第一のアクセスポイント1AとをIPトンネリングによりデータ通信可能に接続する(ステップS22)。
そして、IP電話端末2から第三のアクセスポイント1Cと同一の識別子「ESSID3」を用いて送信されたアソシエーション要求に対して、第三のアクセスポイント1Cがアソシエーション応答することにより、当該第三のアクセスポイント1CとIP電話端末2との間で無線リンクが確立する(ステップS23)。
これによって、IP電話端末2と通話先端末3との通話の際には、通話先端末3から送信される通信データは、第一のアクセスポイント1Aにより受信され、当該アクセスポイント1Aにて第二ヘッダ部が付加された後、IPトンネリングを通過して第三のアクセスポイント1Cへと送られ、当該アクセスポイント1Cにて第二ヘッダ部が取り除かれた後、IP電話端末2へと送信される(ステップS24)。一方、IP電話端末2から送信される通信データは、第三のアクセスポイント1Cにより受信され、当該アクセスポイント1Cにて第二ヘッダ部が付加された後、IPトンネリングを通過して第一のアクセスポイント1Aへと送られ、当該アクセスポイント1Aにて第二ヘッダ部が取り除かれた後、ネットワーク回線Nを経由して通話先端末3へと送信される(ステップS25)。
その後、IP電話端末2の操作部の通話終了ボタン(図示略)がユーザにより操作されると、無線通信処理部21は、第三のアクセスポイント1C、IPトンネリング及び第一のアクセスポイント1Aを介してSIPサーバ6に切断要求信号を送信する(ステップS26)。
SIPサーバ6は、受信した切断要求信号を通話先端末3に転送して(ステップS27)、切断要求に対して通話先端末3から送信される切断応答信号を受信すると、第一のアクセスポイント1A、IPトンネリング及び第三のアクセスポイント1Cを介してIP電話端末2に送信する(ステップS28)。
ここで、第三のアクセスポイント1Cは、無線リンクが張られているIP電話端末2から送信される切断要求信号を監視しており、この切断要求信号を検出すると(ステップS29)、アクセスポイント通信部12は、IP電話端末2と通話先端末3との通話終了後、第一のアクセスポイント1Aに対してIPトンネリング解除要求を送信する(ステップS30;図10参照)。
第一のアクセスポイント1Aにあっては、第三のアクセスポイント1Cから送信されたIPトンネリング解除要求をアクセスポイント通信部12により受信すると、トンネリング処理部13は、当該第一のアクセスポイント1Aと第三のアクセスポイント1Cとの間を接続するIPトンネリングを解除する(ステップS31)。
これにより、第一のアクセスポイント1Aの基準アクセスポイントとしての機能が解除される(ステップS32)。
通話終了後、IP電話端末2の無線通信処理部21は、第三のアクセスポイント1Cを介して図示しないDHCPサーバから当該アクセスポイント1Cが接続されるサブネットにおけるIPアドレス「IP:192.168.3.10」を取得する(ステップS33;図10参照)。
そして、IP電話端末2は、例えば、第三のアクセスポイント1Cを介してSIPサーバ6に登録要求を送信する(ステップS34)。
SIPサーバ6は、IP電話端末2からの登録要求を受信すると、当該登録要求に対して応答し(ステップS35)、IP電話端末2のIPアドレスと電話番号とを対応付けて登録する(ステップS36)。
なお、IP電話端末2の操作部の通話終了ボタン(図示略)がユーザにより操作される代わりに、通話先端末3の通話終了ボタンが操作されるようにしても良い。この場合、第三のアクセスポイント1Cは、通話先端末3から送信された切断要求信号を検出することに基づいて、通話終了を認識することができるようになっている。
以上のように、実施形態1のIP電話システム100によれば、ハンドオーバーの際に基準アクセスポイントと切換先アクセスポイントとをIPトンネリングにより接続することができるので、ハンドオーバー後に切換先のアクセスポイント1と同一のネットワークアドレスのIPアドレスの再取得を行う必要がなくなって、DHCPサーバからの新IPアドレスの取得処理と、SIPサーバ6及び通話先端末3へのIPアドレス変更要求処理と、通話先端末3でのIP電話端末2のIPアドレス変更処理を行う必要がなくなり、通話が途絶えて再開するまでの時間を大幅に削減することができる。
この結果、ハンドオーバーしても音切れの少ない、又は、無視できる程度の音切れしか生じないIP電話システム100をより安価に実現することができる。
また、IP電話端末2が異なるサブネット間を移動してハンドオーバーが再度行われても、基準アクセスポイントと再切換先アクセスポイントとの間を新たなIPトンネリングにより接続し直すことができるので、ハンドオーバーを何度繰り返しても、通話が途絶えて再開するまでの時間を大幅に削減することができ、ハンドオーバーしても音切れの少ない、又は、無視できる程度の音切れしか生じないIP電話システム100をより安価に実現することができる。
また、IP電話端末2は、通話先端末3との通話終了後に、IPアドレスを取得するとともに不要になったIPトンネリングを解除することで、アクセスポイント1の処理の負担を軽減させることができる。
このようにして、ハンドオーバーしても音切れの少ない、又は、無視できる程度の音切れしか生じないIP電話システム100をより安価に実現することができる。
<変形例1>
以下に、変形例1のIP電話システムについて図11〜図16を参照して説明する。
図11及び図12は、変形例1のIP電話システムによるハンドオーバー処理に係る動作の一例を示す図である。図13は、アクセスポイント201のブロック図である。また、図14は、変形例1のIP電話システムによるハンドオーバーの実行タイミングを説明する図である。また、図15は、IP電話端末202のブロック図である。
なお、変形例1のIP電話システムは、アクセスポイント201の構成及びハンドオーバー先特定処理の実行以外の点では上記実施形態1と略同様であるので、同様の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
変形例1のIP電話システムは、ハンドオーバー先の特定、及びハンドオーバーの実行タイミングの指示を無線リンクを形成しているアクセスポイント201主導で行うようになっている。
即ち、図13に示すように、アクセスポイント201は、無線リンクが確立していないIP電話端末202からの信号の受信レベルを検出する受信レベル検出部215を有する端末通信部211と、ハンドオーバー先のアクセスポイント201を特定するアクセスポイント特定部216と、ハンドオーバーのタイミングを決定するタイミング決定部217等を備えている。
端末通信部211は、例えば、無線リンクが確立したIP電話端末202との信号の送受信の際に、当該IP電話端末202から送信され送受信用アンテナ11aにより受信した信号の第一の受信レベルを所定のタイミングで取得するようになっている。
さらに、端末通信部211は、例えば、取得した第一の受信レベルが所定値(例えば、閾値A;図14参照)以下となっているか否かを判定するようになっている。
ここで、閾値Aは、例えば、複数のアクセスポイント201、…の通信可能範囲R並びに信号の受信レベル等を考慮して規定されるものであり、具体的には、隣接するアクセスポイント201どうしの通信可能範囲Rが重なり合う領域でIP電話端末202との通信が途絶えることなく所定の受信レベルを維持できる程度に規定されている。
また、端末通信部211は、アクセスポイント特定部216(後述)によるハンドオーバー先のアクセスポイント201の特定後、当該ハンドオーバー先のアクセスポイント201の識別子「ESSID」、周波数「CH」、MAC(Media Access Control)アドレスをIP電話端末202に送信するようになっている。
また、端末通信部211は、例えば、IP電話端末202と接続しているアクセスポイント201(例えば、第一のアクセスポイント1A)による第一の受信レベルと、ハンドオーバー先のアクセスポイント201(例えば、第二のアクセスポイント1B)によるIP電話端末202からの信号の第二の受信レベルとの差が特定値(例えば、閾値B)以上となっていると判定された場合(後述)に、基準アクセスポイントとのアソシエーション解除信号をIP電話端末202に送信するものである。
即ち、端末通信部211は、例えば、タイミング決定部217にて第一の受信レベルと第二の受信レベルとの差が閾値B以上となっていると判定されることでハンドオーバーのタイミングが決定された場合に(詳細後述)、アソシエーション解除信号をIP電話端末202に送信するようになっている。これにより、IP電話端末202に対して、基準アクセスポイントとの無線リンクの解除、並びにハンドオーバー先となる周辺アクセスポイント201に対するハンドオーバーの実行が指示されるようになっている。
ここで、端末通信部211は、ハンドオーバー先のアクセスポイント201に対するハンドオーバーの実行指示をIP電話端末202に送信する実行指示送信手段として機能する。
即ち、基準アクセスポイントのアクセスポイント通信部12は、例えば、端末通信部211にて第一の受信レベルが所定値以下となっていると判定された場合に、複数のアクセスポイント201、…のうち、周辺アクセスポイント201によるIP電話端末202から送信される信号の第二の受信レベルの測定要求信号を有線LAN5に接続された周辺アクセスポイント201送信するようになっている。
また、アクセスポイント201のアクセスポイント通信部12は、例えば、受信レベル検出部215により検出された第二の受信レベル(後述)を基準アクセスポイントに送信するようになっている。
これにより、基準アクセスポイントのアクセスポイント通信部12は、周辺アクセスポイント201によるIP電話端末202から送信される信号の第二の受信レベルを取得することができるようになっている。
受信レベル検出部215は、例えば、受信レベル検出用アンテナ215aを備え、無線リンクが確立していないIP電話端末202から送信される信号の第二の受信レベルを検出するためのものである。
即ち、例えば、周辺アクセスポイント201の受信レベル検出部215は、基準アクセスポイントのアクセスポイント通信部12から送信された測定要求信号の受信に基づいて、受信レベル検出用アンテナ215aにより第二の受信レベルを検出するようになっている。具体的には、例えば、IP電話端末202と第一のアクセスポイント1Aが無線リンクを確立している場合にあっては、その周辺に存する第二及び第三のアクセスポイント1B、1Cの受信レベル検出部215は、IP電話端末202から所定の周波数で送信される信号を受信レベル検出用アンテナ215aにより受信してその受信レベルを検出するようになっている。
アクセスポイント特定部216は、複数のアクセスポイント201、…の中からハンドオーバー先のアクセスポイント201を特定するためのものである。
即ち、基準アクセスポイントのアクセスポイント特定部216は、例えば、周辺アクセスポイント201の受信レベル検出部215にて検出され有線LAN5を介してアクセスポイント通信部12により取得された複数の第二の受信レベルに基づいて、最も高い受信レベルの周辺アクセスポイント201をハンドオーバー先のアクセスポイント201として特定するようになっている。
基準アクセスポイントのタイミング決定部217は、アクセスポイント特定部216により特定されたハンドオーバー先の周辺アクセスポイント201による第二の受信レベルと当該基準アクセスポイントによる第一の受信レベルとの差に基づいて、ハンドオーバーのタイミングを決定するものである。
即ち、基準アクセスポイントのタイミング決定部217は、所定のタイミングでハンドオーバー先の周辺アクセスポイント201の第二の受信レベルを取得して、当該基準アクセスポイントの第一の受信レベルとの差が特定値(例えば、閾値B;図14参照)以上となっているか否かを判定するようになっている。そして、タイミング決定部217は、受信レベルの差が閾値B以上となっていると判定された時点をハンドオーバーの実行タイミングとして決定するようになっている。
次に、IP電話端末202について図15を参照して説明する。
図15に示すように、IP電話端末202は、例えば、ハンドオーバーの実行を処理するハンドオーバー実行処理部222を備えている。
ハンドオーバー実行処理部222は、例えば、基準アクセスポイントから送信され無線通信処理部21にて受信されたアソシエーション解除信号に基づいて、当該基準アクセスポイントとの無線リンクの解除、並びにハンドオーバー先のアクセスポイント201に対するハンドオーバーの実行を処理するようになっている。
変形例1のIP電話システムによるハンドオーバー処理について図11及び図12並びに図16を参照して説明する。
図16は、IP電話システム100によるハンドオーバー先特定処理に係る動作の一例を模式的に示した図である。
図11及び図12に示すように、変形例1のIP電話システムにあっては、実施形態1のIP電話システム100と同様にして第一のアクセスポイント1AとIP電話端末202との間で無線リンクが確立された後、当該IP電話端末202と通話先端末3との間でデータ通信が行われている際に(ステップS1〜ステップS11)、第一のアクセスポイント1A主導でハンドオーバー先特定処理を行うようになっている(ステップS50)。
以下に、ハンドオーバー先特定処理について図16を参照して詳細に説明する。
図16に示すように、第一のアクセスポイント1Aの端末通信部211は、IP電話端末202との無線リンクが確立した状態で、当該IP電話端末202から送信され送受信用アンテナ11aにより受信した信号の受信レベル(第一の受信レベル)を所定のタイミングで検出して、第一の受信レベルが閾値A(図14参照)以下となっているか否かを判定する。
ここで、IP電話端末202を所持するユーザが、A地点からB地点に移動すると、端末通信部211により検出されるIP電話端末202からの信号の受信レベルが次第に低下することとなる(図14参照)。
そして、端末通信部211が、第一の受信レベルが閾値A以下となっていると判定すると(ステップS51)、アクセスポイント通信部12は、周辺アクセスポイント201(例えば、第二及び第三のアクセスポイント1B、1C)に対して、IP電話端末202から送信される信号の受信レベル(第二の受信レベル)の測定要求信号(検出指示)を有線LAN5を介して送信する(ステップS52)。
第二及び第三のアクセスポイント1B、1Cにあっては、アクセスポイント通信部12により受信した第二の受信レベルの測定要求信号に基づいて、受信レベル検出部215は、IP電話端末202から所定の周波数で送信される信号を受信レベル検出用アンテナ215aにより受信してその受信レベル(第二の受信レベル)を検出する(ステップS53)。
その後、アクセスポイント通信部12は、受信レベル検出部215により検出された第二の受信レベルを受信レベル取得応答信号により第一のアクセスポイント1Aに対して返信する(ステップS54)。
第一のアクセスポイント1Aにあっては、アクセスポイント通信部12により第二及び第三のアクセスポイント1B、1Cから送信された各々の第二の受信レベルを受信すると、アクセスポイント特定部216は、最も高い受信レベルのアクセスポイント201(例えば、第二のアクセスポイント1B)をハンドオーバー先のアクセスポイント201として特定する(ステップS55)。
そして、端末通信部211は、IP電話端末202に対してハンドオーバー先の第二のアクセスポイント1Bの識別子「ESSID」、周波数「CH」、MAC(Media Access Control)アドレスを送信(通知)する(ステップS56)。
その後、第一のアクセスポイント1Aのタイミング決定部217は、所定のタイミングでハンドオーバー先の第二のアクセスポイント1Bの第二の受信レベルを取得して、当該第一のアクセスポイント1Aの第一の受信レベルとの差が閾値B以上となっているか否かを判定する。
即ち、第一のアクセスポイント1Aの端末通信部211は、IP電話端末202からの信号の第一の受信レベルを所定のタイミングで検出するとともに、アクセスポイント通信部12は、第二のアクセスポイント1Bに対して、IP電話端末202からの信号の第二の受信レベルの取得要求を送信する(ステップS57)。
そして、第二のアクセスポイント1Bにあっては、アクセスポイント通信部12は、受信レベル検出部215により検出された第二の受信レベルを受信レベル取得応答信号により第一のアクセスポイント1Aに対して返信する(ステップS58)。
そして、第一受信レベルと第二の受信レベルの差が閾値B以上となっていると判定され、ハンドオーバーのタイミングが決定すると(ステップS59)、端末通信部211は、IP電話端末202に対して、アソシエーション解除信号を送受信用アンテナ11aから送信することで、ハンドオーバー先特定処理を終了する(ステップS60)。
続けて、アクセスポイント通信部12は、特定されたハンドオーバー先である第二のアクセスポイント1Bに対してIPトンネリング開始要求を送信する(ステップS13;図11参照)。
なお、ハンドオーバー先のアクセスポイント201の再切換が再度行われる場合にも、現にIP電話端末202と無線リンクが確立されているアクセスポイント201(例えば、第二のアクセスポイント1B等)の主導でハンドオーバー先特定処理が実行されるようになっている。
以上のように、変形例1のIP電話システムによれば、IP電話端末202と無線接続されているアクセスポイント201は、当該IP電話端末202から送信される信号の周辺のアクセスポイント201による受信レベルを取得してハンドオーバー先を特定することができる。即ち、各アクセスポイント201は、IP電話端末202との通信用の送受信用アンテナ11aの他に受信レベル検出用アンテナ215aを具備する受信レベル検出部215を備えているので、所定のIP電話端末202と通信中であっても、他のIP電話端末202からの信号の受信レベルの検出を適正に行うことができる。さらに、周辺アクセスポイント201の第二の受信レベルと接続アクセスポイント201の第一の受信レベルの差が閾値B以上となった場合に、IP電話端末202に対してハンドオーバーの実行を指示することができる。
従って、IP電話端末202と接続アクセスポイント201との無線通信を途絶えさせることなく、当該アクセスポイント201主導でハンドオーバーを適正に行うことができる。
なお、上記変形例1にあっては、アクセスポイント201に自己と無線リンクを確立しているIP電話端末202以外のIP電話端末202からの信号の受信レベルを検出する受信レベル検出部を備えることにより、ハンドオーバーの実行タイミングを決定するようにしたが、これに限られるものではない。例えば、切換先アクセスポイントの端末通信部211の周波数をIP電話端末202と無線リンクを確立しているアクセスポイント201の無線通信の周波数に切換えることにより、当該端末通信部211を用いてIP電話端末202からの信号の受信レベルを検出するようにしても良い。
これによって、切換先アクセスポイントが端末通信部211により他のIP電話端末202と無線リンクを確立した状態であっても、切換先アクセスポイントのIP電話端末202からの信号の受信レベルを受信レベル検出専用のアンテナを備えることなく適正に行うことができる。
また、上記実施形態1及び変形例1にあっては、アクセスポイントの切換後に再度切換え(ハンドオーバー)を行う構成のものを例示したが、これに限られるものではなく、例えば、基準アクセスポイントから切換先アクセスポイントにハンドオーバーされた後は、そのまま通話終了となるような構成のシステムであっても良い。
[実施形態2]
以下に、実施形態2のIP電話システム300について図17〜図20を参照して説明する。
ここで、図17は、本発明を適用した実施形態2のIP電話システム300の概略構成を模式的に示した図である。また、図18は、アクセスポイント301のブロック図である。
なお、実施形態2のIP電話システム300は、アクセスポイント301の構成以外の点では上記実施形態1と略同様であるので、同様の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
実施形態2のIP電話システム300のアクセスポイント301は、図17に示すように、ハンドオーバーの際のIP電話端末302からのプローブ要求に対して基準アクセスポイントが接続するサブネットの識別子と同一の仮識別子のプローブ応答をすることで、IP電話端末302と仮のサブネットを介して無線接続されるようになっている。
なお、図17にあっては、第二のアクセスポイント1Bの正規のサブネットの通信可能範囲R2を二点鎖線で表し、仮のサブネットの通信可能範囲R1を一点鎖線で表すものとする。
基準アクセスポイント(例えば、第一のアクセスポイント1A等)のアクセスポイント通信部312は、IP電話端末302との無線リンクが確立されると、仮識別情報生成手段として、自己が接続するサブネットの識別子「ESSID」と同一の仮「ESSID」及びIP電話端末302のMACアドレス情報を含む仮ESSID使用命令を作成するようになっている。
また、アクセスポイント通信部312は、仮識別情報送信手段として、作成された仮ESSID使用命令を事前に登録されている全ての周辺のアクセスポイント301に対して有線LAN5を介して送信するようになっている。
なお、基準アクセスポイント(例えば、第二のアクセスポイント1B等)とIPトンネリングにより接続されている周辺アクセスポイント(第一のアクセスポイント1A等)は、例えば、仮ESSID使用命令の送信対象から除外されるようになっている。
また、基準アクセスポイント(例えば、第一のアクセスポイント1A等)のアクセスポイント通信部312は、周辺アクセスポイントとのIPトンネリングによる接続後に、仮「ESSID」の使用解除を指示する仮ESSID解除命令を作成して、事前に登録されている全ての周辺アクセスポイント301に対して送信するようになっている。
なお、基準アクセスポイント(例えば、第一のアクセスポイント1A等)とIPトンネリングにより接続されている周辺アクセスポイント(第二のアクセスポイント1B等)は、例えば、仮ESSID解除命令の送信対象から除外されるようになっている。
周辺アクセスポイント301(例えば、第二のアクセスポイント1B等)の端末通信部311は、例えば、応答手段として、IP電話端末302の無線通信処理部21(切換先検索手段)から送信されるプローブ要求を送受信用アンテナ11aにより受信して、当該プローブ要求に含まれるESSID情報と基準アクセスポイントから送信されアクセスポイント通信部312により受信された仮ESSID使用命令の「ESSID」が一致する場合にプローブ応答を返信するようになっている。具体的には、端末通信部311は、プローブ要求を受信すると、当該プローブ要求を送信したIP電話端末302のMACアドレス及び識別子「ESSID」が仮ESSID使用命令のMACアドレス及び識別子「ESSID」と一致する場合にプローブ応答を返信するようになっている。
これにより、IP電話端末302は、ハンドオーバー先のアクセスポイント301を特定して、当該アクセスポイント301と仮のサブネットを介して無線リンクを確立するようになっている。そして、端末通信部311は、無線通信手段として、仮ESSID使用命令の「ESSID」に対応する仮のサブネットを介してIP電話端末302と無線通信を行うようになっている。
また、端末通信部311は、通信解除指示送信手段として、IP電話端末302との仮のサブネットを介した無線通信の終了後に、当該仮のサブネットを介した無線リンクの解除を指示する無線リンク解除要求をIP電話端末302に対して送信するようになっている。
次に、IP電話システム100によるハンドオーバー処理について図19及び図20を参照して詳細に説明する。
図19及び図20は、IP電話システム100によるハンドオーバー処理に係る動作の一例を示す図である。
図19に示すように、実施形態2のIP電話システム100にあっては、実施形態1のIP電話システム100と同様にして第一のアクセスポイント1AとIP電話端末302との間で無線リンクが確立されて、IPアドレス「IP:192.168.1.10」を取得した後、通話が開始されると(ステップS1〜ステップS9)、第一のアクセスポイント1Aのアクセスポイント通信部312は、自己のサブネットの識別子「ESSID1」と同一の仮「ESSID1」及びIP電話端末302のMACアドレス情報を含む仮ESSID使用命令を作成して、当該仮ESSID使用命令を周辺のアクセスポイント301(図19にあっては、第二のアクセスポイント1Bを矢印で指示する)に対して送信する(ステップS101)。
そして、IP電話端末302は、SIPサーバ6を介して接続された通話先端末3との通話(通信)が開始され、当該通話先端末3との間で第一のアクセスポイント1Aを介してデータの送受信が行われる(ステップS102及びS103)。
ここで、IP電話端末302を所持するユーザが、A地点からB地点に移動すると(図17参照)、アクセスポイント特定部22により検出される第一のアクセスポイント1Aからの信号の受信レベルが次第に低下することとなる。そして、アクセスポイント特定部22により受信レベルが所定値以下となっていると判定された場合には、無線通信処理部21は、現在接続中の識別子である「ESSID」に関して全ての周波数「CH」について送受信用アンテナ11aからプローブ要求を送信してハンドオーバー先のアクセスポイント301を検索する(ステップS104)。
ここで、第二のアクセスポイント1Bの端末通信部311は、仮ESSID使用命令に基づいて、第一のサブネットの識別子「ESSID1」と同一のプローブ要求に対しては、MACアドレス及び識別子「ESSID1」がともに一致するのでプローブ応答する(ステップS105)。
IP電話端末302にあっては、アクセスポイント特定部22は、第二のアクセスポイント1Bからのプローブ応答を送受信用アンテナ11aにより受信すると、当該第二のアクセスポイント1Bをハンドオーバー先のアクセスポイント301として特定する。
その後、無線通信処理部21は、ハンドオーバー先のアクセスポイント301を規定するハンドオーバー先情報を送受信用アンテナ21aから第一のアクセスポイント1Aに対して送信する(ステップS106)。
第一のアクセスポイント1Aにあっては、IP電話端末302から送信されたハンドオーバー先情報を端末通信部11により受信すると、アクセスポイント通信部312は、ハンドオーバー先である第二のアクセスポイント1Bに対してIPトンネリング開始要求を送信する(ステップS107)。
第二のアクセスポイント1Bにあっては、第一のアクセスポイント1Aから送信されたIPトンネリング開始要求をアクセスポイント通信部312により受信すると、トンネリング処理部13は、当該第二のアクセスポイント1Bと第一のアクセスポイント1AとをIPトンネリングによりデータ通信可能に接続する(ステップS108)。
その後、第一のアクセスポイント1Aのアクセスポイント通信部312は、仮「ESSID」の使用解除を指示する仮ESSID解除命令を作成して、IPトンネリングにより接続されている第二のアクセスポイント1B以外の周辺アクセスポイント301に対して送信する(ステップS109)。
第二のアクセスポイント1B以外の周辺アクセスポイント301にあっては、受信した仮ESSID解除命令に基づいて所定の処理を行うことで仮「ESSID」の使用が解除され、この結果、仮ESSID(第一のサブネットの識別子「ESSID1」)と一致する識別子のプローブ要求に対して応答できなくなる。
そして、IP電話端末302から仮ESSID使用命令の識別子と同一の識別子「ESSID1」のアソシエーション要求に対して、第二のアクセスポイント1Bがアソシエーション応答することにより、当該第二のアクセスポイント1BとIP電話端末302との間で、識別子「ESSID1」の仮のサブネットを介して無線リンクが確立する(ステップS110)。
その後、アクセスポイント通信部312は、次回のハンドオーバーに備えて、仮「ESSID1」及びIP電話端末302のMACアドレス情報を含む仮ESSID使用命令を作成して、当該仮ESSID使用命令を第一のアクセスポイント1A以外の周辺のアクセスポイント301に対して送信する(ステップS111)。
そして、IP電話端末302と通話先端末3との通話の際には、通話先端末3から送信される通信データは、第一のアクセスポイント1Aにより受信され、当該アクセスポイント1Aにて第二ヘッダ部が付加された後、IPトンネリングを通過して第二のアクセスポイント1Bへと送られ、当該アクセスポイント1Bにて第二ヘッダ部が取り除かれた後、IP電話端末302へと送信される(ステップS112;図20参照)。一方、IP電話端末302から送信される通信データは、第二のアクセスポイント1Bにより受信され、当該アクセスポイント1Bにて第二ヘッダ部が付加された後、IPトンネリングを通過して第一のアクセスポイント1Aへと送られ、当該アクセスポイント1Aにて第二ヘッダ部が取り除かれた後、ネットワーク回線Nを経由して通話先端末3へと送信される(ステップS113)。
その後、IP電話端末302の操作部の通話終了ボタン(図示略)がユーザにより操作されると、無線通信処理部21は、第二のアクセスポイント1B、IPトンネリング及び第一のアクセスポイント1Aを介してSIPサーバ6に切断要求信号を送信する(ステップS114)。
SIPサーバ6は、受信した切断要求信号を通話先端末3に転送して(ステップS115)、切断要求に対して通話先端末3から送信される切断応答信号を受信すると、第一のアクセスポイント1A、IPトンネリング及び第二のアクセスポイント1Bを介してIP電話端末2に送信する(ステップS116)。
ここで、第二のアクセスポイント1Bは、無線リンクが張られているIP電話端末2から送信される切断要求信号を監視しており、この切断要求信号を検出すると、アクセスポイント通信部312は、IP電話端末302と通話先端末3との通話終了後、第一のアクセスポイント1Aに対してIPトンネリング解除要求を送信する(ステップS118)。
第一のアクセスポイント1Aにあっては、第二のアクセスポイント1Bから送信されたIPトンネリング解除要求をアクセスポイント通信部312により受信すると、トンネリング処理部13は、当該第一のアクセスポイント1Aと第二のアクセスポイント1Bとの間を接続するIPトンネリングを解除する(ステップS119)。
なお、第二のアクセスポイント1Bにあっては、例えば、第一のアクセスポイント1AとのIPトンネリングが解除されると、仮「ESSID」の使用が解除されるようになっている。
また、第二のアクセスポイント1Bは、例えば、IP電話端末302の通話終了後、IP電話端末302に対して識別子「ESSID1」の無線リンク解除要求を送信する(ステップS120)。
IP電話端末302にあっては、第二のアクセスポイント1Bから送信された無線リンク解除要求を無線通信処理部21により受信すると、識別子「ESSID1」のサブネットを介した無線リンクを解除して、第二のアクセスポイント1Bの正規のサブネット(識別子「ESSID2」)を介した無線リンクを新たに構築する。
即ち、無線通信処理部21は、識別子「ESSID2」のプローブ要求を送受信用アンテナ11aから送信する(ステップS121)。そして、当該プローブ要求が第二のアクセスポイント1Bの端末通信部311により受信されて、当該第二のアクセスポイント1Bからプローブ応答が返信され(ステップS122)、図示しないアソシエーションの要求・応答後に、当該第二のアクセスポイント1BとIP電話端末302との間で正規のサブネット(識別子「ESSID2」)を介して無線リンクが確立する(ステップS123)。
そして、第二のアクセスポイント1Bのアクセスポイント通信部312は、仮「ESSID」の使用解除を指示する仮ESSID解除命令を作成して、全ての周辺アクセスポイント301に対して送信する(ステップS124)。
周辺アクセスポイント301にあっては、受信した仮ESSID解除命令に基づいて所定の処理を行うことで仮「ESSID」の使用が解除され、この結果、仮ESSIDと一致する識別子のプローブ要求に対して応答できなくなる。
そして、第一のアクセスポイント1Aにあっては、基準アクセスポイントとしての機能が解除される(ステップS125)。
また、IP電話端末302の無線通信処理部21は、例えば、第二のアクセスポイント1Bとの正規のサブネット(識別子「ESSID2」)を介した無線リンクの確立後、DHCP要求を第二のアクセスポイント1Bを介してDHCPサーバ(図示略)に送信し、当該DHCPサーバから当該アクセスポイント1Bが接続されるサブネットにおけるIPアドレス「IP:192.168.2.10」を取得する(ステップS126)。
そして、IP電話端末302は、例えば、第二のアクセスポイント1Bを介してSIPサーバ6に登録要求(例えば、電話番号とIPアドレス等)を送信する(ステップS127)。
SIPサーバ6は、IP電話端末302からの登録要求を受信すると、当該登録要求に対して応答し(ステップS128)、IP電話端末302のIPアドレスと電話番号とを対応付けて登録する(ステップS129)。
以上のように、実施形態2のIP電話システム300によれば、仮ESSID使用命令を用いることで切換先のアクセスポイント301の識別子「ESSID」を基準アクセスポイントと同じ識別子「ESSID」とすることができる。そして、ハンドオーバーの際に基準アクセスポイントと切換先アクセスポイントとをIPトンネリングにより接続することができるので、ハンドオーバー後に切換先のアクセスポイント301と同一のネットワークアドレスのIPアドレスの再取得を行う必要がなくなって、DHCPサーバからの新IPアドレスの取得処理と、SIPサーバ6及び通話先端末3へのIPアドレス変更要求処理と、通話先端末3でのIP電話端末2のIPアドレス変更処理を行う必要がなくなり、通話が途絶えて再開するまでの時間を大幅に削減することができる。
この結果、ハンドオーバーしても音切れの少ない、又は、無視できる程度の音切れしか生じないIP電話システム300を安価に実現することができる。
なお、上記実施形態2にあっては、ハンドオーバーを一度行う構成のものを例示したが、再度のハンドオーバーを繰り返し行う構成のものであっても良い。この場合であっても、予め、次回のハンドオーバーに備えて、仮ESSID使用命令を周辺のアクセスポイント301に対して送信しておき、その後の基準アクセスポイントと切換先アクセスポイントとの間を新たなIPトンネリングにより接続し直すことにより、ハンドオーバーを何度繰り返すようにしても良い。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、上記実施形態では、無線通信システムとして、IP電話システム100、300を例示したが、これに限られるものではなく、例えば、無線通信端末がストリーミングにて画像や音情報を取得して再生する場合のように、情報を途絶えさせることなく再生するために無線通信するシステム等に適用しても良い。この場合、無線通信端末にウェブサイトのURLを入力したり、あるいは無線通信端末の画面上でビデオコンテンツを示すアイコンをクリックしたりすることで通信相手を指定し、無線通信端末からのストリーミング開始要求をアクセスポイントが検出することで基準アクセスポイントが決定され、サーバからのコンテンツ終了を示す信号を検出することで基準アクセスポイントとしての機能が解除される。
またサーバベースコンピューティングに応用することも有用である。この場合、URLやIPアドレスにより通信先サーバが指定され、無線通信端末がサーバにログインすることで基準アクセスポイントが決定され、ログアウトにより基準アクセスポイントとしての機能が解除される。
また、上記実施形態では、ネットワーク回線Nとして、閉鎖的な通信ネットワークである社内LANを例示したが、これに限られるものではなく、例えば、インターネット等に代表されるオープンな通信ネットワークであっても良い。
本発明を適用した実施形態1の無線通信システムの好適な一例として例示するIP電話システムの概略構成を模式的に示した図である。 図1のIP電話システムを構成するIP電話端末のブロック図である。 図1のIP電話システムを構成するアクセスポイントのブロック図である。 図1のIP電話システムにて送受信されるデータのパケット構造を模式的に示した図である。 図1のIP電話システムにて送受信されるデータのパケット構造を模式的に示した図である。 図1のIP電話システムによるハンドオーバー処理に係る動作の一例を示す図である。 図6のハンドオーバー処理の続きを示す図である。 図6のハンドオーバー処理におけるIP電話システムの状態を模式的に示した図である。 図6のハンドオーバー処理におけるIP電話システムの状態を模式的に示した図である。 図6のハンドオーバー処理におけるIP電話システムの状態を模式的に示した図である。 変形例1のIP電話システムによるハンドオーバー処理に係る動作の一例を示す図である。 図11のハンドオーバー処理の続きを示す図である。 図11のIP電話システムを構成するアクセスポイントのブロック図である。 図11のIP電話システムによるハンドオーバーの実行タイミングを説明する図である。 図11のIP電話システムを構成するIP電話端末のブロック図である。 図11のIP電話システムによるハンドオーバー先特定処理に係る動作の一例を模式的に示した図である。 本発明を適用した実施形態2の無線通信システムの好適な一例として例示するIP電話システムの概略構成を模式的に示した図である。 図17のIP電話システムを構成するアクセスポイントのブロック図である。 図17のIP電話システムによるハンドオーバー処理に係る動作の一例を示す図である。 図19のハンドオーバー処理の続きを示す図である。 従来のIP電話システムによるハンドオーバー処理を説明するための図である。
符号の説明
100、300 IP電話システム(無線通信システム)
1、301 アクセスポイント(基地局)
11、211、311 端末通信部(応答手段、無線通信手段)
11a 送受信用アンテナ
12、312 アクセスポイント通信部(接続指示送信手段、第一の接続指示送信手段、変更指示送信手段、第二の接続指示送信手段、仮識別情報生成手段、仮識別情報送信手段)
13 トンネリング処理部(トンネリング接続手段、第一のトンネリング接続手段、第二のトンネリング接続手段、切換先基地局転送手段、基準基地局転送手段、再切換先基地局転送手段)
215 受信レベル検出部
215a 受信レベル検出用アンテナ
216 アクセスポイント特定部
2、302 IP電話端末
21 無線通信処理部(切換先検索手段、アドレス取得手段)
3 通話先端末

Claims (1)

  1. 複数の異なるネットワークに接続される複数の基地局と、
    前記複数の基地局のいずれかに無線接続されるIP電話機能を有する無線通信端末とを備え、
    前記複数の基地局の中で前記無線通信端末が接続する基地局を切換える無線通信システムであって、
    前記無線通信端末は、前記複数の基地局のいずれかに無線接続された際にDHCPサーバからIPアドレスを取得するIPアドレス取得手段と、特定の通信相手をIP電話の通話先として指定する指定手段を備え、
    前記複数の基地局は前記無線通信端末が送信する発呼要求を検知することにより前記指定手段により指定された通信相手と前記無線通信端末との通信を開始したことを検出し、前記無線通信端末が送信する切断要求を検知することにより前記通信相手と前記無線通信端末との通信が終了したことを検出する検出手段を備え、
    前記複数の基地局のうち、前記指定手段により指定された通信相手と前記無線通信端末との通信を開始したことを前記検出手段により検出した基地局(以下、「基準基地局」という)は、
    前記無線通信端末の接続先が当該基準基地局と異なる基地局(以下、「切換先基地局」という)に切換えられた場合に、前記無線通信端末と前記通信相手との通信が終了するまで前記通信相手から前記無線通信端末宛に送信される情報を前記切換先基地局に対して転送する基準基地局転送手段を備え
    前記無線通信端末は、接続する基地局をサブネットを越えて切り換える際に、その切り換えが発呼要求を送信する前である場合には即座にIPアドレスの再取得を行い、発呼要求を送信した後であった場合にはIPアドレスの再取得を即座には行わずに切断要求を送信した後にIPアドレスの再取得を行うことを特徴とする無線通信システム。
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