JP4281181B2 - 液晶プロジェクター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大型映像画面を得るための映像信号に応じて光を変調する液晶パネルを使用した液晶プロジェクターに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、大型映像画面を得るための、映像信号に応じて光を変調する液晶パネルを使用した液晶プロジェクターが提案されている。
【0003】
このような液晶パネルにより変調された光をスクリーンに投射する液晶プロジェクターにおいては、従来コントラストの向上を図るために、液晶パネルにおいて、遮光時の光の透過率を小さくすることなどの改善が行われていた。
【0004】
一方で、ノート型のパーソナルコンピュータ等に用いられる直視型の液晶パネルでは、複数のユーザーが、ある程度の角度を有した位置から同一の画面を見ることが想定される為、例えば40度以上の広い視野角でのコントラストを考慮した構成を採っている。
【0005】
その一つの例として、ディスコティック液晶や棒状液晶、その他3次元複屈折をもつ位相差フィルムを用いて上述の直視型液晶パネルの偏光状態の変化を補正して視野角特性の改善を行っている。
【0006】
また他の例として、超ねじれネマティック(STN)液晶ディスプレイに別の液晶層を設けて視野角補正が行われている。これは、STN液晶の複屈折が大きいことによる単色性能や温度依存に対する問題の解決策である。
【0007】
ところで、ランプのリフレクタの光軸方向に出射した光を変調するライトバルブとして液晶パネルを使用し、投射光学系でスクリーンに投射する構成の液晶プロジェクターにおいては、コントラストの向上を図る場合に、その液晶パネルの視野角の改善を行う必要はないものとされていた。
【0008】
しかしながら、斯かる液晶プロジェクターは、以下に述べる原因により入射側偏光板から出射した直線偏光が映像信号を変調する液晶パネルによって乱されて楕円偏光になり、出射側偏光板で漏れが生じ、黒レベルが下がらず、コントラストが低下するということになる。
【0009】
図6に示す如く、液晶パネルの液晶分子17には例えば2°〜4°のプレチルト角θがある。これは駆動電圧を印加したときに液晶分子が傾く方向を導く為に、液晶パネル面22に施された配向処理方向に対して与えられる初期分子配列の角度とされる。このプレチルト角の影響で液晶パネル面22に角度をもって入射した光23は偏光が乱れる。これは液晶パネル面22に斜めに入射した光23からは、この液晶分子17が図7に示す如く斜めに見えるためであり、この液晶分子17の屈折率の異方性により、長軸24方向成分は位相が遅れ、これにより直線偏光の入射光23は、液晶分子17で遅相軸方向成分と進相軸方向成分との間に位相差が生じ、結果として、図8に示す如き楕円偏光26となる。
【0010】
上述と同様にして、種々の方向から入射した直線偏光は、偏光状態が液晶分子17によって変化し、入射方向に応じて図9に示す如くなる。図6は液晶分子17が1つの場合についてであるが、実際にはこの液晶分子17は複数個存在し、ツイストマティック液晶の場合は液晶パネルの前面と後面とで略90度ねじれている。この為この液晶パネルを通過したあとの光の偏光状態は、多数の異なる向きの液晶分子による偏光変化を足し合わせたものとなる。
【0011】
この結果、液晶パネルに垂直に入射した光は直線偏光が保たれるが、ある角度で斜めに入射した光に関しては、偏光が乱されて、入射光に応じた楕円偏光になる。このため液晶パネルの出射側にある偏光板で楕円偏光による漏れが生じるため、黒レベルが上がり、液晶パネルのコントラスト特性が悪くなる。
【0012】
実際に液晶プロジェクターの液晶パネルに対する照明光の角度成分は、10度前後までの光が含まれており、一例として、図5に示す如く照明光には垂直入射する光はほとんど含まれず大部分が角度をもって入射するため、この液晶分子のプレチルト角の影響を受けて、偏光状態が変化してしまう。図5において横軸は入射角成分、縦軸は強度である。
【0013】
よって液晶プロジェクターにおいて液晶パネルのプレチルト角が及ぼすコントラスト低下に影響を及ぼす問題があることがわかった。
【0014】
この問題を解決するため、位相差板や位相差フィルムを液晶パネルに対して所定の角度傾けて置くことにより、この液晶パネル内の液晶分子器平均化された作用について補正する方法が特願平11−212179号に開示されている。これは液晶パネルの入射側に設置された第1の偏光板と出射側に配置された第2の偏光板との間に位相差板や位相差フィルムなどの位相差補正手段が配置され、その位相差補正手段を第1又は第2の偏光板の偏光軸に平行な軸を回転軸として所定の角度傾斜させることで偏光変化の入射角依存性をもたせ、液晶分子のプレチルトに伴う遅相軸方向と進相軸方向との間に生じた位相差を打ち消すものである。
【0015】
この方法は、位相差板や位相差フィルムを液晶パネルに対して傾けて、液晶プロジェクターの光学系に配置する必要があるため、その空間を必要とし、更に複雑な角度調整機構が必要となる。
【0016】
また上述の特願平11−212179号には、さらに上述位相差補正手段の傾斜角に対応する2軸方向のリタデーションを有するフィルム状の光学補償手段を利用して、液晶分子のプレチルトに伴う遅相方向と進和方向との間に生じた位相差を打ち消す発明が開示されている。
【0017】
これにより液晶プロジェクタの光学系に配置するため空間が必要な問題点を解消することができるが、上述光学補償手段は所定の傾斜角を持つ液晶分子に対してのみ最適の補償関係となっている。従って、位相差によるコントラストの平均的レベルの改善には効果があるが、全ての液晶分子に対応して位相差を打ち消すことができない問題があった。
【0018】
本発明は斯る点に鑑み、比較的簡単な構成で、良好にコントラストの向上を図ることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の液晶プロジェクターは、第1及び第2の偏光板間に映像信号に応じて光源の光軸方向に出射した光を変調するツイストネマチック液晶を用いた液晶パネルを設けた液晶プロジェクターにおいて、前記第1の偏光板と前記液晶パネルとの間に前記液晶パネルに対して、前記液晶パネルとは液晶分子のプレチルト方向が同じで、ツイスト方向が同じである補正用液晶パネルを前記光軸を中心に略180度回転して配置して設けたものである。
【0020】
また、本発明液晶プロジェクターは、第1及び第2の偏光板間に映像信号に応じて光源の光軸方向に出射した光を変調する液晶パネルを設けた液晶プロジェクターにおいて、この第1の偏光板とこの液晶パネルと間にこの液晶パネルに対して、この液晶パネルとは配向方向が表裏逆で、ツイスト方向が逆である補正用液晶パネルをこの光軸を中心に配置して設けたものである。
【0021】
本発明によれば、液晶パネルに対し、この液晶パネルと配向方向が同じである補正用液晶パネルを液晶パネルの入射側プレチルト角とこの補正用液晶パネルの入射側のプレチルト角が互いに逆方向となると共に、この液晶パネルと補正用液晶パネルとの出射側のプレチルト角も互いに逆向きになり、ベレーク補償板の原理に基づく補正関係となり、コントラストを向上することができる。
【0022】
また本発明によれば、補正用液晶パネルを電圧駆動により液晶分子を最適な補正のできる配列状態にできるようにしているので、直線偏光がこの補正用パネルとこの液晶パネルとを通過したときに、直線偏光を保つことができコントラストを向上することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明液晶プロジェクターの実施の形態の例につき説明しよう。
【0024】
図1は、本例による液晶プロジェクターの光学系の構成を示す。この図1において、1はメタルハライドランプを示し、このメタルハランドランプ1よりの出射光を第1及び第2のマルチレンズアレイ2及び3と集光レンズ4を介して、赤色及び緑色光R及びGを通過し、青色光Bを反射する色分離ミラー7に入射する。
【0025】
この色分離ミラー7で反射した青色光Bを集光レンズ6a、ミラー5a及び集光レンズ6bを介して後述する液晶変調装置10に入射する。
【0026】
また、この色分離ミラー7を通過した赤色及び緑色光R及びGを緑色光Gを通過し、赤色光Rを反射する色分離ミラー8に入射する。この色分離ミラー8で反射した赤色光Rを集光レンズ6cを介して後述する液晶変調装置11に入射する。
【0027】
この色分離ミラー8を通過した緑色光Gをミラー5b、集光レンズ6d、ミラー5c及び集光レンズ6eを介して後述する液晶変調装置12に入射する。
【0028】
之等液晶変調装置10,11及び12よりの夫々の光を色合成プリズム9に入射して合成し、この合成した光を投影レンズ13を介してスクリーン(図示せず)に投影する如くする。
【0029】
本例においては、この3つの液晶変調装置10,11及び12を夫々図2に示す如く、同様に構成する。この図2において、16は液晶パネルを示し、この液晶パネル16には映像信号が供給され、この映像信号に応じて光を変調する如くなされている。この場合、液晶変調装置10,11及び12の液晶パネル16には夫々青色映像信号、赤色映像信号及び緑色映像信号が供給される。
【0030】
この液晶パネル16の光の入射側及び光の出射側に夫々偏光板14a及び14bを設け、10度前後の拡がり角をもっている照明光をこの入射側の偏光板14aで直線偏光とし、この出射側の偏光板14bで決められた偏光方向のみ透過する。
【0031】
本例においては、図2に示す如く、この入射側の偏光板14aと液晶パネル16との間に、この液晶パネル16と配向方向(プレチルトしている方向を配向方向とする)が同じで、ツイスト方向が同じである補正用液晶パネル15をこの液晶パネル16とプレチルトが互いに逆方向となる如く光軸を中心に180度回転して平行に挿入する如くする。
【0032】
この場合、図3に示す如く、液晶パネル16の入射側プレチルト角θ1 と補正用液晶パネル15の入射側プレチルト角θ3 が逆方向となり、またこの液晶パネル16及び補正用パネル15の夫々の出力側プレチルト角θ2 及びθ4 も逆方向となり、ベレーク補償板の原理に基づく補正関係になる。
【0033】
この補正用液晶パネルは、従来周知の液晶パネルの如く電極が設けられ、駆動電圧を調整することにより、こ補正用液晶パネル15の液晶分子を任意の配列状態にできる如くする。
【0034】
本例によれば、液晶パネル16に対し、この液晶パネル16と配向方向が同じである補正用液晶パネル15をツイスト方向が逆即ち液晶パネル16の入射側プレチルト角θ1 とこの補正用液晶パネル15の入射側プレチルト角θ3 が互いに逆方向となると共にこの液晶パネル16と補正用液晶パネル15との出射側のプレチルト角θ 2とθ4 も互いに逆向きになり、ベレーク補償板の原理に基づく補正関係となり、この液晶パネル16では液晶分子17により、図9に示す如く偏光が変化するが、この補正用液晶パネル15により、この偏光変化を元に戻すように補正され直線偏光を保つことができる。また、その中間部においても、液晶パネル16と補正用液晶パネル15の液晶分子は互に補正関係になっている。
【0035】
更に本例によれば補正用液晶パネル15を電圧駆動により液晶分子を任意の配列状態にできるようにしているので、駆動電圧を調整することにより直線偏光がこの補正用パネル15とこの液晶パネル16とを通過したときに、良好に直線偏光を保つようにできる。
【0036】
従って本例によれば、10度前後の広がり角をもっている照明光を入射側の偏光板14aで直線偏光にし、この補正用液晶パネル15で補正し、液晶パネル16で変調し、出力側の偏光板14bで決められた偏光方向のみ透過しコントラストを向上することができる。
【0037】
因みに、1.3インチの液晶パネル16に対し、この液晶パネル16と同じ配向で同じツイスト方向の補正用液晶パネル15を図2及び図3のような実験系で、コントラスト補正を行なったところ、補正前は169:1のコントラストが補正後は289:1まで上がった。
【0038】
次に、本発明の実施の形態の他の例を図4を参照して説明する。
一般的な、ツイストネマチック(TN)液晶の場合、図3に示す如く、補正用液晶パネル15及び液晶パネル16の入力側端部及び出力側端部は夫々補正関係にあり、それ以外の中間にある液晶分子同志も、補正用液晶パネル15を図3のようにすると全て補正関係になる。
【0039】
図4例は変調用の液晶パネル16に対して、この液晶パネル16とは配向方向が表裏逆で、ツイスト方向が逆である補正用液晶パネル28を上述補正用液晶パネル15の代りに用いたものである。この場合、液晶パネル16の入射側プレチルト角θ5 と補正用液晶パネル15の出射側プレチルト角θ8 及び液晶パネル16の出射側プレチルト角θ6 と補正用液晶パネル15の出射側プレチルト角θ7 が補正関係となっている。また、その中間部においても、液晶パネル16と補正用液晶パネル15の液晶分子の方向は互に補正関係になっている。
【0040】
この全ての液晶分子が補正関係にあるためには、補正用TN液晶パネル28のツイスト方向が図4に示す如く、変調用の液晶パネル16と逆向きで配向方向が表と裏とで逆になるか、あるいは補正用TN液晶パネル15のツイスト方向が図3に示す如く、変調用の液晶パネル16と同じ向きで、光軸を中心に180度回転した配置になくてはならない。
【0041】
尚、実際には、液晶パネル16と補正用液晶パネル15,28の対応する全ての液晶分子が補正関係にあっても、液晶パネル16、補正用液晶パネル15,28の製造上のバラツキや機構上の配置バラツキにより、配置しただけでは最良の補正関係が必ず得られるわけではない。しかし、この補正用液晶パネル15,28を電圧駆動できるようにしておけば、この駆動電圧や入力信号の周波数を調整することにより最適な補正ができる。
【0042】
また上述例では、補正用液晶パネル15,28を電圧駆動する如く述べたが、この補正用液晶パネル15,28を最適な補正ができる状態に調整し、その状態で液晶分子を硬化するようにしても良い。
【0043】
例えば、液晶ポリマー等で変調用の液晶パネル16と全く同じ配向のものを作り、最適状態で紫外線等で硬化させる。
【0044】
このように補正用液晶パネル15,28を硬化させることにより、調整不要で補正効果が見込まれる。
【0045】
また本発明は上述例に限ることなく本発明の要旨を逸脱することなく、その他種々の構成が取り得ることは勿論である。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、補正用液晶パネルを設けたので、変調用の液晶パネルによる偏光状態の変化を補正でき、コントラストが向上する。
【0047】
また、本発明によれば、偏光板から出射した直線偏光は、変調用の液晶パネルにより入射角に応じて楕円偏光になるが、補正用液晶パネルは各々の楕円偏光を直線偏光に戻せるため、後の偏光板で光の漏れが起こらず、コントラストが向上する。
【0048】
また本発明において、補正用液晶パネルを電圧駆動したときには、電気的に補正調整ができる。補正対象個々の液晶パネルはプレチルト角やギャップ幅のバラツキがあるが、本発明によればこの補正用液晶パネルの駆動電圧の調整により、最適な補正ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明液晶プロジェクターの実施の形態の例を示す構成図である。
【図2】本発明液晶プロジェクターに使用される液晶変調装置の例を示す構成図である。
【図3】図2の液晶変調装置の例の説明に供する構成図である。
【図4】本発明の実施の形態の他の例の要部の例を示す構成図である。
【図5】照明光の角度成分の例の説明に供する線図である。
【図6】液晶パネルの液晶分子のプレチルト例の説明に供する構成図である。
【図7】液晶パネルの液晶分子を入射光方向から見た例の説明に供する線図である。
【図8】液晶分子のプレチルトにより発生する位相差の例の説明に供する線図である。
【図9】液晶分子に対する光の入射方向による偏光状態の変化の例の説明に供する線図である。
【符号の説明】
1‥‥メタルハライドランプ、2,3‥‥マルチレンズアレイ、4,6a,6b,6c,6d,6e‥‥集光レンズ、5a,5b,5c‥‥ミラー、7,8‥‥色分離ミラー、9‥‥色合成プリズム、10,11,12‥‥液晶変調装置、13‥‥投影レンズ、14a,14b‥‥偏光板、15,28‥‥補正用液晶パネル、16‥‥液晶パネル、17‥‥液晶分子
Claims (3)
- 第1及び第2の偏光板間に映像信号に応じて光源の光軸方向に出射した光を変調するツイストネマチック液晶を用いた液晶パネルを設けた液晶プロジェクターにおいて、前記第1の偏光板と前記液晶パネルとの間に前記液晶パネルに対して、前記液晶パネルとは液晶分子のプレチルト方向が同じで、ツイスト方向が同じである補正用液晶パネルを前記光軸を中心に略180度回転して配置して設けたことを特徴とする液晶プロジェクター。
- 請求項1記載の液晶プロジェクターにおいて、前記補正用液晶パネルは、電圧駆動により、液晶分子を最適な補正のできる配列状態にできるようにしたことを特徴とする液晶プロジェクター。
- 請求項1記載の液晶プロジェクターにおいて、前記補正用液晶パネルは、液晶分子が最適な補正のできる配列状態で硬化されていることを特徴とする液晶プロジェクター。
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