JP4279972B2 - 高炉用コークスの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉用コークスの製造方法に関し、特に粘結剤を添加した配合炭を用いることにより高強度のコークスを得る方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
室炉式コークス炉を用いた高炉用コークス製造プロセスにおいて、コークス炉に装入する配合炭は、従来、一般的に粘結性の高い粘結炭を約80wt%以上と粘結性の低い非微粘結炭を約20wt%以下の配合構成で用いられていた。一般に、非微粘結炭は粘結炭に比べて埋蔵量が多く、価格が安価であるため、配合炭中における非微粘結炭の配合割合を増加させることによりコークス製造原価を低減させることが従来から望まれていた。
従って、従来から非微粘結炭の使用拡大を目的に非微粘結炭を配合した配合炭に粘結剤を添加して配合炭の粘結性を向上させてコークス強度を向上させる方法の開発が実施されており、以下のような方法が提案されている。
【0003】
例えばコールタールピッチやアスファルト等の石油系重質留分を配合炭に添加し配合石炭の粘結性を向上させることにより、粘結炭の配合割合を低減して非微粘結炭の配合割合を増加させた配合炭を用いて、良質なコークスを製造する方法が「石炭化学と工業」(三共出版、昭和52年版、p.315)等で開示されている。また、タール中の重質留分のみを原料炭に添加後、コークス炉において乾留し、高強度の高炉用コークスを製造する方法(特開平9−241653)や、石炭を高温高圧下で液化反応させて得られる溶剤精製炭(またはSRCという)を粘結剤として原料炭に添加する方法(「石炭化学と工業」三共出版、昭和52年版、p.253)等も知られている。
【0004】
しかしながら、これらの従来の粘結剤の添加方法では、コークス強度の向上効果にばらつきがあり、安定して期待通りのコークス強度向上の効果が得られなかった。高炉用コークスとしての必要強度が得られない場合には、高炉の操業不調を引き起こす要因となり、大きな経済的損失が生じる。
したがって、従来の粘結剤の添加方法では、コークス強度のばらつきが大きいために、配合炭中の粘結炭の配合比率を高めにし非微粘結炭の配合比率を低めにさせざるをえず、非微粘結炭の使用拡大による経済的メリットを最大限享受することができなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上の従来技術の問題点に鑑みて、本発明は、コークス炉で高炉用コークスを製造する方法において、配合炭に粘結剤を添加することによりコークス強度を安定して向上させ、高炉用コークスとしての必要強度が得られるコークス製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)粘結剤を添加した後の配合炭を用いてコークスを製造する高炉用コークスの製造方法において、前記粘結剤を添加した後の配合炭の粘結性指数が、式(1)によって決定される全膨張率の下限値以上、または式(2)によって決定される最高流動度の下限値以上であり、且つ前記粘結剤を添加した後の配合炭の粘結性指数が、全膨張率の上限値である100以下及び最高流動度の上限値である3.0以下である範囲を満たすように前記配合炭を構成する石炭銘柄及びそれらの配合割合を調整することを特徴とする高炉用コークスの製造方法。
全膨張率の下限値=a/BD−b・・・・・(1)
最高流動度下限値=c×ln(全膨張率下限値)+d=c×ln(a/BD−b)+d・・・・・(2)
ただし、a,b,c,dは目標とするコークス強度により実験により求められる値であり、BDは石炭の装入密度(t/m3)である。
【0007】
(2)粘結剤を添加した後の配合炭を用いてコークスを製造する高炉用コークスの製造方法において、前記粘結剤を添加した後の配合炭の粘結性指数が、式(1)によって決定される全膨張率の下限値以上、または式(2)によって決定される最高流動度の下限値以上であり、且つ前記粘結剤を添加した後の配合炭の粘結性指数が、全膨張率の上限値である100以下及び最高流動度の上限値である3.0以下である範囲を満たすように前記粘結剤の添加率を調整することを特徴とする高炉用コークス製造方法。
(3)粘結剤を添加した後の配合炭を用いてコークスを製造する高炉用コークスの製造方法において、前記粘結剤を添加した後の配合炭の粘結性指数が、式(1)によって決定される全膨張率の下限値以上、または式(2)によって決定される最高流動度の下限値以上であり、且つ前記粘結剤を添加した後の配合炭の粘結性指数が、全膨張率の上限値である100以下及び最高流動度の上限値である3.0以下である範囲を満たすように前記配合炭を構成する石炭銘柄及びそれらの配合割合を調整するとともに、前記粘結剤の添加率を調整することを特徴とする高炉用コークス製造方法。
全膨張率の下限値=a/BD−b・・・・・(1)
最高流動度下限値=c×ln(全膨張率下限値)+d=c×ln(a/BD−b)+d・・・・・(2)
ただし、a,b,c,dは目標とするコークス強度により実験により求められる値であり、BDは石炭の装入密度(t/m 3 )である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
非微粘結炭を多量に配合した場合、コークス強度低下の原因となるのは主に石炭粒子の接着不足に起因するクラックである。非微粘結炭を配合した配合炭に粘結剤を添加する理由は、粘結剤を添加した原料炭、特に粘結性の低い非微粘結炭の粘結性を増加させて、石炭粒子同士の接着性を向上させるためである。
本発明者らは、この知見に基づき、粘結剤添加後の配合炭の粘結性指数、例えばギーセラープラストメーター法により測定される最高流動度、ジラトメーター法により測定される全膨張率をコークス強度発現に必要な一定レベル以上に維持することにより、高炉用コークスとして所定強度のコークスを得る方法について鋭意検討を重ねた。
【0009】
その結果、本発明者らは、配合炭をコークス炉に装入する時の装入密度によって、所定コークス強度得るために必要な粘結性指数の下限レベルが変化し、装入密度が高い場合にはその下限レベルは低くてもよいが、装入密度が低い時には、その下限レベルを高くする必要があることが、判った。
本発明者らの実験によれば、この粘結性指数の下限レベルは、以下の(1)、(2)式のように表され、配合炭の全膨張率または最高流動度をこの下限値以上に維持することによって、所定強度のコークスを得ることができる。
ここで、BDは石炭の装入密度(t/m3)を示し、a,b,c,dは目標とするコークス強度により実験により求められる値を示す。
上記の下限レベルは必要とされるコークス強度により変化し、上記(1)(2)式のa,b,c,dも変化するが、発明者らの検討によると、例えば目標とするコークス強度がドラム強度で84の時、a,b,c,dの値は下記の通りであった。
a=96、b=80、c=0.5、d=0.13
【0010】
従来、粘結剤を配合しても十分な強度のコークスが得られなかったのは、目標とするコークス強度および石炭の装入密度に応じた配合炭の粘結性指数の下限レベルが不明であり、粘結剤添加後の配合炭の粘結性が不足していたためである。今回の発明により、粘結剤添加後の配合炭の粘結性指数を一定値以上にすることでこの問題は解決される。
また、発明者らの検討の結果、粘結剤添加後の配合炭の粘結性が過剰になってもコークス強度は低下し、その粘結剤添加量の上限は原料炭配合パターンによってきまることがわかった。従来、配合炭に粘結剤を添加した場合に、添加しなかった場合に比べてコークス強度が低下することがあったが、その配合炭の適正添加量よりも過剰に添加剤を添加したために、添加後の配合炭の粘結性が過剰になったためであり、粘結剤添加後の配合炭の粘結性が所定量以下になるように粘結剤の添加量を調整することによりこの問題は解決される。
【0011】
本発明者らの実験等による検討の結果、最高流動度の上限値として3.0および全膨張率の上限値として100を選択すれば高炉用コークスとしての必要強度が得られることがわかった。また、これらの上限値は、目標とするコークス強度、および装入密度が変化しても変わらない。
本発明では、粘結剤を添加した後の配合炭の粘結性指数が、下記の式(1)によって決定される全膨張率の下限値以上または下記の式(2)によって決定される最高流動度の下限値以上であり、且つ、全膨張率の上限値である100以下及び最高流動度の上限値である3.0以下を満たすことを要件とする。
【0012】
図1、および図2は、装入密度0.83t/m3で粘結剤を添加した配合炭を装入して乾留した場合の、配合炭の最高流動度および全膨張率とコークス強度の関係を示したものである。この場合、高炉用コークスとしての必要ドラム強度を84とすると、a=96,b=80,c=0.5,d=0.13であり、装入密度が0.83t/m3であるから、全膨張率の下限値は、(1)式より35.7、最高流動度の下限値は、(2)式より1.92となる。
【0013】
図1に示すように、配合炭の全膨張率が36〜100の範囲では、高炉用コークスとしての必要ドラム強度である84以上のドラム強度を維持できており、この範囲を外れるとドラム強度が低下し必要ドラム強度以下となることがわかる。
また図2に示すように、配合炭の最高流動度が1.9〜3.0の範囲では、高炉用コークスとしての必要ドラム強度である84以上のドラム強度を維持できるが、この範囲を外れるとドラム強度が低下し必要ドラム強度以下になることがわかる。
また図3に、目標コークス強度がドラム強度で84の時における、(1)式で求めた全膨張率下限値の計算値と、種々の装入密度において実験により求めた全膨張率下限値の関係を示す。図より、両者はよい相関があり、異なる装入密度においても、(1)式により配合炭の粘結性指数の下限値を求めることが可能であることがわかる。
【0014】
上記のように粘結剤添加後の配合炭の粘結性指数が本発明で規定する範囲となるように調整する方法としては、以下の2通りの方法がある。
第一の方法は、配合炭を構成する石炭銘柄またはそれらの配合割合を調整する方法である。すなわち、所定量の粘結剤を添加した配合炭の粘結性指数が本発明で規定する下限値未満の場合には、粘結性指数の高い石炭の配合率を増すか、粘結性指数の低い石炭の配合率を減じればよい。また、上記の粘結性指数が本発明で規定する上限値をこえる場合には、粘結性指数の高い石炭の配合率を減じるか、粘結性指数の低い石炭の配合率を増せばよい。
第二の方法は、配合炭に添加する粘結剤の添加率を調整する方法である。すなわち、所定石炭銘柄またはそれらを所定の割合で配合した配合炭に粘結剤を添加後の粘結性指数が本発明で規定する下限値未満の場合には、粘結剤の添加率を増せばよい。また、上記の粘結性指数が本発明で規定する上限値をこえる場合には、粘結剤の添加率を減じればよい。
【0015】
本発明の粘結剤としては、タール、SOP(ソフトピッチ)、石油系粘結剤などが適用可能である。
本発明において、コークス強度とはJIS K2151に記載のドラム強度試験法により測定される、ドラム150回転後に15mm篩上の残存した重量比で表すドラム強度指数である。
また本明における石炭の全膨張率、最高流動度とは、JIS M8801に記載のジラトメーター法およびギーセラープラストメーター法により測定した値である。
【0016】
【実施例】
配合炭に粘結剤を所定量添加して、装入密度0.83t/m3で炉幅425mm、炉長600mm、炉高400mmの試験コークス炉に装入し、炉温1250℃で18.5時間乾留した後、コークス強度を測定した。
表1にそれぞれの配合炭の粘結剤添加前の粘結性指数、性状(揮発分)を示し、表2に粘結剤添加後のそれぞれの配合炭の粘結性指数(全膨張率および最高流動度)、コークス強度の測定結果を示す。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
目標とするドラム強度を84とした場合、装入密度が0.83t/m3であるから上述の全膨張率または最高流動度と装入密度との関係式(1)または(2)から本発明の全膨張率の範囲は36〜100、最高流動度の範囲は1.9〜3.0である。
発明例1は、全膨張率、最高流動度とも本発明の範囲内にあるため、ドラム強度は84以上となり、高炉用コークスとしての必要強度が得られた。
発明例2は、最高流動度が本発明の下限値未満であるが、全膨張率が本発明の範囲内であるため、ドラム強度は84以上となり、高炉用コークスの必要強度が得られた。
発明例3は、全膨張率は本発明の下限値未満であるが、最高流動度が本発明の範囲内であるため、ドラム強度は84以上であり、高炉用コークスの必要強度が得られた。
【0020】
比較例1は、最高流動度は本発明の範囲内であるが、全膨張率が本発明の上限値を越えるため、ドラム強度は84未満となり、高炉用コークスの必要強度が得られなかった。
比較例2は、全膨張率は本発明の範囲内であるが、最高流動度が本発明の上限値を越えるため、ドラム強度は84未満となり、高炉用コークスの必要強度が得られなかった。
比較例3は、全膨張率、最高流動度とも本発明の下限値未満のため、ドラム強度は84未満となり、高炉用コークスの必要強度が得られなかった。
【0021】
また、発明例4は、比較例3と同じ石炭配合炭6に対して、粘結剤の添加率を5%に増やした場合である。これにより全膨張率、最高流動度とも本発明の範囲内にすることができ、ドラム強度は84以上となり、高炉用コークスの必要強度が得られた。
また、発明例5は、比較例1と同じ配合炭4に対して、粘結剤の添加率を0.5%に減らした場合である。これにより全膨張率、最高流動度とも本発明の範囲内にすることができ、ドラム強度は84以上となり、高炉用コークスの必要強度が得られた。
以上のように、配合炭を構成する石炭銘柄およびそれらの配合割合を調整するか、粘結剤の添加率を調整することにより、粘結剤添加後の粘結性指数の範囲を本発明で規定する範囲内とすることが可能であり、所定強度のコークスを得ることができる。
【0022】
【発明の効果】
以上のように、本発明により非微粘結炭を多量に配合した配合炭を用いてコークスを製造しても高炉用コークスとしての必要強度が安定的に得られるため、非微粘結炭使用時のコークス品質の悪化にともなう高炉不調等の問題はなくなる。また、コークス原料炭として安価な非微粘結炭を多量に配合して使用することが可能となるためコークス製造コストの低減や、コークス原料炭の選択範囲の拡大が可能になる等、その経済的な効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】粘結剤添加後の配合炭の全膨張率とドラム強度の関係を示す図である。
【図2】粘結剤添加後の配合炭の最高流動度とドラム強度の関係を示す図である。
【図3】全膨張率下限値の計算値と実測値の関係を示す図である。
Claims (3)
- 粘結剤を添加した後の配合炭を用いてコークスを製造する高炉用コークスの製造方法において、前記粘結剤を添加した後の配合炭の粘結性指数が、式(1)によって決定される全膨張率の下限値以上、または式(2)によって決定される最高流動度の下限値以上であり、且つ前記粘結剤を添加した後の配合炭の粘結性指数が、全膨張率の上限値である100以下及び最高流動度の上限値である3.0以下である範囲を満たすように前記配合炭を構成する石炭銘柄及びそれらの配合割合を調整することを特徴とする高炉用コークスの製造方法。
全膨張率の下限値=a/BD−b・・・・・(1)
最高流動度下限値=c×ln(全膨張率下限値)+d=c×ln(a/BD−b)+d・・・・・(2)
ただし、a,b,c,dは目標とするコークス強度により実験により求められる値であり、BDは石炭の装入密度(t/m3)である。 - 粘結剤を添加した後の配合炭を用いてコークスを製造する高炉用コークスの製造方法において、前記粘結剤を添加した後の配合炭の粘結性指数が、式(1)によって決定される全膨張率の下限値以上、または式(2)によって決定される最高流動度の下限値以上であり、且つ前記粘結剤を添加した後の配合炭の粘結性指数が、全膨張率の上限値である100以下及び最高流動度の上限値である3.0以下である範囲を満たすように前記粘結剤の添加率を調整することを特徴とする高炉用コークスの製造方法。
全膨張率の下限値=a/BD−b・・・・・(1)
最高流動度下限値=c×ln(全膨張率下限値)+d=c×ln(a/BD−b)+d・・・・・(2)
ただし、a,b,c,dは目標とするコークス強度により実験により求められる値であり、BDは石炭の装入密度(t/m 3 )である。 - 粘結剤を添加した後の配合炭を用いてコークスを製造する高炉用コークスの製造方法において、前記粘結剤を添加した後の配合炭の粘結性指数が、式(1)によって決定される全膨張率の下限値以上、または式(2)によって決定される最高流動度の下限値以上であり、且つ前記粘結剤を添加した後の配合炭の粘結性指数が、全膨張率の上限値である100以下及び最高流動度の上限値である3.0以下である範囲を満たすように前記配合炭を構成する石炭銘柄及びそれらの配合割合を調整するとともに、前記粘結剤の添加率を調整することを特徴とする高炉用コークスの製造方法。
全膨張率の下限値=a/BD−b・・・・・(1)
最高流動度下限値=c×ln(全膨張率下限値)+d=c×ln(a/BD−b)+d・・・・・(2)
ただし、a,b,c,dは目標とするコークス強度により実験により求められる値であり、BDは石炭の装入密度(t/m 3 )である。
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