JP4278425B2 - 剥離紙原紙 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、耐カール性に富み、吸水性が少なく、印刷適性がある寸法安定性剥離紙原紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
剥離紙原紙とは、その表面にシリコーンなどの剥離剤を塗工し、粘着紙の下紙として使用する目的に使われる紙である。シリコーンなどの剥離剤は、有機溶剤に溶解して、原紙に塗工する。その際、粘着紙との剥離を容易にさせる為、塗工した剥離剤は紙層中に浸透させることなく紙表面に留める必要がある。その為、原紙には有機溶剤の浸透が少ないポリエチレンラミネート紙やグラシン紙あるいはセミグラシン紙が使われている。
【0003】
グラシン紙、セミグラシン紙は、剥離剤の浸透を抑えるため、叩解が十分に行われている。このため、叩解による電力消費が大きいという問題点がある。
【0004】
また、特許文献1に示される様、フリーネスが150〜250mlの木材繊維からなる支持体原紙にガラス転移点2〜4℃のスチレンブタジエン系ラテックスを含浸させ、剥離性を向上させるために70℃以上の条件下でキャレンダー掛けをして、剥離原紙を製造する方法が開示されている。しかしながらこの方法ではフリーネスを極端に下げかつ十分な耐カール性を達成することができない。
【0005】
特許文献1: 特開平7−268798
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、フリーネスを極端に下げることなく、フリーネス450ml程度の原紙、例えば通常の上質紙または片艶紙等を使用し、寸法安定性、耐カール性が優れ、カールの原因である水分の吸脱湿性が少ない剥離紙原紙を提供することにある。
【0007】
【発明が解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、以下の発明により上記課題を解決した。即ち、本発明は、フリーネス450ml程度の通常の原紙、例えば上質紙または片艶紙等の原紙の表面にポリエチレンラミネート層と剥離剤層を設けてなる、耐カール性に富み、印刷適性のある剥離紙原紙において、その裏面に、バリアー性の高い、ワックスエマルジョンとスチレンアクリル共重合体アンモニウム塩との混合物をスチレンブタジエン系ラテックスと混合した混合物をバインダーとして、塗工することにより塗工層を設け、該ワックスエマルジョンとスチレンアクリル共重合体アンモニウム塩との重量比が4:6〜6:4であり、該ワックスエマルジョンとスチレンアクリル共重合体アンモニウム塩との混合物の固形分100重量部に対してスチレンブタジエン系ラテックスの固形分の量を20〜100重量部とし、前記塗工層を5〜20g/m 2 塗工した構成とすることによって、寸法安定性が高く、カールの原因であった裏面からの水分の吸収を抑えることにより、耐カール性に優れた剥離紙原紙に関する。
【0008】
【発明実施の形態】
本発明で使用する塗工前の原紙は、フリーネス450ml程度の通常の抄紙条件で生産された通常の原紙、例えば上質紙または片艶紙等を使用することが出来る。
【0009】
また、塗工する薬品としての、ワックスエマルジョンとスチレンアクリル共重合体アンモニウム塩との混合物は、ワックスエマルジョンとスチレンアクリル共重合体アンモニウム塩とを混合したものである。ワックスエマルジョンとスチレンアクリル共重合体アンモニウム塩とを4:6〜6:4の重量比で混合したものが有効であることが実証されている。例としては、重量比4:6のペントールPS−846(近代化学社製)、重量比5:5のペントールPS−860(近代化学社製)がある。これらは例えば以下の方法で製造できる:
A.重合用モノマーとして、a)アクリル酸ステアリル及び/又はメタクリル酸ステアリル;b)疎水性モノマー;並びにc)アクリル酸アルキル及び/又はメタクリル酸アルキルを使用し、d)乳化重合用分散剤として、スチレン−アクリル酸とメタアクリル酸ステアリル又はアクリル酸ステアリルとを塊状重合させた樹脂のアルカリ塩を使用し、e)乳化重合用助剤としてアニオン系界面活性剤及び/又はノニオン系界面活性剤を使用して乳化重合させて乳化重合体を得、
B.別に、α、β−不飽和多塩基性酸付加石油樹脂、ワックス及ノニオン型界面活性剤と、無機アルカリ及び/又は有機アルカリとを加えて乳化分散させ乳化分散物を得、そして
C.Aの重合体とBの乳化分散物とを混合して分散させることによって製造される。
【0010】
また、これに混入するスチレンブタジエン系ラテックスとしては、ガラス転移点が2℃以下のフィルム耐水性が優れたラテックスを使用する。
【0011】
上記のワックスエマルジョンとスチレンアクリル共重合体アンモニウム塩との混合物をスチレンブタジエン系ラテックスと混合した混合物をバインダーとして、塗工液を作り、これを原紙(例えば通常の上質紙)の裏面に5〜20g/m2塗工することにより、寸法安定性の優れた、剥離紙原紙を製造することができた。塗工量5g/m2以下では裏面の吸水度が大きくなり、剥離紙原紙の耐カール性が悪くなる。また、20g/m以上では、製造コストの大幅な増加に繋がる。吸水度の測定条件は、7.5cm×7.5cmの試験片の表面に、ポリエチレンの粘着シートを貼り、表面からの吸水を無くし、30℃、80%相対湿度の環境条件下に1時間放置した後の紙の吸水量をg/m 2 表示する。
【0012】
スチレンブタジエン系ラテックスは、ワックスエマルジョンとスチレンアクリル共重合体アンモニウム塩との混合物の固形分100重量部に対して、20〜100重量部の量で使用する。20重量部より少ない量では塗工面に印刷することが出来ず、100重量部より多くては、裏面の吸水度が大きくなり、剥離紙原紙の耐カール性が悪くなる。
【0013】
上記のワックスエマルジョンとスチレンアクリル共重合体アンモニウム塩との混合物をスチレンブタジエン系ラテックスと混合した混合物をバインダーとした塗工液の塗工はエアーナイフコーター等のコーターで塗工後、アーチドライヤー等で乾燥する。
【0014】
上記の塗工液の塗工後、ドライヤーで乾燥した剥離紙原紙は、そのままで、剥離紙原紙として十分なものであるが、必要に応じてより剥離性を持たせようとする場合には、スーパーキャレンダー処理を施しても良い。
【0015】
【実施例】
本発明を実施例により、更に詳細に説明する。尚、実施例における吸水度、水中伸度、カール評価、オフセット印刷適性、UV印刷適性については、以下の方法で評価した。
【0016】
吸水度:
7.5cm×7.5cmの試験片の表面に、ポリエチレンの粘着シートを貼り、表面からの吸水を無くし、30℃、80%相対湿度の環境条件下に1時間放置した後の紙の吸水量をg/m2表示する。
【0017】
水中伸度:
JAPAN TAPPI紙パルプ試験法のNo.27に従って、幅15mm、長さ150mmの横方向の試験片をフェンチェル伸縮度試験機にて、23℃の水に5分間浸漬させ、その伸びを%で表示する。
【0018】
カール評価:
10cm×10cmの試験片の裏面を水で濡らし、紙のカール状態を下記のように評価した。
○ 試験片が平、
△ かまぼこ状にカール、
× 試験片が丸まる。
【0019】
オフセット印刷適性:
RI印刷機で、オフセットインク(Novel MaxiAF 紅 T&K TOKA社製)を0.4cc練り印刷し、印刷適性を評価した。
○ 印刷可能、
× 印刷できない。
【0020】
UV印刷適性:
RI印刷機で、UVインク(Bestcure UV 紅 T&K TOKA社製)を0.4cc練り印刷し、印刷適性を評価した。
○ 印刷可能、
× 印刷できない。
【0021】
実施例1:
NBKP10%、LBKP90%から成るパルプを原料に市販されている金毬SW(北越製紙製)の坪量127.9g/m2の裏面にワックスエマルジョンとスチレンアクリル共重合体アンモニウム塩との重量比5:5の混合物であるペルトールPS−860(近代化学社製、37%濃度品)の固形分100重量部に対して、スチレンブタジエン系ラテックスのL−7063(旭化成社製、48%濃度品)を50重量部添加、混合した液を8g/m2塗工後、乾燥し剥離紙原紙を得た。
【0022】
実施例2:
実施例1において、ペルトールPS−860の固形分100重量部に対して、L−7063を30重量部添加した以外は実施例1と同様にして、剥離紙原紙を得た。
【0023】
実施例3:
実施例1において、ペルトールPS−860の固形分100重量部に対して、L−7063を60重量部添加した以外は実施例1と同様にして、剥離紙原紙を得た。
【0024】
実施例4:
実施例1において、混合した液を5g/m2塗工した以外は実施例1と同様にして剥離紙原紙を得た。
【0025】
比較例1:
実施例1において、混合した液を3g/m2塗工した以外は実施例1と同様にして剥離紙原紙を得た。
【0026】
比較例2:
実施例1において、ペルトールPS−860の固形分100重量部に対して、L−7063を10重量部添加した以外は実施例1と同様にして、剥離紙原紙を得た。
【0027】
比較例3:
実施例1において、ペルトールPS−860の固形分100重量部に対して、L−7063を150重量部添加した以外は実施例1と同様にして、剥離紙原紙を得た。
【0028】
比較例4:
実施例1において、ワックスエマルジョンとスチレンアクリル共重合体アンモニウム塩との混合物の代わりの、サイビノールPC−10(サイデン化学社製)の固形分100重量部に対して、スチレンブタジエン系ラテックスL−7063を50重量部添加、混合した液を8g/m2塗工し、剥離紙原紙を得た。
【0029】
比較例5:
実施例1において、ワックスエマルジョンとスチレンアクリル共重合体アンモニウム塩との混合物の代わりの、ジョンクリル450(ジョンソンポリマー社製:スチレンアクリルエマルジョン)の固形分100重量部に対して、スチレンブタジエン系ラテックスL−7063を50重量部添加、混合した液を8g/m2塗工し、剥離紙原紙を得た。
【0030】
実施例及び比較例について、測定結果を表1に示す。実施例は、剥離紙原紙の裏面の30℃、80%RH、1時間放置での吸水度が2g/m2以下で、カール状態は、いずれも比較例より良好である。従って、剥離性、寸法安定性、耐カール性が優れ、裏面印刷可能な、剥離紙原紙を得ることが出来た。
【0031】
【表1】
Figure 0004278425
【0032】
【発明の効果】
本発明の剥離紙原紙は、従来の技術のような過度な叩解をせず、通常の上質紙の裏面にワックスエマルジョンとスチレンアクリル共重合体アンモニウム塩との混合物をスチレンブタジエン系ラテックスと混合し、5〜20g/m2塗工することにより、裏面の30℃、80%相対湿度、1時間放置での吸水度が2g/m2以下となり、剥離性、寸法安定性、耐カール性に優れ、裏面の印刷も可能となる剥離紙原紙を得ることが出来た。

Claims (2)

  1. 原紙の表面にポリエチレンラミネート層と剥離剤層を設けてなる、耐カール性に富み、印刷適性のある剥離紙原紙において、その裏面に、ワックスエマルジョンとスチレンアクリル共重合体アンモニウム塩との混合物スチレンブタジエン系ラテックスとからなる塗工層を設け、該ワックスエマルジョンとスチレンアクリル共重合体アンモニウム塩との重量比が4:6〜6:4であり、該ワックスエマルジョンとスチレンアクリル共重合体アンモニウム塩との混合物の固形分100重量部に対してスチレンブタジエン系ラテックスの固形分の量を20〜100重量部とし、前記塗工層を5〜20g/m2塗工したことを特徴とする剥離紙原紙。
  2. 剥離紙原紙にスーパーキャレンダー処理を施すことを特徴とする請求項記載の剥離紙原紙。
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